実家を相続した人が、いちばん最初につまずくのはここです。相続税は「死亡を知った日の翌日から10か月以内」に、金銭で一度に納めるのが原則です。けれど実家は、10か月では現金になりません。
この記事は、その10か月をどう渡るかという話です。生命保険には非課税の枠がありますが、相続放棄をすると、その枠だけは使えなくなります。受け取れないのではなく、枠が使えません。ここを取り違えている人が多いところです。
この記事の根拠
国税庁のタックスアンサーと、そこに示された根拠条文を確認して書いています。いずれも令和7年4月1日現在の法令等にもとづくページです。
- No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金(根拠条文:相法3、12、15)
- No.4205 相続税の申告と納税(根拠条文:相法27、33、38ほか)
- No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算(根拠:相基通11の2-9、11の2-10)
- No.4102 相続税がかかる場合(根拠条文:相法1の3、2、3、11〜16ほか)
金額や割合は、これらのページに書かれている数字をそのまま使っています。推計は使っていません。
先に、そもそも相続税がかかるのかを確かめる
この記事の話は、相続税がかかる場合にだけ意味があります。かからないなら、納税資金の心配も要りません。判定の入口は基礎控除です。国税庁No.4102に書かれている計算式はこれです。
基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
法定相続人が3人なら4,800万円。「正味の遺産額が基礎控除額を超える場合は相続税がかかります」とされています。実家の評価額と預貯金を足して、この額に届くかどうかが最初の分かれ目です。
養子の人数制限は、ここでも同じです。実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人まで。
相続税は10か月。しかも金銭で一度に納めるのが原則です
国税庁No.4205には、申告と納税の期限がこう書かれています。「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」です。申告だけでなく、納税も同じ期限です。
そして納め方は、「税金は金銭で一度に納めるのが原則」とされています。延納(何年かに分けて金銭で納める)と物納(財産そのもので納める)は、あくまで「特別な納税方法」という位置づけです。
ここに実家じまい特有の問題があります。相続財産の大半が実家という不動産の場合、10か月以内に売って現金化できるとは限りません。買い手が見つかるかは相手のあることですし、遺産分割の話し合いが終わらなければ売りに出すこともできません。
生命保険金には、500万円×法定相続人の数の非課税枠があります
被相続人が保険料を負担していた生命保険の死亡保険金は、相続税の対象になります。ただし非課税の枠があります。国税庁No.4114に書かれている計算式はこれだけです。
法定相続人が3人なら1,500万円までが非課税です。実家という売れるまで現金にならない財産があるとき、この枠のぶんだけは納税資金として、課税されずに手元に残せるということになります。
相続放棄をすると、この枠は使えなくなります
ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。No.4114には、非課税が適用されるのは「死亡保険金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません。)である場合」と書かれています。そして「相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用はありません」とも明記されています。
受け取れないのではなく、枠が使えない
相続放棄をした人でも、保険金そのものは受け取れます。受取人として指定されているからです。使えなくなるのは非課税の枠だけです。つまり受け取った額が、そのまま相続税の課税対象になります。
実家じまいでは、こういう場面が起こりえます。実家に住まない子が「実家はいらないから相続放棄する」と言う。ところがその子が親の生命保険の受取人だった。放棄そのものは自由ですが、保険金にかかる税の扱いが変わります。
それでも「法定相続人の数」は減りません
ここが分かりにくいところです。同じNo.4114に、数え方についてこう書かれています。「法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。」
つまり非課税枠の計算では、放棄した人も頭数には入ります。枠の総額(500万円×人数)は減りません。減らないけれど、放棄した本人はその枠を使えない。この非対称が、誤解のもとになっています。
「1人が放棄したから枠が500万円減る」ではありません。「枠の総額は変わらないが、放棄した人が受け取った分には枠を当てられない」です。
養子は、数えられる人数に上限があります
法定相続人の数を数えるとき、養子には人数の制限があります。No.4114の記載はこうです。実子がいるときは1人、実子がいないときは2人まで。
養子を増やせば非課税枠が無限に増える、ということにはなりません。
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口座を探すところまでは、自分でできます。ただし「相続税の申告が要るかどうか」は、預貯金・不動産・保険をぜんぶ足してからでないと分かりません。足す前の段階で、何を集めればいいかを聞いておくと手戻りが減ります。自分では判断がつきません。税理士ドットコムは、全国5,900名以上の税理士から相続に強い人を無料で紹介する窓口です。運営は東証プライム上場の弁護士ドットコム株式会社。紹介と相談は無料で、複数の税理士を比較してから選べます。親が元気なうちに相談すれば、直す時間があります。亡くなってからでは、贈与そのものが成立しません。
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③相続がすでに発生している場合、申告期限は10か月です。期限が近いなら最初に伝えてください。
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保険の受取人が誰になっているかは、契約書を見れば今日わかります。非課税枠が使えるかどうかまで含めて、親が元気なうちに一度見てもらってください。
実家を継ぐ人と、継がない人を揃えるとき
実家という分けにくい財産があると、1人が実家を取得して、他の人にお金を渡す形になることがあります。これを代償分割といいます。
国税庁No.4173では、代償分割を「共同相続人などのうちの1人または数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の共同相続人などに対して債務を負担するもの」と説明しています。
相続税の課税価格の計算はこうなります。
| 立場 | 相続税の課税価格 |
|---|---|
| 代償金を支払った人(実家を取得) | 取得した現物の財産の価額 − 交付した代償財産の価額 |
| 代償金を受け取った人 | 取得した現物の財産の価額 + 交付を受けた代償財産の価額 |
代償金は、払う側が現金で用意しなければなりません。実家を継ぐ人にとっては、相続税とは別に、この現金も要るということです。ここでも10か月という期限が効いてきます。
親が元気なうちに確かめておくこと
- 生命保険に入っているか、受取人は誰になっているか。受取人の指定は契約で決まっています。相続の話し合いで決めるものではありません。
- 相続放棄をしそうな人が、受取人になっていないか。放棄すると非課税枠が使えなくなります。
- 実家を誰が継ぐ想定か。継ぐ人には相続税と代償金の両方が現金で要ることがあります。
- 実家が今いくらか。相続税がかかる規模なのかどうかは、ここが分からないと判断できません。
1と2は契約書を見れば今日わかります。親が元気なうちなら、受取人の変更もできます。
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実家が今いくらなのかを、先に知っておく
相続税がかかるかどうかは、預金だけでなく実家の評価額を足して決まります。親が元気なうちに実家のおおよその価格を知っておくと、対策が要るのか要らないのかが判断できます。一括査定なら、複数の不動産会社の査定額を並べて比べられます。売る前提でなくても、金額を知るだけなら無料です。数字が出てから、贈与するのか、そのまま相続するのかを考えてください。
申し込む前に4つだけ確認してください。①申し込めるのは名義人か、そのご親族です。親名義の実家なら、親の同意を得てから申し込んでください。
②申し込むと不動産会社から電話またはメールで連絡が入ります。所在地・築年数・間取りを答えられるようにしておくと早く終わります。
③売却を考えていない段階なら、その旨を伝えてください。「今は金額だけ知りたい」で構いません。
④査定額は「売れる価格」ではありません。相続税評価額とも別の数字です。
この記事で確認できなかったこと
- 死亡保険金が、民法上の遺産分割でどう扱われるかは書いていません。この記事で確認したのは相続税法上の扱い(No.4114、相法3・12・15)だけです。遺産分割や特別受益の扱いは民事の問題で、最高裁の判断もありますが、今回は裁判所の公開ページで原文を確認できなかったため、書いていません。
- 実家の評価額の出し方は扱っていません。基礎控除を超えるかどうかの判定には土地・建物の相続税評価額が要りますが、その計算方法はこの記事の範囲外です。
- 延納・物納の要件は確認していません。No.4205に「特別な納税方法」として名前が挙がっていることまでを書いています。
- 保険商品の内容や利回りは扱っていません。この記事は税の扱いだけの話です。
- 数字は令和7年4月1日現在の法令等にもとづくページのものです。税制は変わります。実行の前に、必ず最新のタックスアンサーと税理士に確認してください。
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