空き家の行政代執行|壊されても費用は所有者が払います。全国890件と、150万〜850万円という請求額

空き家を放置し続けると、最後は自治体が壊します。行政代執行です。

ここで多くの人が誤解しています。行政が壊してくれるわけではありません。行政が段取りをして、費用は所有者や相続人に請求されます。しかも金額は、自分で発注するより高くなるのがふつうです。

この記事では、国土交通省が集計した全国の件数と、近畿地方整備局がまとめた実際の費用の事例を並べます。どちらも推計ではなく、行政が公表している数字です。

結論を先に書きます

全国の代執行の累計 890件(行政代執行286・略式代執行592・緊急代執行12)
費用の負担者 所有者(または相続人)。行政が肩代わりするのではなく、立て替えて請求する
費用の実例 約150万円〜約850万円(国交省近畿地方整備局の6事例)
取り立ての強さ 国税滞納処分の例により強制徴収できる。裁判を経ずに差押えができる
回収の実態 公表された6事例のうち全額回収できたのは2件。残りは財産調査中・換価性が低い・公売予定
そこまで行く前の段階 助言・指導 → 勧告 → 命令 → 代執行。勧告の時点で土地の固定資産税の特例が外れる

数字の出どころは、国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況」(令和7年3月31日時点)と、国土交通省近畿地方整備局「事例から見る 空き家の行政代執行の実務」です。

3つの代執行は、別のものです

「代執行」とひとくくりに語られますが、法律上は3つに分かれます。どれに当たるかで、費用の請求先が変わります。

種類 どういう場合か 全国の累計 費用の請求先
行政代執行 所有者が分かっていて、命令に従わないとき 286件(175市区町村) 命令を受けた所有者
略式代執行 所有者が分からない、または所在が分からないとき 592件(296市区町村) あとから判明した所有者・相続人
緊急代執行 危険が差し迫っていて手続きを待てないとき(2023年の改正で新設) 12件(10市区町村) 所有者

件数がいちばん多いのは略式代執行です。行政代執行の2倍あります。つまり実務では「所有者が分からないまま壊す」ほうが多い。

ここが相続で実家を持った人に効いてきます。相続登記をしないまま放置していると、自治体からは「所有者が分からない空き家」に見えます。連絡が来ないまま略式代執行が行われ、あとから相続人が判明して請求が来る、という順番になり得ます。

2024年4月から相続登記は義務になりました。登記をしていないことは、通知が届かない理由になっても、支払わなくてよい理由にはなりません。

★3つの代執行は、条文の「項」が違います

上に書いた3つの代執行は、別々の法律にあるのではありません。空家法22条の、第9項・第10項・第11項です。

空家等対策の推進に関する特別措置法第二十二条
9 市町村長は、第三項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。
10 第三項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者(命令対象者)を確知することができないとき……は、市町村長は、当該命令対象者の負担において、その措置を自ら行い、又は……措置実施者にその措置を行わせることができる。この場合においては、市町村長は、その定めた期限内に命令対象者においてその措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは市町村長又は措置実施者がその措置を行い、当該措置に要した費用を徴収する旨を、あらかじめ公告しなければならない。
11 市町村長は、災害その他非常の場合において、特定空家等が保安上著しく危険な状態にある等……緊急に除却、修繕、立木竹の伐採その他……必要な措置をとる必要があると認めるときで、第三項から第八項までの規定により当該措置をとることを命ずるいとまがないときは、これらの規定にかかわらず、当該特定空家等に係る命令対象者の負担において、その措置を自ら行い、又は措置実施者に行わせることができる。
12 前二項の規定により負担させる費用の徴収については、行政代執行法第五条及び第六条の規定を準用する。

出典:e-Gov法令検索 空家法第22条第9項から第12項(全文を開いて確認/2026年9月3日)。第10項および第11項は括弧書きの一部を省略しています

3つの違いは、ここに出ています

①9項は、命令があった後の話です。「第三項の規定により必要な措置を命じた場合において」から始まります。助言・指導、勧告、命令という順番を全部通ってから動きます。そして「行政代執行法の定めるところに従い」と書かれています。手続きは行政代執行法のほうにあります。

②10項は、命令なしで進みます。「過失がなくて……確知することができないとき」。所有者が分からない、相続人が誰か分からない、連絡先が分からない。そういう場合に、命令を出す相手がいないので、命令の段階を飛ばします。これが略式代執行です。ただし「あらかじめ公告しなければならない」とあります。黙って壊されるわけではありません。

③11項は、時間がないときです。「災害その他非常の場合」「命ずるいとまがないとき」。台風で屋根が飛びそう、地震で傾いた——そういう場面です。これが緊急代執行です。

そして12項が、いちばん大事です。10項でも11項でも、費用の徴収には行政代執行法5条と6条が準用されます。「所有者が分からないまま壊した」「緊急だったから壊した」——どちらも、あとから所有者に請求されます。「命令を受けていないから払わなくていい」は、条文のどこにも書かれていません。

3つの代執行は、項が違うだけです 行政代執行 9項。命令に従わないとき 順番どおり 略式代執行 10項。相手を確知できない 公告はします 緊急代執行 11項。命ずるいとまがない 災害のとき 費用の徴収は3つとも同じです(12項)

費用はいくらか

国土交通省近畿地方整備局が、実際に行われた代執行を6件、費用と回収状況つきで公表しています。

事例 費用 内訳 回収状況
1 約600万円 解体等工事費一式 法人解散の申立て、清算人から回収予定
2 約570万円 解体工事費+設計委託費 請求(督促)、財産調査中
3 約150万円 解体費・動産調査・隣家家屋調査・界壁補強費 請求(督促)。接道が悪く換価性が低い
4 約850万円 解体等工事費一式 請求(督促)、土地を差押えて公売予定
5 約180万円 動産調査・解体費等一式 全額回収済
6 約470万円 動産調査・保管・査定・解体費等一式 全額回収済
実際の請求額は150万〜850万円 事例4 土地を差押え 約850万円 事例1 清算人から 約600万円 事例2 財産調査中 約570万円 事例6 全額回収済 約470万円 事例5 全額回収済 約180万円 事例3 換価性が低い 約150万円 国土交通省近畿地方整備局が公表した6事例です

自分で解体業者に発注する場合と比べて、高くなります。理由は3つあります。

  • 中の物を勝手に捨てられない。事例3・5・6に「動産調査」、事例6に「保管・査定」が入っています。所有者の財産なので、行政は目録を作って保管しなければなりません。この手間がそのまま費用になります。
  • 隣の家を守る工事が要る。事例3の「隣家家屋調査」「界壁補強費」がこれです。長屋や隣接した建物では、片方だけ壊すと隣が露出します。
  • 相見積りで安くする動機がない。費用は最終的に所有者に請求されます。自治体には値切る理由がありません。

当サイトが全国501自治体の解体補助金を調べたときに集めた相場では、木造30坪の解体費は100万円台から150万円台が中心でした。代執行の6事例のうち4件が、その倍以上です。

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「壊される前に手放す」も、選択肢のひとつです

この記事で見たとおり、代執行の費用は約150万円から約850万円で、国税滞納処分の例により強制徴収されます。公表された6事例のうち1件は、土地を差し押さえて公売にかける予定と書かれています。直す・解体する以外に、その状態のまま手放すという道もあります。

老朽化・違反建築・旧耐震の物件は、仲介では買主が付きにくいのが実情です。だからこそ買取という受け皿が成り立っていますが、手取りは仲介より下がります。その前提で比べてください。

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補助金が使えるなら、そちらが先です。お住まいの自治体に解体補助金があるかは全国の空き家解体補助金データベースで確認できます。補助金・解体・売却の3つを並べてから決めてください。

払わなければどうなるか——普通の借金より強い

代執行の費用は、ふつうの債権ではありません。国土交通省近畿地方整備局の資料は、こう書いています。

代執行に要した一切の費用は、行政主体が義務者から徴収する

費用の徴収については、国税滞納処分の例による強制徴収が認められる

「国税滞納処分の例による」というのが決定的です。ふつうの借金なら、貸した側は裁判を起こして勝ってから差押えに進みます。代執行の費用にはその段階がありません。税金の滞納と同じ扱いで、督促のあと直接、財産を差し押さえられます。

事例4は、まさにそれが動いている例です。約850万円を請求し、土地を差し押さえて公売にかける予定と書かれています。建物を壊されたうえで、土地も失うということです。

事例3の「接道が悪く換価性が低い」という記述も、読んでおく価値があります。売れない土地は、差し押さえても回収できません。回収できないと、その分は自治体の負担、つまりその市区町村の税金で埋められます。だから自治体は代執行に踏み切りたがらない。踏み切るのは、それでも放置できないほど危険になったときです。

★費用が「普通の借金より強い」理由は、行政代執行法6条にあります

上で「普通の借金より強い」と書きました。その根拠は、たった1条です。

行政代執行法第五条
代執行に要した費用の徴収については、実際に要した費用の額及びその納期日を定め、義務者に対し、文書をもってその納付を命じなければならない。

行政代執行法第六条
1 代執行に要した費用は、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。
2 代執行に要した費用については、行政庁は、国税及び地方税に次ぐ順位の先取特権を有する。
3 代執行に要した費用を徴収したときは、その徴収金は、事務費の所属に従い、国庫又は地方公共団体の経済の収入となる。

出典:e-Gov法令検索 行政代執行法第5条・第6条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

この2つの条文が意味するもの

①5条の「実際に要した費用の額」。見積りでも相場でもありません。かかった分がそのまま請求されます。だから動産の調査費も、隣家の補強費も、査定費も乗ります。上の6事例で金額がばらついているのは、これが理由です。

②6条1項の「国税滞納処分の例により」。これが決定的です。国が税金を取り立てるのと同じやり方で徴収できる、と書かれています。上の事例4に「土地を差押えて公売予定」とあるのは、この条文が根拠です。

③6条2項の「国税及び地方税に次ぐ順位の先取特権」。先取特権は、他の債権者より先に回収できる権利です。その順位が、国税と地方税のすぐ次だと書かれています。抵当権を持つ金融機関より前かどうかは、抵当権の登記時期との関係で決まるので一概には言えませんが、無担保の借金より強いことは条文から読めます。

従わないときと、払わないとき 命令に従わないと 50万円以下の過料 空家法30条1項 22条3項の命令 代執行もされます 費用を払わないと 国税滞納処分の例 行政代執行法6条 国税と地方税に次ぐ 順位の先取特権 過料を払っても、代執行は止まりません

手続きの前に、必ず文書が2通あります

行政代執行法第二条
法律……により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。

行政代執行法第三条
1 前条の規定による処分(代執行)をなすには、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予め文書で戒告しなければならない。
2 義務者が、前項の戒告を受けて、指定の期限までにその義務を履行しないときは、当該行政庁は、代執行令書をもって、代執行をなすべき時期、代執行のために派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額を義務者に通知する。
3 非常の場合又は危険切迫の場合において、当該行為の急速な実施について緊急の必要があり、前二項に規定する手続をとる暇がないときは、その手続を経ないで代執行をすることができる。

出典:e-Gov法令検索 行政代執行法第2条・第3条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

3条1項の「戒告」と、2項の「代執行令書」。この2通が来ます。そして令書には「費用の概算による見積額」が書かれます。いくら請求されるのかは、壊される前に分かります。

2条の「他の手段によつてその履行を確保することが困難であり」も読んでおいてください。自分で解体する、売る、譲る——他の手段が動いていれば、この要件は満たされにくくなります。戒告が来てからでも、動く意味はあります。

ただし3条3項があります。非常の場合・危険切迫の場合で緊急の必要があるときは、戒告も令書もなしに代執行ができます。空家法22条11項の緊急代執行と同じ考え方です。

そこまでの道のりは、4段階ある

いきなり壊されるわけではありません。段階があり、それぞれの段階に全国の件数があります。

段階 特定空家等 管理不全空家等 この段階で起きること
助言・指導 42,768件 3,211件 文書が届く。まだ税金は変わらない
勧告 4,153件 378件 土地の固定資産税の住宅用地特例が外れる
命令 551件 — 従わないと過料。次は代執行
代執行 286件+略式592件+緊急12件 — 強制的に壊され、費用を請求される

数字は国土交通省の集計(令和7年3月31日時点の累計)です。

助言・指導から勧告に進むのは、およそ10件に1件です。42,768件のうち勧告は4,153件。逆に言えば、指導の段階で9割は止まっています。文書が来た時点で動けば、間に合う人のほうが多い。

そして命令は551件、代執行は890件。命令より代執行のほうが多いのは、所有者不明のまま進む略式代執行が592件あるからです。

「管理不全空家等」は2023年12月にできた新しい段階です

改正空家法が令和5年(2023年)12月13日に施行され、特定空家等になる手前の段階として「管理不全空家等」が新設されました。放置すれば特定空家等になるおそれのある状態、という位置づけです。

ここが重要です。管理不全空家等でも、勧告を受ければ土地の固定資産税の住宅用地特例が外れます。特定空家等ほど傷んでいなくても、税金は上がるということです。

まだ件数は少なく、助言・指導3,211件・勧告378件です。ただし施行から1年3か月の数字です。今後増えます。

なお、住宅用地特例が外れると「固定資産税が6倍になる」とよく言われますが、これは正確ではありません。負担調整の上限があり、建物分の税金が消える分もあります。計算した結果は解体すると固定資産税は6倍になるのかにまとめてあります。土地の固定資産税で最大でも約4.2倍です。

★条文で確かめます(空家法22条)

この記事はこれまで、制度の名前と手続きの順序だけを書いてきました。条文を全文で確認したので、ここに置きます。4段階は、ひとつの条の第1項から第3項に、そのまま並んでいます。

空家等対策の推進に関する特別措置法第二十二条
1 市町村長は、特定空家等の所有者等に対し、当該特定空家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空家等については、建築物の除却を除く。次項において同じ。)をとるよう助言又は指導をすることができる。
2 市町村長は、前項の規定による助言又は指導をした場合において、なお当該特定空家等の状態が改善されないと認めるときは、当該助言又は指導を受けた者に対し、相当の猶予期限を付けて、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告することができる。
3 市町村長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。

出典:e-Gov法令検索 空家等対策の推進に関する特別措置法第22条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

条文を読むと、3つ見えてきます

①1項の括弧書きに、「建築物の除却を除く」と書かれています。倒壊等著しく保安上危険、または著しく衛生上有害——そこまでの状態にない特定空家等については、助言・指導と勧告の段階で「壊しなさい」とは言えません。草木の伐採や修繕は言えます。いきなり解体を求められるわけではない、ということが条文に書いてあります。

②2項も3項も「相当の猶予期限を付けて」です。期限のない勧告や命令は出ません。届いた文書に必ず日付が入っています。そこが残り時間です。

③3項は「正当な理由がなくて」が条件です。勧告に従えない事情がある場合に、それを説明する余地は条文上あります。ただし説明しないまま放置すれば、この条件は満たされてしまいます。

4段階は、22条の中にあります 1 助言・指導 22条1項。除却は言えないことも 2 勧告 22条2項。ここで税が上がります 3 命令 22条3項。違反は50万円以下の過料 4 代執行 22条9項。行政代執行法に従う 5 費用の徴収 同法5条で納付命令、6条で徴収

命令に違反すると、50万円以下の過料です

同法第三十条
1 第二十二条第三項の規定による市町村長の命令に違反した者は、五十万円以下の過料に処する。
2 第九条第二項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、二十万円以下の過料に処する。

出典:e-Gov法令検索 同法第30条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

過料は、命令に違反したときです。助言・指導や勧告の段階では、この条文は動きません。そして、過料を払ったからといって代執行が止まるわけではありません。別々に進みます。

管理不全空家等は、13条という別の条文です

同法第十三条(適切な管理が行われていない空家等の所有者等に対する措置)
1 市町村長は、空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認めるときは、当該状態にあると認められる空家等(以下「管理不全空家等」という。)の所有者等に対し、……当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導をすることができる。
2 市町村長は、前項の規定による指導をした場合において、なお当該管理不全空家等の状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときは、当該指導をした者に対し、修繕、立木竹の伐採その他の……必要な措置について勧告することができる。

出典:e-Gov法令検索 同法第13条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

13条には、命令も代執行もありません。指導と勧告の2段までです。その先へ進むには、22条の特定空家等に格上げされる必要があります。

ただし、税は13条2項の勧告で動きます。そこは地方税法の側に書かれています。

地方税法第三百四十九条の三の二第一項(住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例)
専ら人の居住の用に供する家屋……の敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの(……並びに空家等対策の推進に関する特別措置法第十三条第二項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第十三条第一項に規定する管理不全空家等及び同法第二十二条第二項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第二条第二項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く。以下……「住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、……三分の一の額とする。

出典:e-Gov法令検索 地方税法第349条の3の2(全文を開いて確認/2026年9月3日)

「住宅用地」の定義そのものから、勧告を受けた土地が抜かれる書き方です。特例が「取り消される」のではなく、その土地はもう住宅用地ではない、という形になっています。そして13条2項(管理不全空家等)の勧告と22条2項(特定空家等)の勧告が、同じ括弧の中に並んでいます。条文の段数が少ないことと、影響が小さいことは別です。

相続放棄すれば逃げられるのか

ここはよく聞かれるところなので、正確に書きます。

相続放棄をすれば、代執行の費用の請求は来ません。相続人でなくなるからです。ただし条件があります。

  • 相続の開始を知ってから3か月以内。この期間を過ぎると、原則として放棄できません。
  • 実家の財産に手を付けていないこと。片づけて売った、賃料を受け取った、といったことがあると、放棄が認められないことがあります。
  • 放棄しても、現に占有している場合は保存義務が残ります。2023年4月施行の民法改正で整理されました。誰も住んでいない実家を占有していなければ、この義務は原則かかりません。
  • 全員が放棄すれば、その空き家は所有者不明になります。結果として略式代執行の対象になり、費用は自治体の負担になります。

相続放棄は、実家だけを選んで捨てる制度ではありません。預貯金も株も、まとめて放棄することになります。実家の解体費より預貯金のほうが多ければ、放棄は損です。詳しくは実家が「負動産」だったら相続放棄すべきかに書いています。

いま何が届いているかで、残り時間が分かります

届いているもの いまの位置 やるべきこと
何も届いていない まだ何も始まっていない いちばん自由に選べる。売る・貸す・解体する・補助金を使う、全部の選択肢がある
助言・指導の文書 42,768件のうちの1件。9割はここで止まる 期限までに直すか、手放すかを決める。まだ税金は上がっていない
勧告 4,153件のうちの1件 翌年1月1日から土地の税額が上がります。また「勧告を受けたら補助金の対象外」とする自治体があります
命令 551件のうちの1件 従わないと過料。次は代執行。ここまで来たら専門家に相談してください

いちばん見落とされるのは「勧告を受けると補助金が使えなくなる自治体がある」という点です。放置して勧告まで進むと、税金が上がるうえに、解体費の補助まで閉じることがあります。打てる手は、時間が経つほど減ります。

解体するなら、補助金があるかを先に見る

当サイトは全国501自治体の空き家解体補助金を1件ずつ公式サイトで確認しています。そこで分かったことを3つだけ書きます。

  • 上限額の中央値は50万円です。木造30坪の解体費が100万円台からなので、補助を満額もらっても半分以上は手出しになります。
  • 501自治体のうち81自治体には、解体費の補助がありませんでした。「無いことを確認した」という意味です。
  • ほぼすべての自治体で、契約前に申請が必要です。契約してから申請しても通りません。順番を間違えると、金額に関係なくゼロになります。

お住まいの自治体に制度があるかは、全国の空き家解体補助金データベースで確認できます。制度がない自治体も「ありません」と書いています。

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代執行を待たずに壊すなら、費用から調べる

行政の手続きは、こちらの都合では止まりません。勧告まで進むと土地の税額が上がり、「勧告を受けたら補助金の対象外」とする自治体もあります。補助金は交付決定の前に契約すると対象外になるので、見積りを先に取っておかないと申請の順番が組めません。

①同社サイトには「ご利用は無料。ご成約後の請求も一切ございません」と書かれています。
②同社は「契約まで、業者からご連絡がいくことはございません」と説明しています。
③申し込みには物件の情報と写真が要ります。遠方の実家で写真が手元にないなら、次に帰ったときに外観と傷んでいる箇所を撮っておいてください。
④解体する予定がないなら申し込まないでください。重複した申込や、連絡先が実在しない申込は無効と明記されています。
⑤1社の見積りだけで決めないでください。地元の解体業者にも自分で1社あたって、金額の桁が合っているかを確かめてください。
⑥解体補助金を使う予定があるなら、契約・着工の前に自治体へ申請してください。着工後の申請は原則として通りません。

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見積書のどこを見るかは、この記事の見積書の章に戻って確認してください。お住まいの自治体の制度を先に調べておくと、受付期間に間に合うかどうかも一緒に分かります。

よくある質問

代執行の費用を払えないと、どうなりますか?
国税滞納処分の例により強制徴収されます。督促のあと、裁判を経ずに預貯金や不動産を差し押さえられます。公表されている事例のなかには、約850万円を請求し、土地を差し押さえて公売にかける予定と書かれたものがあります。自己破産で免責されるかは事案によるため、支払えない見込みなら早い段階で弁護士に相談してください。
連絡が来ていないので、うちは関係ないということですか?
そうとは限りません。全国の代執行890件のうち592件は略式代執行で、これは「所有者が分からない」場合の手続きです。相続登記をしていないと、自治体から見て所有者が分からない状態になります。通知が届かないまま進み、あとから相続人が判明して請求が来ることがあります。
助言・指導の文書が来ました。すぐ壊されますか?
いいえ。全国の累計で、特定空家等への助言・指導は42,768件、勧告は4,153件です。指導から勧告に進むのは、およそ10件に1件です。期限までに対応すれば、ほとんどはここで止まります。ただし放置すれば次に進みます。
特定空家に指定されていなくても、税金は上がりますか?
上がることがあります。2023年12月13日に施行された改正空家法で「管理不全空家等」という段階ができ、勧告を受けると土地の固定資産税の住宅用地特例が外れます。特定空家等ほど傷んでいなくても対象になります。全国の勧告は378件(令和7年3月31日時点)です。
「固定資産税が6倍になる」と聞きました。本当ですか?
正確ではありません。課税標準の特例(小規模住宅用地は6分の1、一般住宅用地は3分の1)が外れるのは事実ですが、非住宅用地には課税標準を評価額の70%までとする上限があり、建物を壊せば建物分の税金も消えます。計算すると、土地の固定資産税で最大でも約4.2倍です。詳しくは解体すると固定資産税は6倍になるのかに書いています。
自分で壊すのと、代執行で壊されるのとでは、費用はどれくらい違いますか?
公表されている6事例の費用は約150万円から約850万円です。木造30坪の解体費の相場は100万円台からなので、倍以上になっている事例が6件中4件あります。中の物を勝手に処分できず動産調査と保管が必要になること、隣家を守る工事が要ること、相見積りで安くする動機が行政側にないこと、が理由です。
相続放棄すれば、費用の請求は来ませんか?
来ません。ただし相続の開始を知ってから3か月以内で、実家の財産に手を付けていないことが条件です。預貯金も含めてすべて放棄することになるので、実家の解体費より預貯金が多ければ損になります。

この記事で確認できなかったこと

  • 全国の回収率は公表されていません。この記事の「6事例中2件が全額回収済」は、国土交通省近畿地方整備局が公表した事例集のなかでの話です。全国の代執行890件の回収状況を示す統計は見つけられませんでした。
  • 費用の事例に自治体名は書かれていません。資料が匿名で公表しているためです。
  • 件数は累計です。令和7年3月31日時点で、それまでに講じられた措置の合計です。単年度の件数ではありません。
  • 条文は全文を確認して、この記事に引用しました。空家法13条・22条・30条、行政代執行法2条・3条・5条・6条、地方税法349条の3の2を、e-Gov法令検索で開いて確認しています(2026年9月3日)。ただし、代執行の費用が実際に回収できなかった場合に自治体がどう処理しているか(債権放棄など)の運用は、確認できていません。

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