【PR】本ページはプロモーションを含みます。
相続の期限で覚えられているのは、たいてい2つです。相続放棄の3か月と、相続税の10か月。
その間に、もう1つあります。親の代わりに、親の確定申告をする「準確定申告」。期限は4か月です。
忘れられやすいのは、多くの親は準確定申告が要らないからです。年金だけで暮らしていた親なら、たいてい不要になります。でも実家を貸していたら、要ります。そして親が亡くなった年に不動産を売っていたら、必ず要ります。
この記事は、国税庁の公表資料だけを使って、要る人・要らない人と、相続税とどうつながっているかを整理します。
最終更新:2026年8月28日
結論だけ先に
- ★期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」。相続放棄の3か月と、相続税の10か月の間です。
- 公的年金等が400万円以下で源泉徴収の対象、かつ他の所得が20万円以下なら、申告は不要です。ただし還付を受けたいなら、出さないともらえません。
- ★実家を貸していた、駐車場にしていた、その年に不動産を売っていた——このどれかなら要ります。
- 還付金は相続財産です。相続税の申告書に書き忘れる誤りが、国税庁の「誤りやすい事例」に載っています。逆に、納める所得税は債務として差し引けます。
- ★親の青色申告は、相続人には引き継がれません。実家を貸し続けるなら自分で承認申請が要り、期限は死亡の日によって3通りに分かれます。
この記事は国税庁のタックスアンサー・質疑応答事例・様式・案内だけを根拠にしています。当サイトに税理士はいません。不動産所得や譲渡所得がある場合は、金額も論点も大きくなります。税理士に相談してください。
1. 4か月は、3か月と10か月の間に埋もれています
親が亡くなったあとの期限を、日数順に並べます。
国税庁のタックスアンサーは、期限をこう書いています。
相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内
1月1日から3月15日までに亡くなると、2年分になります
ここは見落としやすいところです。国税庁はこう書いています。
確定申告をしなければならない人が翌年の1月1日から確定申告期限までの間に確定申告書を提出しないで死亡した場合、前年分、本年分とも相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内
つまり2月に亡くなって前年分をまだ出していなければ、前年分と当年分の2つを、同じ4か月の中で出すことになります。
出典:国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」(所得税法16条・85条・124条・125条)
2. ★要る人・要らない人
準確定申告が要るのは、その人が生きていれば確定申告をしなければならなかった場合です。年金だけの親なら、たいてい要りません。
国税庁のページは、条件をこう書いています。
公的年金等(その全部または一部が源泉徴収の対象となる場合に限ります。)の収入金額が400万円以下/公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
| 親の状況 | 準確定申告 |
|---|---|
| 年金だけ(400万円以下・源泉徴収あり) | 不要 |
| 実家やアパートを貸していた | 必要(不動産所得) |
| 跡地を駐車場にしていた | 必要(不動産所得または雑所得) |
| 亡くなった年に不動産を売っていた | 必要(譲渡所得) |
| 給与の収入金額が2,000万円超 | 必要 |
| 年金は少ないが、医療費が多くかかった | 不要。ただし出せば還付されることがある |
「不要」は「出してはいけない」ではありません。年金から源泉徴収されていて、亡くなる前に入院していたなら、出せば返ってくることがあります。
実家を貸していたなら、ほぼ確実に必要です
不動産所得は、公的年金等以外の所得です。年間20万円を超えていれば、それだけで申告不要制度から外れます。相続した実家をそのまま貸すを選んだ家では、まずここに当たります。
出典:国税庁「確定申告が必要な方」/「公的年金等を受給されている方の確定申告に関するフローチャート」
3. 出す場所と、付ける紙
提出先は被相続人の死亡当時の納税地の税務署です。相続人の住所地ではありません。
そして、相続人が複数いる場合に付ける紙があります。
各相続人等の氏名、住所、被相続人との続柄などを記入した準確定申告書の付表を添付し、被相続人の死亡当時の納税地の税務署長に提出
この付表は「確定申告書付表(兼相続人の代表者指定届出書)」という名前で、国税庁のサイトから入手できます。相続人が2人以上いるなら、代表者を決めて書きます。
【PR】
4か月で判断がつかないなら、税理士に見てもらう
不動産所得や譲渡所得があると、準確定申告は一気に難しくなります。しかも4か月です。相続税の10か月より先に来ます。準確定申告の結果は相続税にもつながるので、両方を見られる人に頼むほうが早い。税理士ドットコムは全国5,900名以上の税理士から、相続に強い人を無料で紹介する窓口です。運営は東証プライム上場の弁護士ドットコム株式会社。紹介と相談は無料で、複数の税理士を比較してから選べます。
申し込む前に3つだけ確認してください。①紹介は無料ですが、実際に依頼したあとの報酬は税理士ごとに違います。見積りを取ってから決めてください。
②コーディネーターから電話またはメールで連絡が入り、相続財産の内容と地域を聞かれます。亡くなった日、相続人の人数、おおよその財産額を答えられるようにしておくと早く終わります。
③準確定申告は4か月、相続税は10か月です。期限が近いなら、その旨を最初に伝えてください。
贈与と相続でどちらが安いか、試算してくれる税理士を探してもらう(無料・全国)
親が事業や賃貸をしていたなら、青色申告承認申請書の期限もあわせて確認してもらってください。
4. ★控除は「死亡の日」で切ります
準確定申告でいちばん間違えやすいのが、控除の範囲です。国税庁はこう書いています。
死亡の日までに被相続人が支払った医療費、保険料等の額
| 項目 | 準確定申告に入るか |
|---|---|
| 親が生前に支払った医療費 | 入る |
| 親の死後に相続人が支払った入院費 | 入らない(死亡の日までに支払ったものではない) |
| 親が生前に支払った社会保険料・生命保険料 | 入る |
| 配偶者控除・扶養控除 | 死亡の日の現況で判定 |
| 控除額の月割計算 | しない |
国税庁は、判定の時期についてもはっきり書いています。
死亡の日の現況により行います。配偶者控除額、扶養控除額等の月割計算は行わない
★死後に払った入院費が入らない、というのは感覚に反します。でもその分は、相続税のほうで債務として差し引ける場合があります。捨てずに、両方の担当者に見せてください。
5. ★相続税と、つながっています
準確定申告は、所得税だけの話で終わりません。結果が相続税に流れ込みます。
| 準確定申告の結果 | 相続税での扱い |
|---|---|
| 還付になった | 還付金は相続財産。相続税の課税対象に加える |
| 納付になった | 納める所得税は債務。相続財産の価額から差し引ける |
国税庁は、実際に起きている間違いとしてこう挙げています。
父が亡くなった後に相続人である私が手続をとって支払を受けたものであることから、相続財産ではないと考え、第11表の付表4に記入しませんでした
これは誤りで、正しくはこうです。
所得税の準確定申告に係る還付金は、被相続人(父)に帰属する財産であり、相続財産に該当する
★「自分が手続きして受け取ったお金だから自分のもの」ではありません。親が生きていれば親が受け取るはずだったお金だからです。逆に、納める所得税のほうは差し引けます。
被相続人の所得税の準確定申告で納付することとなる所得税は、相続財産の価額から差し引くことができる債務となります
出典:国税庁「誤りやすい事例⑦(申告書第11表の付表4関係)」
6. ★実家を貸していたなら、もう1つ期限があります
親がアパートや駐車場を貸していて、それを相続人が続ける場合。親の青色申告は、相続人には引き継がれません。
相続人が自分で「所得税の青色申告承認申請書」を出す必要があります。そして期限が、親が亡くなった日によって3通りに分かれます。
| 被相続人の死亡の日 | 申請書の提出期限 |
|---|---|
| 1月1日〜8月31日 | 死亡の日から4か月以内 |
| 9月1日〜10月31日 | その年の12月31日まで |
| 11月1日〜12月31日 | 翌年の2月15日まで |
1月から8月に亡くなった場合は、準確定申告と同じ「4か月」です。2つの4か月が並走します。
間に合わないと、その年は白色申告になります。青色申告特別控除も、赤字の繰越しも使えません。
出典:国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
【PR】
貸し続けないなら、いくらで売れるかを先に確かめる
青色申告の承認申請を出すかどうかは、実家を貸し続けるかどうかで決まります。売るなら、そもそも要りません。だから先に「いくらで売れるのか」を知っておくと、期限のある手続きを1つ減らせます。一括査定なら、複数の不動産会社の査定額を一度に取り寄せられます。
申し込む前に4つだけ確認してください。①申し込めるのは名義人か、そのご親族です。相続した実家なら、相続人であるあなたが申し込めます。
②申し込むと不動産会社から電話またはメールで連絡が入ります。所在地・築年数・間取りを答えられるようにしておくと早く終わります。
③相続登記が済んでいなくても査定は受けられますが、売却の契約には登記が必要です。登記の期限は3年です。
④査定額は「売れる価格」ではありません。実際の成約価格はここから動きます。
査定額が出たら、貸し続けるか売るかを数字で比べられます。
7. 相続人が2人いると、手間が増えます
準確定申告は相続人全員でするものです。だから相続人が複数いると、書類が増えます。
| 相続人 | やること |
|---|---|
| 1人だけ | 準確定申告書を出す |
| 2人以上 | 付表に全員の氏名・住所・続柄などを書き、代表者を決めて添付する |
この時点で、誰が代表になるかを決めることになります。遺産分割の話し合いがまだでも、4か月は待ってくれません。ここで初めて兄弟と連絡を取る、という家もあります。まとまらない場合の進め方は実家の相続で兄弟と揉めたときに書きました。
なお、準確定申告は令和2年分以降、e-Taxでも提出できます(国税庁)。相続人が2人以上の場合は、付表のデータもあわせて送ることになります。
出典:国税庁「所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について」
8. 動く順番
- 親に不動産所得があったかを確かめる。実家を貸していた、駐車場にしていた、看板を出させていた。通帳の入金を見れば分かります。
- 去年の確定申告書の控えを探す。あれば、何を申告していた人かが1枚で分かります。捨ててはいけない書類に一覧があります。
- 年金の源泉徴収票を待つ。準確定申告には、亡くなるまでの分が要ります。
- 亡くなった年に不動産を売っていないか確認する。売っていれば譲渡所得の申告が要ります。
- 相続人を確定して、付表に書く代表者を決める。
- 事業を続けるなら、青色申告承認申請書の期限を先に確認する。
やってはいけないこと
- 「年金だけだったから何もしなくていい」で終える。還付になるケースがあります。医療費が多くかかった年なら、なおさらです。
- 還付金を相続財産に入れずに相続税を申告する。国税庁が「誤りやすい事例」として挙げています。
- 死後に払った入院費を準確定申告の医療費控除に入れる。入りません。ただし相続税の債務控除で使える場合があるので、領収書は捨てないでください。
- 相続人の住所地の税務署に出す。提出先は被相続人の死亡当時の納税地です。
- 実家を貸し続けるのに、青色申告承認申請を出し忘れる。親の青色は引き継がれません。
- 2月に亡くなったのに、当年分だけ出す。前年分が未提出なら、前年分も4か月以内です。
よくある質問
Q. 年金だけの親でした。何もしなくていいですか?
公的年金等が400万円以下で源泉徴収の対象、かつ他の所得が20万円以下なら、申告義務はありません。ただし還付を受けたいなら、出さないと戻ってきません。入院していた年は、医療費控除で戻ることがあります。
Q. 実家を貸していました。必要ですか?
不動産所得が20万円を超えていれば必要です。年金だけの人向けの申告不要制度は、この時点で使えなくなります。相続した実家をそのまま貸すと実家の跡地で駐車場経営も読んでください。
Q. 期限に間に合いませんでした
期限後でも提出できます。ただし納付がある場合は、加算税や延滞税がかかることがあります。還付だけのケースなら、まず出すことを優先してください。具体的な取扱いは税務署か税理士に確認してください。
Q. 相続放棄をしたら、準確定申告はどうなりますか?
放棄した人は相続人ではなくなるため、申告の当事者から外れます。ただし放棄には3か月の期限があり、準確定申告の4か月より先に来ます。実家が「負動産」だったら相続放棄すべきかを先に読んでください。
Q. 還付金は誰のものですか?
相続財産です。受け取る手続きをしたのが誰かは関係ありません。遺産分割の対象になり、相続税の課税対象にもなります。
Q. 準確定申告と相続税の申告、どちらを先にやりますか?
期限は準確定申告のほうが先(4か月)です。そして準確定申告の結果が、相続税の計算に入ってきます。還付なら財産に足し、納付なら債務として引く。順番はこの通りにするのが自然です。
まとめ
- ★期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」。3か月と10か月の間で忘れられます。
- 年金だけの親なら、たいてい不要。400万円以下・源泉徴収の対象・他の所得20万円以下の3つを満たす場合です。
- ★実家を貸していた/駐車場にしていた/その年に売っていた——このどれかなら必要です。
- 控除は「死亡の日まで」で切ります。死後に払った入院費は入りません。扶養控除の月割計算もしません。
- 還付金は相続財産、納める所得税は債務控除。相続税につながっています。
- ★青色申告は引き継がれません。死亡の日によって、承認申請の期限が3通りに分かれます。
この記事で確認できなかったこと
- 準確定申告が年間どれくらい提出されているかの統計は見つけられませんでした。国税庁の統計は所得税の申告全体の集計で、準確定申告の区分がありません。
- 期限に遅れた場合の加算税・延滞税の実際の適用状況は確認していません。個別の事情によって取扱いが変わります。
- 消費税の準確定申告については扱っていません。親が課税事業者だった場合に別途必要になることがあります。
- 死後に相続人が支払った入院費が、相続税の債務控除として認められる範囲は確認していません。本記事では「使える場合がある」としか書いていません。
- 準確定申告をe-Taxで行う場合の要件は扱っていません。国税庁がe-Tax対応の案内を出しています。
- 還付加算金の課税関係は本記事では扱っていません。還付金本体とは扱いが異なります。
あわせて読みたい
- 実家を相続したら相続税はかかるか|10か月の期限と、基礎控除の境目。
- 実家が「負動産」だったら相続放棄すべきか|3か月。準確定申告より先に来ます。
- 相続した実家をそのまま貸す|不動産所得があると、申告は必要になります。
- 相続した実家を売ったときの譲渡所得税|親が売った年に亡くなった場合は、準確定申告です。
- 取得費加算の特例|3年10か月。相続税を払った人だけが使えます。
- 親の口座が凍結されて葬儀代が払えないとき|還付金の受け取りにも口座の話が出てきます。
- 実家の片付けで捨ててはいけない書類9つ|去年の確定申告書の控えは、ここに入ります。
- 相続登記の義務化|3年。期限のいちばん外側です。
- 法定相続情報一覧図は、作り方を間違えると使えません|一覧図は無料。何通でも出せます。
- 親の口座は、亡くなってからでは探せません|そもそも親の口座がどこにあるか分からないときに。