空き家を処分する4つの方法|かかる費用と、先に切れる期限

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「空き家 処分」で調べている人が探しているものは、たいてい3つのどれかです。売る方法、壊す費用、そして中身の片付け。この3つは別々の話に見えて、順番を間違えると数百万円ちがってきます。

この記事では、空き家の出口を4つに分けて、それぞれいくらかかって、いつまでに動かないと選べなくなるのかを先に出します。詳しい手順は個別の記事にまとめてあるので、自分に関係する道だけ読み進めてください。

数字はすべて条文・国税庁・自治体の公式ページで確認したものです。確認できなかったことは、最後にそのまま書いています。

「処分」には4つあり、お金の向きが逆になります

まず全体像です。手元にお金が入る道と、出ていく道があります。

出口 お金の向き いちばん大きい制約
① そのまま売る 入る 買い手がつくか
② 解体して土地で売る 先に出て、あとで入る 解体費を立て替えられるか
③ 譲る・寄付する ほぼ動かない 受け取る相手が見つかるか
④ 国に返す(相続土地国庫帰属) 出る 建物があると申請すらできない

④は「タダで引き取ってもらえる制度」ではありません。最低でも21万4千円を払って、なおかつ建物を先に壊す必要があります。①から順に検討して、どれも無理だったときの最後の選択肢です。

① そのまま売る──最初に確かめるのはここです

建物が建ったまま売れるなら、これがいちばん手元に残ります。解体費を払わずに済むうえ、要件を満たせば譲渡所得から3,000万円を差し引ける特例が使えるからです。

売り方は2つあります。仲介は買い手を探してもらう方法で、相場に近い価格が狙えるかわりに時間が読めません。買取は業者が直接買う方法で、数日〜数週間で終わるかわりに手取りは仲介より下がります。どちらが向いているかは、急いでいるか、物件に難があるかで決まります。

詳しくは実家は仲介と買取どちらで売るべきかと実家の売却相場を調べる3つの方法にまとめています。

そして、査定額は売れる価格ではありません。査定はあくまで「この値段なら預かります」という業者側の提案で、そこから下がることのほうが多いです。ここを混同すると、資金計画が最初から狂います。


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まず、建ったままいくらになるかを知る

解体するかどうかは、建物付きでいくらになるかが分からないと決められません。買取なら、査定から数日で金額が出ます。空き家と中古戸建てを専門に扱っている窓口です。

①買取は仲介より手取りが下がります。相場に近い額で売りたいなら仲介を先に検討してください。②査定額は売れる価格ではありません。③匿名のAI査定では実額は出ません。桁を確かめるだけのものです。④LINEからの相談は、このリンク経由の申し込みとして扱われません。フォームから進んでください。⑤日本国外からの申し込みは対象外です。

ラクウルで買取価格を出してもらう(無料)

金額が出たら、この記事の②に戻って「解体してから売る場合」と比べてください。解体費を引いても土地のほうが高くなるかどうかは、金額を並べないと判断できません。

② 解体して土地で売る──順番を間違えると補助金が消えます

建物が古すぎて買い手がつかないとき、更地にしてから売る選択肢が出てきます。ここでほぼ全員がやってしまう順番の間違いが1つあります。

解体補助金は、業者と契約する前に申請するものがほとんどです。先に契約して工事を始めてしまうと、補助が使えた自治体でも1円も出ません。当サイトが302の市区町村を調べた範囲で、この「契約前申請」はほぼ共通していました。

自分の市区町村に制度があるかどうかは、空き家の解体補助金 全国302自治体一覧で確認できます。制度が無いと確認できた自治体も、無いと書いてあります。

費用の目安と、見積書のどこを見るかは実家の解体費用はいくら?にあります。アスベストの調査費は施主負担で、届出義務も施主にあります。ここは業者任せにできません。

そして更地にすると、翌年から固定資産税が上がります。ただし「6倍」ではありません。計算すると最大でも4.2倍です。解体してすぐ売れない可能性があるなら、この1年分を先に見積もってください。

建物を壊しても、3,000万円の特例は使えます。ただし要件があり、期限もあります。空き家の3,000万円特別控除で先に判定してください。

解体費の補助が出る自治体か、先に確認してください

②の道を選ぶなら、順番を間違えないことがすべてです。全国394自治体のうち256自治体が空き家名目で解体費の補助を出しています。上限額の大きい順に挙げます。

自治体上限額
北海道札幌市850万円
岡山県岡山市(地域活性化除却)200万円
東京都墨田区最大200万円
東京都板橋区200万円
秋田県大仙市危険型200万円/迷惑型100万円/…
兵庫県たつの市160万円(市税条例第24条第1項に…
兵庫県丹波市160万円(判定100点以上。50点…
愛媛県松山市160万円
香川県三豊市160万円
北海道札幌市(地域連携型)150万円
東京都杉並区150万円
山形県米沢市市町村民税所得割が非課税なら最大12…

該当は全部で256自治体です。全国の一覧表で実家のある市区町村を確認してください。

くり返しになりますが、ほとんどの自治体で交付決定より前に工事を契約すると対象外です。解体業者を探すより先に、市役所に電話してください。

③ 譲る・寄付する──受け取ってくれる相手は、簡単には見つかりません

「タダでもいいから誰かに引き取ってほしい」という相談は多いのですが、ここがいちばん期待と現実が離れます。

空き家バンクは、自治体が空き家情報を載せる仕組みです。ただし当サイトが数字を確認したところ、放置されている空き家の99.5%は、そもそもバンクに載っていません。8年かけて成約したのは全国で約26,000件。参加自治体の3分の1は、物件を1件も載せていませんでした。詳しくは空き家バンクは売れるのかにあります。

自治体への寄付も、原則として通りません。ただし例外があります。当サイトが確認した範囲では、長崎市の「老朽危険空き家対策事業」は、土地・建物を市に寄附することが必須条件の制度でした。西宮市の解体補助にも、跡地を地縁団体が10年間使用・管理することへの承諾を求めるものがあります。

これらは「引き取ってもらえる」制度ですが、土地も手放すことになります。解体費が浮くかわりに、あとで売る道が消えます。土地を残したい場合は選んではいけません。

隣の家の人に打診する、という手もあります。隣地を買うと自分の土地が広く使えるようになるため、まったくの第三者より買う理由があります。ただし境界が決まっていないと話が進みません。実家の境界が決まっていないを先に読んでください。

④ 国に返す──建物が建っていたら、申請すらできません

2023年4月に始まった相続土地国庫帰属制度です。名前から「いらない土地を国が引き取ってくれる」と読めますが、条文はそう書いていません。

審査手数料 土地1筆につき14,000円(施行令3条)
負担金 原則20万円(施行令5条1項4号)
最低でも 21万4千円
建物がある土地 申請できない(法2条3項1号)
標準処理期間 8か月
タダで引き取ってはもらえません 21万4千円 最低でも 審査手数料 14,000円 負担金 20万円 却下でも不承認でも、手数料は返りません

手数料は、却下されても不承認でも取り下げても返ってきません。書面調査・実地調査・関係機関への照会という審査コストが実際に発生するためです。「とりあえず出してみる」は、1筆14,000円の賭けになります。

そして建物が建っていたら申請できません。登記の有無は関係ありません。つまり②の解体を先に済ませる必要があり、解体費に加えて21万4千円を払うことになります。

詳しい条件と、実際にどのくらい通っているのかは相続土地国庫帰属制度にあります。相続放棄とどちらが良いかも、そこで比べています。

★「申請できない土地」は、建物のほかに4つあります

建物があると申請できないことは、上に書きました。条文は、それを含めて5つ並べています。

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第二条第三項
承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。
一 建物の存する土地
二 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
三 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
四 土壌汚染対策法第二条第一項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地
五 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

出典:e-Gov法令検索 相続土地国庫帰属法第2条第3項(全文を開いて確認/2026年9月3日)

三号の「政令で定めるもの」も、施行令が具体的に書いています。

同法施行令第二条
法第二条第三項第三号の政令で定める土地は、次に掲げる土地とする。
一 現に通路の用に供されている土地
二 墓地内の土地 三 境内地 四 現に水道用地、用悪水路又はため池の用に供されている土地

出典:e-Gov法令検索 同法施行令第2条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

実家の土地で引っかかりやすいのは、二号と五号です

二号は「担保権」です。親の住宅ローンが完済していても、抵当権の抹消登記をしていなければ登記簿に残ります。登記簿上まだ抵当権が付いている土地は、この号に当たります。

五号は「境界が明らかでない土地」です。古い住宅地では、境界標が失われていたり、隣と言い分が違ったりします。ここでつまずく実家は少なくありません。境界確定には測量費が別にかかります。

国に返せない土地は、5種類あります 建物の存する土地 1号。登記の有無は関係ない 先に解体 担保権などがある 2号。抵当権の抹消もれ 登記簿を見る 通路・墓地・境内地 3号と施行令2条 使われている 土壌汚染がある 4号。特定有害物質 調査が要る 境界が明らかでない 5号。争いがある土地も 測量が要る 通っても、次に5条1項の審査があります

ここを通っても、次に「不承認」の関門があります

2条3項は入口の門前払いです。通っても、そのあと審査で落ちることがあります。

同法第五条第一項
法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。
一 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
二 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
三 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
四 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
五 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

出典:e-Gov法令検索 相続土地国庫帰属法第5条第1項(全文を開いて確認/2026年9月3日)

一号の「崖」の基準も、施行令に数字で書かれています。勾配が30度以上で、かつ高さが5メートル以上。この両方に当たる崖がある土地です(施行令4条1項)。

三号の「地下」に注意してください。古い実家では、使わなくなった浄化槽や、地中に残った基礎、井戸が地下に残っていることがあります。解体のときに撤去しておかないと、ここで止まります。

つまり関門は2段です。2条3項で門前払い、5条1項で不承認。手数料14,000円は、どちらで落ちても返ってきません。

どの道を選んでも、中身の片付けは先に来ます

4つのどれを選んでも、家財を出す作業からは逃げられません。売るなら引渡しまでに、解体するなら着工までに、空にする必要があります。

その前に、絶対に捨ててはいけない紙があります。親が家を買ったときの売買契約書です。これが無いと、売ったときの取得費を売却価格の5%として計算することになり、税金が数百万円変わります。権利証・購入時の領収書・登記関係の書類も同じ箱にまとめてください。

片付けの費用の目安と、業者選びで確かめる項目は遺品整理の費用にあります。業者の半数は、家庭のごみを運ぶ許可を持っていません。ここは金額より先に確認する部分です。なお仏壇だけは扱いが別で、置いたまま解体しても処分の責任は所有者に残ります。順番と費用は仏壇じまいの費用と手順にまとめました。

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期限に間に合わせるなら、解体の見積りも同時に動かす

片付けが終わってから解体を探すと、順番の分だけ時間が減ります。見積りは、家の中が片付いていなくても取れます。期限のあるものから逆算してください。

①同社サイトには「ご利用は無料。ご成約後の請求も一切ございません」と書かれています。
②同社は「契約まで、業者からご連絡がいくことはございません」と説明しています。
③申し込みには物件の情報と写真が要ります。遠方の実家で写真が手元にないなら、次に帰ったときに外観と傷んでいる箇所を撮っておいてください。
④解体する予定がないなら申し込まないでください。重複した申込や、連絡先が実在しない申込は無効と明記されています。
⑤1社の見積りだけで決めないでください。地元の解体業者にも自分で1社あたって、金額の桁が合っているかを確かめてください。
⑥解体補助金を使う予定があるなら、契約・着工の前に自治体へ申請してください。着工後の申請は原則として通りません。

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見積書のどこを見るかは、この記事の見積書の章に戻って確認してください。お住まいの自治体の制度を先に調べておくと、受付期間に間に合うかどうかも一緒に分かります。

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「解体して土地で売る」を選ぶなら、費用の幅を先に

この記事の②で書いたとおり、順番を間違えると補助金が消えます。そのうえ解体費そのものも、業者によって数十万円変わります。4つの方法を並べて比べるには、「補助が使えるか」と「解体費がいくらか」の2つの数字が要ります。どちらも自分で動かないと出てきません。

①更地にすると住宅用地特例が外れ、翌年から土地の固定資産税が上がります。売れるまでの期間が読めないなら、その負担も4つの比較に入れてください。
補助金を使う予定があるなら、見積りより先に自治体へ連絡してください。当サイトが調べた331自治体では、ほぼすべての制度が「交付決定の前に契約・着工したら対象外」です。
複数の業者から連絡が来る仕組みです。電話を受ける時間が取れないなら、希望する連絡手段を備考欄に書いてください。
いちばん安い1社をそのまま選ばないでください。マニフェスト(産業廃棄物管理票)の写しを出せるか、建設リサイクル法の届出を代行するか。安すぎる見積りは、ここを省いていることがあります。
サービス内容の説明は同社サイトの記載であって、当サイトが確かめた事実ではありません。

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★共有だと、4つの道が同じところで止まります

兄弟で相続した実家は、遺産分割が終わるまで全員の共有です。そして4つの道は、どれも同じ場所で止まります。

民法は、共有物にすることを2つに分けています。

民法第二百五十一条(共有物の変更)
1 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

民法第二百五十二条(共有物の管理)
1 共有物の管理に関する事項……は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。
2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
一 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
二 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。

出典:e-Gov法令検索 民法第251条・第252条(全文を開いて確認/2026年9月3日)。第252条第1項および第3項以下は一部を省略しています

ここから3つ、実務的に効くことが出ます

①「変更」は同意、「管理」は持分の過半数です。解体は建物をなくす行為で、251条1項の「変更」に当たります。過半数では足りません。一方、草刈りや簡単な修繕のような管理は、持分の過半数で決められます。

②連絡が取れない共有者がいても、道はあります。251条2項と252条2項1号が、裁判所の裁判という形で用意されています。ただし「裁判所」です。時間も費用もかかり、自分たちだけでは終わりません。

③返事をしない共有者には、催告という手があります。252条2項2号は、相当の期間を定めて賛否を明らかにするよう催告し、その期間内に返事がなければ、その人を除いた過半数で管理を決められる旨の裁判ができると書いています。「連絡は取れるが返事をしない」に効くのは、この号です。

同意が要るのは「変更」です 変更するとき 全員の同意が要る 解体はこちら 251条1項 軽微な変更は除く 管理するとき 持分の過半数 草刈りや修繕 252条1項 全員でなくてよい 連絡が取れない人がいるときは裁判所へ

④の国庫帰属は、共有だと全員でなければ申請できません

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第二条第二項
土地が数人の共有に属する場合には、前項の規定による承認の申請……は、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができる。

出典:e-Gov法令検索 相続土地国庫帰属法第2条第2項(全文を開いて確認/2026年9月3日)

「全員が共同して行うときに限り」です。1人でも欠けたら申請そのものができません。解体(251条1項の変更)も全員、国への申請も全員。共有のまま4つの道を進もうとすると、必ずここに当たります。

だから、遺産分割を先に終わらせるほうが早いことが多いのです。同意が要ることと要らないことの切り分けは、実家が兄弟の共有になっているにまとめています。

先に切れる期限が3つあります

空き家の処分でいちばん多い失敗は、迷っているうちに使えたはずの制度が切れることです。

期限 中身
2027年3月31日 相続登記の義務化。3年の猶予が切れる(詳細)
2027年12月31日 空き家の3,000万円控除そのものの適用期限(令和9年12月31日)。相続から3年の期限より、こちらが先に来る人が多い(詳細)
3年10か月 取得費加算の特例。相続税を払った人だけ(詳細)

3,000万円控除と取得費加算は、どちらか一方しか選べません。両方の条件を満たす人は、金額を計算して有利なほうを選ぶことになります。

それとは別に、放置していると市区町村から勧告を受けた時点で、土地の住宅用地特例が外れます。2023年の改正で、特定空家になる前の「管理不全空家等」の勧告でも外れるようになりました。特定空家に指定されるとどうなるに段階ごとに整理してあります。

★登記の期限は2つあり、どちらも過料10万円です

上の3つの期限は、制度が使えなくなる期限です。もう1種類、罰のある期限があります。登記です。

不動産登記法第七十六条の二(相続等による所有権の移転の登記の申請)
1 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
2 前項前段の規定による登記……がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

不動産登記法第五十七条(建物の滅失の登記の申請)
建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人……は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。

出典:e-Gov法令検索 不動産登記法第76条の2・第57条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

この2つは、罰則が同じ条文に並んでいます。

不動産登記法第百六十四条(過料)
1 ……第五十七条、……第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。
2 第七十六条の五の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、五万円以下の過料に処する。

出典:e-Gov法令検索 不動産登記法第164条(全文を開いて確認/2026年9月3日)。第1項は多数の条文を列挙しており、この記事に関係する部分だけを抜いています

この記事の4つの道に、そのまま効きます

①解体したら、1か月です(57条)。②の「解体して土地で売る」を選んだ人は、工事が終わった時点でこの期限が動き出します。3年ではなく1か月。登録免許税はかからず、自分でもできます。

②遺産分割が終わったら、そこからまた3年です(76条の2第2項)。法定相続分で先に登記していても、あとで分割して取り分が増えたなら、分割の日から3年以内に登記し直す義務があります。「一度登記したから終わり」ではありません。

③間に合わないときの逃げ道が、条文に用意されています。

不動産登記法第七十六条の三(相続人である旨の申出等)
1 前条第一項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
2 前条第一項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、……所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。

出典:e-Gov法令検索 不動産登記法第76条の3(全文を開いて確認/2026年9月3日)

相続人申告登記です。遺産分割がまとまらないまま3年が来そうなときに、「自分は相続人です」と申し出ておけば、その分の義務は果たしたものとみなされます。ただし所有権の登記そのものではないので、これで売れるようにはなりません。過料を避けるための手続きです。

登記の期限は、3年と1か月です 1 相続の開始 所有権はこの時から。民法896条 2 3年以内 相続登記。76条の2第1項 3 遺産分割 分割の日からまた3年。同2項 4 解体 ②の道を選んだとき 5 1か月以内 ★建物滅失登記。57条

そして、登記がないと売れません

民法第百七十七条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

出典:e-Gov法令検索 民法第177条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

買主に所有権を移すには、その前に相続人名義になっている必要があります。「登記していなくても所有者ではある」(民法896条)ことと、「登記がなければ第三者に対抗できない」(177条)ことは、両立します。①も②も③も、最後は登記の話に戻ってきます。

よくある質問

相続登記をしていなくても、処分できますか

売ることはできません。買主に所有権を移す前提として、まず相続人名義に登記されている必要があります。解体は登記がなくてもできますが、そのあと売る段階で必ず必要になります。

兄弟の共有になっています。1人で決められますか

全体を売るには共有者全員の同意が必要です。自分の持分だけなら単独で売れますが、価格は大きく下がり、関係も壊れます。実家が兄弟の共有になっているで、同意が要ることと要らないことを分けています。

親が認知症です。売れますか

本人に判断能力がない状態では売れません。認知症の親の家は売れませんに3つの道をまとめています。

いちばん早く終わる方法はどれですか

買取です。査定から数日〜数週間で現金化まで進みます。ただし手取りは仲介より下がります。時間を買う方法だと考えてください。

この記事で確認できなかったこと

  • 建物滅失登記を自分でやる——解体から1か月以内。登録免許税はかからず、自分でできます
  • 実家の片付けで捨ててはいけない書類9つ——電気の「使用中止日」が分かる紙まで要ります
  • 自治体が個人の空き家の寄付を受け入れる条件は、統一的に確認できていません。長崎市と西宮市のように制度の一部として引き取る例は確認しましたが、「一般に寄付できるか」を全国で調べたわけではありません。お住まいの市区町村に直接確認してください。
  • 隣地所有者への売却で、実際にどのくらい成約しているかの統計は見つかりませんでした。手段として存在することは確かですが、確率は書けません。
  • 買取価格が仲介より何割下がるかは、物件ごとに違います。一般に言われる「7割」という数字の出典を、当サイトでは確認できていません。大手の決算から逆算した記事はありますが、それも1つの推計です。
  • 過料が実際にどれくらい科されているかは、確認できていません。不動産登記法164条1項に「十万円以下の過料」と書かれていることは条文で確認しましたが、運用の統計にはあたれていません。
  • 相続土地国庫帰属法5条1項5号の「政令で定めるもの」は、施行令4条3項の一部しか読んでいません。2条3項と5条1項の各号、施行令2条と4条1項は全文を確認しています。
  • この記事に監修者はいません。数字はすべて条文・国税庁・自治体の公式ページで確認していますが、個別の判断は税理士・司法書士・市区町村の窓口で確認してください。

まとめ

  1. ①建ったまま売るから順に検討する。手元に残る額がいちばん大きい
  2. ②解体するなら、業者と契約する前に補助金を申請する。先に契約すると使えない
  3. ③タダで引き取ってもらう道は、期待するほど広くない。空き家バンクに載っているのは放置空き家の0.5%
  4. ④国に返すのは最後の手段。最低21万4千円かかり、建物があると申請すらできない
  5. 売買契約書を捨てない。無いと税金が数百万円変わる
  6. 2027年に期限が2つ重なる。3月31日に相続登記、12月31日に3,000万円控除

迷っている時間そのものが、選べる道を減らしていきます。まず、建ったままいくらになるかを知るところからです。

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