投稿者: 実家じまいナビ編集部

  • 相続した実家の取得費が分からない|概算5%で払いすぎる税金と、それを避ける3つの手

    【PR】本ページはプロモーションを含みます。国税庁の資料は発行元のページで確認したものです。

    最終更新:2026年8月16日

    結論だけ先に

    • 親が買ったときの契約書が見つからないと、取得費は売った金額の5%として計算されます(国税庁 No.3258)。4,000万円で売れば取得費はたった200万円です。
    • 「3,000万円特別控除があるから大丈夫」は誤りです。下の試算では、控除を使ってもなお121万8,900円の差が出ました。契約書は控除とは別に効きます。
    • 建物については、契約書がなくても国税庁の「建物の標準的な建築価額表」から取得費を計算できます。ただし木造は、築34年で「税金の計算に使える建物の取得費」が取得価額の5%まで下がり切ります(建物の市場価値の話ではありません)。古い木造の実家では、この手は効きません。効くのは土地です。

    根拠と計算過程は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

    まず、いくら違うのかを見てください

    「取得費が分からない」という話は、抽象的に説明されても切実さが伝わりません。先に金額を出します。

    条件は次のとおりです。相続した実家としては、ごく標準的な想定です。

    売却価格 4,000万円
    建物 昭和55年築・木造・延床100㎡
    売却年 2026年(築46年)
    譲渡費用 200万円(仲介手数料・印紙・測量など)
    親が買ったときの土地代 1,500万円(契約書がある場合)
    契約書が見つかった 見つからなかった
    土地の取得費 1,500万円 200万円
    (4,000万円×5%)
    建物の取得費 46万2,500円
    取得費 合計 1,546万2,500円 200万円
    譲渡所得 2,253万7,500円 3,600万円
    税額(3,000万円控除なし) 約457万8,000円 約731万3,000円
    税額(3,000万円控除あり) 0円 121万8,900円

    税率20.315%(所得税15%+復興特別所得税=所得税額の2.1%+住民税5%。国税庁 No.3208 の各構成要素から当サイトが計算)で試算。建物の取得費の出し方は後述します。なお令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合、控除額は3,000万円ではなく2,000万円になります(国税庁 No.3306)。その場合、上表の「控除あり・契約書が見つかった」は0円ではなく約51万5,000円、「見つからなかった」は約325万円になります

    差は273万5,000円。3,000万円特別控除を使えた場合でも121万8,900円残ります。

    ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。「空き家の3,000万円特別控除が使えるから、契約書はなくても平気」という説明を見かけますが、正しくありません。控除は譲渡所得から3,000万円を引くだけで、取得費の穴を埋めてはくれません。譲渡益が3,000万円を超えた瞬間に、契約書の有無がそのまま税額の差になって出てきます。

    契約書があるかどうかで、これだけ違う 2,735,000円 税額の差 契約書がある 4,578,000円 契約書がない 7,313,000円 売却4,000万円・昭和55年築の試算。控除なしの場合

    3,000万円控除そのものの要件は空き家の3,000万円特別控除に、譲渡所得税の計算の順番は相続した実家を売ったときの譲渡所得税に書いています。

    なぜ「親が買ったときの金額」が必要なのか

    相続した不動産を売るときは、あなたが相続した時点の価値ではなく、亡くなった親が買ったときの金額を取得費に使います。

    相続や贈与によって取得したときは、被相続人や贈与者の取得の時期がそのまま取得した相続人や受贈者に引き継がれます

    出典:国税庁 タックスアンサー No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」(令和7年4月1日現在法令等/2026年8月16日確認)。根拠法令として所得税法33条・38条・60条が挙げられています

    つまり、相続税評価額でもなければ、相続したときの時価でもありません。昭和や平成の初めに親が払った金額の証拠が要る、ということです。

    これが厄介な理由は2つあります。ひとつは、40年前・50年前の売買契約書を保管している家がそもそも少ないこと。もうひとつは、実家の片付けのときに、その契約書ごと処分されてしまうことです。順番として、片付けの前に書類を探すのが正解です。

    片付けそのものの費用と、業者に頼むときに何を確認するかは遺品整理の費用にまとめました。書類を探し終えてから読んでください。順番を逆にすると、この記事が必要になります。

    取得費が分からないときの5%ルール

    そもそも契約書を失わないために、実家の片付けで捨ててはいけない書類9つを先に読んでおいてください。片付けの現場で消えるのは、たいていこの1枚です。

    国税庁は次のように案内しています。

    売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます

    出典:国税庁 タックスアンサー No.3258「取得費が分からないとき」(令和7年4月1日現在法令等/2026年8月16日確認)。根拠法令として所得税法33条・38条、租税特別措置法31条の4、租税特別措置法通達31の4-1が挙げられています

    同じページには、実際の取得費が5%を下回るときも5%を使ってよいと書かれています。つまり5%は「下限の保証」でもあります。バブル期の高値づかみで実際の取得費のほうが高い場合は、当然そちらを使います。

    ただし、この5%は売った金額に対する5%です。地価が上がった土地ほど不利になります。4,000万円で売れば200万円、6,000万円で売れば300万円。売却額が大きいほど「本来の取得費との差」が広がる仕組みです。

    手1:契約書がなくても、取得費の証拠になりうる資料

    売買契約書が最強ですが、それだけではありません。金額が特定できる資料は、契約書でなくても構いません。実家で探すなら、次の順で当たってください。

    探すもの どこにあるか 何が分かるか
    売買契約書・重要事項説明書 権利証(登記済証)と一緒に保管されていることが多い 購入代金そのもの
    住宅ローンの金銭消費貸借契約書 同上、または借入先の金融機関 借入額。頭金と合わせて購入代金を推定できる
    登記事項証明書の抵当権設定登記 法務局(誰でも取得できる) 債権額。当時いくら借りたかが公的記録として残っている
    通帳・振込控え 実家の書類箱、金融機関の取引履歴 支払の事実と金額
    分譲時のパンフレット・価格表 実家、分譲主(存続していれば) 当時の分譲価格
    購入時の仲介手数料の領収書 実家の書類箱 手数料から逆算して売買代金を推定できる

    実務でいちばん見落とされているのが抵当権設定登記の債権額です。法務局で登記事項証明書(全部事項証明書)を取れば、抹消済みの抵当権も「下線付き」で残っています。手数料は書面請求で1通600円、オンライン請求・送付(郵送)で520円、オンライン請求・窓口交付で490円です(令和7年4月1日改定後の額)。

    出典:盛岡地方法務局「主な手数料一覧【令和7年4月1日〜】」(2026年8月16日確認)

    ただし注意点があります。借入額イコール購入代金ではありません。頭金を入れていればその分は含まれず、諸費用まで借りていれば逆に多く出ます。これ単独で取得費を確定させられるものではなく、他の資料と組み合わせて説明するための材料だと考えてください。

    契約書でなくても、金額が特定できれば 売買契約書 購入代金そのもの 直接 分譲時の価格表 当時の分譲価格 直接 抵当権設定登記 債権額。法務局で誰でも取れる 推定 住宅ローンの契約書 借入額から推定します 推定 借入額イコール購入代金ではありません

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    取得費が出ないなら、「売らない出口」の数字も見ておく

    5%概算取得費で計算すると、売った額のほとんどが利益とみなされ、税金が重くなります。売る以外の使い道なら、そもそも譲渡所得税がかかりません。土地活用の提案は、取得費が出ない土地ほど比べる価値があります。

    ①一括で複数社に依頼する形です。1社だけ選ぶと提案書は届きません。成果条件がそう決められています。
    ②地域や物件の条件によっては、提案できる会社が見つからないことがあります。その場合は提案書が届きません。
    ③届くのは「提案書」であって、売れる価格でも確定した金額でもありません。
    ④申し込むと、各社から連絡が入ります。連絡の受け方を先に決めておいてください。
    ⑤すでに方針が決まっているなら、請求しなくてかまいません。迷っている段階の材料です。

    複数社にまとめて空き家の提案書を請求する(無料)

    壊す場合の費用は実家の解体費用と全国の解体補助金一覧で、税金の側は空き家の3,000万円特別控除で確認できます。持ち続ける場合の年額は空き家の維持費にまとめました。

    手2:建物は、国税庁の表から取得費を計算できます

    ここからが、この記事のいちばん実用的な部分です。

    国税庁は「譲渡所得の申告のしかた」の中で建物の標準的な建築価額表を公表しています。国土交通省の建築着工統計をもとに、建築年ごと・構造ごとの1㎡あたりの標準的な建築単価を並べた表です。契約書がなくても、建築年・構造・延床面積さえ分かれば、建物の取得価額を計算できます。

    建築年 木造・木骨モルタル造 鉄骨鉄筋コンクリート造 鉄筋コンクリート造 鉄骨造
    昭和50年 67.7 126.4 97.4 60.5
    昭和55年 92.5 149.4 129.7 84.1
    昭和60年 104.2 172.2 144.5 96.9
    平成2年 131.7 286.7 222.9 147.4
    平成7年 158.3 228.8 199.0 143.2
    平成12年 159.0 204.3 182.6 132.3
    平成17年 151.9 185.7 171.5 132.8
    平成22年 156.5 226.4 205.9 163.0
    平成27年 165.4 262.2 240.2 197.3
    令和2年 172.0 279.2 276.9 230.2
    令和5年 204.1 366.7 314.3 281.1

    単位:千円/㎡。出典:国税庁「建物の標準的な建築価額表」(国土交通省「建築着工統計」を基に算出/2026年8月16日確認)。上表は当サイトが5年おきに抜粋したものです。中間の年は原典に載っています

    先ほどの試算の建物は、これを使って出しました。

    ① 建築時の取得価額 92.5千円/㎡ × 100㎡ = 925万円
    ② 償却費相当額 925万円 × 0.9 × 0.031 × 46年 = 1,187万1,450円
    → 取得価額の95%(878万7,500円)を超えるため、878万7,500円で頭打ち
    ③ 建物の取得費 925万円 − 878万7,500円 = 46万2,500円

    ②の計算式と95%の上限は国税庁が定めているものです。

    建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数=減価償却費相当額

    出典:国税庁 タックスアンサー No.3261「建物の取得費の計算」(令和7年4月1日現在法令等/2026年8月16日確認)。償却率は法定耐用年数の1.5倍の年数に対応する旧定額法によるもの。減価償却費相当額は取得価額の95%を超えないとされています

    構造(非業務用) 償却率
    木造 0.031
    木骨モルタル造 0.034
    鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 0.015
    金属造①(骨格材の肉厚3mm以下) 0.036
    金属造②(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) 0.025

    出典:国税庁「譲渡所得の申告のしかた」掲載の非業務用建物の償却率(2026年8月16日確認)

    建物の価値が「5%まで落ち切る」年数を計算しました

    ここは他で見たことがないので、自分で計算しました。

    償却費相当額には取得価額の95%という上限があります。逆に言えば、その上限に達した瞬間に、建物の取得費は取得価額の5%で固定され、それ以上は減りません。いつ到達するかは、償却率だけで決まります。

    計算式は 0.95 ÷(0.9 × 償却率)です。

    構造 償却率 建物の取得費が5%で底を打つ築年数
    金属造①(肉厚3mm以下) 0.036 約29.3年
    木骨モルタル造 0.034 約31.0年
    木造 0.031 約34.1年
    金属造②(肉厚3mm超4mm以下) 0.025 約42.2年
    鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 0.015 約70.4年

    当サイトによる計算。0.95÷(0.9×償却率)。国税庁 No.3261 の算式と95%上限、および国税庁「譲渡所得の申告のしかた」の償却率による

    建物の取得費が5%で底を打つ築年数 金属造(3mm以下) 29.3年 木骨モルタル造 31.0年 木造 34.1年 金属造(3〜4mm) 42.2年 鉄骨鉄筋コンクリート・RC 70.4年 0.95÷(0.9×償却率)。木造は築34年で底を打つ

    この表から言えることは、はっきりしています。

    木造の実家は、築34年を過ぎた時点で、建物の取得費を頑張って計算しても取得価額の5%にしかなりません。昭和・平成初期に建った木造住宅なら、ほぼ全部がここに入ります。先ほどの試算で建物が46万円しか出なかったのは、そのためです。

    つまり古い木造の実家では、建築価額表を使う手は「あれば拾える程度」の効果しかありません。効くのは土地です。探すべき資料の優先順位も、土地の購入代金を示すものが先です。

    逆に、鉄筋コンクリート造のマンションを相続した場合は事情が変わります。底を打つのが約70年後なので、築40年でも建物の取得費がしっかり残ります。この場合は建築価額表を使う価値が大きいです。

    手3:土地の取得費がどうしても分からないとき

    建物は表から出せても、土地は建築着工統計のような公的な単価表がありません。ここが最後の壁です。

    実務では、日本不動産研究所が公表している市街地価格指数を使って、売却時の価格から購入時点まで遡って取得費を推計する方法が知られています。

    ただし、当サイトはこの方法を「使えます」とは書きません。理由は3つあります。

    • 国税庁が公表資料でこの方法を認めた形跡を、確認できませんでした。No.3258 に書かれているのは5%のことだけです。
    • 市街地価格指数は六大都市・全国などの平均であって、個別の土地の値動きではありません。適用できるかどうかは土地ごとに違います。
    • 否認された場合、5%で申告するより不利になることがあります(過少申告加算税・延滞税)。

    この方法を検討するなら、必ず税理士に相談してください。ネットの記事だけを根拠に自分で申告するのは、割に合いません。仮に土地の取得費が1,000万円上振れしても税額の差は約203万円ですが、否認されたときのコストと手間はそれなりに大きいものです。

    逆に言えば、税理士に相談する価値がはっきりあるのは、この論点です。相続不動産の売却で税理士に頼むかどうか迷っているなら、判断材料はここに置いてください。

    いつまでに、何をするか

    順番 やること いつ
    1 片付けの前に、書類を探す。権利証・契約書・ローン書類・通帳をまとめて確保する 相続後すぐ
    2 法務局で登記事項証明書を取り、抵当権設定登記の債権額を確認する 1と同時期
    3 固定資産税の課税明細書で、建物の構造・延床面積・建築年を確認する 1と同時期
    4 建築価額表で建物の取得費を計算しておく 売却を決める前
    5 売却する年の翌年2月16日〜3月15日に確定申告 売却の翌年

    いちばん大事なのは1番です。遺品整理業者に一括で任せると、書類は「価値のない紙」として処分されます。数百万円の税金がかかっている紙だと知っているのは、相続人だけです。

    書類を探すのは、片付けの前です 1 書類を探す 権利証・契約書・ローン・通帳 2 登記事項証明書を取る 抵当権設定登記の債権額を見る 3 課税明細書を見る 構造・延床面積・建築年 4 建物の取得費を計算 建築価額表で。売却を決める前に 5 確定申告 売却の翌年2月16日〜3月15日

    実家をどう処分するかの全体像と、他の期限との関係は実家じまい完全ガイドにまとめています。売却額そのものを上げる話は売却相場を、自分で調べる3つの方法と不動産一括査定サイトの比較を読んでください。取得費を200万円積み増すより、売却価格を200万円上げるほうが、手取りへの効き方は大きくなります。

    取得費が分からなくても、売れる金額が分からなければ税額は試算できません。概算取得費で計算するにしても、起点になるのは売却価格です。まず査定で見込み額を1つ出してから、この記事の計算に戻ってください。査定は無料です。

    先に場所を確認してください。不動産SHOPナカジツが受け付けられるのは愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本とその周辺だけです(全40店舗のうち39店舗がこの7県。同社の店舗一覧で確認/2026年8月19日)。それ以外の道府県にある実家は、申し込んでも査定は返ってきません。対象外の方は、ラクウルの買取査定のほうをご覧ください。

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    愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本の実家なら、もう1社あります

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    査定を出したあとは、媒介契約の種類を決める段階です。この記事で書いたレインズの登録証明書の確認と、仲介と買取の違いを、契約書に判を押す前に済ませておいてください。

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    ②LINE相談からの申込は対象外です。フォームから申し込んでください。
    ③日本国外にお住まいの方は対象外です。
    ④売却を考えていない相談は対象外です。迷っている段階なら「まだ決めていませんが、金額を知りたい」と伝えてください。
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    ただし、順番だけは守ってください。査定より先に書類です。査定の連絡を待っている間に、権利証・売買契約書・住宅ローンの書類・通帳を確保してください。片付けが始まると、この記事で書いた360万円分の紙が捨てられます。仲介側の相場は売却相場を、自分で調べる3つの方法にあります。

    よくある質問

    ここは「どこを探すか」「どの窓口で何を頼むか」まで書きます。取得費の話は、動くのが早いほど選べる手が多いからです。

    Q. 実家のどこを探せばいいですか。

    A. 片付けを始める前に、この順で当たってください。順番が大事です。片付けと同時進行にすると、探している最中に捨てられます。

    探す場所 入っていることが多いもの
    1 権利証(登記済証)と同じ場所。和封筒や紙の袋にまとめられていることが多い 売買契約書・重要事項説明書。いちばん強い証拠です
    2 仏壇の引き出し、桐の箱、たんすの最上段、押入れの天袋 権利証・通帳・実印。「大事なもの」は1か所にまとまっていることが多い
    3 金融機関の貸金庫 権利証・契約書。名義人が亡くなると開けられなくなり、相続の手続きを経る必要があります。早めに銀行へ確認を
    4 確定申告書の控えの束 過去に不動産を売っていれば、そのときの取得費の資料が残っていることがあります
    5 古い通帳・振込控え 支払の事実と金額。頭金の振込が残っていることがあります
    6 分譲時のパンフレット・価格表 当時の分譲価格。分譲主が存続していれば問い合わせる手もあります

    見つけたら、その場で写真を撮ってください

    原本を持ち帰る前に、スマホで全ページ撮ることをおすすめします。相続では書類が兄弟間を行き来し、「誰かが持っている気がするが、どこにあるか分からない」状態になりがちです。画像が1つあれば、少なくとも金額の議論は止まりません。

    そして、遺品整理を業者に一括で任せる前に、必ずここを終わらせてください。数百万円の税金がかかっている紙だと知っているのは、相続人だけです。業者にとっては、古い紙束です。

    Q. 契約書が見つかりません。ほかに証拠になるものはありますか。

    A. あります。金額が特定できれば、契約書でなくても構いません。実務でいちばん見落とされているのが、登記に残った抵当権の債権額です。

    法務局で登記事項証明書(全部事項証明書)を取ると、すでに返し終わって抹消された抵当権も「下線付き」で残っています。当時いくら借りたかが、公的な記録として出てきます。

    請求方法 手数料(令和7年4月1日〜)
    書面請求(窓口・郵送) 1通 600円
    オンライン請求・郵送で受取 1通 520円
    オンライン請求・窓口で受取 1通 490円

    出典:盛岡地方法務局「主な手数料一覧【令和7年4月1日〜】」(2026年8月16日確認)

    ★ 出てこなかったときに、もう1つ聞く窓口があります

    登記はある時期に紙からコンピュータへ移し替えられており、移し替えの時点ですでに抹消されていた事項は、いまの証明書に載っていないことがあります。昭和のうちに完済した住宅ローンは、ここに該当する可能性があります。

    窓口でこう聞いてください。
    「この土地の閉鎖登記簿(閉鎖事項証明書)に、抵当権の記載が残っていないか確認したいのですが、請求できますか」
    取扱いは法務局によって異なるので、まず電話で確認するのが確実です。

    ただし、借入額はそのまま購入代金ではありません。頭金を入れていればその分は含まれず、諸費用まで借りていれば逆に多く出ます。これ単独で取得費を確定させるものではなく、ほかの資料と組み合わせて説明するための材料だと考えてください。

    Q. 相続税の申告書に不動産の評価額が載っています。これは取得費に使えますか。

    A. 使えません。相続税評価額は相続した時点の評価であって、親が買ったときの金額ではありません。国税庁 No.3270 のとおり、引き継ぐのは被相続人の取得費と取得の時期です。

    ただし、相続税を納めた人には別の制度があります

    取得費加算の特例です。納めた相続税の一部を取得費に加算できます。国税庁 No.3267 は「その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること」と定めています。

    ここは期限が命です。相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月なので、実務上のリミットはおおよそ「相続から3年10か月」になります。売却の段取りに数か月かかることを考えると、余裕はありません。相続税を納めた方は、売る時期をこの期限から逆算してください。

    Q. 土地と建物をまとめた金額の契約書しかありません。

    A. 分けられます。建物のほうを先に計算して、残りを土地にします。

    やること
    1 国税庁の「建物の標準的な建築価額表」で、建築年 × 構造の単価(千円/㎡)を引く
    2 単価 × 延床面積=建物の取得価額
    3 契約書の総額 − ②=土地の取得費

    建築年・構造・延床面積は、固定資産税の課税明細書に載っています。毎年4〜6月に納税通知書と一緒に届く紙です。この3つさえ分かれば、契約書がなくても建物側は計算できます。

    消費税の記載がある契約書なら、もう1つ手があります。消費税は建物にしかかかりません(土地の譲渡は非課税です)。したがって消費税額を当時の税率で割り戻せば、建物価格が出ます。税率は時期で変わっているので、契約日の税率を確認してください。

    Q. うちは木造で築40年です。建物の取得費を計算する意味はありますか。

    A. 正直に言うと、ほとんどありません。木造は築34年ほどで、建物の取得費が取得価額の5%まで下がり切ります。

    構造 償却率 取得費が5%で底を打つ築年数
    金属造①(骨格材の肉厚3mm以下) 0.036 約29.3年
    木骨モルタル造 0.034 約31.0年
    木造 0.031 約34.1年
    金属造②(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) 0.025 約42.2年
    鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 0.015 約70.4年

    当サイトによる計算。0.95 ÷(0.9 × 償却率)。国税庁 No.3261 の算式と95%上限、および国税庁「譲渡所得の申告のしかた」の償却率によります(2026年8月16日確認)。

    だから、探すべき資料の優先順位が変わります

    古い木造の実家では、力を入れるべきは土地の購入代金を示す資料です。建物側は「あれば拾える程度」の効果しかありません。限られた時間を、土地のほうに使ってください。

    逆に、鉄筋コンクリート造のマンションを相続した場合は事情が変わります。底を打つのが約70年後なので、築40年でも建物の取得費がしっかり残ります。この場合は建築価額表を使う価値が大きいので、必ず計算してください。

    Q. 兄弟で共有している場合はどうなりますか。

    A. 取得費も持分に応じて按分します。5%ルールを使う場合も同じです。

    そして、手続きの数が増えます。共有のまま売ると全員の合意が必要で、確定申告も全員がそれぞれ行います。ひとりでも申告を忘れると、その人だけが加算税・延滞税の対象になります。

    共有だからこそ、資料は1か所にまとめてください

    取得費の資料は、共有者全員の税額に効きます。誰かひとりが持っているだけだと、申告の時期に探し直しになります。見つけた時点で全ページを撮って、全員に共有しておいてください。これは、あとで確実に効きます。

    共有そのもののリスクと進め方は実家じまい完全ガイドの STEP4 と、仲介と買取の違いの共有持分の項にあります。

    Q. 5%で申告したあとに契約書が出てきました。やり直せますか。

    A. できます。申告期限から5年以内なら、更正の請求で還付を求められます。ただし手続きは自分で進めることになるので、金額が大きい場合は税理士に依頼するほうが確実です。

    とはいえ、これは最後の手段です。「見つからないから5%で出す」と決める前に、探し切ったかどうかを確認してください。売った家は、たいてい取り壊されるか、他人のものになります。あとから家の中を探すことは、もうできません。

    Q. 建物を解体してから売る場合、建物の取得費はどうなりますか。

    A. 建物の取得費と取壊し費用は、譲渡費用または取得費として扱えます。その意味では、解体しても消えません。

    ただし、解体には税金の別の落とし穴があります。順番と時期を間違えると、金額のけたが変わります。

    論点 先に確認すること
    3,000万円特別控除 解体の順番と時期を間違えると使えなくなります。2024年からは買主に解体してもらう形でも使えますが、売買契約に特約が要ります
    解体後の固定資産税 住宅用地の特例が外れます。1月1日時点の状態で決まるので、年末の工事は完了時期で1年ぶん変わります

    どちらも古家付きで売るか、更地にして売るかに、倍率の計算は解体すると固定資産税は6倍になるのかにあります。

    Q. 5%で申告するしかないとき、税額を下げる手はほかにありますか。

    A. あります。上から順に効きます。

    手 効き方
    1 空き家の3,000万円特別控除 譲渡所得から直接3,000万円を引きます。いちばん大きい
    2 取得費加算(相続税を納めた場合) 納めた相続税の一部を取得費に足せます。期限に注意(相続からおおよそ3年10か月)
    3 譲渡費用の計上もれをなくす 仲介手数料・印紙代・測量費・取壊し費用など。領収書を1枚残らず集めてください
    4 長期譲渡になる時期に売る 相続では親の取得時期を引き継ぐので、古い実家はほぼ長期(20.315%)に該当します。短期だと税率が上がるので、念のため確認を

    それでも、いちばん効くのは売却価格のほうです

    200万円ぶん、どちらを動かすか 手取りへの効き方
    取得費を200万円積み増す 税が 約40万6,000円減る(200万 × 20.315%)
    売却価格を200万円上げる 仲介手数料が約6万6,000円増え、税が約39万円増えるが、差引で手取りは約154万円増える

    ※当サイトの試算。仲介手数料は200万円 × 3% × 消費税10%、税率20.315%で計算しました。

    同じ200万円でも、効き方が約3.8倍違います。

    取得費探しは早めに切り上げて、価格のほうに時間を使ってください。自分で相場を調べる手順は実家の売却相場を調べる3つの方法、会社の選び方は一括査定サイトの比較にあります。

    Q. 税理士に頼んだほうがいいのは、どういうときですか。

    A. 次のどれかに当てはまるなら、頼む価値があります。

    こういうとき
    1 土地の取得費を、5%より高く主張したいとき。市街地価格指数を使う方法を検討するなら、必ず税理士に相談してください。当サイトはこの方法を「使えます」とは書きません(本文に理由を3つ書きました)
    2 相続税を納めていて、取得費加算を使うとき
    3 3,000万円特別控除の要件が微妙なとき。相続人が3人以上、共有、賃貸に出した期間がある、などは要注意です
    4 譲渡益が大きく、税額が数百万円になるとき

    逆に、契約書があって、控除の要件もはっきりしているなら、自分で申告できる範囲です。報酬の相場は当サイトでは確認できなかったので、金額は書きません。複数の事務所に見積りを取って、「何をどこまでやってくれるか」で比べてください。

    相談は、売る前にしてください。契約してからでは、順番も時期も変えられません。

    3,000万円控除が使えるか確かめる譲渡所得税の計算を見るまず売れる金額を自分で調べる


    この記事で確認できなかったこと

    • 租税特別措置法通達31の4-1の本文。国税庁 No.3258 が根拠法令として挙げていますが、国税庁サイト上で通達の本文にたどり着けませんでした。そのため、条文(措置法31条の4)が昭和27年12月31日以前から所有していた資産の規定であるのに対し、それ以後に取得した資産にも5%を適用できる根拠が通達にあるかどうかは、当サイトでは確認できていません。本文で引用しているのは No.3258 の記載のみです。
    • 市街地価格指数による取得費の算定が認められた裁決例。国税不服審判所の公表裁決に該当例があるとする解説を複数見かけましたが、原文を確認できなかったため、当サイトでは引用しません。
    • 「取得費が不明」で5%が適用された申告の件数。統計として公表されていません。どのくらいの人が損をしているのかは分かりませんでした。
    • 建築価額表の中間年の数値。本文の表は5年おきの抜粋です。全年分は国税庁の原典を参照してください。

    この記事は税務の一般的な情報を整理したものであり、個別の申告についての助言ではありません。実際の申告にあたっては税理士または所轄の税務署にご確認ください。

    あわせて読みたい

  • 【2026年最新】特定空家に指定されるとどうなる?税金が上がる前に閉じる「補助金の窓」

    【PR】本ページには広告(PR)を含みます。掲載している数値はすべて官公庁の公表資料と自治体の公式ページから直接確認したものです。

    最終更新:2026年8月16日

    結論だけ先に

    • 税金が上がるのは「指定された瞬間」ではありません。市から「勧告」を受けた時点です。助言・指導の段階では住宅用地特例は外れません。
    • ところが、全国288自治体を調べたところ、解体に使える制度がある226自治体のうち130自治体(57.5%)が、特定空家等の認定や老朽度の判定を補助金の入口条件にしていました。指定されないと補助金が使えない、という構造です。
    • さらに岡山市・越谷市・上尾市は「勧告を受けたものは対象外」。認定されてから勧告されるまでの間にしか、補助金の窓が開いていません。

    根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

    「特定空家」と「管理不全空家」は別のものです

    2023年(令和5年)12月13日に、空家等対策の推進に関する特別措置法が改正されて施行されました。この改正で、行政が手を出せる空き家が2段階になりました。

    区分 定義 根拠条文
    管理不全空家等 適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にある空家等 空家法第13条
    特定空家等 ①そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
    ②著しく衛生上有害となるおそれのある状態
    ③適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
    ④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
    空家法第2条第2項

    出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」(2026年8月16日確認)

    改正前は「特定空家等」しかありませんでした。つまりかなり傷んでからでないと行政は動けなかったのが、その手前の段階でも動けるようになった、というのが改正の中身です。手前の網が増えた、と考えてください。

    指定されると何が起きるか──段階ごとに整理します

    「特定空家に指定されると固定資産税が6倍」という説明をよく見かけますが、指定された瞬間に何かが起きるわけではありません。実際には次の順番で進みます。

    段階 根拠条文 起きること
    ①指導(管理不全空家等) 第13条第1項 是正を求められる。税金は変わらない
    ②勧告(管理不全空家等) 第13条第2項 住宅用地特例が外れる
    ③助言・指導(特定空家等) 第22条第1項 是正を求められる。税金は変わらない
    ④勧告(特定空家等) 第22条第2項 住宅用地特例が外れる
    ⑤命令 第22条第3項 従わないと50万円以下の過料(第30条第1項)
    ⑥行政代執行 第22条第9項 市が解体し、費用は所有者に請求される

    出典:埼玉県「空家等対策の推進に関する特別措置法について」(2026年5月)、国土交通省資料(いずれも2026年8月16日確認)

    覚えておくべきなのは、税金が上がるのは「勧告」からだということです。助言・指導の通知が届いた段階では、まだ固定資産税は変わりません。ここが分かれ目です。

    そして2023年の改正で、管理不全空家等の勧告でも住宅用地特例が外れるようになりました。特定空家になる前でも税金が上がる、ということです。

    なお「6倍」という数字自体が不正確です。土地の固定資産税で最大約4.2倍、建物分の税金が消えることを合わせると、実際に払う総額は約2倍程度に収まります。計算は解体すると固定資産税が6倍になる?で詳しく出しています。

    実際にどこまで進んでいるのか(国の最新統計)

    不安を煽る記事は多いのですが、実際の件数を見ると印象が変わります。国土交通省の施行状況調査(令和7年3月31日時点・累計)です。

    措置 累計件数 前段階からの通過率
    特定空家等への助言・指導 42,768件 —
    勧告 4,153件 約9.7%
    命令 551件 約13.3%
    行政代執行 286件 約51.9%
    略式代執行(所有者不明の場合) 592件 —
    管理不全空家等への指導 3,211件 —
    管理不全空家等への勧告 378件 約11.8%

    出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等(令和7年3月31日時点)」(2026年8月16日確認)。通過率は当サイトによる計算

    読み取れることは3つあります。

    第一に、助言・指導を受けた家のうち、勧告まで進むのは約1割です。逆に言えば、9割は指導の段階で止まっています。片付けや修繕に応じたか、行政が次に進む体力がないかのどちらかです。

    第二に、代執行はやはり例外です。所有者が分かっている場合の行政代執行は累計286件。総務省の令和5年住宅・土地統計調査によれば、賃貸用・売却用・二次的住宅を除いた空き家(つまり放置されやすい空き家)は385万6千戸あります。略式代執行を含めても878件ですから、おおよそ4,390戸に1戸の割合です。

    第三に、それでも「勧告4,153件+378件」は現実です。この4,531件は、実際に住宅用地特例が外れて税負担が上がった土地です。確率が低いことと、自分がそこに入らないことは別の話です。

    ここからが本題──「指定されないと補助金が使えない」自治体が半分あります

    ここまでは、どの記事にも書いてある話です。この記事の本題はここからです。

    当サイトでは、全国288自治体(20政令市・東京23区・47都道府県すべての県庁所在地・主要中核市)の空き家解体補助金を、公式ページで1件ずつ確認しています。その結果、次のことが分かりました。

    調査項目 件数
    調査した自治体 288
    解体(除却)に使える補助制度がある 226
    制度がないと確認できた 43
    制度の有無を確認できていない 19
    交付要件に「特定空家等」または「評点・不良度」の語がある 130(制度がある226自治体の57.5%)
    うち「特定空家等」であることを要件に明記している 63

    出典:当サイト調べ(288自治体・2026年8月19日時点)※その後の追加収録により、データベースの収録数は501自治体になっています。上の集計は288自治体を調べた時点のものです。。「解体(除却)に使える制度がある」=制度区分が「空き家特化」「耐震型」「部分的」「地区限定」のいずれか。要件の集計は、その226自治体の「対象となる空き家の要件」欄に各語が含まれるものを数えた。1つの自治体が複数に該当する場合がある。内訳は全国288自治体の一覧に掲載しています

    つまり、こういう構造になっています。

    指定されると税負担が増える。しかし指定されなければ、解体補助金の対象にすらならない自治体が半分を超える。

    「特定空家に指定されないように気をつけましょう」という記事は山ほどありますが、その助言に従うと、半分の自治体では補助金の入口に立てません。手入れしてきた実家ほど、判定に届かず落ちるのです。

    「勧告を受けたら対象外」という自治体があります

    さらに踏み込んだ自治体があります。要件の文言をそのまま引用します。

    自治体 上限 要件の文言
    岡山県岡山市 60万円 空家法上の「特定空家等」であること(同法第22条第2項の勧告を受けたものは対象外)
    岡山市(地域活性化除却) 200万円 空家法上の「特定空家等」(勧告済みは除外)
    埼玉県越谷市 50万円 特定空家等に認定されている空家等(勧告を受けているものを除く)

    出典:各市公式ページ(2026年8月16日確認)

    この3制度では、補助金の窓は「特定空家等に認定されてから、勧告を受けるまで」の間にしか開いていません。

    勧告を受けると、同時に2つのことが起きます。①住宅用地特例が外れて土地の固定資産税が上がる。②補助金の対象から外れる。税金が上がった上に、補助金も消えます。

    逆に、指導や勧告を受けていることを要件にしている自治体もあります。

    自治体 上限 要件の文言
    宮城県仙台市 50万円 空家法第22条第1項の助言・指導、または第2項の勧告の対象であること(同条第3項の命令は未実施)
    鳥取県鳥取市 80万円 特定空家等として市から指導または勧告を受けた不良住宅であること
    奈良県奈良市 30万円 市から特定空家等の判断を受けている建物であること/措置命令を受けていないこと

    出典:各市公式ページ(2026年8月16日確認)

    仙台市は「命令は未実施」、奈良市は「措置命令を受けていないこと」と、どちらも命令の手前までが窓です。行政が本気で動き出す前に自分で壊した人を支援する、という設計思想が読み取れます。

    実家のある自治体がどの型かは、全国288自治体の一覧から各ページで確認できます。要件の文言と担当課の電話番号を載せています。

    特定空家の認定を要件にしている自治体(実データ)

    全国394自治体を1件ずつ公式ページで確認したところ、105自治体が対象要件に「特定空家」を挙げていました。上限額の大きい順に並べます。自治体名を選ぶと、その自治体の落ちやすい条件と担当課の電話番号まで出ます。

    自治体上限額
    北海道室蘭市350万円(老朽空家等活用支援の非木…
    岡山県岡山市(地域活性化除却)200万円
    東京都板橋区200万円
    兵庫県丹波市160万円(判定100点以上。50点…
    新潟県長岡市160万円
    香川県坂出市160万円
    東京都杉並区150万円
    福島県福島市150万円
    山形県米沢市市町村民税所得割が非課税なら最大12…
    徳島県鳴門市120万円
    鳥取県米子市120万円
    三重県伊賀市100万円

    該当は全部で105自治体です。全国の一覧表で実家のある市区町村を確認してください。

    ここで注意したいのは、認定を待つほど固定資産税の住宅用地特例が外れるリスクが近づくことです。補助の窓が開くタイミングと、税が上がるタイミングは別々に動きます。

    では、いつ動くのが正解か

    ここまでを踏まえると、順番はこうなります。

    1. 通知が届いたら、まず種類と条文を確認する。「助言・指導」なのか「勧告」なのかで意味がまったく違います。勧告なら、その年の翌年度から土地の固定資産税が上がります。

    2. 同時に、自治体の補助金の要件を読む。特定空家等の認定が入口なのか、勧告を受けると対象外なのか。この2点だけは、必ず自分の目で確かめてください。半分の自治体で、この一文が結論を変えます。

    3. 解体費の見積もりと、補助金の実額を並べる。補助金の上限額は「制度上の最大値」であって、実際に受け取れる額ではありません。多くの自治体は「工事費×補助率」「国が定める標準除却費から算出した額」「上限額」のいずれか低い額を支給します。

    4. 交付決定の前に契約しない。ほぼすべての自治体が、交付決定通知の前に契約・着工した工事を対象外にしています。ここで失格になる人が毎年います。

    数字を先にそろえてください

    判断に必要なのは、感情ではなく金額です。次の2つは無料で、いますぐ出せます。

    このサイトの無料ツール

    実家の解体費用シミュレーター

    構造・面積・所在地・前面道路・付帯工事・補助金を入れると、「いくらから、いくらまで」を幅で出します。単一の数字は出しません。出せないからです。

    ツールを開く

    もう1つは、実家のある自治体に制度があるかどうかです。全国288自治体の解体補助金一覧に、制度区分・上限額・要件・担当課の電話番号まで載せています。制度が無い自治体は「ありません」と書いています。

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    「勧告される前に手放す」も、選択肢のひとつです

    この記事で見たとおり、勧告を受けると住宅用地特例が外れて税額が上がり、さらに「勧告を受けたら補助金の対象外」という自治体もあります。つまり指定が進むほど、打てる手は減っていきます。直す・解体する以外に、その状態のまま手放すという道もあります。

    老朽化・違反建築・旧耐震の物件は、仲介では買主が付きにくいのが実情です。だからこそ買取という受け皿が成り立っていますが、手取りは仲介より下がります。その前提で比べてください。

    現況のままの買取価格を聞く(無料)

    補助金が使えるなら、そちらが先です。お住まいの自治体に解体補助金があるかは全国の空き家解体補助金データベースで確認できます。補助金・解体・売却の3つを並べてから決めてください。

    よくある質問

    ここは「通知が届いてから、自分に何ができるか」まで書きます。根拠はすべて空家法の条文です。

    Q. 特定空家に指定されたら、すぐ税金が上がりますか。

    A. 上がりません。税負担が変わるのは「勧告」を受けた時点です。助言・指導の段階では住宅用地特例は外れません。

    根拠は地方税法349条の3の2第1項です。住宅用地から除かれるのは「空家法22条2項の規定により勧告がされた特定空家等」の敷地と「空家法13条2項の規定により勧告がされた管理不全空家等」の敷地で、条文が名指ししているのは「勧告」です。

    出典:e-Gov法令検索「地方税法」349条の3の2(2026年8月16日確認)

    届いた通知が助言・指導なのか勧告なのかを、まず確認してください。見分け方は次のQにあります。

    Q. 届いた通知が、どの段階のものか見分けられますか。

    A. 条文の言葉が、そのまま通知の言葉になります。この表と照らし合わせてください。

    段階 条文 通知に出てくる言葉 税金への影響
    1 空家法22条1項 助言または指導 変わりません
    2 空家法22条2項 相当の猶予期限を付けて勧告 ここで住宅用地特例が外れます
    3 空家法22条3項 命令(相当の猶予期限付き) 違反すると50万円以下の過料
    4 行政代執行 戒告・代執行令書 解体費が所有者に請求されます

    出典:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」22条・30条(2026年8月16日確認)

    「相当の猶予期限」という言い回しが入っていたら、勧告か命令です。助言・指導なら、まだ税金は動いていません。

    Q. いきなり代執行で壊されることはありますか。

    A. 手順を飛ばすことはできません。助言・指導 → 勧告 → 命令 → 代執行の順に進みます(空家法22条)。

    件数で見ると、所有者が分かっている場合の行政代執行は累計286件、所有者が分からない場合の略式代執行を含めても878件です。放置されやすい空き家385万6千戸に対して、おおよそ4,390戸に1戸の割合になります。

    ただし、確率が低いことと、自分がそこに入らないことは別の話です。そして代執行になれば費用は所有者に請求されます。

    むしろ現実的に効いてくるのは勧告のほうです。勧告は累計4,531件。この4,531件は、実際に住宅用地特例が外れて税負担が上がった土地です。壊されるかどうかより、税金が上がるかどうかで考えてください。

    Q. 命令の前に、反論する機会はありますか。

    A. あります。法律が明確に保障しています。ここを知らずに黙って待つ人が多すぎます。

    市町村長は、命令をしようとするときは、あらかじめ通知書を交付して、意見書と自己に有利な証拠を提出する機会を与えなければなりません(空家法22条4項)。「与えることができる」ではなく「与えなければならない」です。

    通知書が届いたら、期限があります

    交付を受けた日から5日以内 意見書の提出に代えて、公開による意見の聴取を請求できます(22条5項)。この5日を過ぎると、書面だけの勝負になります
    意見の聴取の期日 市町村長は期日の3日前までに、措置の内容・期日・場所を通知し、公告します(22条7項)
    聴取の場でできること 証人を出席させ、自己に有利な証拠を提出できます(22条8項)

    出典:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」22条(2026年8月16日確認)

    出せる材料は、たとえばこういうものです。

    • 解体業者との契約書や見積書。「壊す気がない」のではなく「段取り中」だと示せます
    • 補助金の申請書の控え。交付決定を待っている最中だという事情は、猶予期限の判断材料になります
    • 媒介契約書。売却で処理しようとしている証拠になります
    • 相続の状況が分かる書類。共有者の同意が取れずに動けないなら、その経緯を出します

    「何もしていない」と「動いているが時間がかかっている」は、まったく別物です。それを伝える場が、法律で用意されています。使ってください。

    Q. 従わなかったら、いくら取られますか。

    A. 命令に違反した場合は50万円以下の過料です(空家法30条1項)。これは命令に違反したときであって、助言・指導や勧告の段階ではありません。

    もう1つあります。立入調査を拒み、妨げ、忌避した場合や、報告をしない・虚偽の報告をした場合は、20万円以下の過料です(同30条2項)。

    出典:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」30条(2026年8月16日確認)

    調査を拒むのは、いちばん損な選択です。過料の対象になるうえ、こちらの事情を伝える機会も失います。連絡が来たら、まず出てください。

    Q. 管理不全空家と特定空家では、何が違いますか。

    A. 進める先が違います。ただし、税金への影響は同じです。

    管理不全空家等(13条) 特定空家等(22条)
    状態 そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある状態 倒壊等著しく保安上危険/著しく衛生上有害/著しく景観を損なう/放置が不適切な状態(2条2項)
    打てる手 指導 → 勧告の2段階まで 助言・指導 → 勧告 → 命令 → 代執行
    命令・代執行 条文に規定がありません あります
    過料 ありません 命令違反で50万円以下
    住宅用地特例 勧告で外れます 勧告で外れます

    つまり管理不全空家は「壊されはしないが、税金は上がる」段階です。2023年の改正で新しく入った枠組みなので、それ以前の情報を書いた記事には載っていません。税額がどう動くかは解体後の固定資産税を計算した記事で数字にしました。

    Q. 指定されないように気をつけるべきですか。

    A. 一概には言えません。ここは、当サイトの調査で正反対の結果が出たところです。

    全国288自治体のうち、解体に使える制度がある226自治体の57.5%が特定空家等の認定や老朽度判定を入口条件にしています。指定を避けることが、補助金を諦めることと同義になる自治体が半分を超えます。まず自分の自治体の要件を読んでください。

    Q. 勧告を受けてしまいました。もう補助金は使えませんか。

    A. 自治体によります。正反対の運用が現に存在します。

    勧告を受けたものは対象外 岡山市・越谷市など
    指導または勧告を受けたことが要件 仙台市・鳥取市など

    担当課に電話して、勧告後でも申請できるかを直接確認してください。勧告を受けた時点で、住宅用地特例はもう外れています。税金が上がっている以上、補助金が使えるなら早く動くほど傷は浅くなります。

    Q. 代執行の費用はいくらくらいですか。

    A. 実際にかかった解体費用が請求されます。金額は建物ごとに違い、全国的な平均額を示した公的な統計は確認できませんでした。

    ただし、自分で業者を選んで相見積もりを取る余地がなくなる分、安くはならないと考えるのが自然です。自分で手配した場合の相場感は解体費用の記事で幅を出しました。比べれば、自分で動いたほうがいいことは、すぐ分かります。

    自分の自治体の補助金の要件を読む解体費の相場と、施主がやる手続き勧告で税額がどう動くか計算する

    まとめ

    1. 税金が上がるのは「勧告」から。助言・指導の段階では住宅用地特例は外れない
    2. 2023年12月13日の改正で、管理不全空家等の勧告でも特例が外れるようになった
    3. 代執行は例外的。所有者が判明している行政代執行は累計286件、おおよそ4,390戸に1戸
    4. ただし勧告は累計4,531件。実際に税負担が上がった土地が、それだけある
    5. 解体に使える制度がある226自治体の57.5%が、特定空家等の認定や老朽度判定を入口条件にしている
    6. 岡山市・越谷市・上尾市は「勧告を受けたら対象外」。補助金の窓は認定から勧告までの間にしかない
    7. 仙台市・鳥取市・奈良市は逆に、指導や勧告を受けたことが要件。命令の手前までが窓
    8. 交付決定の前に契約すると、ほぼすべての自治体で対象外になる

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    勧告が来る前に動くなら、壊す費用から調べる

    特定空家の手続きは、こちらの都合では止まりません。交付決定の前に契約すると対象外になる自治体がほとんどなので、見積りと役所への確認は同時に進めてください。

    ①同社サイトには「ご利用は無料。ご成約後の請求も一切ございません」と書かれています。
    ②同社は「契約まで、業者からご連絡がいくことはございません」と説明しています。
    ③申し込みには物件の情報と写真が要ります。遠方の実家で写真が手元にないなら、次に帰ったときに外観と傷んでいる箇所を撮っておいてください。
    ④解体する予定がないなら申し込まないでください。重複した申込や、連絡先が実在しない申込は無効と明記されています。
    ⑤1社の見積りだけで決めないでください。地元の解体業者にも自分で1社あたって、金額の桁が合っているかを確かめてください。
    ⑥解体補助金を使う予定があるなら、契約・着工の前に自治体へ申請してください。着工後の申請は原則として通りません。

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    サービス内容の説明は同社サイトの記載であって、当サイトが確かめた事実ではありません。

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  • 土地活用で相続税は本当に下がるのか|評価減の仕組みと、営業トークが成立しない3つの場合

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    最終更新:2026年8月16日

    結論だけ先に

    • 相続税の節税として土地活用を勧められることがありますが、すでに親から実家を相続した後の人には効きません。下がるのは、あなたの子が将来払う相続税です。
    • 貸家建付地の評価減は、空室があるとその分だけ削られます。満室前提の試算をそのまま信じないでください。
    • 小規模宅地等の特例は、貸すと80%減が50%減に下がり、限度面積も200㎡になります。住む人がいる土地なら、貸すことでかえって不利になります。

    根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

    最初に、この記事を読む必要がない人

    土地活用の営業では、ほぼ必ず「相続税対策になります」と言われます。これは制度としては本当です。ただし、次の3つのどれかに当てはまる人には効きません。

    # 当てはまる場合 理由
    ① すでに相続を終えている 評価減が効くのは相続のとき。過去に遡って戻ってはこない
    ② 相続税がかからない見込み 基礎控除の範囲内なら、評価を下げても税額は0円のまま0円
    ③ 実家に子が住む / 家なき子に当たる 貸すと 80%減が50%減に下がる(後述)

    とくに①は重大です。この記事を読んでいる方の多くは、すでに親から実家を相続した後だと思います。その場合、「土地活用で相続税が下がる」という話は、あなたが払う相続税ではなく、あなたの子が将来払う相続税の話です。営業でこの区別が曖昧に語られることがあります。

    以下、制度の中身を条文と国税庁の資料で確認していきます。


    1. 相続税がかかるのは、いくらからか

    まず②の判定です。基礎控除の計算式はこれだけです。

    基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
    

    出典:国税庁 No.4152「相続税の計算」(2026年8月16日確認)

    法定相続人の数 基礎控除額
    1人 3,600万円
    2人 4,200万円
    3人 4,800万円
    4人 5,400万円

    遺産の総額がこの金額以下なら、相続税はかかりません。評価を下げる意味もありません。

    法定相続人の数え方には注意点が2つあります。

    • 養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか数に入りません
    • 相続放棄をした人がいても、放棄がなかったものとして数えます

    出典:同上

    土地以外に預貯金や有価証券もあるので、実家の評価額だけで判断はできません。ただ、遺産が基礎控除に届かないことが明らかなら、この先を読む必要はありません。


    ★「相続人の数」には、条文の細工が2つあります

    基礎控除の「3,000万円+600万円×法定相続人の数」も、条文で確かめられます。

    相続税法第十五条(遺産に係る基礎控除)
    1 相続税の総額を計算する場合においては、……相続税の課税価格……の合計額から、三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。
    2 前項の相続人の数は、同項に規定する被相続人の民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人の数(当該被相続人に養子がある場合の当該相続人の数に算入する当該被相続人の養子の数は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める養子の数に限るものとし、相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数とする。)とする。
    一 当該被相続人に実子がある場合又は当該被相続人に実子がなく、養子の数が一人である場合 一人
    二 当該被相続人に実子がなく、養子の数が二人以上である場合 二人

    出典:e-Gov法令検索 相続税法第15条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    2項に、2つ書かれています

    ①養子は、数えられる人数に上限があります。実子がいれば養子は1人まで、実子がいなければ2人まで。養子を増やして基礎控除を膨らませることはできません。「養子縁組で節税」という話を聞いたら、この2項1号・2号を見てください。

    ②相続放棄をしても、人数は減りません。「その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数」と書かれています。1人が放棄しても基礎控除は下がらない、ということです。放棄は基礎控除には影響しません。

    そして「相続人の数」は「民法第五編第二章の規定による相続人の数」です。実際に財産を取得したかどうかではなく、民法が定める相続人の数を数えます。

    「相続人の数」の数え方 基礎控除は15条1項 3,000万円+600万円×人数 法定相続人の数 養子は実子ありなら1人 15条2項1号。なしなら2人 数に上限あり 放棄はなかったものと 15条2項。人数は減りません 放棄しても同じ 相続人の数は民法第五編第二章による数です

    2. 評価減の正体は「貸家建付地」です

    土地活用で相続税評価が下がる仕組みの中心は、貸家建付地(かしやたてつけち)の評価です。

    自分で使っている土地(自用地)にアパートを建てて人に貸すと、その土地は「借りている人の権利がくっついている土地」として、評価が下がります。計算式は国税庁が公開しています。

    貸家建付地の価額
     = 自用地としての価額 − 自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
    

    出典:国税庁 No.4614「貸家建付地の評価」(2026年8月16日確認)

    3つの割合の意味

    借家権割合は、令和6年分で全都道府県一律30%と定められています。

    令和6年分の「借家権割合」は、全ての都道府県において「30%」と定められている
    — 国税庁 確定申告書等作成コーナー「借家権割合」(2026年8月16日確認)

    借地権割合は地域ごとに違います。路線価図にA〜Gの記号で書かれていて、A=90%からG=30%まで10%刻みです。ご自身の土地の割合は国税庁の財産評価基準書で確認できます。

    この借地権割合は、逆の立場でも使います。実家が借地に建っていて、その借地権を相続した場合、借地権の相続税評価額は「自用地としての価額 × 借地権割合」です。同じ記号を、土地を貸す側は評価減に、借りる側は課税対象の算出に使うことになります。借地権を相続したときの手続きは借地に建っている実家にまとめています。

    賃貸割合は、課税時期に実際に貸している部分の床面積 ÷ 独立部分の床面積合計です。ここが重要です。

    計算してみます

    自用地評価額5,000万円、借地権割合60%(記号D)の土地に、10戸のアパートを建てた場合。

    賃貸割合 評価減の額 評価額
    満室(10/10) 5,000万 × 0.6 × 0.3 × 1.0 = 900万円 4,100万円
    8戸入居(8/10) 5,000万 × 0.6 × 0.3 × 0.8 = 720万円 4,280万円
    5戸入居(5/10) 5,000万 × 0.6 × 0.3 × 0.5 = 450万円 4,550万円
    空室があると、評価減が削られます 満室 10戸/10戸 900万円 8戸入居 720万円 5戸入居 450万円 自用地5,000万円・借地権割合60%の場合

    満室でも下がるのは18%です。「半分になります」といった説明を受けたら、それは貸家建付地だけの話ではなく、後述する小規模宅地等の特例と、建物側の評価減を合算した数字です。

    そして空室があると、その分だけ評価減が削られます。 相続が発生したその日に何戸埋まっているかで税額が変わる、ということです。これは事前にコントロールできません。


    ★「評価減」は、法律の条文には書かれていません

    ここまで貸家建付地の計算式を書いてきました。その式が、どこに書かれているかを確かめておきます。

    相続税法で財産の評価について定めているのは、次の一文だけです。

    相続税法第二十二条(評価の原則)
    この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。

    出典:e-Gov法令検索 相続税法第22条(全文を開いて確認/2026年9月3日)。これが条文のすべてです

    「時価により」——それだけです。「自用地評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」という式は、この条文には出てきません。

    その式は、国税庁の財産評価基本通達に書かれています。通達は課税庁の内部の取扱いを定めたもので、税務署はこれに従って評価します。ただし、法律の条文ではありません。e-Gov法令検索は憲法・法律・政令・府省令・規則を収録するもので、通達は収録の対象外です。この記事も通達の原文にはあたっていません(国税庁の公表資料によっています)。

    これは「だから信用できない」という話ではありません。実務はこの通達で動いています。ただ、営業の場で「法律で決まっています」と言われたら、正確には「相続税法22条が『時価』と書いていて、その時価の求め方を国税庁の通達が定めている」という構造です。そして通達は、法律の改正より簡単に変わり得ます。

    いっぽう、次に出てくる小規模宅地等の特例は、法律の条文です。租税特別措置法69条の4。ここは条文で確かめられます。

    3. 小規模宅地等の特例は、貸すと「80%→50%」に下がります

    もうひとつの柱が小規模宅地等の特例です。ここに、営業ではあまり強調されない事実があります。

    区分 限度面積 減額割合
    特定居住用宅地等 330㎡ 80%
    特定事業用宅地等 400㎡ 80%
    貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

    出典:国税庁 No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」(2026年8月16日確認)

    アパートや駐車場として貸している土地は「貸付事業用宅地等」です。減額割合は50%、限度面積は200㎡。 一方、自宅として使い続ける「特定居住用宅地等」なら80%・330㎡です。

    つまり、その土地に特定居住用の特例が使える見込みがあるなら、貸すことでかえって不利になります。

    具体的には、次のような場合です。

    • 子が実家に同居していて、そのまま住み続ける
    • 配偶者が相続する
    • いわゆる「家なき子」の要件を満たす別居の子が相続する

    逆に、誰も住まない・住む予定もない実家なら、特定居住用の特例は使えません。この場合に貸付事業用の50%が意味を持ちます。判断の分かれ目は「その家に住む人がいるかどうか」です。

    相続の直前に貸し始めても使えません

    もうひとつの制限がこれです。

    相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等
    — 上記No.4124より(原則として特例の対象外)

    親の具合が悪くなってから慌ててアパートを建てても、3年以内なら貸付事業用の特例は使えません。 ただし、相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業を行っていた場合は対象になります。

    出典:同上

    土地活用による相続税対策は、少なくとも3年以上前から動いていないと成立しない、ということです。「今から始めても間に合います」という営業には、この3年ルールを確認してください。


    ★条文で読むと「80%引き」ではなく「20%にする」です

    小規模宅地等の特例は、租税特別措置法69条の4に書かれています。条文の書き方が、説明でよく使われる言い方と違います。

    租税特別措置法第六十九条の四第一項
    ……相続税法第十一条の二に規定する相続税の課税価格に算入すべき価額は、当該小規模宅地等の価額に次の各号に掲げる小規模宅地等の区分に応じ当該各号に定める割合を乗じて計算した金額とする。
    一 特定事業用宅地等である小規模宅地等、特定居住用宅地等である小規模宅地等及び特定同族会社事業用宅地等である小規模宅地等 百分の二十
    二 貸付事業用宅地等である小規模宅地等 百分の五十

    同条第二項
    前項に規定する限度面積要件は、……
    一 特定事業用宅地等又は特定同族会社事業用宅地等……四百平方メートル以下であること。
    二 特定居住用宅地等である選択特例対象宅地等 ……三百三十平方メートル以下であること。
    三 貸付事業用宅地等である選択特例対象宅地等 ……二百平方メートル以下であること。

    出典:e-Gov法令検索 租税特別措置法第69条の4第1項・第2項(全文を開いて確認/2026年9月3日)。括弧書きの一部を省略しています

    「80%引き」ではなく「百分の二十を乗じて計算した金額」。結果は同じですが、条文は残す割合で書いています。「50%減」も「百分の五十を乗じて」です。

    そして面積が違います。住んでいた土地(特定居住用)は330㎡まで、貸していた土地(貸付事業用)は200㎡まで。実家の敷地が330㎡(約100坪)を超えないなら、住んでいた土地としてなら全部が対象になります。

    割合も面積も、条文にあります 特定居住用宅地等 課税価格は20%に 330㎡まで 3項2号 住んでいた土地 貸付事業用宅地等 課税価格は50%に 200㎡まで 3項4号 貸していた土地 条文は「引く割合」ではなく「残す割合」です

    ★相続の直前に貸し始めても、外されます

    この記事はすでに「相続の直前に貸し始めても使えません」と書きました。その根拠は、貸付事業用宅地等の定義の括弧書きです。

    同条第三項第四号
    貸付事業用宅地等 被相続人等の事業(不動産貸付業その他政令で定めるものに限る。以下この号において「貸付事業」という。)の用に供されていた宅地等で、次に掲げる要件のいずれかを満たす当該被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したもの(特定同族会社事業用宅地等及び相続開始前三年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等(相続開始の日まで三年を超えて引き続き政令で定める貸付事業を行つていた被相続人等の当該貸付事業の用に供されたものを除く。)を除き、政令で定める部分に限る。)をいう。

    出典:e-Gov法令検索 租税特別措置法第69条の4第3項第4号(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    括弧の中に、さらに括弧があります。「相続開始前三年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等」は除く——ただし「相続開始の日まで三年を超えて引き続き政令で定める貸付事業を行つていた」人は、その除外から外れる。もともと不動産貸付を続けてきた人は、3年以内に増やした土地でも対象になり得る、という構造です。

    「節税のために今から貸す」は、この括弧書きに当たります。そして条文は「3年以内」としか書いていません。相続がいつ起きるかは決められないので、この3年を確実に超えられる保証はありません。

    なお、この特例にも申告要件があります。同条7項が「相続税の申告書に……適用を受けようとする旨を記載し」た場合に適用する、と定めています。

    直前に貸しても、外されます 相続開始前3年以内に貸し始めましたか はい 特例の対象外 3項4号の括弧 いいえ 対象になります 他の要件も要る

    4. すでに相続した人にとって、この話はどう効くのか

    冒頭の①に戻ります。

    小規模宅地等の特例も貸家建付地の評価も、相続が発生した時点の状態で判定されます。 すでに親から実家を相続した方が今からアパートを建てても、払い終えた(あるいはこれから払う)今回の相続税は1円も変わりません。

    効くのは次の相続、つまりあなたから子への相続です。

    それでも意味がある場合はあります。

    • 相続した土地を長期保有する前提で、自分の相続まで20年以上ある
    • 自分の資産全体が基礎控除を大きく超える見込みがある
    • 3年ルールをクリアできる時間的余裕がある

    この3つが揃っているなら、検討する価値はあります。逆に、「実家をどうするか」を今年か来年で決めたい人にとって、相続税対策は判断材料になりません。 その場合に見るべきは、維持費・固定資産税・売却したときの手取りです。


    5. 「相続税は下がるが、資産は減る」構造

    制度の話を離れて、もうひとつ書いておきます。

    土地活用で相続税評価が下がるのは、借金をして建物を建て、他人に貸すことで、その土地の自由度を手放すからです。評価が下がる理由は「価値が下がったとみなされる」ことにあります。

    したがって、次のことが同時に起こります。

    起きること 内容
    相続税評価が下がる 貸家建付地+小規模宅地の特例
    借入金が相続財産から控除される 債務控除
    一方で、返済義務が残る 空室でも返済は続く
    一方で、売りにくくなる 入居者がいる建物は簡単には解体・売却できない

    相続税が下がっても、そのために実質的な資産や選択肢が減っていたら意味がありません。 「相続税がいくら下がるか」ではなく、「相続税の減少額 − 事業リスク」で見る必要があります。

    この記事では、アパート経営の利回りや空室率について数字を書きません。 公的統計が存在せず、事業者ごとに前提が違いすぎるからです。提示された事業計画の家賃と入居率が妥当かどうかは、複数社の計画を並べて比較する以外に検証方法がありません。


    6. 実家の場合に、まず確認すべき順番

    1. 遺産の総額は基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるか
      → 超えないなら、相続税対策としての土地活用は不要です
    2. その家に住む人がいるか
      → いるなら特定居住用80%・330㎡のほうが有利です。貸すと50%・200㎡に下がります
    3. 今回の相続か、次の相続か
      → すでに相続済みなら、今回の税額は変わりません
    4. 3年以上の時間があるか
      → 相続開始前3年以内の新規貸付は原則対象外です
    5. 返済と空室のリスクを引き受けられるか
      → 評価減の額と、事業として背負うリスクを並べて比べます

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    この記事は、すでに実家を相続した方に、相続税対策としての土地活用はご自身には効かないと書きました。それでも土地を持ち続けるなら、貸した場合にいくらになるかは別の話です。タウンライフの土地活用は、アパート・マンション・駐車場などの活用プランと費用・見積りを複数社から無料で取り寄せられるサービスです(同社の説明)。当サイトは、あなたの地域に何社いるかを確認していません。

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    ④届くのは「プラン」と「見積り」であって、確定した収益ではありません。提案書に載る利回りは、その会社の想定です。
    ⑤相続税の話とは切り離して見てください。この記事で書いたとおり、すでに相続した方にとって節税効果はご自身ではなく次の世代の話です。取り寄せるのは、いまの土地でいくらになるかという数字です。

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    貸すと小規模宅地等の特例が80%から50%に下がります。この記事の3章に戻って、下がる分と入る家賃を並べてください。各社の比較は土地活用プラン一括請求サービスの比較にあります。

    よくある質問

    ここは数字と条文で答えます。「相続税対策になります」と言われたときに、その場で確かめられる材料を置いておきます。

    Q. 相続の直前にアパートを建てれば、相続税は下がりますか。

    A. 駆け込みは効きません。3年の縛りがあります。

    小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等からは、「相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等」が除かれます。国税庁はこれを「3年以内貸付宅地等」と呼んでいます。

    例外は1つだけです。相続開始の日まで3年を超えて引き続き「特定貸付事業」(貸付事業のうち準事業以外のもの)を行っていた場合は、3年以内貸付宅地等に該当しません。つまりもともと事業と呼べる規模で貸していた人だけの話です。

    出典:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(2026年8月16日確認)

    ここを説明せずに「相続税対策になります」と言う相手は、危険です。「3年以内貸付宅地等の除外に当たりませんか」と一度聞いてみてください。その答え方で、相手の質がかなり分かります。

    Q. 小規模宅地等の特例の数字を、正確に教えてください。

    A. 区分ごとにこうなっています。

    区分 限度面積 減額割合
    特定居住用宅地等(住んでいた家の敷地) 330㎡ 80%
    特定事業用宅地等 400㎡ 80%
    特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 80%
    貸付事業用宅地等(貸している土地) 200㎡ 50%

    出典:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(2026年8月16日確認)

    実家を貸すと、この表の上から下へ移ります。330㎡・80%が、200㎡・50%になるということです。面積も割合も下がります。「貸せば相続税が下がる」と単純に言えないのは、ここが理由です。

    Q. 実家を空き家のまま相続する場合、居住用の特例は使えますか。

    A. 条件次第です。配偶者・同居親族以外が取得する場合は、いわゆる「家なき子」の要件をすべて満たす必要があります。

    国税庁が挙げている要件(配偶者・同居親族以外が取得する場合)

    • 被相続人に配偶者がいないこと
    • 相続開始の直前に、被相続人の居住家屋に同居していた相続人がいないこと
    • 相続開始前3年以内に、次の者が所有する家屋に居住したことがないこと——取得者本人/取得者の配偶者/取得者の三親等内の親族/取得者と特別の関係がある一定の法人。ここが要注意です。自分名義でなくても、配偶者や親族の持ち家に住んでいたら外れます
    • 相続開始時に居住している家屋を、相続開始前のいずれの時点でも所有していないこと
    • その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで保有していること
    • このほか、国籍・納税義務者の区分に関する要件もあります

    上は要点をまとめたものです。判定は条件が細かいので、最終的な可否は必ず出典の全文と税理士で確認してください。

    出典:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(2026年8月16日確認)

    「持ち家がある人は使えない」という趣旨の制度です。そして申告期限まで保有していることが条件なので、特例を使うつもりなら、申告期限前に売ってはいけません。売る時期を決める前に、税理士に確認してください。

    Q. 貸家建付地の評価減はどれくらいですか。

    A. 国税庁の計算式はこれです。

    貸家建付地の価額 = 自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

    出典:国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」(2026年8月16日確認)

    当サイトでは、借地権割合と借家権割合の具体的な数値を書きません。国税庁の同ページは「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できると案内するにとどめており、数値そのものを一次情報で確認できなかったためです。自分の土地の割合は、財産評価基準書で確認してください。

    ここで大事なのは「賃貸割合」です。空室が増えれば賃貸割合は下がり、評価減も小さくなります。満室前提の試算をそのまま信じないでください。

    Q. 貸してすぐ相続が起きたらどうなりますか。

    A. 貸家建付地の評価減は効きますが、小規模宅地等の特例(貸付事業用)は3年の縛りに引っかかります。この2つは別の制度です。混同している説明が多いので、分けて考えてください。

    Q. すでに実家を相続した人にも効きますか。

    A. 相続税の話としては、もう終わっています。相続税は相続開始時点の状況で決まるので、相続したあとに貸し始めても、その相続の税額は変わりません。

    効くとすれば「次の相続」に対してです。そして次の相続まで3年を超えて貸し続ける必要があります。そこまで見込んだうえで判断してください。

    Q. 誰も住まない実家は、どう考えればいいですか。

    A. まず「自分に相続税がかかるのか」を確かめてください。基礎控除の範囲に収まるなら、この記事の話は丸ごと不要です。

    相続税対策のために資産を減らすのは、本末転倒になり得ます。本文の「相続税は下がるが、資産は減る」の節をもう一度読んでください。売る・貸す・持つを手取りで比べたものはこの記事にあります。

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    ②地域や物件の条件によっては、提案できる会社が見つからないことがあります。その場合は提案書が届きません。
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    その前に、自分の家が相続税の対象なのかを確かめてください

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    問い合わせは「相続の相談」として送ってください。過去1年以内に同サービスを使ったことがある場合と、1世帯で2回目の相談は、運営側で受け付けない扱いになると明記されています。
    当サイトは税理士ではありません。ここに書いた税の話は制度の説明であって、あなたの申告についての判断ではありません。同サービスの内容も同社サイトの記載であって、当サイトが利用して確かめたものではありません。

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    この記事で確認できなかったこと

    • 借地権割合の全国分布:路線価図にA〜Gの記号で地域ごとに記載されており、全国的な平均値は国税庁から公表されていません。ご自身の土地の割合は財産評価基準書でご確認ください
    • 令和7年分・令和8年分の借家権割合:本記事で確認できたのは令和6年分の「全都道府県30%」までです。長年30%が続いていますが、最新年分はご自身でご確認ください
    • アパート経営の利回り・空室率の公的統計:探しましたが、国や自治体が公表している全国統計は見つかりませんでした。民間各社の数字は前提条件が公開されていないため、本記事では採用していません
    • 建物部分の評価減:貸家の評価(固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合))についても制度はありますが、本記事は土地に絞りました
    • 財産評価基本通達の原文にはあたっていません。貸家建付地の評価式(自用地評価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)は国税庁の財産評価基本通達26によるもので、e-Gov法令検索は法律・政令・府省令などを収録するもので、通達は対象外です。この記事では相続税法22条が「時価により」とだけ定めていることを条文で確認し、評価式は国税庁の公表資料によっています。
    • 租税特別措置法69条の4の政令・財務省令は開いていません。法律(1項・2項・3項2号4号・7項)の全文はe-Gov法令検索で確認しましたが、「政令で定める部分」「財務省令で定めるもの」の中身にはあたれていません。実際の適用は税理士または税務署に確認してください。

    本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。相続税の計算は財産の構成や相続人の状況で大きく変わります。実際の判断にあたっては、税理士または所轄の税務署にご相談ください。

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  • 土地活用の一括請求と営業電話|法律上の歯止めと「断った」と認められる言い方

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    最終更新:2026年8月16日

    結論だけ先に

    • 一度はっきり断った後の再勧誘は、法律で禁止されています。1度でも違反です。
    • サブリース前提のアパート建築を提案してくる建設会社も、賃貸住宅管理業法(令和2年12月15日施行)の「勧誘者」として規制の対象になります。
    • 違反した場合の罰則は懲役6月以下または罰金50万円以下。ただし「検討します」では断ったことになりません。言い方が重要です。

    根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

    結論から

    電話は来ます。 複数社に資料請求するサービスなので、来ないほうがおかしい。ここを「電話は来ません」と書いているサイトがあれば、疑ってください。

    ただし、一度はっきり断った後の再勧誘は法律で禁止されています。 しかも罰則つきです。この記事では、どの法律が、どの業者に、どこまで効くのかを条文で確認します。

    先に要点だけ書きます。

    知っておくこと 内容
    断った後の再勧誘 禁止。1度でも違反になる
    「断った」と認められる言葉 「お断りします」「必要ありません」「結構です」「関心ありません」
    電話してはいけない時間 午後9時〜午前8時(承諾がある場合を除く)
    罰則 不当な勧誘は 懲役6月以下または罰金50万円以下

    1. 一括請求で連絡してくるのは、誰か

    まず前提の整理です。土地活用の一括請求で資料を送ってくるのは、主にハウスメーカーや建設会社です。不動産の売買を仲介する宅地建物取引業者(宅建業者)とは限りません。

    これは実務上、無視できない違いです。宅建業法の勧誘規制は宅建業者にかかるものだからです。「宅建業法で守られているから安心」という説明は、相手が建設会社の場合にはそのままでは当てはまりません。

    では建設会社は野放しかというと、そうではありません。2020年にできた別の法律が効きます。


    2. サブリースを含む提案には「賃貸住宅管理業法」がかかります

    正式名称は賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年法律第60号)です。サブリース関係の規定は令和2年12月15日に施行されています。

    出典:国土交通省「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の一部の施行期日を定める政令」(報道発表)(2026年8月16日確認)

    この法律の重要な点は、規制の対象がサブリース業者だけでなく「勧誘者」にも及ぶことです。

    「勧誘者」には建設会社も入ります

    国土交通省のガイドラインは、勧誘者を「サブリース業者がマスターリース契約の締結についての勧誘を行わせる者」と定義し、建設業者・不動産業者・金融機関・コンサルタントはいずれも「通常は勧誘者に該当する」としています。

    しかも、明示的な委託契約がなくても該当します。ガイドラインが挙げる例です。

    • 特定のサブリース業者の親会社・子会社・関連会社である
    • サブリース業者が作成した資料を用いて説明する
    • 勧誘の謝礼として紹介料等の利益を得ている
    • サブリース業者が自社名入りの名刺の利用を認めている

    出典:国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」(令和5年3月31日改正)(2026年8月16日確認)

    つまり、サブリース前提のアパート建築を提案してくる建設会社は、原則としてこの規制の対象ということです。


    3. 禁止されている勧誘行為(法29条)

    具体的に何が禁止されているか。国土交通省の整理をそのまま挙げます。

    禁止行為 内容
    事実不告知 将来の家賃減額リスク、契約解除の可能性、費用負担を説明しない
    不実告知 「費用はすべて当社負担です」といった虚偽の説明
    威迫 相手を不安にさせる言動(「帰さない」など)
    迷惑な時間の勧誘 午後9時〜午前8時の電話・訪問(承諾がある場合を除く)
    執拗な勧誘 断った人への再勧誘。1度でも違反
    困惑させる方法 深夜・長時間の勧誘

    出典:国土交通省「適正化のための措置」(2026年8月16日確認)

    罰則

    違反 罰則
    不当な勧誘等の禁止(法29条) 懲役6月以下または罰金50万円以下(法42条)
    重要事項説明・契約書面交付(法30条・31条) 罰金50万円以下(法43条)
    誇大広告等の禁止(法28条) 罰金30万円以下(法44条)

    出典:同上

    行政指導ではなく刑事罰です。事業者側にとって軽い話ではありません。


    ★サブリース側は、書面が2回出ます(30条・31条)

    勧誘の規制(29条)だけでなく、契約の前と、契約したときに、それぞれ書面を出す義務があります。

    賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律第三十条(特定賃貸借契約の締結前の書面の交付)
    特定転貸事業者は、特定賃貸借契約を締結しようとするときは、特定賃貸借契約の相手方となろうとする者……に対し、当該特定賃貸借契約を締結するまでに、特定賃貸借契約の内容及びその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるものについて、書面を交付して説明しなければならない。

    同法第三十一条(特定賃貸借契約の締結時の書面の交付)
    特定転貸事業者は、特定賃貸借契約を締結したときは、当該特定賃貸借契約の相手方に対し、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
    一 特定賃貸借契約の対象となる賃貸住宅
    二 特定賃貸借契約の相手方に支払う家賃その他賃貸の条件に関する事項
    三 特定転貸事業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法
    四 契約期間に関する事項
    五 転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項
    六 契約の更新又は解除に関する定めがあるときは、その内容
    七 その他国土交通省令で定める事項

    出典:e-Gov法令検索 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律第30条・第31条(全文を開いて確認/2026年9月3日)。第30条は括弧書きの一部を省略しています

    30条は「締結するまでに」、31条は「締結したときは、遅滞なく」。順番が決まっています。電話や訪問で口頭の説明だけを受けて「では契約を」という流れは、条文が想定していません。

    そして31条2号と6号を見てください。「支払う家賃」と「契約の更新又は解除に関する定め」。サブリースで問題になるのは、この2つです。家賃が下がる、契約を切られる——書面に書かれるべき項目として、条文が名指ししています。もらった書面のその欄を読んでください。

    誇大広告についても、条文があります。

    同法第二十八条(誇大広告等の禁止)
    特定転貸事業者又は勧誘者(特定転貸事業者が特定賃貸借契約の締結についての勧誘を行わせる者をいう。以下同じ。)……は、……特定賃貸借契約の条件について広告をするときは、特定賃貸借契約に基づき特定転貸事業者が支払うべき家賃、賃貸住宅の維持保全の実施方法、特定賃貸借契約の解除に関する事項その他の国土交通省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。

    出典:e-Gov法令検索 同法第28条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    28条の括弧書きに「勧誘者」の定義が置かれています。「特定転貸事業者が特定賃貸借契約の締結についての勧誘を行わせる者」。この定義が29条にも効きます。だから建設会社も入るのです。

    規制は、2本立てです 土地活用の話 賃貸住宅管理業法 29条と省令 勧誘者も対象 建設会社も入る 売却の話になったら 宅地建物取引業法 47条の2第3項 規則16条の11 1年以内の業務停止 相手の立場で、当てはまる条文が変わります

    4. 「断った」と認められる言い方

    ここが実務上いちばん役に立つところです。ガイドラインは、どういう言葉なら「断った」と認められるかを明記しています。

    「お断りします」「必要ありません」「結構です」「関心ありません」「更新しません」など明示的に契約の締結又は更新意思がないことを示した場合
    — サブリース事業ガイドライン(2026年8月16日確認)

    そして、いったんこの意思表示をすれば——

    オーナー等がマスターリース契約を締結しない旨の意思表示を行った場合には、引き続き勧誘を行うことのみならず、その後、改めて勧誘を行うことも「勧誘を継続すること」に該当するので禁止される
    — 同上

    「その場での粘り」だけでなく、「日を改めてかけ直すこと」も禁止されています。ここは覚えておく価値があります。「また来月ご連絡します」は、断った後であれば違反です。

    逆に、避けたほうがいい言い方

    「今は忙しいので」「また考えます」「主人と相談します」は、契約しない意思の表明とは受け取られない可能性があります。 再勧誘の口実になります。

    角が立つように感じるかもしれませんが、「必要ありません」と言い切るほうが、結果的にお互いの時間を無駄にしません。

    どう言えば「断った」ことになるか 認められる言い方 お断りします 必要ありません 結構です 関心ありません 受け取られない 今は忙しいので また考えます 主人と相談します 再勧誘の口実に サブリース事業ガイドラインが挙げている言い方

    5. 宅建業者が相手の場合(売却の話になったとき)

    土地活用の相談から「いっそ売りませんか」という話に移ることがあります。相手が宅建業者になった場合は、宅地建物取引業法第47条の2第3項および施行規則第16条の11が適用されます。禁止されている行為は施行規則16条の11に6つ並んでいますが、電話に関係するのは次の3つです。

    1. 商号・氏名・勧誘目的を告げずに勧誘すること
    2. 契約しない旨の意思表示をした後の勧誘継続(再勧誘の禁止)
    3. 迷惑を覚えさせるような時間の電話・訪問

    出典:国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する省令の公布について」/監督処分基準(2026年8月16日確認)

    こちらは平成23年10月1日施行で、サブリース法より10年古い規制です。構造はよく似ています。

    なお、自宅の売却にクーリング・オフはありません。 売主として契約する場合、宅建業法のクーリング・オフ制度(37条の2)は買主を保護するものだからです。この点は国民生活センターも注意喚起しています。

    出典:国民生活センター「高齢者の自宅の売却トラブルに注意」(2026年8月16日確認)


    ★条文と省令の全文を、ここに置きます

    上の3つは、条文でこう書かれています。まず法律のほう。

    宅地建物取引業法第四十七条の二
    1 宅地建物取引業者又はその代理人、使用人その他の従業者(以下この条において「宅地建物取引業者等」という。)は、宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し、宅地建物取引業者の相手方等に対し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為をしてはならない。
    2 宅地建物取引業者等は、宅地建物取引業に係る契約を締結させ、又は宅地建物取引業に係る契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、宅地建物取引業者の相手方等を威迫してはならない。
    3 宅地建物取引業者等は、前二項に定めるもののほか、……宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に欠けるものとして国土交通省令・内閣府令で定めるもの及びその他の……国土交通省令で定めるものをしてはならない。

    出典:e-Gov法令検索 宅地建物取引業法第47条の2(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    3項の「国土交通省令で定めるもの」の中身が、施行規則16条の11です。第1号のイからヘまで、6つ並んでいます。

    宅地建物取引業法施行規則第十六条の十一
    法第四十七条の二第三項の国土交通省令・内閣府令及び同項の国土交通省令で定める行為は、次に掲げるものとする。
    一 宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をすること。
     イ 当該契約の目的物である宅地又は建物の将来の環境又は交通その他の利便について誤解させるべき断定的判断を提供すること。
     ロ 正当な理由なく、当該契約を締結するかどうかを判断するために必要な時間を与えることを拒むこと。
     ハ 当該勧誘に先立つて宅地建物取引業者の商号又は名称及び当該勧誘を行う者の氏名並びに当該契約の締結について勧誘をする目的である旨を告げずに、勧誘を行うこと。
     ニ 宅地建物取引業者の相手方等が当該契約を締結しない旨の意思(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続すること。
     ホ 迷惑を覚えさせるような時間に電話し、又は訪問すること。
     ヘ 深夜又は長時間の勧誘その他の私生活又は業務の平穏を害するような方法によりその者を困惑させること。
    二 宅地建物取引業者の相手方等が契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預り金を返還することを拒むこと。
    三 宅地建物取引業者の相手方等が手付を放棄して契約の解除を行うに際し、正当な理由なく、当該契約の解除を拒み、又は妨げること。

    出典:e-Gov法令検索 宅地建物取引業法施行規則第16条の11(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    ★ニの括弧書きを読んでください

    「締結しない旨の意思(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)」

    ここが重要です。「契約しません」と言わなくてもよい、と書かれています。「もう電話をしないでください」——これは「勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思」です。これを表示した時点で、それ以降の勧誘は施行規則16条の11第1号ニに違反します。

    サブリース事業ガイドラインが挙げている「お断りします」「必要ありません」より、条文のほうが広く取っています。断りづらいと感じる人にとって、この括弧書きは使えます。

    そして、ロも見ておいてください。「判断するために必要な時間を与えることを拒む」ことも禁止です。「今日中に決めてください」は、正当な理由がなければこれに当たります。

    宅建業者に禁じられている6つ イ 断定的判断 将来の環境や交通の利便 言い切らない ロ 考える時間 正当な理由なく拒むこと 今日決めない ハ 名乗らない 商号・氏名・勧誘の目的 先に告げる ニ 断った後の勧誘 ★希望しない旨の意思も含む ここが効く ホ 迷惑な時間 電話も訪問も 時間帯の問題 ヘ 深夜・長時間 私生活の平穏を害する方法 困惑させない 47条の2第3項の「省令で定めるもの」です

    違反したときの処分は、業務停止です

    宅地建物取引業法第六十五条第二項
    国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該宅地建物取引業者に対し、一年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
    二 ……第四十七条の二……の規定に違反したとき。

    出典:e-Gov法令検索 宅地建物取引業法第65条(全文を開いて確認/2026年9月3日)。第2項第2号は多数の条文を列挙しており、この記事に関係する部分だけを抜いています

    免許を出しているのは、国土交通大臣か都道府県知事です。苦情の宛先も、そこになります。

    その後の電話は、違反になります もう電話しないでと言いましたか はい 勧誘は禁止です 16条の11ニ いいえ 勧誘は続きます 意思表示が要る

    6. それでも電話を減らしたいなら

    法律の話とは別に、実務的にできることです。

    ① 請求時に連絡手段を指定する
    多くの一括請求サービスには備考欄や要望欄があります。「連絡はメールでお願いします」「電話は平日18時以降のみ可」と書いておく。法的な拘束力はありませんが、実際の運用では効きます。

    ② 請求する会社数を絞る
    一括請求は「全社に送る」ボタンがあることが多いですが、選んで送れます。 3社に絞れば電話も3社からです。比較の目的は相見積もりであって、社数を増やすことではありません。

    ③ 最初の電話で判断基準を伝える
    「サブリースは検討していません」「予算は◯◯万円まで」と最初に言うと、条件が合わない会社は自然に離れます。

    ④ 断るときは言い切る
    上の4節の言葉を使ってください。それ以降の連絡は法律違反になります。


    7. 一括請求の前に、決めておきたいこと

    正直に書きます。次のような方は、一括請求を使う前に別の判断が先です。

    逆に、土地を活用する方向は決まっていて、どの会社のどのプランかを比べたい段階なら、複数社のプランを並べる以外に検証手段はありません。1社だけの事業計画は、家賃設定が妥当かどうかを判断できないからです。


    売却の話になったときも、考え方は同じです。一括査定に出せば、その分だけ連絡が来ます。1社だけに依頼すれば、連絡も1社からしか来ません。「まず金額だけ知りたい」段階なら、直営で自社完結している会社に1社だけ出しておくのが、いちばん静かなやり方です。

    先に場所を確認してください。不動産SHOPナカジツが受け付けられるのは愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本とその周辺だけです(全40店舗のうち39店舗がこの7県。同社の店舗一覧で確認/2026年8月19日)。それ以外の道府県は対象外です。

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    不動産SHOPナカジツは、40店舗すべてを直営で運営している会社です。そのうち39店舗が、上の表の7県にあります(残る1店舗は東京都小平市ですが、査定の受付エリアに東京は入っていません)。ノムコムが対応していない岐阜・静岡・福岡・熊本と、名古屋市以外の愛知県は、こちらなら受け付けられます。仲介・買取・買取保証付き仲介・任意売却・リースバックの5つの売り方を自社で扱っているので、「囲い込まれても困らない売り方があるか」を、契約の前に1社の中で聞けます。

    申し込む前に、4つだけ確認してください。①対応しているのは上の表の市区町村とその周辺だけです。県が合っていても、店舗から遠い地域は受け付けられないことがあります。②申し込むと30日以内に電話またはメールで連絡が入り、物件の状況を聞かれます。所在地・築年数・間取りを答えられるようにしておくと早く終わります。③申し込めるのは名義人か、そのご親族だけです。相続した実家なら、相続人であるあなたが申し込めます。名義人と関係のない方からの問い合わせは受け付けられません。④売却を考えていない相談は対象外です。迷っている段階なら「まだ決めていませんが、金額を知りたい」と伝えてください。

    不動産SHOPナカジツに無料査定を依頼する(愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本)

    査定を出したあとは、媒介契約の種類を決める段階です。この記事で書いたレインズの登録証明書の確認と、仲介と買取の違いを、契約書に判を押す前に済ませておいてください。

    8. それでも違反されたら

    記録を残したうえで、次に相談できます。

    • サブリース関係:国土交通省の各地方整備局、または賃貸住宅管理業法ポータルサイト
    • 宅建業者の勧誘:免許を出している都道府県または地方整備局
    • 一般的な消費者トラブル:消費者ホットライン 188(国民生活センター)

    記録として残すのは、日時・会社名・担当者名・断った日と使った言葉です。「いつ断ったか」が争点になります。



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    この記事で見たとおり、「お断りします」と一度言えば、法律上は再勧誘が禁止されます(賃貸住宅管理業法29条・国土交通省令)。連絡が来ること自体は避けられませんが、止め方は決まっています。タウンライフの土地活用は、活用プランと費用・見積りを複数社から無料で取り寄せられるサービスです(同社の説明)。

    ①一括で複数社に依頼する形です。1社だけ選ぶと提案書は届きません。成果条件がそう決められています。
    ②土地の条件や地域によっては、紹介できる会社が見つからないことがあります。その場合は提案が届きません。
    ③申し込むと、本人確認の連絡が入ります。知らない番号でも出てください。ここで確認が取れないと先に進みません。
    ④届くのは「プラン」と「見積り」であって、確定した収益ではありません。
    ⑤電話をまったく受けたくないなら、請求しないでください。この記事に書いたのは「止め方」であって「来なくする方法」ではありません。

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    よくある質問

    ここは条文の番号まで書きます。相手に「何条の話ですか」と聞かれても答えられる状態にしておくのが目的です。

    Q. 罰則はありますか。

    A. あります。ただし、どの行為に罰則が付いているかは正確に知っておいてください。「しつこい勧誘=すぐ罰金」ではありません。

    行為 条文 罰則
    故意に事実を告げない/不実のことを告げる(勧誘時、または解除を妨げるため) 法29条1号 6月以下の拘禁刑 若しくは 50万円以下の罰金(併科あり)(法42条2号)
    その他、相手方の保護に欠ける行為として国土交通省令で定めるもの(しつこい勧誘など) 法29条2号 直接の罰則はありません。国土交通大臣による指示・業務停止等の監督処分の対象です
    契約前・契約時の書面を交付しない/虚偽記載 法30条1項・31条1項 50万円以下の罰金(法43条)
    登録を受けずに賃貸住宅管理業を営む 法3条1項 1年以下の拘禁刑 若しくは 100万円以下の罰金(併科あり)(法41条)

    出典:e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(2026年8月16日確認)

    ここが実務上いちばん効きます。「しつこい」だけでは刑事罰にならなくても、監督処分の対象にはなります。そして嘘をつかれた場合は、刑事罰のある行為です。言われた内容を記録しておく理由が、ここにあります。

    Q. 何を記録しておけばいいですか。

    A. 4つだけで足ります。1行ずつメモしてください。

    日時 8月16日 20時10分
    会社名・担当者名 ○○ホーム・△△
    言われた内容 「家賃は下がりません」「30年保証です」など、判断に影響する言葉はそのまま書き取る
    断った日 8月10日に「契約しません」と伝えた

    3つ目がいちばん重要です。法29条1号は「故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」を禁じています。言われた言葉が残っていなければ、この条文は使えません。

    Q. どう言えば「断った」ことになりますか。

    A. 「契約しない」という意思が伝わる言い方でなければ意味がありません。

    これでは断ったことにならない これなら断ったことになる
    「検討します」 「御社とは契約しません。今後の電話・訪問は不要です。」
    これだけで足ります。理由を説明する必要はありません
    「今は忙しいので」
    「また連絡します」
    「家族と相談します」

    メールやフォームで断る場合も同じです。文字で残るぶん、こちらのほうが確実です。

    Q. 建設会社からの電話も規制の対象ですか。

    A. サブリース(特定賃貸借契約)の勧誘なら、対象です。法29条は特定転貸事業者「等」を名あて人にしており、特定転貸事業者が勧誘を行わせる者(勧誘者)も含まれます(法28条の定義)。「うちは建設会社なので関係ありません」は通りません。

    出典:e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(2026年8月16日確認)

    Q. 土地活用の一括請求でも宅建業法で守られますか。

    A. 話の内容によって、かかる法律が変わります。

    サブリース・賃貸経営の提案 賃貸住宅管理業法(誇大広告28条/不当な勧誘29条/書面30条・31条)
    売却の話になったとき 宅地建物取引業法。契約しない旨の意思を表示した相手への勧誘の継続は禁止されています

    途中で話が「売却」に変わることは、よくあります。売却側の断り方と相談先は営業電話の止め方に、免許番号から行政庁を見分ける表つきでまとめました。

    Q. それでも電話を減らしたいときは。

    A. 申し込みの段階で、連絡手段を指定しておくのがいちばん効きます。

    連絡はメールのみでお願いします。電話でのご連絡はご遠慮ください。
    どうしても電話が必要な場合は、平日18時以降にお願いします。

    「電話しないで」だけだと、会社側が困って結局かけてきます。代わりの手段と、やむを得ない場合の条件まで書くと通りやすくなります。

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    電話の扱いを決めてから、提案を取り寄せる

    連絡のしかたに差があることは、ここまでで見たとおりです。取り寄せると決めたなら、電話をどうしたいかを先に決めてから申し込むほうが、あとの負担が軽くなります。

    ①一括で複数社に依頼する形です。1社だけ選ぶと提案書は届きません。成果条件がそう決められています。
    ②地域や物件の条件によっては、提案できる会社が見つからないことがあります。その場合は提案書が届きません。
    ③届くのは「提案書」であって、売れる価格でも確定した金額でもありません。
    ④申し込むと、各社から連絡が入ります。連絡の受け方を先に決めておいてください。
    ⑤すでに方針が決まっているなら、請求しなくてかまいません。迷っている段階の材料です。

    電話の受け方を決めてから、土地活用プランを請求する(無料)

    壊す場合の費用は実家の解体費用と全国の解体補助金一覧で、税金の側は空き家の3,000万円特別控除で確認できます。持ち続ける場合の年額は空き家の維持費にまとめました。

    この記事で確認できなかったこと

    • 土地活用の営業電話に関する統計:何社に請求すると平均何件の電話が来るか、といった公的データは見つかりませんでした。本記事では件数の目安を書いていません
    • サブリース関係の相談件数:国民生活センターに投資用マンションやリースバックの発表資料はありますが、土地活用・サブリースに特化した年次の相談件数は確認できませんでした
    • 法42条〜44条の実際の適用件数:罰則規定は条文で確認できましたが、実際に適用された件数の公表資料は見つかりませんでした
    • 建設会社が「勧誘者」に当たらないケースの範囲:ガイドラインは「通常は該当する」としていますが、サブリースを伴わない純粋な建築請負のみの提案がどう扱われるかまでは、資料からは確定できませんでした

    本記事は一般的な情報提供であり、個別の法律相談ではありません。実際のトラブルにあたっては、消費者ホットライン(188)または弁護士にご相談ください。

    あわせて読みたい

  • 相続した土地の使い道5つを比較|数字が出せる選択肢と、出せない選択肢

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    最終更新:2026年8月16日

    結論だけ先に

    • 土地活用の利回りとして流通している数字の多くに、公的な裏付けがありません。この記事では、数字がある部分とない部分をはっきり分けています。
    • 5つの選択肢のうち、売却だけは事前に金額をかなり正確に知ることができます。実際の着地は査定額の86〜87%あたりです。
    • 更地にすると住宅用地の特例がなくなります。建てて貸す選択は金額が最も大きく、やめるのが難しくなります。戻れる順に検討してください。

    根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

    この記事の立場

    相続した土地の活用法を比較する記事はたくさんあります。そのほとんどが、駐車場・トランクルーム・アパートの「利回り」を数字で並べています。

    この記事では、それらの数字を書きません。 探しましたが、国や自治体が公表している全国統計が存在しないからです。民間各社が出している「利回り◯%」は、立地・稼働率・初期費用の前提が公開されていないため、比較の土台になりません。

    代わりにこの記事では、公的な数字が存在する部分と、存在しない部分をはっきり分けます。 存在しない部分は「調べようがない」ではなく、「複数社に見積もりを出させて比べるしかない」という結論になります。


    まず、あなたは少数派ではありません

    国土交通省の令和5年世帯土地統計(令和5年10月1日現在)に、こういう数字があります。

    項目 数値
    現住居の敷地以外の土地を所有する世帯 775万世帯(全世帯の13.9%)
    そのうち「現住居の敷地以外の宅地など」の取得方法 相続・贈与が59.1% で最多
    利用していない空き地 1,283㎢(同区分の 30.7%)

    出典:国土交通省「令和5年世帯土地統計 結果の概要」(令和7年9月30日)(2026年8月16日確認)

    相続で手に入れた土地の、およそ3割が使われないままです。持て余しているのはあなただけではありません。


    5つの選択肢

    # 選択肢 初期費用 元に戻せるか 公的な数字
    ① 何もしない(持ち続ける) 0円 — あり(固定資産税)
    ② 売る 0円 不可 あり(税制・成約価格)
    ③ 駐車場にする 小 戻せる なし
    ④ トランクルーム等を置く 中 戻せる なし
    ⑤ 建物を建てて貸す 大 実質困難 一部あり(税制)

    下にいくほど初期費用が増え、やめるのが難しくなります。 ①→⑤の順に検討するのが安全です。逆から入ると、戻れなくなります。


    ① 何もしない:コストは確定している

    「何もしない」も選択肢のひとつです。ただしゼロ円ではありません。

    固定資産税は課税標準額の1.4%(標準税率)、都市計画税は0.3%(制限税率)が上限です。

    出典:総務省「固定資産税の概要」(2026年8月16日確認)

    建物が建っている土地には住宅用地の特例があり、課税標準が下がります。

    区分 固定資産税 都市計画税
    小規模住宅用地(200㎡以下) 課税標準 1/6 課税標準 1/3
    一般住宅用地(200㎡超) 課税標準 1/3 課税標準 2/3

    空き地(更地)にはこの特例がありません。 詳しくは解体すると固定資産税は本当に6倍かにまとめました(結論だけ書くと、負担調整措置があるため6倍にはならず、最大4.2倍です)。

    放置には行政上のリスクもあります

    建物がある場合、管理を怠ると「管理不全空家等」「特定空家等」に指定される可能性があります。勧告を受けると住宅用地の特例が外れます。

    令和5年度の全国実績はこうなっています。

    区分 措置 件数
    管理不全空家等 勧告 0件
    特定空家等 助言・指導 4,246件
    特定空家等 勧告 534件
    特定空家等 行政代執行 33件

    出典:国土交通省「空き家対策の現状について」(令和6年12月4日)(2026年8月16日確認)

    管理不全空家の勧告は全国で0件です。すぐに何かが起きるわけではありません。ただし特定空家の勧告は534件出ています。詳細は空き家を放置するとどうなるかへ。

    ①が向いている人:判断材料が揃っていない人。慌てて動くより、1年分の固定資産税を払って考えるほうが安いことは多いです。


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    その「はっきりした数字」は、調べれば今日わかります

    売るという選択肢だけは、金額が先に出ます。持つ・貸すと比べるにも、売った場合の数字が1つないと比較になりません。

    先に断っておきます。買取は、仲介で売れた場合より手取りが下がります。それでも見る価値があるのは、比較対象の数字が手に入るからです。運営は株式会社ネクサスプロパティマネジメント(宅地建物取引業免許:国土交通大臣(1)第10311号)。同社は「個人情報の入力は不要、匿名のまま利用でき、営業電話もありません」という匿名のAI査定も公開しています(入力3項目・最短30秒/2026年6月20日 同社発表)。まだ売ると決めていない段階なら、まず匿名のほうで桁だけ確かめてください。ただし匿名で出るのは機械的な概算です。実際の金額を知るには、連絡先を入れて査定を申し込む必要があります(申し込めば担当者から連絡が来ます)。

    ラクウルで買取価格を出してもらう(無料)

    売ると決めてから調べるものではありません。決めるために調べるものです。年間の維持費は空き家の維持費を実額で積み上げた記事にまとめました。

    ② 売る:数字がいちばんはっきりしている

    5つのなかで、唯一「いくらになるか」を事前にかなり正確に知ることができる選択肢です。

    相場の把握

    不動産流通機構(レインズ)の2026年7月度・首都圏中古戸建のデータです。

    項目 金額 前年同月比
    成約価格 3,933万円 +0.6%
    新規登録価格 4,846万円 +11.4%
    成約件数 1,738件 ▲1.9%

    出典:東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch(2026年7月度)」(2026年8月16日確認)

    売出価格と成約価格の差が広がっています。査定額の86〜87%あたりが着地点と見ておくと現実的です。詳しくは実家の売却相場を調べる3つの方法へ。

    税制上の期限が2つあります

    特例 内容 期限
    空き家の3,000万円特別控除 譲渡所得から最大3,000万円控除 令和9年12月31日まで
    低未利用土地等の100万円控除 譲渡所得から100万円控除 令和10年12月31日まで

    空き家の3,000万円控除は、2025年以降に相続した方にとって、個別の3年期限より制度の期限のほうが先に来ます。つまり実質的な期限は2027年12月31日です。

    出典:国税庁 No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(2026年8月16日確認)

    低未利用土地等の100万円控除は、令和8年度税制改正で3年延長され、令和8年1月1日〜令和10年12月31日が適用期間になりました。

    要件 内容
    譲渡対価 500万円以下(市街化区域・用途地域指定区域等は800万円以下)
    所有期間 譲渡した年の1月1日時点で5年超
    その他 都市計画区域内 / 親族間譲渡は不可 / 譲渡後に利用されること

    出典:国税庁 No.3226/国土交通省「令和8年度税制改正概要」(令和7年12月)(2026年8月16日確認)

    安く売らざるを得ない土地ほど、この控除が効きます。 500万円で売れた土地の利益から100万円引けるのは小さくありません。利用実績は令和4年1〜12月で確認書交付4,842件、譲渡前の状態は空き地が55%でした。

    出典:国土交通省「低未利用土地の利活用促進に向けた長期譲渡所得100万円控除制度の利用状況について」(2026年8月16日確認)

    売る前に必ず確認すること

    接道です。建築基準法43条は「建築物の敷地は、道路に2メートル以上接しなければならない」と定めています。これを満たさない土地は、解体すると再建築ができません。 更地にしてから気づくと取り返しがつきません。詳しくは古家付き土地か更地かへ。

    ②が向いている人:使う予定が明確にない人。維持費と固定資産税が確定的に出ていく一方、値上がりを見込む根拠がない場合。


    ③ 駐車場:戻せるが、税制上の優遇はほぼない

    初期投資が小さく、やめたくなったらすぐやめられるのが利点です。舗装しない青空駐車場なら、原状回復もほぼ不要です。

    ただし、税制上のメリットはほとんどありません。

    • 住宅用地の特例は使えません(建物がないため)
    • 相続税の小規模宅地等の特例は「貸付事業用宅地等」として200㎡まで50%減にとどまります(後述)

    そしてこの記事では駐車場の利回りを書きません。 需要は完全に立地依存で、公的な統計が存在しないためです。近隣の月極駐車場の募集価格を実際に見て回るのが、いちばん確実な調査方法です。

    ③が向いている人:駅や商業施設に近く、周辺の月極駐車場が埋まっている土地を持っている人。まず近隣の空き状況を自分の目で確認してください。


    ★小規模宅地等の特例の入口は「建物又は構築物の敷地」です

    駐車場に税制上の優遇がほぼない理由は、条文の入口にあります。

    租税特別措置法第六十九条の四第一項
    個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、当該相続の開始の直前において、……被相続人等……の事業……の用又は居住の用……に供されていた宅地等……で財務省令で定める建物又は構築物の敷地の用に供されているもののうち政令で定めるもの(特定事業用宅地等、特定居住用宅地等、特定同族会社事業用宅地等及び貸付事業用宅地等に限る。……)がある場合には……

    出典:e-Gov法令検索 租税特別措置法第69条の4第1項(全文を開いて確認/2026年9月3日)。括弧書きの一部を省略しています

    「建物又は構築物の敷地の用に供されているもの」。これが特例の入口です。土地そのものを貸しているだけでは、この文言に当たりません。

    ただし、何が「構築物」に当たるかは財務省令が定めています。この記事では、その財務省令の中身までは確認していません。アスファルト舗装や砂利敷きがどう扱われるかは、税理士または税務署に確認してください。条文から言えるのは「建物か構築物の敷地であることが前提になっている」というところまでです。

    そして仮に入口を通っても、駐車場は貸付事業用宅地等になるので、1項2号の「百分の五十」、2項3号の「二百平方メートル以下」です。住んでいた土地(20%・330㎡)とは別の枠になります。

    ④ トランクルーム等:数字が最も出てこない

    コンテナ型のトランクルームなどを設置する方法です。事業者が設備を用意し、土地を借りる形態もあります。

    この選択肢について、この記事では判断材料を提供できません。 稼働率も利回りも公的統計がなく、事業者ごとの条件差が大きすぎるためです。

    確認すべきなのは次の点です。

    • 用途地域によって設置できない場合があります(自治体の都市計画課へ)
    • コンテナが「建築物」に該当する場合、建築確認が必要です
    • 撤退時の原状回復費用が誰の負担か、契約書で確認してください

    ④が向いている人:③④は「やめられる」点が共通しています。まず③を検討し、駐車場需要がない立地なら④を、という順が現実的です。


    ★コンテナも「建築物」になり得ます(建築基準法2条1号)

    トランクルームの数字が出てこない理由のひとつは、そもそも設置できるかどうかが土地によって違うことです。その入口の条文を置きます。

    建築基準法第二条第一号
    建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設……をいい、建築設備を含むものとする。

    同法第六条第一項
    建築主は、第一号若しくは第二号に掲げる建築物を建築しようとする場合……又は第三号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事等の確認……を受け、確認済証の交付を受けなければならない。

    出典:e-Gov法令検索 建築基準法第2条第1号・第6条第1項(全文を開いて確認/2026年9月3日)。括弧書きの一部を省略しています

    「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」。コンテナには屋根も壁もあります。土地に定着していれば、この定義に当たります。「置いてあるだけ」に見えても、条文が見ているのは定着しているかどうかです。

    建築物なら、6条1項の確認が要ることがあります。そして建てられる用途は用途地域で決まり、建ぺい率・容積率もかかります。「更地だから何でも置ける」ではありません。

    ただし、どのコンテナが「土地に定着する」に当たるかの判断は、条文だけでは決まりません。基礎の有無や設置方法によります。この記事は、その判断基準にはあたれていません。設置前に必ず自治体の建築指導課に確認してください。

    置くだけでも、建築物のことがあります 土地に定着し、屋根と壁がありますか はい 建築物にあたる 確認が要ることも いいえ あたりません 定着がなければ

    ⑤ 建物を建てて貸す:金額が最も大きく、戻れない

    アパート・戸建て賃貸などです。5つのなかで唯一、大きな借入を伴う可能性がある選択肢です。

    税制上のメリットは実在します

    • 貸家建付地の評価減:自用地価額 − 自用地価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合。借家権割合は令和6年分で全都道府県一律30%
    • 小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等):200㎡まで50%減

    出典:国税庁 No.4614/No.4124(2026年8月16日確認)

    ただし注意点が3つあります。詳細は土地活用で相続税は本当に下がるのかにまとめました。

    1. 効くのは相続のとき。すでに相続済みの方の今回の税額は変わりません
    2. 特定居住用(80%・330㎡)が使える土地なら、貸すと50%・200㎡に下がります
    3. 相続開始前3年以内に新たに貸し始めた土地は原則対象外です

    貸すと消えるものがあります

    実家をいったん賃貸に出すと、空き家の3,000万円特別控除は使えなくなります。 相続時から譲渡時まで、事業・貸付・居住の用に供されていないことが要件だからです。控除額3,000万円 × 税率20.315% で、失う金額は最大約609万円になり得ます。

    出典:国税庁 No.3306(2026年8月16日確認)

    「とりあえず数年貸してみる」は、この控除を捨てる判断です。

    数字は自分では出せません

    建築費・想定家賃・入居率は、事業者に出させる以外に知る方法がありません。 そして1社の事業計画だけでは、その家賃設定が強気なのか堅めなのかを判断できません。

    判断できるのは、同じ土地に対する複数社のプランを並べたときだけです。家賃想定が社によって2割違う、といったことは実際に起こります。

    ⑤が向いている人:土地の立地に賃貸需要があり、空室でも返済を続けられる資力があり、10年以上の運用を前提にできる人。

    「戻れない」を作る3つの条文 期間が来ても終わらない 26条1項。みなし更新 自動で続く 拒むには正当の事由 28条。事情を考慮します 簡単ではない 不利な特約は無効 30条。契約書に書いても 効きません 例外は定期建物賃貸借(38条)だけです

    ★「戻れない」の正体は、借地借家法にあります

    この記事は⑤を「戻れない」と書いてきました。その根拠は、3つの条文です。

    借地借家法第二十六条(建物賃貸借契約の更新等)
    1 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知……をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
    2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。

    同法第二十八条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
    建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人……が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

    同法第三十条(強行規定)
    この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

    出典:e-Gov法令検索 借地借家法第26条・第28条・第30条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    この3つが重なると、こうなります

    ①黙っていると、契約は自動的に続きます(26条1項)。「更新したものとみなす」。しかも「その期間は、定めがないもの」——期間の定めのない賃貸借になります。

    ②通知するには、正当の事由が要ります(28条)。条文は考慮する事情を列挙しています。「建物の使用を必要とする事情」「従前の経過」「利用状況」「現況」、そして「財産上の給付をする旨の申出」——立退料です。立退料も考慮の一要素として条文に書かれています。ただし、それだけで正当の事由が認められるとは書かれていません。

    ③契約書に書いても、無効になります(30条)。「賃借人に不利なもの」は無効。「10年で必ず明け渡す」と契約書に書いても、それだけでは効きません。

    解約を申し入れる場合も、27条1項により「解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する」と定められています。思い立った日に終われるものではありません。

    終わらせるにも、順番があります 1 満了の1年前 ここから通知できます。26条1項 2 満了の6か月前 ★ここまでに通知しないと更新 3 正当の事由 28条。無ければ通知できません 4 解約の申入れ 27条1項。6か月経って終了

    ★更新のない契約もあります(38条・定期建物賃貸借)

    借地借家法第三十八条(定期建物賃貸借)
    1 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。
    3 ……建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、……契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
    5 建物の賃貸人が第三項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
    6 ……期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間に……終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。

    出典:e-Gov法令検索 借地借家法第38条(全文を開いて確認/2026年9月3日)。第2項・第4項・第7項以下は省略しています

    これが「戻れる」ほうの契約です。ただし条件が厳しく書かれています。書面でなければならず(1項)、あらかじめ別の書面で説明しなければならず(3項)、説明しなければ「更新がない」という定めそのものが無効になります(5項)。

    そして6項——期間が1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに通知しなければ、終了を主張できません。普通の賃貸借と同じ通知期間が、ここにも出てきます。

    「建てて貸す」を検討するなら、どちらの契約にするかを最初に決めてください。あとから変えることはできません。

    戻れる契約は、最初に選びます 普通の賃貸借 黙っていると更新 拒むには正当の事由 不利な特約は無効 26条・28条・30条 定期建物賃貸借 更新がありません 書面でないと不可 事前の説明も必要 38条1項3項5項 あとから切り替えることはできません

    判断の順番

    1. 相続税がかかる規模か(基礎控除 = 3,000万円+600万円×法定相続人の数)
      → かからないなら、相続税対策としての活用は検討不要です
    2. 接道を満たしているか(2m以上)
      → 満たさないなら、解体・建築の選択肢が消えます
    3. 売った場合の手取りを試算する
      → これが比較の基準線になります。ここが分からないと他と比べられません
    4. その基準線を上回る活用案があるか
      → ③④⑤を検討。上回らなければ②か①です
    5. 戻せない選択肢は最後に
      → 売却と建築は不可逆です

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    数字が出てこない選択肢だけ、出してもらう

    この記事では、売った場合の数字がいちばんはっきりしていて、建てて貸す場合の数字がいちばん出てこないと書きました。その出てこない側を、あなたの土地について具体的な金額にする方法があります。タウンライフの土地活用は、アパート・マンション・駐車場などの活用プランと費用・見積りを複数社から無料で取り寄せられるサービスです(同社の説明)。当サイトは、あなたの地域に何社いるかを確認していません。

    ①一括で複数社に依頼する形です。1社だけ選ぶと、提案書は届きません。成果条件がそう決められています。
    ②土地の条件や地域によっては、紹介できる会社が見つからないことがあります。その場合は提案が届きません。
    ③申し込むと、本人確認の連絡が入ります。知らない番号でも出てください。ここで確認が取れないと先に進みません。
    ④届くのは「プラン」と「見積り」であって、確定した収益ではありません。提案書に載る利回りは、その会社の想定です。
    ⑤貸すと決める前に、この記事の「判断の順番」に戻ってください。建てて貸す選択肢だけは、あとから戻れません。

    複数社にまとめて土地活用プランを請求する(無料)

    売った場合の数字は不動産一括査定サイトの比較で出せます。この2つを並べて初めて比較になります。各社の比較は土地活用プラン一括請求サービスの比較、連絡の受け方は断り方のルールにまとめました。

    よくある質問

    ここは「どの数字なら信じてよいか」を基準に答えます。

    Q. 「相続税対策になります」と言われました。本当ですか。

    A. 3つ確かめてください。3つとも当てはまって、はじめて成り立つ話です。

    1 そもそも相続税がかかるのか。基礎控除の範囲に収まるなら、対策する対象がありません
    2 3年を超えて貸し続けられるのか。小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等からは「相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等」が除かれます。直前に建てても効きません
    3 居住用の特例を失わないか。特定居住用宅地等は330㎡・80%、貸付事業用宅地等は200㎡・50%。貸すと面積も割合も下がります

    出典:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(2026年8月16日確認)

    税額が下がっても、それ以上に手元の資産が減るなら、意味がありません。詳しくは相続税と土地活用の記事で条文まで示しました。

    Q. 利回りの数字はあてになりますか。

    A. 提案書の利回りには、公的な裏づけがありません。当サイトが調べた限り、土地活用全般の利回りについて、国や自治体が公表している統計は見つかりませんでした。

    見るべきは利回りではなく、この3つです

    • 空室になったときの数字が入っているか。満室前提の試算は、いちばん都合のよい場合だけを並べたものです
    • 何年目に何を修繕する前提か。大規模修繕を入れていない長期収支は、あてになりません
    • やめるときにいくらかかるか。入居者がいる建物は、簡単には壊せません

    Q. いちばん確実に金額が分かる選択肢はどれですか。

    A. 「売る」です。売却は一度きりの金額が、査定という形で先に出ます。賃料収入のように何十年もの予測を積み上げる必要がありません。

    だから当サイトは、まず売却の数字を取ることをすすめています。売らない判断をするためにも、その数字は要ります。調べ方は売却相場を自分で調べる手順にあります。

    Q. 駐車場にすれば税金は安くなりますか。

    A. 逆です。住宅用地特例が外れるので、土地の固定資産税は上がります。

    更地や駐車場には住宅用地特例(200㎡以下は価格の6分の1)が適用されません。「戻せる」という点では駐車場に価値がありますが、税制上の優遇を期待して選ぶものではありません。税額がどう動くかは解体後の固定資産税を計算した記事で自分で出せます。

    Q. サブリースを勧められました。何を確認すればいいですか。

    A. 書面が2回出てくるかどうかです。これは法律上の義務です。

    契約する前 特定転貸事業者は、契約を締結するまでに書面を交付して説明しなければなりません(法30条1項)
    契約したとき 遅滞なく、所定の事項を記載した書面を交付しなければなりません(法31条1項)
    違反したら 書面を交付しない、記載しない、虚偽の記載をした場合は50万円以下の罰金(法43条)

    出典:e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(2026年8月16日確認)

    口頭だけで進めようとする相手は、その時点で法令違反です。「30条の書面をください」と言えば足ります。営業電話への対処は土地活用の営業電話を止める方法にまとめました。

    Q. 建物を建てて貸すのはどうですか。

    A. 金額がいちばん大きく、そして戻れません。入居者が入れば、あなたの都合だけで壊すことも売ることもできなくなります。

    だから最後に検討するものです。売った場合の手取りを知ってから比べてください。順番を逆にすると、比較の基準がなくなります。

    Q. 売るなら使える税の特例はありますか。

    A. 相続した実家なら、条件を満たせば3,000万円の特別控除が使えることがあります。使えるかどうかで手取りが数百万円変わります。要件はこの記事にまとめました。売ったあとでは間に合わない要件があるので、売る前に読んでください。

    売る・貸す・持つを10年の手取りで比べる活用プランの取り寄せ方を見るまず売却の数字を取る

    この記事で確認できなかったこと

    • 駐車場・トランクルーム・太陽光の利回り:国・自治体が公表する全国統計は見つかりませんでした。本記事では数字を書いていません
    • アパート経営の空室率:同様に、全国統計は確認できませんでした
    • 土地活用の選択肢別の実施件数:どの活用法がどれだけ選ばれているかの統計は見つかりませんでした
    • 令和7年分・令和8年分の借家権割合:確認できたのは令和6年分の「全都道府県30%」までです
    • コンテナ型トランクルームの建築確認の要否:建築基準法2条1号の「建築物」の定義(土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの)と6条1項の確認申請の条文は、e-Gov法令検索で全文を確認して本文に引用しました。ただし、どのコンテナが「土地に定着する」に当たるかの判断基準(基礎の有無・設置方法)と、自治体ごとの運用の差は確認できていません。設置前に必ず自治体へご確認ください
    • 租税特別措置法69条の4第1項の「財務省令で定める建物又は構築物」の中身:法律の条文が「建物又は構築物の敷地の用に供されているもの」を前提としていることは確認しましたが、財務省令が何を構築物としているかにはあたれていません

    本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・法律相談ではありません。実際の判断にあたっては、税理士・宅地建物取引士・所轄の税務署等にご相談ください。

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  • 実家が「負動産」だったら相続放棄すべきか|判断基準と、2023年に変わったこと

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    最終更新:2026年8月15日

    結論だけ先に

    • 期限は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月。ただし家庭裁判所への伸長申立てで延ばせます。遠方の実家はこの典型例です。
    • 相続財産の全部または一部を「処分」すると放棄できなくなります。放棄の可能性が少しでもあるなら、財産に手を触れないでください。
    • 2023年4月の民法改正で、放棄後の管理義務は「放棄の時に現に占有している人」だけになりました。古い解説はこの点が正確ではありません。

    根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

    この記事を書いた理由

    「相続放棄しても、実家の管理義務は残る」——長くそう説明されてきました。

    2023年4月の民法改正で、この説明は正確ではなくなりました。

    改正後の民法940条は、保存義務を負う人を「放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているとき」に限定しています。実家に住んでいなかった相続人が、放棄後も無期限に管理義務を負う——という従来の理解は、条文上変わりました。

    この記事では、①相続放棄が増えている実態、②期限と、うっかり放棄できなくなる行為、③改正後の管理義務、④放棄以外の出口(国庫帰属制度の実績)、⑤判断の順序——を、一次情報にもとづいて整理します。


    1. 相続放棄は、毎年増えています

    最高裁判所「司法統計年報 家事編」第95表「相続の放棄の申述の受理」の全国総数です。

    年 新受件数
    令和4年(2022) 260,497件
    令和5年(2023) 282,785件
    令和6年(2024) 308,753件

    出典:令和6年 司法統計年報 家事編(PDF)/令和5年/令和4年(2026年8月15日確認)

    2年で約4万8,000件、18.5%の増加です。 年間30万件を超えました。

    相続放棄は特殊な選択ではありません。相続を「もらうもの」ではなく「引き受けるもの」として計算した結果、引き受けないと判断する人が、毎年増えています。

    相続放棄は、毎年増えています 令和4年(2022) 260,497件 令和5年(2023) 282,785件 令和6年(2024) 308,753件 2年で約4万8,000件・18.5%の増加

    2. 期限は3か月。ただし伸ばせます

    相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認・限定承認・放棄のいずれかを選ばなければなりません(民法915条1項)。

    3か月で資料が揃わない場合は、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立て」ができます。

    出典:裁判所「相続の放棄の申述」(2026年8月15日確認)

    起算点は「死亡日」ではありません

    条文は「自己のために相続の開始があったことを知った時」です。疎遠な親戚の相続で、債権者からの通知で初めて知った——という場合、そこが起算点になり得ます。

    遠方の実家で、財産の全容が3か月では分からない。これは伸長申立ての典型的な場面です。 間に合わないと思ったら、まず期間を伸ばしてください。

    3か月の数え方と、伸ばし方 相続の開始を知った時 死亡日ではありません(民法915条1項) 3か月以内に選ぶ 単純承認・限定承認・放棄のどれか 間に合わないなら 家庭裁判所に期間伸長を申し立てる

    3. うっかり「放棄できない」状態になる行為があります

    民法921条は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときなどに、単純承認をしたものとみなすと定めています(法定単純承認)。

    処分にあたる行為をしてしまうと、もう放棄できません。

    ここは正直に書きます

    どの行為が「処分」に該当するかについて、裁判所や法務省が一般向けに公表した公式の解説は、見つけられませんでした。

    裁判所の「相続の放棄の申述」ページにも、単純承認という用語の説明はありますが、具体例(遺品整理はどうか、葬儀費用の支出はどうか、預金の解約はどうか)は記載されていません。

    インターネット上には具体例を挙げた記事が数多くありますが、いずれも裁判例や実務の集積にもとづく整理であって、行政機関の公式見解ではありません。

    実務上、安全側に倒すなら

    放棄する可能性が少しでもあるなら、財産に手を触れないでください。

    • 実家の家財を処分しない
    • 預金を引き出さない・解約しない
    • 不動産の名義変更をしない
    • 賃料や保険金を受け取らない

    判断に迷う行為があるなら、動く前に弁護士か司法書士に確認してください。順序が逆になると取り返しがつきません。


    4. 2023年改正:管理義務は「現に占有している人」だけになりました

    ここがこの記事のいちばん重要な部分です。

    改正前(旧940条)

    相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

    この条文の問題は、法制審議会の部会資料でこう指摘されていました。

    法定相続人の全員が相続の放棄をし、次順位の相続人が存在しない場合や、相続放棄者が相続財産を占有していない場合等において、相続放棄者が管理継続義務を負うかどうかや、その義務の内容は、必ずしも明らかではない

    つまり、全員が放棄したら誰が管理するのか、条文からは読み取れなかったのです。ここから「放棄しても管理義務は残る」という説明が広がりました。

    改正後(現行940条・2023年4月1日施行)

    相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

    出典:法務省 新旧対照条文(PDF)/法制審議会民法・不動産登記法部会 資料29(PDF)(2026年8月15日確認)

    改正の理由として、部会資料は「管理に一切関与していない相続財産に属する財産についてまで保存義務を負う」ことは相当でない、としています。

    変わった点を整理します

    改正前 改正後
    義務を負う人 放棄した人(範囲が不明確) 放棄時に現に占有している人のみ
    義務の内容 管理の継続 保存
    義務の終期 次の相続人が管理を始められるまで 相続人または相続財産清算人に引き渡すまで

    実務上の意味:

    • 遠方に住んでいて、実家に一度も住んでいない相続人が放棄した場合 → 「現に占有」していないため、条文上の保存義務は生じません
    • 実家に同居していた相続人が放棄した場合 → 引き渡すまでの保存義務が残ります

    古い記事や、改正を反映していない解説は、いまも「放棄しても管理義務が残る」と書いています。条文は2023年4月1日に変わっています。

    2023年改正:管理義務は誰に残るか 放棄した時、その家に住んでいましたか はい 保存義務が残る 引き渡すまでの間 いいえ 保存義務はない 2023年4月施行の940条

    5. 全員が放棄したら、家はどうなるのか

    誰も相続しない財産は、家庭裁判所が選任する相続財産清算人(2023年改正前の「相続財産管理人」)が管理・清算します。

    申立てには予納金が必要になる場合があります。裁判所の公式説明はこうです。

    相続財産の内容から,相続財産清算人が相続財産を管理するために必要な費用に不足が出る可能性がある場合には,相当額を予納金として納付していただくことがあります。

    出典:裁判所「相続財産清算人の選任」(2026年8月15日確認)

    金額の目安は、裁判所の公式ページには書かれていません。 「30万〜100万円」という数字をよく見かけますが、裁判所の公表資料では確認できませんでした。事案によって異なるため、申立てを検討する段階で家庭裁判所に確認するのが確実です。


    6. 放棄以外の出口:相続土地国庫帰属制度

    2023年4月27日施行の制度です。相続で取得した土地を、国に引き取ってもらえます。

    使えない土地・承認されない土地

    申請自体ができない(却下事由)

    • 建物がある土地(← 実家の場合、これが最初の壁です)
    • 担保権・使用収益権が設定された土地
    • 他人の利用が予定されている土地
    • 土壌汚染がある土地
    • 境界が不明確・所有権の存否や範囲に争いがある土地

    申請はできるが承認されない(不承認事由)

    • 一定の勾配・高さの崖があり、管理に過分な費用・労力がかかる土地
    • 管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
    • 除去が必要な有体物が地下にある土地
    • 隣接地所有者等との紛争解決なしに管理・処分ができない土地
    • その他、通常の管理・処分に過分な費用・労力がかかる土地

    出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」(2026年8月15日確認)

    負担金

    法務省のパンフレットには「基本は20万円」と明記されています。土地の種目や所在地域によっては面積に応じて算定される場合があります。

    出典:法務省 パンフレット(PDF)/負担金のページ(2026年8月15日確認)

    実績:申請の半分は帰属していません

    法務省が公表している統計(令和8年6月30日時点・速報値)です。

    区分 件数
    申請 5,698件(田・畑2,226/宅地1,973/山林868/その他631)
    帰属(承認) 2,885件(宅地1,073/農用地925/森林193/その他694)
    却下 83件
    不承認 93件
    取下げ 1,063件

    出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(2026年8月15日確認)

    注目すべきは取下げ1,063件です。 却下(83件)と不承認(93件)を合わせた176件よりはるかに多い。審査の過程で要件を満たさないと分かり、自ら取り下げたケースが相当数あると読めます。

    実家に使う場合の現実的な手順:建物があると申請できないため、先に解体する必要があります。解体費を出し、負担金20万円を払い、それでも承認される保証はない——という制度です。

    売れる可能性があるなら、まず売却を検討するのが順序です。実家の売却相場を調べる3つの方法から始めてください。


    7. 放棄しても受け取れるもの

    生命保険の死亡保険金は、受取人が指定されていれば、放棄しても受け取れます。

    国税庁 No.4114 は、死亡保険金の非課税限度額(500万円 × 法定相続人の数)について、「相続人(相続の放棄をした人や相続権を失った人は含まれません。)」が取得した場合に適用される、と説明しています。

    これは、放棄した人でも保険金自体は受け取れることを前提とした記述です(受け取れるが、非課税枠は使えない)。なお、非課税限度額を計算するときの「法定相続人の数」は、相続放棄がなかったものとして数えます。

    出典:国税庁 No.4114「相続税の課税対象になる死亡保険金」(2026年8月15日確認)

    「死亡保険金は受取人固有の財産だから相続財産ではない」という説明は広く行われていますが、裁判所・法務省による一般向けの公式解説は確認できませんでした。実際の判断は専門家にご確認ください。


    8. 放棄しないなら、登記の期限があります

    相続放棄をしない=相続するなら、相続登記の申請義務が発生します。

    • 施行日:令和6年(2024年)4月1日
    • 猶予期限:施行日より前に発生していた相続については、令和9年(2027年)3月31日まで
    • 過料:正当な理由なく怠ると10万円以下(不動産登記法164条1項)

    正当な理由の例(法務省Q&A):相続人が極めて多数で戸籍収集等に時間を要する/遺言の有効性や遺産の範囲に争いがある/申請義務者が重病等/DV被害者等で避難中/経済的困窮で登記費用を負担できない

    出典:法務省「相続登記の申請義務化」/Q&A(2026年8月15日確認)

    2027年3月31日には、登録免許税の免税措置2つも同時に期限を迎えます。この日に何が起きるかは相続登記の義務化で整理しています。


    9. 判断の順序

    ステップ1:3か月の期限を確認する

    間に合わないなら、まず期間伸長を申し立てる。

    ステップ2:財産に手を触れない

    放棄の可能性がある間は、家財の処分も預金の解約もしない。

    ステップ3:プラスとマイナスを並べる

    マイナス側で見落とされやすいもの

    • 借入・連帯保証(信用情報の開示請求で確認できます)
    • 滞納税・滞納管理費
    • 持ち続ける維持費(年間いくらか → 空き家の維持費)
    • 解体費(→ 実家の解体費用)

    プラス側で見落とされやすいもの

    ステップ4:売れるかどうかを先に確かめる

    放棄は、売れないと判断してからで遅くありません(3か月の期限内であれば)。逆に、放棄してしまえば売る権利も失います。

    順序としては——

    1. 相場を調べる(無料・電話なし → 手順)
    2. 匿名査定で桁を確認する(→ 一括査定の使い方と、営業電話の止め方)
    3. それでも値が付かないなら、放棄・国庫帰属を検討する

    ステップ5:迷ったら専門家へ

    相続放棄の可否、法定単純承認に該当するかの判断は、個別性が高く、間違えると取り返しがつきません。 弁護士・司法書士にご相談ください。当サイトは個別の法律判断を行いません。

    放棄を決める前に、並べておくもの マイナス側 連帯保証/滞納税/維持費/解体費 全部足す プラス側 実勢価格/解体補助金/3,000万円控除 全部足す 順序 売れるかどうかを先に確かめる 放棄は最後 放棄は、売れないと判断してからで遅くありません

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    放棄するかどうかは、値段がつくかどうかで決まります

    この記事の「判断の順序」で最初に来るのは、プラスの財産とマイナスの財産を数えることです。ところが実家の値段だけは、相場サイトを見ても出てきません。ラクウルは事故物件・再建築不可・共有持分・旧耐震・借地権・底地といった、ふつうの不動産会社が断る物件を専門に買い取る会社です。値段がつかないと思っていた家に金額が出ることがあるので、放棄を決める前に一度だけ確かめる価値があります。

    先に、いちばん大事なことを書きます。民法921条1号が単純承認とみなすのは「相続財産の全部又は一部を処分したとき」で、何が処分にあたるかの定義は条文にありません。売買契約を結べば処分にあたり、相続放棄はできなくなります。査定を申し込んで金額を聞いた段階を処分とした裁判例は、当サイトでは確認できていません。熟慮期間中にしてよいのは金額を知るところまでで、契約は「放棄しない」と決めてからにしてください。少しでも迷うなら、契約の前に家庭裁判所か弁護士に確認を。そのうえで、①買取は仲介より手取りが下がります。②問い合わせ後、電話またはメールで物件の状況を聞かれます。③LINEからの相談は対象外です。④売却を考えていない相談は対象外です。

    訳あり物件の買取価格を聞く(無料・全国対応)

    金額が出たら、この記事の「判断の順序」に戻ってください。値段がつくなら、放棄しないほうが手元に残る場合があります。つかないなら、売る・貸す・持ち続けるの比較と実家の解体費用で負担の総額を出してから、3か月の期限までに決めてください。

    よくある質問

    ここは条文の番号まで書きます。相続放棄はやり直しがきかない手続きなので、「たぶん大丈夫」で進めないための材料を置きます。

    Q. 3か月はいつから数えますか。

    A. 「自己のために相続の開始があったことを知った時」からです(民法915条1項)。亡くなった日からではありません。

    起算点がずれる場面が、条文に3つあります

    原則 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月(915条1項)
    先順位の相続人が放棄した場合 自分が相続人になったことを知った時から。兄弟姉妹に回ってくるケースでは、亡くなってから何か月も経っているのが普通です
    相続人が承認も放棄もせずに亡くなった場合 その人の相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時から起算(916条)
    相続人が未成年者・成年被後見人の場合 その法定代理人が知った時から起算(917条)

    出典:e-Gov法令検索「民法」(2026年8月16日確認)

    「もう3か月過ぎた」と思っても、あきらめる前に起算点を確かめてください。知った時がいつなのかで、結論が変わります。

    Q. 期限の3か月に間に合いません。

    A. 家庭裁判所に伸長を請求できます。条文に書かれています。

    民法915条1項のただし書はこうです。「この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる」。手続きの名前は「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立て」です。

    出典:e-Gov法令検索「民法」(2026年8月16日確認)

    遠方の実家で、財産の全容が3か月では分からない——これは典型的な場面です。間に合わないと分かった時点で、期限内に申し立ててください。期限を過ぎてからでは、この条文は使えません。

    Q. 放棄できなくなる行為はありますか。

    A. あります。条文に「処分」と書かれていて、そして「これは処分に当たらない」という除外も条文に書かれています。

    民法921条1号はこうです。

    相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

    つまり、条文が自分で例外を2つ挙げています。

    保存行為 財産の現状を維持する行為。これは処分に当たりません
    602条の期間を超えない賃貸 山林10年/それ以外の土地5年/建物3年/動産6か月。この範囲なら処分に当たりません

    出典:e-Gov法令検索「民法」(2026年8月16日確認)

    ただし、ここから先は正直に書きます。個別の行為が「保存行為」に当たるかどうかを、一般向けに列挙した公的な解説は見つけられませんでした。当サイトでは具体例のリストを載せません。「これは大丈夫と書いてあった」で放棄できなくなるほうが、はるかに損害が大きいからです。

    放棄の可能性が少しでもあるなら、財産に手を触れないでください。触れる必要があるなら、触れる前に弁護士か司法書士に確認してください。

    Q. 放棄した後なら、もう何をしても大丈夫ですか。

    A. 違います。放棄した後にも、単純承認とみなされる行為が条文にあります。

    民法921条3号は、限定承認または相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部もしくは一部を「隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき」は単純承認とみなす、と定めています。

    出典:e-Gov法令検索「民法」(2026年8月16日確認)

    「隠す」「勝手に使う」がここに入ります。実家に残っていた現金や貴金属を、放棄したあとに持ち出す——これで放棄が無かったことになり、借金も引き継ぐことになり得ます。放棄したら、その後も何も動かさないでください。

    Q. 放棄したら家の管理義務は残りますか。

    A. 2023年4月の民法改正で、対象が「放棄の時に現に占有している人」だけになりました。それ以前に書かれた解説は、この点が正確ではありません。

    民法940条1項の全文です。

    相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

    出典:e-Gov法令検索「民法」(2026年8月16日確認)

    この条文から読み取れることが3つあります

    誰が 放棄の時に現に占有していた人だけ。遠方に住んでいて実家に住んでいなかったなら、対象になりません
    いつまで 相続人または相続財産の清算人に引き渡すまで。終わりが条文に書かれています
    どの程度 「自己の財産におけるのと同一の注意」。自分の持ち物と同じように扱えばよく、それ以上は求められていません

    Q. 全員が放棄したら、家はどうなりますか。

    A. 放棄した人のうち「現に占有していた人」が、相続財産の清算人に引き渡すまで保存し続けることになります。

    答えは940条1項の中にあります。「相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間」という部分が、まさにその場面を指しています。全員が放棄すれば相続人はいないので、引き渡す相手は清算人だけになります。そして清算人は、家庭裁判所が利害関係人または検察官の請求によって選任します(952条1項)。

    出典:e-Gov法令検索「民法」(2026年8月16日確認)

    ここから、実務上の結論が出ます。

    • 誰も清算人の選任を申し立てなければ、引き渡す相手が現れません。つまり現に占有していた人の保存義務が、終わらないまま続きます
    • 逆に実家に住んでいなかった相続人は、そもそも940条の対象外です
    • 清算人の選任には予納金が必要になるのが一般的です。金額は事案と裁判所によって異なり、当サイトでは一律の相場を書きません(一次情報で確認できなかったため)。申立先の家庭裁判所に確認してください

    「全員で放棄すれば、あとは国がなんとかしてくれる」という理解は、正確ではありません。放棄は債務を引き継がないための手続きであって、家を消す手続きではありません。

    Q. 放棄と、相続土地国庫帰属制度は、どちらを先に考えますか。

    A. 順番が逆になりません。両立しないからです。

    相続放棄をすると、はじめから相続人でなかったことになります。国庫帰属制度は相続等で土地を取得した人が使う制度なので、放棄した人はもう使えません。

    だから、判断の順番はこうなります

    1 債務があるか。借金や保証債務が資産を上回るなら、放棄が本命です。土地だけの話ではなくなります
    2 債務がないなら、放棄しないほうが選択肢は広い。相続したうえで、売る・国庫帰属を申請する・持ち続けるを比べられます
    3 放棄すると、預貯金などのプラスの財産も受け取れません。土地を手放したいだけなら、放棄は割に合わないことがあります

    制度の中身は本文の「放棄以外の出口」にまとめました。売って現金にできるなら、それがいちばん早いことも多いです。まず売却相場を自分で調べる手順で金額を知ってから決めてください。

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    相続放棄は、一度受理されると撤回できません。値が付かないと思っていた家が売れるなら、放棄する理由そのものが消えます。期限の中で、金額だけでも確かめてください。

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    放棄しても、受け取ったものに税がかかることがあります

    この記事の「7. 放棄しても受け取れるもの」で書いたとおり、相続放棄をしても、生命保険金や死亡退職金は受取人固有の財産として受け取れます。ただし税の扱いは別で、これらは相続税の計算では「みなし相続財産」として課税対象に入ります。しかも、放棄した人は「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を使えません。放棄したのに税だけ残る、という形になり得ます。

    受け取る保険金が基礎控除の範囲に収まるなら、気にする必要はありません。金額が大きいとき、または他の相続人と揉めているときだけで十分です。
    相談そのものは無料ですが、税理士に依頼すれば報酬がかかります。依頼するかどうかは、減る税額と報酬を比べてから決めてください。特例で税額がゼロになるなら、依頼する意味は薄くなります。
    問い合わせは「相続の相談」として送ってください。過去1年以内に同サービスを使ったことがある場合と、1世帯で2回目の相談は、運営側で受け付けない扱いになると明記されています。
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    放棄したときの税の扱いを聞く(無料)

    この記事で確認できなかったこと

    • 法定単純承認(民法921条)に該当する具体的な行為の一覧:裁判所・法務省の一般向け公式解説は見つかりませんでした
    • 相続財産清算人の予納金の相場:裁判所の公式ページに金額の明示はありません
    • 死亡保険金が「受取人固有の財産」であることの法的根拠:国税庁の記述から間接的に裏付けられますが、裁判所・法務省の直接の公式解説は確認できませんでした
    • 国庫帰属の負担金が面積按分となる土地の種目一覧:法務省ページ上で画像表示のため、テキストとして確認できませんでした

    本記事は一般的な情報提供であり、個別の法律相談ではありません。相続放棄には3か月という短い期限があり、一度受理されると原則として撤回できません。実際の判断にあたっては、必ず弁護士または司法書士にご相談ください。

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  • 相続した実家を売ったときの譲渡所得税|計算の順番と、間違えると損する3か所

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    最終更新:2026年8月15日

    結論だけ先に

    • 被相続人の取得日を調べる → 長期か短期かが決まる(税率が倍違う)
    • 取得時の契約書を探す → 見つからないと税額が数倍になり得る
    • 相続税を払ったかを確認 → 取得費加算の特例が使えるか

    根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

    最初に、いちばん大事なことを

    相続した実家を売ったときの税金は、売れた金額にかかるのではありません。 利益(譲渡所得)にかかります。

    そして計算の途中に、知っているかどうかで税額が数百万円変わる分岐が3か所あります。

    # 分岐 間違えるとどうなるか
    ① 所有期間の数え方 税率が 20.315% と 39.63% で倍近く変わる
    ② 取得費の証明 概算取得費5%を使うと、この記事の例では税額が約3.6倍に
    ③ どの特例を選ぶか 併用できない特例があり、選択を誤ると損をする

    順に並べます。


    1. 計算式

    収入金額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除額 = 課税譲渡所得金額
    

    出典:国税庁 No.1440「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」/No.3202「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」(2026年8月15日確認)

    この課税譲渡所得金額に税率をかけます。


    2. 分岐①:所有期間は「被相続人が買ったとき」から数えます

    税率は、所有期間で2段階に分かれます。

    区分 所有期間 所得税 住民税 復興特別所得税 合計
    長期譲渡所得 譲渡した年の1月1日時点で5年超 15% 5% 所得税額の2.1% 20.315%
    短期譲渡所得 同じく5年以下 30% 9% 所得税額の2.1% 39.63%

    出典:国税庁 No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」/No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」(2026年8月15日確認)

    相続の場合、所有期間は引き継がれます

    「去年相続したばかりだから短期で39.63%か」——違います。

    国税庁は明記しています。

    被相続人や贈与者の取得の時期がそのまま取得した相続人や受贈者に引き継がれます
    — 国税庁 No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」(2026年8月15日確認)

    親が30年前に建てた家なら、相続した翌日に売っても所有期間は30年です。長期譲渡所得(20.315%)が適用されます。

    数え方に注意点が1つ

    判定は「譲渡した年の1月1日時点」で行います。譲渡日ではありません。

    たとえば2021年6月に取得した物件を2026年8月に売った場合、実際の保有は5年2か月ですが、2026年1月1日時点では4年7か月なので短期扱いになります。相続物件では滅多に問題になりませんが、被相続人の取得が最近だった場合は要確認です。


    3. 分岐②:取得費が分からないと、税額が跳ね上がります

    取得費に入れられるもの

    • 購入代金・建築代金、購入手数料、設備費、改良費
    • 登録免許税(登記費用を含む)、不動産取得税、印紙税
    • 借家人への立退料、土地の造成費用、測量費
    • 土地を利用するための建物の取壊し費用
    • 使用開始前の借入金利子

    出典:国税庁 No.3252「取得費となるもの」(2026年8月15日確認)

    建物は「減価償却相当額」を差し引きます

    建物の取得費は、購入代金からその建物が古くなった分を引いた金額です。

    非事業用建物の計算式

    建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数 = 減価償却費相当額
    

    非事業用資産の耐用年数は、業務用の1.5倍(1年未満切捨て)です。木造住宅は業務用22年なので、22 × 1.5 = 33年。

    出典:国税庁 No.3261「建物の取得費の計算」(2026年8月15日確認)

    耐用年数33年に対応する償却率は 0.031 として計算されるのが一般的です(国税庁ページ内の償却率表は画像で掲載されているため、当サイトでは表そのものの読み取り確認ができていません。実際の申告では国税庁の表を直接ご確認ください)。

    取得費が分からない場合:概算取得費5%

    売買契約書が見つからない。親がいくらで買ったか分からない。よくあることです。

    その場合、売った金額の5%を取得費とみなすことができます。

    出典:国税庁 No.3258「取得費が分からないとき」(根拠:措置法通達31の4-1)(2026年8月15日確認)

    これは救済ではなく、最後の手段です。 4,500万円で売れた場合の概算取得費は225万円。実際の取得費が2,000万円だったなら、差額の1,775万円がまるごと課税対象になります。

    だから、契約書を探してください

    • 実家の権利証・登記済証と一緒に保管されていることが多い
    • 銀行の住宅ローン関係書類(金銭消費貸借契約書、返済予定表)
    • 建築時の請負契約書・領収書
    • 分譲住宅なら、分譲主(ハウスメーカー・デベロッパー)に販売価格の記録が残っている場合がある

    家財の片付けの前に、書類だけは先に確保してください。 片付け業者が入ったあとでは手遅れです。


    4. 譲渡費用に入るもの・入らないもの

    入る 入らない
    譲渡のための仲介手数料 修繕費
    売主が負担した印紙税 固定資産税
    借家人に支払う立退料 売った代金の取立て費用
    土地を売るための建物の取壊し費用・損失額
    より有利な条件で売るための違約金
    借地権譲渡時の名義書換料

    出典:国税庁 No.3255「譲渡費用となるもの」(2026年8月15日確認)

    取壊し費用が譲渡費用に入るのは重要です。解体して更地で売る場合、解体費は経費として引けます。

    表の最後にある「借地権譲渡時の名義書換料」は、実家が借地に建っている場合の話です。借地権を売るには地主の承諾が要り、その見返りに承諾料(名義書換料)を払うのが慣行になっています。この支出は譲渡費用に入るので、売却代金から引いて計算できます。承諾を断られたときにどうするかまで含めて、借地に建っている実家で扱っています。

    一方、固定資産税と修繕費は入りません。 「持っている間にこれだけ払った」は、譲渡所得の計算では考慮されません。だからこそ維持費は、持ち続ける判断そのものを重くします。


    5. 分岐③:使える特例と、併用できない組み合わせ

    特例A:相続税の取得費加算の特例(措置法39条)

    相続税を払った人向けです。払った相続税のうち、その不動産に対応する部分を取得費に加算できます。

    期限:相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで。相続税の申告期限は通常「相続開始を知った日の翌日から10か月」なので、おおむね相続開始から3年10か月が締切です。

    出典:国税庁 No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(2026年8月15日確認)

    特例B:空き家の3,000万円特別控除(措置法35条3項)

    譲渡所得から最大3,000万円を控除します。

    令和6年1月1日以後の譲渡で、家屋・敷地を相続または遺贈により取得した相続人が3人以上の場合は、2,000万円までに縮小されます。

    出典:国税庁 No.3306(2026年8月15日確認)

    重要:AとBは併用できません

    国税庁 No.3306 は、この特例の要件の1つとして次を挙げています。

    売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと

    つまり、どちらか有利なほうを選ぶことになります。

    判断の目安を書いておきます。

    • 相続税を払っていない(基礎控除内だった) → 特例Aは使えません。Bを検討します
    • 相続税を払った・譲渡益が大きい → 両方を計算して比較します。譲渡益が3,000万円を大きく超える場合はAが有利になることもあります
    • 相続人が3人以上・令和6年以降の譲渡 → Bの枠は2,000万円。差が縮まります

    Bの詳細な要件は空き家の3,000万円特別控除に判定ツール付きでまとめています。


    6. 実際に計算してみます

    前提(数字は仮定、率と年数は上記の出典どおり)

    • 父が平成17年(2005年)6月に取得:土地1,500万円、建物(木造)1,200万円
    • 相続開始:令和4年(2022年)9月20日、相続人は子1人
    • 相続税の申告期限:令和5年7月20日 → 取得費加算の特例の期限は令和8年(2026年)7月20日
    • 譲渡:令和8年(2026年)6月30日、譲渡価額 4,500万円
    • 相続税のうちこの不動産に対応する取得費加算額:300万円
    • 空き家特例の要件は満たさない設定(かつ取得費加算と併用不可のため、ここではAを選択)

    ステップ1:長期か短期か

    被相続人の取得日(2005年6月)を引き継ぐ → 2026年1月1日時点で約20年半 → 長期譲渡所得(20.315%)

    ステップ2:建物の取得費

    • 経過年数:2005年6月〜2026年6月 = 21年
    • 減価償却費相当額 = 1,200万円 × 0.9 × 0.031 × 21 = 703万800円
    • 建物の取得費 = 1,200万円 − 703万800円 = 496万9,200円

    ステップ3:取得費合計

    土地1,500万円 + 建物496万9,200円 = 1,996万9,200円

    ステップ4:譲渡費用

    • 仲介手数料:4,500万円 × 3% + 6万円 = 141万円(消費税10%込みで155万1,000円)
    • 印紙税:1万円
    • 合計 156万1,000円

    ステップ5:課税長期譲渡所得金額

    4,500万円 −(1,996万9,200円 + 156万1,000円 + 300万円)
    = 4,500万円 − 2,453万200円
    = 2,046万9,800円
    

    ステップ6:税額

    税目 計算 税額
    所得税 2,046万9,800円 × 15% 307万470円
    復興特別所得税 307万470円 × 2.1% 6万4,479円
    住民税 2,046万9,800円 × 5% 102万3,490円
    合計 約415万8,000円

    7. 契約書が見つからなかった場合との差

    同じ条件で、取得費が分からず概算取得費5%を使ったとします。

    実額で計算 概算取得費5%
    取得費 1,996万9,200円 225万円
    課税長期譲渡所得金額 2,046万9,800円 3,818万9,000円
    税額(20.315%) 約415万8,000円 約775万8,000円

    差額は約360万円。税額でおよそ3.6倍です。

    繰り返します。書類を探してください。 実家の片付けを始める前に、権利証・住宅ローン書類・建築時の契約書を確保する。それだけで360万円が守れる可能性があります。


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    4章で見たとおり、仲介手数料は譲渡費用に入ります。買取だと仲介手数料はかかりませんが、そのぶん売却価格は下がります。つまり「手数料が浮く」と「価格が下がる」が同時に起きるので、税金まで入れた手取りで比べるしかありません。この記事の計算式に、両方の売却価格を入れてみてください。ラクウル(株式会社ネクサスプロパティマネジメント/国土交通大臣(1)第10311号)は、空き家・中古戸建てを自社で買い取っている会社です。自社買取なので仲介手数料はかかりません。

    ①申込のあと、電話またはメールで内容の確認と物件情報のヒアリングがあります。メールでも完了しますので、電話が苦手な方でも進められます。
    ②LINE相談からの申込は対象外です。フォームから申し込んでください。
    ③日本国外にお住まいの方は対象外です。
    ④売却を考えていない相談は対象外です。迷っている段階なら「まだ決めていませんが、金額を知りたい」と伝えてください。
    1社の金額で決めず、仲介の査定と並べて比べてください。

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    取得費が分からない場合は取得費が分からないとき、3,000万円の控除が使えるかは空き家の3,000万円特別控除で判定できます。

    8. 申告のタイミング

    譲渡した年の翌年2月16日から3月15日の間に確定申告を行います(還付申告となる場合は2月15日以前でも可)。

    出典:国税庁 No.3102「譲渡所得の申告期限」(2026年8月15日確認)

    上の例(2026年6月30日譲渡)なら、2027年2月16日〜3月15日が申告期間です。

    特例を使う場合は、赤字・ゼロでも申告が必要です。 「税金がかからないから申告不要」ではありません。特例は申告して初めて適用されます。


    まとめ:確認する順番

    1. 被相続人の取得日を調べる → 長期か短期かが決まる(税率が倍違う)
    2. 取得時の契約書を探す → 見つからないと税額が数倍になり得る
    3. 相続税を払ったかを確認 → 取得費加算の特例が使えるか
    4. 空き家3,000万円控除の要件を判定 → 判定はこちら
    5. AとBはどちらが有利かを計算して選ぶ(併用不可)
    6. 譲渡の翌年2月16日〜3月15日に申告

    よくある質問

    ここは間違えると税額が跳ね上がるところだけを、国税庁の記載どおりに書きます。

    Q. 税金は売れた金額にかかるのですか。

    A. かかりません。譲渡所得=売った金額 −(取得費 + 譲渡費用)に対してかかります。

    ここを誤解していると、恐怖だけが先に立ちます。3,000万円で売れても、取得費と譲渡費用を引いた残りがゼロなら、税額もゼロです。

    Q. 税率はいくらですか。

    A. 所有期間で変わります。長期(5年超)は20.315%、短期(5年以下)は39.63%です。

    差は約2倍です。そして相続した実家は、被相続人が取得した日を引き継ぎます。親が何十年も前に建てた家なら、まず長期になります。まず被相続人の取得日を調べてください。

    ただし、この「5年超」の数え方に落とし穴があります。次のQを必ず読んでください。

    Q. 「5年超」は、いつの時点で数えますか。

    A. 「譲渡した年の1月1日現在」です。売った日から5年を数えるのではありません。

    ここが、この記事でいちばん間違えやすいところです。国税庁は「譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える」かどうかで長期と短期を分けています。

    判定 税率
    長期譲渡所得 譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年超 20.315%
    短期譲渡所得 譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年以下 39.63%

    出典:国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」(2026年8月16日確認)

    売買契約から5年、引渡しから5年、と数えると間違えます。基準日はその年の1月1日です。年をまたぐかどうかで、税率が2倍変わることがあります。

    Q. 20.315%の中身を教えてください。確定申告で全部払うのですか。

    A. 内訳は3つで、そのうち住民税は所得税とは別建てです。

    長期(5年超) 短期(5年以下)
    所得税 15% 30%
    復興特別所得税 基準所得税額の2.1%(平成25年から令和19年まで)
    住民税 5% 9%
    合計 20.315% 39.63%

    出典:国税庁「No.3208」「No.3211」(2026年8月16日確認)

    ここが実務で効きます。確定申告で納めるのは所得税と復興特別所得税で、住民税は別の納付になります。売却代金を確定申告のときに使い切ってしまうと、住民税の分が手元に残っていないということが起こります。

    納付の時期は市区町村によって案内が異なるので、当サイトでは断定しません。「住民税がいつ、いくら来るか」を、売る前に市区町村へ確認してください。

    Q. 親が買った金額が分かりません。

    A. 売った金額の5%を取得費とみなす方法があります。ただしこれは救済ではなく、最後の手段です。

    5%で計算すると、税額は大きく増えます。売買契約書・領収書・権利証・住宅ローンの書類を、先に探してください。片付けを始める前に確保するのが鉄則です。捨ててからでは戻せません。

    探し方と、契約書が無い場合に取れる手(国税庁の建物の標準的な建築価額表を使う方法など)は取得費が分からないときの5%ルールに数字つきでまとめました。金額インパクトが最も大きい論点です。必ず読んでください。

    Q. 解体費は差し引けますか。

    A. 土地を売るための建物の取壊し費用は、譲渡費用に入ります。

    譲渡費用に入る 入らない
    土地を売るための建物の取壊し費用 固定資産税
    仲介手数料など、売るために直接かかった費用 修繕費

    ここから、解体の判断に効くことが1つ出ます。解体費が譲渡費用になるのは「売れた場合」だけです。解体したのに売れなければ、差し引く相手の所得がありません。先に解体するかどうかは、古家付きで売るか、更地にするかで税金込みの比較をしてから決めてください。

    Q. 相続税を払った場合、何か軽くなりますか。

    A. 取得費加算の特例があります。ただし期限があります。

    期限は相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日、おおむね相続開始から3年10か月です。この日を過ぎると、もう使えません。

    そして、空き家の3,000万円特別控除とは併用できません。どちらか有利なほうを選びます。要件は空き家の3,000万円特別控除の記事にまとめました。相続税を払った人ほど、どちらが得かの計算が要ります。

    Q. 特例で税額がゼロになるなら、申告は要りませんか。

    A. 要ります。申告しないと、特例そのものが適用されません。

    空き家の3,000万円特別控除は「申告することによって適用される」制度です。要件を満たしていても、申告しなければ控除されません。税額ゼロだから何もしない、がいちばん危ないパターンです。

    申告は譲渡した年の翌年2月16日から3月15日の間に行います。そして「被相続人居住用家屋等確認書」は市区町村が交付するもので、交付に日数がかかります。申告直前に慌てる人が多い書類なので、必要書類の取り方を先に見ておいてください。

    取得費が分からないときの手を見る3,000万円控除が使えるか確かめるまず売れる金額を調べる

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    税額の計算は、売値が決まらないと始まりません

    譲渡所得税は、売れた金額から取得費と経費を引いて計算します。売値の見当がついていないと、いくら課税されるかも、手元にいくら残るかも出せません。

    先に断っておきます。買取は、仲介で売れた場合より手取りが下がります。それでも見る価値があるのは、比較対象の数字が手に入るからです。運営は株式会社ネクサスプロパティマネジメント(宅地建物取引業免許:国土交通大臣(1)第10311号)。同社は「個人情報の入力は不要、匿名のまま利用でき、営業電話もありません」という匿名のAI査定も公開しています(入力3項目・最短30秒/2026年6月20日 同社発表)。まだ売ると決めていない段階なら、まず匿名のほうで桁だけ確かめてください。ただし匿名で出るのは機械的な概算です。実際の金額を知るには、連絡先を入れて査定を申し込む必要があります(申し込めば担当者から連絡が来ます)。

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    この記事の「7. 契約書が見つからなかった場合との差」で計算したとおり、取得費が分からないと、売却代金の5%しか経費として引けません。3,000万円で売れば、取得費は150万円あつかいです。残り2,850万円に税がかかります。ただし、当時の資料や相場から取得費を推定して認められる余地は残っています。それが自分のケースで通るかどうかは、実際に申告した経験のある人でないと判断できません。税理士ドットコムは、相談内容に合う税理士を無料で紹介するサービスです。

    先に確認してください。3,000万円特別控除が使えるなら、そもそも税額がゼロになることがあります。その場合、取得費の話は意味を持ちません。順番としては「控除が使えるか」→「使えないなら取得費をどうするか」です。
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    取得費の扱いを税理士に相談する(無料)

    この記事で確認できなかったこと

    • 所得税法60条1項という条項番号:国税庁 No.3270 の根拠法令欄は「所法33、38、60」までの記載で、項番号までは明記されていませんでした
    • 木造33年の償却率0.031という数値そのもの:国税庁の償却率表は画像で掲載されており、表そのものからの直接確認ができませんでした。実際の申告では国税庁ページの表をご確認ください
    • 措置法35条3項・39条の条文本文:タックスアンサーには条番号の記載のみで、条文の文言そのものは掲載されていません

    本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。譲渡所得の申告は要件・計算が複雑です。実際の申告にあたっては、税理士または所轄の税務署にご相談ください。

    あわせて読みたい

  • 古家付き土地として売るか、更地にして売るか|税金を入れると答えが変わります

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    最終更新:2026年8月16日

    結論だけ先に

    • 判断を分けるのは解体費ではありません。空き家の3,000万円特別控除が使えるかどうかで、手取りが最大数百万円変わります。
    • 2024年の改正で、買主が引渡し後に解体する場合でも特例が使えるようになりました。ただし売買契約に特約が必要です。媒介契約の前に確認してください。
    • 期限は2つあり、早いほうが実質的な締切です。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日と、令和9年(2027年)12月31日。

    根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

    判断を分けるのは、解体費ではありません

    「解体費が200万円かかる。その分値引きして古家付きで売ったほうが得では?」

    金額だけを並べるとそう見えます。しかし、税金を計算に入れると結論がひっくり返ることがあります。

    理由は1つ。空き家の3,000万円特別控除です。この特例が使えるかどうかで、手取りが数百万円変わります。そして、この特例には「家屋をどうするか」が要件に組み込まれています。

    この記事では、①特例の要件、②2024年の重要な改正、③再建築不可という別の論点、④契約不適合責任、⑤判断の順序——を整理します。


    1. 空き家の3,000万円特別控除は、家屋の扱いで適用が決まります

    相続した実家を売って利益が出た場合、譲渡所得に約20%(長期の場合)の税金がかかります。この譲渡所得から最大3,000万円を控除できるのが、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除です(租税特別措置法35条3項)。

    この特例が対象とするのは、次の2パターンです。

    パターン 要件
    A. 取り壊して土地を売る 「被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に、被相続人居住用家屋の敷地等を売ること」
    B. 家屋ごと売る 「譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること」

    出典:国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(2026年8月15日確認)

    ここが決定的です

    昭和56年5月31日以前に建築された家屋(この特例の対象となる家屋は原則としてこの時期以前の建築です)を、そのまま古家付きで売ると、原則として特例は使えません。

    Bのルートを使うには、耐震基準に適合させる必要があります。旧耐震の木造住宅を耐震改修するとなれば、解体費と変わらない金額がかかることも珍しくありません。

    つまり、多くのケースで実質的な選択肢は次の2つです。

    1. 取り壊して更地で売る(Aルート)→ 特例が使える
    2. 何もせず古家付きで売る → 特例が使えない

    差額は最大で、3,000万円 × 約20.315% = 約609万円です。

    控除が使えるかは、家屋の扱いで決まります 取り壊して土地を売る 全部の取壊し等をした後に 使えます 家屋ごと売る 一定の耐震基準を満たすこと 使えます 何もせず古家付き 旧耐震のままでは原則使えません 使えない 差は最大で3,000万円×20.315%=約609万円

    2. 2024年の改正で、第3の道ができました

    令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡について、重要な改正が入りました。

    売主が引渡し時点で取壊し・耐震改修をしていなくても——

    「譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、一定の耐震基準を満たすこととなったこと」または「被相続人居住用家屋の全部の取壊し等を行ったこと」

    があれば、特例の対象になります。

    出典:国税庁 No.3306(※令和6年1月1日以後に行う譲渡に限る)(2026年8月15日確認)

    つまり、買主に解体してもらっても特例が使えるようになりました。

    これは実務上とても大きな変更です。売主が先に200万円を出して解体するリスクを負わなくても、買主が翌年2月15日までに解体すれば要件を満たします。

    ただし、契約に書かなければ機能しません

    買主が本当に期限内に解体してくれる保証はありません。そこで国土交通省は、この特例を前提とした売買契約の特約条項の記載例を公表しています。

    売主・買主が「特例の適用を受けることを前提に価格を決定した」ことを確認し合い、買主に取壊し・耐震改修の実施義務を課す内容です。買主の責めに帰さない事由で履行できなかった場合の免責も例示されています。

    出典:国土交通省「売買契約書の特約条項の記載例」(PDF)(2026年8月15日確認)

    不動産会社にこの特約を入れられるか、媒介契約の前に確認してください。 「知らない」と言われたら、この国交省のPDFを見せれば話が早いはずです。

    2024年から、買主に壊してもらってもよい 改正前 売主が引渡し前に 取壊しまたは 耐震改修をする 先に費用を負担 令和6年1月1日以後 翌年2月15日までに 取壊しまたは 耐震基準を満たせば 買主がやってもよい 実質的な期限は2027年12月31日です

    3. 期限は2つあり、早いほうが効きます

    この特例には期限が2つあります。

    期限 内容
    ① 制度そのものの期限 平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までの譲渡
    ② 個別の期限 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで

    出典:国税庁 No.3306(2026年8月15日確認)

    両方を満たす必要があるので、早いほうが実質的な締切になります。

    2025年以降に相続した方は、個別の3年期限(2028年12月31日以降)より、制度の期限(2027年12月31日)のほうが先に来ます。つまり実質的な期限は2027年12月31日です。

    これは意外と知られていません。詳しくは空き家の3,000万円特別控除で、判定チェックリストとともに整理しています。

    控除額が2,000万円になる場合があります

    令和6年1月1日以後の譲渡で、家屋および敷地を相続・遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合、控除は2,000万円までに縮小されます。

    出典:国税庁 No.3306

    兄弟3人で共有相続した実家は、この改正の直撃を受けます。


    4. 更地にしてはいけない土地があります

    税金だけで「解体して更地」と決めると、取り返しがつかなくなるケースがあります。再建築不可の土地です。

    建築基準法第43条第1項は、建築物の敷地について次を求めています。

    建築物の敷地は、道路に二メートル以上接しなければならない。

    出典:建築基準法第43条第1項(e-Gov法令検索で全文を確認/2026年8月17日)

    ここでいう「道路」は、原則として幅員4m以上のもの(建築基準法42条の定義)です。この条件を満たさない土地は、いま建っている建物を壊すと、二度と建物を建てられません。

    同条第2項には、特定行政庁の認定や、建築審査会の同意を得た許可(いわゆる43条2項2号許可)という例外規定がありますが、許可される保証はありません。

    再建築不可だと分かった場合に、何ができて何ができないかは再建築不可の実家にまとめました。2項道路なら建て替えられること、2025年4月から大規模リフォームに建築確認が要ること、相続税で最大40%引けることまで、条文で確かめています。

    実務上の順序

    解体を決める前に、必ず接道状況を確認してください。

    • 建築計画概要書(役所の建築指導課で閲覧できます)
    • 公図・測量図で前面道路の幅員と接道長さを確認
    • 不安があれば、役所の建築指導課の窓口で相談

    再建築不可の土地は、古家付きのまま(=現存する建物ごと)売ったほうが買主が付くことがあります。この場合、3,000万円控除を諦めてでも古家付きで売る、という判断があり得ます。

    更地にしてはいけない土地があります 道路に2m以上接していますか はい 更地にできます 次は控除の要件へ いいえ 壊すと建てられない 例外の許可は保証なし

    5. 古家付きで売る場合の、もう1つのリスク

    民法第562条以下の契約不適合責任です。

    引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。

    古い建物を売ると、雨漏り・シロアリ・給排水の不具合などが後から見つかる可能性があります。実務では、契約書で「建物については契約不適合責任を負わない」旨の免責特約を入れることが一般的です。

    注意点:宅建業者が売主の場合は、宅地建物取引業法により免責特約に制限がありますが、相続人(個人)が売主の場合はこの制限は適用されません。 ただし、売主が知っていて告げなかった事実については免責されないのが原則です。知っている不具合は必ず告知してください。

    更地にすれば、建物についての契約不適合責任はそもそも発生しません。これは更地売却のメリットの1つです。


    6. いくらで売れるかを先に把握する

    判断には、売却価格の見込みが要ります。査定を出す前に、自分で調べられます。

    国土交通省 不動産情報ライブラリ

    実際の取引価格を地図・一覧で検索できる公式システムです。土地総合情報システムの後継として統合されました。

    レインズの市況データ

    公益財団法人 東日本不動産流通機構が公表している首都圏の中古戸建住宅の数字です。

    2026年7月度(月例)

    項目 金額 前年同月比
    成約価格 3,933万円 +0.6%(7か月連続上昇)
    新規登録価格(売出価格) 4,846万円 +11.4%(12か月連続上昇)
    成約件数 1,738件 ▲1.9%

    2026年4〜6月期(季報)

    項目 金額 前年比
    成約価格 4,129万円 +6.5%(3四半期連続上昇)
    新規登録価格 4,676万円 +6.6%(6四半期連続上昇)

    出典:東日本レインズ Market Watch 2026年7月度/季報 2026年4〜6月期(2026年8月15日確認)

    ここから読めること

    売出価格と成約価格には、明確な差があります。2026年7月度で 4,846万円 → 3,933万円。

    しかも売出価格の上昇率(+11.4%)が成約価格の上昇率(+0.6%)を大きく上回っています。売り手の希望と、実際に成立する価格の乖離が広がっているという読み方ができます。

    査定額をそのまま手取りの計算に使うと、見込みを外します。この構造は実家の売却相場を調べる3つの方法で詳しく扱っています。


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    解体費を自腹で出す前に、「古家付きのまま買う先」があるか確かめてください

    更地にしてから売るという判断は、150〜250万円を先に自分で払うということです。売れ残れば、その解体費は丸ごと損になります。再建築不可・旧耐震・築古・違反建築のように一般の買主が付きにくい物件ほど、この賭けは危険です。そういう物件を現況のまま買い取る先が実在します。

    買取価格は、仲介で売れた場合より下がります。ただし比べるべきは「仲介で売れた場合」ではなく、「解体費を払ったうえで、それでも売れなかった場合」です。そこまで含めて並べてください。

    古家付きのままの買取価格を聞く(無料)

    先に解体してしまうと、この選択肢は消えます。順番として、現況のままいくらかを聞くのは解体を発注する前にしかできません。解体費の目安は解体費シミュレーターで幅を出せます。

    そもそも補助金が出ない自治体かどうか

    更地にするかどうかを決める前に、解体費の補助が使えるかを確認してください。全国394自治体のうち81自治体は、公式ページを確認したうえで解体費の補助が無いと判断できた自治体です。

    自治体上限額
    京都府亀岡市制度なし
    京都府八幡市制度なし
    京都府城陽市制度なし
    京都府木津川市制度なし
    京都府福知山市制度なし
    京都府長岡京市制度なし
    兵庫県三田市制度なし
    兵庫県宝塚市制度なし
    兵庫県川西市制度なし
    兵庫県明石市制度なし
    北海道北広島市制度なし
    千葉県八千代市制度なし

    該当は全部で81自治体です。全国の一覧表で実家のある市区町村を確認してください。

    補助が無いと分かっている自治体なら、解体費は全額自己負担が前提になります。その分だけ古家付きで売る選択肢が有利に傾きます。逆に上限50万円や100万円の補助が使えるなら、更地にして売るほうが手取りで上回ることがあります。実家のある市区町村を先に確認してから、この記事の計算に戻ってください。

    7. 判断の順序

    上から順に確認してください。途中で答えが確定することがあります。

    ステップ1:再建築が可能かどうか

    → 不可なら、古家付きで売る(更地にすると価値が激減します)。ここで終了です。
    再建築不可は査定額の幅が大きい。複数社に当たる

    ステップ2:空き家の3,000万円特別控除の要件を満たすかどうか

    被相続人が一人で住んでいたか、昭和56年5月31日以前の建築か、相続後に貸したり住んだりしていないか——判定はこちら。

    → 満たさないなら、税金の要素は消えます。 解体費 vs 値引き額の単純比較で決めてください。
    まず解体費を幅で試算する

    ステップ3:期限に間に合うかどうか

    制度の期限は2027年12月31日。相続から3年の期限も確認。

    → 間に合わないなら、ステップ2と同じく単純比較に戻ります。
    補助金で解体費を下げられるか確認する

    ステップ4:解体費と補助金を確認する

    ステップ5:3つのルートを比べる

    ルート 3,000万円控除 解体費の負担 備考
    A. 自分で解体して更地で売る ○ 売主 補助金が使える可能性。固定資産税は翌年1月1日から上がる
    B. 買主に解体してもらう(2024年改正) ○(翌年2/15までに実施が条件) 買主 特約条項が必須。国交省の記載例あり
    C. 古家付きでそのまま売る ×(耐震改修しない限り) — 再建築不可なら実質これ一択

    Bは2024年に使えるようになったばかりのルートです。 不動産会社が慣れていない可能性があります。媒介契約の前に、特約を入れられるか確認してください。

    上から順に確認してください 1 再建築が可能か 不可なら古家付き。ここで終了 2 控除の要件を満たすか 満たさないなら税金の要素は消える 3 期限に間に合うか 制度の期限は2027年12月31日 4 解体費と補助金 補助金は着工前申請が必須です 5 3つのルートを比べる ここで初めて金額を並べる

    よくある質問

    ここは「不動産会社に何と言えばいいか」まで書きます。2024年に増えたルートは、契約書に書かなければ機能しません。そして、それを不動産会社が知らないことがあります。

    Q. 更地にしたほうが、高く売れますか。

    A. 売りやすさは上がることが多いです。ただし、それだけで決めないでください。

    判断を分けているのは解体費ではなく、空き家の3,000万円特別控除が使えるかどうかです。差は最大で 3,000万円 × 約20.315% = 約609万円。解体費150〜250万円を大きく超えます。

    そして順番が大切です。いちばん先に確かめるのは税金ではなく、「壊しても建て直せる土地か」です。調べ方は、このあとの「再建築ができる土地かどうかは、どうやって調べればいいですか」に書きました。ここを飛ばして壊すと、取り返しがつきません。

    Q. 古家付きのまま売ると、3,000万円控除は使えませんか。

    A. 2024年から、使えるようになりました。ここは、まだあまり知られていません。

    令和6年1月1日以後の譲渡なら、引渡しの時点で壊していなくても、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに取壊しまたは耐震改修が行われれば、特例の対象になります。

    出典:国税庁 タックスアンサー No.3306(2026年8月16日確認)

    つまり、売主が先に200万円を払って解体するリスクを負わなくてよくなりました。

    ただし、契約書に書かなければ機能しません

    買主が期限内に解体してくれる保証はどこにもありません。国土交通省が、この特例を前提とした売買契約の特約条項の記載例を公表しています。入れるべき中身は3つです。

    特約に入れる内容
    1 売主・買主が「特例の適用を受けることを前提に売買価格を決めた」ことを、双方で確認する
    2 買主に、取壊し(または耐震改修)を「翌年2月15日まで」に行う義務を負わせる
    3 買主の責めに帰さない事由で履行できなかった場合の免責をどうするかを決めておく

    申告の書類も、先に押さえてください

    確定申告には「被相続人居住用家屋等確認書」が要ります。これは市区町村長が交付する書類で、税務署ではもらえません。交付には日数がかかります。申告期限の直前に慌てる人がいちばん多い書類なので、売買契約を結ぶころには、市区町村の担当課に必要書類を確認しておいてください。

    Q. 不動産会社に「その特約は分かりません」と言われました。どうすればいいですか。

    A. 珍しいことではありません。2024年に使えるようになったばかりのルートです。この順で進めてください。

    やること
    1 国土交通省の「売買契約書の特約条項の記載例」を見せる。国交省サイトでPDFとして公表されています。役所の作った雛形があると分かれば、話が早く進みます
    2 媒介契約を結ぶ「前」に確認する。契約後に「できません」となると、会社を替えるだけで手間と時間を失います
    3 それでも渋られたら、ほかの会社にも同じ質問をする。査定を複数社に出す目的は、金額を比べることだけではありません。この質問に答えられるかどうかが、そのまま実力の差になります
    4 税額そのものは税務署か税理士に確認する。不動産会社は税の専門家ではありません

    この質問は、会社選びの試金石として使えます。複数社に当たるときの手順と注意点は一括査定サイトの比較にまとめました。

    Q. 期限はいつですか。

    A. 2つあって、早いほうが実質的な締切です。

    期限
    ① 制度そのもの 平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までの譲渡
    ② 個別の期限 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで

    出典:国税庁 タックスアンサー No.3306(2026年8月16日確認)

    2025年以降に相続した方は、②より①のほうが先に来ます。つまり実質的な期限は2027年12月31日です。ここは意外と知られていません。

    そして「2027年末までに売る」は、そんなに先の話ではありません。査定・媒介契約・買主探し・契約・引渡しで、順調でも数か月、条件が難しい物件なら1年以上かかります。要件を満たしているかの判定は空き家の3,000万円特別控除のチェックリストでできます。

    Q. 相続人が3人います。控除はどうなりますか。

    A. 令和6年1月1日以後の譲渡では、上限が2,000万円に下がります。家屋と敷地を相続・遺贈で取得した相続人の数が3人以上である場合が対象です(出典:国税庁 タックスアンサー No.3306/2026年8月16日確認)。

    ここから先は、正直に書きます

    この2,000万円が「相続人1人あたりの上限」なのか「全員の合計」なのかは、国税庁のタックスアンサーにも、国土交通省の制度説明ページにも明記を見つけられませんでした。

    3人で相続した場合、前者なら合計6,000万円、後者なら2,000万円。譲渡益が十分にあれば、税額にして800万円前後の差になります。推測で書ける金額ではないので、書きません。

    代わりに、聞き方を渡します。譲渡する前に確認してください。

    やること
    1 実家の所在地を管轄する税務署に電話して、こう聞く。
    「措置法35条3項の空き家の特別控除について、相続人が3人以上の場合の2,000万円は、共有者1人ごとの上限ですか、それとも相続人全員の合計ですか」
    2 そのとき、相続人の人数・それぞれの持分・想定している譲渡価額を伝えて、自分のケースで答えをもらう
    3 金額が大きいと感じたら、譲渡所得に慣れた税理士に、契約前の段階で相談する。売ってからでは、手の打ちようがありません

    兄弟3人で共有相続した実家は、この改正の直撃を受けます。そして共有だと、売却そのものに全員の同意が要ります。止まってしまったときの進め方は仲介と買取の違いの共有持分の項にあります。

    Q. 更地にすると、固定資産税はどうなりますか。

    A. 住宅用地の特例が外れます。ただし「6倍」は不正確です。

    土地の固定資産税だけを見れば最大約4.2倍ですが、建物分の税金が消えるので、実際に払う総額では約2倍程度に収まります。計算の中身は解体すると固定資産税は6倍になるのかで出しました。

    解体する「時期」で、1年ぶん変わります

    地方税法359条は「固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とする」と定めています(e-Gov法令検索で条文を確認/2026年8月16日)。1月1日の時点で建物が建っているかどうかだけで、その年度が決まります。

    解体した時期 翌年度の土地の税額
    12月中に解体を終えた 翌年度から特例が外れます(高くなる)
    1月中に解体した その年度は特例が残ります(1年ぶん得)

    年末に工事が寄ると、この差が出ます。ただしこれは「解体を遅らせましょう」という話ではありません。売却の段取りのほうが金額として大きいので、年末に解体を予定しているなら、業者に「年内完了と年明け完了で選べますか」と一度聞いてみる——その程度に使ってください。なお、解体したら建物の滅失登記が必要です。不動産登記法57条は「その滅失の日から一月以内に」申請しなければならないと定めています(申請先は法務局で、市区町村ではありません)。固定資産課税台帳にいつ反映されるかは、市区町村の資産税課に確認してください。

    Q. 再建築ができる土地かどうかは、どうやって調べればいいですか。

    A. 解体より前に、必ずこれをやってください。建築基準法43条1項は「建築物の敷地は、道路に二メートル以上接しなければならない」と定めています。そしてここでいう「道路」は原則として幅員4m以上のものです。

    この条件を満たさない土地は、いま建っている建物を壊すと、二度と建てられません。

    調べること どこで
    1 建築計画概要書(その建物がどの道路に接して建てられたかが分かります) 市区町村・都道府県の建築指導課で閲覧・写しの交付
    2 公図・地積測量図(前面道路の幅と、接している長さ) 法務局の窓口、または登記情報提供サービス(オンライン)
    3 ★ 前面道路が「建築基準法上の道路」かどうか、その種別 建築指導課の窓口。ここがいちばん大事です

    「幅4m未満=即アウト」ではありません

    幅員4m未満でも、建築基準法42条2項のいわゆる「みなし道路」に指定されていれば、道路の中心線から2m下がる(セットバックする)ことを条件に建て替えられます。この指定を受けているかどうかは、地図を見ても分かりません。建築指導課に聞くしかありません。

    また43条2項には、特定行政庁の認定や、建築審査会の同意を得た許可という例外規定もあります。ただし許可される保証はありません。「たぶん大丈夫だろう」で壊さないでください。

    再建築不可と分かった場合、古家付きのまま売るほうが買主が付くことがあります。その場合は3,000万円控除を諦めてでも古家付きで売るという判断があり得ます。ここだけは、税金より先に来ます。

    Q. 古家付きで売るとき、あとから雨漏りが見つかったらどうなりますか。

    A. 契約不適合責任の問題です(民法562条以下)。ここは「免責特約」と「告知」の2つで守ります。

    やること
    1 契約書に「建物については契約不適合責任を負わない」旨の免責特約を入れる。築古の個人間売買では一般的な扱いです。売主が宅建業者の場合は宅建業法で制限がありますが、相続人(個人)が売主ならこの制限は適用されません
    2 知っている不具合は、必ず告知する。売主が知っていて告げなかった事実は、免責されないのが原則です。不動産会社が用意する物件状況等報告書に、雨漏り・シロアリ・給排水の不具合・過去の修繕を書き残してください
    3 「たぶん大丈夫」で空欄にしない。分からないことは「不明」と書くのが正しい書き方です。相続した家は、住んでいた人がもういません。知らないことを知らないと書くのは、隠したことになりません

    更地にすれば、建物についての契約不適合責任はそもそも発生しません。これは、金額に表れない更地売却のメリットです。

    Q. 解体費に補助金は使えますか。

    A. 自治体によります。そして「ある/ない」の二択で考えると外します。

    当サイトでは全国501自治体の公式ページを1件ずつ確認して一覧にしました。金額の差は最大28倍(北九州市30万円 〜 札幌市850万円)。練馬区のように公式FAQで「空き家を対象にした解体費の助成制度はありません」と明言している自治体もあります。

    「制度はあるのに使えない」が、いちばん多い落とし穴です

    条件 何が起きるか
    居住要件 「自ら居住し、建替え後も住み続けること」が条件だと、売るために壊す人は対象外です
    売却禁止 「助成後に売却の予定がないもの」が条件の自治体があります
    跡地の提供 金額が大きい制度ほど、跡地を長期間 自治体に無償で貸すことが条件のことがあります

    そして共通の鉄則が1つあります。補助金は、着工前に申請しないと1円も出ません。契約してから、壊してから気づいても、遡って申請することはできません。解体業者を決めるより先に、担当課に電話してください。

    自治体の解体補助金を調べる3,000万円控除が使えるか確かめる解体費の相場と内訳を見る


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    更地にすると決めたなら、壊す費用は必ず複数社で比べる

    解体費は、同じ家でも会社によって数十万円単位で変わります。1社だけで決めた分は、そのまま手取りから減ります。更地にしてから売ると決めた人ほど、ここで差が出ます。

    ①同社サイトには「ご利用は無料。ご成約後の請求も一切ございません」と書かれています。
    ②同社は「契約まで、業者からご連絡がいくことはございません」と説明しています。
    ③申し込みには物件の情報と写真が要ります。遠方の実家で写真が手元にないなら、次に帰ったときに外観と傷んでいる箇所を撮っておいてください。
    ④解体する予定がないなら申し込まないでください。重複した申込や、連絡先が実在しない申込は無効と明記されています。
    ⑤1社の見積りだけで決めないでください。地元の解体業者にも自分で1社あたって、金額の桁が合っているかを確かめてください。
    ⑥解体補助金を使う予定があるなら、契約・着工の前に自治体へ申請してください。着工後の申請は原則として通りません。

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    見積書のどこを見るかは、この記事の見積書の章に戻って確認してください。お住まいの自治体の制度を先に調べておくと、受付期間に間に合うかどうかも一緒に分かります。

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    更地にすると決めたなら、2つ目の見積りも取ってください

    古家付きで売るか、更地にして売るか。この判断は解体費がいくらかで変わります。1社の見積りだけでは、その金額が高いのか安いのか判断できません。解体工事比較ナビは、複数社の見積りを比べる形のサービスです。上のサービスとは集め方が違うので、声のかかる業者も変わります。

    ①更地にした時点で住宅用地特例が外れます。売れるまでの期間が長引くと、上がった固定資産税を払い続けることになります。「更地にすれば売れる」という前提が外れたときの負担まで見てから決めてください。
    ②補助金を使う予定があるなら、見積りより先に自治体へ連絡してください。ほとんどの制度が「交付決定の前に契約したら対象外」です。
    複数の業者から連絡が来る仕組みです。電話を受ける時間が取れないなら、希望する連絡手段を備考欄に書いてください。
    いちばん安い1社をそのまま選ばないでください。マニフェスト(産業廃棄物管理票)の写しを出せるか、建設リサイクル法の届出を代行するか。安すぎる見積りは、ここを省いていることがあります。
    サービス内容の説明は同社サイトの記載であって、当サイトが確かめた事実ではありません。

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    この記事で確認できなかったこと

    • 解体費用の相場の公的統計は存在しません。 検索で出てくる「坪◯万円」はすべて民間事業者の自社調査です
    • レインズの「成約までの平均日数」:参照した月例・季報レポートには記載がありませんでした
    • 再建築不可物件の定義に関する国土交通省の一次資料:自治体・民間の解説にとどまり、国交省自身の公式説明文書は確認できませんでした
    • 古家付き土地の免責特約に関する公的な解説:国交省の標準媒介契約約款を確認しましたが、契約不適合責任の条項は含まれていませんでした(媒介契約と売買契約は別物のため)

    本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断ではありません。空き家の3,000万円特別控除の適用可否は要件が細かく、実際の適用にあたっては税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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  • 解体すると固定資産税が6倍になる?──計算すると、最大でも4.2倍です

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    最終更新:2026年8月15日

    結論だけ先に

    • 「解体すると固定資産税6倍」は不正確。土地の固定資産税で最大約4.2倍、実際に払う総額では約2倍程度に収まることが多い
    • 根拠は負担調整措置(非住宅用地の課税標準は評価額の70%が上限)と、建物分の税金が消えること
    • 税額が変わるのは翌年1月1日を跨いでから。解体の時期で1年ずれる

    根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

    結論を先に書きます

    「空き家を解体すると固定資産税が6倍になる」——この説明は、不正確です。

    正確には、こうです。

    通説 実際
    土地の固定資産税 6倍 最大でも約4.2倍(多くの場合、初年度はもっと小さい)
    土地の都市計画税 触れられないことが多い 最大でも約2.1倍
    建物の固定資産税・都市計画税 触れられない ゼロになる(解体するので)
    変わるタイミング 「解体すると」 翌年1月1日を跨いでから

    「6倍」は、住宅用地の特例(課税標準1/6)の逆数をそのまま倍率にした数字です。実際の課税には負担調整措置という上限ルールがあり、そこまでは上がりません。

    そして、解体すれば建物分の税金は消えます。土地と建物を合計した支払額で見れば、増加はさらに小さくなります。

    「6倍」は逆数をそのまま倍率にした数字 通説 土地の固定資産税は 6倍 建物には触れない タイミングも不明 実際 最大でも約4.2倍 都市計画税は2.1倍 建物分はゼロに 翌年1月1日から 負担調整措置という上限ルールがあります

    さらに、増えた分を自治体が戻してくれることがあります。全国の解体補助金データベース(調査時点354自治体)を調べた範囲で、解体後の土地の固定資産税を減免したり、増額分を補助金で穴埋めしたりする制度が33自治体で見つかりました(7章)。ただし、ほとんどが申請しないと適用されず、「解体する前に相談」が条件のものもあります。

    以下、根拠を示します。


    1. なぜ「6倍」と言われるのか

    住宅が建っている土地には、住宅用地の特例が適用されます。

    区分 固定資産税の課税標準 都市計画税の課税標準
    小規模住宅用地(200㎡以下の部分) 価格 × 1/6 価格 × 1/3
    一般住宅用地(200㎡超の部分) 価格 × 1/3 価格 × 2/3

    根拠:地方税法第349条の3の2、同第702条の3。出典:総務省「固定資産税制度について」(PDF) p.13、国土交通省「地方税法(抄)」(2026年8月15日確認)

    建物を解体すると、この土地は住宅用地ではなくなります。「1/6 が外れる → 1 ÷ (1/6) = 6倍」——これが「6倍」の出どころです。

    この計算には、抜けているものがあります。


    2. 抜けているもの①:非住宅用地には「評価額の70%」という上限がある

    住宅用地でなくなった土地は「非住宅用地(商業地等)」として課税されますが、そこには負担調整措置が働きます。課税標準額は、評価額そのものではなく、次のルールで決まります。

    負担水準(=前年度課税標準額 ÷ 当年度評価額)に応じて——

    負担水準 当年度の課税標準額
    70%超 評価額の70%に据え置き(これ以上は上がらない)
    60%以上70%以下 前年度の課税標準額に据え置き
    60%未満 前年度課税標準額 + 評価額の5%(60%を上限、20%を下限として段階的に引上げ)

    根拠:地方税法附則第18条(宅地等に係る固定資産税の課税標準の特例)。出典:総務省「固定資産税制度について」(PDF) p.14-15、大阪市「税負担の調整措置」(2026年8月15日確認)

    つまり、非住宅用地の課税標準額は、評価額の70%が天井です。

    したがって、住宅用地特例(1/6)が外れたときの理論上の最大倍率は——

    0.70 ÷ (1/6) = 4.2倍

    6倍ではなく、4.2倍です。

    しかも、負担水準が70%に達していない土地では、1年あたり評価額の5%ずつしか課税標準が上がりません。 初年度の増加はもっと小さくなります。

    都市計画税も同じ考え方です。小規模住宅用地の1/3が外れる場合、最大倍率は 0.70 ÷ (1/3) = 約2.1倍 です。


    3. 抜けているもの②:建物の税金がなくなる

    当たり前のことですが、「6倍」の説明ではほぼ触れられません。

    解体すれば、建物にかかっていた固定資産税・都市計画税はゼロになります。

    古い家でも評価額はゼロにはなりません。木造住宅の場合、経年減価補正率には下限(残価率)が設けられており、どれだけ古くても一定の評価額が残ります。評価額300万円の建物なら、固定資産税1.4%で年42,000円、都市計画税0.3%で年9,000円——合わせて年51,000円が消えます。


    4. 実際に計算してみます

    前提:土地の評価額2,000万円・200㎡以下(小規模住宅用地)、建物の評価額300万円、固定資産税1.4%・都市計画税0.3%。負担水準がすでに70%を超えていて、解体の翌年度から上限に達する「最も増える」ケースとします。

    解体前

    課税標準 税額
    土地・固定資産税 2,000万 × 1/6 = 333万円 約46,600円
    土地・都市計画税 2,000万 × 1/3 = 667万円 約20,000円
    建物・固定資産税 300万円 42,000円
    建物・都市計画税 300万円 9,000円
    合計 約117,600円

    解体後(上限到達時)

    課税標準 税額
    土地・固定資産税 2,000万 × 70% = 1,400万円 196,000円
    土地・都市計画税 2,000万 × 70% = 1,400万円 42,000円
    建物 — 0円
    合計 238,000円

    倍率

    見方 倍率
    土地の固定資産税だけ 46,600円 → 196,000円 = 約4.2倍
    土地の都市計画税だけ 20,000円 → 42,000円 = 約2.1倍
    実際に払う総額 117,600円 → 238,000円 = 約2.0倍

    あなたの財布が感じるのは、いちばん下の行です。約2倍。6倍ではありません。

    財布が感じるのは、いちばん下です 土地の固定資産税だけ 4.2倍 土地の都市計画税だけ 2.1倍 実際に払う総額 2.0倍 最も増えるケースの試算。負担水準が低ければ緩やか

    しかもこれは「最も増えるケース」の試算です。負担水準が低い土地なら、初年度の増加は年5%刻みで進むため、これよりずっと緩やかになります。

    年間の増加額は約12万円。この記事の前提では、それでも年12万円は増えるということも同時に事実です。数字が思ったより小さかったからといって、無視していい額ではありません。


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    税が上がる前に、壊さずに売る道も見ておく

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    5. 変わるのは「翌年1月1日」からです

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    ここも誤解が多い点です。

    固定資産税・都市計画税は、その年の1月1日(賦課期日)時点の状況で課税されます。

    出典:総務省「固定資産税制度について」(PDF) p.1(2026年8月15日確認)

    したがって——

    • 1月1日時点で建物が建っていれば、その年度は住宅用地の特例が適用されます。1月2日に解体しても、その年度の税額は変わりません
    • 解体が完了し、翌年の1月1日時点で建物がなければ、翌年度分から特例が外れます
    賦課期日は1月1日です 1月1日 建物があれば、その年度は特例あり 1月2日〜12月 この間に解体しても、その年度は変わらない 翌年1月1日 建物がなければ、翌年度から特例が外れます

    つまり、1月中に解体すると、税額が上がるのは約11か月後です。逆に12月に解体すると、翌月から新しい税額の年度に入ります。

    売却が決まっていて、引渡しが翌年1月1日より前なら、税負担の増加は買主に移ります。 解体の時期は、この一点だけでも数十万円の差になり得ます。


    6. 解体しなくても特例が外れる場合があります

    見落とされがちですが、こちらのほうが深刻です。

    地方税法第349条の3の2は、住宅用地の定義から次を除外しています。

    空家等対策の推進に関する特別措置法第13条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた管理不全空家等及び同法第22条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く

    出典:国土交通省「地方税法(抄)」(2026年8月15日確認)

    つまり、建物が建っていても、市区町村長から「勧告」を受ければ住宅用地の特例が外れます。

    「管理不全空家等」は、2023年(令和5年)改正で新設された区分です。改正法は令和5年法律第50号、施行日は令和5年12月13日。「適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある空家等」と定義されています。

    出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」(PDF)(2026年8月15日確認)

    では、実際にどれくらい勧告されているのか

    令和5年度の全国集計です。

    区分 措置 件数
    管理不全空家等(新設) 指導 1,091件(92市区町村)
    同上 勧告 0件
    特定空家等 助言・指導 4,246件(374市区町村)
    同上 勧告 534件(161市区町村)
    同上 命令 74件(61市区町村)
    同上 行政代執行 33件(31市区町村)
    同上 略式代執行 94件(79市区町村)
    同上 緊急代執行 5件(5市区町村)

    出典:国土交通省作成資料「空き家対策の現状について」(令和6年12月4日)PDF(2026年8月15日確認)

    読み方を書きます。

    ① 管理不全空家等の「勧告」は、令和5年度は全国でゼロ件でした

    制度は令和5年12月13日施行なので、集計対象期間が3か月半しかありません。まず指導(1,091件)から始まっており、勧告に進んだ事例はまだ出ていない段階です。制度が動き出すのはこれからです。

    ② 特定空家等でも、助言・指導4,246件に対して勧告は534件

    助言・指導を受けた物件のうち、勧告まで進むのは約1割強です。「放置すると即座に税金が上がる」わけではありません。ただし、勧告534件は「ゼロではない」という意味でもあります。

    行政の措置がどの段階でどれだけ実行されているかは、空き家を放置するとどうなるかでさらに詳しく扱っています。



    7. 増えた分を戻してくれる自治体があります

    ここまでは全国共通の制度の話です。ただし、住宅用地特例が外れて増えた分を、自治体が減免したり補助金で戻したりする制度を持っている場所があります。

    当サイトが全国354自治体(調査時点)の要綱・規則・条例を1件ずつ読んだ範囲では、33自治体で確認できました。国の制度ではないので、ある自治体とない自治体がはっきり分かれます。そして、ほとんどが申請しないと適用されません。

    戻してくれる自治体は33 33 自治体 / 全国354自治体 減免や補助あり 33自治体(9.3%) 確認できず 321自治体

    ① 増えた分をそのまま減免する(いちばん多い型)

    自治体 期間 気をつけること
    鳴門市(徳島) 10年
    (6〜10年目は段階的に縮減)
    ★取り壊す前の事前相談と立入調査が条件。壊してからでは間に合いません
    加賀市(石川) 最長5年度 令和3年1月〜令和7年12月末に除却した空き家に限る
    坂出市(香川) 最大5年 「空き家の除却に係る土地の固定資産税の減免」
    藤枝市(静岡) 最長3年
    (税額の80%)
    売買で所有権が移ったり、跡地に建てたり使ったりすると打ち切り
    久喜市(埼玉) 最大3年 跡地を営利目的で使わないこと
    深谷市(埼玉) 3年 住宅用地特例の相当額を減免(率は非公開)
    小松市(石川) 最大3年度 「老朽危険空家解体後における固定資産税の減免制度」(税務課)
    久留米市(福岡) 最長3年 規則あり。住宅用地特例が外れた分の差額
    長崎市 3年 令和10年12月末までに除却したもの。要申請
    長浜市(滋賀) 令和2年度以後 毎年5月に減免申請書・適正管理報告書・同意書を税務課へ
    千葉市 1年度分 令和8年8月1日施行の条例。1年以上空き家だった住宅が対象
    八千代市(千葉) 制度あり 「老朽化した空家等を除却した土地の固定資産税等を減免します」
    桑名市(三重) 要綱あり 「空き家の除却に係る土地の固定資産税減免に関する要綱」(割合・年数は市に確認を)

    年数は1年から10年まで開きがあります。同じ「減免あり」でも、鳴門市の10年と千葉市の1年度では意味がまったく違います。

    ② 減免ではなく「補助金」で穴埋めする

    富士見市(埼玉)は、固定資産税そのものを減免する条例を持っていません。代わりに、増えた分を最大2年間、補助金として現金で戻すという独自のしくみになっています。税の窓口ではなく空き家対策の窓口に聞くことになります。

    ③ 建て替えるなら、そもそも上がらないことがあります

    更地のままにせず建て替える場合は、「減免」ではなく「特例をつなぐ」という別の道があります。

    自治体 内容
    府中市(東京) 同じ敷地で、原則その年の12月末日までに住宅が完成すれば、建て替え中の年度も住宅用地特例をそのまま適用
    静岡市 空き家建替え促進事業補助金に伴い、解体前と概ね同じ税負担になるよう最大2年度分を軽減

    建て替えの予定があるなら、減免より先にこちらを確認してください。手続きの期限が「その年の12月末」のように区切られていることがあり、後から気づいても戻せません。

    ④ 東京の木密地域は、区ではなく「都」の制度です

    東京23区の固定資産税・都市計画税は都税です。そのため、区の窓口に聞いても減免の話は出てきません。不燃化特区に指定された区域で老朽住宅を除却すると、東京都の制度で次の減免が受けられます。

    減免される額 土地に係る税額の8割
    期間 除却の翌年度から最長5年度分
    手続き 毎年度の申請。区から「防災上有効な更地」と認める通知をもらう必要がある区もあります
    対象外になる例 コインパーキングなど収益事業に使う/雑草が茂ったまま放置する
    申請先 区役所ではなく都税事務所

    ★いちばんの落とし穴は、区内のどこでも使えるわけではないことです。不燃化特区は地区単位で指定されていて、たとえば台東区は谷中二・三・五丁目地区、江東区は北砂三・四・五丁目地区、大田区は大森中・羽田二三六丁目・補助29号線沿道の各地区に限られます。同じ区でも、道1本外れると対象になりません。

    当サイトで特区制度の対象になることを確認できたのは、品川区・目黒区・大田区・世田谷区・杉並区・北区・荒川区・板橋区・足立区・葛飾区・江戸川区・墨田区・江東区・台東区・豊島区の15区です。新宿区は不燃化特区に指定されておらず、この減免は使えません。

    なお23区では、耐震化のために建て替えた住宅にも都の減免(新築後3年度分を全額減免、翌々年2月末までに申請)があります。壊して終わりにするか建て替えるかで、使える制度が変わります。

    ⑤ 税金は消えるが、土地は自由に使えなくなる型

    自治体 条件 効果
    横浜市 跡地を10年間、無償で市に貸し付ける(防災広場) その間の固定資産税が非課税
    大阪市 跡地を3年以上、無償で使用貸借(防災空地) 整備の翌年から契約終了年まで非課税

    ★これは減免ではなく取引です。税金はかからなくなりますが、その間は売ることも自分で使うこともできません。「すぐには売らない」と決めている土地でなければ、選ばないほうがいい選択肢です。①〜④と同じ「税が軽くなる制度」として並べて考えると、判断を誤ります。

    使う前に確認したい3つのこと

    ① ほとんどが申請主義です。黙っていて自動的に適用される制度はほぼありません。長浜市や東京都の不燃化特区のように、毎年度あらためて申請が要るものもあります。1年目だけ出して2年目を忘れる、が起きやすい形です。

    ② 「解体する前に相談」が条件のものがあります。鳴門市は事前の立入調査を受けずに解体すると10年間の減免が受けられません。伊万里市も「必ず解体工事前に相談」と案内しています。壊してから調べ始めると、間に合わない制度があります。

    ③ 期限つきの制度が多いです。加賀市は令和7年12月末までに除却したもの、長崎市は令和10年12月末まで、というように対象期間が区切られています。数年前に調べた情報が、いまも生きているとは限りません。

    そして、ここに名前が出てこない自治体でも「制度がない」と決まったわけではありません。公表されていないだけのことが普通にあります。解体を決める前に、市区町村の税務課(資産税担当)に「空き家を解体した後の土地の固定資産税に、減免はありますか」と一言聞いてください。これが最も確実です。

    お住まいの自治体に解体費の補助金があるかどうかは、空き家解体補助金の全国一覧から確認できます。各自治体のページに、跡地の条件や固定資産税の扱いもまとめてあります。

    増える税金の前に、戻ってくる補助金を数える

    解体で税額が上がる話をしてきましたが、入ってくる側も数えないと判断できません。全国394自治体のうち256自治体が空き家の解体費に補助を出しています。上限額の大きい順です。

    自治体上限額
    北海道札幌市850万円
    岡山県岡山市(地域活性化除却)200万円
    東京都墨田区最大200万円
    東京都板橋区200万円
    秋田県大仙市危険型200万円/迷惑型100万円/…
    兵庫県たつの市160万円(市税条例第24条第1項に…
    兵庫県丹波市160万円(判定100点以上。50点…
    愛媛県松山市160万円
    香川県三豊市160万円
    北海道札幌市(地域連携型)150万円
    東京都杉並区150万円
    山形県米沢市市町村民税所得割が非課税なら最大12…

    該当は全部で256自治体です。全国の一覧表で実家のある市区町村を確認してください。

    たとえば上限50万円の補助が使えるなら、税額が年間で数万円増えたとしても、回収に何年かかるかを計算できます。実家のある市区町村の上限額を確認してから、この記事の計算に戻ってください。

    8. 結局、解体すべきかどうか

    税金だけで判断すると間違えます。判断材料は少なくとも4つあります。

    ① 解体費用そのもの

    数十万円〜数百万円かかります。そして解体費の坪単価には、公的統計が存在しません。 民間の数字は出典によってばらつきます。この点は実家の解体費用はいくら?で、根拠のある項目だけを使ったシミュレーターとともに整理しています。

    ② 自治体の補助金

    解体補助制度がある自治体では、数十万円〜数百万円が戻ります。ただし着工前の申請が必須で、予算枠に達すると年度途中で締め切られます。

    そして、制度の有無は自治体でまったく違います。政令指定都市20市を調べたところ、「空き家」の名称がついた解体補助があるのは11市のみでした。市区町村ごとの制度は解体補助金データベースにまとめています。

    ③ 税金の特例——ここが最も大きい

    空き家の3,000万円特別控除を使えば、譲渡所得から最大3,000万円が控除されます。この特例は「家屋を取り壊して土地を売る」ケースを対象に含んでいます。

    つまり、解体は税負担を増やす行為であると同時に、はるかに大きな税負担を減らす行為でもあります。 年12万円の固定資産税増と、最大600万円超の節税を、同じ天秤に載せてはいけません。

    要件と期限は空き家の3,000万円特別控除にまとめています。2025年以降に相続した方の実質的な期限は2027年12月31日です。

    ④ 売りやすさ

    古家付きのまま売るか、更地にして売るかで、買主層も価格も変わります。古家付き土地として売るか、更地にして売るかで、税金を含めた損得を比較しています。


    まとめ

    • 「解体すると固定資産税6倍」は不正確。土地の固定資産税で最大約4.2倍、実際に払う総額では約2倍程度に収まることが多い
    • 根拠は負担調整措置(非住宅用地の課税標準は評価額の70%が上限)と、建物分の税金が消えること
    • 税額が変わるのは翌年1月1日を跨いでから。解体の時期で1年ずれる
    • 解体しなくても、勧告を受ければ特例は外れる。令和5年度の特定空家等の勧告は534件
    • 判断は税金単体ではなく、解体費・補助金・3,000万円控除・売りやすさの4つを並べて行う

    よくある質問

    ここは「自分の家だといくらになるのか」を自分で出せるところまで書きます。根拠の条文も示します。

    Q. 解体すると本当に6倍になりますか。

    A. なりません。「6倍」は土地の課税標準額だけを見た数字で、しかも上限の話が抜けています。

    本文で計算したとおり、実際には非住宅用地の課税標準額には「評価額の70%」という上限があるため、土地の税額はおおむね4.2倍にとどまります。さらに建物の固定資産税がまるごと消えるので、土地と建物を合わせた総額では2倍程度という例が出てきます。

    Q. なぜ4.2倍なのですか。

    A. 非住宅用地の課税標準額は、評価額の70%が天井だからです。

    0.70 ÷ (1/6)= 4.2倍。これが上限まで行ったときの姿です。「6倍」は住宅用地特例(1/6)の逆数をそのまま倍率にしただけの数字で、天井の存在が抜けています。

    Q. なぜ総額では2倍程度なのですか。

    A. 建物にかかっていた固定資産税・都市計画税がゼロになるからです。

    土地の増加分と、建物分の消滅を合算すると、財布が感じるのは約2倍です。ただしこの前提が崩れる場合があります。あとの「税額がゼロのまま」のQを必ず読んでください。

    Q. いきなり4.2倍になるのですか。

    A. なりません。負担調整措置があり、1年あたり評価額の5%ずつしか課税標準は上がりません。数年かけて、じわじわ上がっていきます。

    ここは、判断に直結します。「解体したら来年からいきなり4.2倍」ではないので、1〜2年で売り切る前提なら、上限まで行く前に手放せます。

    Q. 「6分の1」「3分の1」の根拠はどこにありますか。

    A. 地方税法349条の3の2です。条文で確認できます。

    区分 課税標準 根拠
    小規模住宅用地
    (200㎡以下の部分)
    価格の6分の1 地方税法349条の3の2第2項
    一般住宅用地
    (200㎡を超える部分)
    価格の3分の1 同第1項

    出典:e-Gov法令検索「地方税法」(2026年8月16日確認)

    200㎡は約60坪です。実家の敷地がこれを超えていれば、超えた部分はもともと6分の1ではなく3分の1で計算されています。「6倍になる」という説明が、そもそも敷地の一部にしか当てはまらないわけです。

    Q. 自分の家だといくらになるのか、計算できますか。

    A. 課税明細書があれば、電卓で出せます。毎年4〜6月に届く固定資産税の納税通知書に同封されています。

    この順番でやってください

    1 課税明細書で土地の「価格(評価額)」と「課税標準額」の2つを見つけます。この2つは別物です。いま特例が効いているので、課税標準額のほうがずっと小さいはずです
    2 実際に行き着く先=価格 × 0.6。本文の負担調整措置の表のとおり、年5%ずつ上がるのは負担水準60%までで、60%〜70%の間は前年度に据え置きだからです。法律上の天井は70%ですが、そこまで自動では上がりません
    3 初年度に増える分 = 価格 × 5% × 1.4%。課税標準は1年あたり評価額の5%ずつしか上がりません。いきなり天井には行きません
    4 上がりきるまでの年数 =(0.6 − いまの課税標準額÷価格)÷ 0.05。これが「猶予の年数」です。住宅用地特例が効いていた土地(およそ1/6=16.7%)からなら、8〜9年かかります
    5 最終的な増加分は(価格×0.6 − いまの課税標準額)× 1.4%(標準税率。自治体により異なります)
    6 課税明細書で家屋の税額を確認し、③と⑤から引きます。解体すれば家屋の分は消えるからです
    7 都市計画税がかかる地域なら、同じ計算を税率0.3%以下でもう一度やって足します

    ここまでやると、3つの数字が出ます。①来年いくら増えるか ②最終的にいくらまで増えるか ③そこに届くまで何年あるか。

    「6倍」という言葉ではなく、この3つで判断してください。実際にやってみると、初年度の増加は思っていたより小さいことが多いです。そして③の年数が、売却に使える時間になります。

    ここは、正確に書いておきます

    本文では「理論上の最大倍率は 0.70 ÷(1/6)= 4.2倍」と書きました。これは法律上の天井(評価額の70%)から出した数字です。ですが負担調整措置で自動的に上がっていくのは負担水準60%までで、60%〜70%の間は前年度に据え置きです。

    つまり、いま特例が効いている土地が解体後に自力でたどり着くのは、おおむね評価額の60%=もとの3.6倍前後で、しかも8〜9年かけて、です。4.2倍は「上限として法律が許している値」であって、あなたの土地が来年そこへ行く数字ではありません。

    Q. 税額がゼロのままということはありますか。

    A. あります。そして、その場合はこの記事の結論が変わります。

    地方税法351条は「固定資産税の免税点」を定めています。同一の市町村内で同じ人が持っている固定資産について、課税標準となるべき額が土地は30万円、家屋は20万円に満たない場合、市町村は固定資産税を課することができません(ただし条例で定めれば課税できます)。

    出典:e-Gov法令検索「地方税法」351条(2026年8月16日確認)

    ここが、当サイトの計算の弱点です。正直に書きます。

    この記事は「建物の固定資産税が消えるから、総額では2倍程度に収まる」と説明してきました。ですが築古で家屋の課税標準額が20万円未満なら、そもそも家屋の固定資産税は最初からゼロです。消える税金が無いので、土地の増税だけがそのまま効きます。

    課税明細書で家屋の税額が0円になっていないか、必ず確かめてください。地方の古い実家ほど、この可能性があります。

    Q. いつから上がりますか。

    A. 解体した翌年の1月1日を基準に、その年度からです。

    固定資産税は1月1日時点の状況で決まります。つまり年内に解体しても、その年の税額は変わりません。上がるのは翌年度からです。

    ここから、実務上の答えが出ます

    • 解体して、翌年の1月1日までに売り切れば、上がった税金は1円も払いません
    • 逆に1月2日に解体すると、増税の開始まで約1年の猶予があります
    • 年末ギリギリの解体がいちばん損です。数日の違いで、まる1年分の増税が前倒しになります

    売却とセットで考えるなら、解体の時期は交渉材料になります。古家付きのまま売るという選択肢も含めた比較は古家付きで売るか、更地にするか(税金込み)にあります。

    Q. 解体しないまま特例が外れることはありますか。

    A. あります。しかも2023年の法改正で、外れる範囲が広がりました。

    地方税法349条の3の2第1項は、住宅用地から次の2つを除いています。

    空家法22条2項の勧告を受けた特定空家等の敷地 従来から対象
    空家法13条2項の勧告を受けた管理不全空家等の敷地 2023年改正で追加。「そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある状態」で対象になります

    出典:e-Gov法令検索「地方税法」349条の3の2・「空家等対策の推進に関する特別措置法」13条・22条(2026年8月16日確認)

    引き金は「指定」ではなく「勧告」です。そして特定空家まで悪化していなくても、その手前の段階で勧告を受ければ外れます。手続きの流れと、通知が届いたときの対応は特定空家に指定されるとどうなるかにまとめました。

    解体費の相場と、施主がやる手続き自分の自治体に補助金があるか調べる持ち続けた場合の年間維持費と比べる

    この記事で確認できなかったこと

    • 地方税法附則第18条の条文原文:e-Gov法令検索が動的描画のため本文を直接取得できず、総務省・大阪市の公式説明で内容を確認しました
    • 令和6年度以降の特定空家等・管理不全空家等の全国集計:本記事執筆時点で確認できた最新は令和5年度分でした

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    税額の増加と、解体費用を並べて判断する

    この記事の試算では、解体による税負担の増加は年12万円程度でした。判断に必要なもう片方の数字が、解体費用そのものです。相場は建物の構造と立地で大きく振れるため、実額は見積りで確認するしかありません。解体の窓口は、物件の情報を入れると付近の解体業者が次々に見積り金額を提示していくという形のマッチングサービスです(同社は「逆オークション」と呼んでいます)。同社サイトには対応エリアは47都道府県、登録業者は1,100社以上と書かれています(社数は2022年6月時点の記載)。

    ①同社サイトには「ご利用は無料。ご成約後の請求も一切ございません」と書かれています。
    ②同社は「契約まで、業者からご連絡がいくことはございません」と説明しています。
    ③申し込みには物件の情報と写真が要ります。遠方の実家で写真が手元にないなら、次に帰ったときに外観と傷んでいる箇所を撮っておいてください。
    ④解体する予定がないなら申し込まないでください。重複した申込や、連絡先が実在しない申込は無効と明記されています。
    ⑤1社の見積りだけで決めないでください。地元の解体業者にも自分で1社あたって、金額の桁が合っているかを確かめてください。
    ⑥解体補助金を使う予定があるなら、契約・着工の前に自治体へ申請してください。着工後の申請は原則として通りません。

    解体の窓口で、無料シミュレーションを試す

    解体すると空き家の3,000万円特別控除が使える場合があります。税額の増加より、こちらのほうが桁が大きくなることがあります。解体費用の相場そのものは実家の解体費用はいくら?にまとめています。

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    税額の比較に使う「解体費」も、1社の見積りでは決まりません

    この記事で並べた「税の増加額」と「解体費」の比較は、解体費の数字が確かでないと成り立ちません。同じ家でも、業者によって数十万円変わります。上のサービスは業者のほうから金額が集まってくる形、解体工事一括netは施主が業者と直接契約する形です。集め方が違えば、出てくる業者も金額も変わります。

    ①更地にすると住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税が上がります。この記事で書いたとおり、上がり方は最大4.2倍です。解体費が下がっても、翌年からの税負担は消えません。両方を並べて判断してください。
    ②補助金を使う予定があるなら、見積りより先に自治体へ連絡してください。ほとんどの制度が「交付決定の前に契約したら対象外」です。
    複数の業者から連絡が来る仕組みです。電話を受ける時間が取れないなら、希望する連絡手段を備考欄に書いてください。
    いちばん安い1社をそのまま選ばないでください。マニフェスト(産業廃棄物管理票)の写しを出せるか、建設リサイクル法の届出を代行するか。安すぎる見積りは、ここを省いていることがあります。
    サービス内容の説明は同社サイトの記載であって、当サイトが確かめた事実ではありません。

    解体工事一括netで見積もりを比べる(無料)

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  • 不動産一括査定の営業電話|宅建業法で止められる範囲と、断り方

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    最終更新:2026年8月15日

    結論だけ先に

    • 一括査定の営業電話は、宅建業法で規制されています。断ったあとの再勧誘、迷惑な時間帯の電話は違反です
    • 「契約しない」と明確に伝えること。「検討します」では止まりません
    • 電話を確実に避けるなら、匿名査定・AI査定から始める

    根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

    この記事の立場

    不動産一括査定サイトの最大のデメリットは、営業電話です。これは事実です。

    ただし、多くの記事が「電話がかかってくるので覚悟しましょう」で終わっています。この記事は違うことを書きます。

    不動産会社の電話勧誘には、宅地建物取引業法で明確な禁止規定があります。 断ったあとにかけ直してくることも、迷惑な時間帯にかけてくることも、法令違反です。そして違反は行政処分の対象になります。

    つまり、「覚悟する」のではなく、知っていれば止められます。

    この記事では、①法令上あなたが持っている権利、②各社が公式に何を公表しているか、③電話を最小化する具体的な申し込み方——の順に書きます。


    1. あなたには、電話を止める法的根拠があります

    宅地建物取引業法第47条の2第3項および同法施行規則第16条の11は、宅建業者の勧誘について次の行為を禁止しています。

    # 禁止されている行為
    ① 勧誘に先立って、商号または名称・勧誘を行う者の氏名・勧誘をする目的である旨を告げずに勧誘を行うこと
    ② 相手方が契約を締結しない旨の意思を表示したにもかかわらず、勧誘を継続すること(再勧誘の禁止)
    ③ 迷惑を覚えさせるような時間の電話または訪問による勧誘

    出典:国土交通省 報道発表資料「宅地建物取引業法施行規則の一部改正について」(平成23年8月31日)。施行日は平成23年10月1日。(2026年8月15日確認)

    これらは訓示ではありません。国土交通省の「宅地建物取引業者の違反行為に対する監督処分の基準」において、①②③はそれぞれ処分基準の項目として整理され、指示処分・業務停止処分の対象とされています。

    さらに国土交通省 関東地方整備局は、施行規則第16条の12第1号ハを根拠に、「電話による長時間の勧誘その他の私生活または業務の平穏を害するような方法により困惑させる」行為を禁止行為として名指しし、苦情の相談窓口(建設産業第二課)を公開しています。

    ※現行の宅地建物取引業法施行規則では、この禁止行為は第16条の11第1号ヘに置かれています(2026年9月3日にe-Gov法令検索で全文を確認。同規則に第16条の12はありません)。上の引用は、この記事が参照した資料の表記のままにしてあります。

    出典:国土交通省 関東地方整備局「宅地建物取引業者からの悪質な勧誘電話等にご注意ください。」(2026年8月15日確認)

    実務上、これが意味すること

    「もう結構です。今後の電話は不要です」と一度明確に伝えれば、それ以降の勧誘電話は法令違反になります。

    曖昧に「検討します」と言うと②の要件を満たしません。「契約しない」という意思表示が必要です。以下のように、はっきり言い切ってください。

    「他社に決めましたので、御社にお願いすることはありません。今後のご連絡は不要です。」

    そのうえで、日時・担当者名・会社名を記録しておきます。国民生活センターも同様のアドバイスを公開しています。

    「不動産業者に対して、もう電話をしないよう明確に指示することができる」「電話を受けた日時や担当者名、会社名などを記録しておく」
    — 国民生活センター「自宅を売ってほしいという不動産業者の勧誘が迷惑なのでやめさせたい」(2021年10月28日公開/2026年8月15日確認)

    それでも続く場合の連絡先は、消費者ホットライン 188、または免許行政庁(地方整備局・都道府県の宅建業担当課)です。

    なぜこの規制が2011年にできたのか

    背景には、実際のトラブルがあります。国民生活センターは2021年、高齢者の自宅売却トラブルについて注意喚起を出しました。

    • 2020年度の相談のうち、70歳以上が52.3%
    • 一人暮らしの高齢者が訪問で長時間の勧誘を受け、説明も書面もないまま強引に売却契約をさせられた事例
    • 登記情報を参考にした売却勧誘のはがきが迷惑という相談

    そして重要な指摘があります。自宅の売却契約はクーリング・オフできません。

    出典:国民生活センター「高齢者の自宅の売却トラブルに注意 – 自宅の売却契約はクーリング・オフできません!」(令和3年6月24日)

    親が一人で実家に住んでいる場合、あるいは親名義のまま空き家になっている場合、この注意喚起は他人事ではありません。


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    電話が何社も来るのが嫌なら、1社に絞る方法もあります

    一括査定は、複数社に同時に情報が渡る仕組みです。買取なら、やり取りする相手は最初から1社だけです。そのぶん手取りは仲介より下がるので、金額を見てから選んでください。

    先に断っておきます。買取は、仲介で売れた場合より手取りが下がります。それでも見る価値があるのは、比較対象の数字が手に入るからです。運営は株式会社ネクサスプロパティマネジメント(宅地建物取引業免許:国土交通大臣(1)第10311号)。同社は「個人情報の入力は不要、匿名のまま利用でき、営業電話もありません」という匿名のAI査定も公開しています(入力3項目・最短30秒/2026年6月20日 同社発表)。まだ売ると決めていない段階なら、まず匿名のほうで桁だけ確かめてください。ただし匿名で出るのは機械的な概算です。実際の金額を知るには、連絡先を入れて査定を申し込む必要があります(申し込めば担当者から連絡が来ます)。

    ラクウルで買取価格を出してもらう(無料)

    売ると決めてから調べるものではありません。決めるために調べるものです。年間の維持費は空き家の維持費を実額で積み上げた記事にまとめました。

    2. 各社が「電話について何を公表しているか」

    ここからは、各サービスの公式サイトに書いてあることだけを並べます。第三者記事の記述は採用していません。

    サービス 電話連絡の要否 メールのみ選択 匿名査定 最大依頼社数 要望欄
    すまいValue 査定結果の通知はメールか電話を選択可 可能(公式FAQに明記) メニューとしての明記なし 6社 あり(ご要望・その他連絡事項)
    LIFULL HOME’S(簡易・匿名査定) 「依頼しただけで望まない電話営業を受ける心配はありません」 概算価格はメール通知 明記あり 最大13社、平均4社 —
    イエウール 結果は「メール、電話、またはマイページ」 公式コラムで備考欄にメール希望と記載する方法を案内 別ツールのAI査定は「登録不要・完全匿名」と明記 6社 あり(備考欄)
    リビンマッチ 電話が来る前提で説明 要望欄でメール希望を記載可 電話番号・名前なしで依頼できる導線あり(優先度は下がる) 6社 あり(対応しやすい時間帯も記載可)
    HOME4U 「電話でも売却査定依頼をお受けします」(必須かは記載なし) 記載なし 記載なし 6社 入力欄あり(連絡方法希望の可否は明記なし)
    RE-Guide 記載なし 記載なし 記載なし 記載なし 記載なし
    おうちクラベル 記載なし 記載なし 記載なし(AI査定機能は明記) 記載なし 記載なし

    出典:各サービス公式サイト(2026年8月15日確認)

    この表から読み取れること

    ① 「メールのみ」を公式に選べると書いてあるのは、すまいValueだけです

    すまいValueは公式FAQで「メールかお電話、いずれかの方法をお選びいただけます」と明記しています。ここが公式に選択肢として用意されている唯一のサービスでした。

    イエウールとリビンマッチは、備考欄・要望欄に書くという運用を公式コラムで案内しています。これは「選択肢」ではなく「お願い」です。効果は不動産会社次第です。

    ② 電話を確実に避けたいなら、匿名査定です

    LIFULL HOME’Sの簡易査定は「依頼しただけで望まない電話営業を受ける心配はありません」と公式に明記しています。HowMaも「AI事前査定は匿名(お名前や電話番号は不要)」と公式FAQに書いています。ただしHowMaは、不動産会社による詳細査定(コラボ査定)については「個人情報の提供が必要になります」と併記しています。

    出典:LIFULL HOME’S 簡易査定/HowMa よくある質問(2026年8月15日確認)

    ③ 依頼社数=最低限かかってくる電話の本数です

    イエウールの公式コラムには、こう書かれています。

    6社に依頼すれば、最低でも6社から電話がかかってくる

    これは正直な説明です。依頼社数を絞ることが、電話を減らす最も確実な方法だということでもあります。

    ④ 公式サイトで何も書いていないサービスがあります

    RE-Guideとおうちクラベルは、電話連絡の要否・メールのみの可否・匿名査定・最大依頼社数のいずれも、公式サイトで確認できませんでした。「書いていない」ことは「電話が来ない」ことを意味しません。


    3. 個人情報はどこへ行くのか

    一括査定は、あなたの情報を不動産会社に渡す仕組みです。各社のプライバシーポリシーには、それが明記されています。

    • イエウール:「ユーザーから取得した情報をユーザーに代わって第三者(ユーザーに直接サービスを提供する者)に提供するため」を利用目的として明記(出典)
    • HOME4U:「利用者が提携不動産会社から営業を受けることを希望する場合」に限り、氏名・電話番号・メールアドレス・住所・年齢等を提携不動産会社に提供する旨を記載(出典)
    • リビンマッチ:提携企業へ情報を開示し、さらに提携企業から「販売会社、フランチャイズ・ボランタリーチェーン等の加盟店、サービス提供企業等」への再提供があり得ると明記(出典)

    いずれも2026年8月15日確認

    リビンマッチの「再提供」の記述は、他社にはあまり見られない範囲の広さです。良い悪いではなく、書いてある内容が各社で違うということです。気になる方は、申し込む前にプライバシーポリシーの第三者提供の項だけでも読んでください。


    4. 電話を最小化して査定を取る手順

    以上を踏まえた、実務的な順番です。

    ステップ1:まず自分で相場を調べる(電話ゼロ)

    国土交通省の不動産情報ライブラリで、実際の取引価格を調べられます。この段階では誰にも連絡は行きません。手順は実家の売却相場を調べる3つの方法にまとめています。

    ステップ2:匿名査定・AI査定で桁を確認する(電話ゼロ)

    LIFULL HOME’Sの簡易査定やHowMaのAI事前査定は、個人情報なしで概算がわかります。ここで「だいたい何千万円台か」を掴みます。

    ステップ3:依頼社数を絞って本査定に進む

    6社に依頼する必要はありません。 3社で十分に比較できます。多くのサービスは、依頼する会社をチェックボックスで選べます。

    このとき、備考欄に次のように書いておきます。

    平日日中は電話に出られません。まずはメールでご連絡ください。訪問査定の可否は、メールでの提案を拝見してから判断します。

    法的に相手を拘束するものではありませんが、この一文があるかないかで対応は変わります。

    ステップ4:断る会社には、はっきり断る

    3社に依頼すれば2社は断ることになります。ここで曖昧にすると電話が続きます。前述のとおり、「契約しない」という明確な意思表示をしてください。それ以降の勧誘は法令違反です。


    5. 電話のほかに、知っておきたい構造があります

    営業電話に隠れがちですが、一括査定には別の構造的な問題があります。

    査定額は「売れる価格」ではありません

    査定は、媒介契約(売却を任せてもらう契約)を取るための営業活動でもあります。高い査定額を出した会社が、高く売ってくれる会社とは限りません。

    レインズの市況データでは、中古戸建の新規登録価格(売出価格)と成約価格には継続的に乖離があります。2026年7月度の首都圏では、新規登録価格4,846万円に対し成約価格3,933万円でした(東日本レインズ Market Watch 2026年7月度)。

    この構造と、各社の実績を比較可能な形に揃えた分析は、不動産一括査定サイト比較ランキングで扱っています。

    「囲い込み」のリスク

    媒介契約を結んだあと、他社からの購入希望を遮断して自社で買主を見つけようとする行為(囲い込み)の問題があります。これも比較記事で扱っています。


    まとめ

    • 一括査定の営業電話は、宅建業法で規制されています。断ったあとの再勧誘、迷惑な時間帯の電話は違反です
    • 「契約しない」と明確に伝えること。「検討します」では止まりません
    • 電話を確実に避けるなら、匿名査定・AI査定から始める
    • 本査定は社数を絞る。6社に依頼すれば6社から電話が来ます
    • メール希望を公式に選べるのは、確認できた範囲ではすまいValueだけでした

    よくある質問

    ここはそのまま使える言い方を載せます。知っているかどうかで、かかってくる電話の本数が変わります。

    Q. 営業電話を断る法的根拠はありますか?

    A. あります。宅地建物取引業法第47条の2第3項および同法施行規則第16条の11は、契約を締結しない旨の意思を表示した相手に勧誘を継続することを禁止しています。指示処分・業務停止処分の対象です。

    つまり「我慢するもの」ではありません。あなたが一度はっきり断れば、その後の電話は法令違反になります。

    Q. どう言えば「断った」ことになりますか?

    A. 「契約しない」という意思が伝わる言い方でなければ意味がありません。曖昧な返事は、断ったことになりません。

    これでは断ったことにならない これなら断ったことになる
    「検討します」 「御社とは契約しません。今後の電話・訪問は不要です。」
    これだけで足ります。理由を説明する必要はありません
    「今は忙しいので」
    「また連絡します」
    「家族と相談します」

    気まずさを感じる必要はありません。あなたが断ったあとにかけ直すことは、相手にとって行政処分のリスクになる行為です。はっきり言うことが、お互いのためになります。

    メールやフォームで断る場合も同じです。「御社とは契約しません。今後のご連絡は不要です。」と書いて送ってください。文字で残るぶん、こちらのほうが確実です。

    Q. 夜間の電話も違反ですか?

    A. 迷惑を覚えさせるような時間の電話は禁止されています。そして、申し出るときに効くのは記録です。

    1行でいいので、こう残してください

    記録すること 例
    日時 8月16日 21時40分
    会社名・担当者名 ○○不動産・△△
    何回目か 断ってから3回目
    断った日 8月10日に「契約しません」と伝えた

    「断った日」が入っているかどうかが、いちばん重要です。禁止されているのは「断ったあとの勧誘」なので、いつ断ったかが分からないと、話が前に進みません。

    Q. 電話ではなくメールで連絡してもらえますか?

    A. 申し込みの段階で書いておくのが、いちばん効きます。サービスによっては、備考欄・要望欄に希望を書けます。

    そのまま貼れる文例です。

    連絡はメールのみでお願いします。電話でのご連絡はご遠慮ください。
    どうしても電話が必要な場合は、平日18時以降にお願いします。

    「電話しないで」だけだと、会社側が困って結局かけてきます。代わりの手段(メール)と、やむを得ない場合の条件(時間帯)まで書いておくと、通りやすくなります。

    それでも電話が来た場合は、1回目で上のQの言い方を使って断ってください。そこからが法令の出番です。

    先に自分で相場を掴んでおくと、電話で焦らされません。「今なら○○万円で買いたい人がいます」と言われたときに、その数字が高いのか安いのかを自分で判断できるからです。調べ方は実家の売却相場を30分で調べる手順にまとめました。

    Q. 断ったのに電話が止まりません。どこに相談すればいいですか。

    A. その会社の免許を出している行政庁です。免許番号を見れば分かります。

    「○○県知事(○)第○号」 1つの都道府県だけに事務所がある会社。その都道府県庁の宅建業の担当課へ
    「国土交通大臣(○)第○号」 複数の都道府県に事務所がある会社。主たる事務所を管轄する地方整備局等へ

    免許番号は、会社のウェブサイトや名刺に必ず書いてあります。分からない場合は、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で宅地建物取引業者を検索できます(同システムは12業種を対象にしています)。

    出典:国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」(2026年8月16日確認)

    相談の前に、上のQで作った記録を手元に用意してください。「いつ断って」「その後いつ何回かかってきたか」が揃っていれば、話が早く進みます。

    Q. 契約してしまったらクーリング・オフできますか?

    A. 自宅の売却契約はクーリング・オフできません。クーリング・オフは、宅建業者が売主になる取引で買主を保護する制度なので、あなたが売主の場合は対象外です。ここを誤解していると危険です。

    ただし媒介契約の解除は別の話です。専任媒介契約の有効期間は3ヶ月を超えられません(宅地建物取引業法34条の2第3項)。それより長い期間を定めても3ヶ月になります。途中解除の可否は契約書の定めによるので、契約する前に必ず確認してください。

    そもそも営業電話が苦手なら、売り方を変えるという手もあります。不動産会社に直接買い取ってもらう方法なら、相手は1社だけです。ただし手取りは仲介より下がります。その差がどれくらいかは仲介と買取の差額を実データで比べるで計算しました。

    査定を依頼する会社を比べる契約後に囲い込まれていないか確かめる方法実家じまい全体の流れに戻る

    この記事で確認できなかったこと

    • HOME4Uの「メール連絡のみを選べるか」「匿名査定の可否」は、公式サイトで明記を確認できませんでした
    • RE-Guide・おうちクラベルの電話連絡の要否・最大依頼社数は、公式サイトで確認できませんでした
    • LIFULL HOME’Sのプライバシーポリシー本体(不動産会社への個人情報提供条項の原文)には到達できませんでした
    • 消費者庁が単独で出した「不動産一括査定サイト」に特化した注意喚起は、見つかりませんでした

    いずれも「存在しない」ではなく「当サイトの調査で確認できなかった」という意味です。

    実家のある場所 申し込める窓口
    東京・神奈川・大阪・兵庫 ノムコムのみ
    岐阜(岐阜市)/静岡(浜松市)/福岡(福岡市・太宰府市)/熊本(熊本市・合志市) ナカジツのみ
    愛知 名古屋市は両方。名古屋市以外はナカジツ(県内22店舗)
    千葉・埼玉 両方。ナカジツは船橋・千葉・市川・松戸・柏/川口・草加
    上記以外の道府県 どちらも対象外です。申し込んでも査定は返ってきません
    ナカジツの店舗所在地は同社の店舗一覧(2026年8月19日確認・全40店舗)、ノムコムの営業エリアは野村不動産ソリューションズの店舗案内(2026年8月17日確認)で確認しました。県が合っていても、店舗から遠い市町村は受け付けられないことがあります。

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    愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本の実家なら、もう1社あります

    不動産SHOPナカジツは、40店舗すべてを直営で運営している会社です。そのうち39店舗が、上の表の7県にあります(残る1店舗は東京都小平市ですが、査定の受付エリアに東京は入っていません)。ノムコムが対応していない岐阜・静岡・福岡・熊本と、名古屋市以外の愛知県は、こちらなら受け付けられます。一括査定ではなく1社なので、連絡は1件だけです。仲介・買取・買取保証付き仲介を自社で扱うため、複数社に出さなくても売り方の比較はできます。

    申し込む前に、4つだけ確認してください。①対応しているのは上の表の市区町村とその周辺だけです。県が合っていても、店舗から遠い地域は受け付けられないことがあります。②申し込むと30日以内に電話またはメールで連絡が入り、物件の状況を聞かれます。所在地・築年数・間取りを答えられるようにしておくと早く終わります。③申し込めるのは名義人か、そのご親族だけです。相続した実家なら、相続人であるあなたが申し込めます。名義人と関係のない方からの問い合わせは受け付けられません。④売却を考えていない相談は対象外です。迷っている段階なら「まだ決めていませんが、金額を知りたい」と伝えてください。

    不動産SHOPナカジツに無料査定を依頼する(愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本)

    窓口が1社でも連絡が煩わしいときは、この記事で書いた断り方をそのまま使ってください。一括査定サイトの比較も、必要になってからで間に合います。

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    電話を最小限にしたいなら、一括ではなく単独という手

    この記事で書いたとおり、6社に依頼すれば最低6社から電話が来ます。連絡の本数を抑えたい方には、一括査定サイトではなく不動産会社に直接1社だけ出す方法があります。連絡元が1社に限られるぶん、断る作業も1回で済みます。

    先に、場所の確認をしてください。ノムコムを運営する野村不動産ソリューションズの店舗は、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)・関西(大阪・兵庫)・名古屋にしかありません(同社の店舗案内で確認/2026年8月17日)。それ以外の地域にある実家は、査定を申し込んでも「営業エリア外」と表示され、受け付けられません。対象の地域から外れる方は、この先のリンクは飛ばしてください。申し込んでも査定は返ってきません。愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本に実家がある方は、上のナカジツが受け付けられます。

    無料査定依頼キャンペーン【ノムコム】

    ※本リンクは広告です。なお、1社だけでは比較になりません。相場観は自分で調べる3つの方法で先に作っておいてください。

    実家が11都府県の外にある方へ

    電話を1社に絞る手が使えるのは、ノムコムの営業エリア内だけです。エリア外の住所で申し込むと「営業エリア外」で弾かれ、査定は返ってきません。地方にある実家は、売る前に次の3つを先に確認したほうが、結果が変わります。

    • 全国501自治体の解体補助金データベース——実家のある市区町村に解体補助があるかを、公式ページで1件ずつ確認してまとめたものです。金額が公表されていた216自治体の中央値は50万円。申請は工事の契約・着工より前でないと、原則として通りません。
    • 実家の解体費用の相場——木造30坪で150万円前後です。ただし解体して更地にすると、土地の固定資産税が3〜4倍になります。壊す前に、売り先の見通しを立ててください。
    • 実家の売却相場を自分で調べる3つの方法——地方でも使えます。地元の不動産会社にあたる前に、自分の数字を持っておいてください。

    この3つは全国どこでも使えます。上の査定が使えない地域の方は、こちらから進んでください。

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