実家を生前贈与すると、税金は減るどころか増えることがあります|登録免許税5倍・不動産取得税・2024年の7年ルール

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「相続でもめる前に、実家は生前に渡しておこう」。その判断で、税金が減るどころか確実に増えることがあります。

理由は単純で、生前贈与にだけかかる税金が2つあるからです。登録免許税は相続の5倍、不動産取得税は相続なら非課税なのに贈与だと課税されます。評価額2,500万円の実家なら、この2つだけで約95万円。相続なら約10万円です。

そのうえ2024年(令和6年)1月1日から、暦年課税の生前贈与加算が3年から7年に延びました。この記事は、実家という「不動産」を生前に渡すべきかどうかを、条文と国税庁の公表資料だけで組み立てます。

結論だけ先に

  • ★まず相続税がかかるかどうかを確かめてください。基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数(相続税法15条1項)。ここに届かないなら、減らす相続税がそもそもありません。それでも贈与すれば登録免許税と不動産取得税は確実に発生します。
  • ★登録免許税は相続0.4%、贈与2%=5倍。不動産取得税は相続なら非課税(地方税法73条の7第1号)ですが、贈与は課税されます。
  • 暦年課税の加算は7年になりました(相続税法19条)。ただし完全に7年になるのは令和13年1月1日以後に開始する相続からです(国税庁タックスアンサーNo.4161の表)。延長された4年分は合計100万円が控除されます。
  • ★相続時精算課税で贈与した土地には、小規模宅地等の特例が使えません。租税特別措置法69条の4第1項の対象が「個人が相続又は遺贈により取得した財産」だからです。330㎡・80%減額を失う影響は、贈与税の節税額より大きくなることがあります。

この記事は e-Gov法令検索の条文、国税庁のタックスアンサー、財務省・国土交通省・法務局の公表資料だけで書いています。当サイトに税理士はいません。実際の税額は必ず税理士に確認してください。最終確認日:2026年8月25日。

1. その実家、そもそも相続税がかかりますか

相続税法15条1項です。

相続税の総額を計算する場合においては、(略)相続税の課税価格の合計額から、三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。

法定相続人の数 基礎控除額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円
相続税法15条1項から算出

ここを飛ばさないでください

遺産の総額が基礎控除以下なら、相続税は1円もかかりません。それでも生前贈与をすれば、登録免許税と不動産取得税だけが確実に発生します。「相続税対策」として実家を贈与する前に、そもそも相続税がかかる規模なのかを確かめてください。これは実家の評価額が分からないと判断できません。

まず、相続税がかかるか確かめます 法定相続人 1人 3,600万円 法定相続人 2人 4,200万円 法定相続人 3人 4,800万円 法定相続人 4人 5,400万円 3,000万円+600万円×法定相続人の数

2. 生前贈与にだけかかる2つの税

① 登録免許税は5倍になります

登録免許税法の別表第一・一(不動産の登記)です。

所有権の移転の登記 課税標準 税率
相続又は法人の合併による移転 不動産の価額 1000分の4
その他の原因による移転(贈与を含む) 不動産の価額 1000分の20
登録免許税法 別表第一・一。法務局「登録免許税の計算」も「相続は1000分の4」「贈与や財産分与などその他の原因は1000分の20」としています。課税標準は固定資産課税台帳の価格です。

② 不動産取得税は、相続なら非課税です

地方税法73条の7です。

道府県は、次に掲げる不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができない。
一 相続(包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。)による不動産の取得

この列挙に「贈与」は入っていません。不動産取得税は「不動産の取得」に対して課される税なので(同法73条の2第1項)、贈与も課税されます。標準税率は100分の4(同法73条の15)ですが、住宅と土地には3%の特例があり、宅地には課税標準を価格の2分の1にする特例があります(地方税法附則。国土交通省は特例の期限を令和9年3月31日までとしています)。

実際にいくら違うのか

固定資産税評価額が土地2,000万円・家屋500万円の実家を、子に渡す場合で並べます。

項目 相続で渡す 生前贈与で渡す
登録免許税 2,500万円 × 0.4%=10万円 2,500万円 × 2%=50万円
不動産取得税(土地) 非課税 2,000万円 × 2分の1 × 3%=30万円
不動産取得税(家屋) 非課税 500万円 × 3%=15万円
合計 10万円 95万円
登録免許税法別表第一、地方税法73条の7・73条の15・附則、国土交通省「土地の取得に係る税制の概要」から単純計算。中古住宅の課税標準控除など個別の軽減は考慮していません。実額は都道府県税事務所に確認してください。

贈与税がゼロでも、この85万円の差は必ず出ます。相続税の節税額がこれを上回らなければ、生前贈与は損です。

生前贈与にだけ、85万円かかります 85万円 税額の差 相続で渡す 10万円 生前贈与で渡す 95万円 土地2,000万円・家屋500万円の実家の場合

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この判断は、①相続税がかかる規模か ②小規模宅地等の特例が使えるか ③登録免許税と不動産取得税がいくらか、の3つを同時に出さないと決まりません。特に②は影響が大きく、330㎡・80%減額を贈与で失うと、贈与税の節税額を上回ることがあります。そして相続時精算課税は撤回できません(相続税法21条の9第6項)。やり直しがきかない選択なので、届出書を出す前に試算してもらってください。ここは相続税を扱う税理士を紹介してもらう窓口で、紹介自体は無料です。

①申し込むと、30日以内に電話またはメールで確認の連絡が来ます。知らない番号でも出てください。ここで内容が確認できないと、税理士の紹介そのものが進みません。
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婚姻20年以上の配偶者への居住用不動産の贈与(2,000万円の配偶者控除)が使えるかどうかも、同時に確認してください。7年加算の対象外になる数少ないケースです。

3. 2024年改正① 暦年課税の加算が7年になりました

相続税法19条1項の見出しが「相続開始前七年以内に贈与があつた場合の相続税額」に変わりました。

相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前七年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、(略)加算対象贈与財産(加算対象贈与財産のうち当該相続の開始前三年以内に取得した財産以外の財産にあつては、当該財産の価額の合計額から百万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなし(略)

ただし、いきなり7年になるわけではありません。国税庁のタックスアンサーNo.4161に、相続開始日ごとの表が載っています。

被相続人の相続開始日 加算対象期間
〜令和8年12月31日 相続開始前3年以内
令和9年1月1日〜令和12年12月31日 令和6年1月1日から死亡の日までの間
令和13年1月1日〜 相続開始前7年以内
出典:国税庁タックスアンサー No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)[令和7年4月1日現在法令等]。根拠法令等に「令5改正法附則19」と明記されています。
7年になるのは、令和13年からです 〜令和8年12月31日 相続開始前3年以内 令和9年〜令和12年 令和6年1月1日から死亡の日まで 令和13年1月1日〜 相続開始前7年以内

100万円の控除にも条件があります。国税庁は「相続開始の日が令和9年1月2日以後の場合には、加算対象期間内に取得した財産のうち相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産については、その財産の贈与時の価額の合計額から総額100万円までは相続税の課税価格に加算されません」としています。

基礎控除110万円以下でも加算されます

国税庁は「加算対象期間内に贈与されたものであれば贈与税がかかったかどうかに関係なく加算します。したがって、基礎控除額110万円以下の贈与財産や死亡した年に贈与されている財産の価額も加算することになります」としています。

加算されない贈与もあります

国税庁が挙げているのは次の4つです。

  • 贈与税の配偶者控除の適用を受けている(受けようとする)財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
  • 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額

実家という不動産そのものに使えるのは、このうち「贈与税の配偶者控除」だけです。

4. 2024年改正② 相続時精算課税に年110万円の基礎控除

ここは条文の建て付けが二段になっているので、正確に書きます。

相続税法21条の11の2第1項は、こう定めています。

相続時精算課税適用者がその年中において特定贈与者からの贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、贈与税の課税価格から六十万円を控除する。

相続税法本体は「六十万円」です。110万円にしているのは租税特別措置法70条の3の2です。

令和六年一月一日以後に相続税法第二十一条の九第五項に規定する相続時精算課税適用者が(略)取得した財産に係るその年分の贈与税については、同法第二十一条の十一の二第一項の規定にかかわらず、贈与税の課税価格から百十万円を控除する。

この110万円は相続財産に加算されません

相続税法21条の15第1項が、加算する額を「価額から第二十一条の十一の二第一項の規定による控除をした残額」としています。21条の16第3項2号も同じ書き方です。

暦年課税の110万円 相続時精算課税の110万円
根拠 相続税法21条の5+租税特別措置法70条の2の4 相続税法21条の11の2+租税特別措置法70条の3の2
いつから 従来から 令和6年1月1日以後の贈与
相続財産への加算 加算される(加算対象期間内なら110万円以下でも) 加算されない(21条の15①・21条の16③二)
相続税法19条・21条の11の2・21条の15・21条の16、租税特別措置法70条の3の2、国税庁タックスアンサーNo.4161から作成

同じ「110万円」でも、扱いが正反対です。

5. 相続時精算課税の落とし穴

① 一度選ぶと撤回できません

相続税法21条の9第6項は「相続時精算課税適用者は、第二項の届出書を撤回することができない」と定めています。その贈与者からの贈与は、以後ずっと相続時精算課税になります。暦年課税に戻せません。

② 対象者の条文は2本立てです

誰から誰へ 根拠条文 年齢要件
推定相続人である直系卑属(子など)へ 相続税法21条の9第1項 贈与者60歳以上/受贈者18歳以上(いずれもその年1月1日)
孫へ 租税特別措置法70条の2の6 同上
相続税法21条の9、租税特別措置法70条の2の6。「相続税法21条の9で孫も対象」と書くと不正確です。

③ 2,500万円の特別控除は期限内申告が要件です

相続税法21条の12第1項が特別控除2,500万円(累積枠)を定め、同条2項が「前項の規定は、期限内申告書に(略)記載がある場合に限り、適用する」としています。控除の順番は①110万円の基礎控除 → ②2,500万円の特別控除です。

④ 小規模宅地等の特例が使えなくなります

租税特別措置法69条の4第1項の書き出しはこうです。

個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、当該相続の開始の直前において(略)

対象は「相続又は遺贈により取得した財産」。贈与で取得した財産は、条文の文言に入っていません。

相続時精算課税で贈与した宅地は、相続税の課税価格には加算されます(21条の15・21条の16)が、それは「相続又は遺贈により取得した財産」だからではありません。したがって特定居住用宅地等の330㎡・80%減額は使えません。

ここで逆転することがあります

評価額3,000万円・面積200㎡の実家に小規模宅地等の特例が使えるなら、相続税の課税価格は600万円まで下がります。相続時精算課税で先に贈与すると、3,000万円がそのまま加算されます。差は2,400万円。贈与税を先送りしただけで、相続税の課税価格が増えることになります。特例が使えるかどうかは、同居していたか・持ち家がないかなどの要件で決まります。贈与を決める前に必ず確認してください。

精算課税は、戻せません 一度選ぶと 暦年課税には戻せません 取り消せない 2,500万円の特別控除 期限内申告書への記載が要件 申告が条件 小規模宅地等の特例 「相続又は遺贈により取得」でない 使えません 年110万円の基礎控除 措法70条の3の2。加算されません 効きます 特例を失う影響が、節税額を上回ることがあります

6. 例外的に効くケース——婚姻20年以上の配偶者へ

相続税法21条の6(贈与税の配偶者控除)です。

項目 内容
控除額 2,000万円
贈与者 婚姻期間が20年以上である配偶者
対象 専ら居住の用に供する土地・土地の上に存する権利・家屋、または金銭
居住要件 取得の日の属する年の翌年3月15日までに居住の用に供し、その後も引き続き居住する見込みであること
回数 同一の配偶者からは一生に一度
手続 申告書等に記載と書類の添付があること(同条2項)
相続税法21条の6

これが効く理由は2つあります。

  • 7年加算の対象外です。相続税法19条2項が、配偶者控除の適用を受けた部分を「特定贈与財産」として加算対象から外しています。亡くなる直前の贈与でも足し戻されません。
  • 民法903条4項が、持戻し免除の意思表示を推定します。「婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する」。遺産分割で「もうもらっているでしょう」と言われずに済みます。

ただし、登録免許税2%と不動産取得税は、この場合もかかります。

7. 「住宅取得等資金の非課税」は実家には使えません

混同されやすいので明示しておきます。租税特別措置法70条の2の見出しは「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」です。

令和六年一月一日から令和八年十二月三十一日までの間にその直系尊属からの贈与により住宅取得等資金の取得をした特定受贈者が、次に掲げる場合に該当するときは、当該贈与により取得をした住宅取得等資金のうち住宅資金非課税限度額までの金額については、贈与税の課税価格に算入しない。

対象は「住宅取得等資金」=お金です。実家という建物・土地そのものの贈与には使えません。非課税限度額は、一定の要件を満たす住宅用家屋で1,000万円、その他の住宅用家屋で500万円です。

8. 遺留分・特別受益は、税とは別の時計で動きます

制度 期間 対象 条文
相続税の生前贈与加算 最長7年 暦年課税の贈与すべて(110万円以下も) 相続税法19条
遺留分の算定 相続人への贈与は10年 婚姻・養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与に限る 民法1044条3項
特別受益の持戻し(遺産分割) 条文上の期間制限なし 同上 民法903条1項
10年経過後の遺産分割 相続開始から10年で特別受益・寄与分を主張できなくなる — 民法904条の3
相続税法19条、民法903条・904条の3・1044条から作成

「7年より前だから相続税に関係ない」贈与でも、遺留分では10年分が足し戻されます。実家の生前贈与は、典型的に「生計の資本としての贈与」に当たりうるものです。税だけを見て決めると、あとで兄弟から遺留分侵害額を請求されます。

9. 贈与税の税率

基礎控除後の課税価格 一般税率(相続税法21条の7) 特例税率(措置法70条の2の5)
200万円以下 10% 10%
300万円以下 15% 15%
400万円以下 20% 15%
600万円以下 30% 20%
1,000万円以下 40% 30%
1,500万円以下 45% 40%
3,000万円以下 50% 45%
4,500万円以下 55% 50%
4,500万円超 55% 55%
相続税法21条の7、租税特別措置法70条の2の5。特例税率は直系尊属からの贈与で、受贈者がその年1月1日において18歳以上の場合に使えます。配偶者間の贈与や受贈者が18歳未満の場合は一般税率です。

実家を丸ごと暦年課税で贈与すれば、たいてい最高税率の帯に届きます。2,000万円の土地を子に贈与すると、特例税率でも課税価格1,890万円に対して45%の帯に入ります。ここを避けるために相続時精算課税を選ぶと、今度は小規模宅地等の特例を失います。

10. 結局、どう判断するのか

順番はこうなります。

  1. 遺産の総額を出し、基礎控除(3,000万円+600万円×人数)と比べる。届かないなら、生前贈与で減らす相続税は存在しません。
  2. 実家に小規模宅地等の特例が使えるかを確かめる。使えるなら、贈与でその枠を捨てる損のほうが大きくなりがちです。
  3. 登録免許税2%と不動産取得税を、節税額と比べる。評価額2,500万円なら差は約85万円です。
  4. 婚姻20年以上の配偶者へなら、2,000万円の配偶者控除が効きます(7年加算の対象外)。
  5. 遺留分の10年も見る。税で有利でも、兄弟から請求されれば結局お金を払います。

1と2と3は、実家の評価額が分からないと計算できません。固定資産税の課税明細書にある「価格(評価額)」と、路線価による相続税評価額と、実際に売れる価格は、それぞれ別の数字です。

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よくある質問

Q. 実家を生前贈与すれば相続税は減りますか?

減るとは限りません。暦年課税なら加算対象期間内の贈与は相続税の課税価格に足し戻されます(相続税法19条)。相続時精算課税なら贈与時の価額がそのまま加算されます(21条の15)。そのうえ登録免許税2%と不動産取得税が確実に発生します。まず基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)に届く規模かどうかを確かめてください。

Q. 登録免許税はどれくらい違いますか?

相続が1000分の4、贈与が1000分の20で、5倍です(登録免許税法別表第一・一)。課税標準は固定資産課税台帳の価格なので、評価額2,500万円なら10万円と50万円の差になります。

Q. 不動産取得税は相続でもかかりますか?

相続はかかりません。地方税法73条の7第1号が「相続(包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。)による不動産の取得」を非課税と定めています。この列挙に贈与は入っていないので、贈与は課税されます。標準税率は4%ですが、住宅・土地には3%の特例、宅地には課税標準2分の1の特例があります(国土交通省は令和9年3月31日までとしています)。

Q. 生前贈与加算はいつから7年になりますか?

相続開始日で決まります。国税庁のタックスアンサーNo.4161によると、令和8年12月31日までの相続は3年以内、令和9年1月1日〜令和12年12月31日の相続は令和6年1月1日から死亡の日までの間、令和13年1月1日以後の相続で相続開始前7年以内になります。延長された分は総額100万円が控除されます(相続開始が令和9年1月2日以後の場合)。

Q. 年110万円以下の贈与なら相続税に関係ありませんか?

暦年課税なら関係あります。国税庁は「加算対象期間内に贈与されたものであれば贈与税がかかったかどうかに関係なく加算します。したがって、基礎控除額110万円以下の贈与財産や死亡した年に贈与されている財産の価額も加算することになります」としています。一方、相続時精算課税の110万円は加算されません(相続税法21条の15第1項・21条の16第3項2号)。

Q. 相続時精算課税の110万円は何が根拠ですか?

相続税法21条の11の2は「六十万円」です。110万円にしているのは租税特別措置法70条の3の2(令和6年1月1日以後の贈与について「百十万円を控除する」)。同条2項が「相続税法第二十一条の十一の二第一項の規定により控除されたものとみなす」としているので、加算されない扱いもそのまま乗ります。

Q. 相続時精算課税は途中でやめられますか?

やめられません。相続税法21条の9第6項が「相続時精算課税適用者は、第二項の届出書を撤回することができない」と定めています。その贈与者からの贈与は、以後ずっと相続時精算課税になります。

Q. 相続時精算課税で贈与した実家に、小規模宅地等の特例は使えますか?

使えません。租税特別措置法69条の4第1項の対象は「個人が相続又は遺贈により取得した財産」で、贈与により取得した財産は文言に含まれていません。特定居住用宅地等の330㎡・80%減額を失う影響は、贈与税の節税額を上回ることがあります。贈与を決める前に、特例の要件を満たすかどうかを必ず確認してください。

Q. 妻に自宅を贈与したいのですが。

婚姻期間20年以上なら、贈与税の配偶者控除が2,000万円あります(相続税法21条の6)。しかもこの控除を受けた部分は「特定贈与財産」として7年加算の対象外です(同法19条2項)。民法903条4項も、婚姻20年以上の夫婦間の居住用不動産の贈与について持戻し免除の意思表示を推定します。ただし登録免許税2%と不動産取得税はかかります。同一の配偶者からは一生に一度です。

Q. 「住宅取得等資金の非課税」で実家をもらえますか?

使えません。租税特別措置法70条の2の対象は「住宅取得等資金」=お金です。親が現金を出して子が家を買うケースの制度で、実家という不動産そのものの贈与には使えません。非課税限度額は一定の要件を満たす住宅用家屋で1,000万円、その他で500万円、期間は令和6年1月1日から令和8年12月31日までです。

Q. 生前贈与しておけば、兄弟から文句を言われませんか?

言われます。民法1044条3項により、相続人に対する贈与は相続開始前10年間のもの(婚姻・養子縁組のため又は生計の資本として受けたものに限る)が遺留分算定の基礎に足し戻されます。実家の贈与は典型的にこれに当たりえます。相続税の7年とは別の時計です。

この記事で確認できなかったこと

  • 改正法(令和5年法律第3号)附則19条の条文そのもの。国税庁のタックスアンサーNo.4161が根拠法令等に「令5改正法附則19」と明記し、相続開始日ごとの加算対象期間の表を掲げているところまでは確認しました。附則の逐語は確認していません。
  • 不動産取得税の3%特例(住宅・土地)の条番号と条文本文。地方税法附則に「住宅の取得及び土地の取得に対する不動産取得税の税率の特例」という見出しの条が存在することは確認しましたが、条番号と「百分の三」の文言は取れませんでした。3%と令和9年3月31日という内容は国土交通省の公表資料で確認しています。
  • 租税特別措置法69条の4の減額割合(80%・50%)を定める項番号の特定。第1項の「相続又は遺贈により取得した財産」という限定と限度面積330㎡は条文で確認しました。
  • 暦年課税の基礎控除110万円の根拠条文(租税特別措置法70条の2の4)の本文。相続税法21条の5が「六十万円」で、110万円は措置法によるという二本立ての構造は相続時精算課税と同じですが、条文本文は未確認です。
  • 相続時精算課税の選択件数・暦年課税の申告人員などの統計。国税庁統計年報から数値を取れませんでした。
  • 中古住宅の課税標準控除など、不動産取得税の個別の軽減措置。本文の試算には織り込んでいません。実額は都道府県税事務所に確認してください。

まとめ

  1. ★まず基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)に届くかを確かめてください(相続税法15条1項)。届かないなら、減らす相続税は存在しません。
  2. ★生前贈与にだけかかる税が2つあります。登録免許税は相続0.4%に対し贈与2%で5倍、不動産取得税は相続なら非課税(地方税法73条の7第1号)。評価額2,500万円で差は約85万円です。
  3. 暦年課税の加算は7年に延びました(相続税法19条)。ただし完全に7年になるのは令和13年1月1日以後に開始する相続からです。延長分は総額100万円控除。
  4. 110万円以下の贈与も加算されます。国税庁が「贈与税がかかったかどうかに関係なく加算します」と明記しています。
  5. 相続時精算課税の年110万円は、相続税法21条の11の2(60万円)ではなく租税特別措置法70条の3の2が根拠です。こちらは相続財産に加算されません(21条の15①・21条の16③二)。
  6. 相続時精算課税は撤回できません(21条の9第6項)。孫への適用は措置法70条の2の6、2,500万円の特別控除は期限内申告が要件です(21条の12第2項)。
  7. ★相続時精算課税で贈与した宅地には小規模宅地等の特例が使えません。措置法69条の4第1項の対象が「相続又は遺贈により取得した財産」だからです。
  8. 婚姻20年以上の配偶者への居住用不動産の贈与は例外的に効きます。2,000万円の配偶者控除(21条の6)+7年加算の対象外(19条2項)+民法903条4項の持戻し免除の推定。
  9. 「住宅取得等資金の非課税」は現金の制度です(措置法70条の2)。実家そのものの贈与には使えません。
  10. 遺留分は10年、税は7年。別の時計です(民法1044条3項/相続税法19条)。税だけを見て決めると、あとで兄弟から遺留分侵害額を請求されます。

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