解体すると固定資産税が6倍になる?──計算すると、最大でも4.2倍です

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最終更新:2026年8月15日

結論だけ先に

  • 「解体すると固定資産税6倍」は不正確。土地の固定資産税で最大約4.2倍、実際に払う総額では約2倍程度に収まることが多い
  • 根拠は負担調整措置(非住宅用地の課税標準は評価額の70%が上限)と、建物分の税金が消えること
  • 税額が変わるのは翌年1月1日を跨いでから。解体の時期で1年ずれる

根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

結論を先に書きます

「空き家を解体すると固定資産税が6倍になる」——この説明は、不正確です。

正確には、こうです。

通説 実際
土地の固定資産税 6倍 最大でも約4.2倍(多くの場合、初年度はもっと小さい)
土地の都市計画税 触れられないことが多い 最大でも約2.1倍
建物の固定資産税・都市計画税 触れられない ゼロになる(解体するので)
変わるタイミング 「解体すると」 翌年1月1日を跨いでから

「6倍」は、住宅用地の特例(課税標準1/6)の逆数をそのまま倍率にした数字です。実際の課税には負担調整措置という上限ルールがあり、そこまでは上がりません。

そして、解体すれば建物分の税金は消えます。土地と建物を合計した支払額で見れば、増加はさらに小さくなります。

「6倍」は逆数をそのまま倍率にした数字 通説 土地の固定資産税は 6倍 建物には触れない タイミングも不明 実際 最大でも約4.2倍 都市計画税は2.1倍 建物分はゼロに 翌年1月1日から 負担調整措置という上限ルールがあります

さらに、増えた分を自治体が戻してくれることがあります。全国の解体補助金データベース(調査時点354自治体)を調べた範囲で、解体後の土地の固定資産税を減免したり、増額分を補助金で穴埋めしたりする制度が33自治体で見つかりました(7章)。ただし、ほとんどが申請しないと適用されず、「解体する前に相談」が条件のものもあります。

以下、根拠を示します。


1. なぜ「6倍」と言われるのか

住宅が建っている土地には、住宅用地の特例が適用されます。

区分 固定資産税の課税標準 都市計画税の課税標準
小規模住宅用地(200㎡以下の部分) 価格 × 1/6 価格 × 1/3
一般住宅用地(200㎡超の部分) 価格 × 1/3 価格 × 2/3

根拠:地方税法第349条の3の2、同第702条の3。出典:総務省「固定資産税制度について」(PDF) p.13、国土交通省「地方税法(抄)」(2026年8月15日確認)

建物を解体すると、この土地は住宅用地ではなくなります。「1/6 が外れる → 1 ÷ (1/6) = 6倍」——これが「6倍」の出どころです。

この計算には、抜けているものがあります。


2. 抜けているもの①:非住宅用地には「評価額の70%」という上限がある

住宅用地でなくなった土地は「非住宅用地(商業地等)」として課税されますが、そこには負担調整措置が働きます。課税標準額は、評価額そのものではなく、次のルールで決まります。

負担水準(=前年度課税標準額 ÷ 当年度評価額)に応じて——

負担水準 当年度の課税標準額
70%超 評価額の70%に据え置き(これ以上は上がらない)
60%以上70%以下 前年度の課税標準額に据え置き
60%未満 前年度課税標準額 + 評価額の5%(60%を上限、20%を下限として段階的に引上げ)

根拠:地方税法附則第18条(宅地等に係る固定資産税の課税標準の特例)。出典:総務省「固定資産税制度について」(PDF) p.14-15、大阪市「税負担の調整措置」(2026年8月15日確認)

つまり、非住宅用地の課税標準額は、評価額の70%が天井です。

したがって、住宅用地特例(1/6)が外れたときの理論上の最大倍率は——

0.70 ÷ (1/6) = 4.2倍

6倍ではなく、4.2倍です。

しかも、負担水準が70%に達していない土地では、1年あたり評価額の5%ずつしか課税標準が上がりません。 初年度の増加はもっと小さくなります。

都市計画税も同じ考え方です。小規模住宅用地の1/3が外れる場合、最大倍率は 0.70 ÷ (1/3) = 約2.1倍 です。


3. 抜けているもの②:建物の税金がなくなる

当たり前のことですが、「6倍」の説明ではほぼ触れられません。

解体すれば、建物にかかっていた固定資産税・都市計画税はゼロになります。

古い家でも評価額はゼロにはなりません。木造住宅の場合、経年減価補正率には下限(残価率)が設けられており、どれだけ古くても一定の評価額が残ります。評価額300万円の建物なら、固定資産税1.4%で年42,000円、都市計画税0.3%で年9,000円——合わせて年51,000円が消えます。


4. 実際に計算してみます

前提:土地の評価額2,000万円・200㎡以下(小規模住宅用地)、建物の評価額300万円、固定資産税1.4%・都市計画税0.3%。負担水準がすでに70%を超えていて、解体の翌年度から上限に達する「最も増える」ケースとします。

解体前

課税標準 税額
土地・固定資産税 2,000万 × 1/6 = 333万円 約46,600円
土地・都市計画税 2,000万 × 1/3 = 667万円 約20,000円
建物・固定資産税 300万円 42,000円
建物・都市計画税 300万円 9,000円
合計 約117,600円

解体後(上限到達時)

課税標準 税額
土地・固定資産税 2,000万 × 70% = 1,400万円 196,000円
土地・都市計画税 2,000万 × 70% = 1,400万円 42,000円
建物 — 0円
合計 238,000円

倍率

見方 倍率
土地の固定資産税だけ 46,600円 → 196,000円 = 約4.2倍
土地の都市計画税だけ 20,000円 → 42,000円 = 約2.1倍
実際に払う総額 117,600円 → 238,000円 = 約2.0倍

あなたの財布が感じるのは、いちばん下の行です。約2倍。6倍ではありません。

財布が感じるのは、いちばん下です 土地の固定資産税だけ 4.2倍 土地の都市計画税だけ 2.1倍 実際に払う総額 2.0倍 最も増えるケースの試算。負担水準が低ければ緩やか

しかもこれは「最も増えるケース」の試算です。負担水準が低い土地なら、初年度の増加は年5%刻みで進むため、これよりずっと緩やかになります。

年間の増加額は約12万円。この記事の前提では、それでも年12万円は増えるということも同時に事実です。数字が思ったより小さかったからといって、無視していい額ではありません。


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5. 変わるのは「翌年1月1日」からです

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ここも誤解が多い点です。

固定資産税・都市計画税は、その年の1月1日(賦課期日)時点の状況で課税されます。

出典:総務省「固定資産税制度について」(PDF) p.1(2026年8月15日確認)

したがって——

  • 1月1日時点で建物が建っていれば、その年度は住宅用地の特例が適用されます。1月2日に解体しても、その年度の税額は変わりません
  • 解体が完了し、翌年の1月1日時点で建物がなければ、翌年度分から特例が外れます
賦課期日は1月1日です 1月1日 建物があれば、その年度は特例あり 1月2日〜12月 この間に解体しても、その年度は変わらない 翌年1月1日 建物がなければ、翌年度から特例が外れます

つまり、1月中に解体すると、税額が上がるのは約11か月後です。逆に12月に解体すると、翌月から新しい税額の年度に入ります。

売却が決まっていて、引渡しが翌年1月1日より前なら、税負担の増加は買主に移ります。 解体の時期は、この一点だけでも数十万円の差になり得ます。


6. 解体しなくても特例が外れる場合があります

見落とされがちですが、こちらのほうが深刻です。

地方税法第349条の3の2は、住宅用地の定義から次を除外しています。

空家等対策の推進に関する特別措置法第13条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた管理不全空家等及び同法第22条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く

出典:国土交通省「地方税法(抄)」(2026年8月15日確認)

つまり、建物が建っていても、市区町村長から「勧告」を受ければ住宅用地の特例が外れます。

「管理不全空家等」は、2023年(令和5年)改正で新設された区分です。改正法は令和5年法律第50号、施行日は令和5年12月13日。「適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある空家等」と定義されています。

出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」(PDF)(2026年8月15日確認)

では、実際にどれくらい勧告されているのか

令和5年度の全国集計です。

区分 措置 件数
管理不全空家等(新設) 指導 1,091件(92市区町村)
同上 勧告 0件
特定空家等 助言・指導 4,246件(374市区町村)
同上 勧告 534件(161市区町村)
同上 命令 74件(61市区町村)
同上 行政代執行 33件(31市区町村)
同上 略式代執行 94件(79市区町村)
同上 緊急代執行 5件(5市区町村)

出典:国土交通省作成資料「空き家対策の現状について」(令和6年12月4日)PDF(2026年8月15日確認)

読み方を書きます。

① 管理不全空家等の「勧告」は、令和5年度は全国でゼロ件でした

制度は令和5年12月13日施行なので、集計対象期間が3か月半しかありません。まず指導(1,091件)から始まっており、勧告に進んだ事例はまだ出ていない段階です。制度が動き出すのはこれからです。

② 特定空家等でも、助言・指導4,246件に対して勧告は534件

助言・指導を受けた物件のうち、勧告まで進むのは約1割強です。「放置すると即座に税金が上がる」わけではありません。ただし、勧告534件は「ゼロではない」という意味でもあります。

行政の措置がどの段階でどれだけ実行されているかは、空き家を放置するとどうなるかでさらに詳しく扱っています。



7. 増えた分を戻してくれる自治体があります

ここまでは全国共通の制度の話です。ただし、住宅用地特例が外れて増えた分を、自治体が減免したり補助金で戻したりする制度を持っている場所があります。

当サイトが全国354自治体(調査時点)の要綱・規則・条例を1件ずつ読んだ範囲では、33自治体で確認できました。国の制度ではないので、ある自治体とない自治体がはっきり分かれます。そして、ほとんどが申請しないと適用されません。

戻してくれる自治体は33 33 自治体 / 全国354自治体 減免や補助あり 33自治体(9.3%) 確認できず 321自治体

① 増えた分をそのまま減免する(いちばん多い型)

自治体 期間 気をつけること
鳴門市(徳島) 10年
(6〜10年目は段階的に縮減)
★取り壊す前の事前相談と立入調査が条件。壊してからでは間に合いません
加賀市(石川) 最長5年度 令和3年1月〜令和7年12月末に除却した空き家に限る
坂出市(香川) 最大5年 「空き家の除却に係る土地の固定資産税の減免」
藤枝市(静岡) 最長3年
(税額の80%)
売買で所有権が移ったり、跡地に建てたり使ったりすると打ち切り
久喜市(埼玉) 最大3年 跡地を営利目的で使わないこと
深谷市(埼玉) 3年 住宅用地特例の相当額を減免(率は非公開)
小松市(石川) 最大3年度 「老朽危険空家解体後における固定資産税の減免制度」(税務課)
久留米市(福岡) 最長3年 規則あり。住宅用地特例が外れた分の差額
長崎市 3年 令和10年12月末までに除却したもの。要申請
長浜市(滋賀) 令和2年度以後 毎年5月に減免申請書・適正管理報告書・同意書を税務課へ
千葉市 1年度分 令和8年8月1日施行の条例。1年以上空き家だった住宅が対象
八千代市(千葉) 制度あり 「老朽化した空家等を除却した土地の固定資産税等を減免します」
桑名市(三重) 要綱あり 「空き家の除却に係る土地の固定資産税減免に関する要綱」(割合・年数は市に確認を)

年数は1年から10年まで開きがあります。同じ「減免あり」でも、鳴門市の10年と千葉市の1年度では意味がまったく違います。

② 減免ではなく「補助金」で穴埋めする

富士見市(埼玉)は、固定資産税そのものを減免する条例を持っていません。代わりに、増えた分を最大2年間、補助金として現金で戻すという独自のしくみになっています。税の窓口ではなく空き家対策の窓口に聞くことになります。

③ 建て替えるなら、そもそも上がらないことがあります

更地のままにせず建て替える場合は、「減免」ではなく「特例をつなぐ」という別の道があります。

自治体 内容
府中市(東京) 同じ敷地で、原則その年の12月末日までに住宅が完成すれば、建て替え中の年度も住宅用地特例をそのまま適用
静岡市 空き家建替え促進事業補助金に伴い、解体前と概ね同じ税負担になるよう最大2年度分を軽減

建て替えの予定があるなら、減免より先にこちらを確認してください。手続きの期限が「その年の12月末」のように区切られていることがあり、後から気づいても戻せません。

④ 東京の木密地域は、区ではなく「都」の制度です

東京23区の固定資産税・都市計画税は都税です。そのため、区の窓口に聞いても減免の話は出てきません。不燃化特区に指定された区域で老朽住宅を除却すると、東京都の制度で次の減免が受けられます。

減免される額 土地に係る税額の8割
期間 除却の翌年度から最長5年度分
手続き 毎年度の申請。区から「防災上有効な更地」と認める通知をもらう必要がある区もあります
対象外になる例 コインパーキングなど収益事業に使う/雑草が茂ったまま放置する
申請先 区役所ではなく都税事務所

★いちばんの落とし穴は、区内のどこでも使えるわけではないことです。不燃化特区は地区単位で指定されていて、たとえば台東区は谷中二・三・五丁目地区、江東区は北砂三・四・五丁目地区、大田区は大森中・羽田二三六丁目・補助29号線沿道の各地区に限られます。同じ区でも、道1本外れると対象になりません。

当サイトで特区制度の対象になることを確認できたのは、品川区・目黒区・大田区・世田谷区・杉並区・北区・荒川区・板橋区・足立区・葛飾区・江戸川区・墨田区・江東区・台東区・豊島区の15区です。新宿区は不燃化特区に指定されておらず、この減免は使えません。

なお23区では、耐震化のために建て替えた住宅にも都の減免(新築後3年度分を全額減免、翌々年2月末までに申請)があります。壊して終わりにするか建て替えるかで、使える制度が変わります。

⑤ 税金は消えるが、土地は自由に使えなくなる型

自治体 条件 効果
横浜市 跡地を10年間、無償で市に貸し付ける(防災広場) その間の固定資産税が非課税
大阪市 跡地を3年以上、無償で使用貸借(防災空地) 整備の翌年から契約終了年まで非課税

★これは減免ではなく取引です。税金はかからなくなりますが、その間は売ることも自分で使うこともできません。「すぐには売らない」と決めている土地でなければ、選ばないほうがいい選択肢です。①〜④と同じ「税が軽くなる制度」として並べて考えると、判断を誤ります。

使う前に確認したい3つのこと

① ほとんどが申請主義です。黙っていて自動的に適用される制度はほぼありません。長浜市や東京都の不燃化特区のように、毎年度あらためて申請が要るものもあります。1年目だけ出して2年目を忘れる、が起きやすい形です。

② 「解体する前に相談」が条件のものがあります。鳴門市は事前の立入調査を受けずに解体すると10年間の減免が受けられません。伊万里市も「必ず解体工事前に相談」と案内しています。壊してから調べ始めると、間に合わない制度があります。

③ 期限つきの制度が多いです。加賀市は令和7年12月末までに除却したもの、長崎市は令和10年12月末まで、というように対象期間が区切られています。数年前に調べた情報が、いまも生きているとは限りません。

そして、ここに名前が出てこない自治体でも「制度がない」と決まったわけではありません。公表されていないだけのことが普通にあります。解体を決める前に、市区町村の税務課(資産税担当)に「空き家を解体した後の土地の固定資産税に、減免はありますか」と一言聞いてください。これが最も確実です。

お住まいの自治体に解体費の補助金があるかどうかは、空き家解体補助金の全国一覧から確認できます。各自治体のページに、跡地の条件や固定資産税の扱いもまとめてあります。

増える税金の前に、戻ってくる補助金を数える

解体で税額が上がる話をしてきましたが、入ってくる側も数えないと判断できません。全国394自治体のうち256自治体が空き家の解体費に補助を出しています。上限額の大きい順です。

自治体上限額
北海道札幌市850万円
岡山県岡山市(地域活性化除却)200万円
東京都墨田区最大200万円
東京都板橋区200万円
秋田県大仙市危険型200万円/迷惑型100万円/…
兵庫県たつの市160万円(市税条例第24条第1項に…
兵庫県丹波市160万円(判定100点以上。50点…
愛媛県松山市160万円
香川県三豊市160万円
北海道札幌市(地域連携型)150万円
東京都杉並区150万円
山形県米沢市市町村民税所得割が非課税なら最大12…

該当は全部で256自治体です。全国の一覧表で実家のある市区町村を確認してください。

たとえば上限50万円の補助が使えるなら、税額が年間で数万円増えたとしても、回収に何年かかるかを計算できます。実家のある市区町村の上限額を確認してから、この記事の計算に戻ってください。

8. 結局、解体すべきかどうか

税金だけで判断すると間違えます。判断材料は少なくとも4つあります。

① 解体費用そのもの

数十万円〜数百万円かかります。そして解体費の坪単価には、公的統計が存在しません。 民間の数字は出典によってばらつきます。この点は実家の解体費用はいくら?で、根拠のある項目だけを使ったシミュレーターとともに整理しています。

② 自治体の補助金

解体補助制度がある自治体では、数十万円〜数百万円が戻ります。ただし着工前の申請が必須で、予算枠に達すると年度途中で締め切られます。

そして、制度の有無は自治体でまったく違います。政令指定都市20市を調べたところ、「空き家」の名称がついた解体補助があるのは11市のみでした。市区町村ごとの制度は解体補助金データベースにまとめています。

③ 税金の特例——ここが最も大きい

空き家の3,000万円特別控除を使えば、譲渡所得から最大3,000万円が控除されます。この特例は「家屋を取り壊して土地を売る」ケースを対象に含んでいます。

つまり、解体は税負担を増やす行為であると同時に、はるかに大きな税負担を減らす行為でもあります。 年12万円の固定資産税増と、最大600万円超の節税を、同じ天秤に載せてはいけません。

要件と期限は空き家の3,000万円特別控除にまとめています。2025年以降に相続した方の実質的な期限は2027年12月31日です。

④ 売りやすさ

古家付きのまま売るか、更地にして売るかで、買主層も価格も変わります。古家付き土地として売るか、更地にして売るかで、税金を含めた損得を比較しています。


まとめ

  • 「解体すると固定資産税6倍」は不正確。土地の固定資産税で最大約4.2倍、実際に払う総額では約2倍程度に収まることが多い
  • 根拠は負担調整措置(非住宅用地の課税標準は評価額の70%が上限)と、建物分の税金が消えること
  • 税額が変わるのは翌年1月1日を跨いでから。解体の時期で1年ずれる
  • 解体しなくても、勧告を受ければ特例は外れる。令和5年度の特定空家等の勧告は534件
  • 判断は税金単体ではなく、解体費・補助金・3,000万円控除・売りやすさの4つを並べて行う

よくある質問

ここは「自分の家だといくらになるのか」を自分で出せるところまで書きます。根拠の条文も示します。

Q. 解体すると本当に6倍になりますか。

A. なりません。「6倍」は土地の課税標準額だけを見た数字で、しかも上限の話が抜けています。

本文で計算したとおり、実際には非住宅用地の課税標準額には「評価額の70%」という上限があるため、土地の税額はおおむね4.2倍にとどまります。さらに建物の固定資産税がまるごと消えるので、土地と建物を合わせた総額では2倍程度という例が出てきます。

Q. なぜ4.2倍なのですか。

A. 非住宅用地の課税標準額は、評価額の70%が天井だからです。

0.70 ÷ (1/6)= 4.2倍。これが上限まで行ったときの姿です。「6倍」は住宅用地特例(1/6)の逆数をそのまま倍率にしただけの数字で、天井の存在が抜けています。

Q. なぜ総額では2倍程度なのですか。

A. 建物にかかっていた固定資産税・都市計画税がゼロになるからです。

土地の増加分と、建物分の消滅を合算すると、財布が感じるのは約2倍です。ただしこの前提が崩れる場合があります。あとの「税額がゼロのまま」のQを必ず読んでください。

Q. いきなり4.2倍になるのですか。

A. なりません。負担調整措置があり、1年あたり評価額の5%ずつしか課税標準は上がりません。数年かけて、じわじわ上がっていきます。

ここは、判断に直結します。「解体したら来年からいきなり4.2倍」ではないので、1〜2年で売り切る前提なら、上限まで行く前に手放せます。

Q. 「6分の1」「3分の1」の根拠はどこにありますか。

A. 地方税法349条の3の2です。条文で確認できます。

区分 課税標準 根拠
小規模住宅用地
(200㎡以下の部分)
価格の6分の1 地方税法349条の3の2第2項
一般住宅用地
(200㎡を超える部分)
価格の3分の1 同第1項

出典:e-Gov法令検索「地方税法」(2026年8月16日確認)

200㎡は約60坪です。実家の敷地がこれを超えていれば、超えた部分はもともと6分の1ではなく3分の1で計算されています。「6倍になる」という説明が、そもそも敷地の一部にしか当てはまらないわけです。

Q. 自分の家だといくらになるのか、計算できますか。

A. 課税明細書があれば、電卓で出せます。毎年4〜6月に届く固定資産税の納税通知書に同封されています。

この順番でやってください

1 課税明細書で土地の「価格(評価額)」と「課税標準額」の2つを見つけます。この2つは別物です。いま特例が効いているので、課税標準額のほうがずっと小さいはずです
2 実際に行き着く先=価格 × 0.6。本文の負担調整措置の表のとおり、年5%ずつ上がるのは負担水準60%までで、60%〜70%の間は前年度に据え置きだからです。法律上の天井は70%ですが、そこまで自動では上がりません
3 初年度に増える分 = 価格 × 5% × 1.4%。課税標準は1年あたり評価額の5%ずつしか上がりません。いきなり天井には行きません
4 上がりきるまでの年数 =(0.6 − いまの課税標準額÷価格)÷ 0.05。これが「猶予の年数」です。住宅用地特例が効いていた土地(およそ1/6=16.7%)からなら、8〜9年かかります
5 最終的な増加分は(価格×0.6 − いまの課税標準額)× 1.4%(標準税率。自治体により異なります)
6 課税明細書で家屋の税額を確認し、③と⑤から引きます。解体すれば家屋の分は消えるからです
7 都市計画税がかかる地域なら、同じ計算を税率0.3%以下でもう一度やって足します

ここまでやると、3つの数字が出ます。①来年いくら増えるか ②最終的にいくらまで増えるか ③そこに届くまで何年あるか。

「6倍」という言葉ではなく、この3つで判断してください。実際にやってみると、初年度の増加は思っていたより小さいことが多いです。そして③の年数が、売却に使える時間になります。

ここは、正確に書いておきます

本文では「理論上の最大倍率は 0.70 ÷(1/6)= 4.2倍」と書きました。これは法律上の天井(評価額の70%)から出した数字です。ですが負担調整措置で自動的に上がっていくのは負担水準60%までで、60%〜70%の間は前年度に据え置きです。

つまり、いま特例が効いている土地が解体後に自力でたどり着くのは、おおむね評価額の60%=もとの3.6倍前後で、しかも8〜9年かけて、です。4.2倍は「上限として法律が許している値」であって、あなたの土地が来年そこへ行く数字ではありません。

Q. 税額がゼロのままということはありますか。

A. あります。そして、その場合はこの記事の結論が変わります。

地方税法351条は「固定資産税の免税点」を定めています。同一の市町村内で同じ人が持っている固定資産について、課税標準となるべき額が土地は30万円、家屋は20万円に満たない場合、市町村は固定資産税を課することができません(ただし条例で定めれば課税できます)。

出典:e-Gov法令検索「地方税法」351条(2026年8月16日確認)

ここが、当サイトの計算の弱点です。正直に書きます。

この記事は「建物の固定資産税が消えるから、総額では2倍程度に収まる」と説明してきました。ですが築古で家屋の課税標準額が20万円未満なら、そもそも家屋の固定資産税は最初からゼロです。消える税金が無いので、土地の増税だけがそのまま効きます。

課税明細書で家屋の税額が0円になっていないか、必ず確かめてください。地方の古い実家ほど、この可能性があります。

Q. いつから上がりますか。

A. 解体した翌年の1月1日を基準に、その年度からです。

固定資産税は1月1日時点の状況で決まります。つまり年内に解体しても、その年の税額は変わりません。上がるのは翌年度からです。

ここから、実務上の答えが出ます

  • 解体して、翌年の1月1日までに売り切れば、上がった税金は1円も払いません
  • 逆に1月2日に解体すると、増税の開始まで約1年の猶予があります
  • 年末ギリギリの解体がいちばん損です。数日の違いで、まる1年分の増税が前倒しになります

売却とセットで考えるなら、解体の時期は交渉材料になります。古家付きのまま売るという選択肢も含めた比較は古家付きで売るか、更地にするか(税金込み)にあります。

Q. 解体しないまま特例が外れることはありますか。

A. あります。しかも2023年の法改正で、外れる範囲が広がりました。

地方税法349条の3の2第1項は、住宅用地から次の2つを除いています。

空家法22条2項の勧告を受けた特定空家等の敷地 従来から対象
空家法13条2項の勧告を受けた管理不全空家等の敷地 2023年改正で追加。「そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある状態」で対象になります

出典:e-Gov法令検索「地方税法」349条の3の2・「空家等対策の推進に関する特別措置法」13条・22条(2026年8月16日確認)

引き金は「指定」ではなく「勧告」です。そして特定空家まで悪化していなくても、その手前の段階で勧告を受ければ外れます。手続きの流れと、通知が届いたときの対応は特定空家に指定されるとどうなるかにまとめました。

解体費の相場と、施主がやる手続き自分の自治体に補助金があるか調べる持ち続けた場合の年間維持費と比べる

この記事で確認できなかったこと

  • 地方税法附則第18条の条文原文:e-Gov法令検索が動的描画のため本文を直接取得できず、総務省・大阪市の公式説明で内容を確認しました
  • 令和6年度以降の特定空家等・管理不全空家等の全国集計:本記事執筆時点で確認できた最新は令和5年度分でした

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税額の増加と、解体費用を並べて判断する

この記事の試算では、解体による税負担の増加は年12万円程度でした。判断に必要なもう片方の数字が、解体費用そのものです。相場は建物の構造と立地で大きく振れるため、実額は見積りで確認するしかありません。解体の窓口は、物件の情報を入れると付近の解体業者が次々に見積り金額を提示していくという形のマッチングサービスです(同社は「逆オークション」と呼んでいます)。同社サイトには対応エリアは47都道府県、登録業者は1,100社以上と書かれています(社数は2022年6月時点の記載)。

①同社サイトには「ご利用は無料。ご成約後の請求も一切ございません」と書かれています。
②同社は「契約まで、業者からご連絡がいくことはございません」と説明しています。
③申し込みには物件の情報と写真が要ります。遠方の実家で写真が手元にないなら、次に帰ったときに外観と傷んでいる箇所を撮っておいてください。
④解体する予定がないなら申し込まないでください。重複した申込や、連絡先が実在しない申込は無効と明記されています。
⑤1社の見積りだけで決めないでください。地元の解体業者にも自分で1社あたって、金額の桁が合っているかを確かめてください。
⑥解体補助金を使う予定があるなら、契約・着工の前に自治体へ申請してください。着工後の申請は原則として通りません。

解体の窓口で、無料シミュレーションを試す

解体すると空き家の3,000万円特別控除が使える場合があります。税額の増加より、こちらのほうが桁が大きくなることがあります。解体費用の相場そのものは実家の解体費用はいくら?にまとめています。

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税額の比較に使う「解体費」も、1社の見積りでは決まりません

この記事で並べた「税の増加額」と「解体費」の比較は、解体費の数字が確かでないと成り立ちません。同じ家でも、業者によって数十万円変わります。上のサービスは業者のほうから金額が集まってくる形、解体工事一括netは施主が業者と直接契約する形です。集め方が違えば、出てくる業者も金額も変わります。

①更地にすると住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税が上がります。この記事で書いたとおり、上がり方は最大4.2倍です。解体費が下がっても、翌年からの税負担は消えません。両方を並べて判断してください。
②補助金を使う予定があるなら、見積りより先に自治体へ連絡してください。ほとんどの制度が「交付決定の前に契約したら対象外」です。
複数の業者から連絡が来る仕組みです。電話を受ける時間が取れないなら、希望する連絡手段を備考欄に書いてください。
いちばん安い1社をそのまま選ばないでください。マニフェスト(産業廃棄物管理票)の写しを出せるか、建設リサイクル法の届出を代行するか。安すぎる見積りは、ここを省いていることがあります。
サービス内容の説明は同社サイトの記載であって、当サイトが確かめた事実ではありません。

解体工事一括netで見積もりを比べる(無料)

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