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実家は一つ、兄弟は複数。誰も住まないなら、売って現金で分けるのがいちばん公平です。この選び方を「換価分割」と呼びます。
ところが、ここに落とし穴があります。売るには相続登記が必要ですが、共有名義で登記すると手続がややこしいので、実務では「便宜上、代表者1人の名義にして売る」ことがよく行われます。このとき、代金を他の兄弟に渡す行為が贈与とみなされないか。そして、空き家の3,000万円特別控除が何人分使えるのか。
この記事は、条文で確定できることと、一次情報では確定できなかったことを、はっきり分けて書きます。とくに後者は、断定している解説をよく見かけますが、この記事は根拠を確認できなかったので断定しません。そのかわり、どこに聞けばいいかと、聞き方を具体的に置きます。
結論だけ先に
- 遺産分割前に実家を売るには、相続人全員の同意が必要です。共有物の売却は民法251条1項の「変更」にあたり、持分の過半数では売れません。
- 相続人申告登記をしても、実家は売れません。法務省は「権利関係を公示するものではないため、相続した不動産を売却したり抵当権を設定したりする場合には、別途、相続登記の申請をする必要がある」と明記しています。
- 空き家の3,000万円特別控除は、令和6年1月1日以後の譲渡で、取得した相続人が3人以上なら1人2,000万円になります(措置法35条4項)。そして1億円の判定は、相続人全員の譲渡対価を合算します(同6項)。適用を受ける人には他の相続人への通知義務もあります(同8項)。
- 相続開始から10年で、特別受益と寄与分は主張できなくなります(民法904条の3・令和5年4月1日施行)。「親の面倒を見た」「兄だけ学費を出してもらった」は、10年で切れます。
条文は2026年8月24日にe-Gov法令検索で、運用は国税庁・法務省・裁判所の公式ページで確認しました。税務の判断は個別事情で変わります。実行前に必ず、所轄の税務署または税理士にご確認ください。
1. 分け方は4つ。それぞれ税金の出方が違います
| 分け方 | やること | お金の動き |
|---|---|---|
| 現物分割 | 実家は長男、預金は次男、というように財産ごとに分ける | — |
| 代償分割 | 1人が実家を取得し、他の相続人に代償金を払う | 相続税の課税価格を、払った側は減らし、もらった側は増やす |
| 換価分割 | 実家を売って、代金を分ける | 各人に譲渡所得が発生 |
| 共有分割 | 持分を決めて共有のまま持つ | —(先送り) |
共有のままにしておくと、どうなるか
令和3年の改正(令和5年4月1日施行)で、共有のルールに条文が増えました。そのうち1つは、兄弟の1人が実家に住み続けている場合に直接効いてきます。
民法第249条第2項(令和3年改正で新設)
共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
「弟が実家に住み続けている」という状態について、法律は「持分を超える分の対価を払う義務がある」と定めています。これは、共有のまま放置することの具体的な火種です。
| 行為 | 必要な同意 | 根拠 |
|---|---|---|
| 売却 | 全員の同意(「変更」にあたる) | 民法251条1項 |
| 3年以内の建物賃貸 | 持分の過半数 | 民法252条1項・4項 |
| 5年以内の土地賃貸 | 持分の過半数 | 同上 |
| 保存行為(現状維持の修繕など) | 単独で可能 | 民法252条5項 |
2. 換価分割──便宜上1人の名義にして売る場合
共有名義で相続登記して売ることもできますが、実務では代表者1人の名義にすることがよくあります。買主との契約、決済、登記の手続が単純になるからです。
代金を分けたら贈与になるのか
この論点について、一次情報を読み取れませんでした
国税庁の質疑応答事例に「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」という項目が存在することは確認しました。ですが、当該ページは文字化けにより本文(照会要旨・回答要旨・関係法令通達)を読み取ることができませんでした。
したがって、この記事は「こうすれば贈与にならない」という条件を書きません。推測で書くと、読んだ人が実際にその通りにして、後から違うと言われる可能性があるからです。
条文から言えることは、ここまでです。
民法第909条(遺産の分割の効力)
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。
遺産分割協議で「換価して代金を各人の相続分に応じて取得する」と定めれば、その効果は相続開始時に遡ります。つまり売却代金は最初から各相続人に帰属していたことになり、登記名義人から他の相続人への「贈与」ではない、という構成になります。この理屈自体は条文から導けます。
ただし、「遺産分割協議書に換価分割である旨を明記せよ」という実務指針を明示した公式文献は、国税庁・法務省・法務局・裁判所のいずれからも確認できませんでした。広く言われていることですが、この記事は根拠を示せないので断定しません。実際に協議書を作るときは、税理士か司法書士に確認してください。
譲渡所得は誰が申告するのか
民法第898条
第1項 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
第2項 相続財産について共有に関する規定を適用するときは、相続分をもって各相続人の共有持分とする。
未分割のまま売れば、譲渡したのは各共有者であり、譲渡所得は各人の持分に応じて各人に帰属する──という構造は、898条から導けます。ただし「各相続人が持分に応じて譲渡所得を申告する」と明記した国税庁の文言そのものは、該当する質疑応答事例が読み取れなかったため、この記事では引用していません。
3. ★空き家の3,000万円特別控除を、何人で使えるか
ここがこの記事でいちばん重要で、いちばん危ないところです。
まず、条文で確定していること
| 論点 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 適用主体 | 措置法35条3項 | 「被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人」が対象譲渡をした場合 → 相続人単位で適用される建て付け |
| 複数人が同時に使えるか | 措置法35条6項・8項 | 「居住用家屋取得相続人」が複数存在する前提で規定され、8項で相互の通知義務を定めている → 複数の相続人がそれぞれ適用を受けうることが前提 |
| 控除額 | 措置法35条4項 | 「取得をした相続人の数が三人以上であるとき」は3,000万円→2,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡) |
| 1億円判定 | 措置法35条6項 | 居住用家屋取得相続人全員の譲渡対価を合算して判定 |
| 通知義務 | 措置法35条8項 | 適用を受けようとする者は、他の居住用家屋取得相続人に対し、対象譲渡をした旨・日その他参考となるべき事項を通知しなければならない |
| 措置法39条との併用 | 措置法35条3項の括弧書き | 不可(対象譲渡から「第三十九条の規定の適用を受けるもの」を除く) |
| 同一相続で2回目 | 同上 | 不可(「既に……この項の規定の適用を受けている場合を除き」) |
★確定できなかったこと──ここが記事の核心です
「換価分割で便宜上1人名義にしてから売ると、この特例は何人分使えるのか」。この問いに、一次情報で答えを出せませんでした。
条文上の手がかりは次のとおりです。措置法35条3項の適用主体は「取得をした相続人」であり、4項の2,000万円判定も「取得をした相続人の数」であって、「譲渡をした相続人の数」ではありません。一方、民法909条により遺産分割の効力は相続開始時にさかのぼるので、「全員が持分を取得したうえで便宜上1人名義にした」という趣旨なら、実質的な「取得をした相続人」は全員だという整理もありえます。逆に、協議書で1人が単独取得すると定めたのなら、取得した相続人は1人です。
この「便宜上の単独名義登記」が35条3項・4項の判定にどう影響するかを直接述べた国税庁の一次情報は、確認できませんでした。したがってこの記事は答えを書きません。言えるのは、相続登記の名義の付け方によって特別控除の枠が変わりうる、極めてリスクの高い論点だということだけです。
登記をする前に、税務署か税理士に確認してください。登記してしまってからでは、やり直せません。
そのほか、空き家特例の要件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象期間 | 平成28年4月1日〜令和9年12月31日の譲渡 |
| 譲渡期限 | 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| 家屋要件 | 昭和56年5月31日以前に建築/区分所有建物でない/相続開始の直前に被相続人以外に居住者がいなかった |
| 譲渡対価 | 1億円以下(相続人全員の適用前譲渡・適用後譲渡を合算) |
マイホームの3,000万円控除(35条1項)とは別物です
| 比較項目 | マイホーム(35条1項) | 空き家(35条3項) |
|---|---|---|
| 誰の居住用か | 譲渡する本人が住んでいた家 | 被相続人が住んでいた家 |
| 築年要件 | なし | 昭和56年5月31日以前建築 |
| 同居人 | 制限なし | 相続開始直前に被相続人以外の居住者がいないこと |
| 譲渡対価上限 | なし | 1億円 |
| 3人以上で2,000万円 | なし | あり |
| 取得費加算(39条)との併用 | 条文上の除外規定は見当たりません | 不可 |
4. 代償分割──代償金を何で払うかで変わります
1人が実家を取得して、他の相続人に代償金を払う方法です。相続税の課税価格の計算は、国税庁タックスアンサーNo.4173が説明しています。
| 立場 | 相続税の課税価格 |
|---|---|
| 代償財産を交付した人 | 取得した現物の財産の価額 − 交付した代償財産の価額 |
| 代償財産を取得した人 | 取得した現物の財産の価額 + 交付を受けた代償財産の価額 |
代償金の額を「時価」で決めると、計算が変わります
タックスアンサーNo.4173の具体例を置きます。相続人はA・Bの2人、遺産は土地のみ(相続税評価額4,000万円、代償分割時の時価5,000万円)。AがBに現金2,000万円を代償として交付。
| 代償金2,000万円の決め方 | Aの課税価格 | Bの課税価格 |
|---|---|---|
| 相続税評価額を基に決めた | 4,000万円 − 2,000万円 = 2,000万円 | 2,000万円 |
| 時価5,000万円を基に決めた | 4,000万円 − 1,600万円 = 2,400万円 | 2,000万円 ×(4,000万円 ÷ 5,000万円)= 1,600万円 |
時価を基に決めた場合、代償財産の価額は「代償債務の額 × 対象財産の相続開始時の相続税評価額 ÷ 対象財産の代償分割時の時価」で計算します。同じ2,000万円を払っても、何を基準に決めたかで課税価格が動きます。協議書に「時価を基に決めた」と書くかどうかが、そのまま税額に効きます。
代償金を「不動産」で払うと、譲渡所得税がかかります
タックスアンサーNo.4173は、代償財産が交付者固有の不動産等である場合、交付者に譲渡所得が課税されるとしています(根拠法令として所得税基本通達33-1の5・38-7を掲げています)。
現金で払えば譲渡所得は生じませんが、「自分がもともと持っていた別の土地を渡す」と、渡した側に譲渡所得税がかかります。代償金の原資が足りないときに、つい思いつく方法なので注意してください。
なお、代償金の支払いが譲渡所得の計算上の必要経費(取得費・譲渡費用)になるかどうかについては、これを明示した一次情報を確認できませんでした。この記事では扱っていません。
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兄弟で「いくらで売れるか」の共通の数字を持つ
換価分割の話し合いが止まる原因の多くは、金額の見立てが人によって違うことです。「そんな安いはずがない」「もっと早く売るべきだ」。ラクウル(株式会社ネクサスプロパティマネジメント/国土交通大臣(1)第10311号)は、匿名のまま桁を確かめられるAI査定と、連絡先を入れて申し込む査定の両方を用意しています。まず1つ、全員が同じ画面を見られる数字を作ってください。
①匿名のAI査定は「桁を確かめる」ためのものです。実額を知るには連絡先を入れて申し込む必要があり、そのときは担当者から電話が入ります。②査定額は「売れる価格」ではありません。③相続人が複数いるなら、正式な査定を頼む前に「売る方針でよいか」を全員で確認してください。1人が勝手に動くと話がこじれます。匿名査定なら、その前段階として使えます。④このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって査定額が下がることはありません。
数字が出たら、代償分割と換価分割を並べて比べてください。「1人が住み続けて代償金を払う」が成り立つのかどうかは、金額が分かって初めて判断できます。
5. 相続登記をしないと、そもそも売れません
不動産登記法第76条の2第1項
所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
令和6年4月1日施行。正当な理由がないのに怠ると10万円以下の過料の対象です(不動産登記法164条1項)。施行日前に開始した相続も対象で、法務省は「令和9年3月31日まで(不動産を相続で取得したことを知った日が令和6年4月以降の場合はその日から3年以内)」としています。
★相続人申告登記をしても、実家は売れません
3年以内に相続登記が難しい場合、相続人申告登記(不動産登記法76条の3)という簡易な仕組みがあります。申出をすれば申請義務を履行したものとみなされます。
ですが法務省は、こう明記しています。「不動産についての権利関係を公示するものではないため、相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、別途、相続登記の申請をする必要がある」「遺産分割に基づく相続登記の申請義務を履行することはできない」。
「とりあえず申出だけしておこう」は、義務違反は避けられますが、換価分割のスタートラインには立てません。
登録免許税は、相続なら1000分の4です
| 登記の種類 | 税率 |
|---|---|
| 所有権移転(相続) | 1000分の4 |
| 所有権移転(贈与・財産分与等) | 1000分の20 |
| 所有権移転(売買・土地) | 1000分の15(平成31年4月1日〜令和8年3月31日) |
課税標準は固定資産課税台帳の「価格」です。課税明細書の「価格」または「評価額」欄であって、「固定資産税課税標準額」ではありません。1,000円未満は切り捨て、税額の100円未満も切り捨て、1,000円未満なら1,000円です。
免税措置が2つあります(いずれも令和9年3月31日まで)。①相続人が相続登記を受ける前に死亡した場合(措置法84条の2の2第1項)、②土地の価額が100万円以下の場合(同2項)。どちらも申請書に条文を書く必要があります。自動では適用されません。
6. ★相続開始から10年で、何が変わるのか
民法第904条の3(令和5年4月1日施行)
前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
二 ……十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、……請求をしたとき。
「前三条」は、903条(特別受益者の相続分)・904条(特別受益の評価)・904条の2(寄与分)です。つまり、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、特別受益も寄与分も原則として主張できません。法定相続分または指定相続分で分けることになります。
「私が親の面倒を見た」「兄だけ家の頭金を出してもらった」という主張は、10年で切れます。先延ばしが不利に働く典型です。
ただし、10年は「使えるようになる」スイッチでもあります
| 場面 | 条文 | 10年で何が変わるか |
|---|---|---|
| 特別受益・寄与分 | 民法904条の3 | 主張できなくなる |
| 共有物分割訴訟 | 民法258条の2第2項 | 遺産共有持分についても地方裁判所の共有物分割訴訟が使えるようになる(相続人が2か月以内に異議を申し出れば不可) |
| 所在等不明共有者の持分取得 | 民法262条の2第3項 | 相続財産に属する持分は、10年を経過していないと裁判ができない |
| 所在等不明共有者の持分譲渡 | 民法262条の3第2項 | 同上 |
「連絡の取れない兄弟がいるから、裁判所に持分を取ってもらおう」は、遺産共有のままでは10年経つまでできません。まずは家庭裁判所の遺産分割が筋です。
なお、東京地方裁判所の説明によれば、所在等不明共有者の持分取得の申立ては対象不動産の所在地を管轄する地方裁判所に対して行い、印紙1,000円、官報公告費用として予納金7,134円〜、郵便切手は基本6,000円分、加えて持分の時価相当額の供託が必要です(金額は同庁の運用)。
7. 話がまとまらないとき──遺産分割調停
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立先 | 相手方の1人の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所 |
| 収入印紙 | 被相続人1人につき1,200円分 |
| 郵便切手 | 各裁判所で異なる(大阪家裁の例:当事者1人あたり約2,300円) |
| 必要書類 | 被相続人の出生から死亡までの全戸籍、相続人全員の戸籍、不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金の残高証明書など |
| まとまらなければ | 合意に至らない場合は自動的に審判手続へ移行 |
審理は段階的に進みます。大阪家庭裁判所の説明によれば、①相続人の範囲の確定 → ②遺言書の有無・効力 → ③遺産の範囲の確定 → ④遺産の評価 → ⑤特別受益・寄与分の検討 → ⑥分割方法の決定、という順です。
この⑤が、10年で使えなくなる部分です。収入印紙1,200円で始められる手続なので、「10年が近い」と思ったら、まず申立てだけでもしておく意味があります(904条の3第1項1号により、10年経過前に家庭裁判所へ請求していれば主張は残ります)。
8. 進め方の順番
| 順 | やること | 注意点 |
|---|---|---|
| 1 | 相続人を確定する(戸籍を出生から死亡まで集める) | 調停でも最初にやることです |
| 2 | 「売る」で全員の方針が一致するか確認する | 売却は民法251条1項の「変更」=全員の同意が必要 |
| 3 | 実家がいくらで売れそうかを先に出す | 金額が分からないと、代償分割と換価分割の比較ができません |
| 4 | 空き家特例を使う見込みなら、登記の名義を決める前に税務署か税理士に相談する | この記事の3章の論点。登記してからでは戻せません |
| 5 | 遺産分割協議書を作る(換価分割なら、その旨と分配割合を書く) | 作り方は司法書士・税理士に |
| 6 | 相続登記をする(登録免許税は1000分の4) | 相続人申告登記では売れません |
| 7 | 売却 | — |
| 8 | 各人が譲渡所得を申告する | 空き家特例を使う人は、他の相続人への通知義務があります(措置法35条8項) |
順番を守るべき理由は1つです
4の「登記の名義を決める前に相談する」だけは、後戻りできません。売った後で「実は3人分の控除が使えたかもしれない」と分かっても、登記も譲渡も終わっています。
相談は無料です。税務署の資産課税部門に「相続した空き家を換価分割で売る予定です。登記の名義の付け方で、措置法35条3項の適用に違いが出ますか」と聞いてください。
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売ると決まったら、買取と仲介の両方の数字を取る
換価分割では、金額だけでなく「いつ現金になるか」も全員の関心事になります。不動産SHOPナカジツは、愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本で自社買取と仲介の両方を扱う会社です。買取は早く確実、仲介は時間はかかるが金額が伸びやすい。この2つを1社から並べて聞けると、兄弟の話し合いが進みます。
①上の7県以外の実家は対象外です。②査定額は「売れる価格」ではありません。③相続登記が済んでいないと売れません。相続人申告登記では売却できないので、査定と並行して登記の準備を進めてください。④空き家の3,000万円特別控除を使う見込みなら、登記の名義を決める前に税務署か税理士に確認を。この記事の3章のとおり、登記してからでは戻せません。⑤このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって査定額が下がることはありません。
不動産SHOPナカジツに無料査定を依頼する(愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本)
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相続開始から10年が近いなら、査定より先に家庭裁判所への申立てを検討してください。収入印紙1,200円で、特別受益と寄与分の主張を残せます。
よくある質問
遺産分割がまとまる前に、実家を売れますか
相続人全員の同意があれば売れます。全員でなければ売れません。相続財産は共同相続人の共有で(民法898条1項)、共有物の売却は民法251条1項の「変更」にあたるため、持分の過半数では足りません。なお、預貯金については民法909条の2に「相続開始時の債権額の3分の1に相続分を乗じた額」を単独で引き出せる仕組みがありますが、不動産に同種の制度はありません。
代表者1人の名義で登記して売り、代金を分けたら贈与税がかかりますか
この記事は、条件を断定して書けません。国税庁の質疑応答事例に「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」という項目が存在することは確認しましたが、当該ページの本文を読み取れなかったためです。条文から言えるのは、民法909条により遺産分割の効力は相続開始時にさかのぼるので、協議で「換価して代金を各人の相続分に応じて取得する」と定めれば、代金は最初から各人に帰属していたという構成になりうる、というところまでです。実際の協議書の作り方は、税理士か司法書士に確認してください。
空き家の3,000万円控除は、兄弟それぞれが使えますか
条文の建て付けとしては、複数の相続人がそれぞれ適用を受けうる前提になっています。措置法35条6項・8項が「居住用家屋取得相続人」を複数存在する前提で規定し、8項が相互の通知義務を定めているからです。ただし、令和6年1月1日以後の譲渡で「取得をした相続人の数が3人以上」なら、控除額は1人2,000万円になります(同4項)。また1億円の判定は、相続人全員の譲渡対価を合算します(同6項)。
1人名義にして売った場合も、人数分使えますか
これは、この記事が答えを出せなかった論点です。措置法35条3項の適用主体は「取得をした相続人」で、4項の判定も「取得をした相続人の数」であって、「譲渡をした相続人の数」ではありません。便宜上の単独名義登記が、この「取得をした相続人」の判定にどう影響するかを直接述べた国税庁の一次情報を、確認できませんでした。登記の名義の付け方で控除枠が変わりうる、極めてリスクの高い論点です。登記をする前に、必ず税務署か税理士に確認してください。
取得費加算と空き家特例、両方使えますか
同一の譲渡については使えません。措置法35条3項の括弧書きが、対象譲渡から「第三十九条の規定の適用を受けるもの」を除いています。除外規定は35条3項の側にあり、39条の側にはありません。取得費加算は「相続税額があるもの」が使える制度なので、相続税を払っていない人には最初から関係がありません(相続税がかかるかどうかを先に確認してください)。
代償金の額は、何を基準に決めればいいですか
基準の取り方で、相続税の課税価格が変わります。国税庁タックスアンサーNo.4173の例では、相続税評価額4,000万円・時価5,000万円の土地についてAがBに2,000万円を交付した場合、相続税評価額を基に決めたならA2,000万円・B2,000万円、時価を基に決めたならA2,400万円・B1,600万円になります。時価を基に決めた場合は「代償債務の額 × 相続税評価額 ÷ 代償分割時の時価」で計算します。協議書にどう書くかが、そのまま効きます。
代償金の代わりに、自分の土地を渡してもいいですか
渡した側に譲渡所得税がかかります。タックスアンサーNo.4173は、代償財産が交付者固有の不動産等である場合、交付者に譲渡所得が課税されるとしています(所得税基本通達33-1の5・38-7)。現金なら譲渡所得は生じません。代償金の原資が足りないときに思いつきやすい方法ですが、税金が増えます。
共有のまま持っていてはいけませんか
いけないわけではありませんが、火種が条文になっています。民法249条2項は「共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う」と定めています。兄弟の1人が実家に住み続けている場合、他の兄弟は対価を請求できる立場です。また、売るには全員の同意が必要なので(民法251条1項)、1人が反対するだけで動けなくなります。詳しくは実家が兄弟の共有になっているをご覧ください。
相続人申告登記をしました。これで売れますか
売れません。法務省は「不動産についての権利関係を公示するものではないため、相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、別途、相続登記の申請をする必要がある」と明記しています。また「遺産分割に基づく相続登記の申請義務を履行することはできない」ともしています。3年の義務違反は避けられますが、換価分割のスタートラインには立てません。
相続してから何年も経っています。もう遅いですか
10年が一つの区切りです。民法904条の3により、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、特別受益(903条・904条)と寄与分(904条の2)が原則として主張できなくなります。ただし、10年を経過する前に家庭裁判所へ遺産分割を請求していれば、主張は残ります(同項1号)。遺産分割調停の申立ては、収入印紙1,200円から始められます。「10年が近い」と思ったら、まず申立てだけでもしておく意味があります。
連絡の取れない兄弟がいます
民法262条の2(持分の取得)・262条の3(持分の譲渡)という制度がありますが、注意点があります。どちらも、相続財産に属する持分については「相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は裁判をすることができない」と定められています(262条の2第3項、262条の3第2項)。つまり、遺産共有のままでは10年経つまで使えません。まずは家庭裁判所の遺産分割が筋です。詳しくは相続人が行方不明のときをご覧ください。
この記事で確認できなかったこと
- 「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」(国税庁 質疑応答事例)の本文。ページの存在は確認しましたが、文字化けにより照会要旨・回答要旨・関係法令通達を読み取れませんでした。そのため、代金分配が贈与にならないための条件を、この記事は書いていません。
- 「未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告とその後分割が確定したことによる更正の請求、修正申告等」(同)の本文。同じ理由で読み取れませんでした。「各相続人が持分に応じて譲渡所得を申告する」と明記した国税庁の文言は引用していません。
- 「遺産分割協議書に換価分割である旨を明記すべき」という実務指針の公式な根拠。国税庁・法務省・法務局・裁判所のいずれの公式資料からも、明示的に述べた記述を確認できませんでした。
- 換価分割で便宜上1人名義にした場合、空き家の3,000万円特別控除が何人分使えるか。条文の手がかりは本文に書きましたが、これを直接述べた国税庁の一次情報は確認できませんでした。断定を避けています。
- 相続税法基本通達11の2-9・11の2-10、所得税基本通達33-1の5・38-7の原文。国税庁の通達ページが文字化けして読み取れなかったため、本文の代償分割の整理は、タックスアンサーNo.4173の記載にもとづくものです。通達番号「33-1の5」の見出しが「代償分割による資産の移転」であることも、確定していません。
- 代償金の支払いが譲渡所得の必要経費(取得費・譲渡費用)になるかどうか。これを明示した一次情報を確認できませんでした。本文では扱っていません。
- 登録免許税法別表第一の条文そのもの。本文の税率は法務局の公式PDFにもとづきます。
- 民法909条の2の限度額(法務省令で定める金融機関ごとの上限)。条文・省令から確認していません。
- 遺産分割事件の司法統計。終局区分別の総数として10,849件(うち調停成立6,879件、認容1,136件、取下げ2,659件)という数値を読み取りましたが、当該PDFに年次表記が見当たらず、何年分の統計か特定できませんでした。遺産の価額別の分布も、複数のPDFで矛盾する数値が読み取れたため確定できていません。そのため本文には統計を書いていません。
まとめ
- 分け方は4つ。現物分割・代償分割・換価分割・共有分割です。実家が一つで兄弟が複数なら、換価分割か代償分割が現実的です。
- 遺産分割前に売るには全員の同意が必要です(民法251条1項)。持分の過半数では売れません。
- 共有のまま住んでいる兄弟には、持分を超える使用の対価を償還する義務があります(民法249条2項・令和3年改正)。
- 相続人申告登記では実家は売れません。売るには相続登記が必要です。
- 相続登記は3年以内、登録免許税は1000分の4。免税措置が2つあり、どちらも申請書への記載が必要です。
- 空き家の3,000万円控除は、令和6年1月1日以後の譲渡で取得相続人が3人以上なら1人2,000万円。1億円判定は全員合算、適用者には通知義務があります。
- 1人名義にして売った場合に控除が何人分使えるかは、この記事では確定できませんでした。登記の名義を決める前に、税務署か税理士に確認してください。後戻りできません。
- 代償金の額を「時価」で決めると、相続税の課税価格の計算が変わります。協議書の書き方がそのまま効きます。
- 代償金を不動産で払うと、払った側に譲渡所得税がかかります。
- 相続開始から10年で、特別受益と寄与分は主張できなくなります(民法904条の3)。10年経過前に家庭裁判所へ請求していれば残ります。
- 遺産分割調停は、収入印紙1,200円から始められます。
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