実家が「負動産」だったら相続放棄すべきか|判断基準と、2023年に変わったこと

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最終更新:2026年8月15日

結論だけ先に

  • 期限は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月。ただし家庭裁判所への伸長申立てで延ばせます。遠方の実家はこの典型例です。
  • 相続財産の全部または一部を「処分」すると放棄できなくなります。放棄の可能性が少しでもあるなら、財産に手を触れないでください。
  • 2023年4月の民法改正で、放棄後の管理義務は「放棄の時に現に占有している人」だけになりました。古い解説はこの点が正確ではありません。

根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

この記事を書いた理由

「相続放棄しても、実家の管理義務は残る」——長くそう説明されてきました。

2023年4月の民法改正で、この説明は正確ではなくなりました。

改正後の民法940条は、保存義務を負う人を「放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているとき」に限定しています。実家に住んでいなかった相続人が、放棄後も無期限に管理義務を負う——という従来の理解は、条文上変わりました。

この記事では、①相続放棄が増えている実態、②期限と、うっかり放棄できなくなる行為、③改正後の管理義務、④放棄以外の出口(国庫帰属制度の実績)、⑤判断の順序——を、一次情報にもとづいて整理します。


1. 相続放棄は、毎年増えています

最高裁判所「司法統計年報 家事編」第95表「相続の放棄の申述の受理」の全国総数です。

年 新受件数
令和4年(2022) 260,497件
令和5年(2023) 282,785件
令和6年(2024) 308,753件

出典:令和6年 司法統計年報 家事編(PDF)/令和5年/令和4年(2026年8月15日確認)

2年で約4万8,000件、18.5%の増加です。 年間30万件を超えました。

相続放棄は特殊な選択ではありません。相続を「もらうもの」ではなく「引き受けるもの」として計算した結果、引き受けないと判断する人が、毎年増えています。

相続放棄は、毎年増えています 令和4年(2022) 260,497件 令和5年(2023) 282,785件 令和6年(2024) 308,753件 2年で約4万8,000件・18.5%の増加

2. 期限は3か月。ただし伸ばせます

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認・限定承認・放棄のいずれかを選ばなければなりません(民法915条1項)。

3か月で資料が揃わない場合は、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立て」ができます。

出典:裁判所「相続の放棄の申述」(2026年8月15日確認)

起算点は「死亡日」ではありません

条文は「自己のために相続の開始があったことを知った時」です。疎遠な親戚の相続で、債権者からの通知で初めて知った——という場合、そこが起算点になり得ます。

遠方の実家で、財産の全容が3か月では分からない。これは伸長申立ての典型的な場面です。 間に合わないと思ったら、まず期間を伸ばしてください。

3か月の数え方と、伸ばし方 相続の開始を知った時 死亡日ではありません(民法915条1項) 3か月以内に選ぶ 単純承認・限定承認・放棄のどれか 間に合わないなら 家庭裁判所に期間伸長を申し立てる

3. うっかり「放棄できない」状態になる行為があります

民法921条は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときなどに、単純承認をしたものとみなすと定めています(法定単純承認)。

処分にあたる行為をしてしまうと、もう放棄できません。

ここは正直に書きます

どの行為が「処分」に該当するかについて、裁判所や法務省が一般向けに公表した公式の解説は、見つけられませんでした。

裁判所の「相続の放棄の申述」ページにも、単純承認という用語の説明はありますが、具体例(遺品整理はどうか、葬儀費用の支出はどうか、預金の解約はどうか)は記載されていません。

インターネット上には具体例を挙げた記事が数多くありますが、いずれも裁判例や実務の集積にもとづく整理であって、行政機関の公式見解ではありません。

実務上、安全側に倒すなら

放棄する可能性が少しでもあるなら、財産に手を触れないでください。

  • 実家の家財を処分しない
  • 預金を引き出さない・解約しない
  • 不動産の名義変更をしない
  • 賃料や保険金を受け取らない

判断に迷う行為があるなら、動く前に弁護士か司法書士に確認してください。順序が逆になると取り返しがつきません。


4. 2023年改正:管理義務は「現に占有している人」だけになりました

ここがこの記事のいちばん重要な部分です。

改正前(旧940条)

相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

この条文の問題は、法制審議会の部会資料でこう指摘されていました。

法定相続人の全員が相続の放棄をし、次順位の相続人が存在しない場合や、相続放棄者が相続財産を占有していない場合等において、相続放棄者が管理継続義務を負うかどうかや、その義務の内容は、必ずしも明らかではない

つまり、全員が放棄したら誰が管理するのか、条文からは読み取れなかったのです。ここから「放棄しても管理義務は残る」という説明が広がりました。

改正後(現行940条・2023年4月1日施行)

相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

出典:法務省 新旧対照条文(PDF)/法制審議会民法・不動産登記法部会 資料29(PDF)(2026年8月15日確認)

改正の理由として、部会資料は「管理に一切関与していない相続財産に属する財産についてまで保存義務を負う」ことは相当でない、としています。

変わった点を整理します

改正前 改正後
義務を負う人 放棄した人(範囲が不明確) 放棄時に現に占有している人のみ
義務の内容 管理の継続 保存
義務の終期 次の相続人が管理を始められるまで 相続人または相続財産清算人に引き渡すまで

実務上の意味:

  • 遠方に住んでいて、実家に一度も住んでいない相続人が放棄した場合 → 「現に占有」していないため、条文上の保存義務は生じません
  • 実家に同居していた相続人が放棄した場合 → 引き渡すまでの保存義務が残ります

古い記事や、改正を反映していない解説は、いまも「放棄しても管理義務が残る」と書いています。条文は2023年4月1日に変わっています。

2023年改正:管理義務は誰に残るか 放棄した時、その家に住んでいましたか はい 保存義務が残る 引き渡すまでの間 いいえ 保存義務はない 2023年4月施行の940条

5. 全員が放棄したら、家はどうなるのか

誰も相続しない財産は、家庭裁判所が選任する相続財産清算人(2023年改正前の「相続財産管理人」)が管理・清算します。

申立てには予納金が必要になる場合があります。裁判所の公式説明はこうです。

相続財産の内容から,相続財産清算人が相続財産を管理するために必要な費用に不足が出る可能性がある場合には,相当額を予納金として納付していただくことがあります。

出典:裁判所「相続財産清算人の選任」(2026年8月15日確認)

金額の目安は、裁判所の公式ページには書かれていません。 「30万〜100万円」という数字をよく見かけますが、裁判所の公表資料では確認できませんでした。事案によって異なるため、申立てを検討する段階で家庭裁判所に確認するのが確実です。


6. 放棄以外の出口:相続土地国庫帰属制度

2023年4月27日施行の制度です。相続で取得した土地を、国に引き取ってもらえます。

使えない土地・承認されない土地

申請自体ができない(却下事由)

  • 建物がある土地(← 実家の場合、これが最初の壁です)
  • 担保権・使用収益権が設定された土地
  • 他人の利用が予定されている土地
  • 土壌汚染がある土地
  • 境界が不明確・所有権の存否や範囲に争いがある土地

申請はできるが承認されない(不承認事由)

  • 一定の勾配・高さの崖があり、管理に過分な費用・労力がかかる土地
  • 管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
  • 除去が必要な有体物が地下にある土地
  • 隣接地所有者等との紛争解決なしに管理・処分ができない土地
  • その他、通常の管理・処分に過分な費用・労力がかかる土地

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」(2026年8月15日確認)

負担金

法務省のパンフレットには「基本は20万円」と明記されています。土地の種目や所在地域によっては面積に応じて算定される場合があります。

出典:法務省 パンフレット(PDF)/負担金のページ(2026年8月15日確認)

実績:申請の半分は帰属していません

法務省が公表している統計(令和8年6月30日時点・速報値)です。

区分 件数
申請 5,698件(田・畑2,226/宅地1,973/山林868/その他631)
帰属(承認) 2,885件(宅地1,073/農用地925/森林193/その他694)
却下 83件
不承認 93件
取下げ 1,063件

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(2026年8月15日確認)

注目すべきは取下げ1,063件です。 却下(83件)と不承認(93件)を合わせた176件よりはるかに多い。審査の過程で要件を満たさないと分かり、自ら取り下げたケースが相当数あると読めます。

実家に使う場合の現実的な手順:建物があると申請できないため、先に解体する必要があります。解体費を出し、負担金20万円を払い、それでも承認される保証はない——という制度です。

売れる可能性があるなら、まず売却を検討するのが順序です。実家の売却相場を調べる3つの方法から始めてください。


7. 放棄しても受け取れるもの

生命保険の死亡保険金は、受取人が指定されていれば、放棄しても受け取れます。

国税庁 No.4114 は、死亡保険金の非課税限度額(500万円 × 法定相続人の数)について、「相続人(相続の放棄をした人や相続権を失った人は含まれません。)」が取得した場合に適用される、と説明しています。

これは、放棄した人でも保険金自体は受け取れることを前提とした記述です(受け取れるが、非課税枠は使えない)。なお、非課税限度額を計算するときの「法定相続人の数」は、相続放棄がなかったものとして数えます。

出典:国税庁 No.4114「相続税の課税対象になる死亡保険金」(2026年8月15日確認)

「死亡保険金は受取人固有の財産だから相続財産ではない」という説明は広く行われていますが、裁判所・法務省による一般向けの公式解説は確認できませんでした。実際の判断は専門家にご確認ください。


8. 放棄しないなら、登記の期限があります

相続放棄をしない=相続するなら、相続登記の申請義務が発生します。

  • 施行日:令和6年(2024年)4月1日
  • 猶予期限:施行日より前に発生していた相続については、令和9年(2027年)3月31日まで
  • 過料:正当な理由なく怠ると10万円以下(不動産登記法164条1項)

正当な理由の例(法務省Q&A):相続人が極めて多数で戸籍収集等に時間を要する/遺言の有効性や遺産の範囲に争いがある/申請義務者が重病等/DV被害者等で避難中/経済的困窮で登記費用を負担できない

出典:法務省「相続登記の申請義務化」/Q&A(2026年8月15日確認)

2027年3月31日には、登録免許税の免税措置2つも同時に期限を迎えます。この日に何が起きるかは相続登記の義務化で整理しています。


9. 判断の順序

ステップ1:3か月の期限を確認する

間に合わないなら、まず期間伸長を申し立てる。

ステップ2:財産に手を触れない

放棄の可能性がある間は、家財の処分も預金の解約もしない。

ステップ3:プラスとマイナスを並べる

マイナス側で見落とされやすいもの

  • 借入・連帯保証(信用情報の開示請求で確認できます)
  • 滞納税・滞納管理費
  • 持ち続ける維持費(年間いくらか → 空き家の維持費)
  • 解体費(→ 実家の解体費用)

プラス側で見落とされやすいもの

ステップ4:売れるかどうかを先に確かめる

放棄は、売れないと判断してからで遅くありません(3か月の期限内であれば)。逆に、放棄してしまえば売る権利も失います。

順序としては——

  1. 相場を調べる(無料・電話なし → 手順)
  2. 匿名査定で桁を確認する(→ 一括査定の使い方と、営業電話の止め方)
  3. それでも値が付かないなら、放棄・国庫帰属を検討する

ステップ5:迷ったら専門家へ

相続放棄の可否、法定単純承認に該当するかの判断は、個別性が高く、間違えると取り返しがつきません。 弁護士・司法書士にご相談ください。当サイトは個別の法律判断を行いません。

放棄を決める前に、並べておくもの マイナス側 連帯保証/滞納税/維持費/解体費 全部足す プラス側 実勢価格/解体補助金/3,000万円控除 全部足す 順序 売れるかどうかを先に確かめる 放棄は最後 放棄は、売れないと判断してからで遅くありません

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放棄するかどうかは、値段がつくかどうかで決まります

この記事の「判断の順序」で最初に来るのは、プラスの財産とマイナスの財産を数えることです。ところが実家の値段だけは、相場サイトを見ても出てきません。ラクウルは事故物件・再建築不可・共有持分・旧耐震・借地権・底地といった、ふつうの不動産会社が断る物件を専門に買い取る会社です。値段がつかないと思っていた家に金額が出ることがあるので、放棄を決める前に一度だけ確かめる価値があります。

先に、いちばん大事なことを書きます。民法921条1号が単純承認とみなすのは「相続財産の全部又は一部を処分したとき」で、何が処分にあたるかの定義は条文にありません。売買契約を結べば処分にあたり、相続放棄はできなくなります。査定を申し込んで金額を聞いた段階を処分とした裁判例は、当サイトでは確認できていません。熟慮期間中にしてよいのは金額を知るところまでで、契約は「放棄しない」と決めてからにしてください。少しでも迷うなら、契約の前に家庭裁判所か弁護士に確認を。そのうえで、①買取は仲介より手取りが下がります。②問い合わせ後、電話またはメールで物件の状況を聞かれます。③LINEからの相談は対象外です。④売却を考えていない相談は対象外です。

訳あり物件の買取価格を聞く(無料・全国対応)

金額が出たら、この記事の「判断の順序」に戻ってください。値段がつくなら、放棄しないほうが手元に残る場合があります。つかないなら、売る・貸す・持ち続けるの比較と実家の解体費用で負担の総額を出してから、3か月の期限までに決めてください。

よくある質問

ここは条文の番号まで書きます。相続放棄はやり直しがきかない手続きなので、「たぶん大丈夫」で進めないための材料を置きます。

Q. 3か月はいつから数えますか。

A. 「自己のために相続の開始があったことを知った時」からです(民法915条1項)。亡くなった日からではありません。

起算点がずれる場面が、条文に3つあります

原則 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月(915条1項)
先順位の相続人が放棄した場合 自分が相続人になったことを知った時から。兄弟姉妹に回ってくるケースでは、亡くなってから何か月も経っているのが普通です
相続人が承認も放棄もせずに亡くなった場合 その人の相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時から起算(916条)
相続人が未成年者・成年被後見人の場合 その法定代理人が知った時から起算(917条)

出典:e-Gov法令検索「民法」(2026年8月16日確認)

「もう3か月過ぎた」と思っても、あきらめる前に起算点を確かめてください。知った時がいつなのかで、結論が変わります。

Q. 期限の3か月に間に合いません。

A. 家庭裁判所に伸長を請求できます。条文に書かれています。

民法915条1項のただし書はこうです。「この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる」。手続きの名前は「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立て」です。

出典:e-Gov法令検索「民法」(2026年8月16日確認)

遠方の実家で、財産の全容が3か月では分からない——これは典型的な場面です。間に合わないと分かった時点で、期限内に申し立ててください。期限を過ぎてからでは、この条文は使えません。

Q. 放棄できなくなる行為はありますか。

A. あります。条文に「処分」と書かれていて、そして「これは処分に当たらない」という除外も条文に書かれています。

民法921条1号はこうです。

相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

つまり、条文が自分で例外を2つ挙げています。

保存行為 財産の現状を維持する行為。これは処分に当たりません
602条の期間を超えない賃貸 山林10年/それ以外の土地5年/建物3年/動産6か月。この範囲なら処分に当たりません

出典:e-Gov法令検索「民法」(2026年8月16日確認)

ただし、ここから先は正直に書きます。個別の行為が「保存行為」に当たるかどうかを、一般向けに列挙した公的な解説は見つけられませんでした。当サイトでは具体例のリストを載せません。「これは大丈夫と書いてあった」で放棄できなくなるほうが、はるかに損害が大きいからです。

放棄の可能性が少しでもあるなら、財産に手を触れないでください。触れる必要があるなら、触れる前に弁護士か司法書士に確認してください。

Q. 放棄した後なら、もう何をしても大丈夫ですか。

A. 違います。放棄した後にも、単純承認とみなされる行為が条文にあります。

民法921条3号は、限定承認または相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部もしくは一部を「隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき」は単純承認とみなす、と定めています。

出典:e-Gov法令検索「民法」(2026年8月16日確認)

「隠す」「勝手に使う」がここに入ります。実家に残っていた現金や貴金属を、放棄したあとに持ち出す——これで放棄が無かったことになり、借金も引き継ぐことになり得ます。放棄したら、その後も何も動かさないでください。

Q. 放棄したら家の管理義務は残りますか。

A. 2023年4月の民法改正で、対象が「放棄の時に現に占有している人」だけになりました。それ以前に書かれた解説は、この点が正確ではありません。

民法940条1項の全文です。

相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

出典:e-Gov法令検索「民法」(2026年8月16日確認)

この条文から読み取れることが3つあります

誰が 放棄の時に現に占有していた人だけ。遠方に住んでいて実家に住んでいなかったなら、対象になりません
いつまで 相続人または相続財産の清算人に引き渡すまで。終わりが条文に書かれています
どの程度 「自己の財産におけるのと同一の注意」。自分の持ち物と同じように扱えばよく、それ以上は求められていません

Q. 全員が放棄したら、家はどうなりますか。

A. 放棄した人のうち「現に占有していた人」が、相続財産の清算人に引き渡すまで保存し続けることになります。

答えは940条1項の中にあります。「相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間」という部分が、まさにその場面を指しています。全員が放棄すれば相続人はいないので、引き渡す相手は清算人だけになります。そして清算人は、家庭裁判所が利害関係人または検察官の請求によって選任します(952条1項)。

出典:e-Gov法令検索「民法」(2026年8月16日確認)

ここから、実務上の結論が出ます。

  • 誰も清算人の選任を申し立てなければ、引き渡す相手が現れません。つまり現に占有していた人の保存義務が、終わらないまま続きます
  • 逆に実家に住んでいなかった相続人は、そもそも940条の対象外です
  • 清算人の選任には予納金が必要になるのが一般的です。金額は事案と裁判所によって異なり、当サイトでは一律の相場を書きません(一次情報で確認できなかったため)。申立先の家庭裁判所に確認してください

「全員で放棄すれば、あとは国がなんとかしてくれる」という理解は、正確ではありません。放棄は債務を引き継がないための手続きであって、家を消す手続きではありません。

Q. 放棄と、相続土地国庫帰属制度は、どちらを先に考えますか。

A. 順番が逆になりません。両立しないからです。

相続放棄をすると、はじめから相続人でなかったことになります。国庫帰属制度は相続等で土地を取得した人が使う制度なので、放棄した人はもう使えません。

だから、判断の順番はこうなります

1 債務があるか。借金や保証債務が資産を上回るなら、放棄が本命です。土地だけの話ではなくなります
2 債務がないなら、放棄しないほうが選択肢は広い。相続したうえで、売る・国庫帰属を申請する・持ち続けるを比べられます
3 放棄すると、預貯金などのプラスの財産も受け取れません。土地を手放したいだけなら、放棄は割に合わないことがあります

制度の中身は本文の「放棄以外の出口」にまとめました。売って現金にできるなら、それがいちばん早いことも多いです。まず売却相場を自分で調べる手順で金額を知ってから決めてください。

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この記事の「7. 放棄しても受け取れるもの」で書いたとおり、相続放棄をしても、生命保険金や死亡退職金は受取人固有の財産として受け取れます。ただし税の扱いは別で、これらは相続税の計算では「みなし相続財産」として課税対象に入ります。しかも、放棄した人は「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を使えません。放棄したのに税だけ残る、という形になり得ます。

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この記事で確認できなかったこと

  • 法定単純承認(民法921条)に該当する具体的な行為の一覧:裁判所・法務省の一般向け公式解説は見つかりませんでした
  • 相続財産清算人の予納金の相場:裁判所の公式ページに金額の明示はありません
  • 死亡保険金が「受取人固有の財産」であることの法的根拠:国税庁の記述から間接的に裏付けられますが、裁判所・法務省の直接の公式解説は確認できませんでした
  • 国庫帰属の負担金が面積按分となる土地の種目一覧:法務省ページ上で画像表示のため、テキストとして確認できませんでした

本記事は一般的な情報提供であり、個別の法律相談ではありません。相続放棄には3か月という短い期限があり、一度受理されると原則として撤回できません。実際の判断にあたっては、必ず弁護士または司法書士にご相談ください。

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