実家を売った翌年、親の保険料が上がる|3,000万円控除で税金ゼロでも軽減は外れます

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実家を売る。譲渡所得税は3,000万円の特別控除で全部消えた。税金はゼロ。よかった──ここで終わらせると、翌年に2度目の請求書が来ます。

国民健康保険料、後期高齢者医療の保険料、介護保険料。これらは所得税とは別のルールで計算されていて、「3,000万円控除を引く前か、引いた後か」が制度ごとにバラバラです。そして、いちばん効くところが「引く前」で判定されます。

この記事は、その仕分けを条文と自治体の公式説明で1枚の表にします。結論だけ先に言うと、上がるのは保険料の本体ではなく「軽減」のほうです。7割軽減を受けていた高齢の親世帯が、売った翌年度だけ軽減をまるごと失う。これは3,000万円の枠内におさまっていても起きます。

結論だけ先に

  • 国保料・後期高齢者医療の「所得割」は、特別控除を引いた後で計算されます。だから3,000万円控除で譲渡所得がゼロなら、所得割は上がりません。
  • ところが「軽減判定(7割・5割・2割軽減、後期高齢者の均等割軽減)は、特別控除を引く前の金額で行われます。複数の自治体・広域連合が公式に明記しています。3,000万円以内でおさまっていても、軽減はまるごと外れます。
  • 住民税が非課税だった世帯は、非課税でなくなる可能性が高いです。判定に使う「合計所得金額」も特別控除前だからです。その結果、高額療養費の低所得区分、高額介護サービス費の低い上限額、介護保険料の第1〜3段階から連鎖して外れます。
  • 一方で、介護保険料の所得段階、介護サービスの自己負担割合、後期高齢者の窓口負担割合(1割→2割・3割)は上がりません。これらは政令に「特別控除額を控除する」と明文があります。ここを混同して不安がる必要はありません。

条文は2026年8月24日にe-Gov法令検索で、運用は厚生労働省・各自治体・各後期高齢者医療広域連合の公式ページで確認しました。保険料率と軽減の基準は自治体ごと・年度ごとに違います。実行前に必ず、実家と親の住所地の市区町村国保担当・広域連合にご確認ください。

1. なぜ「税金ゼロ」で終わらないのか

分離課税の譲渡所得は、他の所得と合算せずに計算します(租税特別措置法31条・32条)。課税長期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額。ここから所得税15%・住民税5%・復興特別所得税がかかります。

3,000万円の特別控除には2種類あります。

特例 根拠 使える場面
居住用財産の3,000万円特別控除 措置法35条1項 親が住んでいる家を、親自身が売る(転居後3年を経過する日の属する年の12月31日まで)
空き家の3,000万円特別控除 措置法35条3項 相続した実家を売る。昭和56年5月31日以前建築ほか厳しい要件あり。令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上なら1人2,000万円

ここまでは、多くの記事が書いています

問題はその先です。社会保険の世界には「所得税・住民税がゼロかどうか」という判定基準がありません。使われているのは「合計所得金額」「総所得金額等」「軽減判定所得」といった別の言葉で、その一つひとつについて、特別控除を引くか引かないかが法令で個別に決められています。

そして、その扱いは統一されていません。この仕分けが、この記事の全体です。

2. ★仕分けの全体像(この記事でいちばん重要な表)

判定される項目 特別控除は 3,000万円控除で所得ゼロのとき
国保料(税)の所得割 控除後 上がりません
国保料(税)の軽減判定(7割・5割・2割) 控除前 軽減が外れます
後期高齢者医療の所得割 控除後 上がりません
後期高齢者医療の均等割軽減判定 控除前 軽減が外れます
後期高齢者医療の窓口負担割合(1割/2割/3割) 控除後 上がりません
介護保険料の所得段階 控除後 上がりません
介護サービスの自己負担割合(1割/2割/3割) 控除後 上がりません
住民税非課税かどうかの判定 控除前 非課税でなくなります
高額療養費・高額介護サービス費の低所得区分 (非課税判定の結果として) 外れます

この表が示していること

3,000万円控除を使った場合の打撃は「所得割の急増」でも「負担割合が3割になること」でもありません。そのどちらも起きません。

起きるのは、軽減と低所得優遇の喪失です。もともと保険料の本体が小さい低所得の高齢者世帯ほど、この影響を強く受けます。「うちは所得が少ないから関係ない」という人ほど、いちばん効きます。

控除前で判定されるものだけが外れます 国保・後期の所得割 控除後で判定。上がりません 控除後 窓口負担割合 控除後で判定。上がりません 控除後 介護保険料の所得段階 控除後で判定。上がりません 控除後 保険料の軽減判定 控除前で判定。軽減が外れます 控除前 住民税非課税の判定 控除前で判定。非課税でなくなる 控除前 起きるのは、軽減と低所得優遇の喪失です

3. なぜ制度ごとに扱いが違うのか──条文の構造

ばらついているのには理由があります。介護保険と後期高齢者医療の政令には、「合計所得金額から特別控除額を控除する」という読替規定がわざわざ置かれているのです。

介護保険法施行令第22条の2第1項(抜粋)
租税特別措置法による譲渡所得の特別控除がある場合には、当該合計所得金額から…特別控除額を控除して得た額

高齢者の医療の確保に関する法律施行令第7条第3項第1号(抜粋)
当該合計所得金額からこれらの規定の適用により…長期譲渡所得の金額から控除する金額及び…短期譲渡所得の金額から控除する金額の合計額を控除した金額

読替規定が必要だということは、元の「合計所得金額」は控除前だということです

もし地方税法上の「合計所得金額」がもともと特別控除後の数字なら、こんな読替規定は要りません。わざわざ「引きなさい」と書いてあるのは、書かなければ引かれないからです。

実際、地方税法292条1項13号の「合計所得金額」について、複数の自治体が同じ説明をしています。

自治体 公式ページの記載
荒川区 「土地・建物等の譲渡所得など、分離課税の所得については特別控除適用前の所得金額で計算します」
坂戸市 「分離課税に係る長期譲渡所得及び短期譲渡所得については、特別控除前の金額が算入されます」
摂津市 「分離課税の所得については特別控除適用前の所得金額で計算します」
熊谷市 「分離課税の所得については特別控除を適用する前の所得金額で計算します」
阿賀野市 「分離課税の土地建物等の譲渡所得の金額(特別控除適用前)」

一次情報にあたって、依頼どおりの条文が存在しなかった点

「総所得金額等」は、しばしば「地方税法292条1項13号の2」と紹介されます。ですが、e-Gov法令検索で確認した現行の292条1項に、その号は存在しません。13号は「合計所得金額」、14号は「恒久的施設」です。

「総所得金額等」は地方税法292条ではなく、各制度の政令や自治体の説明で定義されている用語です。この記事では、条番号を書かずに整理しています。

4. 国民健康保険料──所得割は上がらない。軽減が外れる

国保料(税)は4つの合算です(国民健康保険法施行令29条の7)。

区分 賦課限度額(現行政令)
基礎賦課額(医療分) 67万円
後期高齢者支援金等賦課額 26万円
介護納付金賦課額(40〜64歳) 17万円
子ども・子育て支援納付金賦課額(令和8年度から新設) 3万円
合計 113万円

所得割は「特別控除後」──自治体が明記しています

自治体 記載
横浜市 所得割の「総所得金額等」に含まれる譲渡所得について「特別控除適用後の金額とします」
長久手市 所得割の算定では譲渡所得は「特別控除後の金額」。根拠として地方税法314条の2第1項を明示
新座市 計算例で「総所得金額5,500,000円(営業所得2,000,000円、特別控除後の譲渡所得3,500,000円)」として所得割を算出

つまり、3,000万円控除で譲渡所得がゼロになれば、所得割はまったく増えません。ここは安心してよい部分です。

★軽減判定は「特別控除前」──ここが本題

自治体 記載
横浜市 軽減判定に用いる「総所得金額等の合算額」の譲渡所得は「特別控除適用前の金額とします」
長久手市 軽減判定に用いる所得は「特別控除前の額で計算します」
佐賀市 「減額対象所得は…土地建物等に係る譲渡所得については特別控除を差し引く前の額」
青森市 「分離課税の土地建物等に係る譲渡所得(長期・短期)がある場合は、特別控除前の金額で判定されます」

横浜市と長久手市は、同じ1ページの中で「所得割は控除後/軽減判定は控除前」と対比して書いています。誤植ではなく、制度としてそうなっているということです。

青森市の令和8年度の軽減判定基準を例に置きます。

軽減割合 判定基準(世帯の軽減判定所得の合計)
7割軽減 43万円+10万円×(給与所得者等の数−1)以下
5割軽減 43万円+31万円×被保険者数+10万円×(給与所得者等の数−1)以下
2割軽減 43万円+57万円×被保険者数+10万円×(給与所得者等の数−1)以下

7割軽減の基準は43万円です。実家を売った譲渡益は、特別控除前ならまず数百万円から数千万円になります。桁が3つ違います。軽減は確実に外れます。

同居していない世帯主の所得も入ります

軽減判定所得は「世帯主と被保険者及び特定同一世帯所属者の所得の合計金額」で、国保に加入していない世帯主(擬制世帯主)の所得も含まれます(青森市の説明。根拠は同市市税条例179条1項1〜3号)。

親が世帯主で、子が同じ世帯にいる場合、誰が売ったかにかかわらず世帯として判定されます。

5. 後期高齢者医療──同じ構造です

保険料率は都道府県ごとの広域連合が条例で2年単位で定めます(高齢者医療確保法104条2項・3項)。同じ売却額でも、住んでいる県で負担が違うのはこのためです。

項目 全国平均(令和8・9年度)
一人当たり平均保険料額(医療分) 月額7,989円/年額95,875円
前年度比 +578円(+7.8%)
被保険者均等割額(医療分) 年額56,083円
所得割率(医療分) 10.17%
賦課限度額(基礎賦課額) 85万円

賦課限度額は、平成20年度の50万円から令和8年度の85万円まで、段階的に引き上げられてきました。

ここでも、均等割の軽減判定は「特別控除前」です

広域連合・自治体 記載
東京都後期高齢者医療広域連合 「事業専従者控除、譲渡所得の特別控除がある場合は、均等割額の軽減判定額の算出の際に必要経費として算入または控除を行いません」
千葉県後期高齢者医療広域連合 「専従者控除、譲渡所得の特別控除の税法上の規定は適用されません」
東大阪市 「軽減判定をするときの総所得金額等には、専従者控除、譲渡所得の特別控除の税法上の規定は適用されません」
江東区 (所得割について)「保険料の所得割額を計算する際は、分離課税の特別控除後の所得金額を用います」

ただし、窓口負担割合は上がりません

負担割合 判定基準 根拠
3割 課税所得145万円以上 高齢者医療確保法67条1項3号/施行令7条4項
2割 課税所得28万円以上、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身200万円以上・複数世帯320万円以上 同67条1項2号/施行令7条2項・3項
1割 上記以外 同67条1項1号

2割判定に使う「その他の合計所得金額」については、施行令7条3項1号に「特別控除額を控除した金額」と明文があります。3,000万円控除で譲渡所得がゼロになれば、この判定にも乗りません。

6. 介護保険──ここは全部「控除後」です

介護保険は、保険料の段階判定も、サービスの自己負担割合も、特別控除後で判定されます。国保の軽減判定とは真逆です。

江東区の公式説明が、いちばん明快です。

平成30年度から、土地や建物などに係る譲渡所得は特別控除後の金額が適用されます。(介護保険法施行令の改正による)

保険料の所得段階は、第9期から13段階になりました

段階 境界(合計所得金額) 乗率
1〜3 世帯全員が市町村民税非課税 0.285〜0.685
6 〜120万円 1.5〜
9 320万円〜420万円 〜1.7
10 420万円〜520万円 1.9
11 520万円〜620万円 2.1
12 620万円〜720万円 2.3
13 720万円〜 2.4

第9期(令和6〜8年度)の全国平均保険料基準額は月額6,225円(第8期6,014円から+3.5%)です。

サービスの自己負担割合も控除後

負担割合 合計所得金額 かつ「年金収入+その他の合計所得金額」
3割 220万円以上 単身340万円以上/2人以上463万円以上
2割 160万円以上220万円未満 単身280万円以上/2人以上346万円以上
1割 上記以外 —

介護保険法施行令22条の2第1項・2項に、特別控除額を差し引く旨の明文があります。3,000万円控除を使えば、介護の負担割合は上がりません。

ただし、間接的には効きます

介護保険料の第1〜3段階は「世帯全員が市町村民税非課税」であることが要件です(介護保険法施行令38条1項)。非課税でなくなれば、譲渡所得の金額とは無関係に、第4段階以上へ移ります。

介護サービスの2割・3割判定でも、市町村民税非課税者は対象から除外されています(施行令22条の2第4項2号)。この「非課税であること」という盾も、同時に外れます。

7. ★住民税非課税でなくなることが、いちばん広く波及します

地方税法第295条第3項
前年の合計所得金額が政令で定める基準に従い当該市町村の条例で定める金額以下である者に対しては、均等割を課することができない。

判定に使うのは「合計所得金額」です。そして3章で確認したとおり、地方税法上の合計所得金額に算入される分離課税の譲渡所得は「特別控除前」です。

つまり、3,000万円控除で所得税も住民税もゼロでも、合計所得金額そのものは譲渡益の全額で膨らみます。住民税非課税世帯からは、まず外れます。

連鎖して外れるもの 内容
高額療養費の低所得I・II 「世帯全員の市民税が非課税」が要件。外れると一般区分へ
高額介護サービス費 24,600円(世帯非課税)・15,000円(年金収入等が一定以下)の区分から外れ、上限が上がる
介護保険料の第1〜3段階 乗率0.285〜0.685から第4段階以上へ
後期高齢者医療の所得区分 低所得者1・2から一般へ

この非対称が、この記事のいちばんの結論です

介護保険料の段階、介護の負担割合、後期高齢者の窓口負担割合は「特別控除後」で判定されるので上がりません。ところが、それらの制度が「非課税であること」を要件に置いている低所得の枠は、非課税判定が「特別控除前」であるために外れます。

負担割合は1割のまま、でも高額療養費の上限は上がる。この組み合わせが起きます。

非課税でなくなると、連鎖して外れます 高額療養費の低所得I・II 世帯全員の市民税が非課税が要件 一般区分へ 高額介護サービス費 24,600円・15,000円の区分から 上限が上がる 介護保険料の第1〜3段階 乗率0.285〜0.685から 第4段階へ 後期高齢者の所得区分 低所得者1・2から 一般へ 判定に使うのは合計所得金額。特別控除前の金額です

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桁が分かったら、この記事の9章に戻ってください。いま軽減を受けているか、住民税非課税かの2つと突き合わせて初めて、「今年売るか、来年売るか」を比べられます。

8. いつの売却が、いつの負担に効くのか

保険料は前年(1月〜12月)の所得をもとに当年度分を算定します。したがって時間差はこうなります。

時期 起きること
2026年(令和8年)中 実家を売却。譲渡所得が発生
2027年2〜3月 確定申告。3,000万円控除を適用して所得税はゼロ
2027年6月ごろ 令和9年度の保険料通知が届く。ここで軽減が外れていることに気づく
2028年度 前年の所得が元に戻るので、保険料も戻る

影響するのは原則として1年度分です。これは重要な点で、「ずっと上がりっぱなし」ではありません。ただし、その1年度に医療や介護を多く使う予定があるなら、話は変わります。

効くのは、原則として1年度分です 2026年中 実家を売却。譲渡所得が発生 2027年2〜3月 確定申告。所得税はゼロ 2027年6月ごろ 令和9年度の保険料通知が届く 2028年度 前年の所得が戻り、保険料も戻る

後期高齢者の窓口負担割合の適用期間は8月始まり

鹿児島市は、後期高齢者医療の窓口負担割合について「前年の所得等で判定し、適用期間は8月1日から翌年7月31日まで」と説明しています。保険料の年度(4月〜3月)とはずれています。この記事の6章のとおり、3,000万円控除を使えば負担割合自体は動きませんが、判定の周期は知っておいてください。

9. 売る前にできること

順 やること なぜ
1 いま7割・5割・2割軽減を受けているかを確認する 保険料の通知書か、市区町村の国保担当へ。軽減を受けていない世帯なら、この記事の影響はほとんどありません
2 いま住民税非課税世帯かを確認する 非課税なら、7章の連鎖が起きます。いちばん影響が大きいのはここです
3 翌年度に手術・入院・介護施設入所の予定があるかを考える 高額療養費と高額介護サービス費の区分が上がるので、その年に重なると効きます
4 売却の年をずらせるかを検討する ただし空き家の3,000万円控除には相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日という期限があります(空き家の3,000万円特別控除)。ずらして特例を失うと本末転倒です
5 誰の名義で売るかを確認する 親の世帯で判定されるのか、子の世帯なのか。擬制世帯主の所得も軽減判定に入ります
6 市区町村の国保担当と広域連合に、売却予定を伝えて試算を頼む 自治体によって料率も軽減基準も違います。この記事の数字ではなく、あなたの自治体の数字で判断してください
7 売却額の目安を先に出す 譲渡益がいくらになるかが分からないと、1〜4の判断ができません

「保険料が上がるから売らない」という結論は、たいてい間違いです

影響するのは原則1年度分の軽減と低所得区分です。一方、空き家を持ち続ければ、固定資産税・維持費・特定空家のリスクが毎年かかり続けます(空き家の維持費は年間いくら?)。そして空き家の3,000万円控除には期限があります。

正しい使い方は、「売らない理由」ではなく「売る年を選ぶ材料」にすることです。

売る前に、この順で確かめます 1 軽減を受けているか 受けていないなら影響はほぼない 2 住民税非課税世帯か 非課税なら連鎖が起きます 3 翌年度の医療・介護 手術・入院・施設入所の予定 4 売却の年をずらせるか ただし控除の期限を失わないこと 5 誰の名義で売るか 擬制世帯主の所得も判定に入る

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①上の7県以外の実家は対象外です。②査定額は「売れる価格」ではありません。③売却時期をずらす前に、空き家の3,000万円特別控除の期限を確認してください(空き家の3,000万円特別控除)。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。1年度分の軽減のために3,000万円の控除を失うと、明らかに損です。④このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって査定額が下がることはありません。

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よくある質問

3,000万円控除で税金がゼロなら、保険料も上がりませんよね

半分正しく、半分違います。国保料・後期高齢者医療の所得割、介護保険料の所得段階、介護と医療の自己負担割合は上がりません。これらは特別控除後の金額で判定されるからです。ですが、国保と後期高齢者医療の軽減判定と、住民税非課税かどうかの判定は、特別控除を引く前の金額で行われます。7割軽減を受けていた世帯なら、その軽減がまるごと外れます。

なぜ制度によって扱いが違うのですか

介護保険法施行令と高齢者医療確保法施行令には、「合計所得金額から特別控除額を控除する」という読替規定が置かれているからです。逆に言えば、この読替規定が必要だということ自体が、元の「合計所得金額」が特別控除前だという証拠です。軽減判定や住民税非課税判定には、この読替が及んでいません。

どのくらい上がるのですか

自治体によって違うので、金額は書けません。目安として、青森市の令和8年度の軽減判定は7割軽減が43万円以下、5割軽減が43万円+31万円×被保険者数以下、2割軽減が43万円+57万円×被保険者数以下です。実家の譲渡益は、特別控除前なら通常この基準を桁違いに超えます。「軽減が減る」ではなく「軽減がなくなる」と考えてください。いま受けている軽減の額は、保険料通知書に書かれています。

いつの保険料に反映されますか

売った年の翌年度です。保険料は前年1〜12月の所得をもとに算定されるので、2026年に売れば2027年3月に確定申告し、2027年6月ごろ届く令和9年度の通知で反映されます。影響するのは原則としてこの1年度分だけで、翌々年度には戻ります。

医療費の窓口負担が3割になりますか

3,000万円控除を使って譲渡所得がゼロになるなら、なりません。後期高齢者医療の3割判定は課税所得145万円以上、2割判定は課税所得28万円以上かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身200万円・複数世帯320万円以上ですが、この「その他の合計所得金額」には施行令7条3項1号に特別控除額を控除する明文があります。ただし、高額療養費の「低所得I・II」区分からは、住民税非課税でなくなることによって外れます。窓口の割合は変わらず、上限額だけが上がるという形です。

介護サービスの自己負担も上がりますか

割合そのものは上がりません。介護保険法施行令22条の2第1項・2項に、特別控除額を差し引く明文があります。ただし、高額介護サービス費の上限額の区分は、住民税非課税でなくなることで上がります。また、介護保険料の第1〜3段階も「世帯全員が市町村民税非課税」が要件なので、ここから外れます。

親が売主です。同居している私の所得も関係しますか

軽減判定は世帯単位です。青森市の説明では、軽減判定所得は「世帯主と被保険者及び特定同一世帯所属者の所得の合計金額」で、国保に加入していない世帯主(擬制世帯主)の所得も含まれます。逆に言えば、世帯を分けているかどうかで結果が変わりえます。ただし、保険料のために世帯分離をするのが適切かは別問題です。市区町村の窓口で実情を伝えて相談してください。

相続した空き家を売る場合も同じですか

同じ構造です。空き家の3,000万円特別控除(措置法35条3項)も居住用財産の3,000万円特別控除(同35条1項)も、租税特別措置法による特別控除である点は変わりません。売った本人(相続人)の翌年度の保険料と、その世帯の住民税非課税判定に効きます。相続人が国保や後期高齢者医療に加入していて、いま軽減を受けているなら、確認する価値があります。

相続人が3人いる場合はどうなりますか

令和6年1月1日以後の譲渡で、被相続人居住用家屋等を取得した相続人が3人以上のときは、1人あたりの控除額が2,000万円に減ります(措置法35条)。控除額が減れば、そのぶん所得税・住民税の課税所得が出て、所得割にも効いてきます。ただしこの記事の主題である軽減判定は、もともと控除前で判定されるので、控除額が3,000万円でも2,000万円でも結果は同じです。

売る年をずらせば避けられますか

理屈のうえでは、その年度の負担が変わります。ただし、空き家の3,000万円特別控除には「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という期限があり、制度自体の適用期限も令和9年12月31日までです。1年度分の軽減を守るために3,000万円の控除を失うなら、明らかに損です。金額を並べて比べてください。

どこに聞けばいちばん確実ですか

3か所です。①国民健康保険料(税)=実家ではなく本人が住んでいる市区町村の国保担当。②後期高齢者医療=都道府県の広域連合(窓口は市区町村)。③介護保険=市区町村の介護保険担当。「土地を売る予定があり、3,000万円の特別控除を使う見込みです。翌年度の保険料と軽減判定にどう反映されますか」と聞けば通じます。料率も軽減基準も自治体ごとに違うので、この記事の数字ではなく、あなたの自治体の数字で判断してください。

この記事で確認できなかったこと

  • 住民税上の「総所得金額等」が特別控除前か後か。住民税の文脈では「前」と説明する自治体(坂戸市・阿賀野市・荒川区)があり、国保料の文脈では「後」と説明する自治体(横浜市)があります。文脈によって別概念として使い分けられていると読めますが、それを明示した一次情報は見つけられませんでした。本文では、この語の扱いを断定していません。
  • 地方税法附則34条4項・35条5項の原文。分離課税の譲渡所得が住民税の課税標準にどう入るかの直接の根拠条文ですが、e-Gov法令検索から附則を取得できず、原文を確認していません。本文の整理は、条文の引用構造と自治体の公式説明にもとづくものです。
  • 後期高齢者医療の3割判定に使う「課税所得」が特別控除後であることの、条文レベルでの最終確認。引用構造からは控除後と読めますが、上記の附則が未確認のため、断定を避けています。
  • 基準収入額適用申請の「収入の額」に、不動産の売却代金がどう算入されるか。譲渡の場合の「収入」は売却価額そのものになりうるため、所得は特別控除でゼロでも収入基準では救済されない、という組み合わせがありうると考えられます。ただし、収入の額の算定方法を定める厚生労働省令を精査していないため、確定できていません。この点は必ず窓口で確認してください。
  • 令和8年8月からの高額療養費の見直し後の区分。本文では上限額の具体的な金額を書いていません。
  • 自治体ごとの保険料率・軽減基準の網羅。本文に挙げたのは青森市・佐賀市・横浜市・長久手市・新座市・江東区・東京都および千葉県の広域連合・東大阪市・鹿児島市・さいたま市の例です。他の自治体では基準が違います。
  • 世帯分離が保険料に与える影響の一般的な整理。制度上の可否と、実態と異なる届出の適否は別問題であり、本記事では踏み込んでいません。

まとめ

  1. 「3,000万円控除で税金がゼロだから安心」は、半分しか正しくありません。社会保険の世界には別の判定基準があります。
  2. 上がらないもの:国保・後期高齢者医療の所得割、介護保険料の所得段階、介護と医療の自己負担割合。いずれも特別控除後で判定されます。
  3. 外れるもの:国保の7割・5割・2割軽減、後期高齢者医療の均等割軽減。どちらも特別控除を引く前の金額で判定されます。
  4. 連鎖するもの:住民税非課税でなくなることで、高額療養費の低所得区分・高額介護サービス費の低い上限額・介護保険料の第1〜3段階から外れます。
  5. 根拠の構造:介護保険法施行令22条の2と高齢者医療確保法施行令7条3項に「特別控除額を控除する」という読替規定がある。この読替がない判定は、控除前で行われます。
  6. いちばん影響を受けるのは、もともと保険料が低い世帯です。「うちは所得が少ないから関係ない」という人ほど効きます。
  7. 影響するのは原則1年度分です。翌々年度には戻ります。
  8. 売る年をずらす前に、空き家の3,000万円控除の期限を確認してください。1年度分の軽減のために3,000万円の控除を失うのは損です。
  9. 料率も軽減基準も自治体ごとに違います。市区町村の国保担当・広域連合・介護保険担当の3か所に、売却予定を伝えて試算を頼んでください。

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