投稿者: 実家じまいナビ編集部

  • 実家を継ぐ人には、10か月で現金が要ります|生命保険の非課税枠は500万円×法定相続人。ただし相続放棄をすると、その枠だけ使えません

    実家を相続した人が、いちばん最初につまずくのはここです。相続税は「死亡を知った日の翌日から10か月以内」に、金銭で一度に納めるのが原則です。けれど実家は、10か月では現金になりません。

    この記事は、その10か月をどう渡るかという話です。生命保険には非課税の枠がありますが、相続放棄をすると、その枠だけは使えなくなります。受け取れないのではなく、枠が使えません。ここを取り違えている人が多いところです。

    この記事の根拠

    国税庁のタックスアンサーと、そこに示された根拠条文を確認して書いています。いずれも令和7年4月1日現在の法令等にもとづくページです。

    • No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金(根拠条文:相法3、12、15)
    • No.4205 相続税の申告と納税(根拠条文:相法27、33、38ほか)
    • No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算(根拠:相基通11の2-9、11の2-10)
    • No.4102 相続税がかかる場合(根拠条文:相法1の3、2、3、11〜16ほか)

    金額や割合は、これらのページに書かれている数字をそのまま使っています。推計は使っていません。

    先に、そもそも相続税がかかるのかを確かめる

    この記事の話は、相続税がかかる場合にだけ意味があります。かからないなら、納税資金の心配も要りません。判定の入口は基礎控除です。国税庁No.4102に書かれている計算式はこれです。

    基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

    法定相続人が3人なら4,800万円。「正味の遺産額が基礎控除額を超える場合は相続税がかかります」とされています。実家の評価額と預貯金を足して、この額に届くかどうかが最初の分かれ目です。

    養子の人数制限は、ここでも同じです。実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人まで。

    相続税は10か月。しかも金銭で一度に納めるのが原則です

    国税庁No.4205には、申告と納税の期限がこう書かれています。「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」です。申告だけでなく、納税も同じ期限です。

    そして納め方は、「税金は金銭で一度に納めるのが原則」とされています。延納(何年かに分けて金銭で納める)と物納(財産そのもので納める)は、あくまで「特別な納税方法」という位置づけです。

    ここに実家じまい特有の問題があります。相続財産の大半が実家という不動産の場合、10か月以内に売って現金化できるとは限りません。買い手が見つかるかは相手のあることですし、遺産分割の話し合いが終わらなければ売りに出すこともできません。

    生命保険金には、500万円×法定相続人の数の非課税枠があります

    被相続人が保険料を負担していた生命保険の死亡保険金は、相続税の対象になります。ただし非課税の枠があります。国税庁No.4114に書かれている計算式はこれだけです。

    死亡保険金の非課税限度額 500万円 × 法定相続人の数 法定相続人が3人なら 1,500万円 受け取るのが「相続人」であることが条件

    法定相続人が3人なら1,500万円までが非課税です。実家という売れるまで現金にならない財産があるとき、この枠のぶんだけは納税資金として、課税されずに手元に残せるということになります。

    相続放棄をすると、この枠は使えなくなります

    ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。No.4114には、非課税が適用されるのは「死亡保険金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません。)である場合」と書かれています。そして「相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用はありません」とも明記されています。

    受け取れないのではなく、枠が使えない

    相続放棄をした人でも、保険金そのものは受け取れます。受取人として指定されているからです。使えなくなるのは非課税の枠だけです。つまり受け取った額が、そのまま相続税の課税対象になります。

    実家じまいでは、こういう場面が起こりえます。実家に住まない子が「実家はいらないから相続放棄する」と言う。ところがその子が親の生命保険の受取人だった。放棄そのものは自由ですが、保険金にかかる税の扱いが変わります。

    それでも「法定相続人の数」は減りません

    ここが分かりにくいところです。同じNo.4114に、数え方についてこう書かれています。「法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。」

    つまり非課税枠の計算では、放棄した人も頭数には入ります。枠の総額(500万円×人数)は減りません。減らないけれど、放棄した本人はその枠を使えない。この非対称が、誤解のもとになっています。

    「1人が放棄したから枠が500万円減る」ではありません。「枠の総額は変わらないが、放棄した人が受け取った分には枠を当てられない」です。

    養子は、数えられる人数に上限があります

    法定相続人の数を数えるとき、養子には人数の制限があります。No.4114の記載はこうです。実子がいるときは1人、実子がいないときは2人まで。

    養子を増やせば非課税枠が無限に増える、ということにはなりません。

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    親の財産をどこまで洗い出すか、税理士に相談する

    口座を探すところまでは、自分でできます。ただし「相続税の申告が要るかどうか」は、預貯金・不動産・保険をぜんぶ足してからでないと分かりません。足す前の段階で、何を集めればいいかを聞いておくと手戻りが減ります。自分では判断がつきません。税理士ドットコムは、全国5,900名以上の税理士から相続に強い人を無料で紹介する窓口です。運営は東証プライム上場の弁護士ドットコム株式会社。紹介と相談は無料で、複数の税理士を比較してから選べます。親が元気なうちに相談すれば、直す時間があります。亡くなってからでは、贈与そのものが成立しません。

    申し込む前に3つだけ確認してください。①紹介は無料ですが、依頼したあとの報酬は税理士ごとに違います。見積りを取ってから決めてください。
    ②コーディネーターから電話またはメールで連絡が入り、財産の内容と地域を聞かれます。おおよその財産額と、気になっている口座の状況を答えられるようにしておくと早く終わります。
    ③相続がすでに発生している場合、申告期限は10か月です。期限が近いなら最初に伝えてください。

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    保険の受取人が誰になっているかは、契約書を見れば今日わかります。非課税枠が使えるかどうかまで含めて、親が元気なうちに一度見てもらってください。

    実家を継ぐ人と、継がない人を揃えるとき

    実家という分けにくい財産があると、1人が実家を取得して、他の人にお金を渡す形になることがあります。これを代償分割といいます。

    国税庁No.4173では、代償分割を「共同相続人などのうちの1人または数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の共同相続人などに対して債務を負担するもの」と説明しています。

    相続税の課税価格の計算はこうなります。

    立場 相続税の課税価格
    代償金を支払った人(実家を取得) 取得した現物の財産の価額 − 交付した代償財産の価額
    代償金を受け取った人 取得した現物の財産の価額 + 交付を受けた代償財産の価額

    代償金は、払う側が現金で用意しなければなりません。実家を継ぐ人にとっては、相続税とは別に、この現金も要るということです。ここでも10か月という期限が効いてきます。

    親が元気なうちに確かめておくこと

    1. 生命保険に入っているか、受取人は誰になっているか。受取人の指定は契約で決まっています。相続の話し合いで決めるものではありません。
    2. 相続放棄をしそうな人が、受取人になっていないか。放棄すると非課税枠が使えなくなります。
    3. 実家を誰が継ぐ想定か。継ぐ人には相続税と代償金の両方が現金で要ることがあります。
    4. 実家が今いくらか。相続税がかかる規模なのかどうかは、ここが分からないと判断できません。

    1と2は契約書を見れば今日わかります。親が元気なうちなら、受取人の変更もできます。

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    実家が今いくらなのかを、先に知っておく

    相続税がかかるかどうかは、預金だけでなく実家の評価額を足して決まります。親が元気なうちに実家のおおよその価格を知っておくと、対策が要るのか要らないのかが判断できます。一括査定なら、複数の不動産会社の査定額を並べて比べられます。売る前提でなくても、金額を知るだけなら無料です。数字が出てから、贈与するのか、そのまま相続するのかを考えてください。

    申し込む前に4つだけ確認してください。①申し込めるのは名義人か、そのご親族です。親名義の実家なら、親の同意を得てから申し込んでください。
    ②申し込むと不動産会社から電話またはメールで連絡が入ります。所在地・築年数・間取りを答えられるようにしておくと早く終わります。
    ③売却を考えていない段階なら、その旨を伝えてください。「今は金額だけ知りたい」で構いません。
    ④査定額は「売れる価格」ではありません。相続税評価額とも別の数字です。

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    この記事で確認できなかったこと

    • 死亡保険金が、民法上の遺産分割でどう扱われるかは書いていません。この記事で確認したのは相続税法上の扱い(No.4114、相法3・12・15)だけです。遺産分割や特別受益の扱いは民事の問題で、最高裁の判断もありますが、今回は裁判所の公開ページで原文を確認できなかったため、書いていません。
    • 実家の評価額の出し方は扱っていません。基礎控除を超えるかどうかの判定には土地・建物の相続税評価額が要りますが、その計算方法はこの記事の範囲外です。
    • 延納・物納の要件は確認していません。No.4205に「特別な納税方法」として名前が挙がっていることまでを書いています。
    • 保険商品の内容や利回りは扱っていません。この記事は税の扱いだけの話です。
    • 数字は令和7年4月1日現在の法令等にもとづくページのものです。税制は変わります。実行の前に、必ず最新のタックスアンサーと税理士に確認してください。

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  • 補助金の上限額は、1つではありません|501自治体を調べたら、上限が書かれた391件のうち124件で金額が枝分かれしていました

    「最大○○万円」という数字だけを見て、自分の実家でもその額が出ると思っていませんか。501自治体を1件ずつ開いて上限額の欄を読んだところ、その多くは「1つの数字」ではありませんでした。

    この記事の数字がどこから来ているか

    当サイトが収録している501市区町村の解体補助金データベースから、上限額と補助率の欄を全件そのまま数えたものです。金額は各自治体の公式ページに書かれていた表記をそのまま拾っています。推計や平均で埋めた数字は使っていません。

    数えた結果はこうでした。

    • 上限額が公表されていたのは 391件(残りの110件は金額が公表されていないか、制度がありません)
    • そのうち金額が1つだけで済むのは267件
    • 残り124件は、条件によって上限額が枝分かれします

    上限額が書いてある自治体のおよそ3件に1件が、条件つきだということです。

    上限額が公表されていた391件の内訳 267件 124件 金額は1つだけ(68%) 条件で枝分かれ (32%)

    何によって枝分かれするのか

    124件の上限額の欄を読み、条件の種類がはっきり読み取れたものを数えました。1つの自治体が複数の条件を持つことがあるので、合計は124にはなりません。また、124件のうち58件は書き方が独特で、この分類には収まりませんでした。

    上限額が枝分かれする条件(重複あり) 危険度の判定25 区域の指定16 建物の種別12 施工業者9 建物の構造5 所得・世帯4 跡地の扱い3 工事費の段階2 分類に収まらなかったもの 58件

    所得で変わる

    山形県米沢市は、市町村民税の所得割が非課税なら最大120万円、所得320万円未満なら最大60万円と書かれています。同じ家を壊しても、世帯の所得で2倍違います。

    埼玉県深谷市も30万円ですが、住民税非課税世帯は80万円です。神奈川県横浜市は建築年で分けたうえで、一般世帯と非課税世帯で別の額を置いています。

    区域で変わる

    千葉県千葉市は20万円。ただし密集住宅市街地なら30万円です。愛知県豊川市は老朽空家20万円・密集市街地内なら30万円、倒壊危険空家30万円・密集市街地内なら40万円と、二段構えになっています。

    危険度の判定点数で変わる

    いちばん多かった型です。兵庫県丹波市は判定100点以上なら160万円、50点以上100点未満なら50万円。茨城県神栖市は特定空家等100万円・不良住宅70万円・管理不全状態の空家等50万円と、状態で三段階に分かれます。

    この判定は申請してから自治体が行います。申請前の時点では、自分がどの段階に入るかは分かりません。

    誰に頼むかで変わる

    埼玉県東松山市は20万円、市内業者を利用する場合は25万円。愛知県大府市は基本20万円に市街化区域加算10万円と市内業者利用加算10万円を積んで最大40万円です。

    この型は業者選びの前に知っておく必要があります。相見積もりを取ってから「市外の業者のほうが安かった」となっても、加算分を引くと逆転していることがあります。

    建物の種類・構造で変わる

    東京都福生市は戸建て1戸あたり30万円、長屋・共同住宅は1棟100万円。新潟県三条市は50万円ですが、3階以上の非木造建築物は400万円です。

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    契約より先に、見積書だけを手元に置く

    補助金の申請には見積書が要ります。そして501自治体すべてが、契約前の申請を求めています。つまり必要なのは「見積りは取ったが、まだ契約していない」状態です。ここを取り違えて先に契約すると、金額に関係なく補助はゼロになります。

    ①同社サイトには「ご利用は無料。ご成約後の請求も一切ございません」と書かれています。
    ②同社は「契約まで、業者からご連絡がいくことはございません」と説明しています。
    ③申し込みには物件の情報と写真が要ります。遠方の実家で写真が手元にないなら、次に帰ったときに外観と傷んでいる箇所を撮っておいてください。
    ④解体する予定がないなら申し込まないでください。重複した申込や、連絡先が実在しない申込は無効と明記されています。
    ⑤1社の見積りだけで決めないでください。地元の解体業者にも自分で1社あたって、金額の桁が合っているかを確かめてください。
    ⑥解体補助金を使う予定があるなら、契約・着工の前に自治体へ申請してください。着工後の申請は原則として通りません。

    解体の窓口で、無料シミュレーションを試す

    上限額の欄に条件が書かれていないかを、実家の市区町村のページで先に確かめてください。受付期間と予算枠も同じページに載せています。

    開きは中央値で2倍、いちばん大きいところで11倍

    枝分かれする124件のうち、金額が2つ以上はっきり読み取れた86件について、いちばん小さい額といちばん大きい額の比を出しました。

    中央値は2.0倍でした。つまり条件つきの自治体では、半数以上で「条件を満たすかどうかで上限が2倍以上動く」ということです。

    開きが大きかった順に並べると、こうなります。

    自治体 下 上 倍率
    栃木県大田原市 10万円 110万円 11.0倍
    愛知県大府市 5万円 40万円 8.0倍
    新潟県三条市 50万円 400万円 8.0倍
    北海道室蘭市 50万円 350万円 7.0倍
    北海道恵庭市 30万円 200万円 6.7倍
    大阪府富田林市 30万円 200万円 6.7倍
    秋田県大仙市 30万円 200万円 6.7倍
    山形県米沢市 60万円 320万円 5.3倍

    そもそも解体に使えない額が、一覧に並んでいることがある

    ここがいちばん注意してほしいところです。上限額の欄に大きな数字が書かれていても、その額は解体単体では使えないことがあります。

    栃木県大田原市の110万円には、耐震建て替えが前提で、解体だけでは使えませんと書かれています。岐阜県瑞穂市の97万8千円には、現に居住している住宅が前提で、空き家では使えませんとあります。

    どちらも金額だけを一覧で見れば「手厚い自治体」に見えます。実家が空き家で、壊すだけなら、この数字は自分には関係がありません。

    大分県佐伯市のように、離島かどうかで変わる例もあります。本土50万円に対して、大入島60万円・大島75万円・屋形島と深島は90万円です。

    当サイトの一覧表にも、同じ限界があります

    正直に書きます。当サイトの全国一覧も、上限額の列には1自治体につき1つの数字を出しています。表として並べるために、代表的な額を置いているからです。

    いま説明した124件については、その1つの数字だけでは足りません。市区町村のページを開くと、上限額の欄に条件つきの原文をそのまま載せています。気になる自治体が見つかったら、一覧の数字で判断せず、必ずその自治体のページまで進んでください。

    上限額の下に、もう一段の上限がある

    上限額をクリアしても、もう一つ壁があります。補助率です。

    補助率が公表されていたのは423件でした。そして、その書き方を空白を除いて数えたところ、330通りありました。423件のうち330通りですから、ほとんどの自治体が違う書き方をしているということです。

    たとえば熊本県熊本市は「除却費(税抜)×8/10×2/3、または延床面積×単価×8/10×2/3のいずれか低い額」。北海道旭川市は「除却工事費の3分の1以内の額、又は標準除却費のうちの除却工事費に10分の8を乗じて得た金額の2分の1以内の額のいずれか低い方」。

    読み方の要点は「いずれか低い額」です。金額の上限と割合の上限の両方があり、低いほうが適用されます。上限が40万円でも、補助率が3分の1なら、120万円の工事をして初めて40万円に届きます。

    なお31件は「補助率は公式ページに具体的な割合の記載なし」と書かれていました。この場合は窓口に聞くしかありません。当サイトも、書かれていないものを推測で埋めることはしていません。

    上限額の横に、もっと小さい数字が置いてある

    金額と割合をクリアしても、まだ残っている数字があります。その年度に何件ぶんの予算があるかです。

    予算枠や件数について何か書かれていたのは409件でした。内訳はこうです。

    • 「予算がなくなり次第終了」と書いてあるもの 106件
    • 「先着順」と書いてあるもの 74件
    • 件数がはっきり書いてあるもの 70件
    • 抽選と書いてあるもの 7件
    • 枠について書かれていないもの 203件

    そして、件数がはっきり書いてあった70件の中央値は「14件」でした。

    山形県山形市は「1戸程度」。奈良県香芝市は「募集件数1件(配分予算に達し次第終了)」。群馬県大泉町は「2戸」。三重県桑名市は「予定件数8件(先着順で予算がなくなり次第終了)」です。

    上限額が100万円でも、枠が数件なら、その額は「取れた人にとっての額」です。金額の大きさを比べる前に、枠と締切の運用を見てください。

    なお、全部が先着順というわけではありません。佐賀県唐津市は「先着順ではありません。判定結果は順次連絡します」と明記していますし、北海道旭川市は当初受付分を危険度の高い順に決めて、延長期間分だけ先着順にしています。「早い者勝ちかどうか」も自治体ごとに違います。

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    枠に入れなかったときのために、壊さない場合の金額も見ておく

    件数を公表している自治体では、予算枠の中央値は14件でした。申請しても枠に入れないことがあります。壊さずに売れば、先に出ていくお金はありません。どちらが手取りで多いかは、売れる金額が分からないと比べられません。まず桁を掴んでください。

    先に断っておきます。買取は、仲介で売れた場合より手取りが下がります。それでも見る価値があるのは、比較対象の数字が手に入るからです。運営は株式会社ネクサスプロパティマネジメント(宅地建物取引業免許:国土交通大臣(1)第10311号)。同社は「個人情報の入力は不要、匿名のまま利用でき、営業電話もありません」という匿名のAI査定も公開しています(入力3項目・最短30秒/2026年6月20日 同社発表)。まだ売ると決めていない段階なら、まず匿名のほうで桁だけ確かめてください。ただし匿名で出るのは機械的な概算です。実際の金額を知るには、連絡先を入れて査定を申し込む必要があります(申し込めば担当者から連絡が来ます)。

    匿名のAI査定で桁を確かめる/査定を申し込む

    匿名の査定は「自分で調べる」段階の道具です。出た数字は1つだけ信じず幅で捉えてください。解体費と補助金を引いた手取りで並べるのは、そのあとです。

    この数字を、自分の実家に当てはめる手順

    1. 一覧ではなく、実家の市区町村のページを開く。上限額の欄に条件つきの原文を載せています。
    2. その額が「解体単体」で使えるかを確かめる。建て替えや居住が前提の制度が混ざっています。
    3. 自分がどの枝に入るかを確かめる。所得・区域・建物の種類・業者は、申請前に自分で分かります。危険度の判定だけは申請後です。
    4. 補助率を見て、上限に届くための工事費を逆算する。「いずれか低い額」が効きます。
    5. 予算枠と、先着順かどうかを確かめる。件数が書いてある自治体は中央値で14件です。
    6. そのうえで、解体費の見積もりを取る。補助額より工事費の差のほうが大きく動くことがあります。

    順番が大事です。補助金の額から決めると、条件を満たすために不要な工事を足してしまうことがあります。

    このデータの限界

    • 501自治体は全国1,741市区町村の一部です。ここに出てくる比率は、当サイトが収録した範囲での比率です。
    • 上限額の欄は、公式ページの表記をそのまま拾っています。公式ページに書かれていない条件までは分かりません。
    • 「条件つきかどうか」の判定は、金額の個数と条件を表す語の有無で機械的に分けました。124件のうち58件は書き方が独特で、条件の種類までは分類できていません。
    • 倍率は、欄の中に読み取れた金額の最小と最大の比です。制度が複数あって別枠の場合も、同じ欄に書かれていれば1件として扱っています。
    • 予算枠の「件数」は、書き方がそろっていません。戸・棟・件が混ざっているものをそのまま数えています。また203件は枠について何も書かれておらず、この中央値14件は「件数を公表している70件の中での中央値」です。
    • 年度で変わります。予算枠や上限額は年度ごとに見直されます。確認日は各自治体のページに書いています。

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  • 解体費用が払えないとき|補助金は後払いです。501自治体すべてが「契約前の申請」を求めていました

    実家を壊したい。でも手元にお金がない。

    このとき、多くの人が「補助金があるから何とかなる」と考えます。ここに落とし穴があります。

    補助金は、工事が終わったあとに振り込まれます。つまり、解体費の全額を一度は自分で払わなければなりません。木造30坪なら100万円台からです。50万円の補助が出るとしても、まず100万円を用意する必要があります。

    当サイトは全国501自治体の解体補助金を1件ずつ公式サイトで確認しています。そこで分かったことから書きます。

    結論を先に書きます

    501自治体すべてで、工事の契約前に申請が必要でした 501件中501件(100%)。契約してから申請しても通りません
    補助金は完了後の精算です 完了報告・実績報告・精算に言及している自治体が78件。「施工者への支払いを済ませたうえで実績報告」と明記している自治体もあります
    予算の話をしている自治体 422件(84%)。年度の予算がなくなれば終わりです
    先着順と書いている自治体 148件
    上限額の中央値 50万円。木造30坪の解体費は100万円台からなので、半分以上は手出しです
    制度そのものがない自治体 81自治体。「無いことを確認した」という意味です

    だから「補助金が出るから大丈夫」では計画になりません。先に必要なのは、工事費の全額を一度払える現金です。

    1. 補助金は後払いです

    順番はこうなります。

    1. 自治体に申請する(この時点ではまだ契約していない)
    2. 自治体から交付決定が届く
    3. ここで初めて業者と契約する
    4. 工事する
    5. 業者に全額支払う
    6. 実績報告を出す
    7. 自治体から補助金が振り込まれる
    補助金が入るのは、いちばん最後です 1 申請 契約前に。501件中501件がこの順 2 交付決定 ここまで契約しない 3 契約 → 工事 交付決定が出てから 4 支払い ★ここで全額を自分で出します 5 実績報告 → 入金 補助金が振り込まれるのはここ

    長野県千曲市の説明は、この順番をはっきり書いています。

    解体工事完了後、施工者への支払いを済ませたうえで申請した年度末(2月末)までに実績報告できる工事に限ります

    「支払いを済ませたうえで」です。補助金は立て替え払いではありません。

    そして年度末の締切があります。福岡県八女市は「完了報告は完了の日から30日以内または交付決定のあった年度の2月末までのいずれか早い日」、群馬県藤岡市は「交付決定を受けた年度の3月15日までに実績報告が必要」としています。年度をまたげません。

    ここを間違えると、順番が理由でゼロになります。金額の問題ではありません。当サイトが501自治体を調べたかぎり、例外は1件もありませんでした。全部の自治体が、契約前の申請を求めています。

    501自治体すべてが、契約前の申請でした 契約前に申請 501件中501件(100%) 契約後は不可 完了後の精算 明記していたのは78件 一度は全額出す 予算に触れている 422件(84%) なくなれば終了 先着順と書いている 148件 年度後半は残らず 制度そのものがない 81自治体 無いことを確認 上限額の中央値は50万円。解体費は100万円台から

    2. 遺産の預貯金は、分割が終わる前でも一部おろせます

    「親の口座にお金はあるが、兄弟の話がまとまらないので動かせない」——この場合に使える制度があります。

    遺産分割前の預貯金の払戻し制度です。相続人が単独で、一定の範囲まで払い戻しを受けられます。2019年7月から使えるようになりました。

    この制度の限度額の計算や必要書類は、遺産分割前に預貯金をおろす方法にまとめています。解体費のために親の口座を使うなら、まずここを読んでください。

    条文はこうです

    民法第九百九条の二(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
    各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

    出典:e-Gov法令検索 民法第909条の2(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    その「法務省令で定める額」は、省令が一文で定めています。

    民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令(平成三十年法務省令第二十九号)
    民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額は、百五十万円とする。

    出典:e-Gov法令検索 平成30年法務省令第29号(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    解体費との関係で、押さえるべき点が3つあります

    ①「3分の1×自分の相続分」です。口座の残高の3分の1ではありません。子が2人なら、それぞれの相続分は2分の1なので、残高の3分の1のさらに2分の1=残高の6分の1が上限の計算式になります。600万円の口座なら100万円です。

    ②150万円は「金融機関ごと」です。省令の文言は「預貯金債権の債務者ごとに」。債務者とは、預金を預かっている金融機関のことです。2行に口座があれば、それぞれで判定します。1行にまとめて150万円という意味ではありません。

    ③おろした分は、遺産の一部を先に取得したものとみなされます。条文の最後の一文です。あとの遺産分割で、その分は自分の取り分から差し引かれます。もらえるお金が増えるわけではなく、受け取る時期が早まるだけです。

    木造30坪の解体費には、たいてい足りません

    解体費が100万円台からで、この制度の上限が1金融機関あたり150万円。計算式が「3分の1×相続分」なので、実際に引き出せる額は上限よりかなり下になることがほとんどです。上の例(600万円の口座・子2人)なら100万円。「親の口座があるから大丈夫」ではなく、いくら出せるのかを先に計算してください。

    600万円の口座で、100万円です 100万円 引き出せる額 口座の残高 600万円 引き出せる額 100万円 3分の1×相続分。上限150万円は金融機関ごと

    3. 借りるという手

    金融機関には、解体費に使えるローンがあります。無担保のものが中心で、リフォームローンの資金使途に解体を含めている商品や、「空き家解体ローン」といった名前の商品を扱う金融機関があります。

    ただし、当サイトは特定の商品の条件を確認していません。金利も限度額も期間も金融機関によって違います。ここでは、確認すべき点だけを挙げます。

    • 資金使途に「解体」が入っているか。リフォームローンでも、解体だけには使えない商品があります。
    • 建物が自分の名義になっているか。相続登記が済んでいないと、借りられないことがあります。
    • 解体後に何をするのか。建て替えるなら、住宅ローンに解体費を含められることがあります。解体単独より条件がよくなることが多いです。
    • その自治体の制度と併用できるか。自治体が金融機関と提携して金利を優遇する仕組みを持っていることがあります。
    • 返済の原資は何か。更地にすると土地の固定資産税が上がります。売る予定がないなら、返済と税の両方が続きます。

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    契約より先に、見積書だけを手元に置く

    補助金の申請には見積書が要ります。そして501自治体すべてが、契約前の申請を求めています。つまり必要なのは「見積りは取ったが、まだ契約していない」状態です。ここを取り違えて先に契約すると、金額に関係なく補助はゼロになります。

    ①同社サイトには「ご利用は無料。ご成約後の請求も一切ございません」と書かれています。
    ②同社は「契約まで、業者からご連絡がいくことはございません」と説明しています。
    ③申し込みには物件の情報と写真が要ります。遠方の実家で写真が手元にないなら、次に帰ったときに外観と傷んでいる箇所を撮っておいてください。
    ④解体する予定がないなら申し込まないでください。重複した申込や、連絡先が実在しない申込は無効と明記されています。
    ⑤1社の見積りだけで決めないでください。地元の解体業者にも自分で1社あたって、金額の桁が合っているかを確かめてください。
    ⑥解体補助金を使う予定があるなら、契約・着工の前に自治体へ申請してください。着工後の申請は原則として通りません。

    解体の窓口で、無料シミュレーションを試す

    見積書のどこを見るかは、この記事の見積書の章に戻って確認してください。お住まいの自治体の制度を先に調べておくと、受付期間に間に合うかどうかも一緒に分かります。

    4. 壊さないという選択肢を、金額で比べる

    解体費が払えないなら、壊さずに売るという道があります。

    解体してから売る 古家付きのまま売る 買取業者に売る
    先に払うお金 解体費の全額(100万円台〜) なし なし
    売却価格 更地のほうが買い手は広い 解体費の分は差し引かれる 相場より安い
    補助金 使える可能性がある 使えない 使えない
    固定資産税 更地にすると翌年から上がる 変わらない 手放すので関係ない
    売れるまでの期間 解体の期間が加わる 買い手次第 短い

    解体費を払えないという状況は、「更地にしたほうが高く売れる」という一般論より優先されます。払えないものは払えません。

    どちらが得かは物件によります。古家付き土地で売るか、更地にして売るかに判断材料をまとめました。

    また、800万円以下で売れる実家なら、2024年7月から仲介手数料の上限が変わっています。800万円以下の実家を売ると、仲介手数料は最大33万円ですを先に読んでおいてください。手取りが変わります。

    ★自分で壊すと、届出の義務が自分に来ます

    費用を抑えるために「自分で壊す」を考える人がいます。ここは法律の建て付けを知らないと危険です。

    建設リサイクル法は、一定規模以上の解体工事に届出を義務づけています。まず、その規模から。

    建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律施行令第二条(規模に関する基準)
    法第九条第三項の建設工事の規模に関する基準は、次に掲げるとおりとする。
    一 建築物(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第一号に規定する建築物をいう。以下同じ。)に係る解体工事については、当該建築物(当該解体工事に係る部分に限る。)の床面積の合計が八十平方メートルであるもの

    出典:e-Gov法令検索 建設リサイクル法施行令第2条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    そして、届出をするのは誰か。ここが要点です。

    建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律第十条(対象建設工事の届出等)
    対象建設工事の発注者又は自主施工者は、工事に着手する日の七日前までに、主務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない。
    一 解体工事である場合においては、解体する建築物等の構造
    二 新築工事等である場合においては、使用する特定建設資材の種類
    三 工事着手の時期及び工程の概要
    四 分別解体等の計画
    五 解体工事である場合においては、解体する建築物等に用いられた建設資材の量の見込み
    六 その他主務省令で定める事項

    出典:e-Gov法令検索 建設リサイクル法第10条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    「発注者又は自主施工者」と書かれています。業者に頼んでも、自分で壊しても、届出の義務者はあなたです。業者が代行してくれることは多いのですが、義務そのものは施主側にあります。「業者がやってくれると思っていた」は通りません。

    床面積80㎡は、30坪(約99㎡)を下回ります。木造30坪の実家なら、まず届出の対象です。着手の7日前まで。ここも「契約前の補助金申請」と同じで、順番を間違えると取り返しがつきません。

    自分で壊しても、届出は要ります 解体する床面積は80㎡以上ですか はい 届出が必要です 着手の7日前まで いいえ 対象外です 施行令2条1号

    アスベストの調査と届出は、また別の法律(大気汚染防止法)です。費用と手順は実家の解体とアスベストにまとめています。

    5. やってはいけないこと

    やりがちなこと 何が起きるか
    安いから、先に契約してしまう 補助金がゼロになります。501自治体すべてが契約前の申請を求めています
    年度末に駆け込む 予算に触れている自治体が422件、先着順が148件。年度の後半は残っていないことがあります
    自分で壊す 床面積80㎡以上の解体は届出が要り、廃棄物の処理にも決まりがあります。アスベストがあれば調査と届出も必要です
    いちばん安い1社に決める 相見積りを取らないと、その金額が高いのか安いのか分かりません。解体費は同じ家でも動きます
    放置してやり過ごす 勧告を受けると補助金の対象外になる自治体があります。さらに進むと代執行で強制的に壊され、費用を請求されます

    最後の行が、いちばん高くつきます。行政代執行の費用は約150万円から約850万円で、国税滞納処分の例により強制徴収されます。「お金がないから放置する」は、結果としていちばん高い選択になり得ます。

    相続放棄をしても、建物から解放されるとはかぎりません

    「お金がないなら相続放棄すればいい」と考える人がいます。ただし、放棄したあとの扱いを条文で確かめておいてください。

    民法第九百四十条(相続の放棄をした者による管理)
    相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

    出典:e-Gov法令検索 民法第940条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    条件は「現に占有しているとき」です。遠方に住んでいて一度も立ち入っていない実家なら、この条文の対象にならない可能性があります。逆に、鍵を持っていて出入りしている、荷物を置いている、といった状態なら当たり得ます。

    そして義務の中身は「保存」であって、解体ではありません。放棄した人が解体費を負担する規定ではない、という点は正確に読んでください。ただし引き渡す相手(次順位の相続人か、家庭裁判所が選任する相続財産清算人)が現れるまで続きます。清算人の選任には申立てと予納金が要ります。

    当サイトは、この予納金の額を一次資料で確認できていません。だから金額は書きません。「放棄すれば終わり」ではない、という条文上の事実だけを置きます。実際に放棄を検討するなら、弁護士か司法書士に確認してください。

    順番のまとめ

    1. 自治体に制度があるか調べる。あるなら、締切と予算の残りを窓口に聞く
    2. 見積りを取る。契約はしない。申請に見積書が要ります
    3. 全額を用意できるか計算する。補助金は後払いです
    4. 足りなければ、遺産の預貯金の払戻し、ローン、壊さずに売るを順に検討する
    5. 申請 → 交付決定 → 契約 → 工事 → 支払い → 実績報告 → 入金。この順番を崩さない

    お住まいの自治体に制度があるかは、全国の空き家解体補助金データベースで確認できます。制度がない81自治体も「ありません」と書いています。

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    壊す前に、壊さず売った場合の金額も見ておく

    解体費の全額を先に払えないなら、壊さずに売るほうが現実的なことがあります。古家付きのまま売れば、先に出ていくお金はありません。どちらが手取りで多いかは、売れる金額が分からないと比べられません。まず桁を掴んでください。

    先に断っておきます。買取は、仲介で売れた場合より手取りが下がります。それでも見る価値があるのは、比較対象の数字が手に入るからです。運営は株式会社ネクサスプロパティマネジメント(宅地建物取引業免許:国土交通大臣(1)第10311号)。同社は「個人情報の入力は不要、匿名のまま利用でき、営業電話もありません」という匿名のAI査定も公開しています(入力3項目・最短30秒/2026年6月20日 同社発表)。まだ売ると決めていない段階なら、まず匿名のほうで桁だけ確かめてください。ただし匿名で出るのは機械的な概算です。実際の金額を知るには、連絡先を入れて査定を申し込む必要があります(申し込めば担当者から連絡が来ます)。

    匿名のAI査定で桁を確かめる/査定を申し込む

    匿名の査定は「自分で調べる」段階の道具です。出た数字は1つだけ信じず幅で捉えてください。解体費と補助金を引いた手取りで並べるのは、そのあとです。

    よくある質問

    補助金は工事の前にもらえないのですか?
    原則もらえません。申請 → 交付決定 → 契約 → 工事 → 支払い → 実績報告 → 入金という順番です。長野県千曲市は「解体工事完了後、施工者への支払いを済ませたうえで実績報告できる工事に限ります」と明記しています。解体費の全額を一度は自分で払う必要があります。
    先に契約してしまいました。あとから申請できますか?
    できないと考えてください。当サイトが調べた501自治体すべてが、工事の契約前の申請を求めていました。例外は1件もありませんでした。ただし自治体によって運用が違う可能性はゼロではないので、窓口に確認してください。
    年度末に申請しても間に合いますか?
    厳しいことが多いです。予算に触れている自治体が422件、先着順と書いている自治体が148件あります。さらに、工事の完了と実績報告まで年度内に終える必要があります。福岡県八女市は「完了報告は完了の日から30日以内または交付決定のあった年度の2月末までのいずれか早い日」としています。逆算すると、動き出しは年度の前半です。
    解体費用のローンはありますか?
    あります。無担保のものが中心で、リフォームローンの資金使途に解体を含む商品や、解体専用と銘打った商品を扱う金融機関があります。当サイトは特定の商品の条件を確認していないので、金利や限度額は書きません。確認すべきは、資金使途に解体が入っているか、建物の名義が自分になっているか、建て替えるなら住宅ローンに含められないか、の3点です。
    親の口座のお金を解体費に使えますか?
    遺産分割が終わっていなくても、遺産分割前の預貯金の払戻し制度で相続人が単独で一定の範囲まで引き出せます。2019年7月から使えます。限度額の計算と必要書類は遺産分割前に預貯金をおろす方法にまとめています。
    お金がないので、放置し続けたらどうなりますか?
    いちばん高くつく可能性があります。勧告を受けると土地の固定資産税の特例が外れ、さらに「勧告を受けたら補助金の対象外」とする自治体もあります。最終的に代執行で強制的に壊されると、費用は所有者に請求され、国税滞納処分の例により強制徴収されます。公表されている事例の費用は約150万円から約850万円です。
    自分で壊せば安く済みませんか?
    おすすめしません。床面積80㎡以上の建築物の解体は、着工の7日前までに発注者から都道府県知事への届出が必要です(建設リサイクル法)。廃棄物の処理にも決まりがあり、アスベストがあれば調査と届出も要ります。解体工事業には登録や許可が必要で、無登録での営業には罰則があります。
    補助金がない自治体でも、何か制度はありますか?
    自治体によっては、補助金ではなく金融機関と提携した融資のあっせんや利子補給を用意していることがあります。当サイトはこの種の制度を全国では調べていません。「解体 補助」で出てこなくても、窓口で「融資のあっせんはありますか」と聞いてみてください。

    「確認できなかったこと」を、条文で1つ埋めました

    この記事は当初、遺産分割前の払戻しを「一定の範囲まで」としか書いていませんでした。2026年9月3日に、民法909条の2と法務省令の全文を e-Gov で開いて、計算式と150万円の上限を本文に入れました。あわせて、建設リサイクル法10条の届出義務者が「発注者又は自主施工者」=施主側であること、80㎡の基準が施行令2条1号にあることも、条文から書き直しています。

    この記事で確認できなかったこと

    • 「完了後の精算」を明記していたのは501件中78件です。残りの自治体が前払いという意味ではありません。書かれていなかった、というだけです。ほとんどの補助金は同じ運用ですが、当サイトが条文や公式ページで確認できたのはこの78件です。
    • 解体ローンの商品性は調べていません。金融機関ごとに違い、一次資料で横並びに確認できていません。
    • 自治体の融資あっせん・利子補給の制度は、全国では調べていません。当サイトのデータベースは補助金を対象にしています。
    • 数字は2026年8月時点で確認したものです。制度は年度で変わります。申請の前に必ず自治体の公式ページを開き直してください。

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  • 越境した枝は、切れるようになりました|2023年4月の民法233条改正と、空き家がからむ3つの場合

    実家の庭木が、隣の家に伸びている。あるいは、隣の空き家から枝が実家に入ってきている。

    2023年4月1日から、この扱いが変わりました。それまでは、越境してきた枝を勝手に切ることはできませんでした。切ってもらうよう頼むか、応じてもらえなければ裁判を起こす。それが原則でした。

    いまは、3つの場合に限って、自分で切れます。そして空き家がからむ場面では、その3つのうちの1つがそのまま当てはまります。

    結論だけ先に

    • 原則は「切らせる」であって「切る」ではありません。自分で切り取れるのは、民法233条3項が挙げる3つの場合だけです。
    • 空き家は、3項2号「竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき」に当たり得ます。ただし調べれば分かるのに調べていない、では足りません。まず登記事項証明書を取ってください。
    • ★枝を切るために、隣の敷地に入れます(民法209条1項3号)。ただし住家は居住者の承諾がなければ立ち入れず、あらかじめ目的・日時・場所・方法を通知する必要があり、損害が出れば償金を請求されます。
    • 根は、催告なしで切り取れます(233条4項)。枝と根で条文の建て付けが違います。
    • 切除費用の負担を定めた条文はありません。民法703条(不当利得)と709条(不法行為)が根拠として挙げられますが、当サイトは裁判例を一次資料で確認できていません。
    • ★草木の放置は、空家法13条2項が「修繕、立木竹の伐採」と名指しした勧告事項です。勧告を受けると、地方税法349条の3の2の「住宅用地」から外れます。

    条文はすべて e-Gov法令検索で全文を開いて確認しました(2026年9月3日)。孫引きはしていません。裁判例と実務の当てはめは弁護士にご確認ください。当サイトは法律事務所ではありません。

    改正後の民法233条

    条文はこうなっています。

    土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる

    これが第1項です。原則は「切らせる」であって「切る」ではありません。ここは変わっていません。

    変わったのは第3項です。

    次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる

    その「次に掲げるとき」が、この3つです。

    要件 空き家がからむ場面
    ① 竹木の所有者に催告したが、相当の期間内に切除しないとき 連絡は取れるが動いてくれない
    ② 竹木の所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないとき 相続登記がされていない空き家。ここに当たります
    ③ 急迫の事情があるとき 台風で折れかけている、通行の妨げになっている
    自分で切れるのは、この3つだけ ① 催告しても切除しない 3項1号。相当の期間内に 書面で期限を ② 所有者・所在が不明 3項2号。空き家はここ 登記を先に取る ③ 急迫の事情 3項3号。倒れかけ・通行の妨げ 説明が要ります あとから「本当にそうだったか」を問われます

    そして第4項が根です。

    隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる

    根は昔から、催告なしで切れます。枝と根で扱いが違うのは、改正前からです。

    もう一つ、第2項があります。

    竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる

    木が兄弟の共有になっていても、共有者の1人が単独で切れます。全員の同意は要りません。

    条文の全文は、こうです

    民法第二百三十三条(竹木の枝の切除及び根の切取り)
    土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
    2 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
    3 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
    一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
    二 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
    三 急迫の事情があるとき。
    4 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

    出典:e-Gov法令検索 民法第233条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    読むときの勘どころは3つあります。

    1つ目。第1項の「切除させる」と、第3項の「切り取る」は、主語が同じで動作が違います。どちらも主語は「土地の所有者」、つまり越境されている側です。第1項は相手にやらせる権利で、第3項は自分でやる権利。第3項が使えるのは、第1項の場面(=枝が境界線を越えている)であることが前提です。条文が「第一項の場合において」と書いているのは、そのためです。

    2つ目。第2項は、越境されている側の話ではありません。「竹木が数人の共有に属するとき」の各共有者、つまり木を持っている側の共有者が、自分で枝を切り取れるという規定です。実家を兄弟で相続して庭木が共有になっている場合、1人で切って構いません。全員の同意は要りません。

    3つ目。第4項には、第3項のような条件が付いていません。根は、越境していればそれだけで切り取れます。催告も、所在不明も、急迫も要りません。枝と根で条文の長さがまったく違うのは、この非対称のためです。

    枝と根で、扱いが違います 枝 原則は切らせる 233条1項 自分で切れるのは 3項の3つだけ 根 いきなり切れる 233条4項 催告も所在不明も 急迫も要りません 条文の長さが違うのは、この非対称のためです

    この改正は、空き家の持ち主に両方向で効きます

    方向1:実家の木が、隣に伸びている場合

    あなたの実家が相続登記されていないと、隣の人から見て「所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない」状態になり得ます。その場合、隣の人は催告なしで枝を切れます。

    切られること自体は困りません。困るのは費用です。

    切除費用は、基本的に竹木の所有者、つまりあなたに請求できると考えられています。知らないうちに切られて、あとから請求が来るという順番になり得ます。

    そしてこれは、法律の問題であると同時に近所付き合いの問題です。枝が伸びている家は、たいてい他のところも傷んでいます。自治体に連絡が入る入口にもなります。

    方向2:隣の空き家から、実家に伸びてきている場合

    逆の立場です。隣が空き家で、持ち主が誰か分からない。この場合、②に当たれば催告なしで切れます。

    ただし、「分からない」の中身が問われます。登記を見れば分かる、近所に聞けば分かる、という程度なら「知ることができない」とは言いにくい。まず登記事項証明書を取ってください。法務局で誰でも取れます。

    登記の名義人が亡くなっていて相続人が分からない、名義人の住所に住んでいない、といった状態なら②に近づきます。

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    木を切るだけで済むのか、建物ごとなのか

    庭木の伐採だけなら数万円で済むことがあります。ただし枝が伸び放題になっている家は、たいてい屋根や塀も傷んでいます。木だけ切って終わるのか、建物ごと片づけるのか。まず全部壊した場合の金額を見てから、どこまでやるかを決めてください。

    ①解体してしまうと、住宅用地特例は確実に外れます(勧告と違い、こちらは元に戻りません)。②補助金は原則として契約前・着工前の申請です。解体してから申請しても出ません(全国の解体補助金一覧)。③相見積りを取ってください。1社では高いのか安いのか判断できません。④現地調査が必要になるので、遠方の場合は立会いの要否を確認してください。⑤当サイトはこのリンク経由の申込で広告収入を受け取ります。

    解体した場合の見積もりを取る(無料)

    費用の内訳は実家の解体費用、解体後の税金は解体すると固定資産税は何倍になるかに。片付けを先に済ませるほうが安く済みます(実家の片付けの手順)。

    ★枝を切るために、隣の敷地に入れます(民法209条)

    ここは、あまり知られていないところです。

    枝が越境しているということは、枝の付け根は隣の敷地にあるということです。境界の内側から手が届く枝ばかりとはかぎりません。脚立を立てる場所が要る、切った枝の落ちる先が向こう側になる、という場面はふつうに起きます。

    2023年4月1日の改正は、そこも手当てしています。

    民法第二百九条(隣地の使用)
    土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。
    一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
    二 境界標の調査又は境界に関する測量
    三 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り
    2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
    3 第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。
    4 第一項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

    出典:e-Gov法令検索 民法第209条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    第1項第三号が、233条3項を名指しで引いています。つまり「3つの場合のどれかに当たって自分で切れる」ときは、そのために隣の土地を使ってよい、という組み合わせになっています。233条だけを読んでいると、この経路は見えません。

    ただし、条件が4つ付いています

    ①「必要な範囲内で」です。枝を切るのに必要な範囲であって、敷地を自由に歩き回れるという意味ではありません。

    ②住家には、居住者の承諾がなければ立ち入れません。第1項のただし書です。ここは空き家かどうかで結論が変わります。人が住んでいない建物なら「住家」に当たらないという整理があり得ますが、当サイトは「空き家は住家に当たらない」と断定できる一次資料を確認できませんでした。建物の中に入る必要はふつう生じないので、庭までにとどめてください。

    ③あらかじめ通知が要ります。第3項です。通知する中身は「目的・日時・場所・方法」の4つ。ただし書があって、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく通知すれば足ります。所有者の所在が分からない空き家(233条3項2号のケース)は、まさにこの「困難なとき」に当たりやすい場面です。それでも通知の義務が消えるわけではありません。順番が後ろにずれるだけです。

    ④損害が出たら償金を請求されます。第4項です。塀を傷めた、庭木を踏んだ、という話は、条文上ここで処理されます。

    だから、写真は「切る前・切る途中・切った後」の3回撮ってください。2項の「損害が最も少ない方法」を選んだこと、4項の損害が出ていないことを、あとから説明する材料になります。

    隣に入るときは、この順です 目的を確かめる 209条1項3号。枝の切取りは対象 あらかじめ通知する 目的・日時・場所・方法の4つ 損害が最も少ない方法で 209条2項 住家には立ち入らない 1項ただし書。居住者の承諾が要る 損害が出たら償金 209条4項

    枝を切る前に、順番を確かめてください

    1. 境界を確かめる。越境しているかどうかは、境界がどこかで決まります。境界が確定していない土地では、切ったあとに「越境していなかった」と言われることがあります。境界が確定していない実家を先に読んでください。
    2. 登記事項証明書を取る。持ち主が誰か、どこに住んでいることになっているかが分かります。②の「知ることができない」を主張するなら、少なくともここは見ておく必要があります。
    3. 連絡が取れるなら、催告する。①の型です。書面で、期限を切って出してください。口頭では「相当の期間内に切除しない」ことの証拠が残りません。
    4. 写真を撮る。切る前と切ったあと。越境の状況が分かるように。
    5. 切るのは越境した部分だけ。境界より内側は他人の土地です。

    急いでいないなら、①の催告から始めるのが確実です。②や③は、あとから争いになったときに「本当にその要件を満たしていたか」を問われます。

    切除の費用は、誰が払うのか

    条文には書いてありません。民法233条にも209条にも、切除費用の負担者を定めた項はありません。これは条文を開けば分かることなので、はっきり書いておきます。

    実務で根拠として挙げられるのは、次の2本です。

    民法第七百三条(不当利得の返還義務)
    法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

    民法第七百九条(不法行為による損害賠償)
    故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

    出典:e-Gov法令検索 民法第703条・第709条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    703条は「本来その人が払うはずだった切除費用を、こちらが肩代わりした」という組み立て、709条は「越境させたこと自体を過失とみる」という組み立てです。どちらの構成が通るかは事案によります。当サイトは、この点について裁判例を一次資料で確認できていません。だから「請求できます」とは書かず、「請求の根拠として挙げられているのはこの2本です」までにとどめます。

    請求できることと、回収できることは別です

    233条3項2号を使う場面は、そもそも相手の所在が分からない場面です。所在が分からない相手に請求書は届きません。「あとで請求すればいい」という前提で高い見積りを通さないでください。回収できない前提で、いくらまでなら自分で出すかを先に決めておくほうが安全です。

    逆の立場、つまり自分の実家の木が隣に伸びている場合は、この構図がそのまま自分に返ってきます。相続登記をしていない実家は、隣から見て「所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき」に当たり得ます。催告なしで切られ、あとから703条や709条を根拠に請求が来る、という順番があり得るということです。

    木を切っても、責任は消えません

    実家の木を切ることは、越境の話だけで終わりません。

    民法717条は、建物などの工作物について所有者の責任を定めていますが、その第2項は「竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する」としています。

    枯れた木が折れて隣家を壊した、通行人にあたった。これは越境の話ではなく、賠償の話になります。詳しくは空き家の瓦が落ちて人にあたったらに書きました。

    つまり、実家の庭木には2つの側面があります。

    越境(民法233条) 賠償(民法717条2項)
    問題になること 枝が境界を越えている 木が倒れて損害が出た
    相手 隣の土地の所有者 損害を受けた人
    起きること 切除の請求。要件を満たせば隣が自分で切れる 損害額の賠償
    費用 切除費用(数万円のことが多い) 上限なし

    越境で済んでいるうちに切っておくほうが、はるかに安く済みます。

    自治体からの通知にもつながります

    草木が伸び放題の空き家は、自治体の目に留まりやすい状態です。

    2023年12月13日に施行された改正空家法で、特定空家等になる手前の段階として「管理不全空家等」が新設されました。国土交通省の集計では、管理不全空家等への助言・指導は全国で3,211件、勧告は378件です(令和7年3月31日時点の累計)。

    勧告を受けると、土地の固定資産税の住宅用地特例が外れます。草木の放置だけで直ちにそうなるわけではありませんが、近所からの連絡は、そこから始まります。

    「立木竹の伐採」は、条文に書かれた勧告事項です

    草木の話は、空家法のどこに書いてあるのか。条文を開くと、名指しで出てきます。

    空家等対策の推進に関する特別措置法第十三条(適切な管理が行われていない空家等の所有者等に対する措置)
    市町村長は、空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認めるときは、当該状態にあると認められる空家等(以下「管理不全空家等」という。)の所有者等に対し、基本指針(第六条第二項第三号に掲げる事項に係る部分に限る。)に即し、当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導をすることができる。
    2 市町村長は、前項の規定による指導をした場合において、なお当該管理不全空家等の状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときは、当該指導をした者に対し、修繕、立木竹の伐採その他の当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な具体的な措置について勧告することができる。

    出典:e-Gov法令検索 空家等対策の推進に関する特別措置法第13条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    第2項に「修繕、立木竹の伐採」と書かれています。庭木の放置は、条文が想定している勧告事項そのものです。ただし順番があります。1項の指導が先で、それでも改善されないときに2項の勧告に進みます。枝が伸びているというだけで、いきなり勧告が来る仕組みではありません。

    そして、勧告まで進むと税が動きます。

    地方税法第三百四十九条の三の二(抜粋)
    専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの(……空家等対策の推進に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十七号)第十三条第二項の規定により所有者等……に対し勧告がされた同法第十三条第一項に規定する管理不全空家等及び同法第二十二条第二項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第二条第二項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く。以下……「住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、……当該住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の三分の一の額とする。
    2 住宅用地のうち、……(以下この項において「小規模住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、……当該小規模住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の六分の一の額とする。
    一 住宅用地でその面積が二百平方メートル以下であるもの 当該住宅用地

    出典:e-Gov法令検索 地方税法第349条の3の2(全文を開いて確認/2026年9月3日)/下線・太字は当サイト

    括弧書きの中で、勧告を受けた管理不全空家等の敷地が「住宅用地」から除かれています。住宅用地でなくなるということは、200㎡以下の部分に効いていた6分の1(第2項)も、それを超える部分の3分の1(第1項)も、両方が外れるということです。「6分の1が外れる」とだけ書かれることが多いのですが、条文の構造は2段になっています。

    段階 根拠 何が起きるか
    指導 空家法13条1項 放置すれば特定空家等になるおそれ。ここでは税は動かない
    勧告 空家法13条2項 修繕・立木竹の伐採などを具体的に求められる
    税 地方税法349条の3の2 勧告を受けた敷地は住宅用地から除かれる(6分の1も3分の1も外れる)

    出典:e-Gov法令検索(2026年9月3日確認)。実際の課税は各市町村の判断によります。

    勧告は、指導のあとに来ます 378件 勧告の件数 助言・指導 3,211件 勧告 378件 令和7年3月31日時点の累計。国土交通省の集計

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    切り続けるのか、手放すのか。決めるには両方の金額が要ります

    庭木は毎年伸びます。1回切って終わりではなく、持ち続けるかぎり続く費用です。そこに固定資産税と保険と、傷んだ箇所の補修が乗ります。あと何年払うのかは、手放した場合にいくらになるかが分からないと決められません。

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    よくある質問

    越境してきた枝を、勝手に切ってもいいのですか?
    原則はいけません。民法233条第1項は「その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」と定めています。切らせるのであって、切るのではありません。ただし第3項の3つの場合には、自分で切り取ることができます。①催告したが相当の期間内に切除しないとき、②所有者を知ることができずまたは所在を知ることができないとき、③急迫の事情があるとき、です。
    いつから変わったのですか?
    令和5年(2023年)4月1日からです。それまでは、越境した枝を自分で切ることは認められておらず、所有者に切ってもらうか、訴えを起こす必要がありました。
    根も同じですか?
    違います。根は催告なしで切り取れます。民法233条第4項が「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる」と定めています。枝と根で扱いが分かれているのは、改正前からです。
    切除の費用は誰が払うのですか?
    基本的には竹木の所有者に請求できると考えられています。民法703条(不当利得)や709条(不法行為)が根拠として挙げられます。ただし請求できることと、実際に回収できることは別です。相手の所在が分からない空き家では、回収は簡単ではありません。
    隣の空き家の持ち主が分かりません。すぐ切っていいですか?
    まず登記事項証明書を取ってください。法務局で誰でも取れます。②の「知ることができない」というのは、調べても分からない状態を指します。調べれば分かるのに調べていない、では要件を満たしません。登記の名義人が亡くなっていて相続人をたどれない、名義人の住所に住んでいない、といった状態なら②に近づきます。
    木が兄弟の共有になっています。1人で切れますか?
    切れます。民法233条第2項が「竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる」と定めています。全員の同意は要りません。
    切った枝は誰のものですか?
    この記事では書きません。一次資料で確認できませんでした。実務では相手に引き取ってもらうか、処分について事前に取り決めておくのが無難です。
    実家の木が伸びていますが、遠方で切りに行けません。
    空き家管理代行や造園業者に頼めます。建物を解体しなくても、木を切るだけなら数万円で済むことがあります。越境で済んでいるうちに切るほうが、倒れて損害を出したときの賠償より、はるかに安く済みます。

    この記事で確認できなかったこと

    • 隣地の使用を断られたときの手当ては書いていません。民法209条1項は「隣地を使用することができる」と定めていますが、拒まれたときにどう進めるかを一次資料で確認できませんでした。
    • 空き家が209条1項ただし書の「住家」に当たるかどうかは書いていません。人が住んでいない建物の扱いを、一次資料で確認できませんでした。庭までにとどめてください。
    • 「相当の期間」が具体的に何日かは、条文に書かれていません。事案によります。
    • 切った枝の所有権は書いていません。確認できませんでした。
    • 判例を挙げていません。改正が2023年4月1日と新しく、裁判例を一次資料で確認できませんでした。
    • この記事は法律の一般的な説明です。実際に争いになったら弁護士に相談してください。当サイトは法律事務所ではありません。

    あわせて読みたい

  • 空き家の瓦が落ちて人にあたったら、賠償するのは所有者です|民法717条に「知らなかった」という逃げ道はありません

    誰も住んでいない実家の瓦が落ちて、通りかかった人にあたった。ブロック塀が倒れて、隣の車を潰した。庭木が折れて、隣家の屋根を壊した。

    このとき、賠償するのは所有者です。そして、「知らなかった」「見に行けなかった」は理由になりません。

    根拠は民法717条です。条文はこうなっています。

    土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

    短い条文ですが、空き家を持っている人にとっては、読み方を知っておく価値があります。

    この条文の構造

    読みどころは3つです。

    1. 一次的に責任を負うのは「占有者」です

    実際にその建物を支配している人が、まず責任を負います。賃貸中なら借主が占有者です。

    ところが空き家では、誰も住んでいません。この場合、その建物を管理している所有者自身が占有者になるのがふつうです。つまり、占有者と所有者が同じ人になります。

    2. 所有者には「注意していた」という逃げ道がありません

    ここが決定的です。条文をもう一度見てください。

    占有者には「損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは」という免責の規定があります。所有者には、それがありません。

    条文の構造上、占有者が「必要な注意をしていた」と認められて免責されると、今度は所有者が賠償しなければならないと書かれています。所有者側には同じただし書きが付いていません。

    これを法律の世界では無過失責任と呼びます。過失がなくても責任を負う、という意味です。

    所有者には、ただし書きがありません 占有者は必要な注意をしましたか はい 所有者が賠償 1項ただし書 いいえ 占有者が賠償 1項の本文

    3. 竹木にも同じルールが使われます

    第2項は「前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する」と書いています。

    庭の木も対象です。枯れた木が折れて隣家を壊した、というのはこの条文の話になります。

    「瑕疵」とは何か

    条文が問うのは「設置又は保存に瑕疵があること」です。ここを、事故が起きてから争うことになります。

    設置の瑕疵は、作ったときからおかしかった場合。保存の瑕疵は、あとから傷んだのに直していなかった場合です。空き家で問題になるのは、ほとんどが後者です。

    空き家で「保存の瑕疵」を問われやすいのは、次のようなところです。

    場所 起きること 被害の向き
    屋根瓦・スレート 強風で飛ぶ、ずれて落ちる 通行人、隣家、駐車中の車
    ブロック塀・門柱 傾き、地震や接触で倒れる 通行人、隣地
    アンテナ・カーポート・雨樋 固定が緩んで落下・飛散 通行人、隣家
    庭木 枯れて折れる、根で塀を押す 隣家、道路
    外壁・軒天 剥がれて落ちる 通行人
    建物本体 傾き、倒壊 隣家、道路

    どれも、定期的に見ていれば気づけるものです。逆に、何年も見に行っていなければ気づけません。「見に行っていないから知らなかった」は、瑕疵を否定する材料にはなりません。

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    持ち続けるコストには、この責任も含まれています

    点検も保険も、持ち続けるための費用です。そこに、瓦が落ちたときの賠償という上限のないリスクが乗っています。それを何年払い続けるのかを決めるには、やめた場合にいくらになるのかが分かっていないと比べられません。

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    仲介での相場は実家の売却相場を調べる3つの方法で。控除の期限は空き家の3,000万円特別控除に、選択肢の全体像は空き家を処分する4つの方法にまとめました。

    相続した実家では、誰が「所有者」なのか

    ここで多くの人が引っかかります。

    相続登記をしていなくても、相続人が所有者です

    登記の名義が亡くなった親のままでも、相続が起きた時点で、所有権は相続人に移っています。登記は権利を第三者に主張するための手続きであって、登記していないから所有者ではない、ということにはなりません。

    「まだ名義変更していないから自分は関係ない」は通りません。なお相続登記は2024年4月1日から義務になっています。

    兄弟で共有していると、全員が対象になり得ます

    遺産分割が終わっていない実家は、相続人全員の共有です。共有物から生じた損害について、共有者がどう責任を分け合うかは事案によりますが、被害者から見れば請求先は複数あります。

    「自分は相続に関わっていないつもりだった」「実家は兄が管理している」という言い分が、そのまま通るとは限りません。遺産分割をしていない状態は、責任の所在も曖昧なままだ、ということです。

    相続放棄をしていれば、原則として対象外です

    相続放棄が認められていれば、初めから相続人でなかったことになるので、所有者としての責任は負いません。ただし放棄は相続の開始を知ってから3か月以内で、実家の財産に手を付けていないことが条件です。

    ここまでを、条文で確かめます

    「登記していなくても所有者」「共有だと全員」「放棄すれば原則対象外」——この3つは、いずれも民法の条文にそのまま書かれています。

    民法第八百九十六条(相続の一般的効力)
    相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

    民法第八百九十八条(共同相続の効力)
    1 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
    2 相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。

    民法第九百三十九条(相続の放棄の効力)
    相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

    出典:e-Gov法令検索 民法第896条・第898条・第939条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    896条は「相続開始の時から」と書いています。登記の話は出てきません。名義がどうなっているかと、誰が所有者かは、別の問題です。

    898条1項は「その共有に属する」と書いています。遺産分割が終わるまで、実家は相続人全員のものです。

    ★放棄しても、現に持っているなら保存の義務が残ります

    939条だけを読むと、放棄すれば実家と縁が切れるように見えます。しかし、その次の条文があります。

    民法第九百四十条(相続の放棄をした者による管理)
    1 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

    出典:e-Gov法令検索 民法第940条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    「現に占有しているとき」「引き渡すまでの間」です。放棄をしても、その実家を実際に持っている状態が続くかぎり、保存の義務は残ります。次に引き受ける人か、相続財産清算人に引き渡して、そこで終わります。放棄の書類を出した日に自動的に切れるわけではありません。

    登記ではなく、相続の時からです 相続の開始と同時に 896条。登記は関係ありません 所有者です 遺産分割の前は共有 898条1項。相続人全員の共有 全員が対象 相続放棄をすれば 939条。初めから相続人でない 原則は対象外 現に占有しているなら 940条1項。引き渡すまで保存義務 残ります 緑はそのまま進める。黄は立ち止まって確かめる

    いくら払うことになるのか

    金額に上限はありません。実際に生じた損害を賠償します。

    物が壊れただけなら、その修理費や時価です。しかし人がけがをした場合は、治療費・休業損害・慰謝料、後遺障害が残れば逸失利益が加わります。亡くなった場合は、さらに大きくなります。

    実家の解体費は木造30坪で100万円台からです。賠償はその桁で収まる保証がありません。「解体費が惜しいから放置する」という判断は、この点を計算に入れていないことが多いと思います。

    ★金額の中身と、いつまで請求されるのか

    「金額に上限はありません」と書きました。何が金額に入るのかも、条文に書かれています。

    民法第七百十条(財産以外の損害の賠償)
    他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

    民法第七百十一条(近親者に対する損害の賠償)
    他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

    民法第七百二十二条(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)
    2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

    出典:e-Gov法令検索 民法第710条・第711条・第722条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    710条の「財産以外の損害」が、慰謝料です。物の値段だけではありません。711条は、亡くなった場合に「父母、配偶者及び子」が自分の立場で請求できる、と書いています。被害者本人の分とは別に、家族の分が立ちます。ここが金額の膨らむところです。

    722条2項は逆側です。被害者の側にも落ち度があったときは、裁判所が金額を調整できます。ただしこれは事故のあとの話で、あてにして放置する理由にはなりません。

    時効は「3年」ではありません

    「何年か経てば請求されない」と考える人がいます。条文は、2つの物差しを持っています。

    民法第七百二十四条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
    不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
    一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
    二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

    民法第七百二十四条の二(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
    人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。

    出典:e-Gov法令検索 民法第724条・第724条の2(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    人がけがをした場合や亡くなった場合は、3年ではなく5年です(724条の2)。そして、知らないまま時間が過ぎても、不法行為の時から20年という別の物差しが動いています。起算点が違うので、単純に長いほうを見ればよいわけではありません。条文は「次に掲げる場合には」と書いていて、どちらかが来た時点で消滅します。

    請求できる期間は、最長20年です 知った時から 原則 3年 知った時から 人身 5年 不法行為の時から 20年 起算点が違います。早いほうで消滅します

    保険で備えられるのか

    備えられますが、空き家には落とし穴があります。

    • 空き家は、通常の火災保険(住宅物件)の対象にならないことがあります。誰も住んでいない建物は「一般物件」として扱われ、保険料が上がるか、引き受けを断られることがあります。
    • 他人への賠償に効くのは、火災保険そのものではなく特約です。個人賠償責任特約や施設賠償責任保険にあたるものが必要です。建物が燃えたときに出る保険と、人にけがをさせたときに出る保険は別です。
    • 親が入っていた保険が、そのまま続いているとは限りません。契約者が亡くなったあとの手続きをしていないと、失効していることがあります。

    詳しくは空き家の火災保険にまとめています。まず、いま実際にどの保険が生きているのかを確認してください。

    ★火事のときは、名指しされている条文が違います

    空き家の事故というと、火災を思い浮かべる人が多いはずです。火事には、明治32年からある一文の法律が関係します。

    失火ノ責任ニ関スル法律(明治三十二年法律第四十号)
    民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス

    出典:e-Gov法令検索 失火ノ責任ニ関スル法律(全文を開いて確認/2026年9月3日)。これが条文のすべてで、一文しかありません

    読み下すと、こうなります。民法709条の規定は、失火の場合には適用しない。ただし失火した者に重大な過失があったときは、この限りでない。

    ここで気をつけるべき点が2つあります

    ①この法律が名指ししているのは、709条だけです。条文に出てくる条番号は「第七百九条」のひとつだけで、717条は出てきません。これは条文を読めばそのまま分かることです。

    ②では717条の責任がどうなるのかは、条文だけでは決まりません。そこは裁判所の判断が積み重なってきた領域です。この記事は判例を確認していないので、断定しません。「失火責任法があるから空き家の火事は責任を負わない」と読むのは、少なくとも条文からは出てこない、ということだけ書いておきます。

    そして「重大な過失」があれば、この法律の免責はそもそも外れます。屋根も壁も傷んだまま何年も放置していた建物について、重過失がなかったと言えるかどうかは、その状態しだいです。

    火災保険の話も、ここに関わります。隣家が自分の火災保険で直した場合、保険会社があなたに求償してくるかどうかは、この「重大な過失」の有無で変わってきます。だから「隣が保険に入っているから大丈夫」ではありません。

    行政からの通知とは、別の話です

    空き家を放置していると、自治体から助言・指導や勧告が来ることがあります。これは空家法にもとづく行政の手続きで、民法717条の賠償責任とは別のものです。

    空家法の手続き 民法717条の責任
    相手 自治体 けがをした人・物を壊された人
    始まり方 調査のうえ、文書が届く 事故が起きた瞬間
    段取り 助言・指導 → 勧告 → 命令 → 代執行 段階はありません
    結果 税の特例が外れる、過料、強制的に解体され費用を請求される 損害額の賠償
    予告 ある ない

    行政の手続きには段階があり、文書が来てから動く時間があります。民法717条にはそれがありません。事故が起きた時点で、話は賠償から始まります。

    行政の手続きのほうは、空き家の行政代執行と特定空家に指定されるとどうなるかに書いています。

    ★行政の道は、空家法だけではありません

    上の表は空家法の手続きを書いていますが、建築物には、もう1本の道があります。建築基準法です。

    建築基準法第八条(維持保全)
    1 建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。

    これは努力義務です。しかし、状態が悪くなると10条が動きます。

    建築基準法第十条(著しく保安上危険な建築物等の所有者等に対する勧告及び命令)
    1 特定行政庁は、……損傷、腐食その他の劣化が進み、そのまま放置すれば著しく保安上危険となり、又は著しく衛生上有害となるおそれがあると認める場合においては、当該建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用中止、使用制限その他保安上又は衛生上必要な措置をとることを勧告することができる。
    2 特定行政庁は、前項の勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかつた場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。
    3 前項の規定による場合のほか、特定行政庁は、建築物の敷地、構造又は建築設備が著しく保安上危険であり、又は著しく衛生上有害であると認める場合においては、当該建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他保安上又は衛生上必要な措置をとることを命ずることができる。

    出典:e-Gov法令検索 建築基準法第8条・第10条(全文を開いて確認/2026年9月3日)。第10条第1項および第3項は、括弧書きの一部を省略しています

    3項の「前項の規定による場合のほか」に目を留めてください。2項は「勧告を受けた者が従わなかったとき」の命令ですが、3項はそれとは別に、著しく保安上危険だと認めれば、勧告を経ずに命令できると書いています。空家法のように助言・指導から順に上がっていくとはかぎりません。

    命令に従わなかった場合の罰則もあります。

    建築基準法第九十九条
    次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
    四 ……第十条第二項若しくは第三項……の規定による特定行政庁の命令に違反した者

    出典:e-Gov法令検索 建築基準法第99条(全文を開いて確認/2026年9月3日)。第4号は多数の条文を列挙しており、この記事に関係する部分だけを抜いています

    空家法の道と建築基準法10条の道は、どちらも所有者に向いています。そして民法717条は、そのどちらとも別に、事故が起きた瞬間に始まります。3本を混ぜないでください。

    行政の道は、2本あります 空家法 助言・指導から 勧告 → 命令 段階があります 代執行まで 建築基準法10条 1項は勧告 2項は従わない時 3項はそのほかに いきなり命令 10条2項3項の命令に違反すると99条1項4号

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    落ちるものを外すだけなら、解体より安く済むことがあります

    建物ごと壊さなくても、アンテナ・傷んだカーポート・傾いたブロック塀だけを先に外すという手があります。危ないものが無くなれば、瑕疵を問われる場所も減ります。まず全部壊した場合の金額を見てから、どこまでやるかを決めてください。

    ①解体してしまうと、住宅用地特例は確実に外れます(勧告と違い、こちらは元に戻りません)。②補助金は原則として契約前・着工前の申請です。解体してから申請しても出ません(全国の解体補助金一覧)。③相見積りを取ってください。1社では高いのか安いのか判断できません。④現地調査が必要になるので、遠方の場合は立会いの要否を確認してください。⑤当サイトはこのリンク経由の申込で広告収入を受け取ります。

    解体した場合の見積もりを取る(無料)

    費用の内訳は実家の解体費用、解体後の税金は解体すると固定資産税は何倍になるかに。片付けを先に済ませるほうが安く済みます(実家の片付けの手順)。

    いまできること

    放置を選ぶなら、少なくともこれだけはやってください。

    1. 年に1回は、屋根・塀・木を外から見る。中に入らなくても、道路から見上げるだけで分かることが多いです。瓦のずれ、塀の傾き、枯れ枝。写真を撮って日付を残しておいてください。
    2. 危ないものは先に外す。アンテナ、傷んだカーポート、傾いたブロック塀。建物を壊さなくても、落ちるものだけ先に落としておくという手があります。数万円で済むこともあります。
    3. 庭木は切る。竹木も条文の対象です。道路や隣地に張り出した枝は、放置しないでください。
    4. いま有効な保険を確認する。親名義のまま失効していないか。他人への賠償に効く特約が付いているか。
    5. 近所に連絡先を伝えておく。何かあったとき、すぐ連絡が来ます。早く知ることが、被害を小さくします。
    6. 遺産分割を終わらせる。共有のままだと、責任も判断も動きません。

    そのうえで、いつまで持ち続けるかを決めてください。点検も保険も、持ち続けるための費用です。それを何年払うのかという話になります。

    よくある質問

    誰も住んでいない実家でも、責任を負うのですか?
    負います。民法717条は、まず占有者が責任を負い、占有者が必要な注意をしていたときは所有者が賠償する、という構造です。空き家では管理している所有者自身が占有者になるのがふつうなので、どちらにしても所有者に行き着きます。
    遠方に住んでいて、見に行けませんでした。それでも責任がありますか?
    あります。条文が問うのは「設置又は保存に瑕疵があること」であって、所有者が見に行けたかどうかではありません。所有者の責任には、占有者にあるような「必要な注意をしたときは免責」という規定が付いていません。
    登記が親の名義のままです。自分の責任になりますか?
    なり得ます。相続が起きた時点で所有権は相続人に移っています。登記は第三者に権利を主張するための手続きであって、登記していないから所有者ではない、ということにはなりません。相続登記は2024年4月1日から義務です。
    兄弟の共有です。誰が払うのですか?
    共有者の間でどう分担するかは事案によりますが、被害者から見れば請求先は複数あります。「兄が管理しているから自分は関係ない」という言い分がそのまま通るとは限りません。遺産分割を終わらせておくことが、責任の所在をはっきりさせる意味でも重要です。
    庭の木が倒れて隣家を壊した場合も同じですか?
    はい。民法717条第2項が「前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する」と定めています。庭木も対象です。
    火災の場合はどうなりますか?
    この記事では扱いません。火災には失火責任法という別の法律があり、それが工作物責任にどう関わるかについて、当サイトは一次資料で確認できていません。確認できていないことを断定的に書くことはしません。火災の備えについては空き家の火災保険を参照してください。
    解体すれば、この責任はなくなりますか?
    建物と塀が無くなれば、その工作物についての責任はなくなります。ただし土地は残ります。擁壁や残った門柱があれば、それは引き続き工作物です。また更地にすると土地の固定資産税の住宅用地特例が外れ、翌年から税額が上がります。解体は責任を減らしますが、費用と税がついてきます。

    この記事で確認できなかったこと

    • 判例を挙げていません。民法717条の「瑕疵」の判断や、空き家の事故についての具体的な裁判例を、一次資料で確認できませんでした。この記事は条文の構造だけを書いています。
    • 失火責任法と民法717条の関係について、判例を確認していません。失火責任法の条文そのものは全文を確認して本文に引用しました。その条文が名指ししているのは民法709条だけで、717条は出てきません。そこまでは条文から言えることです。しかし、その効果が717条の責任にどう及ぶかは判例の積み重ねによる領域で、一次資料にあたれていません。火災については、この記事の記述をそのまま判断の材料にしないでください。
    • 賠償額の相場は書いていません。事案ごとに大きく変わり、統計を確認できませんでした。
    • 共有者の責任の分け方は書いていません。事案によります。実際に事故が起きたら、弁護士に相談してください。
    • この記事は法律の一般的な説明です。個別の事案の判断ではありません。当サイトは法律事務所ではありません。

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  • 800万円以下の実家を売ると、仲介手数料は最大33万円です|2024年7月に上限が変わりました。安くなる制度ではありません

    実家を売るとき、仲介手数料は「売買価格の3%+6万円+消費税」だと思っている人が多いはずです。800万円以下の物件では、それが当てはまりません。

    2024年7月1日から、空き家の売買の仲介手数料の上限が変わりました。800万円以下なら、価格に関係なく最大33万円(税込)まで受け取れます。

    ここを誤解している記事が多いので、先に結論を書きます。これは手数料が安くなる制度ではありません。業者が受け取れる上限を引き上げる制度です。売主から見れば、多くの場合、支払う額は増えます。

    結論を先に書きます

    いつから 令和6年(2024年)7月1日
    対象 売買代金または交換価額が800万円以下の宅地・建物
    上限 30万円の1.1倍=33万円(税込)
    誰から受け取れるか 売主(依頼者)からのみ。買主からは通常の計算による
    条件 媒介契約を結ぶ前に、金額を説明して合意しておく必要があります
    改正前 400万円以下・18万円×1.1=19.8万円。しかも「現地調査等の費用を要するもの」に限られていた
    読者にとっての意味 800万円以下で売るなら、手数料は上がる可能性が高い。ただし、これがあるから扱ってもらえる面もある

    通常の計算と、どれだけ違うか

    まず通常の上限を確認します。速算式は次のとおりです(いずれも税抜。実際は消費税が乗ります)。

    • 200万円以下:売買価格 × 5%
    • 200万円超400万円以下:売買価格 × 4% + 2万円
    • 400万円超:売買価格 × 3% + 6万円

    これで計算した通常の上限と、特例の33万円を並べます。

    売買価格 通常の上限(税込) 特例の上限(税込) 差
    100万円 5万5,000円 33万円 +27万5,000円
    200万円 11万円 33万円 +22万円
    300万円 15万4,000円 33万円 +17万6,000円
    400万円 19万8,000円 33万円 +13万2,000円
    500万円 23万1,000円 33万円 +9万9,000円
    600万円 26万4,000円 33万円 +6万6,000円
    700万円 29万7,000円 33万円 +3万3,000円
    800万円 33万円 33万円 0円
    安い実家ほど、手数料は上がります 27万5,000円 増える額 通常の上限 5万5,000円 特例の上限 33万円 売買価格100万円の場合。800万円ちょうどで並びます

    800万円ちょうどで、通常の計算と特例の上限がぴたりと一致します。800万円 × 3% + 6万円 = 30万円。これに消費税を乗せて33万円。特例の上限も30万円の1.1倍で33万円です。

    つまりこの特例は、「800万円未満の物件を、800万円の物件と同じ手数料で扱えるようにする」制度です。100万円の実家なら、手数料は5万5,000円から33万円になり得ます。6倍です。

    なぜこうなっているのか

    安い物件は、業者にとって割に合わないからです。

    100万円の空き家を売っても、通常の上限では手数料は5万5,000円です。そのために現地に行き、境界を確認し、登記を調べ、写真を撮り、広告を出し、内見に立ち会い、契約書を作る。都心のマンションを売るのと手間は変わりません。むしろ、遠方の古い家のほうが手間はかかります。

    だから安い空き家は、そもそも扱ってもらえないことがありました。「うちでは扱えません」と断られる、あるいは受けてもらえても後回しにされる。この特例は、そこを埋めるために作られています。

    改正前は400万円以下・19.8万円が上限で、しかも「通常の売買の媒介と比較して現地調査等の費用を要するもの」という限定がついていました。2024年7月の改正で、この限定が外れ、金額の基準も倍になりました。

    売主の立場から見れば、支払う額は増えます。ただし「高い手数料を払うか、扱ってもらえないか」という選択になることがある、というのが実態です。

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    33万円を払う前に、その実家がいくらで売れるかを掴む

    この特例が関係するのは、800万円以下で売れる実家です。自分の実家がその価格帯に入るかどうかで、手数料の考え方が変わります。500万円で売れるなら手数料は最大33万円、手取りは467万円。買取の提示額と並べるには、まず売れる金額の桁を掴む必要があります。

    先に断っておきます。買取は、仲介で売れた場合より手取りが下がります。それでも見る価値があるのは、比較対象の数字が手に入るからです。運営は株式会社ネクサスプロパティマネジメント(宅地建物取引業免許:国土交通大臣(1)第10311号)。同社は「個人情報の入力は不要、匿名のまま利用でき、営業電話もありません」という匿名のAI査定も公開しています(入力3項目・最短30秒/2026年6月20日 同社発表)。まだ売ると決めていない段階なら、まず匿名のほうで桁だけ確かめてください。ただし匿名で出るのは機械的な概算です。実際の金額を知るには、連絡先を入れて査定を申し込む必要があります(申し込めば担当者から連絡が来ます)。

    匿名のAI査定で桁を確かめる/査定を申し込む

    匿名の査定は「自分で調べる」段階の道具です。出てきた数字は1つだけ信じず、幅で捉えてください。手数料を引いた手取りで並べるのは、そのあとです。

    ★33万円は、誰が決めた数字なのか

    「特例」と書かれると、業者が自由に決めた料金のように見えます。違います。この数字は法律の仕組みの中で決まっています。

    おおもとは宅地建物取引業法46条です。四つの項からできていて、そのどれもが売主の側に関係します。

    宅地建物取引業法第四十六条(報酬)
    1 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
    2 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。
    3 国土交通大臣は、第一項の報酬の額を定めたときは、これを告示しなければならない。
    4 宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、第一項の規定により国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない。

    出典:e-Gov法令検索 宅地建物取引業法第46条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    この四つが、実務では次の意味になります

    ①金額を決めているのは国土交通大臣です(1項)。業者ではありません。33万円という数字も、業者が付けた値札ではなく、大臣が定めた上限です。

    ②上限を「こえて」受け取ることは禁止されています(2項)。「こえて受けてはならない」であって、「この額を受け取れる」ではありません。上限であって定価ではない——この記事で何度か書いていることの、条文上の根拠がここです。

    ③金額は告示という形で公表されます(3項)。2024年7月1日から変わったのは、この告示のほうです。法律の46条そのものは1952年から変わっていません。

    ④そして、あなたが行く事務所に貼ってあります(4項)。「公衆の見やすい場所に掲示しなければならない」と書かれています。媒介契約の話をしに行った事務所の壁を、一度見てください。そこに国土交通大臣が定めた報酬額の表があります。無ければ、それ自体が46条4項に反しています。

    報酬の話は、媒介契約より前です 1 事務所の掲示 国土交通大臣が定めた額。46条4項 2 報酬額の説明 媒介契約の前に、あらかじめ 3 上限の中で合意 33万円は上限。決まった額ではない 4 媒介契約と書面 遅滞なく交付。34条の2第1項 5 成約 → 報酬 売買代金が800万円以下かで判定

    知らないと損をする3つの条件

    1. 売主からしか受け取れません

    この特例が使えるのは、空家等の売主または交換を行う者である依頼者から受ける報酬に限られます。買主からは通常の計算による額しか受け取れません。

    つまり、あなたが買う側で、800万円以下の空き家を買うときに「特例なので33万円です」と言われたら、それは違います。買主側の上限は通常どおりです。

    2. 媒介契約を結ぶ「前」に、説明と合意が必要です

    ここがいちばん大事です。国土交通省の解釈・運用の考え方は、こう書いています。

    媒介契約の締結に際しあらかじめ、この規定に定める上限の範囲内で、報酬額について依頼者に対して説明し、合意する必要がある

    「あらかじめ」です。契約したあとに「実はこの物件は特例が使えるので33万円になります」と言われても、それは順番が違います。

    逆に言えば、媒介契約を結ぶ前なら、金額の話ができます。上限が33万円だというだけで、33万円と決まっているわけではありません。「上限の範囲内で合意する」と書かれています。

    3. 800万円は「売買代金」で判定します

    査定額でも、売り出し価格でもありません。実際に成立した売買代金です。900万円で売り出して820万円で成約したなら特例の対象外、780万円で成約したなら対象になります。

    ★媒介契約書には、報酬が書かれます

    「媒介契約を結ぶ前に説明と合意が必要」というのは、国土交通省の解釈・運用の考え方に書かれていることです。では、そもそも媒介契約とは法律上どういうものか。ここも条文があります。

    宅地建物取引業法第三十四条の二(媒介契約)
    1 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。
    一 当該宅地の所在、地番その他当該宅地を特定するために必要な表示又は当該建物の所在、種類、構造その他当該建物を特定するために必要な表示
    二 当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額
    三 当該宅地又は建物について、依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することの許否及びこれを許す場合の他の宅地建物取引業者を明示する義務の存否に関する事項
    四 当該建物が既存の建物であるときは、依頼者に対する建物状況調査を実施する者のあつせんに関する事項
    五 媒介契約の有効期間及び解除に関する事項
    六 当該宅地又は建物の第五項に規定する指定流通機構への登録に関する事項
    七 報酬に関する事項
    八 その他国土交通省令・内閣府令で定める事項
    2 宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。
    3 依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、三月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする。
    10 第三項から第六項まで及び前二項の規定に反する特約は、無効とする。

    出典:e-Gov法令検索 宅地建物取引業法第34条の2(全文を開いて確認/2026年9月3日)。第4項から第9項および第11項以下は省略しています

    売主が使えるのは、次の3つです

    ①報酬は、書面に書かれます(1項7号)。「報酬に関する事項」は、媒介契約書の法定の記載事項です。口頭で「まあ33万円くらいで」ということにはなりません。書面に書かれた金額が、その契約の金額です。そして書面の交付は「媒介契約を締結したとき」。だからこそ、金額の話は締結の前に終わっていなければ意味がありません。

    ②査定額の根拠を出してもらえます(2項)。「価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない」。これは業者の義務です。800万円以下かどうかで手数料の考え方が変わる以上、「いくらで売れると思いますか」の答えには根拠が付いてきます。付いてこなければ、求めてください。

    ③専任媒介は3か月が上限で、それを延ばす特約は無効です(3項・10項)。「三月を超えることができない」、そして「これに反する特約は、無効とする」。半年の専任契約書にサインしても、期間は3か月です。更新はできますが、依頼者の申出によるものと定められています(4項)。

    800万円以下の実家は、断られることがある物件です。だからこそ、受けてくれた業者との契約の中身を自分で読めるようにしておく意味があります。

    媒介契約書に、書いてあります 報酬に関する事項 1項7号。書面の法定記載事項 書面に載ります 価額の意見の根拠 2項。明らかにする義務があります 求められます 専任は3か月まで 3項。超える定めは3か月になります 延ばせません 反する特約は無効 10項。書いてあっても効きません サインしても 緑はそのまま進める。黄は立ち止まって確かめる

    貸すほうにも特例ができました

    同じ2024年7月1日から、「長期の空家等」の貸借の媒介にも特例ができています。

    貸主から受け取れる上限 借賃の1か月分の2.2倍(通常は1.1倍)
    条件 借主から受け取る報酬が通常の範囲内(借賃1か月分の1.1倍以内)であること
    「長期の空家等」とは 現に長期間にわたって居住の用・事業の用その他の用途に供されていないもの(少なくとも1年を超えて居住者が不在)、または将来にわたり用途に供される見込みがないもの(相続などで利用されなくなった直後で、今後の利用が見込まれないもの)

    相続した直後の実家は、1年経っていなくても「長期の空家等」に当たり得ます。「将来にわたり用途に供される見込みがない」ほうの定義に入るからです。

    家賃6万円の実家を貸すなら、貸主が払う仲介手数料の上限は6万6,000円ではなく13万2,000円になります。

    800万円以下の実家は、そもそもいくらで売れるのか

    この特例が関係するのは、800万円以下で売れる実家です。相続した地方の一戸建てでは、珍しくない価格帯です。

    ここで判断が必要になります。「33万円の手数料を払って仲介で売る」のか、「買取業者に直接売る」のか。

    仲介で売る 買取業者に売る
    手数料 800万円以下なら最大33万円 原則かかりません(買主が業者なので)
    売却価格 相場に近い 相場より安い(業者が再販するため)
    期間 買主が見つかるまで 短い
    契約不適合責任 売主が負う(免責特約を付けることもある) 免責にできることが多い

    500万円で売れる実家なら、仲介の手数料は最大33万円。手取りは467万円です。買取で430万円なら、買取のほうが低い。買取で480万円なら、買取のほうが高い。手数料を引いた「手取り」で並べないと比較になりません。

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    愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本の実家なら、もう1社あります

    800万円以下の実家は、「割に合わない」という理由で扱いを断られることがあります。2024年7月の改正はそこを埋めるためのものですが、実際に扱ってもらえるかどうかは会社によります。複数の会社に当たっておくと、断られたときの次の手が残ります。

    申し込む前に、4つだけ確認してください。①対応しているのは上の表の市区町村とその周辺だけです。県が合っていても、店舗から遠い地域は受け付けられないことがあります。②申し込むと30日以内に電話またはメールで連絡が入り、物件の状況を聞かれます。所在地・築年数・間取りを答えられるようにしておくと早く終わります。③申し込めるのは名義人か、そのご親族だけです。相続した実家なら、相続人であるあなたが申し込めます。名義人と関係のない方からの問い合わせは受け付けられません。④売却を考えていない相談は対象外です。迷っている段階なら「まだ決めていませんが、金額を知りたい」と伝えてください。

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    査定額と自分の調べた相場がずれていたとき、そのずれの理由を説明できる会社かどうかが判断材料になります。説明が納得できなければ、一括査定サイトの比較で他社にもあたってください。

    ★上限を超えて受け取ったら、どうなるか

    ここまで「33万円は上限です」と書いてきました。では、上限を超えた業者はどうなるのか。そこまで見ておくと、金額の話をする側の足場が変わります。

    入口は、さきほどの46条2項です。「前項の額をこえて報酬を受けてはならない」。この違反には罰則があります。

    宅地建物取引業法第八十二条
    次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。
    二 第十二条第二項、第十三条第二項、第三十一条の三第三項又は第四十六条第二項の規定に違反した者

    出典:e-Gov法令検索 宅地建物取引業法第82条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    さらに、受け取らなくても、要求しただけで別の条文に当たります。

    宅地建物取引業法第四十七条(業務に関する禁止事項)
    宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
    二 不当に高額の報酬を要求する行為

    宅地建物取引業法第八十条
    第四十七条の規定に違反して同条第二号に掲げる行為をした者は、一年以下の拘禁刑若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

    出典:e-Gov法令検索 宅地建物取引業法第47条・第80条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    「要求する行為」です。受け取っていなくても成立します。罰金だけでなく拘禁刑があり、しかも併科されることがあります。46条2項違反(受け取った場合)の罰金100万円より、47条2号(要求した場合)のほうが重いという並びになっています。

    行政処分の側もあります。

    宅地建物取引業法第六十五条(指示及び業務の停止)
    2 国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該宅地建物取引業者に対し、一年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
    二 ……第三十四条の二第一項若しくは第二項……第四十六条第二項、第四十七条……の規定に違反したとき。

    出典:e-Gov法令検索 宅地建物取引業法第65条(全文を開いて確認/2026年9月3日)。第2項第2号は多数の条文を列挙しており、この記事に関係する部分だけを抜いています

    媒介契約書を出さないこと(34条の2第1項)も、上限を超えて受け取ること(46条2項)も、不当に高額を要求すること(47条)も、同じ号に並んでいます。どれも1年以内の業務停止の対象です。

    要求しただけでも、罰則があります 受け取ったら 46条2項に違反 100万円以下の罰金 82条2号 1年以内の業務停止 要求しただけでも 47条2号に違反 1年以下の拘禁刑 100万円以下の罰金 併科もあります 業務停止は65条2項2号。どちらも並んでいます

    誤解しないでください。これは業者を疑うための材料ではありません

    800万円以下の実家を扱ってくれる業者は、貴重です。この特例は、扱ってもらえるようにするために作られました。ここに条文を並べたのは、告発のためではなく、金額の話を対等にするためです。上限が法律で決まっていて、その範囲内で合意すると決められている。だから「いくらですか」と聞いてよく、「なぜその金額ですか」と聞いてよい。それだけのことです。

    媒介契約の前に、これだけは聞いてください

    1. 「この物件は低廉な空家等の特例を使いますか」——使うなら、金額は媒介契約の前に決まっていなければなりません。
    2. 「その場合、手数料はいくらになりますか」——33万円は上限です。上限の範囲内で合意する、と決められています。言い値ではありません。
    3. 「800万円を超えて売れた場合はどうなりますか」——特例の対象外になり、通常の計算に戻ります。800万円を少し超えたあたりでは、通常計算のほうが高くなります。
    4. 「買主からも報酬を受け取りますか」——両手取引になるかどうかです。買主側は通常の計算です。
    5. 「この金額で、何をしてもらえますか」——特例は「手間がかかる物件でも扱えるように」という趣旨です。手間をかけてもらう前提の金額です。

    よくある質問

    800万円以下なら、必ず33万円になるのですか?
    いいえ。33万円は上限です。告示は「上限の範囲内で、報酬額について依頼者に対して説明し、合意する必要がある」としています。金額は媒介契約の前に話し合って決めるものです。通常の計算による額のままでも構いません。
    買主として800万円以下の空き家を買います。手数料は33万円ですか?
    違います。この特例は売主(または交換をする依頼者)から受ける報酬に限られます。買主から受け取れるのは通常の計算による額です。
    いつから変わったのですか。改正前は?
    令和6年(2024年)7月1日からです。改正前は「400万円以下」で上限18万円の1.1倍=19.8万円、しかも「通常の売買の媒介と比較して現地調査等の費用を要するもの」という限定がありました。改正でこの限定が外れ、金額の基準も800万円に上がりました。
    800万円は税込ですか、税抜ですか?
    売買代金または交換価額で判定します。成立した売買代金で見ます。売り出し価格や査定額ではありません。
    手数料が上がるなら、この改正は売主にとって損なのですか?
    支払う額だけを見れば増えます。ただし、安い物件が「割に合わない」という理由で扱ってもらえない状況を変えるための改正です。断られ続けて売れないより、33万円払って売れるほうがよい、という場面はあります。どちらが得かは、その物件が普通に売れるかどうかで決まります。
    貸す場合はどうなりますか?
    同じ2024年7月1日から、「長期の空家等」の貸借にも特例ができました。貸主から借賃の1か月分の2.2倍まで受け取れます(通常は1.1倍)。ただし借主から受け取る報酬が通常の範囲内であることが条件です。相続で利用されなくなった直後の実家も、今後の利用が見込まれないなら対象になり得ます。
    買取なら手数料はかかりませんか?
    買主が業者で、仲介が入らない直接の売買なら、仲介手数料は原則かかりません。ただし買取価格は相場より安くなります。再販するための費用と利益が引かれるからです。「価格−手数料」の手取りで比べてください。

    この記事で確認できなかったこと

    • 実際にこの特例がどれくらい使われているかの統計は見つけられませんでした。施行が2024年7月1日で、集計が公表されているかを確認できていません。
    • 報酬額の告示そのものの原文には、あたれていません。報酬の額を定めているのは昭和45年建設省告示第1552号(2024年7月1日施行の改正を含む)ですが、e-Gov法令検索は法律・政令・府省令などを収録するもので、告示は収録の対象外です。この記事の33万円・1.1倍・2.2倍・「長期の空家等」といった表現は、国土交通省の公表資料と解釈・運用の考え方によっています。かわりに、その告示の根拠となる宅地建物取引業法46条・34条の2・47条・65条・80条・82条は、e-Gov法令検索で全文を開いて確認しました。
    • 告示の「空家等」が、空家等対策特別措置法2条1項の「空家等」と同じ定義かどうかは確認できていません。告示の原文にあたれていないためです。この記事では、売買の特例を「800万円以下の宅地または建物」、貸借の特例を「長期の空家等」として、公表資料の表現をそのまま使っています。
    • 代理の場合の扱いは確認していません。この記事は媒介(仲介)の話です。
    • 金額はすべて上限です。実際にいくらになるかは、媒介契約の前の話し合いで決まります。

    あわせて読みたい

  • 空き家の行政代執行|壊されても費用は所有者が払います。全国890件と、150万〜850万円という請求額

    空き家を放置し続けると、最後は自治体が壊します。行政代執行です。

    ここで多くの人が誤解しています。行政が壊してくれるわけではありません。行政が段取りをして、費用は所有者や相続人に請求されます。しかも金額は、自分で発注するより高くなるのがふつうです。

    この記事では、国土交通省が集計した全国の件数と、近畿地方整備局がまとめた実際の費用の事例を並べます。どちらも推計ではなく、行政が公表している数字です。

    結論を先に書きます

    全国の代執行の累計 890件(行政代執行286・略式代執行592・緊急代執行12)
    費用の負担者 所有者(または相続人)。行政が肩代わりするのではなく、立て替えて請求する
    費用の実例 約150万円〜約850万円(国交省近畿地方整備局の6事例)
    取り立ての強さ 国税滞納処分の例により強制徴収できる。裁判を経ずに差押えができる
    回収の実態 公表された6事例のうち全額回収できたのは2件。残りは財産調査中・換価性が低い・公売予定
    そこまで行く前の段階 助言・指導 → 勧告 → 命令 → 代執行。勧告の時点で土地の固定資産税の特例が外れる

    数字の出どころは、国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況」(令和7年3月31日時点)と、国土交通省近畿地方整備局「事例から見る 空き家の行政代執行の実務」です。

    3つの代執行は、別のものです

    「代執行」とひとくくりに語られますが、法律上は3つに分かれます。どれに当たるかで、費用の請求先が変わります。

    種類 どういう場合か 全国の累計 費用の請求先
    行政代執行 所有者が分かっていて、命令に従わないとき 286件(175市区町村) 命令を受けた所有者
    略式代執行 所有者が分からない、または所在が分からないとき 592件(296市区町村) あとから判明した所有者・相続人
    緊急代執行 危険が差し迫っていて手続きを待てないとき(2023年の改正で新設) 12件(10市区町村) 所有者

    件数がいちばん多いのは略式代執行です。行政代執行の2倍あります。つまり実務では「所有者が分からないまま壊す」ほうが多い。

    ここが相続で実家を持った人に効いてきます。相続登記をしないまま放置していると、自治体からは「所有者が分からない空き家」に見えます。連絡が来ないまま略式代執行が行われ、あとから相続人が判明して請求が来る、という順番になり得ます。

    2024年4月から相続登記は義務になりました。登記をしていないことは、通知が届かない理由になっても、支払わなくてよい理由にはなりません。

    ★3つの代執行は、条文の「項」が違います

    上に書いた3つの代執行は、別々の法律にあるのではありません。空家法22条の、第9項・第10項・第11項です。

    空家等対策の推進に関する特別措置法第二十二条
    9 市町村長は、第三項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。
    10 第三項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者(命令対象者)を確知することができないとき……は、市町村長は、当該命令対象者の負担において、その措置を自ら行い、又は……措置実施者にその措置を行わせることができる。この場合においては、市町村長は、その定めた期限内に命令対象者においてその措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは市町村長又は措置実施者がその措置を行い、当該措置に要した費用を徴収する旨を、あらかじめ公告しなければならない。
    11 市町村長は、災害その他非常の場合において、特定空家等が保安上著しく危険な状態にある等……緊急に除却、修繕、立木竹の伐採その他……必要な措置をとる必要があると認めるときで、第三項から第八項までの規定により当該措置をとることを命ずるいとまがないときは、これらの規定にかかわらず、当該特定空家等に係る命令対象者の負担において、その措置を自ら行い、又は措置実施者に行わせることができる。
    12 前二項の規定により負担させる費用の徴収については、行政代執行法第五条及び第六条の規定を準用する。

    出典:e-Gov法令検索 空家法第22条第9項から第12項(全文を開いて確認/2026年9月3日)。第10項および第11項は括弧書きの一部を省略しています

    3つの違いは、ここに出ています

    ①9項は、命令があった後の話です。「第三項の規定により必要な措置を命じた場合において」から始まります。助言・指導、勧告、命令という順番を全部通ってから動きます。そして「行政代執行法の定めるところに従い」と書かれています。手続きは行政代執行法のほうにあります。

    ②10項は、命令なしで進みます。「過失がなくて……確知することができないとき」。所有者が分からない、相続人が誰か分からない、連絡先が分からない。そういう場合に、命令を出す相手がいないので、命令の段階を飛ばします。これが略式代執行です。ただし「あらかじめ公告しなければならない」とあります。黙って壊されるわけではありません。

    ③11項は、時間がないときです。「災害その他非常の場合」「命ずるいとまがないとき」。台風で屋根が飛びそう、地震で傾いた——そういう場面です。これが緊急代執行です。

    そして12項が、いちばん大事です。10項でも11項でも、費用の徴収には行政代執行法5条と6条が準用されます。「所有者が分からないまま壊した」「緊急だったから壊した」——どちらも、あとから所有者に請求されます。「命令を受けていないから払わなくていい」は、条文のどこにも書かれていません。

    3つの代執行は、項が違うだけです 行政代執行 9項。命令に従わないとき 順番どおり 略式代執行 10項。相手を確知できない 公告はします 緊急代執行 11項。命ずるいとまがない 災害のとき 費用の徴収は3つとも同じです(12項)

    費用はいくらか

    国土交通省近畿地方整備局が、実際に行われた代執行を6件、費用と回収状況つきで公表しています。

    事例 費用 内訳 回収状況
    1 約600万円 解体等工事費一式 法人解散の申立て、清算人から回収予定
    2 約570万円 解体工事費+設計委託費 請求(督促)、財産調査中
    3 約150万円 解体費・動産調査・隣家家屋調査・界壁補強費 請求(督促)。接道が悪く換価性が低い
    4 約850万円 解体等工事費一式 請求(督促)、土地を差押えて公売予定
    5 約180万円 動産調査・解体費等一式 全額回収済
    6 約470万円 動産調査・保管・査定・解体費等一式 全額回収済
    実際の請求額は150万〜850万円 事例4 土地を差押え 約850万円 事例1 清算人から 約600万円 事例2 財産調査中 約570万円 事例6 全額回収済 約470万円 事例5 全額回収済 約180万円 事例3 換価性が低い 約150万円 国土交通省近畿地方整備局が公表した6事例です

    自分で解体業者に発注する場合と比べて、高くなります。理由は3つあります。

    • 中の物を勝手に捨てられない。事例3・5・6に「動産調査」、事例6に「保管・査定」が入っています。所有者の財産なので、行政は目録を作って保管しなければなりません。この手間がそのまま費用になります。
    • 隣の家を守る工事が要る。事例3の「隣家家屋調査」「界壁補強費」がこれです。長屋や隣接した建物では、片方だけ壊すと隣が露出します。
    • 相見積りで安くする動機がない。費用は最終的に所有者に請求されます。自治体には値切る理由がありません。

    当サイトが全国501自治体の解体補助金を調べたときに集めた相場では、木造30坪の解体費は100万円台から150万円台が中心でした。代執行の6事例のうち4件が、その倍以上です。

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    「壊される前に手放す」も、選択肢のひとつです

    この記事で見たとおり、代執行の費用は約150万円から約850万円で、国税滞納処分の例により強制徴収されます。公表された6事例のうち1件は、土地を差し押さえて公売にかける予定と書かれています。直す・解体する以外に、その状態のまま手放すという道もあります。

    老朽化・違反建築・旧耐震の物件は、仲介では買主が付きにくいのが実情です。だからこそ買取という受け皿が成り立っていますが、手取りは仲介より下がります。その前提で比べてください。

    現況のままの買取価格を聞く(無料)

    補助金が使えるなら、そちらが先です。お住まいの自治体に解体補助金があるかは全国の空き家解体補助金データベースで確認できます。補助金・解体・売却の3つを並べてから決めてください。

    払わなければどうなるか——普通の借金より強い

    代執行の費用は、ふつうの債権ではありません。国土交通省近畿地方整備局の資料は、こう書いています。

    代執行に要した一切の費用は、行政主体が義務者から徴収する

    費用の徴収については、国税滞納処分の例による強制徴収が認められる

    「国税滞納処分の例による」というのが決定的です。ふつうの借金なら、貸した側は裁判を起こして勝ってから差押えに進みます。代執行の費用にはその段階がありません。税金の滞納と同じ扱いで、督促のあと直接、財産を差し押さえられます。

    事例4は、まさにそれが動いている例です。約850万円を請求し、土地を差し押さえて公売にかける予定と書かれています。建物を壊されたうえで、土地も失うということです。

    事例3の「接道が悪く換価性が低い」という記述も、読んでおく価値があります。売れない土地は、差し押さえても回収できません。回収できないと、その分は自治体の負担、つまりその市区町村の税金で埋められます。だから自治体は代執行に踏み切りたがらない。踏み切るのは、それでも放置できないほど危険になったときです。

    ★費用が「普通の借金より強い」理由は、行政代執行法6条にあります

    上で「普通の借金より強い」と書きました。その根拠は、たった1条です。

    行政代執行法第五条
    代執行に要した費用の徴収については、実際に要した費用の額及びその納期日を定め、義務者に対し、文書をもってその納付を命じなければならない。

    行政代執行法第六条
    1 代執行に要した費用は、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。
    2 代執行に要した費用については、行政庁は、国税及び地方税に次ぐ順位の先取特権を有する。
    3 代執行に要した費用を徴収したときは、その徴収金は、事務費の所属に従い、国庫又は地方公共団体の経済の収入となる。

    出典:e-Gov法令検索 行政代執行法第5条・第6条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    この2つの条文が意味するもの

    ①5条の「実際に要した費用の額」。見積りでも相場でもありません。かかった分がそのまま請求されます。だから動産の調査費も、隣家の補強費も、査定費も乗ります。上の6事例で金額がばらついているのは、これが理由です。

    ②6条1項の「国税滞納処分の例により」。これが決定的です。国が税金を取り立てるのと同じやり方で徴収できる、と書かれています。上の事例4に「土地を差押えて公売予定」とあるのは、この条文が根拠です。

    ③6条2項の「国税及び地方税に次ぐ順位の先取特権」。先取特権は、他の債権者より先に回収できる権利です。その順位が、国税と地方税のすぐ次だと書かれています。抵当権を持つ金融機関より前かどうかは、抵当権の登記時期との関係で決まるので一概には言えませんが、無担保の借金より強いことは条文から読めます。

    従わないときと、払わないとき 命令に従わないと 50万円以下の過料 空家法30条1項 22条3項の命令 代執行もされます 費用を払わないと 国税滞納処分の例 行政代執行法6条 国税と地方税に次ぐ 順位の先取特権 過料を払っても、代執行は止まりません

    手続きの前に、必ず文書が2通あります

    行政代執行法第二条
    法律……により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。

    行政代執行法第三条
    1 前条の規定による処分(代執行)をなすには、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予め文書で戒告しなければならない。
    2 義務者が、前項の戒告を受けて、指定の期限までにその義務を履行しないときは、当該行政庁は、代執行令書をもって、代執行をなすべき時期、代執行のために派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額を義務者に通知する。
    3 非常の場合又は危険切迫の場合において、当該行為の急速な実施について緊急の必要があり、前二項に規定する手続をとる暇がないときは、その手続を経ないで代執行をすることができる。

    出典:e-Gov法令検索 行政代執行法第2条・第3条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    3条1項の「戒告」と、2項の「代執行令書」。この2通が来ます。そして令書には「費用の概算による見積額」が書かれます。いくら請求されるのかは、壊される前に分かります。

    2条の「他の手段によつてその履行を確保することが困難であり」も読んでおいてください。自分で解体する、売る、譲る——他の手段が動いていれば、この要件は満たされにくくなります。戒告が来てからでも、動く意味はあります。

    ただし3条3項があります。非常の場合・危険切迫の場合で緊急の必要があるときは、戒告も令書もなしに代執行ができます。空家法22条11項の緊急代執行と同じ考え方です。

    そこまでの道のりは、4段階ある

    いきなり壊されるわけではありません。段階があり、それぞれの段階に全国の件数があります。

    段階 特定空家等 管理不全空家等 この段階で起きること
    助言・指導 42,768件 3,211件 文書が届く。まだ税金は変わらない
    勧告 4,153件 378件 土地の固定資産税の住宅用地特例が外れる
    命令 551件 — 従わないと過料。次は代執行
    代執行 286件+略式592件+緊急12件 — 強制的に壊され、費用を請求される

    数字は国土交通省の集計(令和7年3月31日時点の累計)です。

    助言・指導から勧告に進むのは、およそ10件に1件です。42,768件のうち勧告は4,153件。逆に言えば、指導の段階で9割は止まっています。文書が来た時点で動けば、間に合う人のほうが多い。

    そして命令は551件、代執行は890件。命令より代執行のほうが多いのは、所有者不明のまま進む略式代執行が592件あるからです。

    「管理不全空家等」は2023年12月にできた新しい段階です

    改正空家法が令和5年(2023年)12月13日に施行され、特定空家等になる手前の段階として「管理不全空家等」が新設されました。放置すれば特定空家等になるおそれのある状態、という位置づけです。

    ここが重要です。管理不全空家等でも、勧告を受ければ土地の固定資産税の住宅用地特例が外れます。特定空家等ほど傷んでいなくても、税金は上がるということです。

    まだ件数は少なく、助言・指導3,211件・勧告378件です。ただし施行から1年3か月の数字です。今後増えます。

    なお、住宅用地特例が外れると「固定資産税が6倍になる」とよく言われますが、これは正確ではありません。負担調整の上限があり、建物分の税金が消える分もあります。計算した結果は解体すると固定資産税は6倍になるのかにまとめてあります。土地の固定資産税で最大でも約4.2倍です。

    ★条文で確かめます(空家法22条)

    この記事はこれまで、制度の名前と手続きの順序だけを書いてきました。条文を全文で確認したので、ここに置きます。4段階は、ひとつの条の第1項から第3項に、そのまま並んでいます。

    空家等対策の推進に関する特別措置法第二十二条
    1 市町村長は、特定空家等の所有者等に対し、当該特定空家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空家等については、建築物の除却を除く。次項において同じ。)をとるよう助言又は指導をすることができる。
    2 市町村長は、前項の規定による助言又は指導をした場合において、なお当該特定空家等の状態が改善されないと認めるときは、当該助言又は指導を受けた者に対し、相当の猶予期限を付けて、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告することができる。
    3 市町村長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。

    出典:e-Gov法令検索 空家等対策の推進に関する特別措置法第22条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    条文を読むと、3つ見えてきます

    ①1項の括弧書きに、「建築物の除却を除く」と書かれています。倒壊等著しく保安上危険、または著しく衛生上有害——そこまでの状態にない特定空家等については、助言・指導と勧告の段階で「壊しなさい」とは言えません。草木の伐採や修繕は言えます。いきなり解体を求められるわけではない、ということが条文に書いてあります。

    ②2項も3項も「相当の猶予期限を付けて」です。期限のない勧告や命令は出ません。届いた文書に必ず日付が入っています。そこが残り時間です。

    ③3項は「正当な理由がなくて」が条件です。勧告に従えない事情がある場合に、それを説明する余地は条文上あります。ただし説明しないまま放置すれば、この条件は満たされてしまいます。

    4段階は、22条の中にあります 1 助言・指導 22条1項。除却は言えないことも 2 勧告 22条2項。ここで税が上がります 3 命令 22条3項。違反は50万円以下の過料 4 代執行 22条9項。行政代執行法に従う 5 費用の徴収 同法5条で納付命令、6条で徴収

    命令に違反すると、50万円以下の過料です

    同法第三十条
    1 第二十二条第三項の規定による市町村長の命令に違反した者は、五十万円以下の過料に処する。
    2 第九条第二項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、二十万円以下の過料に処する。

    出典:e-Gov法令検索 同法第30条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    過料は、命令に違反したときです。助言・指導や勧告の段階では、この条文は動きません。そして、過料を払ったからといって代執行が止まるわけではありません。別々に進みます。

    管理不全空家等は、13条という別の条文です

    同法第十三条(適切な管理が行われていない空家等の所有者等に対する措置)
    1 市町村長は、空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認めるときは、当該状態にあると認められる空家等(以下「管理不全空家等」という。)の所有者等に対し、……当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導をすることができる。
    2 市町村長は、前項の規定による指導をした場合において、なお当該管理不全空家等の状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときは、当該指導をした者に対し、修繕、立木竹の伐採その他の……必要な措置について勧告することができる。

    出典:e-Gov法令検索 同法第13条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    13条には、命令も代執行もありません。指導と勧告の2段までです。その先へ進むには、22条の特定空家等に格上げされる必要があります。

    ただし、税は13条2項の勧告で動きます。そこは地方税法の側に書かれています。

    地方税法第三百四十九条の三の二第一項(住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例)
    専ら人の居住の用に供する家屋……の敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの(……並びに空家等対策の推進に関する特別措置法第十三条第二項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第十三条第一項に規定する管理不全空家等及び同法第二十二条第二項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第二条第二項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く。以下……「住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、……三分の一の額とする。

    出典:e-Gov法令検索 地方税法第349条の3の2(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    「住宅用地」の定義そのものから、勧告を受けた土地が抜かれる書き方です。特例が「取り消される」のではなく、その土地はもう住宅用地ではない、という形になっています。そして13条2項(管理不全空家等)の勧告と22条2項(特定空家等)の勧告が、同じ括弧の中に並んでいます。条文の段数が少ないことと、影響が小さいことは別です。

    相続放棄すれば逃げられるのか

    ここはよく聞かれるところなので、正確に書きます。

    相続放棄をすれば、代執行の費用の請求は来ません。相続人でなくなるからです。ただし条件があります。

    • 相続の開始を知ってから3か月以内。この期間を過ぎると、原則として放棄できません。
    • 実家の財産に手を付けていないこと。片づけて売った、賃料を受け取った、といったことがあると、放棄が認められないことがあります。
    • 放棄しても、現に占有している場合は保存義務が残ります。2023年4月施行の民法改正で整理されました。誰も住んでいない実家を占有していなければ、この義務は原則かかりません。
    • 全員が放棄すれば、その空き家は所有者不明になります。結果として略式代執行の対象になり、費用は自治体の負担になります。

    相続放棄は、実家だけを選んで捨てる制度ではありません。預貯金も株も、まとめて放棄することになります。実家の解体費より預貯金のほうが多ければ、放棄は損です。詳しくは実家が「負動産」だったら相続放棄すべきかに書いています。

    いま何が届いているかで、残り時間が分かります

    届いているもの いまの位置 やるべきこと
    何も届いていない まだ何も始まっていない いちばん自由に選べる。売る・貸す・解体する・補助金を使う、全部の選択肢がある
    助言・指導の文書 42,768件のうちの1件。9割はここで止まる 期限までに直すか、手放すかを決める。まだ税金は上がっていない
    勧告 4,153件のうちの1件 翌年1月1日から土地の税額が上がります。また「勧告を受けたら補助金の対象外」とする自治体があります
    命令 551件のうちの1件 従わないと過料。次は代執行。ここまで来たら専門家に相談してください

    いちばん見落とされるのは「勧告を受けると補助金が使えなくなる自治体がある」という点です。放置して勧告まで進むと、税金が上がるうえに、解体費の補助まで閉じることがあります。打てる手は、時間が経つほど減ります。

    解体するなら、補助金があるかを先に見る

    当サイトは全国501自治体の空き家解体補助金を1件ずつ公式サイトで確認しています。そこで分かったことを3つだけ書きます。

    • 上限額の中央値は50万円です。木造30坪の解体費が100万円台からなので、補助を満額もらっても半分以上は手出しになります。
    • 501自治体のうち81自治体には、解体費の補助がありませんでした。「無いことを確認した」という意味です。
    • ほぼすべての自治体で、契約前に申請が必要です。契約してから申請しても通りません。順番を間違えると、金額に関係なくゼロになります。

    お住まいの自治体に制度があるかは、全国の空き家解体補助金データベースで確認できます。制度がない自治体も「ありません」と書いています。

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    代執行を待たずに壊すなら、費用から調べる

    行政の手続きは、こちらの都合では止まりません。勧告まで進むと土地の税額が上がり、「勧告を受けたら補助金の対象外」とする自治体もあります。補助金は交付決定の前に契約すると対象外になるので、見積りを先に取っておかないと申請の順番が組めません。

    ①同社サイトには「ご利用は無料。ご成約後の請求も一切ございません」と書かれています。
    ②同社は「契約まで、業者からご連絡がいくことはございません」と説明しています。
    ③申し込みには物件の情報と写真が要ります。遠方の実家で写真が手元にないなら、次に帰ったときに外観と傷んでいる箇所を撮っておいてください。
    ④解体する予定がないなら申し込まないでください。重複した申込や、連絡先が実在しない申込は無効と明記されています。
    ⑤1社の見積りだけで決めないでください。地元の解体業者にも自分で1社あたって、金額の桁が合っているかを確かめてください。
    ⑥解体補助金を使う予定があるなら、契約・着工の前に自治体へ申請してください。着工後の申請は原則として通りません。

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    見積書のどこを見るかは、この記事の見積書の章に戻って確認してください。お住まいの自治体の制度を先に調べておくと、受付期間に間に合うかどうかも一緒に分かります。

    よくある質問

    代執行の費用を払えないと、どうなりますか?
    国税滞納処分の例により強制徴収されます。督促のあと、裁判を経ずに預貯金や不動産を差し押さえられます。公表されている事例のなかには、約850万円を請求し、土地を差し押さえて公売にかける予定と書かれたものがあります。自己破産で免責されるかは事案によるため、支払えない見込みなら早い段階で弁護士に相談してください。
    連絡が来ていないので、うちは関係ないということですか?
    そうとは限りません。全国の代執行890件のうち592件は略式代執行で、これは「所有者が分からない」場合の手続きです。相続登記をしていないと、自治体から見て所有者が分からない状態になります。通知が届かないまま進み、あとから相続人が判明して請求が来ることがあります。
    助言・指導の文書が来ました。すぐ壊されますか?
    いいえ。全国の累計で、特定空家等への助言・指導は42,768件、勧告は4,153件です。指導から勧告に進むのは、およそ10件に1件です。期限までに対応すれば、ほとんどはここで止まります。ただし放置すれば次に進みます。
    特定空家に指定されていなくても、税金は上がりますか?
    上がることがあります。2023年12月13日に施行された改正空家法で「管理不全空家等」という段階ができ、勧告を受けると土地の固定資産税の住宅用地特例が外れます。特定空家等ほど傷んでいなくても対象になります。全国の勧告は378件(令和7年3月31日時点)です。
    「固定資産税が6倍になる」と聞きました。本当ですか?
    正確ではありません。課税標準の特例(小規模住宅用地は6分の1、一般住宅用地は3分の1)が外れるのは事実ですが、非住宅用地には課税標準を評価額の70%までとする上限があり、建物を壊せば建物分の税金も消えます。計算すると、土地の固定資産税で最大でも約4.2倍です。詳しくは解体すると固定資産税は6倍になるのかに書いています。
    自分で壊すのと、代執行で壊されるのとでは、費用はどれくらい違いますか?
    公表されている6事例の費用は約150万円から約850万円です。木造30坪の解体費の相場は100万円台からなので、倍以上になっている事例が6件中4件あります。中の物を勝手に処分できず動産調査と保管が必要になること、隣家を守る工事が要ること、相見積りで安くする動機が行政側にないこと、が理由です。
    相続放棄すれば、費用の請求は来ませんか?
    来ません。ただし相続の開始を知ってから3か月以内で、実家の財産に手を付けていないことが条件です。預貯金も含めてすべて放棄することになるので、実家の解体費より預貯金が多ければ損になります。

    この記事で確認できなかったこと

    • 全国の回収率は公表されていません。この記事の「6事例中2件が全額回収済」は、国土交通省近畿地方整備局が公表した事例集のなかでの話です。全国の代執行890件の回収状況を示す統計は見つけられませんでした。
    • 費用の事例に自治体名は書かれていません。資料が匿名で公表しているためです。
    • 件数は累計です。令和7年3月31日時点で、それまでに講じられた措置の合計です。単年度の件数ではありません。
    • 条文は全文を確認して、この記事に引用しました。空家法13条・22条・30条、行政代執行法2条・3条・5条・6条、地方税法349条の3の2を、e-Gov法令検索で開いて確認しています(2026年9月3日)。ただし、代執行の費用が実際に回収できなかった場合に自治体がどう処理しているか(債権放棄など)の運用は、確認できていません。

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  • 解体してから建てるまでに、期限があります|水道加入金326自治体を調べたら、横浜は3年・札幌は1年で、過ぎるともう一度満額でした

    実家を壊して、同じ土地に建て直す。このとき、水道をもう一度引く扱いになって、加入金をもう一度払うことがあります。金額は数万円から45万円まで。建築会社の見積書には「別途」としか書かれていないことがあり、あとから出てきます。

    この連載では、当サイトが自分で調べた数字だけを使います。今回は水道加入金326自治体のデータです。2026年8月16日から24日にかけて、各水道事業者の公式ページと例規集の条文を1件ずつ開いて記録しました。

    調べてみて、いちばん驚いたのはここでした。

    解体してから建て直すまでに、期限を切っている自治体があります。横浜市は3年、札幌市・枚方市・茨木市は1年。この期間を過ぎてから引き直すと、控除が受けられません。

    実家じまいでは、この期間はふつうに空きます。相続の登記、遺品の片づけ、兄弟との話し合い。解体だけ先に済ませて、建てるかどうかは後で決める。そういう進め方をしたときに、静かに数十万円が乗ります。

    この記事の数字がどこから来ているか

    全国の水道事業者のうち、当サイトが確認できた326自治体を対象にしています。市区町村ごとに、次のものを公式ページと例規集で読みました。

    • 加入金にあたる制度があるかないか
    • その制度の正式な呼び名
    • 口径13mm・20mm・25mm・30mm・40mmの金額
    • 金額が税込表示か税抜表示か
    • 建て替えのときにどう扱われるか(条文の該当箇所まで)

    確認日は1件ずつ記録してあり、2026年8月16日から8月24日の間に収まっています。各自治体のページに確認日を書いています。

    推計はしていません。他サイトからの引き写しもしていません。条文が見つからなかったものは「見つからなかった」と書いています。この記事でいちばん多い分類が、実はそれです。

    建て替えで、もう一度払うのか

    326自治体を、建て替えのときの扱いで7つに分けました。

    建て替えのときの扱い(326自治体) 既設分を差し引く116 規定を見つけられず102 口径が同じなら不要60 制度そのものがない28 未確認15 期限内なら不要4 全額かかる1
    建て替えのときの扱い 自治体数 割合
    既設分を差し引いて計算する 116 36%
    規定を見つけられなかった 102 31%
    口径を変えなければ徴収されない 60 18%
    そもそも制度がない 28 9%
    未確認 15 5%
    期限内に引き直せば徴収されない 4 1%
    引き直すと全額かかる 1 0.3%

    「もう一度満額を取られる」と条文で確認できたのは、326自治体のうち1つだけでした。ほとんどの自治体は、既設分を引くか、口径が同じなら取らない扱いにしています。

    ただし、ここを読み違えないでください。いちばん多い116件の次に多いのは「制度あり」ではなく、「控除の規定を見つけられなかった」102件です。326自治体のうち3割は、公式ページと例規集を開いても、建て替えのときにどうなるかが書かれていませんでした。「書いていない=取られない」ではありません。窓口に聞くしかない、という意味です。

    「そもそも制度がない」28件の内訳も書いておきます。加入金にあたる制度そのものが置かれていないのが26自治体(東京都の16、栃木2、茨城2、静岡2、北海道1、岐阜1、大阪1、愛媛1)。残り2件は性質が違います。千葉県芝山町は加入金ではなく給水装置工事費の実費だけ。大阪市は「分担金」がありますが75mm以上の口径にしかかからないため、一般住宅では0円です。

    期限がある。横浜は3年、札幌・枚方・茨木は1年

    ここが今回いちばん実務に効く話です。

    「引き直すなら控除する」と決めている自治体のうち4つは、控除に期限を付けていました。

    自治体 期限 20mmの加入金 根拠
    神奈川県横浜市 3年 82,500円 施行規程第22条第1項第1号
    北海道札幌市 1年 176,000円 施行規程第19条第2号
    大阪府枚方市 1年 160,160円 分担金徴収規程第3条第1号
    大阪府茨木市 1年(読み方に注意) 154,000円 施行規程第33条第1項第1号

    横浜市 — 撤去の完了検査日から3年

    撤去工事の完了検査日から3年以内に新設工事を申し込めば、撤去工事にかかる加入金相当額が控除されます。土地区画整理事業などにともなう撤去は、「完了検査日」を「換地処分決定日」と読み替えます。

    3年は長いように見えますが、相続登記を済ませて、遺品を片づけて、兄弟と話をまとめて、建築会社を決めるところまでで3年は、実家じまいでは珍しくありません。

    札幌市 — 撤去のしゅん功から1年

    撤去の承認を受けたあと、撤去工事のしゅん功から1年以内に新設または改造を申し込めば徴収されません。口径を上げた場合はその差額だけ。撤去したメーターが16mmのときは20mmとみなす、という規定もあります。

    札幌市の20mmは176,000円です。1年を過ぎると、この額がそのままかかります。

    枚方市 — 明文で「みなさない」と書いてある

    枚方市は、条例で徴収対象を「給水装置の新設又は増径工事の申込者」と定めたうえで、徴収規程で「既設の給水装置を撤去して1年以内に別の給水装置を新設する場合」は新設または増径が行われたものとみなさないと正面から書いています。

    ここまではっきり書いてある自治体は、326件のなかでも少数です。

    茨木市 — 「1年以内なら取らない」とは書かれていない

    茨木市はやや事情が違うので、そのまま書きます。

    条例の徴収対象は「給水装置の新設、増設又は改造(メーターの口径を増径する場合に限る)」で、口径を変えない改造は対象外です。そのうえで施行規程が「既設の給水装置を撤去し、1年以内に別の給水装置を新設しない場合」を新設とみなすと定めています。

    つまり「1年以内に引き直せば新設とみなされない」というのは、この条文の反対解釈です。「1年以内なら徴収しない」と正面から書いた条文は見つけられませんでした。茨木市で建て替える予定があるなら、工務課に確認してください。当サイトはここを「確認済み」とは書きません。

    引き直すと全額かかると条文で確認できたのは、全国で1つだけだった

    大阪府高槻市です。

    高槻市の条例は、徴収対象を「給水装置を新設し、増設し、又は改造しようとする者」としています。他市によくある「口径を増す場合に限る」という限定が付いていません。そのうえで、施行規程がこう定めています。

    給水装置を撤去し、その後新たに給水装置を設けるときは、新設として加入金を徴収する

    撤去して同じ口径で引き直しても、全額です。控除も免除もありません。高槻市の20mmは143,000円(税抜表示)。建て替えのたびにこの額がかかります。

    326自治体を1件ずつ見て、この扱いだったのは高槻市だけでした。ただし「1件しかない」と言えるのは、規定を確認できた181自治体のなかでの話です。控除の規定を見つけられなかった102自治体のなかに、同じ扱いの自治体が隠れている可能性は残っています。

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    解体を発注する前に、壊す費用の桁を確かめる

    期限のある自治体では、解体した日から時計が動き始めます。いつ解体を発注するかは、水道の加入金にも効いてきます。そしてその前に、壊すのにいくらかかるのかが分かっていないと、建て替えの総額が出ません。木造30坪で100万円を超えるのがふつうで、加入金より桁が1つ大きい費用です。

    ①同社サイトには「ご利用は無料。ご成約後の請求も一切ございません」と書かれています。
    ②同社は「契約まで、業者からご連絡がいくことはございません」と説明しています。
    ③申し込みには物件の情報と写真が要ります。遠方の実家で写真が手元にないなら、次に帰ったときに外観と傷んでいる箇所を撮っておいてください。
    ④解体する予定がないなら申し込まないでください。重複した申込や、連絡先が実在しない申込は無効と明記されています。
    ⑤1社の見積りだけで決めないでください。地元の解体業者にも自分で1社あたって、金額の桁が合っているかを確かめてください。
    ⑥解体補助金を使う予定があるなら、契約・着工の前に自治体へ申請してください。着工後の申請は原則として通りません。

    解体の窓口で、無料シミュレーションを試す

    見積書のどこを見るかは、この記事の見積書の章に戻って確認してください。お住まいの自治体の制度を先に調べておくと、受付期間に間に合うかどうかも一緒に分かります。

    同じ20mmで、14倍の開きがある

    金額そのものも見ておきます。戸建ての標準的な口径である20mmで、金額を確認できたのは297自治体でした。

    20mmの加入金(297自治体) 最安 32,010円(静岡・島田市) 中央値 165,000円 最高 451,000円(千葉・5市町) 最安と最高の差は14.1倍。棒は金額に比例。
    口径 金額を確認できた数 中央値 最安 最高
    20mm 297 165,000円 32,010円(静岡・島田市) 451,000円(千葉・東金市ほか4市町)
    13mm 296 110,000円 20,240円(静岡・島田市) 250,800円(埼玉・春日部市)

    451,000円は、千葉県の5市町でぴたりと一致しています。東金市・山武市・九十九里町・横芝光町・大網白里市。同じ広域の水道事業体だと思われますが、そこまでは確認していないので断定はしません。

    県をまたぐより、県のなかのほうが開いていることがある

    「関東は高くて地方は安い」という話ではありません。同じ県のなかで10倍違います。

    県 収録数 県内の中央値 県内の最安 県内の最高 開き
    静岡県 33 89,100円 島田市 32,010円 函南町 320,000円 10.0倍
    群馬県 34 119,900円 上野村 40,000円 嬬恋村 345,714円 8.6倍
    茨城県 42 176,000円 日立市 66,000円 境町 341,000円 5.2倍
    千葉県 53 297,000円 旭市 100,000円 東金市 451,000円 4.5倍
    神奈川県 33 132,000円 横浜市 82,500円 松田町 308,000円 3.7倍
    埼玉県 31 242,000円 さいたま市 110,000円 新座市 385,000円 3.5倍
    愛知県 24 126,500円 名古屋市 66,000円 犬山市 229,900円 3.5倍

    県で見た平均は、自分の負担額と関係がありません。隣の市の金額も関係ありません。自分の市区町村を1件だけ見てください。

    「加入金」で検索しても、自分の自治体が出てこない理由

    調べていて、これが一番厄介でした。

    この制度の呼び名は、326自治体で69種類ありました。

    呼び名 自治体数
    加入金 59
    水道加入金 49
    水道利用加入金 44
    給水申込納付金 31
    加入分担金 18
    分担金 16
    加入負担金 13
    給水申込加入金 8
    給水加入金 4
    そのほか(60種類) 84

    制度がある300自治体のうち、73自治体は名前に「加入」の2文字が入っていません。給水申込納付金、分担金、給水申込負担金、布設費分担金、新規給水負担金、水道施設分担金、受益者分担金——。

    「◯◯市 水道 加入金」で検索して何も出てこなかったとき、制度が無いのではなく、名前が違うだけのことがあります。4件に1件がそうです。

    金額の大きい自治体ほど、この傾向がありました。埼玉県春日部市は「分担金」で250,800円、大阪府枚方市も「分担金」で160,160円、千葉県旭市は「給水申込納付金」です。

    調べるときは、「加入金」ではなく「給水条例」で探してください。制度の名前が何であれ、根拠はその自治体の給水条例にあります。

    3分の2は税抜で書いてある。請求は1割増える

    もうひとつ、金額を見るときの落とし穴です。

    公式ページの表示 自治体数
    税抜で書いてある 169
    税込で書いてある 108
    どちらか判別できなかった 49

    税抜と税込を判別できた277自治体のうち、6割は税抜表示でした。公式ページに「143,000円」と書いてあっても、請求は157,300円になります。

    当サイトの各自治体のページには、その自治体が税抜表示か税込表示かを、条文のどこにそう書いてあるかまで含めて記録しています。判別できなかった49件は「確認できず」と書いています。

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    加入金と引込工事が「込み」か「別途」かは、見積りを並べると分かります

    この記事で見たとおり、20mmの加入金は32,010円から451,000円まで、14倍の開きがあります。建て替えの見積りでは、この加入金と引込工事を本体価格に含める会社と、別途にする会社があります。同じ条件で複数社のプランを取り寄せると、その扱いの差がそのまま出ます。タウンライフ家づくりは、間取りプラン・資金計画・土地情報を複数社から無料で取り寄せられるサービスです(同社の説明)。全国が対象で、来店は不要です。

    先に断っておきます。
    ①一括で複数社に依頼する形です。1社だけ選ぶとプランは届きません。成果条件がそう決められています。
    ②土地の条件や地域によっては、紹介できる会社が見つからないことがあります。その場合はプランが届きません。
    ③届くのは「間取りプラン」と「概算の資金計画」であって、確定した金額ではありません。

    複数社にまとめて間取りプランと資金計画を請求する(無料)

    この数字を、自分の実家に当てはめる手順

    ここまでが全国の話です。あなたに関係があるのは、実家がある1つの市区町村の数字だけです。

    1. 当サイトの水道加入金データベースで、実家の市区町村を探す。収録していれば、金額・呼び名・建て替えのときの扱い・条文の場所・確認日がそのまま出ます。
    2. 収録がなければ、「◯◯市 給水条例」で検索する。「加入金」では出ないことがあります。例規集の給水条例を開いて、「加入金」「分担金」「納付金」「負担金」を順に探してください。
    3. 金額の表を見つけたら、税抜か税込かを確認する。条例の附則か、料金ページの注記に書いてあります。
    4. 建て替えの扱いを探す。条例本体ではなく施行規程・施行規則・徴収規程のほうに書かれていることが多いです。「撤去」「廃止」「新設」で本文検索してください。
    5. 見つからなければ、水道局に電話して聞く。326自治体のうち102件は、当サイトでも見つけられませんでした。恥ずかしいことではありません。聞くときは「解体して同じ口径で引き直す場合、加入金はかかりますか。控除や免除の規定はありますか。期限はありますか」と3つまとめて聞いてください。

    手順4と5は、解体を発注する前にやってください。期限のある自治体では、解体した日から時計が動き始めます。

    このデータの限界

    この記事の数字には、はっきりした限界があります。書いておきます。

    • 326自治体は全国のすべてではありません。日本の水道事業者はこれよりずっと多く、当サイトが確認できた範囲がこの326です。全国の傾向としては読めますが、母集団を代表しているとは言い切れません。
    • 「引き直すと全額かかるのは1件だけ」は、規定を確認できた181自治体のなかでの話です。102自治体は規定を見つけられていません。326の0.3%と読まないでください。
    • 金額は改定されます。確認日は2026年8月16日から24日です。申し込む前に、必ず自治体の公式ページを開き直してください。
    • 広域の水道事業体では、市区町村の名前と実際の徴収主体が一致しません。千葉県の5市町で451,000円が一致しているのはその例だと思われますが、企業団の構成まで確認したわけではありません。
    • マンションや事務所は対象外です。この記事は戸建ての建て替えを前提にしています。

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  • 家族信託と任意後見、どちらを先に検討するか|分かれ目は「施設の契約を誰がするか」

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    連載「親が元気なうちに」第3回

    連載「親が元気なうちに」第3回。第1回は名義預金、第2回は口座の探し方でした。今回は「家族信託と任意後見は、どちらを先に検討するか」です。

    この2つは、よく並べて比較されます。どちらも、親の判断能力が落ちる前にしかできない手当てだからです。

    ただ、調べていて最初に引っかかったのはそこではありませんでした。法務省の資料が「併用することもできます」と書いていたことです。

    つまり、二択ではありません。分かれ目は「どちらが優れているか」ではなく、何を任せたいのかのほうにあります。

    1. 法務省は「併用できる」と書いています

    法務省民事局参事官室のパンフレット「信託制度を知って活用しよう」に、こうあります。

    信託と成年後見制度や遺言などの他の財産管理等の手段は、それぞれ役割や効力の及ぶ範囲が異なっており、併用することもできます

    出典:法務省民事局参事官室「信託制度を知って活用しよう」(法務省サイトのPDFで確認/2026年8月28日)

    「役割や効力の及ぶ範囲が異なる」というのが、この記事のいちばん大事な一文です。どちらかを選ぶ話ではなく、届く範囲が違う道具だ、と国が書いています。

    2. 家族信託とは何か——法務省の言葉で

    「家族信託」は法律の用語ではありません。法律の側にあるのは信託法で、そこに「家族信託」という言葉は出てきません。家族のあいだで信託を使うことを、実務がそう呼んでいるだけです。

    法務省の説明はこうです。

    「受託者」と呼ばれる人が、信託で定められた特定の目的に従って、財産の管理・処分を行う

    登場人物は3人です。

    • 委託者——信託財産の元の権利者。財産を受託者に譲渡します。親にあたる人です。
    • 受託者——信託財産の権利者。受益者のため、財産の管理・処分等を行います。子にあたる人です。
    • 受益者——信託から生じる利益を享受する人。実家じまいの文脈では、親が委託者と受益者を兼ねる形が想定されます。

    注意してほしいのは「受託者が権利者になる」という点です。実家を信託すると、登記上の所有者は子に移ります。子の財産になるわけではありませんが、名義は動きます。ここを理解しないまま話を進めると、あとで家族が揉めます。

    信託の作り方は3つ

    法務省は、信託の方法として次の3つを挙げています。

    • 契約(信託契約)を締結する方法
    • 遺言(信託遺言)をする方法
    • 公正証書等によってする方法(自己信託)

    「公正証書等によって」と書かれているのは3つめだけです。親子で結ぶ信託契約は、1つめにあたります。

    3. ★決定的な違いは、財産の外に手が届くかどうか

    法務省は、信託を「財産の管理・処分」の制度だと説明しています。財産の話です。

    いっぽう成年後見制度について、法務省はこう書いています。

    不動産や預貯金などの財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合

    出典:法務省「成年後見制度・成年後見登記制度」(2026年8月28日に確認)

    ★施設への入所契約が、はっきり書かれています。

    ここが分かれ目です。親が施設に入るとき、契約書にサインするのは誰か。信託は財産の管理・処分の仕組みなので、この場面を引き受ける制度としては説明されていません。後見のほうは、法務省が明示しています。

    実家じまいで言えば、こうなります。

    • 実家を売る・貸す・修繕する——財産の管理・処分の話です。信託で組み立てられる余地があります。
    • 施設と契約する・入院の手続きをする——財産の外側です。信託だけでは、ここは埋まりません。

    だから法務省は「併用することもできます」と書いているのだと読めます。

    同じ「親の判断力」でも、守る範囲が違う 家族信託 実家を売る 実家を貸す 実家を修繕する =財産の管理・処分 任意後見 施設と契約する 入院の手続き =財産の外側 (法務省が明示) 法務省は「併用することもできます」

    4. 任意後見は、公正証書でなければ成立しません

    任意後見契約は、公正証書でなければ成立しません。口約束も私文書も無効です。根拠条文と、契約しただけでは効力が生じないこと(家庭裁判所が任意後見監督人を選任してはじめて動き出すこと)は、認知症の親の家は売れませんで条文を引いて確認しています。

    数字も、その記事で確認したものがそのまま効きます。

    • 令和6年の任意後見監督人選任は874件。後見開始は28,785件でした。
    • つまり、実際に使われているのは圧倒的に法定後見のほうです。任意後見は、制度としてはあるのに、ほとんど使われていません。

    使われていない理由まではデータで確認できていません。ただ、親が元気なうちに公証役場へ一緒に行く、という手間の重さは無関係ではないはずです。

    5. 家族信託の契約書について、確かめられたこと

    法務省の資料が「公正証書等によって」と書いているのは、自己信託についてだけです。親子で結ぶ信託契約について、公正証書でなければならないという記載は、確認した範囲では見つかりませんでした。

    ただし「公正証書でなくてもよい」ことと「公正証書にしなくてよい」ことは別です。当サイトは、実務でどちらが選ばれているかの統計を持っていません。この点は専門家に確認してください。

    登録免許税について

    実家を信託すると、登記が動きます。登記が動けば登録免許税がかかります。

    財務省の資料には、こうありました。

    土地の売買による所有権の移転登記及び「土地の所有権の信託登記」に係る登録免許税の税率について、…軽減されます

    出典:財務省「登録免許税に関する資料」(2026年8月28日に確認)。令和11年3月31日までの時限措置と記載されています。

    軽減措置の対象になっていること自体は確認できました。ただし、信託の登記の税率そのものは、国税庁のタックスアンサー「登録免許税の税額表」にも、法務局の説明資料にも載っていませんでした。金額は、司法書士か法務局で確認してください。

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    家族信託を検討するなら、何ができて何ができないかを先に聞く

    この記事で書いたとおり、信託は財産の管理・処分の仕組みです。施設の契約までは届きません。実家をどう扱いたいのか、施設や入院のことは誰がやるのか。この2つを分けて相談しないと、契約書ができてから足りない部分に気づきます。おやとこは家族信託の相談窓口で、運営は株式会社こころのカンパニーです。

    ①この窓口で扱っているのは家族信託です。②当サイトは料金体系も、どこまでが無料かも検証していません。申込先のページで確認してください。③親本人に判断能力があるうちでないと契約できません。この記事の話は、そこが前提です。

    家族信託のおやとこに、無料で相談する

    任意後見のほうを先に知りたい場合は、認知症の親の家は売れませんに条文と件数をまとめています。

    6. どちらを先に検討するか

    どちらを先に検討するかの分かれ目 心配なのは、実家のことだけですか はい 信託で組み立てる 売る・貸すは財産の話 いいえ 後見の検討が要る 施設の契約は財産の外

    順番は、制度から入らないほうがうまくいきます。先に決めるのは「何を任せたいか」です。

    • ① 実家を、親が動けなくなったあとに売るかもしれない。財産の話です。信託の出番があります。売らずに貸す、修繕する、建て替えるも同じです。
    • ② 施設に入る話が現実に近い。財産の外です。後見の側で考えることになります。
    • ③ 両方ありうる。法務省が併用できると書いているのは、この場合です。

    そのうえで、任意後見には期限に近い性質があります。公証役場へ親と一緒に行く必要があり、親に判断能力があるうちしかできません。家族信託の契約も同じです。どちらも「親が元気なうちに」の側にある手当てです。

    逆に言うと、間に合わなくなったときに残るのは法定後見だけになります。誰に任せるかを家庭裁判所が決める形です。その中身と件数は認知症の親の家は売れませんにまとめました。

    やってはいけないこと

    • 「信託しておけば全部できる」と考えること。法務省は信託を財産の管理・処分の制度として説明しています。施設の契約は、その説明には含まれていません。
    • 親に説明しないまま名義を動かすこと。実家を信託すると登記上の所有者は受託者に移ります。あとから知った兄弟との間で必ず問題になります。
    • 受託者を1人に決めて、代わりを置かないこと。子が先に倒れることもあります。当サイトは代わりの立て方の実務までは確認していません。契約を作る段階で必ず聞いてください。
    • 費用の総額を聞かずに進めること。登記が動けば登録免許税がかかります。金額は司法書士か法務局で確認してください。

    よくある質問

    Q. 家族信託は法律の制度ですか?

    信託法という法律はあります。ただし「家族信託」という言葉は法律の用語ではありません。家族のあいだで信託を使うことを実務がそう呼んでいるだけで、民事信託と呼ばれることもあります。

    Q. 信託すると、実家は子のものになりますか?

    登記上の所有者は受託者になります。法務省は受託者を「信託財産の権利者」と書いています。ただし受託者は「受益者のため」に管理・処分する立場です。受益者を親にしておけば、利益は親のものです。

    Q. 信託契約は公正証書にしなければいけませんか?

    法務省の資料が「公正証書等によって」と書いているのは自己信託についてだけでした。親子で結ぶ信託契約についての義務づけは、確認した範囲では見つかりませんでした。実務でどうしているかは確認できていません。

    Q. 任意後見と家族信託、両方やってもいいのですか?

    法務省が「併用することもできます」と書いています。ただし両方を作れば費用も2つ分かかります。何を任せたいかを先に決めてください。

    Q. 親がもう認知症です。いまからできますか?

    信託契約も任意後見契約も、親本人が契約する必要があります。判断能力が落ちたあとでは組めません。認知症の親の家は売れませんに、その場合に残る道をまとめています。

    まとめ

    • ★二択ではありません。法務省が「併用することもできます」と書いています。
    • ★分かれ目は「財産の外に手が届くか」です。法務省は信託を財産の管理・処分の制度と説明し、後見については施設への入所契約まで挙げています。
    • 信託の登場人物は3人。委託者・受託者・受益者です。実家を信託すると、登記上の所有者は子に移ります。
    • 信託の作り方は3つ。契約・遺言・公正証書等による自己信託です。
    • 任意後見は公正証書でなければ成立しません。令和6年の任意後見監督人選任は874件、後見開始は28,785件でした。
    • ★どちらも、親に判断能力があるうちにしかできません。間に合わなければ法定後見だけが残ります。
    • 信託の登記には登録免許税がかかります。軽減措置の対象であることは確認できましたが、税率は確認できませんでした。

    この記事で確認できなかったこと

    • 公証人の手数料を確認できませんでした。日本公証人連合会の手数料のページとPDFに、当サイトの環境からアクセスできませんでした。金額は公証役場に直接聞いてください。
    • 信託の登記の登録免許税の税率が分かりませんでした。国税庁のタックスアンサー「登録免許税の税額表」にも、法務局の説明資料(情報番号1312)にも、信託の行はありませんでした。財務省の資料で「土地の所有権の信託登記」が軽減措置の対象であること(令和11年3月31日まで)だけは確認できました。
    • 家族信託の専門家報酬について、公的な統計を見つけられませんでした。当サイトは事業者が出している価格表を根拠には使いません。
    • 「身上監護」という語の法令上の定義を確認していません。法務省のパンフレットには、この語は出てきませんでした。本記事では、法務省が実際に書いている「身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約」という表現のまま扱っています。
    • 家族信託でどれくらいトラブルが起きているかの公的データを見つけられませんでした。国民生活センターの相談事例に家族信託の類型があるかまでは確認していません。
    • 受託者が先に亡くなった場合の実務を確認していません。制度上の手当てがあるかどうかも含めて、この記事では扱っていません。

    この連載について

    「親が元気なうちに」は、まだ間に合ううちにできることだけを書く連載です。

    今回の話も、その典型でした。家族信託も任意後見も、親本人が契約する制度です。子がどれだけ調べても、親が動かなければ始まりません。

    次回以降の予定です。

    • 実家の登記を、親が元気なうちに確かめる。祖父名義のままだと、相続人が一気に増えます。
    • 親の生命保険を、どこまで聞いておくか。

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  • 親の口座は、亡くなってからでは探せません|一括で調べる制度は3つ、範囲も費用もバラバラです

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    連載「親が元気なうちに」第2回

    連載「親が元気なうちに」第2回。第1回では、子の名義で貯めたお金が親の財産と判断される話を書きました。今回はその口座が、どこにあるのか分からなくなる話です。

    親が亡くなったあと、相続人が最初にぶつかるのは「どの銀行に口座があるのか分からない」ことです。通帳が出てくればいい。出てこなければ、探すことになります。

    調べていて分かったのは、「どこに口座があるか」を一括で調べる公的な仕組みは3つあり、範囲も費用も窓口もバラバラで、しかも3つとも「どこにあるか」までしか分からないということでした。中身は結局、1社ずつ聞くことになります。

    そして銀行については、親が元気なうちに手続きをしていないと、その一括照会が使えません。これが今回いちばん伝えたいことです。

    1. 一括で調べる制度は、3つあります

    まず全体像です。3つとも別の組織が、別の根拠で運営しています。

    制度 調べられる範囲 費用 方法 分かること
    ゆうちょ銀行の
    現存調査
    ゆうちょ銀行の貯金 無料 郵便局の窓口 貯金の有無
    口座管理法の
    相続時照会
    マイナンバーを付番した口座だけ 確認できず 金融機関の窓口 口座の有無
    ほふりの
    開示請求
    上場株式・投資信託など 4,950円
    または6,050円
    郵送のみ 証券会社名の一覧

    気づいてほしいのは、この表に「銀行(ゆうちょ以外)を無条件で一括で調べる制度」が無いことです。三菱UFJにも、地方銀行にも、信用金庫にも、まとめて聞ける窓口は原則ありません。口座管理法の照会だけが唯一それに近いのですが、それは親が生前に付番していた口座しか出てきません。

    一括で調べられるのは、どこまでか ゆうちょ銀行 一括で調べられます 無料 銀行(ゆうちょ以外) 無条件の一括制度がありません 窓口なし 証券(株・投信) 一括で調べられます 4,950円〜 銀行だけ、ここに穴があります

    2. ゆうちょ銀行だけは、昔から無料で全国を調べられます

    ゆうちょ銀行には「現存調査」という手続きがあります。貯金等照会書を郵便局の窓口に出すと、貯金の有無を調べて後日郵送で回答してくれます。

    • 費用は無料です。ゆうちょ銀行は「現存調査は無料」と書いています。ただし調査の結果みつかった口座の残高証明書を出してもらう場合は、別途手数料がかかります。
    • 請求できるのは本人・相続人・代理人です。相続人が請求するときは、被相続人が亡くなったことが分かる戸籍謄本等と、自分が相続人であることが分かる戸籍謄本等が要ります。
    • 窓口に出す手続きです。照会書は窓口に用意されています。

    ゆうちょは全国どこの郵便局でも手続きができ、口座は本店で一元管理されています。「親がどの支店を使っていたか分からない」という問題が、ゆうちょについては起きません。

    親が地方出身なら、まずここを疑ってください。本人が忘れている古い通常貯金が残っていることがあります。

    3. ★銀行は、親が生前に手続きしていないと一括では調べられません

    2024年4月1日に「口座管理法」が施行されました。正式には「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」といいます。

    この制度でできるようになったことを、デジタル庁はこう書いています。

    • 相続手続の際、相続人が銀行等の窓口において、一度に複数の銀行等に被相続人の口座があるかどうか照会できるようになります
    • 災害時には、避難先の銀行等で、マイナンバーを活用した情報連携によって口座を持っていることを確認できるようになります

    実際の照会は預金保険機構が担います。同機構は「相続人より口座情報の提供を求められた場合、マイナンバーを用いて金融機関に照会し、当該相続人に口座情報の通知を行う」と説明しています。通知されるのは「口座の有無」です。

    ここに大きな条件があります

    この制度は、親が自分の意思でマイナンバーを口座に届け出ていた場合にだけ働きます。デジタル庁ははっきり書いています。

    預貯金者の方が希望した場合のみ、口座とマイナンバーを付番する制度であり、国民の皆さまがマイナンバーを届け出る義務はありませんし、強制するものでもありません

    義務ではない、ということは、何もしなければ付番されていない、ということです。そして付番されていない口座は、この照会をしても出てきません。

    つまりこの制度は、相続人が後から使う制度に見えて、実際には親が生前に動いておかないと使えない制度です。「親が元気なうちに」という連載でこれを取り上げる理由が、ここにあります。

    銀行を一度に照会できるかの分かれ目 親はマイナンバーを口座に登録しましたか はい 窓口で一度に聞ける 口座管理法の照会 いいえ 1行ずつ聞くしかない 付番した口座だけ

    付番のやり方

    • 新しく口座を作るときは、本人確認書類とマイナンバー確認書類を持って、口座開設時に付番を希望すると銀行に伝えます。
    • すでにある口座は、各銀行の店頭などで届出を受け付けています。
    • デジタル庁は、マイナポータルから届け出て、別の銀行の口座も一度にまとめて付番できるようにすると説明しています。

    親に頼むことは、ひとつだけです。「使っている銀行で、マイナンバーを口座に登録しておいてほしい」。それだけで、相続のときに探す手間が変わります。

    4. 証券は「ほふり」に郵送で請求します

    株や投資信託は、銀行とは別の窓口です。証券保管振替機構(ほふり)に「登録済加入者情報の開示請求」をすると、親の口座がどの証券会社・信託銀行にあるかの一覧が分かります。

    機構の相続人向けの手続案内から、数字をそのまま拾います。

    • 手数料は、法定相続情報一覧図を提出する場合は4,950円、それ以外は6,050円(いずれも税込)。2件目以降は1件につき1,100円が加算されます。
    • 回答までは「2か月ほど」かかります。書類に不備があると、さらに時間がかかります。
    • 請求は郵送のみです。窓口はありません。
    • 対象は上場株式、新株予約権、投資信託受益権(ETF)、受益証券発行信託受益権(JDR)などと、所定の要件を満たす非上場株式です。

    ★ここで1,100円の差がつきます

    法定相続情報一覧図を持っていくと6,050円が4,950円になります。差は1,100円です。

    一覧図の交付そのものは無料です。戸籍を集める手数料はかかりますが、図の交付に手数料は取られません。銀行でも法務局でも使い回せる書類なので、法定相続情報一覧図を先に作っておくと、ここでも効いてきます。

    ほふりの開示請求:一覧図があると安い 1,100円 安くなります 出さない 6,050円 一覧図を出す 4,950円 一覧図の交付そのものは無料。戸籍の実費だけ

    分からないことも、はっきりしています

    開示されるのは口座が開設されている証券会社等の一覧と、担保の受入れ・差入れに関する情報です。銘柄名も、保有残高も、取引履歴も分かりません。どこにあるかが分かったら、そのあと各証券会社に1社ずつ聞くことになります。

    5. 親が元気なうちにできること

    順番に書きます。①だけでも効果があります。

    • ① 使っている銀行で、マイナンバーを口座に登録してもらう。これができるのは本人だけです。子が代わりにやることはできません。親が元気なうちにしかできない、唯一の公的な手当てです。
    • ② 金融機関の名前だけ、紙に書いてもらう。口座番号も残高も要りません。「どこにあるか」さえ分かれば、あとは相続人が動けます。暗証番号は書かせないでください。
    • ③ 使っていない口座を、親自身に解約してもらう。本人ならその場でできます。亡くなったあとだと、その1口座のために戸籍一式が要ります。
    • ④ ネット専業銀行とネット証券を聞いておく。通帳もカードも郵便物も無いことがあります。ここがいちばん見つかりません。

    ②について、ひとつ注意があります。財産の一覧を作ると、それ自体が相続の話になり、親が身構えることがあります。「金額は聞かない。銀行の名前だけ教えて」と最初に言い切ると、通りやすくなります。

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    親の財産をどこまで洗い出すか、税理士に相談する

    口座を探すところまでは、自分でできます。ただし「相続税の申告が要るかどうか」は、預貯金・不動産・保険をぜんぶ足してからでないと分かりません。足す前の段階で、何を集めればいいかを聞いておくと手戻りが減ります。自分では判断がつきません。税理士ドットコムは、全国5,900名以上の税理士から相続に強い人を無料で紹介する窓口です。運営は東証プライム上場の弁護士ドットコム株式会社。紹介と相談は無料で、複数の税理士を比較してから選べます。親が元気なうちに相談すれば、直す時間があります。亡くなってからでは、贈与そのものが成立しません。

    申し込む前に3つだけ確認してください。①紹介は無料ですが、依頼したあとの報酬は税理士ごとに違います。見積りを取ってから決めてください。
    ②コーディネーターから電話またはメールで連絡が入り、財産の内容と地域を聞かれます。おおよその財産額と、気になっている口座の状況を答えられるようにしておくと早く終わります。
    ③相続がすでに発生している場合、申告期限は10か月です。期限が近いなら最初に伝えてください。

    贈与と相続でどちらが安いか、試算してくれる税理士を探してもらう(無料・全国)

    口座が見つかったあと、葬儀代などで先に下ろす方法は親の口座が凍結されて葬儀代が払えないときに書きました。

    6. 通帳が出てこないときの手がかり

    制度で一括に調べられない部分は、結局これで埋めます。実家の片づけをしながら探すことになります。

    • キャッシュカード、通帳、粗品のタオルやカレンダー。金融機関名が入っています。
    • 郵便物。取引残高報告書、運用報告書、株主総会の招集通知。証券口座は郵便物でしか気づけないことがあります。
    • 確定申告の控え。配当や利子が書いてあれば、その金融機関があります。
    • 公共料金・保険料の引落口座。検針票や保険証券から銀行名が分かります。
    • 年金の振込先。年金振込通知書に金融機関名が載っています。
    • スマホとパソコン。ネット銀行・ネット証券はアプリとメールにしか痕跡がありません。

    手がかりが出たら、その金融機関に1件ずつ照会します。支店が分からなくても、多くの銀行は本支店をまたいで調べてくれます。

    7. 10年放っておくと、預金は別の場所へ動きます

    見つからないまま放置された口座は、休眠預金等になります。金融庁の説明から数字を拾います。

    • 10年以上、入出金等の取引がない預金等が対象です。
    • 2009年1月以降に最後の異動があった預金等が、原則として対象になります。
    • 休眠預金等になったあとも、取引のあった金融機関で引き出すことは可能です。「通帳やキャッシュカード、本人確認書類などをお持ち頂ければ、引き出すことができます」と書かれています。通帳をなくしていても、本人確認書類があれば引き出せます。

    つまり、10年経っても消えてなくなるわけではありません。ここは落ち着いてください。ただし手続きは増えますし、そもそも「その口座があること自体を誰も知らない」なら、引き出しようがありません。だから一覧が要ります。

    放っておいた口座が、たどる道 最後の入出金 2009年1月以降が対象 10年経つ 休眠預金等になります そのあとも 本人確認書類があれば引き出せます

    対象にならないものがあります

    金融庁は対象外のものも挙げています。外貨預貯金、譲渡性預貯金、財形貯蓄、仕組預貯金、マル優口座など。そして、

    2007年10月1日より前に郵便局に預けられた定額郵便貯金等

    郵政民営化より前の郵便貯金は、この法律の枠の外にあります。実家の引き出しから古い郵便貯金通帳が出てきた場合は、休眠預金の話とは分けて、ゆうちょ銀行に直接確認してください。当サイトはこの旧郵便貯金の扱いまでは調べていません。

    やってはいけないこと

    • 親のキャッシュカードで、亡くなったあとに引き出すこと。他の相続人との間で必ず問題になります。払戻しには制度がありますので、そちらを使ってください。
    • 親に暗証番号を書かせること。必要なのは金融機関の名前だけです。
    • 「相続のために」と切り出すこと。②が進まなくなります。目的は言わなくても手続きはできます。
    • 親名義の口座を、子が勝手に解約すること。本人以外はできません。

    よくある質問

    Q. 付番していない口座は、相続時照会でまったく出てきませんか?

    制度の仕組み上、マイナンバーが結びついていない口座は照会の対象になりません。付番は本人が希望した場合のみ行われる任意の制度だと、デジタル庁が明記しています。

    Q. 照会すれば残高も分かりますか?

    分かりません。預金保険機構は「口座の有無を通知」と書いています。ほふりの開示請求でも、分かるのは証券会社等の一覧までで、銘柄も残高も出ません。3つの制度はどれも「どこにあるか」で止まります。

    Q. ゆうちょの現存調査は、本当に無料ですか?

    ゆうちょ銀行は「現存調査は無料」と書いています。ただし、みつかった口座の残高証明書を出してもらう場合は別途手数料がかかります。

    Q. ほふりの請求は急ぎたいのですが。

    2か月ほどかかると案内されています。郵送のみで、窓口はありません。相続税の申告期限は10か月です。証券がありそうなら、早い段階で出しておいてください。

    Q. 親がマイナンバーカードを持っていません。

    付番の届出はマイナンバー(12桁の番号)で行うもので、通知カードや住民票でも番号は確認できます。ただし各行の受付方法までは確認できていません。取引のある銀行に聞いてください。

    まとめ

    • ★口座を一括で調べる制度は3つ。ゆうちょの現存調査、口座管理法の相続時照会、ほふりの開示請求です。運営する組織も、費用も、窓口も別々です。
    • ★3つとも「どこにあるか」までしか分かりません。残高も銘柄も出ません。中身は結局1社ずつです。
    • ★銀行(ゆうちょ以外)をまとめて調べる方法は、口座管理法の照会しかありません。そしてそれは、親が生前に付番していないと使えません。
    • ゆうちょの現存調査は無料。窓口に貯金等照会書を出すだけです。
    • ほふりは郵送のみで2か月。手数料は4,950円か6,050円で、法定相続情報一覧図があると1,100円安くなります。
    • 付番は義務ではありません。だから、何もしていなければ付番されていません。
    • 親に頼むのは、金融機関の名前だけで足ります。金額も暗証番号も要りません。

    この記事で確認できなかったこと

    • 相続時の口座照会の手数料が、いくらなのか確認できませんでした。預金保険機構の「相続時預貯金口座照会利用規定」のPDFにアクセスしようとしましたが、取得できませんでした。無料とも有料とも書いていません。金融機関の窓口で確認してください。
    • 相続時照会の受付が全国のどの金融機関で始まっているのかを、網羅的には確認していません。預金保険機構は業務として案内していますが、当サイトは個別の金融機関の対応状況を調べていません。
    • 回答までにどれくらいかかるかも確認できませんでした。ほふりの「2か月」のような目安の記載を、相続時照会については見つけられていません。
    • ゆうちょの現存調査の回答期間は「後日、郵送」としか書かれておらず、日数は分かりませんでした。また調査範囲が全国のゆうちょ貯金すべてかどうかも、明示の記載は見つけられていません。
    • マイナポータルからの一括付番が、現時点でどこまで使えるようになっているか確認できていません。デジタル庁は予定として書いていますが、当サイトは実際の稼働を確かめていません。
    • 生命保険・共済の契約を一括で調べる仕組みは、この記事では扱っていません。銀行・ゆうちょ・証券の3つに絞っています。
    • 個別の金融機関ごとの必要書類は調べていません。本記事は制度側の公表資料だけを根拠にしています。

    この連載について

    「親が元気なうちに」は、まだ間に合ううちにできることだけを書く連載です。

    今回の話は、その典型でした。口座管理法の相続時照会は、相続人のための制度に見えて、親本人が動いていないと空振りします。亡くなってからでは、もう付番できません。

    次回以降の予定です。

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