投稿者: 実家じまいナビ編集部

  • 法定相続情報一覧図は、作り方を間違えると使えません|法務局の記載例14種類と、相続税・年金で弾かれる条件

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    相続の手続きは、同じ戸籍の束を、銀行と法務局と税務署に順番に持ち回ることになります。1か所終わるまで、次に進めません。

    それを1枚の紙に置き換えるのが法定相続情報証明制度です。法務局が戸籍を確認して、相続人が誰かを証明した紙を、無料で、必要な通数だけ出してくれます。

    ただし、この記事で書きたいのはそこではありません。★この一覧図は、作り方を間違えると、肝心なところで使えません。

    法務局が用意している様式のうち1つを選ぶと、相続税の申告には使えなくなります。続柄の書き方を間違えても、同じことが起きます。そして令和6年に始まった「法定相続情報番号」は、不動産登記でしか使えません。

    当サイトは、法務省・法務局・国税庁・日本年金機構の公表資料を突き合わせて、どこで弾かれるのかを1つずつ確認しました。

    最終更新:2026年8月28日

    結論だけ先に

    • ★手数料は無料です。法務省は「交付に当たり、手数料は徴収しない」と書いています。必要な通数だけ出せます。
    • ★トラップ①:法務局が用意している「列挙形式」を選ぶと、相続税の申告に使えません。国税庁が図形式に限るとしているためです。
    • ★トラップ②:子の続柄を「子」と書くと、相続税の申告に使えません。「長男」「長女」「養子」と戸籍どおりに書く必要があります。
    • ★トラップ③:令和6年4月1日に始まった「法定相続情報番号」は、不動産登記の手続だけ。銀行でも税務署でも使えません。
    • 法務局が公表している記載例は14種類。うち2つは「家督相続」——明治民法の時代の相続が、まだ処理されずに残っている家のためのものです。
    • 年金でも令和2年10月26日から使えます。ただし寡婦年金の請求など、使えない手続きが2つあります。

    この記事は法務省・法務局・国税庁・日本年金機構の公表資料だけを根拠にしています。当サイトに司法書士・税理士はいません。実際の申出で何が必要になるかは、家族構成と戸籍の状態で変わります。管轄の法務局に確認してください。

    1. 何が変わるのか

    制度を使わない場合、戸籍の束は1か所ずつ回すことになります。返してもらってから、次へ。

    戸籍の束を回すか、一覧図を配るか 順番に回すか、同時に出すか 法務局の資料をもとに当サイトが作図 制度を使わない 戸籍の束 A銀行 B銀行 法務局 返却を待たないと、次に進めません 制度を使う 一覧図の写し A銀行 B銀行 法務局 必要な通数を無料で交付。同時に出せます 保管は5年。その間は再交付も無料です
    法務省民事局「法定相続情報証明制度について」および法務局の資料をもとに当サイトが作図

    法務省民事局の資料は、制度の位置づけをこう書いています。

    認証文付きの法定相続情報一覧図の写しが戸籍の束に代替し得るオプションとして機能する

    そして手数料について、はっきりこう書かれています。

    交付に当たり、手数料は徴収しない

    無料です。しかも通数の上限が示されていません。銀行が3行、証券会社が1社、法務局、税務署——必要な数だけもらえます。

    5年間は、再交付も受けられます

    一覧図は法務局に保管されます。保管期間は5年間(申出日の翌年から起算)。その間は再交付ができます。ただし再交付を受けられるのは、当初の申出人だけです。

    兄が申出人になったなら、弟は再交付を頼めません。あとから必要になる可能性を考えて、最初に多めにもらっておくほうが早い。

    出典:法務省民事局「〜法定相続情報証明制度について〜」(平成30年4月1日改訂)/法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」

    2. 申出書には「何に使うか」を書く欄があります

    申出書(別記第1号様式)には「利用目的」の欄があり、選択肢が印刷されています。

    申出書に印刷されている利用目的
    不動産登記
    預貯金の払戻し
    相続税の申告
    年金等手続
    その他( )
    「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」(別記第1号様式)から

    ★ここで「相続税の申告」に印を付けるなら、一覧図の書き方が変わります。順に見ます。

    3. ★トラップ①:列挙形式を選ぶと、相続税で使えません

    法務局は一覧図の様式を2通り用意しています。家系図のように線でつなぐ「図形式」と、相続人を箇条書きに並べる「列挙形式」です。

    どちらも法務局は受け付けます。相続登記でも預貯金でも使えます。

    ところが国税庁のリーフレットは、こう書いています。

    列挙形式では相続人の法定相続分が確認できない場合もあるため

    ★相続税の申告書に添付できるのは、図形式のものだけです。

    形式 相続登記 預貯金 相続税の申告
    図形式 使える 使える 使える
    列挙形式 使える 使える 使えない
    法務局の様式と、国税庁「平成30年4月」リーフレットの記載から当サイトが整理

    相続税がかからない家なら、列挙形式でも困りません。でも基礎控除を超えるかどうかは、不動産の評価が出るまで分からないことがあります。迷うなら図形式にしておくほうが安全です。

    4. ★トラップ②:「子」と書くと、相続税で使えません

    もう1つ、もっと見落とされやすいものがあります。続柄の書き方です。

    一覧図には、相続人が被相続人とどういう関係かを書きます。法務局は「子」という書き方でも受け付けます。

    国税庁のリーフレットは、こう書いています。

    子の続柄が、実子又は養子のいずれであるかが分かるように記載されたものに限ります

    つまり「長男」「長女」「養子」と、戸籍上の続柄で書かれている必要があります。単に「子」と書かれた一覧図は、相続税の申告には使えません。

    相続税の申告で一覧図を使うための条件 相続税で使うための3条件 平成30年4月1日以後に提出する申告書から 1 図形式であること 列挙形式は不可 2 続柄が戸籍どおりであること 「子」では不可。長男・長女・養子 3 養子がいるなら戸籍も添付 その養子の戸籍謄本または抄本 1つでも欠けると、戸籍の束が必要になります
    国税庁「平成30年4月」リーフレットの記載から当サイトが作成

    そして3つ目の条件があります。

    (養子がいる場合は)その養子の戸籍の謄本又は抄本の添付も必要です

    ★一覧図を作っても、養子がいるなら戸籍が1通は残る、ということです。「これ1枚で全部済む」とは書かれていません。

    この取扱いは平成30年4月1日以後に提出する申告書から適用されています。法務局側も、令和2年10月26日の案内でこう書いています。

    戸籍に記載される続柄を記載いただくことで、原則として相続税の申告書の添付書類に法定相続情報一覧図をお使いいただけます。

    出典:国税庁・国税局「平成30年4月」リーフレット/法務局「法定相続情報証明制度の利用範囲の拡大について」

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    図形式にすべきかどうかは、相続税で決まります

    相続税の申告が要るかどうかで、一覧図の作り方が変わります。列挙形式で作ってしまうと、あとで作り直すことになります。要るか要らないかの見当は、財産のおおよその総額が分かれば付きます。税理士ドットコムは全国5,900名以上の税理士から、相続に強い人を無料で紹介する窓口です。運営は東証プライム上場の弁護士ドットコム株式会社。紹介と相談は無料で、複数の税理士を比較してから選べます。

    申し込む前に3つだけ確認してください。①紹介は無料ですが、実際に依頼したあとの報酬は税理士ごとに違います。見積りを取ってから決めてください。
    ②コーディネーターから電話またはメールで連絡が入り、相続財産の内容と地域を聞かれます。亡くなった日、相続人の人数、おおよその財産額を答えられるようにしておくと早く終わります。
    ③相続税の申告期限は10か月です。期限が近いなら、その旨を最初に伝えてください。

    贈与と相続でどちらが安いか、試算してくれる税理士を探してもらう(無料・全国)

    申告が要らないと分かれば、一覧図の形式で悩む必要もなくなります。順番はこちらが先です。

    5. ★トラップ③:法定相続情報番号は、不動産登記だけ

    令和6年4月1日から、新しい仕組みが動いています。

    一覧図の写しには、右肩に「法定相続情報番号」が印字されます。法務局はこれを、こう説明しています。

    法定相続情報を識別するために登記官によって付される番号

    この番号を申請書に書けば、一覧図の写しそのものを付けなくてよくなります。さらに、一覧図に相続人の住所が記載されていれば、住所を証する書面の添付も省略できます。

    ここまで読むと万能に見えます。★でも法務局は、使える場面をはっきり限定しています。

    不動産登記の申請等手続のみ

    手続き 一覧図の写し 法定相続情報番号
    相続登記(不動産登記) 使える 使える
    預貯金の払戻し 使える 使えない
    相続税の申告 条件つきで使える 使えない
    年金等の手続 使える 使えない
    法務局「法定相続情報番号の提供による相続登記等における戸籍謄本等の添付省略」の記載から当サイトが整理

    番号だけ控えて一覧図を捨てる、ということはできません。銀行も税務署も年金事務所も、紙を見ます。

    もう1つ、期限に関わる注意があります。申出から5年以上経過すると、番号が使えない場合があります。保管期間と同じ5年です。また、相続人が引っ越していたり、遺産分割を伴う場合には、別途書面が要ります。

    出典:法務局「法定相続情報番号の提供による相続登記等における戸籍謄本等の添付省略について」(令和6年4月1日以降)

    6. ★法務局の記載例は14種類あります

    「うちの家族構成でどう書けばいいのか」は、法務局が公表している記載例で確認できます。当サイトが数えたところ、14種類ありました。

    法務局が公表している記載例14種類の内訳 記載例は14種類 法務局のページを当サイトが分類・集計 配偶者・子 6種 兄弟姉妹 2種 代襲・再代襲 2種 家督相続 2種 養子がいる 1種 列挙形式 1種 赤=選ぶと相続税で使えない/明治民法の相続
    法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」を当サイトが分類して集計(2026年8月時点)
    自分の家の状況 用意されている記載例
    配偶者と子がいる 配偶者・子(1人〜4人まで対応)
    子だけ(配偶者が先に死亡) 子(1人〜4人まで対応)
    子が5人以上いる 子が多数で一覧図が複数枚にわたる場合
    子がおらず、親が健在 配偶者・親1名/配偶者・親2名
    子も親もおらず、兄弟姉妹 配偶者・兄弟姉妹(1人〜3人まで対応)
    異母(異父)の兄弟姉妹がいる 父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹がいる場合
    子が先に亡くなり、孫が相続する 代襲相続が生じている場合
    孫も先に亡くなっている 再代襲が生じ、複数枚にわたる場合
    養子がいる 配偶者及び子(実子2人、養子1人)である場合
    婚外子がいる(平成25年9月4日以前の相続) 嫡出でない子がいる場合
    ★祖父名義のまま、戦前の相続が残っている 隠居による家督相続/死亡による家督相続
    法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」の項目名を、当サイトが家族構成の側から並べ直したもの

    ★注目したいのは、「家督相続」の記載例が2種類あることです。

    家督相続は、昭和22年に廃止された明治民法の制度です。それでも記載例が用意されているのは、戦前に亡くなった人の相続が、まだ登記されずに残っている家があるからです。祖父名義のままの実家で書いたとおり、名義を放置すると相続人が増え続けます。法務局が様式まで用意している、ということ自体が、その多さを表しています。

    なお、Excel様式とPDFの記載例が両方公開されているので、Excelをダウンロードして書き換えるのがいちばん早いです。

    出典:法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」(当サイトが2026年8月に確認・分類)

    7. どこに、誰が、何を出すのか

    申出先は4か所から選べます

    法務局はどこでもいいわけではありませんが、4つの選択肢があります。

    申出ができる登記所 実家じまいでの意味
    被相続人の本籍地(死亡時の本籍) 戸籍を取る場所と同じことが多い
    被相続人の最後の住所地 実家のある土地
    申出人の住所地 あなたが住んでいる場所。遠方でも動かなくて済みます
    被相続人名義の不動産の所在地 実家や、畑・山林のある場所
    法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」から作成

    ★「申出人の住所地」が選べるのが大きい。実家が遠方でも、自分の住んでいる街の法務局で完結できます。郵送でも受け付けられます。

    申出人になれるのは相続人。代理人は親族と8つの資格

    申出人になれるのは「被相続人の相続人(当該相続人の地位を相続により承継した者を含む。)」です。

    代理人は、法定代理人のほかに次の範囲と決められています。

    ①民法上の親族、②資格者代理人(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士及び行政書士に限る。)

    8つの資格が名指しされています。相続の相談先としてよく出てくる顔ぶれが、ほぼ入っています。親族でもよいので、兄が申出人、弟が代理人、という形もとれます。

    出す書類

    申出書には、返却を受ける書類の欄が印刷されています。そこに並んでいるのが、実際に必要になる書類です。

    書類 何のためか
    戸籍全部事項証明書・除籍事項証明書・戸籍謄本 被相続人の出生から死亡までをつなぐ
    除籍謄本・改製原戸籍謄本 古い戸籍をさかのぼる
    戸籍の附票の写し/除票の写し 住所の履歴を確認する
    住民票の写し/住民票の除票の写し 被相続人の最後の住所を証明する
    「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」(別記第1号様式)の返却書類欄から作成

    結局、戸籍は一度は集めます。この制度は「戸籍を集めなくていい制度」ではなく、「集めた戸籍を、何度も持ち回らなくていい制度」です。ここを取り違えると、期待が外れます。

    令和2年10月26日からは、被相続人の最後の本籍も、申出人の選択で記載できるようになりました。

    出典:法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」/同「利用範囲の拡大について」/申出書の様式

    8. 年金でも使えます。ただし2つ使えません

    日本年金機構は、令和2年10月26日から一覧図の写しを受け付けています。

    被相続人の死亡に起因する年金等手続き(遺族年金、未支給年金及び死亡一時金等の請求に係る手続き)

    ここまでは、よく紹介されています。★使えない手続きが2つ書かれていることは、あまり知られていません。

    年金の手続き 一覧図の写し
    遺族年金の請求 使える
    未支給年金の請求 使える
    死亡一時金等の請求 使える
    死亡に起因しない老齢基礎年金等の請求 使えない
    寡婦年金の請求 使えない(婚姻期間の確認が必要なため)
    日本年金機構「『法定相続情報一覧図の写し』が年金手続きの添付書類として使用できるようになりました」から作成

    寡婦年金で使えない理由が、制度の性質をよく表しています。一覧図は「相続人が誰か」を証明する紙であって、「いつ結婚したか」を証明する紙ではないからです。婚姻期間を見る手続きでは、戸籍そのものが要ります。

    出典:日本年金機構の案内(令和2年10月26日から)

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    紙が揃ったら、次に決まるのは実家の金額です

    一覧図ができると、相続登記も預貯金の払戻しも動き始めます。そのあとに必ず来るのが「実家をどうするか」です。売るか、貸すか、持ち続けるか——判断の起点は、いくらで売れるのかという金額です。一括査定なら、複数の不動産会社の査定額を一度に取り寄せられます。

    申し込む前に4つだけ確認してください。①申し込めるのは名義人か、そのご親族です。相続した実家なら、相続人であるあなたが申し込めます。
    ②申し込むと不動産会社から電話またはメールで連絡が入ります。所在地・築年数・間取りを答えられるようにしておくと早く終わります。
    ③相続登記が済んでいなくても査定は受けられますが、売却の契約には登記が必要です。登記の期限は3年です。
    ④査定額は「売れる価格」ではありません。実際の成約価格はここから動きます。

    ラクウルで、実家の買取価格を出してもらう(無料・全国)

    査定額が出たら、相続登記の3年の期限と並べて予定を立てられます。

    9. 一覧図に「書かれないもの」があります

    法務局の説明は、この制度が何を証明する紙なのかをこう書いています。

    登記官が内容を確認した上で、法定相続人が誰であるのかを一覧にして

    ★「法定相続人が誰か」であって、「誰が何を取るか」ではありません。

    だから一覧図には、遺産分割の結果は反映されません。実家を長男が取ることに決まっていても、一覧図には相続人が全員載ります。

    やりたいこと 一覧図で足りるか
    相続人が誰かを証明する 足りる
    誰が実家を取るかを証明する 足りない。遺産分割協議書が要る
    相続放棄をした人がいることを示す 足りない。家庭裁判所の証明書が要る
    婚姻期間を示す 足りない(寡婦年金で使えない理由)
    制度の趣旨と各機関の案内から当サイトが整理。個別の可否は窓口で確認してください

    「一覧図さえあれば全部済む」ではありません。戸籍の束を持ち回る手間が消えるだけで、話し合いの結果を示す紙は別に要ります。

    10. 動く順番

    1. 相続税の申告が要りそうかを、先に見当をつける。要りそうなら図形式・戸籍どおりの続柄で作ります。基礎控除の境目で判断できます。
    2. 被相続人の出生から死亡までの戸籍を集める。ここは制度を使っても省けません。
    3. 自分の家に合う記載例を、法務局の14種類から選ぶ。Excelがあるので書き換えるだけです。
    4. 申出先を4か所から選ぶ。遠方なら自分の住所地の法務局が使えます。郵送も可能です。
    5. 通数を多めに頼む。無料です。再交付を頼めるのは当初の申出人だけなので、兄弟の分も一度にもらいます。
    6. 相続税の申告に使うなら、養子の戸籍が別に要るかを確認する。

    やってはいけないこと

    • 深く考えずに列挙形式を選ぶ。相続税の申告に使えなくなります。迷ったら図形式です。
    • 続柄を「子」と書く。法務局は通しますが、相続税の申告で弾かれます。「長男」「長女」「養子」と書いてください。
    • 法定相続情報番号があるから紙は要らない、と考える。番号が使えるのは不動産登記だけです。
    • 1通だけもらって使い回す。無料なので、金融機関の数だけもらってください。再交付を頼めるのは当初の申出人だけです。
    • 「戸籍を集めなくていい制度」だと思う。集めた戸籍を提出して、はじめて作ってもらえます。
    • 遺産分割の結果が載っていると思い込む。載りません。協議書は別に要ります。
    • 5年放置してから番号を使おうとする。保管期間は5年です。

    よくある質問

    Q. 費用はいくらかかりますか?

    一覧図の交付は無料です。法務省は「交付に当たり、手数料は徴収しない」と書いています。ただし戸籍の取得には市区町村の手数料がかかります。登記事項証明書の手数料など、法令で決まっている費用は実家じまいは、結局いくらかかるのかにまとめました。

    Q. 何通までもらえますか?

    公表資料に上限の記載は見当たりませんでした。申出書に「必要な写しの通数」を書く欄があります。金融機関の数+法務局+税務署+年金事務所を数えて、多めに頼んでください。

    Q. 実家が遠方です。現地の法務局に行かないとだめですか?

    いいえ。申出先は被相続人の本籍地・最後の住所地・申出人の住所地・不動産の所在地の4つから選べます。自分の住所地が使えます。郵送でも受け付けられます。

    Q. 相続税の申告に使えますか?

    使えます。ただし3つ条件があります。①図形式であること、②子の続柄が「長男」「長女」「養子」など戸籍どおりであること、③養子がいる場合はその養子の戸籍謄本または抄本も添付すること。平成30年4月1日以後に提出する申告書からの取扱いです。

    Q. 相続放棄をした人がいます。一覧図はどうなりますか?

    一覧図は「法定相続人が誰か」を示すものです。放棄をしたことを示す紙は別に必要になります。相続放棄を検討している段階なら、放棄の3か月の期限を先に確認してください。

    Q. 祖父の名義のままです。使えますか?

    使えます。法務局は「隠居による家督相続」「死亡による家督相続」の記載例まで用意しています。戦前の相続が残っている家が実際にあるということです。祖父名義のままの実家に、相続人が何人まで増えるかを書きました。

    Q. 銀行によっては受け付けてくれないのでは?

    当サイトは、個別の金融機関の取扱いを調べていません。制度上は戸籍の束の代替として使えますが、窓口ごとに追加書類を求められることはあります。先に電話で「法定相続情報一覧図の写しで足りるか」「ほかに何が要るか」を聞いてください。

    Q. 5年を過ぎたらどうなりますか?

    保管期間(5年)を過ぎると再交付は受けられません。法定相続情報番号も、申出から5年以上経過すると使えない場合があるとされています。手続きが残っているなら、期間内に必要数をもらっておいてください。

    まとめ

    • ★交付は無料。必要な通数だけもらえます。保管は5年、その間は再交付も可能。ただし再交付を頼めるのは当初の申出人だけです。
    • ★列挙形式を選ぶと、相続税の申告に使えません。国税庁が図形式に限っているためです。
    • ★続柄を「子」と書くと、相続税の申告に使えません。「長男」「長女」「養子」と戸籍どおりに。養子がいるなら、その戸籍も別に要ります。
    • 法定相続情報番号(令和6年4月1日〜)は、不動産登記だけ。銀行でも税務署でも年金でも使えません。
    • 記載例は14種類。うち2つは明治民法の「家督相続」——祖父名義のままの家が、それだけ多いということです。
    • 年金は令和2年10月26日から使えます。ただし寡婦年金と、死亡に起因しない老齢基礎年金等の請求では使えません。
    • これは「戸籍を集めなくていい制度」ではありません。集めた戸籍を、何度も持ち回らなくてよくなる制度です。

    この記事で確認できなかったこと

    • 法定相続情報一覧図が年間どれだけ交付されているかの統計は、見つけられませんでした。登記統計には該当しそうな区分がありますが、この記事では数字を確認できていません。「よく使われている」といった評価は書いていません。
    • 個別の金融機関の取扱いは調べていません。一覧図の写しで足りるか、原本還付が必要か、追加書類があるかは、金融機関ごとに違う可能性があります。本記事は制度側の資料しか根拠にしていません。
    • 交付を受けられる通数の上限は、公表資料に見当たりませんでした。「上限なし」と断定はできません。申出先の法務局に確認してください。
    • 相続放棄をした相続人が一覧図にどう記載されるかを、明示した公表資料は確認できませんでした。本文では「法定相続人が誰であるのかを一覧にする」という制度の説明にもとづいて書いています。個別の記載方法は法務局に確認してください。
    • 必要書類の完全なチェックリストは、法務局のPDFが画像形式のため読み取れませんでした。本記事の書類一覧は、申出書の様式に印刷されている返却書類欄から起こしたものです。実際の申出では、法務局のチェックリストで確認してください。
    • 記載例の14種類は、当サイトが2026年8月に法務局のページを確認して数えたものです。法務局が「全部で14種類」と公表しているわけではありません。今後増減する可能性があります。
    • 一覧図の写しが海外の手続きや、証券・保険の名義変更で使えるかは扱っていません。

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  • 親が亡くなったら、4か月以内に親の確定申告をします|準確定申告が要る人・要らない人と、実家を貸していた場合

    【PR】本ページはプロモーションを含みます。

    相続の期限で覚えられているのは、たいてい2つです。相続放棄の3か月と、相続税の10か月。

    その間に、もう1つあります。親の代わりに、親の確定申告をする「準確定申告」。期限は4か月です。

    忘れられやすいのは、多くの親は準確定申告が要らないからです。年金だけで暮らしていた親なら、たいてい不要になります。でも実家を貸していたら、要ります。そして親が亡くなった年に不動産を売っていたら、必ず要ります。

    この記事は、国税庁の公表資料だけを使って、要る人・要らない人と、相続税とどうつながっているかを整理します。

    最終更新:2026年8月28日

    結論だけ先に

    • ★期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」。相続放棄の3か月と、相続税の10か月の間です。
    • 公的年金等が400万円以下で源泉徴収の対象、かつ他の所得が20万円以下なら、申告は不要です。ただし還付を受けたいなら、出さないともらえません。
    • ★実家を貸していた、駐車場にしていた、その年に不動産を売っていた——このどれかなら要ります。
    • 還付金は相続財産です。相続税の申告書に書き忘れる誤りが、国税庁の「誤りやすい事例」に載っています。逆に、納める所得税は債務として差し引けます。
    • ★親の青色申告は、相続人には引き継がれません。実家を貸し続けるなら自分で承認申請が要り、期限は死亡の日によって3通りに分かれます。

    この記事は国税庁のタックスアンサー・質疑応答事例・様式・案内だけを根拠にしています。当サイトに税理士はいません。不動産所得や譲渡所得がある場合は、金額も論点も大きくなります。税理士に相談してください。

    1. 4か月は、3か月と10か月の間に埋もれています

    親が亡くなったあとの期限を、日数順に並べます。

    親が亡くなったあとの主な期限 親が亡くなったあとの期限 起算日は制度ごとに違います 3か月 相続放棄・限定承認 4か月 準確定申告 10か月 相続税の申告と納付 3年 相続登記の義務 3年10か月 取得費加算 4か月だけが、あいだに挟まれて忘れられます 帯の長さは経過期間の目安です
    国税庁・法務省の公表資料から当サイトが作成。起算日は制度ごとに異なります

    国税庁のタックスアンサーは、期限をこう書いています。

    相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内

    1月1日から3月15日までに亡くなると、2年分になります

    ここは見落としやすいところです。国税庁はこう書いています。

    確定申告をしなければならない人が翌年の1月1日から確定申告期限までの間に確定申告書を提出しないで死亡した場合、前年分、本年分とも相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内

    つまり2月に亡くなって前年分をまだ出していなければ、前年分と当年分の2つを、同じ4か月の中で出すことになります。

    出典:国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」(所得税法16条・85条・124条・125条)

    2. ★要る人・要らない人

    準確定申告が要るのは、その人が生きていれば確定申告をしなければならなかった場合です。年金だけの親なら、たいてい要りません。

    年金だけの親が「申告不要」になる3条件 3つとも満たせば、申告は不要 公的年金等に係る確定申告不要制度 1 公的年金等が400万円以下 2 その全部が源泉徴収の対象 3 他の所得が20万円以下 不動産所得があると、3が崩れます 還付を受けたいときは、不要でも出します
    国税庁「確定申告が必要な方」の記載から当サイトが作成

    国税庁のページは、条件をこう書いています。

    公的年金等(その全部または一部が源泉徴収の対象となる場合に限ります。)の収入金額が400万円以下/公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下

    親の状況 準確定申告
    年金だけ(400万円以下・源泉徴収あり) 不要
    実家やアパートを貸していた 必要(不動産所得)
    跡地を駐車場にしていた 必要(不動産所得または雑所得)
    亡くなった年に不動産を売っていた 必要(譲渡所得)
    給与の収入金額が2,000万円超 必要
    年金は少ないが、医療費が多くかかった 不要。ただし出せば還付されることがある
    国税庁の記載をもとに当サイトが整理。実際の判定は個別の金額によります

    「不要」は「出してはいけない」ではありません。年金から源泉徴収されていて、亡くなる前に入院していたなら、出せば返ってくることがあります。

    実家を貸していたなら、ほぼ確実に必要です

    不動産所得は、公的年金等以外の所得です。年間20万円を超えていれば、それだけで申告不要制度から外れます。相続した実家をそのまま貸すを選んだ家では、まずここに当たります。

    出典:国税庁「確定申告が必要な方」/「公的年金等を受給されている方の確定申告に関するフローチャート」

    3. 出す場所と、付ける紙

    提出先は被相続人の死亡当時の納税地の税務署です。相続人の住所地ではありません。

    そして、相続人が複数いる場合に付ける紙があります。

    各相続人等の氏名、住所、被相続人との続柄などを記入した準確定申告書の付表を添付し、被相続人の死亡当時の納税地の税務署長に提出

    この付表は「確定申告書付表(兼相続人の代表者指定届出書)」という名前で、国税庁のサイトから入手できます。相続人が2人以上いるなら、代表者を決めて書きます。

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    4か月で判断がつかないなら、税理士に見てもらう

    不動産所得や譲渡所得があると、準確定申告は一気に難しくなります。しかも4か月です。相続税の10か月より先に来ます。準確定申告の結果は相続税にもつながるので、両方を見られる人に頼むほうが早い。税理士ドットコムは全国5,900名以上の税理士から、相続に強い人を無料で紹介する窓口です。運営は東証プライム上場の弁護士ドットコム株式会社。紹介と相談は無料で、複数の税理士を比較してから選べます。

    申し込む前に3つだけ確認してください。①紹介は無料ですが、実際に依頼したあとの報酬は税理士ごとに違います。見積りを取ってから決めてください。
    ②コーディネーターから電話またはメールで連絡が入り、相続財産の内容と地域を聞かれます。亡くなった日、相続人の人数、おおよその財産額を答えられるようにしておくと早く終わります。
    ③準確定申告は4か月、相続税は10か月です。期限が近いなら、その旨を最初に伝えてください。

    贈与と相続でどちらが安いか、試算してくれる税理士を探してもらう(無料・全国)

    親が事業や賃貸をしていたなら、青色申告承認申請書の期限もあわせて確認してもらってください。

    4. ★控除は「死亡の日」で切ります

    準確定申告でいちばん間違えやすいのが、控除の範囲です。国税庁はこう書いています。

    死亡の日までに被相続人が支払った医療費、保険料等の額

    項目 準確定申告に入るか
    親が生前に支払った医療費 入る
    親の死後に相続人が支払った入院費 入らない(死亡の日までに支払ったものではない)
    親が生前に支払った社会保険料・生命保険料 入る
    配偶者控除・扶養控除 死亡の日の現況で判定
    控除額の月割計算 しない
    国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」から作成

    国税庁は、判定の時期についてもはっきり書いています。

    死亡の日の現況により行います。配偶者控除額、扶養控除額等の月割計算は行わない

    ★死後に払った入院費が入らない、というのは感覚に反します。でもその分は、相続税のほうで債務として差し引ける場合があります。捨てずに、両方の担当者に見せてください。

    5. ★相続税と、つながっています

    準確定申告は、所得税だけの話で終わりません。結果が相続税に流れ込みます。

    準確定申告の結果 相続税での扱い
    還付になった 還付金は相続財産。相続税の課税対象に加える
    納付になった 納める所得税は債務。相続財産の価額から差し引ける
    国税庁の相続税「誤りやすい事例」から作成

    国税庁は、実際に起きている間違いとしてこう挙げています。

    父が亡くなった後に相続人である私が手続をとって支払を受けたものであることから、相続財産ではないと考え、第11表の付表4に記入しませんでした

    これは誤りで、正しくはこうです。

    所得税の準確定申告に係る還付金は、被相続人(父)に帰属する財産であり、相続財産に該当する

    ★「自分が手続きして受け取ったお金だから自分のもの」ではありません。親が生きていれば親が受け取るはずだったお金だからです。逆に、納める所得税のほうは差し引けます。

    被相続人の所得税の準確定申告で納付することとなる所得税は、相続財産の価額から差し引くことができる債務となります

    出典:国税庁「誤りやすい事例⑦(申告書第11表の付表4関係)」

    6. ★実家を貸していたなら、もう1つ期限があります

    親がアパートや駐車場を貸していて、それを相続人が続ける場合。親の青色申告は、相続人には引き継がれません。

    相続人が自分で「所得税の青色申告承認申請書」を出す必要があります。そして期限が、親が亡くなった日によって3通りに分かれます。

    被相続人の死亡の日 申請書の提出期限
    1月1日〜8月31日 死亡の日から4か月以内
    9月1日〜10月31日 その年の12月31日まで
    11月1日〜12月31日 翌年の2月15日まで
    国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」から作成

    1月から8月に亡くなった場合は、準確定申告と同じ「4か月」です。2つの4か月が並走します。

    間に合わないと、その年は白色申告になります。青色申告特別控除も、赤字の繰越しも使えません。

    出典:国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」

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    貸し続けないなら、いくらで売れるかを先に確かめる

    青色申告の承認申請を出すかどうかは、実家を貸し続けるかどうかで決まります。売るなら、そもそも要りません。だから先に「いくらで売れるのか」を知っておくと、期限のある手続きを1つ減らせます。一括査定なら、複数の不動産会社の査定額を一度に取り寄せられます。

    申し込む前に4つだけ確認してください。①申し込めるのは名義人か、そのご親族です。相続した実家なら、相続人であるあなたが申し込めます。
    ②申し込むと不動産会社から電話またはメールで連絡が入ります。所在地・築年数・間取りを答えられるようにしておくと早く終わります。
    ③相続登記が済んでいなくても査定は受けられますが、売却の契約には登記が必要です。登記の期限は3年です。
    ④査定額は「売れる価格」ではありません。実際の成約価格はここから動きます。

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    査定額が出たら、貸し続けるか売るかを数字で比べられます。

    7. 相続人が2人いると、手間が増えます

    準確定申告は相続人全員でするものです。だから相続人が複数いると、書類が増えます。

    相続人 やること
    1人だけ 準確定申告書を出す
    2人以上 付表に全員の氏名・住所・続柄などを書き、代表者を決めて添付する
    国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」から作成

    この時点で、誰が代表になるかを決めることになります。遺産分割の話し合いがまだでも、4か月は待ってくれません。ここで初めて兄弟と連絡を取る、という家もあります。まとまらない場合の進め方は実家の相続で兄弟と揉めたときに書きました。

    なお、準確定申告は令和2年分以降、e-Taxでも提出できます(国税庁)。相続人が2人以上の場合は、付表のデータもあわせて送ることになります。

    出典:国税庁「所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について」

    8. 動く順番

    1. 親に不動産所得があったかを確かめる。実家を貸していた、駐車場にしていた、看板を出させていた。通帳の入金を見れば分かります。
    2. 去年の確定申告書の控えを探す。あれば、何を申告していた人かが1枚で分かります。捨ててはいけない書類に一覧があります。
    3. 年金の源泉徴収票を待つ。準確定申告には、亡くなるまでの分が要ります。
    4. 亡くなった年に不動産を売っていないか確認する。売っていれば譲渡所得の申告が要ります。
    5. 相続人を確定して、付表に書く代表者を決める。
    6. 事業を続けるなら、青色申告承認申請書の期限を先に確認する。

    やってはいけないこと

    • 「年金だけだったから何もしなくていい」で終える。還付になるケースがあります。医療費が多くかかった年なら、なおさらです。
    • 還付金を相続財産に入れずに相続税を申告する。国税庁が「誤りやすい事例」として挙げています。
    • 死後に払った入院費を準確定申告の医療費控除に入れる。入りません。ただし相続税の債務控除で使える場合があるので、領収書は捨てないでください。
    • 相続人の住所地の税務署に出す。提出先は被相続人の死亡当時の納税地です。
    • 実家を貸し続けるのに、青色申告承認申請を出し忘れる。親の青色は引き継がれません。
    • 2月に亡くなったのに、当年分だけ出す。前年分が未提出なら、前年分も4か月以内です。

    よくある質問

    Q. 年金だけの親でした。何もしなくていいですか?

    公的年金等が400万円以下で源泉徴収の対象、かつ他の所得が20万円以下なら、申告義務はありません。ただし還付を受けたいなら、出さないと戻ってきません。入院していた年は、医療費控除で戻ることがあります。

    Q. 実家を貸していました。必要ですか?

    不動産所得が20万円を超えていれば必要です。年金だけの人向けの申告不要制度は、この時点で使えなくなります。相続した実家をそのまま貸すと実家の跡地で駐車場経営も読んでください。

    Q. 期限に間に合いませんでした

    期限後でも提出できます。ただし納付がある場合は、加算税や延滞税がかかることがあります。還付だけのケースなら、まず出すことを優先してください。具体的な取扱いは税務署か税理士に確認してください。

    Q. 相続放棄をしたら、準確定申告はどうなりますか?

    放棄した人は相続人ではなくなるため、申告の当事者から外れます。ただし放棄には3か月の期限があり、準確定申告の4か月より先に来ます。実家が「負動産」だったら相続放棄すべきかを先に読んでください。

    Q. 還付金は誰のものですか?

    相続財産です。受け取る手続きをしたのが誰かは関係ありません。遺産分割の対象になり、相続税の課税対象にもなります。

    Q. 準確定申告と相続税の申告、どちらを先にやりますか?

    期限は準確定申告のほうが先(4か月)です。そして準確定申告の結果が、相続税の計算に入ってきます。還付なら財産に足し、納付なら債務として引く。順番はこの通りにするのが自然です。

    まとめ

    • ★期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」。3か月と10か月の間で忘れられます。
    • 年金だけの親なら、たいてい不要。400万円以下・源泉徴収の対象・他の所得20万円以下の3つを満たす場合です。
    • ★実家を貸していた/駐車場にしていた/その年に売っていた——このどれかなら必要です。
    • 控除は「死亡の日まで」で切ります。死後に払った入院費は入りません。扶養控除の月割計算もしません。
    • 還付金は相続財産、納める所得税は債務控除。相続税につながっています。
    • ★青色申告は引き継がれません。死亡の日によって、承認申請の期限が3通りに分かれます。

    この記事で確認できなかったこと

    • 準確定申告が年間どれくらい提出されているかの統計は見つけられませんでした。国税庁の統計は所得税の申告全体の集計で、準確定申告の区分がありません。
    • 期限に遅れた場合の加算税・延滞税の実際の適用状況は確認していません。個別の事情によって取扱いが変わります。
    • 消費税の準確定申告については扱っていません。親が課税事業者だった場合に別途必要になることがあります。
    • 死後に相続人が支払った入院費が、相続税の債務控除として認められる範囲は確認していません。本記事では「使える場合がある」としか書いていません。
    • 準確定申告をe-Taxで行う場合の要件は扱っていません。国税庁がe-Tax対応の案内を出しています。
    • 還付加算金の課税関係は本記事では扱っていません。還付金本体とは扱いが異なります。

    あわせて読みたい

  • 相続した実家を売ったあと、雨漏りが見つかったら|住んでいなかった人が負う「契約不適合責任」の範囲

    【PR】本ページはプロモーションを含みます。

    実家を売った。半年後、買主から連絡が来る。「2階の天井から雨漏りしています」

    あなたはその家に住んでいませんでした。雨漏りがあることも知りませんでした。それでも責任を負うのでしょうか。

    負います。2020年4月1日に施行された民法では、売主に落ち度がなくても、買主は修補や代金の減額を請求できます。「知らなかった」は、原則として理由になりません。

    そして、中古の戸建てで買主からいちばん多く相談が来る不具合が、まさに雨漏りです。国が指定した相談窓口の集計で28.4%。ひび割れやはがれを大きく引き離しています。

    最終更新:2026年8月28日

    結論だけ先に

    • ★契約不適合責任は、売主が知らなくても負います。買主は修補・代金減額・損害賠償・解除を請求できます。
    • 買主は「知った時から1年以内に通知」すればよく、訴える必要はありません。通知は「不適合の種類とおおよその範囲」を知らせれば足ります。
    • ★既存(中古)住宅の戸建てで、相談のいちばん多い不具合は雨漏り28.4%。新築戸建てはひび割れ19.2%が最多で、中身がはっきり違います。
    • 免責特約は結べます。ただし「知りながら告げなかった事実」は、特約があっても免れません(民法572条)。
    • 相続人がいちばん困るのは、告知書に何を書けばいいか分からないことです。住んでいないので、知らない。その「知らない」を、そのまま書くのが正しい。

    この記事は、法務省・国土交通省の公表資料と、公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住宅相談統計年報2025」だけを根拠にしています。当サイトに弁護士はいません。実際に請求を受けた場合の対応は、契約書の文言と個別の事情で変わります。金額が大きい場合は弁護士に相談してください。

    1. 中古の戸建てで、いちばん多いのは雨漏りです

    国土交通大臣が指定した住宅相談の窓口である住宅リフォーム・紛争処理支援センターが、毎年の相談を集計して公表しています。2024年度の新規相談は30,812件、このうち既存(中古)住宅に関する相談は1,664件で、前年より2.4%増えました。

    既存住宅と新築住宅で、相談される不具合が違う 相談された不具合(戸建て) 住宅相談統計年報2025・2024年度 既存(中古)住宅 n=462 雨漏り 28.4% ひび割れ 17.7% はがれ 13.2% 新築住宅(戸建て) ひび割れ 19.2% 雨漏り 15.5% 中古は雨漏りが突出。新築とは中身が違う
    公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住宅相談統計年報2025」(2024年度)から作成
    2024年度の住宅相談 数字
    新規相談 30,812件
    うち既存(中古)住宅の相談 1,664件(前年比+2.4%)
    既存相談の住宅の種類 戸建60.1%/共同住宅等39.9%
    既存・戸建の不具合1位 雨漏り 28.4%(n=462)
    新築・戸建の不具合1位 ひび割れ 19.2%
    「住宅相談統計年報2025」から抜粋。nは不具合事象を回答した件数

    中古の戸建ては、雨漏りが突出しています。そして雨漏りは、住んでいない人にはいちばん気づきにくい不具合です。天井のしみは、雨の日に家にいないと分かりません。

    出典:公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住宅相談統計年報2025 −2024年度の住宅相談と紛争処理の集計・分析−」

    2. ★「知らなかった」では、免れません

    2020年4月1日から、売買のルールが変わりました。法務省のパンフレットはこう説明しています。

    売主が引き渡した目的物が種類や品質の点で契約内容と異なっていたり、数量が不足していた場合(契約内容に適合していなかった場合)

    ここで大事なのは、「隠れた瑕疵」という言い方がなくなったことです。以前は「買主が知らなかった、気づけなかった欠陥」が対象でした。いまは「契約の内容に合っているか」で判断します。

    そして、売主に落ち度がなくても買主は請求できます。法務省のパンフレットは、売主に帰責事由がない場合でも「修補や代替物の引渡しなど完全な履行を請求することや、代金の減額を請求する」ことができる、としています。

    買主が使える4つの手段

    手段 中身 売主にとって
    履行の追完の請求 直してくれ、と求める 修補費用を負担する
    代金の減額の請求 その分だけ代金を返してくれ 受け取った代金の一部を返す
    損害賠償の請求 被った損害を賠償してくれ 売主に帰責事由がある場合
    契約の解除 契約そのものをなかったことに 代金を全額返し、家を戻す
    法務省民事局参事官室「売買、消費貸借、定型約款などの契約に関する民法のルールが変わります」(平成31年2月)から作成

    ★相続した実家でいちばん現実的なのは、上の2つです。解除まで進む例は多くありませんが、修補費用や代金の一部返還は普通に起こります。売却代金を兄弟で分けたあとに請求が来ると、もう手元にお金がありません。

    3. ★1年以内に「通知」すればいい。訴える必要はありません

    ここは誤解されやすいところです。「1年以内に訴えなければ買主は権利を失う」わけではありません。

    国土交通省住宅局の資料はこう書いています。

    契約に適合していないことを知ってから、1年以内に通知をすれば足りる

    そして「通知」の中身についても、こう説明しています。

    売主が対応を検討できる程度に不適合の種類やおおよその範囲を知らせるもの

    つまり「2階の天井に雨漏りがある」と伝えれば、それで通知は済んでいます。金額の見積りも、修理の完了も要りません。「まだ請求書が来ていないから大丈夫」ではないということです。

    契約不適合責任の1年は、いつから数えるか 1年は「引渡し」から数えません 民法の通知期間・国土交通省住宅局の説明から 誤解 引渡しから1年で消える 実際 何年でも続く 買主が不具合に気づいた時点から 1年以内に通知 通知は種類とおおよその範囲を伝えれば足ります
    民法の担保責任の通知期間と、国土交通省住宅局「住宅業界に関連する民法改正の主要ポイント」から作成

    起算点は「引渡し」ではなく「知った時」です

    1年の数え方は、買主が不適合を知った時からです。引渡しからではありません。売ってから3年後に雨漏りに気づけば、そこから1年です。

    だから「もう何年も経ったから安心」とは言えません。期間を区切りたいなら、契約でそう決めておくしかありません。

    出典:法務省民事局参事官室のパンフレット(平成31年2月)/国土交通省住宅局「住宅業界に関連する民法改正の主要ポイント」

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    請求が来る前に、この家がいくらのものかを知っておく

    契約不適合責任で求められるお金は、売った代金の中から払うことになります。いくらで売れるのかを先に知っておくほど、免責特約を入れるかどうかも含めて、判断できる幅が広がります。複数社の査定額を一度に取り寄せられます。

    入力後は各社から個別に連絡が来ます。査定額は各社の見立てであって、実際の成約価格とは別物です。売却の意思が固まっていない段階では、連絡が負担になることがあります。

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    査定額が出たら、免責特約を入れるかどうかを、媒介契約の前に相談できます。

    4. 免責特約は結べます。ただし1つだけ効きません

    個人が売主の場合、「契約不適合責任を負わない」という特約を結ぶことができます。相続した実家のように、売主が建物の状態を把握していない取引では、実際によく使われます。

    ただし、条文に例外があります。民法572条です。担保責任を負わない特約をしたときであっても、こう定められています。

    担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができない

    ★つまり、知っていて黙っていた不具合は、免責特約を書いても守ってくれません。

    売主の状況 免責特約は効くか
    本当に知らなかった 効く(特約の文言による)
    知っていたが、言わなかった 効かない(民法572条)
    親から聞いていたが、忘れていた 「知っていた」と評価される可能性がある
    特約を結んでいない そもそも免責されない
    民法572条にもとづく整理。実際の判断は個別の事情によります

    ここが、相続した実家でいちばん危ないところです。親が生前に「雨漏りしたことがある」と言っていた。修理した記憶がある。それを思い出さずに「知りません」と書いてしまうと、あとで「知っていたのに告げなかった」と言われかねません。

    5. ★相続人がいちばん困るのは、告知書です

    実家を売るとき、売主は物件状況等報告書(告知書)を書きます。雨漏り・シロアリ・給排水の不具合・過去の修繕歴などを、知っている範囲で申告する書面です。

    住んでいた人なら書けます。相続人は、書けません。

    「知らない」を、そのまま書くのが正しい

    相続した実家で正しい書き方は、分からないことを「不明」と書き、なぜ分からないのかを添えることです。

    やること 理由
    「居住したことがないため不明」と書く 知らないことを知らないと書くのは、隠したことにならない
    親から聞いた話も書く 「知りながら告げなかった」を避けるため
    修繕の書類を探して添える 過去に直した箇所は、聞いていなくても紙で分かる
    空欄にしない 空欄は「無し」と読まれることがある
    当サイトの整理。書式と運用は不動産会社によって異なります

    「不明」と書くことを、悪いことだと思わないでください。買主にとっても「売主は把握していない」という情報そのものが判断材料になります。むしろ、知らないのに「無し」と書くほうが危険です。

    重要事項説明書にも、専用の欄があります

    宅地建物取引業法35条にもとづく重要事項説明書(売買・交換)の様式には、次の欄が用意されています。

    欄 記入内容
    担保責任の履行に関する措置 措置を「講ずる・講じない」を選び、講ずる場合はその内容
    建物状況調査の実施の有無 「有・無」を選び、有なら結果の概要
    石綿使用調査結果の記録の有無 「有・無」を選び、有なら調査の内容
    国土交通省の重要事項説明書(売買・交換)の様式(宅地建物取引業法35条)から作成

    ★「担保責任の履行に関する措置」を『講ずる』にする方法が、既存住宅売買瑕疵保険です。買主が安心する代わりに、保険を使うには検査に通る必要があります。詳しくは実家を売る前にインスペクションは必要かに書きました。

    6. 代金を分けたあとに請求が来ると、戻せません

    ここが、相続した実家に特有の危なさです。

    実家を売って現金にし、兄弟で分ける。換価分割という、いちばん多いやり方です。問題は、請求が来るのが引渡しの「あと」だということです。

    時点 起きること
    引渡し 代金を受け取る
    その直後 兄弟で分けて、各自の口座に移す
    数か月〜数年後 買主が不具合に気づく
    そこから1年以内 通知が届く。修補費用や減額を求められる
    このとき 手元にお金がない。誰がいくら出すかで、もう一度もめる
    当サイトの整理。責任の負担割合は相続分や遺産分割協議の内容によります

    対策は単純です。売却代金の一部を、一定期間そのまま置いておく。いくらをいつまで置くかを、分ける前に兄弟で決めておく。それだけで、あとの揉め方がまったく違います。

    免責特約を入れた場合でも同じです。特約は「知りながら告げなかった事実」には効かないので、ゼロにはなりません。

    7. 動く順番

    1. 親から聞いた話を、思い出せるだけ書き出す。雨漏り・シロアリ・水回り・地盤・境界。これが「知りながら告げなかった」を避ける唯一の方法です。
    2. 実家の書類を探す。修繕の見積書・領収書・工事写真。捨ててはいけない書類に一覧があります。
    3. 雨の日に一度、実家を見る。中古戸建の相談1位が雨漏りです。晴れた日の内見では分かりません。
    4. 免責特約を入れるかどうかを、媒介契約の前に不動産会社と決める。
    5. 買主が住宅ローンを使うなら、検査や保険を求められることがある。先に確認する。
    6. 売却代金をすぐ分けない。請求が来るのは引渡しのあとです。

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    愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本の実家なら、もう1社あります

    不動産SHOPナカジツは、40店舗すべてを直営で運営している会社です。そのうち39店舗が、愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本の7県にあります(残る1店舗は東京都小平市ですが、査定の受付エリアに東京は入っていません)。仲介・買取・買取保証付き仲介・任意売却・リースバックの5つの売り方を自社で扱っているので、免責の条件が違う売り方を、契約の前に1社の中で比べられます。

    申し込む前に、4つだけ確認してください。①対応しているのは上記7県の、店舗がある市区町村とその周辺だけです。県が合っていても、店舗から遠い地域は受け付けられないことがあります。②申し込むと30日以内に電話またはメールで連絡が入り、物件の状況を聞かれます。所在地・築年数・間取りを答えられるようにしておくと早く終わります。③申し込めるのは名義人か、そのご親族だけです。相続した実家なら、相続人であるあなたが申し込めます。名義人と関係のない方からの問い合わせは受け付けられません。④売却を考えていない相談は対象外です。迷っている段階なら「まだ決めていませんが、金額を知りたい」と伝えてください。

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    2社目の査定が出たら、告知書に何を書くかを、媒介契約を結ぶ前に不動産会社と詰めてください。

    やってはいけないこと

    • 告知書を空欄で出す。空欄は「不具合なし」と読まれることがあります。「不明」と書いてください。
    • 親から聞いた不具合を「もう直したから」と書かない。直したこと自体を書けば足ります。黙ると民法572条に当たります。
    • 免責特約があるから何も言わなくていい、と考える。特約は「知りながら告げなかった事実」には効きません。
    • 引渡しの翌月に売却代金を全額分けてしまう。請求は引渡しのあとに来ます。
    • 「1年経ったからもう大丈夫」と考える。1年は買主が知った時からです。
    • 晴れた日の内見だけで「問題なし」と判断する。中古戸建の相談1位は雨漏りです。

    よくある質問

    Q. 住んでいなかったのに、本当に責任を負うのですか?

    負います。2020年4月1日施行の民法では、売主に落ち度がなくても、買主は修補や代金の減額を請求できます。「知らなかった」は原則として理由になりません。だからこそ、免責特約を結ぶかどうかを契約前に決めておく必要があります。

    Q. 免責特約を入れれば、もう安心ですか?

    「知りながら告げなかった事実」については免れません(民法572条)。親から聞いていた不具合を書かなかった場合が、これに当たり得ます。聞いた話は全部、告知書に書いてください。

    Q. 何年経てば安心ですか?

    年数では決まりません。1年の起算点は「買主が不適合を知った時」だからです。期間を区切りたいなら、契約でそう決めるしかありません。不動産会社に、契約書の該当条項を見せてもらってください。

    Q. 買主から連絡が来ました。すぐ払うべきですか?

    先に、契約書の契約不適合責任の条項と告知書の控えを確認してください。免責特約の有無、期間の定め、あなたが何を書いたか。金額が大きい場合は、支払う前に弁護士に相談してください。当サイトに弁護士はいません。

    Q. 更地にして売れば、この問題はなくなりますか?

    建物の不具合はなくなりますが、土地の問題は残ります。地中埋設物や土壌汚染が「契約の内容に適合しない」とされることがあります。解体中に地中から何か出てきたと古家付き土地として売るか、更地にして売るかを読んでください。

    Q. 買取なら、この責任は負いませんか?

    買主が宅地建物取引業者の場合、契約不適合責任を免責とする条件が付くことが一般的です。ただし買取価格は仲介より低くなります。当サイトは最大手の決算から、販売価格の73.5%が売上原価であることを確認しました。仲介と買取どちらで売るべきかで比較しています。

    Q. インスペクションを受ければ責任がなくなりますか?

    なくなりません。ただし「契約の内容」を先に具体化できるので、あとから揉める余地が小さくなります。既存住宅売買瑕疵保険を使うなら検査は別に必要です。インスペクションの記事に整理しました。

    まとめ

    • ★契約不適合責任は、売主が知らなくても負います。買主は修補・代金減額・損害賠償・解除を請求できます。
    • 買主は「知った時から1年以内に通知」すればよく、訴える必要はありません。通知は不適合の種類とおおよその範囲で足ります。
    • ★既存の戸建てで相談1位は雨漏り28.4%。新築戸建て(ひび割れ19.2%)とは中身が違います。雨漏りは、住んでいない人がいちばん気づけない不具合です。
    • 免責特約は結べます。ただし「知りながら告げなかった事実」には効きません(民法572条)。
    • 告知書は「不明」と書いていい。むしろ、知らないのに「無し」と書くほうが危険です。
    • 売却代金は、すぐに分けない。請求は引渡しのあとに来ます。

    この記事で確認できなかったこと

    • 改正後の民法572条の条文全文を、一次情報から確認できませんでした。法務省の新旧対照条文は債権総則までで、売買の節を含んでいません。本文で引用したのは、改正前の572条と、国土交通省が資料で引用している旧640条に共通する文言部分だけです。条文の全文は、必ず現行法の条文でご確認ください。
    • 宅地建物取引業法40条(売主が宅建業者の場合の特約の制限)の条文を、一次情報から取得できませんでした。そのため本記事では触れていません。相続人が売主になる取引には、この条文は適用されません。
    • 「相続した実家の売却でどれだけ紛争が起きているか」の統計はありません。住宅相談統計年報は既存住宅全体の集計で、相続物件かどうかの区分はありません。
    • 不具合事象の割合は「相談された件数の割合」であって、実際に不具合が起きた割合ではありません。相談に至らなかったものは数えられていません。
    • 免責特約がどこまで有効かを判断した裁判例は、本記事では調べていません。特約の文言と事情によって結論が変わります。
    • 既存住宅売買瑕疵保険の保険料と検査基準は、本記事では扱っていません。

    あわせて読みたい

  • 実家じまいは、結局いくらかかるのか|法令で金額が決まっている費用と、公的な相場が存在しない費用を分けました

    【PR】本ページはプロモーションを含みます。

    実家じまいの費用を調べると、「総額200万〜300万円」といった数字がすぐ出てきます。その出典を探しました。見つかりませんでした。

    ただし、金額が1円単位で決まっている費用もあります。法令や告示に書いてあるからです。それは調べれば必ず分かります。

    この記事は、実家じまいで出ていくお金を「法令で決まっている」「分布が公表されている」「公的な相場が存在しない」の3つに仕分けます。そのうえで、決まっている分だけを積み上げたらいくらになるかを出します。

    最終更新:2026年8月28日

    結論だけ先に

    • ★実家じまいの「総額の相場」に一次情報はありません。ただし法令で金額が決まっている費用は7種類あり、これは自分で計算できます。
    • モデルケース(評価額1,400万円の実家を相続して1,500万円で売る)で、法令から確定できる費用は630,800円でした。内訳の89%は仲介手数料です。
    • ★同じケースで、空き家の3,000万円特別控除を使えるかどうかは最大609万円動きます。確定費用の総額よりひと桁大きい。
    • 解体費の坪単価と、遺品整理の間取り別相場表には、公的な統計がありません。当サイトが探しても一次情報にたどり着けませんでした。
    • 登記事項証明書は600円です。「480円」と書いてあるページは古い。令和7年4月1日に改定されています。

    この記事の金額は、法務省・国税庁・国土交通省・総務省行政評価局の公表資料と、当サイトが自分で集めたデータベースだけを根拠にしています。当サイトに税理士・司法書士はいません。モデルケースは計算例であって、あなたの実家の金額ではありません。税額と手数料は個別の事情で変わります。

    1. 「総額いくら」に、出典がない

    当サイトは、これまで87本の記事で費用を扱ってきました。そのたびに同じ壁に当たっています。

    調べたもの ネットでよく見る数字 探した結果
    解体費の坪単価 木造なら坪3万円 国土交通省にも環境省にも公的統計なし
    遺品整理の費用 3LDKなら17万〜50万円 間取り別の表に一次情報なし
    買取価格 相場の7割 出どころ不明。決算から逆算した
    当サイトが各記事で実際に出典をたどった結果

    3つとも、各社が互いに引用し合っているだけでした。だから当サイトは、これらを「相場」として書きません。

    ただ、「分からない」で終わらせると、読む人は何も決められません。そこで分けます。

    2. ★法令で金額が決まっている費用

    ここに挙げるものは、誰が計算しても同じ額になります。条文か告示に書いてあるからです。

    費用 金額 根拠
    相続登記の登録免許税 不動産の価額 × 0.4% 登録免許税法別表第一
    価額100万円以下の土地 免税(0円) 令和9年3月31日まで
    抵当権の抹消 不動産1個につき1,000円 同上
    登記事項証明書 書面600円/オンライン送付520円/オンライン窓口490円 令和7年4月1日〜
    仲介手数料の上限 400万円超は3.3%(税込) 建設省告示第1552号
    800万円以下の空家等 33万円が上限 令和6年6月21日改正
    売買契約書の印紙 1千万円超5千万円以下は1万円(軽減後) 令和9年3月31日まで
    相続税の基礎控除 3,000万円+600万円×法定相続人 相続税法15条1項
    法務省「登録免許税の計算」、法務局「登記手数料」(情報番号1109)、国土交通省告示、国税庁「印紙税額」(令和8年5月22日現在)から作成

    登録免許税は、端数の処理まで決まっています

    法務省の資料はこう書いています。

    (課税標準は)1,000円未満の端数は切り捨てます。価格が1,000円未満である場合は、1,000円になります。(税額は)計算した額に100円未満の端数があるときはこれを切り捨て、計算した額が1,000円未満であるときは1,000円とします。

    つまり自分で電卓を叩けば、1円まで一致します。見積書に「登記費用一式」と書かれていたら、この額と、その差額が司法書士の報酬です。分けて聞いてください。

    ★「登記事項証明書600円」を知らないと、古い記事に気づけません

    登記事項証明書の手数料は、令和7年4月1日に改定されています。

    請求方法 現在 よく書かれている古い額
    書面請求 600円 600円
    オンライン請求・送付 520円 500円
    オンライン請求・窓口交付 490円 480円
    法務局「登記手数料はどのようになっていますか?」(情報番号1109・令和7年4月1日〜)

    「480円」と書いてあるページは、令和7年4月1日より前の情報のままです。金額そのものは10円20円の差ですが、そのページの他の数字も同じだけ古いと考えたほうがいい。

    出典:法務局「登記手数料はどのようになっていますか?」(情報番号1109)/法務省「登録免許税の計算」

    売るときの税率は、令和11年3月31日まで延びました

    土地を売買で移転する登記の登録免許税は、本則2.0%のところ1.5%に軽減されています。この軽減は令和8年3月31日で切れる予定でしたが、令和8年度の税制改正で3年延長され、令和11年3月31日までになりました(国税庁・令和8年4月)。

    売買の登記費用は買主が負担するのが通例ですが、値段の交渉材料になります。

    3. 分布が公表されている費用

    「相場」はなくても、国や当サイトが実際に集めた数字の散らばりなら分かります。1点の金額ではなく、幅として読んでください。

    遺品整理──国が集めた見積書75例

    総務省行政評価局が、遺品整理サービスの実際の見積書75例の金額分布を公表しています。

    遺品整理サービスの見積書75例の金額分布 遺品整理の見積書75例 総務省行政評価局の調査・令和2年3月 〜10万 7例 〜20万 19例 〜30万 23例 〜40万 12例 〜50万 5例 〜60万 3例 〜100万 4例 100万超 2例 49例(65.3%)が30万円以下。最多は20万〜30万円
    総務省行政評価局「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書」(令和2年3月)表7から作成

    75例のうち49例(65.3%)が30万円以下。いちばん多いのは20万円超30万円以下の23例でした。一方で100万円を超える見積りも2例あります。

    ただしこの調査には、費用より重い数字があります。調査対象の69社のうち35社が、一般廃棄物収集運搬業の許可を持っていませんでした。詳しくは遺品整理の費用に書きました。

    水道の加入金──0円から125万円

    建て替えや、長く止めていた水道を引き直すときにかかります。同じ口径13mmでも、0円の自治体から125万円の自治体まであります。当サイトが調べた全国の中央値は66,000円、1,229事業体のうち232(18.9%)は制度そのものがありません。東京都の本土53市区町村は全域0円です。

    解体の補助金──501市区町村のうち81件は制度なし

    当サイトは全国501市区町村の解体補助制度を1件ずつ公式ページで調べています。制度がなかったのは81件(16.2%)。素直に使える「空き家特化」型は256件(51.1%)でした。県によってはっきり分かれます。

    仏壇の処分──自治体でまったく違う

    粗大ごみとして出せるかどうかから違います。大阪市は1,000円、名古屋市は2,000円、明石市は「収集できません」と分別区分に書いています。

    出典:総務省行政評価局の報告書、各自治体の公式ページ、当サイトの補助金データベース(501件)・水道加入金データベース

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    相場が存在しない費用は、相見積りでしか分かりません

    この記事で見たとおり、解体費の坪単価には公的な統計がありません。当サイトが金額を書かないのはそのためです。代わりにできるのは、同じ物件について複数社に出してもらうことです。補助金の申請にも見積書が要ります。複数社の相見積りを一度に取れます。

    解体する意思がある方が対象です。相場だけ知りたい段階なら、その旨を伝えてください。申し込むと解体業者から連絡が入るので、所在地・建物の構造・おおよその延べ床面積を答えられるようにしておくと早く終わります。補助金は契約・着工の前に申請してください。順番を逆にすると補助はゼロです。

    解体の窓口で、無料シミュレーションを試す

    見積りが出たら、この記事の630,800円に何がいくら乗るのかを計算できます。

    4. 公的な相場が存在しない費用

    ここは相見積りでしか分かりません。だから当サイトは金額を書きません。

    費用 なぜ書けないか どうするか
    解体工事費 坪単価の公的統計がない。地域差は最大1.5倍、前面道路が狭ければさらに2〜3倍 複数社から見積りを取り、「別途」の中身を聞く
    遺品整理費 間取り別の表に出典がない 75例の分布を目安に、許可の有無を先に確認
    司法書士の報酬 当サイトでは全国的な統計を確認できなかった 登録免許税と分けて見積りを出してもらう
    譲渡所得税 取得費が分かるかどうかで税額が数倍変わる 親の購入時の契約書を先に探す
    買取価格 「7掛け」に一次情報がない 最大手の決算からは販売価格の73.5%が原価
    当サイトが各記事で出典をたどった結果

    ★このうち、金額がいちばん大きく動くのは譲渡所得税です。取得時の契約書が見つからないと売却代金の5%しか取得費に入れられず、税額が跳ね上がります。実家の片付けで最初に探すべきは、通帳でも権利証でもなく、購入時の契約書です。

    5. ★決まっている分だけ積み上げると、63万円でした

    モデルケースで計算します。これは計算例であって、相場ではありません。

    前提 値
    実家の固定資産税評価額 土地1,200万円+建物200万円=1,400万円
    法定相続人 2人(基礎控除4,200万円)
    抵当権 完済済みだが登記が残っている(土地1筆+建物1棟=2個)
    売却 相続登記のうえ1,500万円で仲介売却
    計算例の前提。実際の金額は個別に変わります
    法令から確定できる費用の内訳(モデルケース) 確定できる費用 630,800円 評価額1,400万円を相続し1,500万円で売る場合 仲介手数料 561,000 登録免許税 56,000 印紙税 10,000 抵当権抹消 2,000 証明書3通 1,800 89%が仲介手数料。税金は10% 解体費・遺品整理費・司法書士報酬は含みません
    当サイトが法令・告示から計算した金額。司法書士に依頼した場合の報酬は別です
    費用 計算 金額
    相続登記の登録免許税 1,400万円 × 0.4% 56,000円
    抵当権抹消の登録免許税 1,000円 × 2個 2,000円
    登記事項証明書 600円 × 3通(書面請求) 1,800円
    売買契約書の印紙 1千万円超5千万円以下・軽減後 10,000円
    仲介手数料(上限) 1,500万円 × 3.3% + 66,000円 561,000円
    相続税 1,400万円 < 基礎控除4,200万円 0円
    合計 — 630,800円
    法令・告示から機械的に計算した金額。実額は個別事情で変わります

    ★内訳の89%は仲介手数料です。税金は合わせて68,000円しかありません。「実家じまいは税金が高い」というより、動くのは仲介と工事の側です。

    もしこの実家が800万円だったら

    売買代金が800万円以下なら、仲介手数料の上限は33万円です(低廉な空家等の特例)。ただし通常の計算式なら800万円×3.3%+66,000円=330,000円で、実は同額です。

    効いてくるのはもっと安い実家です。400万円なら通常の上限は198,000円ですが、この特例では33万円まで受け取れます。安い実家ほど、手数料の実質負担は重くなります。

    6. ★確定費用より、控除ひとつのほうが大きい

    ここが、この記事でいちばん言いたいところです。

    項目 動く金額
    法令から確定できる費用の合計 630,800円
    空き家の3,000万円特別控除が使えるかどうか 最大609万円
    解体補助金があるかないか 自治体により0円〜数十万円
    取得時の契約書が見つかるかどうか 譲渡所得税が数倍変わる
    当サイトの各記事で確認した金額

    確定費用の総額より、控除ひとつのほうがひと桁大きい。だから「総額はいくらか」を当てにいくより、動く額が大きいところから順に決めたほうがいい。

    そして3,000万円控除には条件があります。一度でも貸すと、永久に使えなくなります。2025年以降に相続した人の実質的な期限は2027年12月31日です。貸すかどうかを決める前に、こちらを先に確認してください。

    出典:空き家の3,000万円特別控除/相続した実家を売ったときの譲渡所得税/当サイトの補助金データベース

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    確定費用の89%は、仲介手数料でした

    この記事で計算したとおり、法令から確定できた630,800円のうち561,000円が仲介手数料です。総額を左右するのは、税金ではなく売却価格のほうです。まず今いくらで売れるのかを把握してください。複数社の査定額を一度に取り寄せられます。

    入力後は各社から個別に連絡が来ます。査定額は各社の見立てであって、固定資産税の評価額とは別物です。売却の意思が固まっていない段階では、連絡が負担になることがあります。

    不動産SHOPナカジツに無料査定を依頼する(愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本)

    査定額が出たら、仲介手数料の上限も自分で計算できます。

    やってはいけないこと

    • 「総額◯◯万円」と書いてある記事の数字で予算を立てる。出典をたどると、どこにも一次情報がありません。
    • 「登記費用一式」の見積りをそのまま受け取る。登録免許税は法令で決まっているので、自分で計算すれば報酬部分が分かります。
    • 業者を決めてから補助金を調べる。市内業者限定の制度が129件あります。順番が逆だと使えません。
    • 片付けで、購入時の契約書を捨てる。取得費が分からないと売却代金の5%しか引けません。
    • 3,000万円控除を確かめる前に貸す。一度貸すと永久に使えなくなります。
    • 相続登記を後回しにする。2024年4月1日から義務で、3年以内、10万円以下の過料です。
    • 遺品整理業者に許可を確認しないで頼む。調査対象69社のうち35社が一般廃棄物収集運搬業の許可を持っていませんでした。

    よくある質問

    Q. 結局、実家じまいの総額はいくらですか?

    当サイトは答えを持っていません。解体費と遺品整理費に公的な相場が存在しないからです。代わりに、法令で決まっている部分だけなら計算できます。モデルケース(評価額1,400万円を相続して1,500万円で売却)で630,800円でした。工事を伴うなら、ここに見積り次第の金額が乗ります。

    Q. 登記は自分でできますか?

    登録免許税と証明書代は法令で決まっているので、金額の面では自分でやれば報酬分が浮きます。ただし相続人が多い、祖父名義のまま、といった事情があると難易度が変わります。相続登記の義務化と祖父名義のままの実家を先に読んでください。

    Q. 仲介手数料は値切れますか?

    告示が定めているのは上限です。400万円超なら3.3%(税込)が上限で、それ以下で合意することは可能です。ただし800万円以下の空家等については、あらかじめ説明と合意があれば33万円まで受け取れる特例があります。媒介契約を結ぶ前に確認してください。

    Q. 相続税はかかりますか?

    基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です(相続税法15条1項)。相続人2人なら4,200万円。ただし「特例を使ってゼロ」の場合は申告が要ります。実家を相続したら相続税はかかるかに境目を書きました。

    Q. 解体してから売ったほうが高く売れますか?

    解体すると翌年から固定資産税が上がります。住宅用地の特例が外れるためです。ただし「6倍」ではなく、計算すると最大でも4.2倍でした。古家付き土地として売るか、更地にして売るかで比較しています。

    Q. 費用を抑える順番はありますか?

    金額が大きく動くところからです。①3,000万円控除が使えるか、②取得時の契約書があるか、③解体補助金があるか、④解体と遺品整理の相見積り。登録免許税や印紙税は動かせないので、最後で構いません。

    まとめ

    • ★「総額の相場」に一次情報はありません。解体費の坪単価も、遺品整理の間取り別表も、公的統計が存在しません。
    • 法令で決まっている費用は計算できます。登録免許税0.4%、抵当権抹消1個1,000円、証明書600円、仲介手数料の上限3.3%、印紙税、基礎控除。
    • ★モデルケースで確定できたのは630,800円。うち89%が仲介手数料でした。
    • それより大きいのが控除です。3,000万円特別控除の有無で最大609万円。確定費用の総額よりひと桁大きい。
    • 登記事項証明書は令和7年4月1日に改定されています。「480円」と書いてあるページは古い。

    この記事で確認できなかったこと

    • 司法書士・税理士の報酬について、全国的な統計を確認できませんでした。公表資料に当たろうとしましたが、当サイトからは取得できていません。そのため本記事には報酬の金額を書いていません。見積りを取るときは、登録免許税と報酬を分けて出してもらってください。
    • 「実家じまいの総額」を集計した公的統計は見つかりませんでした。相続財産に関する統計は国税庁にありますが、処分にかかった費用の統計ではありません。
    • モデルケースの前提は当サイトが置いたものです。評価額・売却価格・相続人の数が変われば、すべての金額が変わります。特に譲渡所得税は含めていません。
    • 不動産取得税・固定資産税の精算金・測量費・境界確定費用は入れていません。発生するかどうかが物件によって変わるためです。
    • 仲介手数料は上限で計算しています。実際にいくらで合意するかは当事者次第です。
    • 登録免許税の免税措置(価額100万円以下の土地)が、あなたの土地に当たるかは確認していません。固定資産課税台帳の価格で判定します。

    あわせて読みたい

  • 解体補助金は、県ではっきり分かれます|501市区町村を調べたら、27県は全部にあり、沖縄は8件中6件になし

    【PR】本ページはプロモーションを含みます。

    連載「全国、ぜんぶ調べた。」第2回

    実家の解体に補助金が出るかどうかは、建物の状態ではなく、どの県にあるかで決まります。

    当サイトは全国501の市区町村を1件ずつ公式ページで調べています。その結果を都道府県で並べ直したら、愛知県は調べた35市町村すべてに制度がありました。静岡16、岐阜11、栃木11、群馬10——合わせて27県が「調べた全部にあった」。

    一方で沖縄県は8件中6件に、京都府は10件中6件に、制度がありませんでした。

    そしてもう一つ、制度があっても使えないことのほうが、実は多い。そこまで数えました。

    最終更新:2026年8月27日

    結論だけ先に

    • ★501件のうち制度がなかったのは81件(16.2%)。ただし27県は調べた全市町村にありました。ない県とある県が、はっきり分かれています。
    • 「制度がある」と「自分が使える」は別です。501件のうち耐震型が74件。これは耐震診断を受けた古い木造住宅が対象で、空き家の解体に使えるとは限りません。
    • ★東京都は50件中、空き家特化がわずか8件。耐震型が18件、制度なしが9件。都心3区(千代田・中央・港)には制度がありません。
    • 要件を数えたら、旧耐震(昭和56年5月31日以前)が条件のものが139件(33%)、市内業者の利用が条件のものが129件、所得制限があるものが116件。
    • 沖縄県は8件中2件だけ。しかもうち1件(那覇市)は地区限定です。

    この記事の数字は、当サイトが自分で集めた501市区町村のデータベースから数えたものです。全国約1,700市区町村の一部であり、人口の多い自治体を優先して調べています。そのため「全国平均」ではなく「調べた501件の中での分布」です。制度は年度ごとに変わります。必ず当年の公式ページで確認してください。

    1. 501件を、6つの型に分けました

    調べていて分かったのは、「解体補助金がある/ない」の二択では実態を表せないということでした。あっても空き家に使えない制度が多いからです。そこで6つに分類しました。

    調べた501市区町村の、制度の型 501市区町村の内訳 当サイト調べ・2026年8月27日時点 空き家特化256件 制度なし81件 耐震型74件 部分的55件 要確認19件 地区限定16件 赤=空き家の解体には使いにくい型(155件・31%)
    当サイトの補助金データベース(501市区町村)から集計
    型 件数 空き家の解体に使えるか
    空き家特化 256 使える。空き家であることが前提の制度
    制度なし 81 そもそもない
    耐震型 74 耐震診断が前提。空き家だと診断を受けられないことがある
    部分的 55 解体単独では出ず、建替えやリフォームとセット等
    要確認 19 公式ページの記載だけでは判断できなかった
    地区限定 16 指定された地区の中だけ。市内どこでもではない
    当サイトの分類。「使えるか」は要件欄の記述にもとづく当サイトの判断です

    素直に使えるのは「空き家特化」の256件、全体の51.1%です。残りの半分は、ないか、条件が別のところにあります。

    2. ★県で、はっきり分かれています

    都道府県ごとに「調べた件数」と「制度がなかった件数」を並べました。

    県別の「制度あり」と「制度なし」 県別・制度あり/なし 緑=制度あり 赤=制度なし 愛知県 35/35 静岡県 16/16 岐阜県 11/11 東京都 41/50 埼玉県 26/39 千葉県 19/29 茨城県 8/16 京都府 4/10 沖縄県 2/8 調べた件数が県で違うため、割合で読んでください
    当サイトの補助金データベースから集計。調べた市区町村の数は県によって違います

    調べた全市町村に制度があった27県

    愛知県 35/35、静岡県 16/16、岐阜県 11/11、栃木県 11/11、群馬県 10/10、長野県 9/9、三重県 8/8。

    以下、山口・広島・愛媛・山梨・香川・大分・山形・熊本・秋田・福井・鹿児島・富山・青森・宮崎・佐賀・島根・徳島・高知・和歌山・鳥取と続き、合計27県で「調べた全部にあった」という結果でした。

    制度がない割合が高い県

    都道府県 制度なし/調査数 割合
    沖縄県 6 / 8 75%
    京都府 6 / 10 60%
    滋賀県 5 / 9 56%
    茨城県 8 / 16 50%
    宮城県 3 / 7 43%
    千葉県 10 / 29 34%
    埼玉県 13 / 39 33%
    神奈川県 5 / 23 22%
    東京都 9 / 50 18%
    調査件数5件以上の都道府県。当サイトの補助金データベースから集計

    直感に反するかもしれませんが、制度がない割合が高いのは「田舎」ではありません。沖縄・京都・滋賀・茨城・千葉・埼玉——都市部を含む県が並びます。逆に愛知・静岡・岐阜・栃木・群馬・長野は、調べた全部にありました。

    ただしこれは当サイトが人口の多い自治体から優先して調べていることの影響も受けます。県ごとの調査件数が違うので、件数ではなく割合で読んでください。

    沖縄県の8件を、全部並べます

    市 結果
    糸満市 制度なし
    豊見城市 制度なし
    名護市 制度なし
    宜野湾市 制度なし
    うるま市 制度なし
    浦添市 制度なし
    沖縄市 空き家特化(使える)
    那覇市 地区限定(市内どこでもではない)
    当サイトの補助金データベースより。2026年8月時点

    8件中、市内どこでも使えるのは沖縄市の1件だけでした。

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    補助金が出るかどうかとは別に、解体費そのものを下げる

    この記事で見たとおり、501件のうち制度がなかったのは81件、素直に使える「空き家特化」は256件でした。補助が出るかどうかは市区町村で決まりますが、解体費そのものは自分で動かせます。タウンライフの解体一括見積りは、入力1回で複数の解体業者から見積りを取れるサービスです。補助金の申請には見積書が要るので、ここが揃わないと申請そのものができません。金額の幅が分かれば、補助が出なかったときにいくら必要かも先に見えます。

    申し込む前に4つだけ確認してください。①解体する意思がある方が対象です。相場だけ知りたい段階なら、その旨を伝えてください。
    ②申し込むと解体業者から電話またはメールで連絡が入ります。所在地・建物の構造・おおよその延べ床面積を答えられるようにしておくと早く終わります。
    ③補助金は契約・着工の前に申請してください。見積りを取ったあと、契約する前に市区町村へ。順番を逆にすると補助はゼロです。
    ④解体すると翌年から固定資産税が上がります。住宅用地の特例が外れるためです。

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    3. ★東京都の50件は、中身が違いました

    東京都は「制度なし18%」で、数字だけ見れば悪くありません。中身を開くと違いました。

    東京都 50件の内訳 件数
    耐震型 18
    制度なし 9
    空き家特化 8
    その他(部分的・地区限定・要確認) 15
    当サイトの補助金データベースから集計

    空き家の解体に素直に使える制度は、50件中8件しかありませんでした。

    「耐震型」とは何か

    実際の要件を、データベースからそのまま引きます。

    木造住宅耐震診断助成金の交付を受けた住宅、または昭和56年5月31日以前に建築された木造で延べ床面積の2分の1以上を現に居住用にしている住宅であること。賃貸住宅は対象外。市の指定する機関の耐震診断を受け、上部構造評点が…(清瀬市・清瀬市木造住宅耐震改修等助成〈除却枠〉)

    「現に居住用にしている」。空き家は、ここで外れます。

    昭和56年5月31日以前に新築工事に着手した2階建て以下の一戸建て木造住宅、市の補助を受けた耐震診断でIw値1.0未満または容易な耐震診断で市が倒壊の危険性ありと判断したもの…(昭島市・昭島市木造住宅耐震改修等補助制度〈除却工事〉)

    耐震診断を先に受ける必要があります。診断には申請と日程調整が要り、その分だけ時間がかかります。「解体しようと思って調べたら補助金があった」から着工までの距離が、空き家特化型とはまるで違います。

    都心3区には、制度がありません

    東京都で制度がなかった9市区は、千代田区・中央区・港区・小平市・狛江市・羽村市・あきる野市・国立市・武蔵村山市でした。

    千代田・中央・港。土地の値段が最も高い3区です。解体しても土地が売れるので、行政が補助する必要がない——という理屈は成り立ちます。制度がないこと自体が、その土地の性格を語っています。

    出典:当サイトの補助金データベース(各自治体の公式ページから採録)。個別の内容は空き家の解体補助金 全国一覧から確認できます。

    4. 制度があっても、要件で落ちます

    要件欄がある423件について、条件を数えました。

    条件 件数 読者にとっての意味
    旧耐震(昭和56年5月31日以前) 139(33%) それより新しい家は対象外
    市内業者の利用 129 安い業者が市外だと使えない
    所得制限 116 相続人の所得で落ちることがある
    特定空家等・管理不全空家等 103(24%) 行政から勧告等を受けていることが前提
    耐震診断 80(19%) 診断を先に受ける必要がある
    居住していること 57 空き家は外れる
    要件欄の記述を機械的に数えたもの。表現の違いで取りこぼしがある可能性があります

    いちばん引っかかるのが旧耐震の139件です。昭和56年(1981年)6月以降に建った家は、この条件で落ちます。親が40代で建てた家なら、いま築40年前後。ちょうど境目です。

    次が市内業者の129件。相見積りを取って安い業者を見つけても、市外だと補助が出ません。「補助50万円のために、見積り差50万円を捨てる」ことが起こり得ます。先に確認してください。

    所得制限の116件も見落とされがちです。相続した空き家の場合、誰の所得で判定するのかを窓口に確認してください。

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    解体の見積りを、もう1社から取る

    1社の見積りだけでは、その金額が高いのか安いのか判断できません。解体工事一括netは、同じ物件について別の業者からも見積りを取れるサービスです。この記事で見たとおり、市内業者限定が129件、所得制限が116件。条件で補助が使えなかったときに効いてくるのは、解体費そのものの差です。2社目を当てておくと、金額の妥当性が自分で判断できます。

    申し込む前に3つだけ確認してください。①解体する予定がない場合は申し込まないでください。
    ②申し込みには物件の情報が要ります。遠方の実家なら、次に帰ったときに外観と傷んでいる箇所を撮っておいてください。
    ③補助金を使う予定があるなら、契約・着工の前に自治体へ申請してください。着工後の申請は原則として通りません。

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    5. 何を、どう調べればいいのか

    1. まず自分の市区町村に制度があるかを全国一覧で確認する。
    2. あったら「型」を見る。空き家特化なら話が早い。耐震型なら、耐震診断から始まります。
    3. 建築年を確認する。昭和56年5月31日以前かどうかで、使える制度が変わります。登記事項証明書か固定資産税の課税明細書で分かります。
    4. 解体業者を決める前に、市内業者限定かを聞く。129件がこの条件です。
    5. 所得制限の有無と、誰の所得で見るかを聞く。116件にあります。
    6. 制度がなくても、隣の市にはあることがあります。ただし補助は物件の所在地の自治体です。期待はできません。

    やってはいけないこと

    • 「解体補助金がある」と聞いて、自分も使えると思い込む。素直に使える空き家特化型は501件中256件、半分です。
    • 耐震型を空き家特化型と同じだと考える。耐震診断が要り、「現に居住している」ことを条件にする制度もあります。
    • 業者を決めてから補助金を調べる。市内業者限定が129件あります。順番が逆だと使えません。
    • 建築年を確認しないで動く。旧耐震が条件のものが139件。境目は昭和56年5月31日です。
    • 「地区限定」を市内どこでも使えると読む。那覇市や品川区がこの型です。
    • 去年の情報で判断する。制度は年度ごとに新設・廃止されます。

    よくある質問

    Q. うちの市に解体補助金はありますか?

    当サイトが調べた501市区町村のうち、81件(16.2%)にはありませんでした。ただし27県は調べた全市町村にありました(愛知35/35、静岡16/16など)。全国一覧で自分の市区町村を探してください。

    Q. 制度はあるのに、対象外と言われました

    よくあります。501件のうち耐震型が74件あり、これは耐震診断を受けた古い木造住宅が対象です。「現に居住している」ことを条件にする制度もあり、空き家はそこで外れます。ほかに旧耐震139件、市内業者129件、所得制限116件という条件があります。

    Q. 都会のほうが補助金は手厚いですか?

    逆のことが起きています。制度がない割合は沖縄75%、京都60%、滋賀56%、茨城50%、千葉34%、埼玉33%。東京都では50件中9件になく、空き家特化はわずか8件です。千代田区・中央区・港区には制度がありません。

    Q. 昭和56年より新しい家は使えませんか?

    使える制度もありますが、選択肢は狭まります。旧耐震(昭和56年5月31日以前)を条件にしているのは423件中139件(33%)です。残りの制度なら建築年を問わないものもあります。建築年は登記事項証明書か固定資産税の課税明細書で確認できます。

    Q. 安い業者に頼みたいのですが

    市内業者限定の制度が129件あります。先に自治体に確認してください。補助額より見積りの差額のほうが大きいこともあります。解体費用の相場を先に把握したうえで、どちらが得か計算してください。

    Q. この数字は全国平均ですか?

    違います。調べた501市区町村の中での分布です。全国には約1,700の市区町村があり、当サイトは人口の多い自治体から順に調べています。県ごとの調査件数も違うので、件数ではなく割合で読んでください。

    まとめ

    • ★制度の有無は県ではっきり分かれます。27県は調べた全市町村にあり、沖縄は8件中6件になし。
    • 501件中、素直に使える「空き家特化」は256件(51.1%)。残り半分は、ないか条件が別にあります。
    • ★東京都は50件中、空き家特化がわずか8件。耐震型18件、制度なし9件。都心3区にはありません。
    • 要件で落ちます。旧耐震139件、市内業者129件、所得制限116件、居住要件57件。
    • 調べる順番は、制度の有無 → 型 → 建築年 → 業者の条件 → 所得制限。

    この記事で確認できなかったこと

    • 全国約1,700市区町村のうち501件しか調べていません。人口の多い自治体を優先しているため、この記事の比率を全国の比率として読むことはできません。県ごとの調査件数も3件から50件までばらつきがあります。
    • 6つの型への分類は、当サイトが要件欄の記述をもとに判断したものです。自治体が公式にこう分類しているわけではありません。「要確認」19件は判断できなかったものです。
    • 要件の集計は、機械的な文字列の照合です。「旧耐震」「市内業者」「所得制限」は表現が自治体ごとに違うため、取りこぼしがある可能性があります。実数はこれより多いと考えられます。
    • なぜ県によって差が出るのかは、確認できませんでした。県の補助制度の有無、空き家率、財政力との関係は調べていません。
    • 耐震型の制度で、空き家が実際に対象になるかどうかは自治体ごとに違います。要件欄に「居住」の記載がないものもあり、一律に対象外とは言えません。窓口で確認してください。
    • 各制度の予算額・実際の交付件数は集計していません。

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  • 親が子の名義で貯めたお金は、親の財産です|税務調査の82.3%で何かが出て、その43.3%は預金でした

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    連載「親が元気なうちに」第1回

    実家を片付けていたら、通帳が出てきた。自分の名前が印刷された通帳が。

    親が子や孫の名義で、コツコツ積み立てていた。よくある話です。そして、税務署がいちばん見ているのが、この通帳です。

    国税庁が公表している最新の調査結果を見てください。相続税の実地調査に入られると、82.3%で何かが出ています。そして出てきたものの43.3%は現金と預貯金でした。家屋は1.7%です。

    実家じまいの話をしているのに、税務署が見ているのは家ではなく、預金です。この記事は、国税庁の統計と国税不服審判所の裁決だけを使って、「子名義の預金が、なぜ親の財産と判定されるのか」と、親が元気なうちにできることを整理します。

    最終更新:2026年8月27日

    結論だけ先に

    • ★名義が子でも、実質が親のものなら親の財産です。これを「名義預金」と呼びます。相続財産に足して申告し直すことになります。
    • 調査に入られると82.3%で非違が出ます。1件当たりの申告漏れは3,093万円。出てきた財産の43.3%が現金・預貯金で、家屋はわずか1.7%でした。
    • ★「贈与契約書があるから大丈夫」は成り立ちません。実際に、贈与証があったのに親の財産と判定された裁決があります。
    • 分かれ目は、子が自分で口座を作り、通帳と印鑑を自分で持ち、自由に使えたかどうか。同じ裁決で、2つの口座の結論が正反対になっています。
    • 2024年から、生前贈与の持ち戻しは3年ではなく7年です。直せるのは、親が元気なうちだけです。

    この記事は国税庁と国税不服審判所の公表資料、および民法・相続税法だけで書いています。当サイトに税理士はいません。実際の判断は個別の事情によって変わります。金額が大きい場合は、必ず税理士に相談してください。

    1. 税務署が見ているのは、家ではありません

    国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」から、そのまま数字を出します。

    項目 件数・金額
    実地調査の件数 9,512件
    うち申告漏れ等の非違があった件数 7,826件
    非違割合 82.3%
    申告漏れ課税価格の総額 2,942億円
    実地調査1件当たりの申告漏れ 3,093万円
    簡易な接触(電話や文書での照会) 21,969件(うち非違 5,796件)
    国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」から作成

    調査に入られたら、8割超で何かが出ています。そして、出てきたものの中身がこれです。

    令和6事務年度 申告漏れ相続財産の金額の構成比 税務調査で出てきた財産の内訳 令和6事務年度・申告漏れ課税価格 2,942億円 現金・預貯金等43.3% 有価証券29.1% その他13.6% 土地12.3% 家屋1.7% 出典:国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」
    申告漏れ相続財産の金額の構成比。金額では現金・預貯金等が1,247億円、有価証券837億円、その他393億円、土地353億円、家屋50億円

    現金・預貯金等が43.3%。家屋は1.7%です。不動産は登記されていて隠しようがないので、当然といえば当然です。問題は、どこにあるか分かりにくいお金のほうに集まります。

    そして、この1,247億円の中で大きな比重を占めるのが名義預金です。

    出典:国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」

    ★税務署がさかのぼれる年数も、条文にあります

    国税通則法第七十条(国税の更正、決定等の期間制限)
    1 次の各号に掲げる更正決定等は、当該各号に定める期限又は日から五年……を経過した日以後においては、することができない。
    一 更正又は決定 その更正又は決定に係る国税の法定申告期限……
    5 次の各号に掲げる更正決定等は、第一項……の規定にかかわらず、……同項各号に定める期限又は日から七年を経過する日まで、することができる。
    一 偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ……た国税……についての更正決定等

    出典:e-Gov法令検索 国税通則法第70条(全文を開いて確認/2026年9月3日)。括弧書きの一部を省略しています

    原則は5年、「偽りその他不正の行為」があれば7年です。起算点は「法定申告期限」——相続税なら、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月です。

    ここで気をつけたいことがあります。名義預金は「親の財産を申告していなかった」という話であって、口座を作った時点にさかのぼる話ではありません。20年前に入金された口座でも、相続税の申告漏れとして問われます。期間制限が数えるのは、口座を作った日ではなく相続税の法定申告期限からの年数です。

    さかのぼれる年数は、2つあります 原則 5年です 70条1項 起算点は 法定申告期限 偽りその他不正 7年です 70条5項1号 税額を免れた 場合に限る 数えるのは、口座を作った日からではありません

    2. 名義預金とは何か

    通帳の名義は子や孫。でも、実質的には親の財産のまま。これが名義預金です。

    なぜそうなるかというと、贈与が成立していないからです。民法549条は、贈与をこう定めています。

    贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる

    「あげる」と「もらう」の両方が要ります。親が勝手に子名義の口座を作って入金しても、子がそれを知らなければ「受諾」がありません。贈与は成立せず、お金は親のものです。

    そして親が亡くなったとき、それは相続財産に足されます。

    問題になるのは、いつも後からです 1 親が入金 何年も前のことがあります 2 子は知らない ★受諾がない。民法549条 3 相続の開始 ここで財産の範囲が決まります 4 税務調査 法定申告期限から5年。70条1項 5 相続財産に加算 贈与が成立していないため

    ★「贈与」が成立する条件は、民法549条にあります

    名義預金がなぜ親の財産のままなのか。その入口は、税法ではなく民法です。

    民法第五百四十九条(贈与)
    贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

    出典:e-Gov法令検索 民法第549条(全文を開いて確認/2026年9月3日)。これが条文のすべてです

    「相手方が受諾をすることによって」。ここが決定的です。贈与は、あげる側の意思だけでは成立しません。もらう側が受け取ることを承知して、はじめて効力が生じます。

    子が口座の存在を知らなければ、受諾のしようがありません。だから贈与は成立せず、そのお金は親のものであり続けます。「子の名義だから子のもの」ではなく、「贈与が成立していないから親のもの」という順番です。

    この記事が挙げた裁決で、2つの口座の結論が分かれたのも、この「受諾」に当たる事実があったかどうかの違いです。

    受諾がなければ、贈与は成立しません 子は受け取ることを承知していましたか はい 贈与が成立します 民法549条 いいえ 成立していません 親の財産のまま

    書面がないと、解除できてしまいます(550条)

    民法第五百五十条(書面によらない贈与の解除)
    書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

    出典:e-Gov法令検索 民法第550条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    口約束の贈与は、どちらからでも解除できます。「あげた」「もらった」と当事者が思っていても、書面がなければ法律上はまだ動かせる状態です。贈与契約書を作る意味は、ここにあります。

    ただし「履行の終わった部分」は解除できません。実際に渡し終えていれば、書面がなくても戻せません。つまり、渡し終えたという事実が残っていることが大事だということです。子自身が管理する口座に振り込まれ、子が通帳と印鑑を持ち、自分で出し入れしている——その状態が「履行の終わった」に近づきます。

    贈与を成立させる3つ 相手方の受諾 民法549条。知らせてある 整えられます 書面にする 民法550条。口約束は解除可 整えられます 相続開始前7年以内 相続税法19条1項。加算されます 整えられない 緑はそのまま進める。黄は立ち止まって確かめる

    3. ★同じ裁決で、2つの口座の結論が正反対になりました

    国税不服審判所の令和3年9月17日裁決を見てください。この事案には、同じ親が同じ贈与証にもとづいて開設した、複数の子名義の口座が出てきます。

    結論は、正反対に分かれました。

    親の財産と判定されたほう

    請求人名義口座は、本件贈与証に記載したとおりの贈与の履行がされているとの外形を作出するために本件被相続人により開設され、平成27年8月まで本件被相続人自身の支配管理下に置かれていたものと認められるから、請求人名義預金は、本件被相続人に帰属する財産であったと認めるのが相当である。

    「贈与の外形を作出するために開設された」。厳しい言い方です。贈与証は存在していました。それでも足りませんでした。

    本人の財産と認められたほう

    したがって、M名義預金は、平成13年の口座開設当初から、Mに帰属するものと認められるから、本件相続財産には含まれない。

    何が違ったのか

    裁決書に認定事実として並んでいる、負けたほうの事情がこれです。

    裁決で認定された事実 意味
    口座の開設手続や本人確認書類の準備を自ら行ったことはない 作ったのは親
    預金の存在を知らされていなかった 受諾がない=贈与が成立しない
    通帳と印章は親が自ら保管していた 支配管理は親のまま
    口座開設時から払出しまで、出金がない 本人が使った形跡がない
    入金が途絶えた理由を知らされていない 本人は関与していない
    国税不服審判所 令和3年9月17日裁決の認定事実から作成

    ★「贈与契約書を作れば大丈夫」という説明は、この裁決では通っていません。書面はあったのです。足りなかったのは、書面ではなく実態でした。

    出典:国税不服審判所「令和3年9月17日裁決」/民法549条・550条

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    4. 親が元気なうちにできること

    ここからが、この連載の本題です。名義預金は、親が亡くなったあとでは直せません。贈与は相手が生きていないと成立しないからです。

    やること

    1. 子が自分で口座を開く。本人確認書類を出し、自分の筆跡で書類を書く。親が代わりに作らない。
    2. 通帳・キャッシュカード・印鑑を、子が持つ。裁決で決定的だったのがここです。親が持っていたら、親の財産と見られます。
    3. 子が、もらったことを知っている。民法549条の「受諾」です。黙って入金しても贈与になりません。
    4. 実際に使う。一度も出金がない口座は「本人のもの」と見てもらいにくくなります。
    5. 贈与契約書は作る。ただしそれだけに頼らない。裁決のとおり、書面があっても実態が伴わなければ負けます。
    6. 親の預金の全体像を、今のうちに把握する。どの金融機関に口座があるか。亡くなってから探すと、何か月もかかります。

    ★2024年から、持ち戻しは3年ではなく7年です

    ここも変わっています。国税庁の資料はこう書いています。

    相続開始前3年以内から7年以内に延長/令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用/延長された4年間に贈与により取得した財産の価額については、総額100万円まで加算されません

    つまり「そろそろ危ないから、慌てて贈与しておこう」が効きにくくなりました。7年前に戻って足されるからです。間に合わせでやるものではなく、早くから続けるものになったと考えてください。

    あわせて、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が創設されています。こちらは基礎控除を引いた後の残額が相続税の課税価格に加算されます。どちらを使うかは金額と年数で変わるので、税理士に計算してもらってください。

    出典:国税庁「相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」(令和5年6月)

    ★贈与しても、7年以内なら足し戻されます(相続税法19条)

    名義預金にならないよう、きちんと贈与したとします。それでも、相続の直前の贈与は相続税の計算に戻ってきます。

    相続税法第十九条(相続開始前七年以内に贈与があつた場合の相続税額)
    相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前七年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、その者については、当該贈与により取得した財産……の価額(加算対象贈与財産のうち当該相続の開始前三年以内に取得した財産以外の財産にあつては、当該財産の価額の合計額から百万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなし……

    出典:e-Gov法令検索 相続税法第19条第1項(全文を開いて確認/2026年9月3日)。括弧書きの一部を省略しています

    7年以内。そして「3年以内に取得した財産以外」——つまり延長された4年分については、合計100万円を控除した残額が加算されます。4年分で100万円です。1年につき100万円ではありません。

    「相続又は遺贈により財産を取得した者」が対象です。条文はそう書いています。相続で何も取得しない人への贈与は、この条文の加算の対象になりません。ただしそれは相続税の話で、贈与税は別に計算されます。

    だから「元気なうちに」なのです。7年という長さを、条文が置いています。

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    申し込む前に4つだけ確認してください。①申し込めるのは名義人か、そのご親族です。親名義の実家なら、親の同意を得てから申し込んでください。
    ②申し込むと不動産会社から電話またはメールで連絡が入ります。所在地・築年数・間取りを答えられるようにしておくと早く終わります。
    ③売却を考えていない段階なら、その旨を伝えてください。「今は金額だけ知りたい」で構いません。
    ④査定額は「売れる価格」ではありません。相続税評価額とも別の数字です。

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    やってはいけないこと

    • 親が子名義の口座を作り、通帳と印鑑を持ち続ける。裁決でいちばん重く見られた事実です。
    • 子に知らせずに入金する。民法549条の受諾がないので、贈与が成立しません。
    • 贈与契約書だけ作って安心する。令和3年9月17日裁決では、贈与証があっても親の財産と判定されました。
    • 親が亡くなってから何とかしようとする。贈与は相手が生きていないと成立しません。直せるのは生前だけです。
    • 申告しないで様子を見る。調査に入られた場合の非違割合は82.3%です。
    • 実家の名義だけ気にして、預金を見ない。申告漏れの43.3%は現金・預貯金、家屋は1.7%です。

    よくある質問

    Q. 子どもの名義で貯めた預金は、誰のものですか?

    実質で判断されます。名義が子でも、親が口座を作り、通帳と印鑑を持ち、子が存在を知らなかったなら、親の財産(名義預金)として相続財産に加算されます。令和3年9月17日裁決は、贈与証がある事案でもそう判断しました。

    Q. 贈与契約書を作れば大丈夫ですか?

    それだけでは足りません。同じ裁決で、贈与証があったにもかかわらず「贈与の履行がされているとの外形を作出するために開設された」と認定され、親の財産とされています。通帳と印鑑を子が持ち、子が自由に使える状態にすることのほうが重く見られます。

    Q. 毎年110万円までなら贈与税はかからないと聞きました

    贈与が成立していることが前提です。受け取る側が知らなければ、そもそも贈与ではありません。また2024年1月1日以後の贈与からは、相続開始前7年以内のものが相続財産に加算されます(延長された4年分については総額100万円まで加算されません)。

    Q. 税務調査はどのくらい来るのですか?

    令和6事務年度の実地調査は9,512件で、うち7,826件(82.3%)で非違がありました。ほかに「簡易な接触」が21,969件あり、そのうち5,796件で非違が出ています。実地調査1件当たりの申告漏れ課税価格は3,093万円です。

    Q. もう親が認知症です。今からできますか?

    贈与は本人の意思表示が要るため、判断能力が失われた後は困難です。実家の売却も同様の問題が起きます。認知症の親の家は売れませんを先に読んでください。「元気なうちに」というのは、比喩ではありません。

    Q. 親が亡くなったあとに名義預金が見つかりました

    相続財産に含めて申告することになります。すでに申告済みなら修正申告です。遺産分割の対象にもなるため、兄弟間の取り分にも影響します。金額が大きい場合は税理士に相談してください。

    まとめ

    • ★税務署が見ているのは家ではなく預金です。申告漏れの43.3%が現金・預貯金、家屋は1.7%。
    • 実地調査に入られると82.3%で非違が出ています。1件当たり3,093万円。
    • 名義が子でも、実質が親なら親の財産です。民法549条の「受諾」がないと贈与は成立しません。
    • ★贈与契約書があっても負けた裁決があります。分かれ目は、子が自分で口座を作り、通帳と印鑑を持ち、実際に使えたかどうか。
    • 2024年から持ち戻しは7年。間に合わせの贈与は効きにくくなりました。
    • 直せるのは、親が元気なうちだけです。

    この記事で確認できなかったこと

    • 申告漏れ1,247億円のうち、名義預金がいくらを占めるかは公表されていません。国税庁の統計は「現金・預貯金等」までの区分で、名義預金という内訳はありません。本文では「大きな比重を占める」としか書いていないのはそのためです。
    • 名義預金の帰属を判断する一般的な基準を、条文や通達として示した一次情報は見つけられませんでした。本記事の判断材料は、個別の裁決で認定された事実です。事案が変われば結論も変わります。
    • 民法549条・550条、国税通則法70条、相続税法19条の全文は、e-Gov法令検索で確認して本文に引用しました。ただし名義預金の帰属を判断する一般的な基準は、これらの条文には書かれていません。条文が定めているのは「贈与が成立する条件」までです。
    • 令和3年9月17日裁決の当事者名・金額は、公表資料では伏せられています。「〇〇〇〇円」と表記されており、実額は確認できません。
    • 税務調査で名義預金が指摘された件数・割合は確認できませんでした。
    • 相続時精算課税と暦年課税のどちらが有利かは、金額・年数・相続人の数で変わります。本記事では比較していません。
    • 孫名義・配偶者名義の場合の扱いの違いは確認していません。本記事が扱ったのは子名義の事案です。

    この連載について

    「親が元気なうちに」は、まだ間に合ううちにできることだけを書く連載です。

    当サイトの記事は、これまでほとんどが「親が亡くなったあと」の話でした。相続登記、遺産分割、売却、解体。でも読者は、その前に必ず「親が元気なうち」を通ります。そこで打てる手のほうが、はるかに多い。この連載はそこを埋めます。

    次回以降の予定です。

    • 親の口座を、今のうちに一覧にする。亡くなってから探すと何か月もかかります。
    • 家族信託と任意後見は、どちらを先に検討するか|第3回。公開しました。
    • 実家の登記を、親が元気なうちに確かめる。祖父名義のままだと、相続人が一気に増えます。

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  • 解体補助金に「締切」はありません|全国423制度を調べたら、3分の2に締切日が書かれていませんでした

    【PR】本ページはプロモーションを含みます。

    連載「全国、ぜんぶ調べた。」第1回

    実家の解体に補助金が出ると聞いて、こう考えていませんか。「年度内、つまり3月までに申請すれば間に合うだろう」と。

    当サイトは、全国501の市区町村について、空き家の解体に使える補助制度を1件ずつ公式ページで調べています。そのうち制度があったのは423件。その423件の「申請期間」の欄に何が書かれているかを、全部数えました。

    結果は、予想と違いました。締切の日付が書いてあったのは、146件だけです。残りの277件には、日付がありません。

    最終更新:2026年8月27日

    結論だけ先に

    • ★423制度のうち、締切日が書いてあるのは146件(35%)だけ。残り277件は日付がありません。
    • 「予算がなくなり次第終了」が89件。この型には、そもそも締切日が存在しません。早い者勝ちです。
    • 締切が公表されていないものが96件。公式ページを読んでも、いつまでかが分かりません。
    • ★日付が書いてある146件でも、最多は2月(34件)。11月から3月に111件(76%)が集中します。「3月に動けばいい」は成り立ちません。
    • 先着順と明記しているのが74件、抽選が7件。枠の件数を公表しているのは65件で、その中央値は14件です。

    この記事の数字は、すべて当サイトが自分で集めた501自治体のデータベースから数えたものです。集計の方法と、数えられなかった分は本文と末尾に書いてあります。制度は年度ごとに変わります。実際に申請するときは、必ずお住まいの市区町村の当年の公式ページで確認してください。

    1. 何を、どう数えたか

    数字の話をする前に、方法を書きます。ここを書かない集計は、信じる根拠がありません。

    項目 内容
    対象 全国501市区町村(47都道府県すべてを含む)
    調べ方 各自治体の公式ページを1件ずつ開いて、制度名・上限額・補助率・要件・申請期間・予算枠・担当課・電話番号を書き写した
    制度があった 423件
    制度がなかった 78件(別途、分類が確定できないものが3件)
    今回数えたもの 423件の「申請期間」欄の記述
    集計日 2026年8月27日時点のデータベースの内容
    当サイトの補助金データベース(501件)から集計

    501という数は、全国の市区町村(約1,700)の一部です。人口の多い自治体から優先して調べているため、この記事の数字は「全国平均」ではなく「調べた501件の中での分布」です。そこは正確に読んでください。

    2. 締切日が書いてあるのは、3分の1

    423件の「申請期間」欄を、「◯月◯日まで」という締切の日付が読み取れるかで二つに分けました。

    423制度の申請期間欄に締切日が書かれているか 146 277 締切日あり 35% 締切日なし 65% n=423(当サイト調べ・2026年8月27日時点)
    「◯月◯日まで」と読み取れる記述があったものを「締切日あり」とした

    3分の2に、締切の日付がありません。これは自治体が不親切だという話ではなく、制度の設計がそもそもそうなっているという話です。次で中身を見ます。

    3. 日付がない277件に、何が書かれていたか

    書かれていたこと 件数 読者にとっての意味
    締切が公表されていない 96 公式ページを読んでも、いつまでか分からない
    予算がなくなり次第終了 89 締切日という概念がない。早い者勝ち
    月は書いてあるが、締切の表現ではない 45 工事完了や実績報告の期限であって、申請期限ではない
    その他 23 —
    通年・随時受付 16 期限はないが、予算の制約は別にある
    今年度は受付終了 6 調べた時点で、すでに閉まっていた
    要問い合わせ 2 電話しないと分からない
    締切日が読み取れなかった277件の内訳。当サイトの501自治体データベースから集計

    いちばん多いのが「公表されていない」96件です。制度はある。金額も要件も書いてある。なのに、いつまでに出せばいいのかだけが書かれていません。

    次が「予算がなくなり次第終了」89件。これは書き忘れではなく、そういう制度だということです。年度の予算に達したら、その時点で閉まります。4月に閉まることもあれば、3月まで残ることもあります。

    実物を見てください

    データベースに実際に書かれている記述から、そのまま引きます。

    明記なし(申請は先着順、予算に限りがあります)。解体工事完了後、施工者への支払いを済ませたうえで申請した年度末(2月末)までに実績報告できる工事に限ります(千曲市)

    申請の締切は書いていないのに、「2月末までに実績報告できる工事に限る」とは書いてあります。実績報告が2月末なら、工事はその前に終わっていなければならず、契約と着工はさらに前です。逆算すると、実質的な期限は書かれている日付よりずっと早い。

    受付期間の明示なし(平成31年4月から通年で実施)。交付決定通知日から90日以内または申請年度の1月末日のいずれか早い日までに契約、工事完了日から30日以内または2月末日のいずれか早い日まで(常滑市)

    「通年で実施」と書いてありますが、契約は1月末、完了報告は2月末という縛りがあります。通年だから急がなくていい、とは読めません。

    出典:当サイトの補助金データベース(各自治体の公式ページから採録)。制度の詳細は空き家の解体補助金 全国一覧から各市区町村のページで確認できます。

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    補助金の枠が残っているうちに、解体費そのものを押さえる

    この記事で見たとおり、枠の中央値は年14件、先着順が74件です。動くと決めたなら、見積りは早いほど有利になります。タウンライフの解体一括見積りは、入力1回で複数の解体業者から見積りを取れるサービスです。補助金の申請には見積書が要るので、ここが揃わないと申請そのものができません。金額の幅が分かれば、補助金50万円で足りるのか足りないのかも判断できます。

    申し込む前に4つだけ確認してください。①解体する意思がある方が対象です。相場だけ知りたい段階なら、その旨を伝えてください。
    ②申し込むと解体業者から電話またはメールで連絡が入ります。所在地・建物の構造・おおよその延べ床面積を答えられるようにしておくと早く終わります。
    ③補助金は契約・着工の前に申請してください。見積りを取ったあと、契約する前に市区町村へ。順番を逆にすると補助はゼロです。
    ④解体すると翌年から固定資産税が上がります。住宅用地の特例が外れるためです。

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    4. 締切日がある146件でも、3月ではありません

    では、締切日が明示されている146件は、いつ閉まるのか。制度ごとに最も遅い締切を1つだけ数えました。

    締切日が明示されている146制度の締切月の分布 締切の月(n=146) 4月1 5月7 6月7 7月2 8月3 9月8 10月7 11月20 12月22 1月16 2月34 3月19 濃い色=11月〜3月。ここに111件(76%)が集まる
    制度ごとに最も遅い締切を1件として集計。当サイトの501自治体データベースから

    最多は2月の34件です。3月は19件しかありません。「年度末まで待ってくれる」制度のほうが少数派です。

    そして11月から3月に111件、76%が集まります。秋のうちに動き出していないと、この山に間に合いません。解体は見積り・契約・近隣説明・着工と工程が長いので、申請の期限から逆算すると、動き始めるのは夏です。

    5. 「先着順」74件、「抽選」7件

    締切より怖いのが、埋まり方です。

    • 先着順と明記しているもの——74件
    • 抽選と明記しているもの——7件

    先着順が抽選の10倍あります。つまり大半の制度で、早く出した人から順に埋まります。抽選なら締切まで待っても条件は同じですが、先着順は待つほど不利になります。

    枠の件数を公表しているのは65件だけ

    「予算枠・件数」の欄に件数が書かれていたのは65件でした。その分布です。

    件数を公表している65件の分布 値
    中央値 14件
    上位25%の境目 20件
    10件以下だったもの 43%
    5件以下だったもの 12件
    「予算枠・件数」欄から件数を読み取れた65件を集計

    市の予算で用意されている枠が、年に14件。これが真ん中の姿です。10件以下の自治体が43%あります。人口10万人の市で、年に10件。空き家の数を考えれば、行き渡らないのは当然です。

    残る202件は件数を公表していません。枠がいくつあるのかも、あと何件残っているのかも、外からは見えません。

    6. 金額は「50万円」に横並びしています

    ついでに上限額も数えました。「◯万円」と数値で書かれていた381件のうち——

    補助上限額(381件) 値
    中央値 50万円
    ちょうど50万円だったもの 134件(35%)
    下位25%の境目 30万円
    上位25%の境目 70万円
    100万円以上 65件
    「万円」表記から数値化できた381件を集計。定額・上限・地区別など表記の形は自治体で異なる

    3件に1件が、ぴったり50万円です。相場というより横並びです。解体費用そのものは木造30坪で100万円台後半から200万円台になることが多く、50万円では足りません。補助金は「足しになる」ものであって、「解体費が浮く」ものではありません。

    一方で、密集市街地の対策として設けられた制度には桁の違うものがあります。品川区は床面積×31,000円/㎡(1,550万円を限度)、大阪市の重点対策地区は集合住宅2,000万円/棟。ただしどちらも地区限定で、区内・市内ならどこでも使えるわけではありません。

    費用そのものは実家の解体費用に、税金への跳ね返りは解体すると固定資産税は何倍になるのかにまとめています。

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    1社の見積りだけでは、その金額が高いのか安いのか判断できません。解体工事一括netは、同じ物件について別の業者からも見積りを取れるサービスです。この記事で見たとおり、補助金の中央値は50万円。解体費の総額が何十万円か変われば、補助金の有無より影響が大きくなります。2社目を当てておくと、金額の妥当性が自分で判断できます。

    申し込む前に3つだけ確認してください。①解体する予定がない場合は申し込まないでください。
    ②申し込みには物件の情報が要ります。遠方の実家なら、次に帰ったときに外観と傷んでいる箇所を撮っておいてください。
    ③補助金を使う予定があるなら、契約・着工の前に自治体へ申請してください。着工後の申請は原則として通りません。

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    7. では、いつ動けばいいのか

    ここまでの数字から言えることは、ひとつです。「締切を調べて、そこから逆算する」という考え方が、そもそも成立しません。3分の2の制度には締切がないからです。

    代わりにやることは、これです。

    1. 年度が始まる4月に、自分の市区町村の担当課へ電話する。「今年度の受付は始まっていますか」「枠は何件ですか」の2つだけ聞けば足ります。担当課と電話番号は全国一覧の各ページに載せてあります。
    2. 「予算がなくなり次第終了」と言われたら、その年度のうちで最速で動く。89件がこの型です。
    3. 契約と着工の前に申請する。ここを逃すと、締切に間に合っていても補助はゼロです。ほぼすべての自治体で共通します。
    4. 秋までに見積りを取り終える。締切日がある制度の76%は11月〜3月に閉まります。工程を逆算すると夏が起点です。

    やってはいけないこと

    • 「年度内だから3月まで大丈夫」と考える。締切日がある146件のうち、3月は19件だけです。最多は2月です。
    • 締切が書いていないのを見て「期限がない」と読む。96件は公表していないだけ、89件は予算が尽きた時点で閉まります。
    • 解体業者と契約してから申請する。順番が逆だと、ほぼ確実に対象外です。
    • 補助金の額だけで解体を決める。中央値50万円に対し、解体費は数倍です。さらに翌年から固定資産税が上がります。
    • 去年のページを見る。制度は年度ごとに変わります。上限額も枠も受付期間も動きます。

    よくある質問

    Q. 結局、いつまでに申請すればいいのですか?

    制度によって違い、3分の2は日付が決まっていません。当サイトが調べた423制度のうち、締切日が明示されていたのは146件(35%)です。89件は「予算がなくなり次第終了」で、そもそも日付が存在しません。年度の早いうちに担当課へ電話するのが唯一確実な方法です。

    Q. 3月末までに申請すれば間に合いますか?

    多くの場合、間に合いません。締切日がある146件のうち、3月締切は19件だけ。最多は2月の34件で、11月〜3月に111件(76%)が集中します。さらに先着順が74件あるため、締切前に枠が埋まることがあります。

    Q. 枠は何件くらいあるのですか?

    件数を公表しているのは65件だけで、その中央値は14件です。10件以下が43%を占めます。残り202件は枠の件数を公表していません。担当課に電話すれば教えてもらえることがあります。

    Q. いくらもらえますか?

    中央値は50万円で、381件中134件(35%)がちょうど50万円です。下位25%の境目が30万円、上位25%の境目が70万円。100万円以上は65件です。解体費用の総額には届きません。

    Q. うちの市には制度がありませんでした

    501件のうち78件は制度がありませんでした。珍しいことではありません。ただし年度ごとに新設・廃止があるため、去年なかった自治体に今年できていることもあります。全国一覧で自分の市区町村を確認してください。

    Q. この数字は全国平均ですか?

    違います。調べた501市区町村の中での分布です。全国には約1,700の市区町村があり、当サイトは人口の多い自治体から順に調べています。全国を代表する標本ではありません。そのつもりで読んでください。

    まとめ

    • ★423制度のうち、締切日が書いてあるのは146件(35%)だけ。
    • 96件は締切を公表しておらず、89件は「予算がなくなり次第終了」。
    • 日付がある146件でも最多は2月(34件)。3月は19件。11〜3月に76%が集中します。
    • ★先着順74件に対し抽選は7件。待つほど不利になる制度が大半です。
    • 枠の件数を公表しているのは65件、中央値14件。10件以下が43%。
    • 上限額の中央値は50万円。3件に1件がぴったり50万円。
    • やることは1つ。年度が始まったら担当課に電話する。

    この記事で確認できなかったこと

    • 全国約1,700市区町村のうち、501件しか調べていません。人口の多い自治体を優先しているため、この記事の比率を全国の比率として読むことはできません。
    • 「締切日あり」の判定は、当サイトが機械的に文字列を読んで分類したものです。「◯月◯日まで」と読み取れるかを基準にしており、人が読めば締切と分かる別の表現を取りこぼしている可能性があります。
    • 各制度の実際の予算額(円)は集計していません。「予算枠・件数」欄に件数が書かれていた65件だけを数えました。
    • 先着順74件・抽選7件は、公式ページにその語が明記されていたものだけです。明記がなくても運用上は先着順という自治体があると考えられますが、確認していません。
    • 実際に何件申請され、何件が採択されたかという実績は、確認できませんでした。公表している自治体が少なく、全国での集計は見つけられませんでした。
    • 上限額の集計は「万円」表記から数値化できた381件のみです。「床面積×単価」型や地区別に額が分かれる制度は、代表値を1つ選べないため一部を除いています。
    • 年度をまたいだ変化は追えていません。今回は2026年8月27日時点の1時点のデータです。連載を続けるなかで、次年度との比較を出す予定です。

    この連載について

    「全国、ぜんぶ調べた。」は、当サイトが自分で集めたデータからしか書けないことだけを書く連載です。他サイトの引用も、推計も使いません。数えたものを数えたとおりに出し、数えられなかったものは数えられなかったと書きます。

    現在のデータベースは解体補助金501市区町村と水道加入金326市区町村です。次回以降、こんなことを扱う予定です。

    • 制度がある県と、ない県。愛知県は調べた35市町村すべてに制度がありました。沖縄県は8件中6件にありませんでした。
    • 水道をつなぎ直すだけで、45万円。加入金は最安3万2千円から最高45万1千円まで、14倍の開きがあります。
    • 同じ金額が5つの市町に並ぶ理由。451,000円が5市町で完全に一致しています。

    連載「全国、ぜんぶ調べた。」の記事をぜんぶ見る

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  • 親の口座が凍結されて葬儀代が払えないとき|兄弟の同意なしで下ろせます。ただし1金融機関150万円まで

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    父が亡くなった。葬儀社への支払いが150万円。実家の固定資産税も、施設の未払い分もある。お金はある。父の口座に。でも銀行は「相続人全員の書類がそろわないと出せません」と言う。

    兄は海外にいて連絡がつかない。妹とは10年口をきいていない。遺産分割がまとまるまで、1円も動かせない。

    これは制度の欠陥として認識され、2019年(令和元年)7月1日から、法律で解決されています。民法909条の2。相続人ひとりで、単独で、他の相続人の同意なしに払い戻せる制度です。

    ただし金額に上限があり、使うと後戻りできない性質があります。この記事は、民法・法務省・全国銀行協会・国会の資料だけで、いくらまで出せるのか、何が必要か、そして使う前に知っておくべきことを整理します。

    最終更新:2026年8月27日

    結論だけ先に

    • ★計算式は「口座の残高 × 3分の1 × 自分の法定相続分」。ただし同じ金融機関からは150万円が上限です(法務省令)。銀行が3行に分かれていれば、それぞれで判定します。
    • 他の相続人の同意は要りません。これが制度の核心です。連絡がつかない相続人がいても、仲が悪くても、自分ひとりで手続きできます。
    • ★施行日より前に亡くなった人の預金にも使えます。法附則5条が新法主義を採っているためです(法務省資料)。2019年6月に開始した相続でも対象です。
    • 払い戻した分は「遺産の一部分割で取得した」とみなされます(909条の2後段)。あとの遺産分割で、その分は自分の取り分から差し引かれます。タダでもらえるお金ではありません。
    • 150万円で足りないときは、家庭裁判所の「仮分割の仮処分」があります(家事事件手続法200条3項)。上限の定めはありませんが、遺産分割の審判か調停を申し立てていることが前提です。

    この記事は民法・家事事件手続法と、法務省・全国銀行協会・参議院の公表資料だけで書いています。当サイトに弁護士も司法書士もいません。必要書類と運用は金融機関ごとに違います。手続きの前に、口座のある金融機関に確認してください。確認できなかったことは記事末尾に並べてあります。

    1. なぜ「勝手に下ろせない」のか——2016年に最高裁が変えました

    昔は、相続人が自分の法定相続分だけなら銀行から引き出せる、と考えられていた時期がありました。それが変わったのが平成28年12月19日の最高裁大法廷決定です。

    参議院の調査資料は、この決定を受けた法務省の説明をこう記録しています。

    緊急な資金需要がある場合であっても、遺産分割が終わるまでの間、全員の同意が得られない限り払戻しをすることができないという不都合が新たに生ずる

    預貯金を遺産分割の対象に含めたことで公平にはなったが、代わりに「誰も1円も動かせない」期間ができてしまった。その穴を埋めるために作られたのが、この払戻し制度です。

    だからこの制度は「例外的に認められた抜け道」ではなく、法律が正面から用意した通常の手段です。銀行の窓口で遠慮する必要はありません。

    2. 条文はこうなっています

    民法909条の2(遺産の分割前における預貯金債権の行使)の全文です。

    各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

    読みにくいので、分解します。

    条文の言葉 意味
    相続開始の時の債権額 亡くなった日の残高です。今の残高ではありません
    三分の一 まず残高を3で割ります
    第九百条及び第九百一条の相続分 法定相続分(配偶者1/2、子で等分など)。遺言や協議の割合ではありません
    債務者ごとに法務省令で定める額 「債務者」=金融機関のこと。金融機関ごとに上限がかかります
    単独でその権利を行使することができる 他の相続人の同意も、実印も、印鑑証明も要らない
    遺産の一部の分割により取得したものとみなす あとで精算される。前借りです
    法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律 新旧対照条文」および裁判所の参考条文資料から作成

    3. いくら下ろせるのか

    法務省のパンフレットは、計算式をこう示しています。

    (相続開始時の預貯金債権の額(口座基準))×1/3×(当該払戻しを行う共同相続人の法定相続分)

    そして上限です。

    1つの金融機関から払戻しが受けられるのは150万円まで

    法務省が挙げている例

    預金600万円、相続人は妻と長男・長女(法定相続分は妻1/2、子はそれぞれ1/4)というケースで、法務省は「預金600万円 → 長男100万円払戻し可」としています。

    全国銀行協会のリーフレットは、同じ例の計算過程を書いています。

    長男が単独で払戻しができる額=600万円×1/3×1/2=100万円

    この2つは同じ600万円の例ですが、掛けている相続分が違います。法務省の例は相続人が妻と子2人(長男の相続分1/4)、全銀協の例は長男の相続分が1/2のケースです。自分の家族構成で法定相続分がいくつになるかを先に確定してください。ここを間違えると計算が合いません。

    自分の場合を計算する

    相続人の構成 あなた(子)の法定相続分 残高300万円のとき 残高900万円のとき
    母と、子2人 1/4 300万×1/3×1/4=25万円 900万×1/3×1/4=75万円
    母と、子1人 1/2 300万×1/3×1/2=50万円 900万×1/3×1/2=150万円
    子2人だけ(母は既に他界) 1/2 300万×1/3×1/2=50万円 900万×1/3×1/2=150万円
    子3人だけ 1/3 300万×1/3×1/3=約33.3万円 900万×1/3×1/3=100万円
    民法900条・909条の2と法務省の計算式にもとづく試算。実際の可否と金額は金融機関の判断です

    残高900万円・相続分1/2で、ちょうど150万円の天井に当たります。これより残高が多くても、1つの金融機関からは150万円までです。

    ★「金融機関ごと」がいちばん効きます

    条文の括弧書きは「預貯金債権の債務者ごとに」と書いています。債務者とは、預金を預かっている金融機関のことです。

    つまり親の口座が3つの銀行に分かれていれば、150万円の枠も3つあります。1つの銀行に集中していれば150万円で打ち止め、分散していれば450万円。同じ資産額でも、預け先の数で結果が変わります。

    親の口座がどこにあるか分からないなら、先に全体を把握してください。通帳とキャッシュカード、金融機関からの郵便物、確定申告書の控え、公共料金や保険料の引落し先から手がかりが出てきます。1行にまとめて預けていた人ほど、この制度では不利になります。

    4. 何を持っていくか

    全国銀行協会のリーフレットが挙げている書類です。

    • 本人確認書類(払戻しを受ける相続人のもの)
    • 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
    • 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書——出生から死亡までの連続したもの
    • 払戻し希望者の印鑑証明書

    ここで注意してほしいのが2番目と3番目です。「相続人全員の戸籍」と「被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍」が要ります。

    つまり「同意」は要らないが、「誰が相続人か」を証明する書類は要ります。連絡がつかない兄弟がいても手続きはできますが、その兄弟の戸籍謄本は取り寄せる必要があります。相続人であれば、他の相続人の戸籍は職務上請求でなくても取得できます。

    出生から死亡までの戸籍をたどる作業は、本籍を何度も移していると数か月かかることがあります。法務局の法定相続情報証明制度で一覧図を作っておくと、複数の金融機関に同じ戸籍の束を出し直さずに済みます。口座が3行に分かれているなら、その手間は3倍になります。

    出典:全国銀行協会「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」リーフレット/法務省「相続に関するルールが大きく変わります」パンフレット

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    払い戻したあと、相続税と遺産分割をどう整理するか

    払戻しは「遺産の一部の分割により取得したものとみなす」と条文に書かれています。つまりあとの遺産分割で必ず精算されます。相続税の申告が必要な家なら、払い戻した分をどう申告書に反映するか、葬儀費用をどこまで債務控除に入れられるかも同時に決まります。税理士ドットコムは全国5,900名以上の税理士から、相続に強い人を無料で紹介する窓口です。運営は東証プライム上場の弁護士ドットコム株式会社。紹介と相談は無料で、複数の税理士を比較してから選べます。

    申し込む前に3つだけ確認してください。①紹介は無料ですが、実際に依頼したあとの報酬は税理士ごとに違います。見積りを取ってから決めてください。
    ②コーディネーターから電話またはメールで連絡が入り、相続財産の内容と地域を聞かれます。亡くなった日、相続人の人数、おおよその財産額を答えられるようにしておくと早く終わります。
    ③相続税の申告期限は10か月です。期限が近いなら、その旨を最初に伝えてください。

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    払い戻す前に、相続放棄を検討する必要がないかを先に確かめてください。順番を間違えると戻れません。

    5. ★使う前に知っておくべきこと

    払い戻した分は、あとで自分の取り分から引かれます

    条文の後段です。「当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす」。

    全銀協のリーフレットも同じことを書いています。

    これらの制度により払い戻された預金は、後日の遺産分割において、払戻しを受けた相続人が取得するものとして調整が図られる

    葬儀費用に使ったつもりでも、法律上は「あなたが自分の取り分を先に受け取った」扱いです。兄弟に「葬儀代は立て替えた」と主張したいなら、領収書を保管し、何にいくら使ったかを記録してください。払い戻した事実と、その使途は別の話です。ここを曖昧にすると、あとで「あいつは勝手に150万円取った」という話になります。

    遺言があると使えないことがあります

    全銀協は注意事項として「遺言相続のためこれらの制度を利用できない場合などもあり」と書いています。

    遺言でその預金の行き先が決まっているなら、そもそも遺産分割の対象ではなくなるためです。手続きの前に、遺言がないかを確認してください。公正証書遺言なら公証役場の検索システムで、自筆証書遺言なら法務局の保管制度で照会できます。

    相続放棄を考えているなら、動く前に専門家に相談してください

    親に借金があるかもしれない場合、この制度を使うべきではありません。

    民法921条1号は、相続人が相続財産の全部または一部を「処分」したときは単純承認したものとみなす、と定めています。単純承認とみなされると、もう相続放棄はできません。

    払戻しがこの「処分」に当たるかどうかについて、当サイトは一次情報を確認できませんでした。法務省の資料にも金融機関のリーフレットにも、この点の説明はありません。当たる可能性がある以上、借金の有無がはっきりしないうちは手を出さないのが安全です。3か月の熟慮期間との関係も含めて、相続放棄を検討している段階なら、先に弁護士か司法書士に相談してください。

    6. 150万円で足りないとき——家庭裁判所の仮分割

    相続税の納付が迫っている、施設の未払いが数百万円ある。150万円では届かない場合の手段が、家事事件手続法200条3項です。

    家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権(略)を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができる。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは、この限りでない。

    民法909条の2の払戻し 家裁の仮分割の仮処分
    手続きの場所 金融機関の窓口 家庭裁判所
    前提 なし ★遺産分割の審判または調停を申し立てていること
    上限 1金融機関150万円 条文に額の定めなし
    判断する人 金融機関 裁判官
    要件 計算式に収まること 債務の弁済・生活費の支弁その他の事情による必要性
    歯止め 金額の上限 他の共同相続人の利益を害しないこと
    かかる時間 書類がそろえば窓口手続き 申立てと審理が必要
    民法909条の2・家事事件手続法200条3項および法務省パンフレットから作成

    法務省のパンフレットは、この改正を「預貯金債権に限り、家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件を緩和」と説明し、「仮払いの必要性があると認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められる」としています。

    ただし「遺産分割の審判または調停の申立てがあった場合」が条文上の前提です。つまり兄弟と争う土俵に上がることとセットになります。まだ話し合いで解決できそうなら、順番として先に909条の2を使ってください。

    7. 2019年7月1日より前に亡くなった親の預金でも使えます

    これは見落とされやすい点です。法務省の経過措置の資料は、この制度についてこう整理しています。

    預貯金債権の払戻し制度(法附則第5条)新法主義を採用(相続開始が施行日前であっても適用)

    相続法の改正では、項目ごとに経過措置が違います。

    制度 附則 いつの相続に使えるか
    預貯金の払戻し 附則5条 ★施行日前に開始した相続にも適用
    自筆証書遺言の方式緩和 附則6条 施行日後に作成された遺言
    配偶者居住権 附則10条 施行日前の遺贈は無効
    夫婦間の居住用不動産の贈与 附則4条 施行日後に行われた贈与
    法務省「経過措置について」から作成

    遺産分割が何年も止まったままの家でも、預金の払戻しだけは今日から使えます。2015年に亡くなった親の口座が凍結されたままなら、この制度の対象です。

    出典:法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律 新旧対照条文」「経過措置について」「相続に関するルールが大きく変わります」/全国銀行協会「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」/参議院「立法と調査」

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    預金より先に、実家がいくらになるかを確かめる

    150万円で足りないとき、次に見るのは実家そのものの金額です。遺産分割の話は「家がいくらか」が決まらないと前に進みません。預金は分けやすく、家は分けにくい。だから家の金額が出た瞬間に、預金の配分も決めやすくなります。一括査定なら、複数の不動産会社の査定額を並べて比べられます。兄弟に金額を示すときも、1社だけの数字より複数社の幅のほうが通ります。

    申し込む前に4つだけ確認してください。①申し込めるのは名義人か、そのご親族です。相続した実家なら、相続人であるあなたが申し込めます。
    ②申し込むと不動産会社から電話またはメールで連絡が入ります。所在地・築年数・間取りを答えられるようにしておくと早く終わります。
    ③相続登記が済んでいなくても査定は受けられますが、売却の契約には登記が必要です。登記の期限は3年です。
    ④査定額は「売れる価格」ではありません。実際の成約価格はここから動きます。

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    金額が出たら、遺産分割協議書に払い戻した分をどう書くかもあわせて決めてください。

    やってはいけないこと

    • 親のキャッシュカードで、亡くなったあとにATMから引き出す。これは制度の利用ではありません。909条の2は窓口で所定の手続きを踏むものです。無断の引き出しは、あとで他の相続人との紛争になります。
    • 借金があるかもしれないのに、先に払い戻す。民法921条1号の「処分」に当たれば相続放棄ができなくなります。当たるかどうかは当サイトでは確認できませんでした。危ない橋は渡らないでください。
    • 今の残高で計算する。基準は亡くなった日の残高です。
    • 遺言の有無を確認せずに窓口へ行く。遺言があると使えない場合があります。
    • 払戻しを受けた記録を残さない。あとの遺産分割で必ず精算されます。何にいくら使ったかを、領収書とセットで残してください。
    • 150万円が「1人あたりの総額」だと思い込む。上限は金融機関ごとです。口座が分かれているなら枠も分かれます。

    動く順番

    1. 遺言がないかを確認する。公証役場の検索と、法務局の保管制度の照会。
    2. 親に借金がないかを確認する。ここが不明なら、払い戻す前に専門家へ。
    3. 亡くなった日の残高証明書を取る。計算の基準はこの金額です。
    4. 口座がいくつの金融機関に分かれているかを把握する。枠の数が変わります。
    5. 戸籍を集める。被相続人の出生から死亡まで連続したもの+相続人全員分。法定相続情報一覧図にしておくと使い回せます。
    6. 金融機関の窓口で払戻しを請求する。他の相続人の同意は不要です。
    7. 領収書を残す。あとで精算されます。
    8. 足りなければ、家庭裁判所の仮分割を検討する。遺産分割の申立てが前提です。

    よくある質問

    Q. 兄が同意しません。それでも下ろせますか?

    下ろせます。民法909条の2は「単独でその権利を行使することができる」と定めています。他の相続人の同意も実印も要りません。ただし兄の戸籍謄本は必要書類に含まれます(相続人が誰かを証明するため)。同意は要らないが、書類は要る、という整理です。

    Q. いくらまで下ろせますか?

    「亡くなった日の残高 × 1/3 × 自分の法定相続分」で、1つの金融機関につき150万円が上限です。たとえば残高600万円で法定相続分1/2なら100万円。残高900万円で1/2なら150万円(天井)。口座が複数の銀行に分かれていれば、銀行ごとに150万円の枠があります。

    Q. 葬儀費用に使ったので、返さなくていいですよね?

    そうとは限りません。条文は払い戻した分を「遺産の一部の分割により取得したものとみなす」としており、全銀協も「後日の遺産分割において、払戻しを受けた相続人が取得するものとして調整が図られる」と説明しています。葬儀費用を誰がどう負担するかは、それとは別に話し合う問題です。領収書を必ず残してください。

    Q. 2018年に亡くなった父の口座でも使えますか?

    使えます。法務省の経過措置資料は、この制度について「新法主義を採用(相続開始が施行日前であっても適用)」(法附則5条)としています。施行日は令和元年7月1日ですが、それより前に開始した相続にも適用されます。

    Q. 150万円では足りません

    家庭裁判所の「仮分割の仮処分」があります(家事事件手続法200条3項)。条文に金額の上限はなく、債務の弁済や生活費の支弁などの必要性が認められれば認容されます。ただし遺産分割の審判または調停を申し立てていることが条文上の前提で、「他の共同相続人の利益を害するとき」は認められません。

    Q. 相続放棄をするかもしれません。先に下ろしても大丈夫ですか?

    おすすめしません。民法921条1号は、相続財産の全部または一部を「処分」したときは単純承認とみなすと定めており、単純承認になると相続放棄はできなくなります。払戻しがこの「処分」に当たるかどうかは、当サイトでは一次情報で確認できませんでした。借金の有無がはっきりしないうちは、先に弁護士か司法書士に相談してください。

    Q. ATMで下ろすのと何が違うのですか?

    まったく違います。909条の2は金融機関の窓口で所定の書類を出して行う正式な手続きで、払い戻した事実が記録されます。カードでの無断の引き出しは制度の利用ではなく、他の相続人との紛争のもとになります。記録が残る方法で行ってください。

    まとめ

    • ★他の相続人の同意なしで下ろせます。民法909条の2。もめていても、連絡がつかなくても使えます。
    • 「亡くなった日の残高 × 1/3 × 法定相続分」、1金融機関150万円まで。口座が分かれていれば枠も分かれます。
    • 同意は不要ですが、戸籍は必要です。被相続人の出生から死亡までと、相続人全員分。
    • ★前借りです。あとの遺産分割で自分の取り分から引かれます。領収書を残してください。
    • 施行日前に開始した相続にも使えます(法附則5条・新法主義)。
    • 借金があるかもしれないなら、動く前に専門家へ。

    この記事で確認できなかったこと

    • 払戻しが民法921条1号の「処分」に当たり、単純承認とみなされるかどうか。法務省の資料にも金融機関のリーフレットにも記載がなく、確認できませんでした。断定を避けています。
    • 150万円を定めている法務省令の正式名称と番号。150万円という金額は法務省パンフレット2種と全国銀行協会のリーフレットで一致を確認しましたが、省令そのものは確認できていません。
    • 平成28年12月19日最高裁大法廷決定の原文。裁判所の判例検索がうまく開けず、決定の存在と趣旨は参議院「立法と調査」の記述で確認しました。
    • 制度の年間利用件数。金融庁・法務省・全国銀行協会のいずれにも統計を見つけられませんでした。
    • 金融機関ごとの実際の必要書類と処理日数。全国銀行協会の共通リーフレットの記載までは確認しましたが、個々の銀行の運用は確認していません。
    • ゆうちょ銀行・信用金庫・農協など、銀行以外での取扱いの違い。条文は「預貯金債権の債務者」とだけ定めており、これらも対象と読めますが、各機関の公式資料は確認できませんでした。
    • 家庭裁判所の仮分割の仮処分の申立件数・認容率。司法統計で特定できませんでした。

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  • 相続した実家の固定資産税、高すぎないか確かめる方法|価格の不服は市役所ではなく「評価審査委員会」です

    【PR】本ページはプロモーションを含みます。

    相続した実家の納税通知書が、毎年4月に届く。誰も住んでいないのに、税金だけは来る。この金額、そもそも正しいのだろうか。

    確かめる手段は用意されています。ひとつは「縦覧」。同じ市町村にある他人の土地・家屋の価格と、自分のものを見比べられる制度です。毎年4月から期間限定で、無料で使えます。

    そして納得できないときは、「審査の申出」で価格を争えます。ただしここに落とし穴があって、申出先は市役所ではありません。市町村から独立した固定資産評価審査委員会という別の機関です。しかも争えるのは「価格」だけで、住宅用地の特例が付いていないといった不服は別のルートになります。宛先を間違えると、それだけで通りません。

    この記事は、地方税法と、総務省・国土交通省・市町村の公表資料だけで、この2つの制度と、相続した実家で実際に起きることを整理します。

    最終更新:2026年8月26日

    結論だけ先に

    • ★価格の不服は「市役所」ではなく「固定資産評価審査委員会」へ。地方税法432条の審査の申出です。期限は納税通知書の交付を受けた日後3か月以内。手数料は不要。この申出を経ないと、裁判にも進めません。
    • 「価格」以外の不服は、市町村長への審査請求です。住宅用地特例が付いていない、非課税の判定がおかしい、税額の計算が違う——これらは審査の申出では扱えません。宛先も根拠法も別です。
    • 縦覧は毎年4月1日から。無料です。他人の土地・家屋の価格と比べられます(地方税法416条)。ただし見えるのは価格だけで、他人の税額は見えません。終わる日は自治体ごとに違います。
    • ★3年に1度の評価替えの年(基準年度)以外は、原則として価格を争えません。地目の変換、家屋の増改築・損壊、地価下落による修正などの例外はあります(432条1項ただし書)。本気で争うなら基準年度の納税通知書が来た年が本番です。

    この記事は地方税法・空家等対策の推進に関する特別措置法と、総務省・国土交通省・市町村の公表資料だけで書いています。当サイトに税理士も不動産鑑定士もいません。期間・必要書類・手数料は自治体ごとに違います。必ずお住まいの市町村にご確認ください。確認できなかったことは記事末尾に並べてあります。

    1. 3つの制度を、まず区別してください

    ここを取り違えると、何も進みません。

    やりたいこと 使う制度 根拠 期限
    他人の土地・家屋の価格と見比べたい 縦覧 地方税法416条 毎年4月1日から(終期は自治体で違う)
    自分の課税台帳に何が書かれているか見たい 閲覧 地方税法382条の2 通年
    「価格」に不服 審査の申出(固定資産評価審査委員会へ) 地方税法432条 納税通知書の交付を受けた日後3か月以内
    「価格以外」に不服 審査請求(市町村長へ) 地方税法19条・行政不服審査法 処分を知った日の翌日から3か月以内
    総務省・京都市・さいたま市・大阪市・八雲町の公表資料から作成

    京都市の資料は、この切り分けをはっきり書いています。

    固定資産課税台帳に登録された価格に対する不服は、京都市固定資産評価審査委員会に対し「審査申出」をしていただくことになります。

    そして価格以外については、こうです。

    地方税法及び行政不服審査法に基づき、京都市長(審査庁)に対し審査請求することができます。

    相続した実家でありがちな「住宅用地の特例が付いていない」は、価格の問題ではなく特例の適用の問題なので、審査請求のほうです。ここを間違えて評価審査委員会に出しても、扱ってもらえません。

    2. 縦覧——他人と比べられる、年に1回の窓

    総務省の資料によれば、市町村長は次の期間、縦覧帳簿を納税者の縦覧に供します。

    毎年4月1日から、4月20日 又は 当該年度の最初の納期限の日 のいずれか遅い日以後の日までの間

    「第1期の納期限まで」と説明されることがありますが、条文はもう少し複雑です。実際の期間は自治体ごとにかなり違います。

    自治体 縦覧期間
    大阪市 4月1日〜4月30日(土日祝を除く)
    三芳町(埼玉) 4月1日〜5月末日(土日祝を除く。4月・5月の第1土曜も開設)
    京都市 4月1日〜第1期納期限の日(4月末)まで
    浅口市(岡山) 4月1日〜固定資産税第1期の納期限の日まで
    各市町の公式ページから作成。年度によって変わるので、必ず当年の案内で確認してください

    何が見えて、何が見えないのか

    縦覧帳簿に載っているのは、総務省の資料によれば次の項目です。

    • 土地——所在、地番、地目、地積、価格
    • 家屋——所在、家屋番号、種類、構造、床面積、価格

    見えるのは「価格(評価額)」だけです。他人の課税標準額も、税額も、所有者名も見えません。「隣の家はいくら払っているのか」は分からないと考えてください。分かるのは「隣の土地は1㎡あたりいくらで評価されているか」です。

    また大阪市は、縦覧の場では自己所有物件以外の評価の中身の説明は受けられないとしています。守秘義務があるためです。

    誰が、何を持って行けばいいか

    • 対象者——その市町村内の土地・家屋の固定資産税の納税者とその代理人。浅口市は「免税点以上の納税者(共有者含む)」と明記しています
    • 持ち物——本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)、または納税通知書。代理人は委任状
    • 手数料——無料

    出典:総務省自治税務局固定資産税課「固定資産課税台帳と外部への情報提供等」/大阪市・三芳町・京都市・浅口市の公式ページ

    相続した実家の場合は「閲覧」のほうが確実なことがあります

    縦覧の対象者は「納税者」です。相続の手続が済んでおらず納税通知書が自分宛てに来ていない段階だと、窓口で止まる可能性があります。

    一方、閲覧(382条の2)は対象者に「相続人」を明記している自治体があります(浅口市)。閲覧は通年で、縦覧期間中は無料とする自治体もあります。名義変更が済んでいないなら、まず閲覧で自分の台帳を確認するのが現実的です。

    3. 審査の申出——価格を争う唯一のルート

    価格に納得できないときは、固定資産評価審査委員会に審査の申出をします。市町村長の下にある部署ではなく、独立した第三者機関です。

    項目 内容
    申出先 固定資産評価審査委員会(事務局は市税事務所等に置かれる)
    期限 価格の登録を公示した日(通常4月1日)から納税通知書の交付を受けた日後3か月以内
    価格が修正されたとき その修正の通知を受けた日から3か月以内
    申出できる人 納税者またはその代理人
    扱える事項 価格に関することに限られる
    手数料 不要
    京都市・さいたま市・大阪市の公式ページから作成

    大阪市は、扱えない例として非課税・減免・住宅用地の認定を挙げています。これらは審査請求のほうです。

    裁判に行くにも、まずここを通ります

    大阪市の説明はこうです。

    (価格の不服については)固定資産評価審査委員会の決定に対してのみ、その取消しの訴えを提起することができます。

    つまり、審査の申出を飛ばして直接裁判所に行くことはできません。3か月の期限を逃すと、その年度の価格については争う道が閉じます。

    ★据置年度は、原則として争えません

    固定資産の価格は3年に1度見直されます(評価替え)。その年を基準年度といい、大阪市の資料によれば令和6年度が基準年度、令和7年度が第2年度、令和8年度が第3年度(据置年度)です。

    据置年度は、原則として価格が前年度のまま据え置かれます。そして据え置かれた価格については、審査の申出ができません(432条1項ただし書の裏返し)。八雲町の資料はこう整理しています。

    第2年度・第3年度において基準年度等の価格が据え置かれた場合は申出不可。ただし「地目変換、家屋改築、損壊等」に該当するか、下落修正の申立てである場合は例外的に許容。

    さいたま市も同じく、第2・第3年度では「家屋新築・土地分筆等による新規登録」「増改築・地目変換」「地価下落による修正」などの限定的な場合に限られるとしています。

    相続した実家の価格を本気で争うなら、基準年度の納税通知書が届いた年が本番です。そして本気で争うなら、不動産鑑定士など専門家の評価が必要になる場面が出てきます。費用と、争って下がる見込み額を比べてから動いてください。

    出典:大阪市「固定資産評価審査委員会」「評価替えについて」/さいたま市/八雲町「固定資産評価審査委員会の概要」/京都市

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    争う前に、いくらで売れるのかを知っておく

    審査の申出は手数料が不要ですが、下がる保証はなく、据置年度は原則そもそも申し出できません。争う手間と、売って手放したときの金額を、同じ机の上に並べてから決めてください。複数社の査定額を一度に取り寄せられます。

    入力後は各社から個別に連絡が来ます。査定額は各社の見立てであって、固定資産税の評価額とは別物です。売却の意思が固まっていない段階では、連絡が負担になることがあります。

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    査定額が出たら、あらためて「持ち続けるか、手放すか」を数字で比べられます。

    4. 相続した実家で、実際に起きること

    ここからが本題です。価格そのものより、特例が付いているかどうかのほうが金額へのインパクトが大きいことがよくあります。

    住宅用地の特例(地方税法349条の3の2)

    区分 固定資産税の課税標準 都市計画税の課税標準
    小規模住宅用地(200㎡以下の部分) 価格 × 1/6 価格 × 1/3
    一般住宅用地(200㎡超の部分) 価格 × 1/3 価格 × 2/3
    総務省資料および新潟市の公式ページから作成

    判定は毎年1月1日時点です。富山市は、更地にすると翌年1月1日にこの資格を失い、「約3倍程度に上がることが一般的です」としています。

    解体を考えているなら、解体すると固定資産税は何倍になるのかで計算の中身を確認してください。

    ★勧告を受けると、家が建っていても特例が外れます

    これが、空き家を持っている人にとっていちばん大きい変更点です。

    地方税法349条の3の2第1項は、住宅用地の対象から次のものを除くと書いています。

    空家等対策の推進に関する特別措置法(…)第十三条第二項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第十三条第一項に規定する管理不全空家等及び同法第二十二条第二項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第二条第二項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く

    整理すると、こうです。

    管理不全空家等 特定空家等
    定義 空家法13条1項(放置すれば特定空家等になるおそれ) 空家法2条2項
    順番 指導(13条1項)→ 勧告(13条2項) 助言・指導(22条1項)→ 勧告(22条2項)
    勧告されると 住宅用地特例から除外される(地方税法349条の3の2第1項)
    国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律 新旧対照条文」から作成。令和5年12月13日施行

    壊していないのに、税金だけ3倍になる。これが令和5年12月13日から動いている仕組みです。管理不全空家等が追加されたことで、「特定空家等」の一歩手前でも特例が外れるようになりました。

    勧告の前には必ず指導があります。指導の通知が来た時点が、実質的な最終期限だと考えてください。特定空家等に指定されるとどうなるかと遠方の実家をどう管理するかも合わせて読んでください。

    建替え中は救済されます(ただし申告が必要)

    1月1日時点で建替え工事中でも、要件を満たせば住宅用地とみなされます。さいたま市が挙げる要件は、①前年度に住宅用地として課税されていた ②賦課期日に工事が進行中で原則翌年度までに完成 ③建替え前と同一の敷地 ④土地所有者が原則同一 ⑤住宅所有者が原則同一、の5つです。

    そして申告が必要です(原則1月31日まで)。黙っていると外れます。

    免税点(地方税法351条)

    同一市町村内で同じ人が所有する固定資産の課税標準額の合計が、次の額に満たなければ課税されません。

    • 土地 30万円/家屋 20万円/償却資産 150万円

    判定は「評価額」ではなく「課税標準額」で、しかも同一市町村内で合算されます。同じ市内に複数の土地を持っていると合算されて課税される、ということです。

    出典:総務省/国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律 新旧対照条文」および同概要資料/新潟市・富山市・さいたま市・大津市の公式ページ

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    勧告を受ける前に、解体費がいくらか把握しておく

    指導の通知が届いた段階が実質的な最終期限です。勧告まで進むと、家が建っていても住宅用地特例が外れます。まず金額を知らないと、直すか壊すかの判断ができません。複数社の相見積りを一度に取れます。

    更地にすると、翌年1月1日から住宅用地特例が外れます。富山市は「約3倍程度に上がることが一般的」としています。解体費に加えて、毎年の税額が上がることまで込みで比べてください。

    解体の窓口で、無料シミュレーションを試す

    見積りが出たら、解体費と、勧告で特例が外れたときの税額を並べて判断できます。

    5. 課税明細書のどこを見るか

    毎年4月に納税通知書と一緒に届く「課税明細書」に、判断材料はほぼ全部載っています。

    見るところ 何を確かめるか
    地積・床面積 登記や実測と合っているか。取り壊した建物が残っていないか、増築が反映されているか
    住宅用地の区分 小規模/一般の別が付いているか。付いていなければ審査請求のルート
    価格(評価額) 高すぎないか。ここが縦覧と審査の申出の対象
    課税標準額 価格との差が、特例と負担調整で説明できるか
    負担水準・負担調整率 段階的に上がっている途中かどうか
    吉野ヶ里町「固定資産税 課税明細書の見方・税額算出方法」ほかから作成

    評価額と課税標準額が違うのは、おかしくありません

    吉野ヶ里町の説明はこうです。

    (課税標準額とは)評価額に特例(軽減)及び負担調整等を適用させた額です。

    宅地の評価額は、地価公示価格等の7割程度を目途に決められます。そこに住宅用地特例(1/6など)と負担調整が乗るので、課税標準額は評価額よりかなり小さくなります。この2つが違うこと自体は正常です。

    より詳しい読み方は固定資産税の課税明細書の見方にまとめてあります。

    相続があった年、納税義務者は誰か

    賦課期日は毎年1月1日です。所有者が亡くなっている場合、現に所有している者(相続人)に申告義務があります(地方税法384条の3)。白河市の案内によれば、期限は「自分が現所有者であることを知った日の翌日から3か月を経過した日」で、申告がなければ市町村が相続人の代表者を指定します。

    相続人代表者は「納税通知書の送り先」であって、1人で税を負担する人という意味ではありません。ここを誤解して兄弟間でもめることがあります。

    やってはいけないこと

    • 価格の不服を市役所に出す。宛先は固定資産評価審査委員会です。市長への審査請求とは別物です。
    • 住宅用地特例の漏れを、評価審査委員会に出す。これは価格の問題ではないので扱えません。市町村長への審査請求です。
    • 納税通知書を開けずに置いておく。審査の申出は「納税通知書の交付を受けた日後3か月以内」。時計は届いた時点から動いています。
    • 据置年度に本気で争おうとする。原則として申出できません。地目変換・増改築・損壊・下落修正などの例外に当たるかを先に確認してください。
    • 空き家の指導の通知を放置する。勧告まで進むと、家が建っていても住宅用地特例が外れます。
    • 建替え中なのに申告しない。1月1日時点で工事中でも、申告しなければ特例は外れます。
    • 「隣の税額」を縦覧で調べようとする。見えるのは価格だけです。

    動く順番

    1. 4月に届く納税通知書と課税明細書を開ける。ここが起点です。
    2. 地積・床面積・住宅用地の区分を確認する。取り壊した建物が残っていないか、特例が付いているか。
    3. 特例の漏れなら、市町村長への審査請求。処分を知った日の翌日から3か月以内。
    4. 価格に疑問があるなら、4月中に縦覧に行く。無料です。本人確認書類か納税通知書を持参。
    5. 比べて高いと感じたら、評価審査委員会へ審査の申出。納税通知書の交付を受けた日後3か月以内、手数料不要。
    6. その年が据置年度なら、例外に当たるかを窓口で確認する。当たらなければ、次の基準年度まで待つことになります。

    よくある質問

    Q. 固定資産税が高い気がします。どこに言えばいいですか?

    不服の中身によって宛先が違います。「価格(評価額)」なら固定資産評価審査委員会への審査の申出(地方税法432条、納税通知書の交付を受けた日後3か月以内、手数料不要)。「住宅用地特例が付いていない」「非課税の判定がおかしい」「税額の計算が違う」なら市町村長への審査請求(地方税法19条・行政不服審査法)です。

    Q. 縦覧はいつまでですか?

    始まりは毎年4月1日ですが、終わりは自治体ごとに違います。条文上は「4月20日 又は その年度の最初の納期限の日 のいずれか遅い日以後の日まで」とされており、実際には4月末までの市もあれば5月末までの町もあります。当年の案内で確認してください。

    Q. 名義変更がまだですが、縦覧できますか?

    縦覧の対象者は「納税者」です。納税通知書がまだ自分宛てでない場合、窓口で確認が必要になります。ただし閲覧(382条の2)は対象者に「相続人」を明記している自治体があり、通年で利用できます。まずは閲覧で自分の台帳を確認するのが確実です。

    Q. 誰も住んでいないのに、税金が3倍になりました

    2つの可能性があります。ひとつは家を取り壊した場合(1月1日時点で住宅がないと住宅用地特例が外れます)。もうひとつは空家法にもとづく勧告を受けた場合です。令和5年12月13日から、特定空家等だけでなく「管理不全空家等」も、勧告を受けると住宅用地特例から除外されるようになりました。心当たりがあれば、市町村から届いた通知を確認してください。

    Q. 争えば必ず下がりますか?

    下がるとは限りません。審査の申出は手数料が不要ですが、価格が適正かどうかを判断するのは評価審査委員会です。また、3年に1度の基準年度以外は、原則としてそもそも申出ができません。本格的に争うなら不動産鑑定士などの費用がかかる場面もあります。下がる見込み額と手間を比べてから動いてください。

    Q. 相続した年の税金は誰が払いますか?

    賦課期日である1月1日時点の所有者に課税されます。所有者が亡くなっている場合は、現に所有している相続人に申告義務があり(地方税法384条の3)、申告がなければ市町村が相続人代表者を指定します。相続人代表者は納税通知書の送付先であって、1人で負担する人という意味ではありません。

    まとめ

    • ★価格の不服は固定資産評価審査委員会、それ以外は市町村長。宛先を間違えると通りません。
    • 期限はどちらも3か月。審査の申出は「納税通知書の交付を受けた日後3か月以内」。審査の申出を経ないと裁判にも進めません。
    • 縦覧は毎年4月1日から、無料。ただし見えるのは他人の「価格」だけです。
    • 据置年度は原則争えません。基準年度の年が本番です。
    • ★勧告を受けると、家が建っていても住宅用地特例が外れます(令和5年12月13日から、管理不全空家等も対象)。

    この記事で確認できなかったこと

    • 地方税法416条・382条の2・432条・341条6号・349条・350条・351条・702条の4・19条の条文そのもの。縦覧期間の文言(「4月20日又は当該年度の最初の納期限の日のいずれか遅い日以後の日まで」)は総務省資料からの引用で確認しましたが、条文の全文は確認していません。数値と条番号の対応は総務省資料と複数の自治体公式ページで確認しています。
    • 相続人代表者の指定の根拠条番号。現所有者の申告義務が地方税法384条の3であることは確認しましたが、代表者指定の根拠条文は確認できませんでした。
    • 勧告により住宅用地特例が外れるのは、どの時点の賦課期日からか。自治体のチラシにも明記がなく、確認できませんでした。
    • 固定資産評価審査委員会への審査の申出の全国件数・決定件数。総務省の統計を特定できませんでした。
    • 次回の基準年度が令和9年度かどうか。令和6年度が基準年度であることは確認しましたが、次回を明記した一次情報は確認できませんでした。
    • 縦覧における相続人の必要書類。これを明示した自治体の公式ページは確認できませんでした。閲覧については「相続人」を対象者に含める自治体があります。
    • 最新年度の固定資産の課税件数・決定価格の全国計。総務省「固定資産の価格等の概要調書」の所在は分かりましたが、数値を取り出せませんでした。

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  • 実家を相続したあと引っ越したら、2年以内に登記が要ります|住所変更登記の義務化は2026年4月に始まりました

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    相続登記は済ませた。実家は自分の名義になった。そのあと、自分が引っ越した。

    動いたのは、住所だけです 引っ越した 実家 いまの住まい 登記簿は、前の住所のまま 動かすのは、紙のほうです

    この場合、もう1つ登記の義務があります。2026年(令和8年)4月1日から、所有者の住所や氏名が変わったら2年以内に登記しなければならなくなりました。怠ると5万円以下の過料です。

    厄介なのは、施行前に引っ越していた人も対象になることです。10年前の引っ越しでも、20年前の引っ越しでも同じです。期限は2028年(令和10年)3月31日。改正法の附則が、起算日を「変更があった日」と「施行日」の遅いほうと決めているためです。

    ただし、登記しなくても済ませる道が用意されています。法務局に「検索用情報」を届け出ておけば、引っ越すたびに登記所から連絡が来て、それに返事をすれば登記官が職権で登記してくれます。登録免許税もかかりません。この記事は、その全体を法務省・法務局の公表資料だけで整理します。

    最終更新:2026年9月3日

    結論だけ先に

    • ★2026年4月1日から義務です。不動産登記法76条の5により、氏名・名称・住所が変わったら変更があった日から2年以内に登記の申請が必要。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料(同法164条2項)。
    • ★施行前に引っ越していた人も対象です。起算日は「変更があった日」と「施行日」のいずれか遅い日(改正法附則5条7項)。つまり2028年3月31日までに登記すれば過料の対象になりません。
    • 過料はいきなり来ません。登記官が相当の期間を定めて催告し、それでも正当な理由なく申請がないときに限り裁判所へ通知される運用です。催告に応じて申請すれば通知されません。
    • ★「検索用情報の申出」を出しておくと、引っ越すたびに登記所から通知が来ます。その通知に発送の日から1か月以内に返事をすれば、登記官が職権で登記します(76条の6・規則158条の45第3項)。登録免許税はかかりません。返事をしないと登記されません。受付は2025年4月21日から始まっています。

    この記事は不動産登記法・同規則・登録免許税法と、法務省・法務局・国土交通省の公表資料だけで書いています。当サイトに司法書士はいません。個別の申請の可否と必要書類は、必ず管轄の法務局にご確認ください。確認できなかったことは記事末尾に並べてあります。

    1. 覚える条文は2つだけ——「2年以内」と「5万円以下」

    根拠は不動産登記法76条の5です。長い条文ではありません。

    所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から二年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。

    過料は164条2項です。

    第七十六条の五の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、五万円以下の過料に処する。

    施行日は令和8年(2026年)4月1日。改正法は令和3年法律第24号で、相続登記の義務化と同じ法律です。相続登記が2024年4月、住所等変更登記が2026年4月。2年ずれて施行されました。ここまでは「これから引っ越す人」の話に読めます。問題は、もう引っ越してしまった人です。

    出典:法務省「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)」新旧対照条文および法律本文/法務省「住所等変更登記の義務化について」

    2. ★施行前に引っ越していた人も、対象になります

    引っ越したのが10年前でも20年前でも、2026年4月1日から、期限までの時計はもう動き始めています。

    「2026年4月から義務なんだから、それ以前の引っ越しは関係ないだろう」と考えたくなりますが、そうではありません。改正法の附則5条7項がこう定めています。

    (新法の)第七十六条の五の規定は、(…)施行の日前に所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があった場合についても、適用する。この場合において、(…)「あった日」とあるのは「あった日又は第三号施行日のいずれか遅い日」とする。

    訳すと1行です。起算日は「変更があった日」と「2026年4月1日」の遅いほう。施行前に引っ越していた人は、2026年4月1日から2年——つまり2028年(令和10年)3月31日が期限になります。法務省も「令和10年3月31日までに変更登記をしていただく必要があります」と明記しています。

    数え始めは、遅いほうの日からです 引っ越したのは2026年4月1日より前ですか はい 施行日から2年 附則5条7項の読替え いいえ 引っ越した日から2年 76条の5の本文

    20年前に実家を相続して名義を変え、その後に自分が引っ越したまま放置している——という人が、いちばん多いパターンです。この人にも義務がかかります。

    なお、この附則の作りは相続登記の義務化のときとまったく同じです(附則5条6項)。相続登記も「施行日前の相続」に遡って適用され、期限は2027年(令和9年)3月31日。こちらのほうが先に来ます。相続登記でやったことを、住所変更でもう一度やる。それだけです。

    3. 相続登記の義務化とは、別の義務です

    相続登記の義務化 住所等変更登記の義務化
    条文 不動産登記法76条の2 不動産登記法76条の5
    期限 3年以内(相続の開始を知り、かつ所有権を取得したことを知った日から) 2年以内(変更があった日から)
    過料 10万円以下(164条1項) 5万円以下(164条2項)
    施行日 令和6年4月1日 令和8年4月1日
    施行前分の期限 令和9年3月31日 令和10年3月31日
    省く仕組み 相続人申告登記 スマート変更登記(76条の6)
    法務省「相続登記の申請義務化について」「住所等変更登記の義務化について」から作成

    相続した実家では、この2つが順番に来ます。まず相続登記で自分名義にする(3年以内)。名義人になった以上、その後に自分が引っ越せば住所変更の義務が生じる(2年以内)。実家に住んでいるかどうかは関係ありません。持っているだけで、名義人としての義務が続きます。

    相続登記そのものについては相続登記の義務化にまとめてあります。

    2つの義務は、別のものです 相続登記 76条の2 3年以内 10万円以下の過料 164条1項 住所変更登記 76条の5 2年以内 5万円以下の過料 164条2項 どちらも「正当な理由がないのに」が条件です

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    持ち続けるなら、この義務はずっと続きます

    登記の義務も、固定資産税も、管理も、持っている限り終わりません。引っ越すたびに登記、毎年税金、そして誰も住まない家の劣化。「いくらで手放せるのか」を1つ知っておくと、持ち続けるコストと比べられます。

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    4. 過料は、いきなり来るわけではありません

    「5万円以下の過料」と聞くと身構えますが、運用は段階を踏みます。法務省の資料によれば、登記官は相当の期間を定めて申請をするよう催告し、それにもかかわらず正当な理由なく期間内に申請がされないときに限り、裁判所に過料事件の通知をします。催告に応じて申請すれば、通知はされません。

    「正当な理由」として挙げられている例

    法務省が示している例は次のとおりです(これで全部という意味ではありません)。

    • 検索用情報の申出をしている(または法人が会社法人等番号を登記している)が、職権による変更登記がまだされていない
    • 行政区画の変更による住所変更
    • 登記名義人が重病等である
    • DV被害者等で、住所を明らかにすると生命・身体に危害が及ぶおそれがある
    • 経済的に困窮しており、登記費用を負担する能力がない

    見てほしいのは1つ目です。検索用情報の申出さえ出しておけば、職権登記がまだ済んでいなくても「正当な理由」の側に入ります。つまりこの申出は、手間を省く仕組みであると同時に、5万円から身を守る仕組みでもあります。その申出が何なのかを、次の章で見ます。

    出典:法務省「住所等変更登記の義務化について」および同マスタープラン

    5. 登記しなくて済む道——スマート変更登記

    先に結論です。やることは「検索用情報の申出」を出して、そのあと登記所から来る通知に返事をすること。この2つだけで、登録免許税もかかりません。ただし、黙っていて自動で始まるものではありません。そこが条文に書いてあります。不動産登記法76条の6です。

    出して、返事をする。それだけです 1 出す 検索用情報の申出 2 返事をする 通知への返事 この2つで、登録免許税はかかりません

    登記官は、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記をすることができる。ただし、当該所有権の登記名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限る。

    個人は「申出」が前提です

    ただし書に注目してください。個人の場合は、本人からの申出がないと職権登記は行われません。黙っていれば自動でやってくれる、というものではありません。

    では、誰が何をするのか。登記所は住民基本台帳ネットワークから本人確認情報の提供を受けて変更を把握し、本人にメールまたは書面で意思確認をしたうえで、返事があれば登記官が職権で変更登記をします。そしてこの職権登記には登録免許税がかかりません。

    申出は2段あります。まず検索用情報、そのあと通知への返事です

    ①がこれから説明する「検索用情報の申出」です。根拠は不動産登記規則158条の39・158条の40。受付はすでに2025年(令和7年)4月21日から始まっています。②の「通知への返事」は規則158条の45で、そちらはこの章の後半で扱います。①を出しただけでは登記されません。

    項目 内容
    申し出る内容 ①氏名 ②氏名の振り仮名 ③住所 ④生年月日 ⑤メールアドレス(+対象不動産を特定する情報)
    2つの型 同時申出=これから登記申請をするときに一緒に出す/単独申出=すでに名義人の人が後から出す
    出し方 Webの「かんたん登記・供託申請」、または申出書を管轄登記所へ郵送・持参
    押印・電子署名 不要
    メールアドレス 本人のみが現に利用するものに限る(親族のアドレスは不可)。持っていない場合は「メールアドレスなし」と記載できる
    手数料 職権による変更登記は登録免許税がかからない
    法務省「検索用情報の申出について」「スマート変更登記のご利用方法」および不動産登記規則158条の39・158条の40から作成

    ★見逃せるのは1か月。しかも「届いた日」からではありません

    登記所からのメールを見落としたら、どうなるのか。不動産登記規則に、期限が1行で書いてありました。

    その前に、ひとつ整理させてください。この制度の「申出」は2段あります。①検索用情報の申出(規則158条の39・158条の40)——登記所が自分を見つけて連絡できる状態にしておく手続。②76条の6ただし書の申出(規則158条の45)——引っ越しを把握した登記所から通知が来たときに、「登記してください」と返事をする手続。①を出しただけでは登記されません。②の返事が要ります。そして、その②に期限があります。

    不動産登記規則第百五十八条の四十五(法第七十六条の六ただし書の申出)
    1 ……登記官は、住民基本台帳法第三十条の九の規定により提供を受けた当該所有権の登記名義人についての機構保存本人確認情報により、その氏名又は住所について変更があったことを確認した場合には、当該所有権の登記名義人に対し、その旨及び……申出をすることができる旨を通知することができる。
    2 前項の規定による通知は、電子メールの送信によってするものとする。ただし、検索用情報管理ファイルに電子メールアドレスが記録されていないことその他の事由により電子メールの送信による通知をすることができない所有権の登記名義人に対しては、書面を送付してするものとする。
    3 第一項の規定による通知を受けた所有権の登記名義人は、当該通知の発送の日から一月以内に、同項に規定する登記官に対し、法第七十六条の六ただし書の申出をすることができる。

    出典:e-Gov法令検索 不動産登記規則第158条の45(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    3項の「当該通知の発送の日から一月以内に」が答えです。期限は、通知が届いた日ではなく発送の日から数えます。1か月を過ぎると、その通知に対する申出はできません。

    ただし、これは「その回の職権登記が動かない」というだけです。76条の5の申請義務そのものは残ります。放置していると、自分で申請するしかなくなる、ということです。

    だから、メールアドレスは「見るアドレス」を出してください。2項が通知の方法を電子メールと決めていて、書面が送られるのはアドレスが記録されていない場合などに限られます。登録したまま使っていないアドレスを出すと、通知に気づかないまま1か月が過ぎます。

    ★自動で動くのは、申し出た個人と、番号のある法人だけです

    76条の6の本文は「変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には」と書いていました。その法務省令が、これです。

    不動産登記規則第百五十八条の四十四(職権による氏名等の変更の登記)
    1 法第七十六条の六本文の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
    一 次条第六項(第百五十八条の四十六第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知があった場合
    二 会社法人等番号が登記された所有権の登記名義人の法人の登記簿に記録された情報の提供を受けてその名称又は住所について変更があったことを確認した場合

    出典:e-Gov法令検索 不動産登記規則第158条の44(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    一号が個人、二号が法人です。一号は「次条第六項の通知」——つまり本人が1か月以内に申し出て、それが管轄の登記所に通知されたときです。

    二号には条件が付いています。「会社法人等番号が登記された」法人であることです。法人だから自動でやってもらえる、ではありません。登記簿に会社法人等番号が入っている法人が対象です。

    職権で直るのは、この2つだけ 会社法人等番号のある法人 158条の44第1項2号 職権で登記 個人で、申し出た人 通知の発送から1か月以内 職権で登記 個人で、申し出ていない人 1か月を過ぎると動きません 自分で申請 催告にも応じないとき 164条2項「正当な理由がないのに」 5万円以下 緑も、登記が済むまで76条の5の義務は残ります

    ★書き漏らした田んぼは、職権登記の対象になりません

    1回申し出れば、全国の持ち物ぜんぶに効くのか。それとも不動産ごとに要るのか。規則158条の40が、両方に答えていました。

    不動産登記規則第百五十八条の四十
    2 ……申出は、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
    一 所有権の登記名義人の検索用情報
    ……
    四 申出に係る不動産の不動産所在事項
    3 検索用情報単独申出は、申出に係る不動産の所在地を管轄する登記所の登記官に対してしなければならない。ただし、異なる登記所の管轄区域にある二以上の不動産について検索用情報単独申出をするときは、当該検索用情報単独申出は、当該不動産のうちいずれかの不動産の所在地を管轄する登記所の登記官に対してすることができる。
    7 検索用情報申出情報は、所有権の登記名義人ごとに作成して提供しなければならない。

    出典:e-Gov法令検索 不動産登記規則第158条の40(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    2項4号が「申出に係る不動産の不動産所在事項」を要求しています。つまり不動産を書き出して申し出ます。名前を登録すれば全国の持ち物に自動で紐づく、という作りではありません。

    そのかわり、3項ただし書があります。県をまたいで複数の不動産を持っていても、そのうちどれか1つの管轄の登記所にまとめて出せます。登記所を回る必要はありません。

    実家じまいで効いてくるのはここです

    実家のほかに田や山林を持っていることは珍しくありません。申出のときにその全部を書き出しておかないと、書き漏らした不動産は職権登記の対象になりません。手元に固定資産税の課税明細書があるなら、それがそのまま持ち物の一覧です。

    手元の1枚が、そのまま一覧になります 実家 田 山林 固定資産税の課税明細書 申出には、この全部を書き出します

    申出をしても、自分で申請しないといけない場合

    海外に住んでいる人は、そもそも検索用情報の申出ができません。不動産登記規則158条の40第1項が「国内に住所を有する所有権の登記名義人は」と書いていて、158条の39第1項も同じです。住基ネットで住所を把握できないためで、法務省もそう明記しています。自分で変更登記を申請するしかありません。

    また、職権登記は「意思確認への返答」が前提です。見落として放置した場合にどうなるかは、不動産登記規則158条の45第3項に書いてあります(次の見出しで引用します)。申出をしたら、登記所からの連絡を受け取れる状態にしておいてください。

    出典:法務省「スマート変更登記のご利用方法」「検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係)」および同Q&A

    6. 自分で申請する場合の手続と費用

    項目 内容
    登記の名称 所有権登記名義人住所変更(氏名変更)登記
    申請先 その不動産の所在地を管轄する法務局
    登録免許税 不動産1個につき1,000円
    添付するもの 住民票の写し(マイナンバーの記載がないもの)。住民票コードを申請書に書けば省略できる場合がある
    様式 法務局「不動産登記の申請書様式について」の1-1(住所移転)/1-3(氏名変更)/1-4(住所及び氏名変更)
    オンライン 可能(登記・供託オンライン申請システム)
    法務省民事局のパンフレットおよび法務局の申請書様式ページから作成

    実家が土地1筆・建物1棟なら2,000円。ただし数えるのは「実家」ではなく「筆」と「棟」です。田や山林を一緒に相続していれば、その分だけ増えます。

    住所を何度も変えているとき

    登記簿に載っている住所から現在の住所まで、つながりを証明する必要があります。法務省の案内に、こんな一文があります。

    住民票の写しでは、その住所移転の経緯を証明することができないことがあります。その場合には、戸籍の附票の写し(本籍地の市区町村で発行)などを提出していただき(ます)

    住民票は、原則として1つ前の住所までしか載りません。2回以上引っ越していると、住民票だけではつながらないことがあります。その場合は本籍地で戸籍の附票を取ります。本籍も変えている場合は、さらに手間が増えます。ここが、この手続で最もつまずくところです。

    住民票で足りない分は、附票でつなぎます 登記簿の住所 前の住所 いまの住所 住民票 戸籍の附票 住民票は、原則1つ前の住所まで その前は、本籍地で戸籍の附票を取ります

    ★土地が10筆あれば1万円。頭打ちはありません

    実家のほかに田や山林も相続していたら、いくら払うことになるのか。登録免許税法の別表を開きました。

    登録免許税法別表第一・一(十四)
    付記登記、抹消された登記の回復の登記又は登記事項の更正若しくは変更の登記(これらの登記のうち、(一)から(十三)までに掲げるもの及び土地又は建物の表示に関するものを除く。) 不動産の個数 一個につき千円

    同(十五)
    登記の抹消(土地又は建物の表題部の登記の抹消を除く。) 不動産の個数 一個につき千円(同一の申請書により二十個を超える不動産について登記の抹消を受ける場合には、申請件数一件につき二万円)

    出典:e-Gov法令検索 登録免許税法別表第一(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    括弧書きが付いているのは(十五)だけです。住所・氏名の変更登記は(十四)で、そこに上限の定めはありません。

    つまり、不動産の個数がそのまま効きます。1個なら1,000円、5個なら5,000円、10個なら10,000円。「20個を超えたら2万円で頭打ち」は、抹消登記の話であって、住所変更登記には当てはまりません。

    田が5枚、山が1つ、それに実家の土地と建物。これで8個なら8,000円です。「20個を超えたら頭打ち」が無いというのは、そういうことです。なお、これは登録免許税だけの話で、司法書士に頼む場合の報酬は別にかかります。

    登録免許税は、個数がそのまま効きます 不動産1個 1,000円 3個 3,000円 5個 5,000円 10個 10,000円 登録免許税法別表第一(十四)。上限なし

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    7. 所有者不明の土地の3件に1件は、「引っ越しただけ」でした

    国土交通省が地籍調査で62万筆を当たったところ、登記簿からは持ち主にたどり着けない土地が、5筆に1筆ありました(平成28年度・622,608筆中125,059筆=20.1%)。問題は、その原因の内訳です。

    所有者の所在が確認できなかった原因 筆数 割合
    相続登記が未了 83,371筆 66.7%
    住所変更登記が未了 40,496筆 32.4%
    売買・交換等による登記が未了 1,192筆 1.0%
    国土交通省「所有者不明土地の実態把握の状況について」(平成28年度地籍調査)から作成

    3件に1件は「引っ越しただけ」が原因でした。相続登記の義務化だけでは3分の2しか埋まらない。だから残りの3分の1にも手を付けた、という順番です。

    なお、国土交通省の令和6年の調査でも、所有者不明土地の割合は23%です。この23%に自分の実家を足さないために、次の一覧だけは読んでください。

    やってはいけないこと

    • 「2026年4月より前の引っ越しだから関係ない」と考える。附則5条7項で遡って適用されます。期限は2028年3月31日です。
    • 相続登記が済んだから終わり、と思う。名義人になった以上、その後の住所変更は自分の義務です。
    • 検索用情報を申し出たきり、メールを放置する。職権登記は本人の意思確認が前提です。連絡を受け取れる状態にしておいてください。
    • 海外に住んでいるのに、申出だけで済ませる。住基ネットで把握できないため、自分で申請が必要です。
    • マイナンバーが載った住民票を添付する。法務局は個人番号の記載がないものを求めています。
    • 実家を空き家のまま放置して、登記も税金も止めておく。登記の義務は持ち続ける限り続きます。放置したときに何が起きるかも合わせて確認してください。

    動く順番

    1. 登記事項証明書を取って、登記簿上の住所を確認する。いまの住所と違っていれば対象です。
    2. 相続登記が済んでいるかを確認する。済んでいなければ、まずそちら(3年以内・10万円以下)が先です。
    3. これから何度も引っ越す可能性があるなら、検索用情報の申出をする。申出そのものは1回ですが、引っ越すたびに通知への返事が要ります。返事をすれば職権登記で、登録免許税もかかりません。
    4. いますぐ直すなら、住民票の写し(マイナンバー記載なし)を用意する。つながらなければ戸籍の附票。
    5. 管轄の法務局へ申請する。登録免許税は不動産1個につき1,000円。オンラインでも可。
    6. 期限を手帳に書く。施行前の引っ越しなら2028年3月31日、それ以降の引っ越しならその日から2年です。

    よくある質問

    Q. 引っ越したのは10年前です。もう手遅れですか?

    手遅れではありません。施行前に住所が変わっていた場合の起算日は「変更があった日」と「2026年4月1日」のいずれか遅い日です(改正法附則5条7項)。つまり2028年3月31日までに登記すれば、過料の対象になりません。

    Q. 引っ越すたびに登記が必要ですか?

    原則はそうです(76条の5)。ただし検索用情報の申出をしておけば、以後は登記所が住基ネットで変更を把握し、本人の意思確認を経て職権で登記します(76条の6)。この場合登録免許税はかかりません。申出は2025年4月21日から受け付けています。

    Q. いくらかかりますか?

    登録免許税は不動産1個につき1,000円です。土地1筆・建物1棟なら2,000円。ほかに住民票の写しなどの実費がかかります。職権による登記(スマート変更登記)なら登録免許税はかかりません。

    Q. 実家には住んでいません。それでも義務ですか?

    義務です。76条の5の対象は「所有権の登記名義人」であって、そこに住んでいるかどうかは要件ではありません。遠方の実家を相続して持っているだけ、という人こそ対象になります。

    Q. 5万円は必ず取られますか?

    いきなりは取られません。登記官が相当の期間を定めて催告し、それでも正当な理由なく申請がないときに限り裁判所に通知される運用です。催告に応じて申請すれば通知されません。また「正当な理由」の例として、検索用情報の申出済みで職権登記がまだの場合、行政区画の変更、重病、DV被害、経済的困窮が挙げられています。

    Q. 相続登記もまだです。どちらを先にやりますか?

    相続登記が先です。名義が被相続人のままでは、そもそも「所有権の登記名義人」が自分ではありません。相続登記は3年以内・10万円以下の過料で、こちらのほうが重い義務です。祖父名義のままの実家のように何代も放置していると、先に相続人の確定から必要になります。

    まとめ

    • 2026年4月1日から義務です。住所・氏名が変わったら2年以内に登記(76条の5)、怠ると5万円以下の過料(164条2項)。
    • ★施行前の引っ越しも対象。期限は2028年3月31日です(附則5条7項)。
    • 過料は催告を挟みます。催告に応じて申請すれば裁判所には通知されません。
    • 検索用情報の申出を出しておくと、引っ越すたびに登記所から通知が来ます(76条の6)。発送の日から1か月以内に返事をすれば職権で登記され、登録免許税もかかりません(規則158条の45第3項)。受付は2025年4月21日から。
    • 自分で申請するなら不動産1個につき1,000円。住所を何度も変えていると戸籍の附票が要ります。

    この記事で確認できなかったこと

    • ★通知そのものが来るかどうか。不動産登記規則158条の45第1項は、登記官が変更を確認した場合に「通知することができる」と書いています。「しなければならない」ではありません。76条の6の本文も「職権で……することができる」です。つまり、申出をしても登記が済むまで76条の5の義務は消えません。どういう場合に通知されないのかを定めた条文は、規則の側には見つけられませんでした。通知を待つのではなく、引っ越したら自分で数え始めてください。
    • 施行期日を定めた政令の番号。改正法(令和3年法律第24号)の附則第1条が、76条の5について各号のうち第三号に定める日(政令で定める日)から施行するとしていることは条文で確認しましたが、その政令そのものは、e-Gov法令検索では見つけられませんでした。
    • 検索用情報管理ファイルの中身と保存期間。不動産登記規則158条の46が記録と管理の手続を定めていることは条見出しで確認しましたが、この条は全文を開いていません(158条の40も、第8項以降は開いていません)。この記事で必要な範囲——申出の方法と期限、職権登記の要件——は158条の39・40・44・45で足りています。
    • 住所変更登記の年間件数(法務省 登記統計)。データの所在は分かりましたが、数値を取り出せませんでした。
    • 「かんたん登記申請」で、検索用情報の申出ではなく住所変更登記そのものを電子署名なしに申請できるか。公式ページからは確認できませんでした。規則158条の45第5項1号は、ただし書の申出について「法務大臣が定めるところにより電子情報処理組織を使用して……送信する方法」と書いています。ただしこれは申出の話で、変更登記そのものの申請の話ではありません。

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