投稿者: 実家じまいナビ編集部

  • 底地を相続したら|国は引き取ってくれません。評価・特例・5つの出口

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    親が地主だった。他人に貸している土地——底地を相続した。地代は年に十数万円。自分では一切使えない。売ろうとしても買い手がつかない。

    それなら国に引き取ってもらおう、と考えた人へ。相続土地国庫帰属制度では、底地は申請すること自体ができません。「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」2条3項2号が、「担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地」を却下事由として挙げているからです。借地上に建物が建っていれば1号(建物の存する土地)にも該当し、二重に閉じられています。

    この記事は、底地を相続した人が最初に知るべきことを、条文と国税庁・法務省の公表資料だけで組み立てます。底地がいくらで売れるかという相場は書きません。公的機関が底地の市場価格を公表している資料は、探しましたが見つかりませんでした。

    結論だけ先に

    • ★底地は相続土地国庫帰属制度の対象外です。使用収益権が設定されている土地は申請できません(同法2条3項2号)。法務省も「地上権、地役権、賃借権等の使用収益権が設定されている場合」を明示しています。
    • 相続税評価は「自用地としての価額 ×(1 − 借地権割合)」(タックスアンサーNo.4613)。借地権割合90%(記号A)の地域なら、底地の評価は自用地価額の10%です。ただし借地権の取引慣行がない地域は借地権割合20%として計算するので、底地は80%評価になります。
    • ★「土地の無償返還に関する届出書」が出ていると、借地権はゼロ(昭60直資2-58 第5項)・底地は自用地価額の80%(同第8項)になります。ただし同第8項の(注)は、その土地が使用貸借なら底地は100%(自用地としての価額)だと定めています。同族会社に貸していた場合は、まずこの届出の有無と、賃貸借か使用貸借かを確認してください。
    • 更新を拒むには6条の正当事由が要り、それが認められても終わりではありません。借地人から建物を時価で買い取れと請求されえます(13条)。しかもこれに反する特約は16条により無効です。

    2026年8月24日にe-Gov法令検索・国税庁タックスアンサー・法務省・国土交通省の公表資料で確認しました。財産評価基本通達25・27・89と個別通達(昭60直資2-58・昭48直資2-189・昭43直資3-22)は、条文本文まで確認して項番号つきで逐語引用しています。底地の売却価格の相場は、公的資料に存在しなかったため書いていません。個別の判断は税理士・弁護士にご相談ください。

    1. 「底地」に法律上の定義はあるのか

    論点 この記事で確認できたこと
    「底地」を定義する条文 借地借家法・民法・相続税法には見つかりませんでした
    国の公的基準における定義 あります。国土交通省「不動産鑑定評価基準」総論第2章第2節Ⅰ
    国税庁の公的文書での用語使用 使われています(タックスアンサーNo.3505・No.4560の表題)
    法令上の対応する概念 借地借家法は「底地」ではなく「借地権設定者」という語で地主の地位を規定(2条3号)
    相続税評価上の対応する概念 「貸宅地」(借地権など宅地の上に存する権利の目的となっている宅地)

    不動産鑑定評価基準
    「底地とは、宅地について借地権の付着している場合における当該宅地の所有権をいう。」

    「底地」は業界の言葉であって、法律の言葉ではありません。役所の窓口や申告書で通じるのは「貸宅地」のほうです。

    2. ★国は底地を引き取ってくれません

    相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律 第2条第3項(柱書)
    承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。

    号 却下事由 底地への当てはめ
    1号 建物の存する土地 借地上に建物があれば該当
    2号 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地 借地権(賃借権・地上権)が設定されているので該当
    3号 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地 —
    4号 特定有害物質により汚染されている土地 —
    5号 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地 —

    法務省「相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件」は、却下事由の説明として次のように述べています。

    「抵当権等の担保権や、地上権、地役権、賃借権等の使用収益権が設定されている場合」は申請できません。

    理由として、国が土地を管理する際に権利者への配慮が必要になること、担保権の実行により所有権を失う可能性があることが挙げられています。

    これは「却下」であって「不承認」ではありません

    2条3項は「申請することができない」と定めた却下事由です。崖地や地下の埋設物などの不承認事由(法5条1項)とは別の段階の話で、審査に進む前に止まります。底地を国に引き取ってもらう道は、この制度には存在しません。

    底地は、1号と2号で止まります 1号 建物の存する土地 借地上に建物があれば該当 該当 2号 権利が設定された土地 借地権があるので該当 該当 3号〜5号 通路・汚染・境界の争いなど 別の話 国庫帰属法2条3項。承認申請そのものができません

    3. 底地の相続税評価——借地権割合の裏返し

    貸宅地(借地権の目的となっている宅地)の価額 = 自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 借地権割合)(No.4613)

    記号 借地権割合 底地(貸宅地)の相続税評価額
    A 90% 自用地価額 × 10%
    B 80% 自用地価額 × 20%
    C 70% 自用地価額 × 30%
    D 60% 自用地価額 × 40%
    E 50% 自用地価額 × 50%
    F 40% 自用地価額 × 60%
    G 30% 自用地価額 × 70%
    記号なし 取引慣行なし=20%として計算 自用地価額 × 80%

    この20%は、通達の本文では次の形で書かれています。

    財産評価基本通達25(貸宅地の評価)(1)(抜粋)
    借地権の目的となっている宅地の価額は、……その宅地の価額(以下この節において「自用地としての価額」という。)から27(借地権の評価)の定めにより評価したその借地権の価額(同項のただし書の定めに該当するときは、同項に定める借地権割合を100分の20として計算した価額とする。)を控除した金額によって評価する。

    最後の行を見落とさないでください。No.4613も「借地権の取引慣行がないと認められる地域にある貸宅地の価額を評価する場合には、借地権割合を20パーセントとして計算します」と明記しています。地方で路線価図に記号が付いていない地域では、底地は自用地価額の80%で評価されます。使えない土地なのに、評価額はほとんど下がりません。

    底地の評価は、借地権割合の裏返し A 借地権90% 10% B 借地権80% 20% C 借地権70% 30% D 借地権60% 40% E 借地権50% 50% F 借地権40% 60% G 借地権30% 70% 記号なし 80% 記号がない地域は、借地権割合20%として計算します

    この割合は「売れる値段」ではありません

    借地権割合(記号A〜G)は、相続税・贈与税の財産評価のための割合です。「借地権割合が60%だから底地は時価の40%で売れる」という命題を裏づける公的資料は、この記事の調査では見つかりませんでした。底地の売却価格の相場は、公的機関が公表していません。この記事に相場を書かないのはそのためです。

    定期借地権が設定されている底地には下限があります

    定期借地権等の残存期間 割合
    5年以下 5%
    5年超10年以下 10%
    10年超15年以下 15%
    15年超 20%

    原則の計算による金額が「自用地としての価額 − 自用地としての価額 × 上表の割合」を上回る場合は、この算式で求めた金額が評価額になります。残存期間が短くなるほど、底地の評価は自用地価額に近づきます。

    ★ほとんど知られていない「貸宅地割合」という別ルート

    評基通25(1)には、さらにただし書があります。

    同 25(1) ただし書
    ただし、借地権の目的となっている宅地の売買実例価額、精通者意見価格、地代の額等を基として評定した価額の宅地の自用地としての価額に対する割合(以下「貸宅地割合」という。)がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長が貸宅地割合を定めている地域においては、その宅地の自用地としての価額にその貸宅地割合を乗じて計算した金額によって評価する。

    先に「貸宅地割合」の有無を確認してください

    国税局長が貸宅地割合を定めている地域では、「1 − 借地権割合」ではなく、その貸宅地割合をそのまま掛けます。順番が逆です。まず貸宅地割合が定められている地域かどうかを確認し、定められていればそちらが優先します。財産評価基準書の該当都道府県のページで確認してください。

    4. ★「無償返還の届出」があると、話がまるごと変わります

    親が同族会社に土地を貸していた場合、税務署に「土地の無償返還に関する届出書」が提出されていることがあります。

    場面 取扱い
    「相当の地代」の水準 自用地としての価額のおおむね年6%相当額
    相当の地代を収受している場合の貸宅地 自用地としての価額の80%
    相当の地代に満たない地代の場合の貸宅地 自用地としての価額から借地権の価額を控除した金額。ただし自用地価額の80%が上限
    無償返還届出書が出ている場合の借地権 ゼロ
    無償返還届出書が出ている場合の貸宅地 自用地としての価額の80%

    「借地権割合が90%だから底地は10%評価」というのは、権利金の授受がある通常の借地の話です。無償返還の届出が出ていれば、借地権はゼロ、底地は80%という、まったく違う結論になります。

    無償返還の届出があると、話が変わります 届出あり 借地権はゼロ 貸宅地は 自用地価額の80% 借地権割合は無関係 届出なし 借地権割合で決まる 90%なら底地10% 記号なしなら80% 路線価図で確認 同族会社に貸していたなら、届出の有無を確かめる

    根拠は昭和60年6月5日 直資2-58です。項番号ごとに引きます

    第1項(抜粋) ……当該権利金の支払に代え、当該土地の自用地としての価額に対しておおむね年6%程度の地代(以下「相当の地代」という。)を支払っている場合は、借地権を有する者については当該借地権の設定による利益はないものとして取り扱う。

    第5項 借地権が設定されている土地について……「土地の無償返還に関する届出書」……が提出されている場合の当該土地に係る借地権の価額は、零として取り扱う。

    第6項(1) (相当の地代を収受している場合で)権利金を収受していない場合又は特別の経済的利益を受けていない場合——当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額

    第8項 借地権が設定されている土地について、無償返還届出書が提出されている場合の当該土地に係る貸宅地の価額は、当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額によって評価する。

    ★第8項には(注)があります。ここを外すと80%と100%を取り違えます

    同 第8項(注)
    使用貸借に係る土地について無償返還届出書が提出されている場合の当該土地に係る貸宅地の価額は、当該土地の自用地としての価額によって評価するのであるから留意する。

    同じ「無償返還の届出あり」でも、賃貸借なら80%、使用貸借なら100%です。親が同族会社に土地を貸していて、地代が公租公課の相当額以下だった場合は、使用貸借と扱われて80%評価にならない可能性があります。(使用貸借の線引きは昭48直資2-189第1項=公租公課に相当する金額以下かどうか。借地権の記事に書きました。)

    同族会社に貸していたなら、もう1本の通達が乗ります

    昭60直資2-58の第6項と第8項は、どちらも「被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し土地を貸し付けている場合には昭和43年10月28日付 直資3-22の適用があることに留意する」としています。その43年通達の中身は次のとおりです。

    昭和43年10月28日 直資3-22「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」(別紙1より)
    ……課税時期における被相続人所有の貸宅地は、自用地としての価額から、その価額の20%に相当する金額(借地権の価額)を控除した金額により、評価することとされたい。
    なお、上記の借地権の価額は、……被相続人所有の同社の株式評価上、同社の純資産価額に算入することとされたい。

    ★後段が重要です。土地の評価で引いた20%は消えるのではなく、その同族会社の株式の評価に乗ってきます。親が会社の株を持っていたなら、土地で下がったぶんが株で戻る形になります。底地だけを見ていると、この往復を見落とします。

    5. 小規模宅地等の特例は使えるか

    「貸付事業用宅地等」に該当すれば、200㎡までの部分について50%減額です(措法69条の4)。

    区分 限度面積 減額割合
    特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 80%
    特定居住用宅地等 330㎡ 80%
    貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

    ただし「3年以内」の壁があります

    措法69条の4第3項4号の括弧書きは、「相続開始前三年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等」を貸付事業用宅地等から除いています。ただしその括弧書きの中にさらに例外があり、相続開始の日まで3年を超えて引き続き「政令で定める貸付事業」を行っていた被相続人等のその貸付事業の用に供されたものは、除外の対象から外れます。

    場面 結論
    親が長年地主として土地を貸してきた(3年より前から貸付事業) 貸付事業用宅地等に該当し得る
    相続直前に急に貸し始めた土地 原則として使えない

    取得者の要件は、イまたはロのいずれかです。イは「相続開始時から申告期限までの間に被相続人の貸付事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ貸付事業の用に供していること」。つまり、申告期限まで売らずに持ち続け、貸し続けることが条件です。

    確認できなかったこと

    「政令で定める貸付事業(特定貸付事業)」の具体的な定義は措置法施行令40条の2にありますが、この記事では施行令の原文を確認していません。貸付事業用宅地等と他の区分を併用する場合の按分算式(措法69条の4第2項3号のイ・ロ・ハ)も原文未確認です。平成30年度改正の経過措置も確認できませんでした。

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    無償返還の届出があるかどうかで、底地の評価額は何倍も変わります

    この記事の4章のとおり、「土地の無償返還に関する届出書」が出ていれば借地権はゼロ・底地は自用地価額の80%評価で、借地権割合90%の地域なら10%評価という一般論とは、8倍の差が出ます。そのうえ小規模宅地等の特例は、3年内除外の判定と「申告期限まで保有・貸付継続」という要件が絡みます。当サイトは税理士ではありません。税理士ドットコムは弁護士ドットコム株式会社が運営する税理士紹介サービスで、全国対応、相談も紹介も無料です。

    ①申し込むと、30日以内に電話またはメールで確認の連絡が来ます。知らない番号でも出てください。ここで内容が確認できないと、税理士の紹介そのものが進みません。
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    先に、税務署に無償返還の届出が出ているかどうかを確認してください。それだけで話が変わります。

    6. ★契約を終わらせたい——そのあとに来るもの

    「更新のときに返してもらう」と考えている人が最初に読むべき条文です。

    借地借家法第5条
    第1項 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、……従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。
    第2項 借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、前項と同様とする。

    建物がある限り、地主が何もしなければ契約は自動的に更新されます(法定更新)。

    借地借家法第6条
    前条の異議は、借地権設定者及び借地権者が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。

    論点 条文上の帰結
    立退料は正当事由の独立した要件か いいえ。「考慮して」正当事由の有無を判断する考慮要素の一つにすぎない
    立退料さえ払えば更新拒絶できるか 条文はそう書いていない。①地主が土地の使用を必要とする事情、②借地人が土地の使用を必要とする事情が主たる要素として先に置かれている
    「立退料」という語が条文にあるか ない。条文上の表現は「財産上の給付」
    金額の基準は条文にあるか ない。金額算定に関する規定は一切ない

    そして、正当事由が認められても終わりではありません

    借地借家法第13条第1項(建物買取請求権)
    借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。

    これは「請求することができる」——地主の承諾なしに売買が成立する権利です。そして16条により、13条に反する借地権者に不利な特約は無効です。契約書に「建物買取請求をしない」と書いてあっても、その部分は効きません。

    7. 借地人の権利は、建物の登記だけで守られています

    借地借家法第10条
    第1項 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
    第2項 前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。

    土地の賃借権の登記は不要です。建物の登記さえあれば、借地権は底地を買った人にも相続した人にも対抗できます。

    底地を売っても、賃貸人の地位は自動的に買主に移ります

    場面 帰結 根拠
    借地人が建物を登記している底地を第三者に売った 借地権は買主に対抗できる。買主は当然に賃貸人たる地位を承継する(借地人の承諾は不要) 借地借家法10条1項、民法605条の2第1項
    買主が「自分が地主だ」と借地人に主張するには 所有権移転登記が必要 民法605条の2第3項
    賃貸人の地位を売主に留保したい場合 譲渡人・譲受人の合意(留保+譲受人が譲渡人に賃貸する旨)が必要 民法605条の2第2項

    8. 地代を上げたいとき

    借地借家法第11条第1項
    地代又は土地の借賃が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

    ただし書に注意してください。「一定の期間地代等を増額しない」という特約があると、その期間は増額請求ができません。親が結んだ契約書にこの条項が入っていないかは、相続したらすぐ確認する項目です。

    そして、地代の増減について訴えを起こすには、まず調停を申し立てなければなりません(民事調停法24条の2第1項・調停前置)。借地人が「相当と認める額」を払い続けている間は、裁判が確定するまでその額で足ります(借地借家法11条2項)。確定後に不足があれば、年1割の利息が付きます。

    地代の相場(固定資産税の何倍、路線価の何%など)を示した公的資料は、この記事の調査では見つかりませんでした。11条1項が挙げているのは上の3つの判断材料だけで、算定式は定められていません。

    9. 底地の5つの出口

    出口 法的な位置づけ 主な根拠
    ① 借地人に売る 底地所有権の売買。借地人が買えば借地権と所有権が同一人に帰属する 民法上の売買(親子間はNo.4560に注意)
    ② 第三者・業者に売る 買主は賃貸人たる地位を承継する 民法605条の2第1項、借地借家法10条1項
    ③ 等価交換 固定資産の交換の特例の対象になり得る 所得税法58条、No.3502・No.3505
    ④ 借地権と底地を同時に第三者へ売る それぞれが自己の権利を譲渡(実質的には完全所有権としての売却) これを直接説明する公的資料は確認できませんでした
    ⑤ 介入権 借地人の譲渡許可申立てに対し、地主が自ら買い取る旨を申し立てる制度 借地借家法19条3項(競売は20条2項)
    5つの出口と、その根拠 1 借地人に売る 民法上の売買 根拠あり 2 第三者・業者に売る 民法605条の2第1項 根拠あり 3 等価交換 所得税法58条 根拠あり 4 同時に第三者へ売る 説明する公的資料は確認できず 根拠なし 5 介入権 借地借家法19条3項 根拠あり 4だけ、直接説明する公的資料を確認できませんでした

    親子間で底地を売買するときの落とし穴

    タックスアンサーNo.4560によれば、親が借地権を持つ土地の底地を子が買い取り、その後に親子間で地代の授受が行われなくなった場合、その借地権は親から子へ贈与されたものとして取り扱われます。ただし、親と子が連署した「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を子の納税地の所轄税務署長に速やかに提出すれば、贈与として取り扱われません。この場合、その借地権は後に相続が発生したときに親の相続財産として扱われます。

    10. ★等価交換——所得税法58条という道

    借地人と土地を分け合い、それぞれを更地(完全所有権)にする方法です。

    所得税法58条1項1号は、交換の特例の対象となる資産として「土地(建物又は構築物の所有を目的とする地上権及び賃借権……を含む。)」を挙げています。この括弧書きにより借地権が「土地」に含まれるので、借地権と底地の交換は「土地と土地の交換」になります。

    国税庁No.3505「借地権と底地を交換したとき」も、「借地権と底地の一部との交換も、土地と土地との交換になり」特例の対象となり得るとしています。

    特例の6要件(No.3502)

    順 要件
    1 譲渡する資産・取得する資産が、いずれも固定資産であること(棚卸資産は対象外)
    2 いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること(借地権は土地の種類に含まれる)
    3 譲渡する資産は1年以上所有していたものであること
    4 取得する資産は、相手方が1年以上所有していたもので、かつ交換のために取得したものでないこと
    5 取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること
    6 譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること

    6番目の要件が実務のハードルです

    等価交換は「借地権割合どおりに面積を割る」形で行われるのが自然ですが、時価の差が高いほうの20%以内という制約があるため、割り方によっては特例が使えなくなります。また5番目の「同じ用途」要件があるので、交換後の使い方にも注意が要ります。交換差金を受け取った場合、その差金は譲渡所得として課税対象になります。

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    国が引き取らない底地を、それでも手放したいなら

    この記事の2章のとおり、底地は相続土地国庫帰属制度に申請すること自体ができません。ラクウル(株式会社ネクサスプロパティマネジメント/国土交通大臣(1)第10311号)は、再建築不可・共有持分・借地権とならんで底地を買取対象として明示している会社で、日本全国が対象です。自社で買い取るため仲介手数料はかかりません。

    ①買取価格は、仲介で売れる価格より低くなります。そして底地の売却価格の相場は公的資料に存在しないため、当サイトは提示額が妥当かどうかを判断できません。複数社に当たって並べてください。②小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等・200㎡・50%減額)は、相続税の申告期限まで保有し、貸付けを続けることが要件です(措法69条の4第3項4号イ)。申告期限より前に売ると、この特例が使えなくなることがあります。売却の時期は、必ず税理士に確認してから決めてください。③この記事の9章のとおり、借地人に売る・等価交換するという出口もあります。買取業者に出す前に、借地人に打診したかを思い出してください。④申し込むと担当者から連絡が入ります。売却を考えていない相談は対象外です。⑤当サイトはこの会社の査定額や対応を確認していません。⑥このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって買取価格が下がることはありません。

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    売る前に、申告期限と小規模宅地等の特例だけは必ず確認してください。

    11. 相続したら最初に確認する8項目

    順 確認事項 なぜ必要か
    1 借地上の建物の登記の有無 登記があれば借地権は第三者に対抗できる(10条1項)。底地の売却価値・処分方法に直結する
    2 建物が滅失していないか/掲示がされていないか 滅失後2年の掲示ルール(10条2項)
    3 借地権の種類(普通借地権か定期借地権等か) 相続税評価がまったく異なる
    4 「土地の無償返還に関する届出書」の提出の有無 提出があると借地権はゼロ(昭60直資2-58第5項)・底地は80%(同第8項)。ただし使用貸借なら底地は100%(同第8項注)
    5 地代の水準(自用地価額の年6%以上か) 相当の地代に該当するかで評価が変わる
    6 貸付事業をいつから行っていたか(3年超か) 小規模宅地等の特例の3年内除外(措法69条の4第3項4号括弧書き)
    7 地代を増額しない旨の特約の有無 あると増額請求ができない(11条1項ただし書)
    8 借地権が旧借地法時代のものか 適用法令が変わる。平成4年8月1日が境目

    よくある質問

    Q. 底地を国に引き取ってもらえますか?

    できません。申請すること自体ができません。相続土地国庫帰属法2条3項2号が「担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地」を却下事由としており、法務省も「地上権、地役権、賃借権等の使用収益権が設定されている場合」は申請できないと明示しています。借地上に建物があれば1号(建物の存する土地)にも該当し、二重に閉じられています。

    Q. 底地の相続税評価はどう出しますか?

    自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 借地権割合)です(No.4613)。借地権割合は路線価図の記号(A=90%〜G=30%)または評価倍率表の借地権割合欄で調べます。借地権の取引慣行がないと認められる地域では借地権割合を20%として計算するので、底地は自用地価額の80%評価になります。

    Q. 借地権割合が60%なら、底地は時価の40%で売れますか?

    そう言える公的資料は見つかりませんでした。借地権割合は相続税・贈与税の財産評価のための割合であって、市場での売買価格を定めるものではありません。底地の売却価格の相場を公表している公的機関の資料は、この記事の調査では確認できませんでした。そのため、この記事には相場を書いていません。

    Q. 親が同族会社に貸していた土地です。評価は変わりますか?

    「土地の無償返還に関する届出書」が税務署に出ているかどうかで、結論がまるごと変わります。届出が出ている場合、借地権の価額はゼロ(昭60直資2-58 第5項)、貸宅地は自用地としての価額の80%(同 第8項)になります。ただし同 第8項の(注)は、その土地が使用貸借なら貸宅地は自用地としての価額(=100%)で評価すると定めています。地代が公租公課の相当額以下なら使用貸借と扱われるので、80%だと思い込むと危険です。さらに同族会社の場合は昭43直資3-22が乗り、土地で引いた20%が同社の株式の純資産価額に算入されます。「借地権割合が90%だから底地は10%評価」という一般論は、権利金の授受がある通常の借地の話です。まず届出の有無を確認してください。

    Q. 小規模宅地等の特例は底地に使えますか?

    貸付事業用宅地等に該当すれば、200㎡までの部分について50%減額です。ただし相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された土地は原則として除かれます(措法69条の4第3項4号の括弧書き)。親が長年地主として貸してきた土地なら該当し得ますが、相続人が申告期限まで保有し、貸付けを続けることが要件です。売却を急ぐと特例が消えます。

    Q. 更新のときに返してもらえますか?

    建物がある限り、地主が何もしなければ契約は自動的に更新されます(5条1項・2項の法定更新)。更新を拒む異議を述べるには、6条の正当事由が必要です。立退料(条文上は「財産上の給付」)は正当事由の独立した要件ではなく、考慮要素の一つにすぎません。金額の基準は条文にありません。

    Q. 正当事由が認められれば、更地で返ってきますか?

    いいえ。借地人から建物を時価で買い取れと請求されえます(13条1項の建物買取請求権)。これは地主の承諾なしに売買が成立する権利で、16条により、13条に反する借地権者に不利な特約は無効です。契約書に「建物買取請求をしない」と書いてあっても効きません。

    Q. 底地を売ったら、借地人の承諾は要りますか?

    要りません。借地人が建物を登記していれば借地権は買主に対抗でき、民法605条の2第1項により賃貸人たる地位は当然に買主に移転します。ただし買主が「自分が地主だ」と借地人に主張するには、所有権移転登記が必要です(同3項)。

    Q. 底地を相続したことを、借地人に通知する義務はありますか?

    通知を義務づける(または不要とする)条文・公的資料は、この記事の調査では確認できませんでした。言えるのは、民法605条の2第3項が「所有権移転登記をしなければ賃借人に対抗することができない」と定めていることから、登記が重要であるという点までです。地代の振込先変更の手続についても、公的資料では確認できませんでした。

    Q. 地代を上げたいのですが、いくらまで上げられますか?

    金額の基準を示した公的資料はありません。借地借家法11条1項が挙げているのは「租税その他の公課の増減」「土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動」「近傍類似の土地の地代等との比較」という3つの判断材料だけで、算定式は定められていません。また同項ただし書により、一定期間増額しない旨の特約があるとその期間は増額できません。訴えを起こすには調停前置です。

    Q. 借地人に売るのがいちばん現実的だと聞きました。親子間でもいいですか?

    親が借地権者で子が底地を買う場合は注意が必要です。その後に親子間で地代の授受が行われなくなると、借地権が親から子へ贈与されたものとして取り扱われます(No.4560)。親と子が連署した「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を子の納税地の所轄税務署長に速やかに提出すれば、贈与として取り扱われません。この場合その借地権は、後の相続で親の相続財産として扱われます。

    この記事で確認できなかったこと

    • 底地の売却価格の相場。e-Gov・国税庁・法務省・裁判所・国土交通省・地方公共団体のいずれでも確認できませんでした。公的機関が底地の市場価格の相場を公表している資料は見つかりません。
    • 底地が「借地権割合どおり」の価格で売れるかどうか。借地権割合は相続税・贈与税の財産評価のための割合であり、売買価格を定めるものではありません。この命題を裏づける公的資料は存在しませんでした。
    • 借地人に売る場合と第三者・買取業者に売る場合の価格差。一次情報がありません。
    • 立退料(財産上の給付)の相場・算定基準。借地借家法6条は考慮要素の一つとして挙げるのみで、金額の基準を定めていません。裁判所のページにも算定基準の記載はありませんでした。
    • 地代の相場(固定資産税の何倍、路線価の何%など)。11条1項は判断材料を挙げるのみで、算定式を定めていません。
    • 相当の地代に満たない地代を収受している場合の貸宅地の価額の算式。昭60直資2-58の第4項・第7項の存在と位置づけは確認しましたが、算式そのものが画像で掲載されており、文字として読み取れませんでした。この記事の「自用地価額の80%が上限」は、第6項(2)ただし書と第7項の文言によります。
    • 国税局長が「貸宅地割合」を定めている地域が実際にどこか。評基通25(1)ただし書の存在は確認しましたが、どの国税局がどの地域に定めているかは、この記事では確認していません。財産評価基準書の該当都道府県のページで確認してください。
    • 不動産鑑定評価基準「各論第1章第1節」の底地の鑑定評価額の求め方。PDFから該当部分を抽出できませんでした。定義(総論第2章第2節Ⅰ)は確認済みです。
    • 租税特別措置法施行令40条の2(特定貸付事業の定義)の原文。3年内除外の例外の具体的な要件は裏づけがありません。
    • 措法69条の4第2項3号のイ・ロ・ハ(限度面積の按分算式)。他の区分と併用する場合の計算式は書けません。
    • 「底地」の法令上の定義規定の有無。確認できたのは、①借地借家法・民法・相続税法には定義がないこと、②国交省の不動産鑑定評価基準に定義があること、③国税庁が実務用語として使用していること、の3点です。「どの法令にも定義がない」と断定するだけの検証はできていません。
    • 底地を相続したときの借地人への通知の要否、地代の振込先変更の手続、契約書がないときの対処。いずれも公的資料では確認できませんでした。
    • 借地権と底地を同時に第三者へ売る手法の法的位置づけ。民法上の売買の組合せとして説明はできますが、公的な裏づけのある「制度」ではありません。
    • 借地非訟における介入権の申立期間の実務上の目安。19条3項は「裁判所が定める期間内」とするのみで、裁判所のページにも具体的な日数の記載はありませんでした。
    • 住宅・土地統計調査における「借地」の具体的な数値。「敷地の所有の関係(所有地・借地)」という調査区分と統計表の存在は確認しましたが、全国の住宅数・面積の数値は抽出できませんでした。

    まとめ

    1. 底地は相続土地国庫帰属制度の対象外です。使用収益権が設定されている土地は申請すること自体ができません(2条3項2号)。建物があれば1号にも該当します。
    2. 「底地」は法律の言葉ではありません。借地借家法は「借地権設定者」、相続税評価は「貸宅地」と呼びます。定義があるのは国土交通省の不動産鑑定評価基準です。
    3. 相続税評価は「自用地としての価額 ×(1 − 借地権割合)」(評基通25(1))。借地権の取引慣行がない地域は借地権割合20%=底地80%評価になります。国税局長が「貸宅地割合」を定めている地域では、そちらが優先します。
    4. ★無償返還届出があると借地権ゼロ(昭60直資2-58第5項)・底地80%(同第8項)。ただし使用貸借なら底地は100%です(同第8項注)。さらに同族会社なら昭43直資3-22で、土地から引いた20%が株式の純資産価額に乗ってきます。
    5. 小規模宅地等の特例は貸付事業用宅地等として200㎡・50%減額。ただし3年内に貸し始めた土地は原則対象外で、申告期限まで保有し貸し続けることが要件です。
    6. 建物がある限り、地主が何もしなければ契約は法定更新されます。更新拒絶には6条の正当事由が必要で、立退料は考慮要素の一つにすぎません。
    7. 正当事由が認められても、建物を時価で買い取れと請求されえます(13条)。これに反する特約は16条により無効です。
    8. 底地を売るのに借地人の承諾は不要です(民法605条の2第1項)。ただし所有権移転登記をしないと借地人に対抗できません(同3項)。
    9. 等価交換は所得税法58条の対象になり得ます。ただし時価の差が高いほうの20%以内という要件があり、割り方次第で特例が使えなくなります。
    10. 底地の売却価格の相場は、公的資料に存在しませんでした。借地権割合は相続税評価のための割合であって、売れる値段ではありません。

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  • 借地権の相続税評価|自用地価額×借地権割合の出し方と計算例

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    借地に建つ実家を相続した。土地は自分のものではないのだから、相続税の対象になるのは建物だけ——そう思っていると、申告のときに足元をすくわれます。

    国税庁は「借地権は、相続税や贈与税の課税対象になります」と明記しています。そして借地権の評価額は、その土地の自用地としての価額に借地権割合を掛けた額です。借地権割合が90%の地域なら、土地の評価額のほとんどが相続財産に載ります。土地を持っていないのに、土地の値段の9割を相続したことになる。

    この記事は、その計算を国税庁の公表資料だけで最後まで通します。路線価図の記号の読み方から、200㎡の実家の具体的な数字、小規模宅地等の特例で8割引きになる場面、そして「親の土地に子が無償で建てた家は借地権ゼロ」という逆のケースまで。

    結論だけ先に

    • 借地権の価額=自用地としての価額 × 借地権割合(タックスアンサーNo.4611)。借地権割合は路線価図の数字の右にある記号A〜Gで決まり、A=90%からG=30%までの7段階しかありません。
    • 建物は別に評価します。固定資産税評価額 × 1.0、つまり固定資産税評価額そのままです。借地であることによる減額はありません。
    • ★借地権も小規模宅地等の特例の対象です。租税特別措置法69条の4第1項の「宅地等」は「土地又は土地の上に存する権利」と定義されており、借地権はここに含まれます。特定居住用宅地等なら330㎡まで80%減額。
    • ★親の土地に子が無償で家を建てていた場合(使用貸借)は、借地権の価額はゼロとして取り扱われます。その代わり、その土地は貸宅地ではなく自用地としての価額で評価されます(No.4552)。

    2026年8月24日に国税庁のタックスアンサー・財産評価基準書・申告書様式、およびe-Gov法令検索で確認しました。この記事の計算例は補正率をすべて1.00と仮定した最も単純なケースです。実際の土地は形・間口・奥行で補正がかかります。財産評価基本通達と個別通達(昭48直資2-189・昭60直資2-58・昭43直資3-22)は、条文本文まで確認して逐語で引用しています。申告は税理士にご相談ください。

    1. 相続財産に載るのは、借地権と建物の2つ

    借地に建つ実家を相続したとき、相続税の課税対象になるものを整理します。

    状況 相続財産として計上するもの 評価額の出し方
    親が他人の土地を借りて家を建てていた(普通借地権・地代あり) ①借地権 ②建物 ①自用地としての価額 × 借地権割合
    ②固定資産税評価額 × 1.0
    上記で、その建物を第三者に貸していた ①貸家建付借地権 ②貸家 ①借地権の価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
    ②固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
    親の土地に子が無償で家を建てていた(使用貸借) 土地(借地権は計上しない) 土地は自用地としての価額。使用借権の価額はゼロ
    親が土地を他人に貸していた(親が地主側) 貸宅地(底地) 自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 借地権割合)

    上の1行目が、この記事の主役です。国税庁タックスアンサーNo.4611「借地権の評価」は、逐語で次のように述べています。

    「借地権の価額は、借地権の目的となっている宅地の自用地としての価額に借地権割合を乗じて求めます。」
    「この借地権割合は、借地事情が似ている地域ごとに定められており、路線価図や評価倍率表に表示されています」

    この算式のもとになっている通達の本文は、次のとおりです。

    財産評価基本通達27(借地権の評価)
    借地権の価額は、その借地権の目的となっている宅地の自用地としての価額に、当該価額に対する借地権の売買実例価額、精通者意見価格、地代の額等を基として評定した借地権の価額の割合(以下「借地権割合」という。)がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める割合を乗じて計算した金額によって評価する。ただし、借地権の設定に際しその設定の対価として通常権利金その他の一時金を支払うなど借地権の取引慣行があると認められる地域以外の地域にある借地権の価額は評価しない。

    ★このただし書は見落とされがちです。借地権の取引慣行がないと認められる地域では、借地権そのものを評価しません(=ゼロ)。ただし地主側の貸宅地は自用地価額の100%にはなりません。評基通25(1)の括弧書きが、この場合は借地権割合を100分の20として計算すると定めているからです(8章)。

    No.4611の根拠法令等欄は「相法23、評基通9、27、27-2、87、令5課評2-74」です。ここに出てくる評基通87は「借家権の評価」ではなく「賃借権の評価」(雑種地に係る賃借権)で、7章の一時使用目的の借地権の根拠になっています。

    2. ★借地権割合は、記号A〜Gの7段階しかありません

    記号 借地権割合 記号 借地権割合
    A 90% E 50%
    B 80% F 40%
    C 70% G 30%
    D 60% — —

    A〜Gの7段階だけです。H以降の記号は存在しません。90%より上も、30%より下もありません。

    路線価図の読み方

    項目 内容
    路線価の単位 千円/㎡で表示される
    表示例 「215D」=1㎡あたり215,000円、借地権割合60%
    記号の位置 借地権割合の記号は各路線価の右に付されている

    借地権割合を見る場所は2か所あります

    路線価が付いていない「倍率地域」では、路線価図ではなく評価倍率表を見ます。

    • 路線価地域(路線価図に数字がある)→ 路線価の右の記号A〜G
    • 倍率地域(路線価がない)→ 評価倍率表(一般の土地等用)の「借地権割合」欄(3番目の欄)
    • 評価倍率表の「宅地」欄に「路線」と表示されていたら、その地域は路線価地域なので路線価図を見ます
    • 評価倍率表の「適用地域名」欄が「一部」「路線価地域」なら、路線価地域と倍率地域が混在しています。路線価図で所在地がどちらかを確認してください

    3. 実際に計算します

    200㎡の整形地、路線価図の表示が「200D」というケースで通します。

    項目 値
    路線価 200,000円/㎡(路線価図の表示は「200D」)
    借地権割合 60%(記号D)
    地積 200㎡
    土地の形状 整形地・一方のみ道路に接する(各種補正率をすべて1.00と仮定)
    権利の内容 普通借地権(地代を支払っている)

    ステップ1:自用地としての価額を出す

    200,000円/㎡ × 1.00(補正率) × 200㎡ = 40,000,000円

    ステップ2:借地権の価額を出す

    40,000,000円 × 60% = 24,000,000円

    土地を1㎡も持っていないのに、2,400万円が相続財産に載ります。これが「借地なら相続税は関係ない」という思い込みが危ない理由です。

    ステップ3:建物を足す

    建物の評価は固定資産税評価額 × 1.0です(No.4602)。つまり固定資産税評価額と同じ額。借地の上に建っていることによる減額はありません。

    「200D」の土地200㎡で計算します 1 自用地としての価額 20万円/㎡ × 200㎡ = 4,000万円 2 借地権の価額 4,000万円 × 60%(記号D) 3 建物を足す 固定資産税評価額 × 1.0。減額なし

    財産評価基本通達89(家屋の評価)
    家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額(地方税法第381条……の規定により家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録された基準年度の価格又は比準価格をいう。)に別表1に定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する。

    通達の文言は「1.0を乗じる」ではなく「別表1に定める倍率を乗じる」です。その別表1が倍率を1.0と定めているので、結果として固定資産税評価額と同額になります。

    順 計算の根拠 出典
    1 路線価 × 補正率 × 地積 = 自用地としての価額(路線価方式) No.4602 土地家屋の評価
    2 路線価は千円単位/記号Dは60% 国税庁「路線価図の説明」
    3 自用地としての価額 × 借地権割合 = 借地権の価額 No.4611(相法23、評基通9・27・27-2・87ほか)
    4 家屋は固定資産税評価額 × 1.0 No.4602

    4. ★小規模宅地等の特例は、借地権にも使えます

    ここが、この記事でいちばん金額が動くところです。

    租税特別措置法第69条の4第1項(抜粋)
    ……被相続人等の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等(土地又は土地の上に存する権利をいう。……)で……

    「土地の上に存する権利」に借地権が含まれます。したがって借地権も小規模宅地等の特例の対象です。タックスアンサーNo.4124も「宅地等」を「土地または土地の上に存する権利」と定義しています。

    区分 限度面積 減額割合
    特定事業用宅地等 400㎡ 80%
    特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 80%
    特定居住用宅地等 330㎡ 80%
    貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

    さきほどの2,400万円に当てはめると

    地積200㎡ ≦ 330㎡なので全部が対象。24,000,000円 ×(1 − 80%)= 4,800,000円。1,920万円が減額されます。

    取得者 特定居住用宅地等としての要件
    配偶者 取得者ごとの要件なし
    同居親族 相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつその宅地等を相続開始時から申告期限まで有していること
    別居親族(いわゆる「家なき子」) 政令の要件あり(この記事では詳細を確認していません)

    減額されるのは「借地権の価額」です

    80%減額の対象になるのは借地権の価額であって、自用地としての価額ではありません。上の例なら4,000万円の8割ではなく、2,400万円の8割です。

    借地権にも、8割引きが使えます 1,920万円 減額される額 特例なし 2,400万円 特定居住用宅地等 480万円 減るのは借地権の価額。自用地の価額ではありません

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    評価額を出すところまでは自分でできます。申告書で確定させるのは別の仕事です

    この記事の計算例は、補正率をすべて1.00と仮定した最も単純なケースです。実際の借地は整形地でないことが多く、奥行・間口・不整形地・がけ地の補正がかかります。そのうえ、相当の地代を払っている場合・無償返還の届出がある場合・使用貸借との線引きは、この記事では公的資料で確認しきれませんでした。当サイトは税理士ではありません。税理士ドットコムは弁護士ドットコム株式会社が運営する税理士紹介サービスで、全国対応、相談も紹介も無料です。

    ①申し込むと、30日以内に電話またはメールで確認の連絡が来ます。知らない番号でも出てください。ここで内容が確認できないと、税理士の紹介そのものが進みません。
    ②「税理士を紹介してほしい」と伝えるためのサービスです。税務相談そのものに答える窓口ではありません。
    ③過去1年以内にこのサービスを使ったことがある方は対象外です。ご家族が先に申し込んでいないか、確認してから使ってください。
    お住まいの地域の税理士会や、相続税を扱う近所の事務所にも1件あたって見比べてください。
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    相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月です。

    5. ★親の土地に子が無償で建てた家は、借地権ゼロ

    実家の相続でよくあるのは、むしろこちらのパターンです。親名義の土地に、子が自分の家を建てている。地代は払っていない。

    国税庁タックスアンサーNo.4552「親の土地に子供が家を建てたとき」は、これを使用貸借と呼び、次のように整理しています。

    論点 国税庁の取扱い
    使用貸借により土地を使用する権利の価額 ゼロとして取り扱う
    家を建てた時点で借地権の贈与になるか ならない(借地権相当額に対する贈与税は課されない)
    その土地の相続時の評価 貸宅地としての評価額ではなく、自用地としての評価額
    根拠通達 昭48直資2-189

    建てたときに贈与税がかからないのは有利ですが、相続のときは土地が満額(自用地としての価額)で載ります。借地権割合ぶんの減額がないということです。No.4553も、使用貸借の土地上の家屋とその敷地の贈与を受けたときは「貸家建付地ではなく自用地の贈与を受けたことになります」と述べています。

    ★分かれ目は「公租公課に相当する金額以下かどうか」です

    この線引きは、根拠通達の第1項が正面から書いています。

    昭和48年11月1日 直資2-189「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」第1項(抜粋)
    ……当該土地の使用貸借に係る使用権の価額は、零として取り扱う。
    この場合において、使用貸借とは、民法第593条に規定する契約をいう。したがって、例えば、土地の借受者と所有者との間に当該借受けに係る土地の公租公課に相当する金額以下の金額の授受があるにすぎないものはこれに該当し、当該土地の借受けについて地代の授受がないものであっても権利金その他地代に代わるべき経済的利益の授受のあるものはこれに該当しない。

    読み方は2方向あります

    • 固定資産税・都市計画税の相当額「以下」しか払っていない → 使用貸借。地代を払っている「つもり」でも、公租公課の範囲内なら借地権は立ちません。
    • 地代がゼロでも、権利金その他「地代に代わるべき経済的利益」の授受があれば使用貸借ではありません。この場合は借地権が立つので、評価はまったく変わります。

    固定資産税の課税明細書と、実際に払っている金額を並べてみてください。それが最初の判定材料です。境界線上にあるケースは税理士に確認を。

    地代がいくらかで、評価が変わります 使用貸借 公租公課の額以下 使用権の価額ゼロ 土地は自用地価額 貸家建付地にならず 借地権が立つ 権利金などの授受 借地権として評価 自用地価額×割合 貸すと30%減る 払っている「つもり」でも、公租公課以下なら

    そして相続時の評価は、同じ通達の第3項が定めています。

    同 第3項
    使用貸借に係る土地又は借地権を相続……により取得した場合における相続税又は贈与税の課税価格に算入すべき価額は、当該土地の上に存する建物等……の自用又は貸付けの区分にかかわらず、すべて当該土地又は借地権が自用のものであるとした場合の価額とする。

    「貸付けの区分にかかわらず」という点が効きます。子がその家を第三者に貸していても、土地は貸家建付地にならず、自用地としての価額のままです。

    6. 借地の上の家を人に貸していたら

    借地上の建物を第三者に賃貸していた場合、借地権の評価はさらに下がります。

    貸家建付借地権の価額 = 借地権の価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)

    借家権割合は、令和6年分は全都道府県で30%です。国税庁の確定申告書等作成コーナーが「令和6年分の借家権割合は、全ての都道府県において30%と定められています」と明記しています。

    「一律30%」は法令上の定めではありません

    根拠は財産評価基本通達94(借家権の評価)で、同項(1)は「『借家権割合』は、国税局長の定める割合による」とだけ定めています。数字は通達に書かれていません。国税局長が定め、毎年の財産評価基準書に載る仕組みです。結果として近年は全国一律30%になっている、というのが正確な言い方です。財産評価基準書で年分を選び → 都道府県をクリック → 「2.土地関係以外」の「借家権割合」で確認できます。

    賃貸割合の出し方

    賃貸割合 = 賃貸されている各独立部分の床面積の合計 ÷ その家屋の各独立部分の床面積の合計(No.4614)。

    一時的な空室は、賃貸されているものとして扱われる場合があります。①継続的に賃貸されてきたこと、②空室後速やかに新たな賃借人の募集が行われたこと、③空室期間が課税時期の前後の1か月程度など一時的な期間であること等の要件を満たす場合です。

    さきほどの2,400万円の借地権で、賃貸割合100%なら——24,000,000円 ×(1 − 0.30 × 100%)= 16,800,000円。建物のほうも固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)で評価します。

    7. 定期借地権と一時使用は、計算方法がまったく違います

    タックスアンサーNo.4611は、借地権を5つに区分しています。

    区分 根拠法 評価方法
    (1) 借地権(いわゆる普通借地権) 旧借地法、借地借家法 自用地としての価額 × 借地権割合
    (2) 定期借地権 借地借家法22条 課税時期において借地権者に帰属する経済的利益およびその存続期間を基として評定した価額。課税上弊害がない場合に限り簡便算式あり
    (3) 事業用定期借地権等 借地借家法23条 同上
    (4) 建物譲渡特約付借地権 借地借家法24条 同上
    (5) 一時使用目的の借地権 借地借家法25条 雑種地の賃借権の評価方法に準じて評価

    (5)の一時使用目的の借地権について、財産評価基本通達87(賃借権の評価)は、雑種地に係る賃借権を「地上権に準ずる権利として評価することが相当と認められる賃借権」(賃借権の登記があるもの、権利金その他の一時金の授受があるもの、堅固な構築物の所有を目的とするものなど)とそれ以外に分け、前者は「法定地上権割合と借地権割合のいずれか低い割合」、後者は「法定地上権割合の2分の1」を自用地としての価額に乗じるとしています。「法定地上権割合」という語の定義も、この87条が置いています。

    実家が借地に建っているケースの大半は(1)の普通借地権です。ただし平成4年8月1日以降に設定された借地で「◯年で更地にして返す」という契約になっているなら、(2)〜(4)の可能性があります。契約書の設定日と存続期間を必ず確認してください。

    実家の大半は普通借地権。ただし確認を 普通借地権 旧借地法・借地借家法 割合を掛ける 定期借地権 借地借家法22条。経済的利益で 別の計算 事業用定期・譲渡特約 借地借家法23条・24条 同じく別計算 一時使用目的 借地借家法25条 雑種地に準じる 平成4年8月1日以降の設定なら、契約書を必ず確認

    紛らわしい条文があります

    相続税法23条は、地上権の価額を残存期間に応じた割合(10年以下なら5%、50年超なら90%など)で評価する規定を置いています。しかし同条の括弧書きは「借地借家法に規定する借地権……を除く」と明記しています。実家が建っている普通の借地は、相法23条の残存期間表ではなく、借地権割合方式で評価します。相法23条の表は、一時使用目的の借地権などの「法定地上権割合」として顔を出します。

    8. 地主側(貸宅地・底地)の評価

    貸宅地の価額 = 自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 借地権割合)(No.4613)

    さきほどの例なら、40,000,000円 −(40,000,000円 × 60%)= 16,000,000円。

    借地人側の借地権(2,400万円)と地主側の貸宅地(1,600万円)を足すと、自用地としての価額(4,000万円)になります。土地の値打ちが借地人と地主で分け合われている、という構造がここに現れます。

    なお国税庁の申告要否判定コーナーによれば、借地権側の割合の選択肢は90%〜30%、貸宅地側は90%〜20%です。貸宅地側にだけ20%があるのは、借地権の取引慣行がないと認められる地域の扱いによるものです。

    9. 申告書のどこに書くか

    国税庁「相続税の申告のしかた」に収録されている第11表の記載要領によれば、土地・宅地の「利用区分」欄には次の別を書きます。

    自用地(事業用、居住用、その他)、貸宅地、貸家建付地、借地権(事業用、居住用、その他)の別

    種類 細目 利用区分
    土地 宅地 借地権(居住用)
    家屋、構築物 家屋 自用家屋+その構造と用途

    この記載要領の一覧には「貸家建付借地権」という語がありません。貸家建付借地権のケースをどう書くかは、この一覧からは確定できませんでした。

    10. 自分で計算する手順

    1. 財産評価基準書のサイトを開く(国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」)。
    2. 年分を選ぶ。相続開始(被相続人の死亡)の年分です。申告する年ではありません。
    3. 都道府県 → 市区町村 → 町丁目 → 路線価図番号と辿る。
    4. その土地が面する道路の数字と記号を読む。「200D」なら200千円/㎡・借地権割合60%。
    5. 路線価がない(倍率地域)なら、評価倍率表の「借地権割合」欄を見る。
    6. 自用地としての価額を出す。路線価地域は「路線価 × 各種補正率 × 地積」、倍率地域は「固定資産税評価額 × 評価倍率」。補正率表は国税庁「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表」に、奥行価格補正率・不整形地補正率・間口狭小補正率・がけ地補正率など10種類が載っています。
    7. 借地権割合を掛ける。
    8. 小規模宅地等の特例が使えるかを検討する。
    9. 建物を固定資産税評価額で足す。

    補正率を1.00で済ませないでください

    この記事の計算例は補正率をすべて1.00と仮定した最も単純なケースです。実際の土地は、奥行が深い・間口が狭い・形がいびつ・がけ地を含む、といった事情で補正がかかります。借地の実家は、そもそも整形地でないことが多いのが実情です。使う様式は「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書(第1表・第2表)」です。

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    相続税評価額と、実際に売れる金額はまったく別のものです

    借地権割合は、相続税・贈与税の財産評価のための割合です。市場での売買価格を定めるものではありません。借地権つきの家は、買う側が「地主の承諾を取れるか」を読めないので、一般の買主にはまず売れません。ラクウル(株式会社ネクサスプロパティマネジメント/国土交通大臣(1)第10311号)は、借地権・底地・再建築不可・共有持分を日本全国で買い取っている会社です。評価額を出したあとに「現金化するといくらになるのか」を並べておくと、遺産分割の話が具体的になります。

    ①買取価格は、仲介で売れる価格より低くなります。査定額は、売れる価格ではありません。②賃借権の譲渡には、地主の承諾(民法612条1項)か裁判所の許可(借地借家法19条1項)が必要です。③小規模宅地等の特例には、申告期限まで保有することが要件になる区分があります。売る時期によっては特例が使えなくなるので、売却の判断は税理士に確認してからにしてください。④申し込むと担当者から連絡が入ります。売却を考えていない相談は対象外です。⑤当サイトはこの会社の査定額や対応を確認していません。⑥このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって買取価格が下がることはありません。

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    順番は「評価額 → 税理士 → 査定」です。逆にすると特例を落とすことがあります。

    よくある質問

    Q. 土地は借りているだけなのに、相続税がかかるのですか?

    かかります。国税庁タックスアンサーNo.4611は「借地権は、相続税や贈与税の課税対象になります」と明記しています。評価額は自用地としての価額 × 借地権割合で、借地権割合が90%(記号A)の地域なら、土地の評価額のほとんどが相続財産に載ります。建物も別に固定資産税評価額で計上します。

    Q. 借地権割合はどこで調べますか?

    国税庁の財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)です。路線価地域なら路線価の右にある記号(A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%)。倍率地域なら評価倍率表の「借地権割合」欄です。選ぶ年分は「相続が開始した年」です。申告する年ではありません。

    Q. 記号がHやIの地域はありますか?

    ありません。A〜Gの7段階だけです。90%より上も、30%より下もありません。国税庁「路線価図の説明」に掲げられている対応表がA〜Gで完結しており、タックスアンサーNo.4612の底地割合表とも整合しています。

    Q. 借地権に小規模宅地等の特例は使えますか?

    使えます。租税特別措置法69条の4第1項の「宅地等」は「土地又は土地の上に存する権利」と定義されており、借地権はこの「土地の上に存する権利」に含まれます。特定居住用宅地等なら330㎡まで80%減額です。減額されるのは借地権の価額であって、自用地としての価額ではない点に注意してください。

    Q. 親の土地に私が無償で家を建てています。借地権を贈与されたことになりますか?

    なりません。タックスアンサーNo.4552は、これを使用貸借とし「使用貸借により土地を使用する権利の価額はゼロとして取り扱われ」るため、借地権相当額に対する贈与税は課税されないとしています。ただしその代わり、将来の相続ではその土地は貸宅地ではなく自用地としての評価額になります。建てたときは無税、相続のときは満額、という構造です。

    Q. 固定資産税ぶんだけ親に払っています。これは使用貸借ですか、賃貸借ですか?

    使用貸借です。昭48直資2-189の第1項が「例えば、土地の借受者と所有者との間に当該借受けに係る土地の公租公課に相当する金額以下の金額の授受があるにすぎないものはこれに該当し」と明記しています。つまり固定資産税・都市計画税の相当額以下しか払っていないなら、地代を払っていても使用貸借で、借地権の価額はゼロです。逆に、地代がゼロでも権利金その他「地代に代わるべき経済的利益」の授受があれば、使用貸借には当たりません。公租公課の額とほぼ同じ、という境界線上のケースは税理士に確認してください。

    Q. 建物は借地の上に建っているぶん安く評価されませんか?

    されません。財産評価基本通達89は「家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額に別表1に定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する」と定めており、その倍率が1.0なので、評価額は固定資産税評価額と同じです(No.4602)。借地であることによる減額はありません。建物を第三者に貸していた場合だけ、固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)で下がります。

    Q. 相続税法23条に「地上権は残存期間で評価する」と書いてあるのを見ました。

    実家の借地には、その表は使いません。相続税法23条の括弧書きは「地上権(借地借家法に規定する借地権及び民法第269条の2第1項の地下または空間を目的とする地上権を除く)」となっており、建物所有目的の借地権は明文で除かれています。実家が建っている借地は、残存期間表ではなく借地権割合方式で評価します。相法23条の表は、一時使用目的の借地権などの「法定地上権割合」として使われます。

    Q. 定期借地権も同じ計算でいいですか?

    いけません。計算方法がまったく違います。定期借地権(借地借家法22条)・事業用定期借地権等(23条)・建物譲渡特約付借地権(24条)は、「課税時期において借地権者に帰属する経済的利益およびその存続期間を基として評定した価額」で評価します。課税上弊害がない場合に限り簡便算式が使えますが、基準年利率と複利年金現価率が必要で、この記事では具体的な数値計算例を示せていません。契約書で借地権の種類を確認してください。

    Q. 借地権と底地を足すと、土地の値段になりますか?

    相続税評価の世界では、そうなります。借地権=自用地としての価額 × 借地権割合、貸宅地=自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 借地権割合)ですから、足すと自用地としての価額に戻ります。ただしこれは相続税を計算するための評価額であって、実際に売れる価格ではありません。借地権も底地も、単独では売りにくい財産です。

    Q. 申告書には何と書けばいいですか?

    第11表の記載要領によれば、土地・宅地の利用区分には「自用地(事業用、居住用、その他)、貸宅地、貸家建付地、借地権(事業用、居住用、その他)」の別を書きます。実家なら「借地権(居住用)」。建物は種類「家屋、構築物」/細目「家屋」/利用区分「自用家屋」+構造・用途です。なおこの記載要領の一覧に「貸家建付借地権」という区分名はなく、その場合の書き方は確認できませんでした。

    この記事で確認できなかったこと

    • 貸家建付借地権の算式そのもの。財産評価基本通達28(貸家建付借地権等の評価)の本文は確認しましたが、肝心の算式が画像(alt属性は「貸家建付借地権等の価格の算式」)で掲載されており、文字として読み取れませんでした。この記事の算式は、国税庁「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」第2表の印字構造から読み取ったものです。
    • 貸家建付借地権を第11表にどう記載するか。記載要領の一覧に区分名がありません。
    • 借家権割合が全都道府県30%であることの、財産評価基準書そのものでの確認。確定申告書等作成コーナーと申告要否判定コーナーの記述で裏づけましたが、都道府県別のページからは数値を読み取れませんでした。
    • 基準年利率の具体的な数値と複利年金現価率の表。定期借地権等の実際の数値計算例は作れませんでした。
    • 路線価図の「地区区分」の記号(ビル街地区・高度商業地区・普通住宅地区等の表示記号と、それに対応する補正率の適用範囲)。
    • 小規模宅地等の特例の「家なき子」要件、および借地権と底地が別々の相続人に渡る場合の留意点。この記事では調査していません。
    • 相当の地代に満たない地代を支払っている場合の借地権の価額の算式。昭60直資2-58の本文と項番号は確認できましたが(第2項・第4項)、算式そのものが画像で掲載されており、文字として読み取れませんでした。なお同通達第1項の「相当の地代=自用地としての価額のおおむね年6%程度」と、第5項の「無償返還届出書が提出されている場合の借地権の価額は零」は本文で確認できています。くわしくは底地の記事に書きました。

    まとめ

    1. 借地権は相続税の課税対象です。「土地は借りているだけ」は通用しません。
    2. 借地権の価額 = 自用地としての価額 × 借地権割合(No.4611)。
    3. 借地権割合は路線価の右の記号A〜G。A=90%からG=30%までの7段階しかありません。倍率地域では評価倍率表の「借地権割合」欄を見ます。
    4. 路線価図で選ぶ年分は「相続が開始した年」です。申告する年ではありません。
    5. 建物は固定資産税評価額 × 1.0(評基通89は「別表1に定める倍率」と書き、その倍率が1.0)。借地であることによる減額はありません。
    6. ★借地権も小規模宅地等の特例の対象です(措法69条の4第1項「土地又は土地の上に存する権利」)。特定居住用宅地等なら330㎡まで80%減額。
    7. 減額されるのは借地権の価額であって、自用地としての価額ではありません。
    8. 親の土地に子が無償で建てた家は使用貸借で、借地権の価額はゼロ。その代わり土地は自用地としての価額で相続財産に載ります(昭48直資2-189 第1項・第3項)。分かれ目は「公租公課に相当する金額以下かどうか」です。
    9. 定期借地権(22条〜24条)と一時使用目的(25条)は計算方法がまったく違います。契約書で種類を確認してください。
    10. この記事の計算例は補正率1.00の最も単純なケースです。実際の借地は整形地でないことが多く、補正がかかります。申告は税理士に。

    あわせて読みたい

  • 借地の更新料・承諾料は払う義務があるのか|借地借家法の全文を検索しました

    【PR】本ページはプロモーションを含みます。

    借地に建つ実家を相続したら、地主から封書が届いた。「名義書換料として◯◯万円をお納めください」。あるいは更新の年に「更新料は借地権価格の5%です」。多くの人は、そういう決まりなのだろうと思って払います。

    借地借家法の全文を検索しました。「更新料」も「承諾料」も「名義書換料」も、条文には一度も出てきません。「相続」という語すら出てきません。出てくるのは「財産上の給付」だけで、それは6条・17条・18条・19条・20条の5か条に置かれた、裁判所の権限を定めた言葉です。

    この記事は、地主から請求される4つの名目——更新料・譲渡承諾料(名義書換料)・建替承諾料・相続を理由とする名義書換料——について、法律に「払え」と書いた条文があるかどうかだけを条文で確認します。相場は書きません。公的資料を当たりましたが、料率も算定式もどこにも存在しなかったからです。

    結論だけ先に

    • ★借地借家法に「更新料」「承諾料」「名義書換料」「権利金」「相続」の語は一つも出てきません。これらは法律が定めた金銭ではなく、契約と慣行の産物です。
    • 民法612条1項が求めているのは「承諾」であって「承諾料」ではありません。承諾の対価について、この条は何も定めていません。
    • ★建替承諾料を請求されたら、まず契約書に「増改築を制限する定め」があるかを見てください。借地借家法17条2項は「増改築を制限する旨の借地条件がある場合において」から始まります。制限がなければ、この条の出番ではありません。
    • 地代の増額を通告されても、直ちに請求額を払う義務は条文上生じません(借地借家法11条2項)。「相当と認める額」を払い続ければ足ります。ただし裁判で増額が正当とされたときは、不足額に年1割の利息が付きます。

    条文は2026年8月24日にe-Gov法令検索で、手続と費用は裁判所(courts.go.jp)・法務局・国税庁・法テラスの公式ページで確認しました。「支払義務を定めた条文がない」ことと「払わなくてよい」ことは同じではありません。契約書に特約がある場合の効力については、公的資料で確認できた説明がなく、この記事では判断していません。実際の交渉は弁護士にご相談ください。

    1. まず、法律の全文を検索しました

    e-Gov法令検索が配信する借地借家法(平成三年法律第九十号)の法令XML全文を対象に、地主から請求される名目の語がそもそも条文に存在するかを確認しました。

    語 借地借家法の本文中に出てくるか
    更新料 出てこない
    承諾料 出てこない
    名義書換料/名義変更料 出てこない
    建替承諾料/増改築承諾料/譲渡承諾料 出てこない
    権利金 出てこない
    相続 出てこない
    財産上の給付 出てくる(6条・17条・18条・19条・20条)

    条文の見出しを1条から並べても、借地人に金銭の支払義務を課した条はありません

    条 見出し 条 見出し
    3条 借地権の存続期間 13条 建物買取請求権
    4条 借地権の更新後の期間 16条 強行規定
    5条 借地契約の更新請求等 17条 借地条件の変更及び増改築の許可
    6条 借地契約の更新拒絶の要件 18条 借地契約の更新後の建物の再築の許可
    9条 強行規定 19条 土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可
    10条 借地権の対抗力 20条 建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可
    11条 地代等増減請求権 21条 強行規定

    この法律が定めているのは「期間」と「更新の要件」と「裁判所が許可を出せる場面」であって、借地人が地主に払う金銭ではありません。

    誤解しやすいところ

    「財産上の給付」は、地主が請求できるお金のことではありません。19条1項の文言は「裁判所は……その許可を財産上の給付に係らしめることができる」です。主語は裁判所で、しかも「できる」です。地主が任意の交渉で提示してくる承諾料は、この条とは別のもので、法的には合意の問題です。

    借地借家法を全文検索しました 更新料・承諾料 条文に出てきません 0件 名義書換料・権利金 条文に出てきません 0件 財産上の給付 6条・17条〜20条にあります 出てくる 「財産上の給付」の主語は裁判所です

    2. ★更新料——法律に条文がありません

    更新について借地借家法が置いているのは、次のような条です。

    借地借家法第5条(借地契約の更新請求等)
    第1項 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるものを除き、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。

    「従前の契約と同一の条件で更新したものとみなす」だけです。更新料の支払を更新の要件にしていません。そして6条は、地主が更新を拒む場合の「正当の事由」を定めた条です。地主が更新を拒むには正当事由が要る、という構造であって、借地人が金を払えば更新できる、という構造ではありません。

    国土交通省も「更新料には法令上の根拠がない」と書いています

    「『更新料』については、法令上根拠となる規定がなく、必ずしも全国的な慣習でもないことから、国土交通省の賃貸住宅標準契約書においては記載がありません。」

    国土交通省 賃貸借トラブルに係る相談対応研究会「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)」令和4年3月・29ページ(2026年8月24日確認)。

    この引用には限定があります

    この事例集は「民間賃貸住宅」=建物の賃貸借(借家)を対象にしたもので、土地の賃貸借(借地)は対象外です。同じ資料が引用している最高裁平成23年7月15日判決も、借家の更新料条項についての判断であって、借地の更新料についての判断ではありません。借地の更新料について公的資料が示した判例の解説は、この記事の調査では見つけられませんでした。

    更新料の根拠を、2つの資料で確かめました 借地借家法5条 更新料は要件ではない 「従前の契約と 同一の条件で更新」 6条は正当事由の話 国交省の事例集 法令上の根拠がない 標準契約書に記載なし ただし対象は借家 借地は対象外です 借地の更新料についての判例の解説は見つかりません

    「強行規定」は3つあり、それぞれ守る範囲が違います

    条 条文 守っている条
    9条 この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。 3条〜8条(存続期間・更新)
    16条 第十条、第十三条及び第十四条の規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。 10条(対抗力)・13条(建物買取請求権)・14条
    21条 第十七条から第十九条までの規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。 17条・18条・19条(裁判所の許可)

    21条は実務上とても効きます。「増改築や譲渡について裁判所に許可を求めない」「必ず地主の定める承諾料を支払う」といった条項は、借地権者に不利なものとして21条により無効となりうる構造です。ただし20条(競売の場合)は21条の対象に入っていません。

    一方、更新料の特約が9条に触れて無効になるかどうかは、この記事では判断できませんでした。9条が無効にするのは「この節の規定に反する特約」で、その「この節」=3条〜8条は金銭について何も定めていません。条文の文言だけからは一義的に決まらない論点で、公的資料の説明も見つけられませんでした。

    3. ★譲渡承諾料——612条が求めているのは「承諾」です

    民法第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
    第1項 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
    第2項 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

    条文が要求しているのは「承諾」です。「承諾料」ではありません。承諾の対価について、612条は一言も書いていません。

    承諾が得られないときに出てくるのが借地借家法19条1項です

    借地借家法第19条第1項(抜粋)
    ……借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。

    この条を、読者が誤解しやすい順に分解します。

    条文が言っていること 条文が言っていないこと
    裁判所が、承諾に代わる許可を与えることが「できる」 地主が承諾の対価を請求できる、とは書いていない
    裁判所が、その許可を財産上の給付に「係らしめることができる」 借地人に財産上の給付を支払う義務がある、とは書いていない
    発動の条件は「当事者間の利益の衡平を図るため必要があるとき」 額も率も書いていない。「◯%」という数字は条文上どこにもない
    裁判所は残存期間・従前の経過・譲渡を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない(2項) 「借地権価格の何割」といった算定基準は書かれていない

    裁判所の公式案内にも、相場は一行もありません

    東京地方裁判所民事第22部の案内によれば、裁判所は鑑定委員会に「許可の可否、承諾料額、賃料額、建物及び借地権価格等について意見を求める」とされています。鑑定委員会は弁護士・不動産鑑定士・有識者から3人以上が指定され、現地調査を経て意見書を作ります。鑑定委員に要する費用は国が負担するので、当事者の負担はありません。

    そして——東京地裁・大阪地裁いずれのページにも、承諾料の割合や相場の記載はありません。示されているのは「鑑定委員会が個別の事件ごとに意見書を作る」という仕組みだけです。

    地主には「介入権」があります

    19条3項は、借地人が譲渡許可を申し立てた場合に、地主の側が「他人に売るくらいなら自分が買う」と申し立てられる制度を定めています。この場合、裁判所は相当の対価を定めて建物と賃借権の譲渡を命じることができます。承諾料を取るのではなく、地主が買主になるという結末です。手続の詳細は借地非訟の記事にまとめました。

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    「払うか、払わないか」で止まっているなら、売った場合の数字も並べてみる

    承諾料の交渉が長引くのは、その借地権をどうしたいのかが決まっていないからであることが多いです。売ると決めれば、地主との交渉は「承諾料をいくら払うか」から「19条1項の許可を取るかどうか」に変わります。ここは借地権を専門に扱う不動産会社の窓口で、無料相談から現地調査・査定・売買契約・地主との代理交渉までを一括で対応すると案内しています。

    ①対象は東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県だけです。それ以外の実家は、この窓口の対象外です。②「相談だけ」には向きません。この窓口は売却を前提にした査定申込を受ける窓口で、売却と関係のない相談は対象外だと明記されています。地代・更新料・承諾料の交渉だけを相談したいなら、弁護士か法テラス、または簡易裁判所の民事調停のほうが早いです。③住宅ローンが残っている物件は対象外です。④申し込みは物件の所有者本人からに限られます。相続登記が済んでいないなら、先に誰が所有者なのかを確定させてください。⑤申し込むと電話でのヒアリングと、現地査定の日程決めまで進みます。メールだけで金額を知る使い方はできません。⑥運営会社の宅地建物取引業免許番号は、当サイトでは確認できませんでした。申し込む前に、会社概要で免許番号と更新回数を見てください。⑦買取は仲介より手取りが下がります。査定額は、売れる価格ではありません。当サイトはこのリンク経由の申込で広告収入を受け取りますが、それによってあなたの査定額が下がることはありません。

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    承諾料を払わずに済ませたいだけなら、この窓口ではなく弁護士か民事調停です。この記事の9章に窓口を並べました。

    4. ★相続で名義書換料を請求されたら

    民法第896条(相続の一般的効力)
    相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

    ここが、この記事でいちばん実害が大きいところです。条文を突き合わせると、次のようになります。

    論点 条文が述べていること
    借地権は相続されるか 民法896条本文により一切の権利義務が承継される。借地権が「一身に専属したもの」に当たるとする規定は、民法にも借地借家法にもない
    相続は民法612条の「譲渡」か 612条1項の文言は「賃借人は……その賃借権を譲り渡し」。賃借人自身の行為を指す文言であり、相続開始による当然承継とは構造が違う
    借地借家法19条1項は相続に適用されるか 19条1項の文言は「建物を第三者に譲渡しようとする場合において」。相続は借地権者が譲渡しようとする場合ではない
    借地借家法に相続の規定はあるか 「相続」の語は条文中に一度も登場しない
    借地非訟の6類型に相続はあるか 含まれない。6類型はいずれも17条〜20条の申立事件で、相続に関する類型はない

    相続を理由とする「名義書換料」について、相続人が地主に金銭を支払うべき旨を定めた条文は、借地借家法にも民法にも存在しません。

    相続したときに法律が求めているのは、建物の相続登記のほうです

    借地上の建物は相続人の所有財産であり、その相続登記は令和6年4月1日から義務化されています(法務局の案内による)。「地主に名義書換料を払う」ことと「建物の相続登記をする」ことは、まったく別の話です。法律が求めているのは後者だけです。

    なお、税金の世界では借地権は相続財産として扱われます。国税庁は「借地権は、相続税や贈与税の課税対象になります」と明記し、その価額は自用地としての価額 × 借地権割合で求めると案内しています(タックスアンサーNo.4611)。相続で借地権が承継されるという民法896条の帰結と、税務の扱いは整合しています。

    5. 建替承諾料——まず契約書を見てください

    借地借家法第17条第2項
    増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。

    この条は「増改築を制限する旨の借地条件がある場合において」という言葉から始まります。つまり——

    契約書の状況 17条2項の適用 意味
    増改築を制限する定めがある 適用される 協議が調わなければ、裁判所に「承諾に代わる許可」を申し立てられる。裁判所は3項により財産上の給付を命じることができる
    増改築を制限する定めがない 適用の前提を欠く 裁判所に承諾に代わる許可を求める場面ではない

    17条2項は、増改築制限特約を裁判所の力で乗り越えるための救済手続です。乗り越えるべき制限が契約書に存在しなければ、この条の出番がありません。

    ここは慎重に読んでください

    「増改築禁止特約がなければ地主の承諾は法律上不要である」と明示的に述べた公的資料は、この記事の調査では見つけられませんでした。条文上確実に言えるのは次の4点だけです。

    • 17条2項が発動するのは「増改築を制限する旨の借地条件がある場合」に限られる(条文の文言)
    • 借地借家法に、増改築一般について地主の承諾を要求する条文は存在しない(全条の見出し・語句調査による)
    • 民法612条1項が承諾を要求しているのは賃借権の譲渡・転貸であって、借地上の建物を建て替える場合ではない(条文の文言)
    • 借地借家法21条により、17条〜19条に反する特約で借地権者に不利なものは無効である

    実務上の意味:建替承諾料を請求されたら、出発点は「契約書に増改築を制限する定めがあるか」の確認です。

    6. ★地代を上げると言われたら

    借地借家法第11条第2項
    地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

    この条は、地代の名目で承諾料の代わりを取ろうとする動きへの、条文上の受け皿になります。

    順 条文が定めている流れ
    1 地主が増額を請求する(11条1項)
    2 協議が調わない
    3 借地人は「増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額」を支払えば足りる(11条2項本文)
    4 裁判が確定し、既払額に不足があれば、不足額に年1割の利息を付して支払う(同ただし書)

    やってはいけないこと

    支払を全部止めてしまうことは、11条2項が想定している行動ではありません。同項は「相当と認める額の地代等を支払う」ことを前提にしています。払う額で争うのと、払わないのは別です。

    そして、地代の増減はいきなり訴訟にできません

    民事調停法第24条の2第1項
    借地借家法第十一条の地代若しくは土地の借賃の額の増減の請求……に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てをしなければならない。

    「しなければならない」という義務規定です(調停前置)。調停を申し立てずに訴えを起こした場合、受訴裁判所はその事件を調停に付さなければならないと2項が定めています。

    7. 払ってしまったお金の税金

    すでに支払った承諾料・更新料は、税金の計算では拾えることがあります。

    借地人が払った金銭 譲渡所得の計算上の扱い 出典
    借地権を売るときの名義書換料(譲渡承諾料) 譲渡費用になる 国税庁タックスアンサーNo.3255「譲渡費用となるもの」⑥
    更新料 借地権の取得費を構成する 所得税法施行令182条2項
    建替承諾料・増改築承諾料 公的資料で明確な取扱いを確認できなかった —
    払った承諾料は、税金で拾えることがあります 名義書換料(譲渡承諾料) 譲渡費用になります No.3255 更新料 取得費を構成します 令182条2項 建替・増改築承諾料 明確な取扱いを確認できず 確認できず 承諾料の領収書は、売却するまで捨てないでください

    No.3255は譲渡費用となるものとして「借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など」を明示しています。承諾料の領収書は、売却するまで捨てないでください。

    更新料については、所得税法施行令182条2項が「前項の取得費は……更新前に支出した改良費及び更新料の額を含むものとし」と定めています。ただしこの条の1項は「不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供する借地権」を対象にしており、自宅として使っている借地権はこの条の直接の対象ではありません。

    地主が受け取った側は、原則として不動産所得です

    国税庁タックスアンサーNo.1370は、不動産所得の総収入金額に含まれるものとして「名義書換料、承諾料、更新料または頭金などの名目で受領するもの」を挙げています。例外として、借地権の設定時に受け取る権利金のうち土地の時価の10分の5を超えるものは譲渡所得(分離課税)になります(No.3111)。

    ここを取り違えないでください

    国税庁が更新料・承諾料・名義書換料の税務上の取扱いを定めていることは、これらの支払に法律上の義務があることを意味しません。税法は「そういう金銭のやり取りが現に行われた場合にどう課税するか」を定めているだけで、私法上の支払義務を作り出すものではありません。「国税庁のページに承諾料と書いてあるのだから払う義務がある」という説明は、公的資料の読み方として誤りです。

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    すでに払ってしまった承諾料・更新料を、税金の計算で拾うために

    この記事の7章のとおり、名義書換料は譲渡費用(No.3255⑥)、更新料は借地権の取得費を構成する(所得税法施行令182条2項)という扱いが国税庁の資料で確認できます。ただし建替承諾料・増改築承諾料の取扱いは、国税庁の公的資料で確認できませんでした。当サイトは税理士ではありません。税理士ドットコムは弁護士ドットコム株式会社が運営する税理士紹介サービスで、全国対応、相談も紹介も無料です。

    ①申し込むと、30日以内に電話またはメールで確認の連絡が来ます。知らない番号でも出てください。ここで内容が確認できないと、税理士の紹介そのものが進みません。
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    ③過去1年以内にこのサービスを使ったことがある方は対象外です。ご家族が先に申し込んでいないか、確認してから使ってください。
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    領収書は、売却するまで捨てないでください。

    8. 契約書が見つからないとき

    相続した実家の借地では、契約書が出てこないことがよくあります。契約書がなくても、借地権があること自体は公的な書類で裏づけられます。

    借地借家法第10条第1項(借地権の対抗力)
    借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。

    建物が自分(または被相続人)の名義で登記されていれば、それだけで借地権を第三者に対抗できます。そして16条により、10条に反する特約で借地権者に不利なものは無効です。

    手がかり 何がわかるか 入手先
    建物の登記事項証明書 借地上の建物が誰の名義で登記されているか(10条1項の対抗力の根拠) 法務局
    土地の登記事項証明書 土地の所有者が誰か。賃借権または地上権の登記があるか 法務局
    固定資産税の課税明細書 建物だけに課税され土地に課税されていないこと=土地の所有者ではないこと 市区町村(地方税法343条)
    地代の支払記録 通帳の振込履歴、領収書。継続的に地代を払っている事実 金融機関

    登記事項証明書の手数料

    請求方法 手数料
    登記所の窓口(書面請求) 600円
    オンライン請求・郵送受取 520円
    オンライン請求・窓口受取 490円

    課税明細書には例外があります

    地方税法343条1項の括弧書きは、「質権又は百年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土地」については質権者・地上権者に課税すると定めています。借地権が賃借権ではなく地上権として設定され、かつ存続期間が100年を超える定めがある場合には、土地の固定資産税が借地人に課される可能性があります。実家の借地がこの類型に当たることは稀と考えられますが、条文上の例外として存在します。

    9. どこに相談するか

    窓口 何を扱うか 費用 借地への適合
    消費者ホットライン188 消費生活に関する苦情。「事業者間取引、個人間取引など」は対象外とされる 無料(通話料別) 適合しない可能性が高い
    民事調停(宅地建物調停)/簡易裁判所 「宅地又は建物の貸借その他の利用関係の紛争」(民事調停法24条) 申立手数料は訴訟の約半額(10万円の請求で訴訟1,000円に対し調停500円) 適合する。地代の増減は調停前置
    借地非訟/地方裁判所 借地借家法17条・18条・19条・20条の許可申立て 固定資産評価額を基礎に算定。鑑定委員の費用は国庫負担 承諾が得られないときの正面からの手段
    法テラス 民事・家事・行政の法律相談、費用の立替 資力要件を満たせば法律相談は無料(同一問題3回まで) 適合する
    自治体の宅地建物相談 自治体により異なる。横浜市は「借地権の更新、立ち退き」をよくある相談として明示 無料(回数制限あり) 適合する

    188にかけても解決しにくい理由

    国民生活センターの相談案内ページには、相談できない対象として「事業者間取引、個人間取引など」が挙げられています。個人の地主と個人の借地人との借地契約は、典型的には個人間取引にあたります。同センターの消費者トラブルFAQ「住まい・修理、引越」カテゴリを確認しましたが、「借地」「地主」「土地の賃貸借」に関する独立した項目は確認できませんでした。

    188にかけること自体は妨げられませんが、借地の紛争は消費生活相談の枠組みで解決される類型ではありません。民事調停・借地非訟・法テラスに向かうほうが実質的です。

    民事調停は、更新料・承諾料の争いにも使えます

    民事調停法24条は「宅地又は建物の貸借その他の利用関係の紛争」を宅地建物調停事件としています。地代だけでなく、更新料や承諾料をめぐる争いも「利用関係の紛争」に位置づけて調停を申し立てる余地があります。裁判所の案内では、通常2〜3回の期日でおおむね3か月以内に成立するとされ、調停調書に記載された内容は確定判決と同じ効力を持ちます。申立用紙と記入方法の説明は簡易裁判所の窓口に備え付けてあります。

    法テラスの資力要件(手取月収額の基準)

    家族人数 東京都特別区・大阪市など その他の地域 資産の合計額
    単身者 200,200円 182,000円 180万円以下
    2人家族 276,100円 251,000円 250万円以下
    3人家族 299,200円 272,000円 270万円以下
    4人家族 328,900円 299,000円 300万円以下

    家賃・住宅ローンを払っている場合は加算があります(東京都特別区で1人53,000円、2人68,000円、3人85,000円、4人92,000円が上限)。ただし、相続した借地上の実家がある場合に、その建物・借地権が資産要件でどう評価されるかは、この記事の調査では確認できませんでした。

    10. 平成4年8月1日より前の借地には、古い法律が残ります

    借地借家法は平成4年8月1日に施行され、同時に借地法(大正10年法律第49号)・建物保護に関する法律・借家法が廃止されました(附則2条)。ただし附則4条ただし書は「廃止前の……借地法及び借家法の規定により生じた効力を妨げない」とし、附則5条は施行前に設定された借地権の建物の朽廃による消滅について「なお従前の例による」としています。

    相続した実家の借地が戦前・戦後まもなくの契約である場合、存続期間や更新について適用される条文が、いま検索して出てくる借地借家法とは異なる可能性があります。契約の設定時期は必ず確認してください。

    11. 請求書が届いたときの順番

    1. 契約書を探す。見つからなければ建物の登記事項証明書(490〜600円)と固定資産税の課税明細書で借地権の存在を固める。
    2. 契約書があるなら、名目ごとに該当箇所を探す。建替承諾料なら「増改築を制限する定め」、更新料なら更新料条項。条項が見当たらないのに請求されているなら、その時点で交渉の位置が変わります。
    3. 契約の設定時期を確認する。平成4年8月1日より前なら旧借地法の適用が残る部分がある。
    4. いつまでに何が必要かを整理する。売却が絡むなら、譲渡許可の申立ては買主を決めてからです(借地非訟の記事参照)。
    5. 金額の見当をつける。承諾料が借地権の価値に見合うかは、借地権そのものの評価額が分からないと判断できません。
    6. 専門家に相談する。資力要件を満たすなら法テラス(同一問題3回まで無料)、自治体の宅地建物相談、そして弁護士。
    7. 合意できないなら、簡易裁判所の民事調停。地代の増減は調停前置です。
    請求書が届いたときの順番 1 契約書を探す 無ければ登記事項証明書で固める 2 名目ごとに条項を探す 条項が無いなら交渉の位置が変わる 3 設定時期を確認する 平成4年8月1日より前は旧法 4 金額の見当をつける 借地権の評価額なしでは判断できない 5 専門家に相談する 法テラス・自治体の相談・弁護士

    よくある質問

    Q. 更新料を払わないと、契約を更新してもらえませんか?

    「更新料を払わなければ更新できない」と定めた条文は、借地借家法にはありません。5条1項は借地権者が更新を請求したとき、建物がある場合に限り「従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす」と定め、地主が更新を拒むには6条の正当事由が要るという構造になっています。ただし、契約書に更新料条項がある場合にそれが有効かどうかについて、公的資料の説明は見つけられませんでした。この記事は「法律に条文がない」ところまでしか述べていません。

    Q. 相続しただけで名義書換料を請求されました。払う義務はありますか?

    相続を理由として相続人が地主に金銭を支払うべき旨を定めた条文は、借地借家法にも民法にもありません。民法896条は相続人が「一切の権利義務を承継する」と定め、民法612条1項が承諾を求めているのは賃借人自身が「譲り渡し」た場合です。借地借家法に「相続」の語は一度も出てきません。ただし契約書に相続時の金銭支払を定めた特約が置かれている場合の扱いについては、公的資料での説明を確認できませんでした。まず契約書を確認してください。

    Q. 「承諾料は借地権価格の10%が相場」と聞きました。本当ですか?

    公的な一次情報では裏づけられませんでした。借地借家法19条1項は「財産上の給付に係らしめることができる」とするだけで額も率も定めていません。東京地裁・大阪地裁の借地非訟の案内にも、算定基準や割合の記載はありません。示されているのは、鑑定委員会(弁護士・不動産鑑定士・有識者3人以上)が事件ごとに意見書を作るという手続だけです。「◯%」という数字は、民間の実務慣行と裁判実務の集積であって、法律や公的機関が定めた基準ではありません。

    Q. 建て替えたいのですが、地主が承諾してくれません。

    まず契約書に増改築を制限する定めがあるかを確認してください。制限の定めがある場合は、協議が調わなければ借地借家法17条2項により裁判所に「承諾に代わる許可」を申し立てられます。裁判所は3項により財産上の給付を命じることができます。制限の定めがない場合、17条2項が想定する場面ではありません。ただし「制限特約がなければ承諾が不要」と明示した公的資料は確認できていないので、弁護士に相談してください。

    Q. 契約書に「裁判所に許可を求めない」と書いてあります。

    借地借家法21条は「第十七条から第十九条までの規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする」と定めています。17条〜19条は裁判所の許可を定めた条ですから、それを封じる特約は借地権者に不利なものとして無効となりうる構造です。ただし20条(競売の場合)は21条の対象に入っていません。

    Q. 地代を倍にすると通告されました。すぐ払わないといけませんか?

    条文上、直ちに請求額を払う義務は生じません。借地借家法11条2項は「増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる」と定めています。ただし、裁判が確定して既払額に不足があったときは、不足額に年1割の利息が付きます。そして支払を全部止めるのは、この条が想定した行動ではありません。

    Q. 地代でもめたら、すぐ裁判できますか?

    できません。民事調停法24条の2第1項が「まず調停の申立てをしなければならない」と定めています(調停前置)。調停を申し立てずに訴えを提起した場合、受訴裁判所はその事件を調停に付さなければならないとされています(同2項)。宅地建物調停事件の管轄は、宅地・建物の所在地を管轄する簡易裁判所です(同24条)。

    Q. 払ってしまった承諾料は、何かで取り戻せますか?

    返してもらう筋とは別に、税金の計算で拾える場合があります。国税庁タックスアンサーNo.3255は、譲渡費用となるものとして「借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など」を挙げています。領収書は売却するまで保管してください。更新料については、所得税法施行令182条2項が借地権の取得費を構成するものとして扱っています。

    Q. 地主から「更新料は税務署に申告している正当な収入だ」と言われました。

    それは支払義務の根拠になりません。国税庁タックスアンサーNo.1370は、不動産所得の総収入金額に「名義書換料、承諾料、更新料または頭金などの名目で受領するもの」を含めていますが、税法は「現に金銭のやり取りがあった場合にどう課税するか」を定めているだけで、私法上の支払義務を作り出すものではありません。課税されることと、払う義務があることは別の話です。

    Q. 契約書がありません。借地権があること自体を証明できますか?

    借地借家法10条1項は「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる」と定めています。建物が自分または被相続人の名義で登記されていれば、それが対抗力の根拠になります。登記事項証明書は窓口600円、オンライン請求・窓口受取なら490円です。16条により、10条に反する借地権者に不利な特約は無効です。

    Q. 消費者ホットライン188に相談していいですか?

    かけること自体は妨げられませんが、解決に結びつきにくい可能性が高いです。国民生活センターの相談案内には、相談できない対象として「事業者間取引、個人間取引など」が挙げられています。個人同士の借地契約は典型的には個人間取引にあたります。同センターの消費者トラブルFAQ「住まい・修理、引越」カテゴリにも、借地・地主・土地の賃貸借に関する独立した項目は確認できませんでした。簡易裁判所の民事調停、法テラス、自治体の宅地建物相談のほうが実質的です。

    この記事で確認できなかったこと

    • 更新料・譲渡承諾料・建替承諾料の相場や料率を示した公的資料。借地借家法・裁判所・国土交通省・法務省のいずれにも、額や率の目安の記載を確認できませんでした。
    • 裁判所が財産上の給付を算定する基準・計算式。東京地裁・大阪地裁いずれの借地非訟の案内にも記載がありません。示されているのは鑑定委員会が事件ごとに意見書を作るという手続だけです。
    • 借地非訟事件で認められた承諾料の統計・実績。調査の範囲では見つけられませんでした。
    • 更新料特約が借地借家法9条(強行規定)に触れて無効になるかどうか。公的な説明を見つけられませんでした。9条が守るのは3条〜8条で、それらは金銭に触れていない、というところまでしか条文からは言えません。
    • 法定更新(5条)の場合に更新料の支払義務が生じるかどうか。公的資料の記述を見つけられませんでした。
    • 借地の更新料に関する最高裁判例の公的な解説。国土交通省の事例集が引用する最高裁平成23年7月15日判決は建物賃貸借(借家)の更新料条項に関するもので、同事例集は借地を対象外としています。
    • 「増改築禁止特約がなければ地主の承諾は不要」と明示的に述べた公的資料。条文の文言までは確認しましたが、この帰結を明示した公的な解説は確認できませんでした。
    • 「相続は民法612条の譲渡に当たらないから承諾は不要」と明示的に述べた公的資料。法務省・裁判所・自治体の法律相談ページを探しましたが、この整理を明記した公的ページは確認できませんでした。
    • 契約書に相続時の金銭支払を定めた特約が置かれている場合の効力。公的資料での説明を確認できませんでした。
    • 更新料や承諾料の支払を拒んだ場合に契約解除されるかどうか。公的資料での説明を確認できませんでした。
    • 借地借家法 附則6条(借地契約の更新に関する経過措置)の本文。e-Gov法令検索が配信する法令XMLが末尾で切断されており、見出しは確認できましたが本文を取得できませんでした。平成4年8月1日より前の借地権の更新について、旧借地法のどの規定がなお適用されるかは、この条を直接確認する必要があります。
    • 建替承諾料・増改築承諾料を払った場合の譲渡所得計算上の取扱い。タックスアンサーNo.3252(取得費)にもNo.3255(譲渡費用)にも項目がありません。
    • 地主が受け取った更新料が譲渡所得となる場合があるか。No.3111は借地権設定時の「権利金」を扱っており、「更新料」の語は登場しません。
    • 法テラスの資産要件における借地権・建物の評価方法。確認できませんでした。
    • 登記事項証明書を所有者以外の者が請求できるか。参照した法務局のページに明記がありませんでした。

    まとめ

    1. 借地借家法に「更新料」「承諾料」「名義書換料」「権利金」「相続」の語は一つも出てきません。出てくるのは「財産上の給付」だけで、それは裁判所の権限を定めた言葉です。
    2. 民法612条1項が求めているのは「承諾」であって「承諾料」ではありません。承諾の対価について、この条は何も定めていません。
    3. 19条1項の「財産上の給付」の主語は裁判所です。額も率も条文に書かれておらず、裁判所の公式案内にも相場の記載はありません。
    4. 相続で名義書換料を請求されても、相続人が地主に金銭を支払うべき旨を定めた条文はありません。法律が求めているのは建物の相続登記のほうです(令和6年4月1日から義務化)。
    5. 建替承諾料は、まず契約書に「増改築を制限する定め」があるかを確認してください。借地借家法17条2項は制限特約がある場合の救済手続です。
    6. 裁判所の許可を封じる特約は、21条により無効となりうる構造です。ただし20条は対象外。
    7. 地代の増額を通告されても、「相当と認める額」を払えば足ります(11条2項)。ただし裁判で増額が正当とされたときは、不足額に年1割の利息が付きます。支払を全部止めるのは想定された行動ではありません。
    8. 地代の増減は調停前置です(民事調停法24条の2)。更新料・承諾料の争いも「利用関係の紛争」として宅地建物調停に乗せる余地があります。
    9. 払った名義書換料は譲渡費用になります(No.3255⑥)。領収書を捨てないでください。
    10. 国税庁が税務上の取扱いを定めていることは、支払義務があることを意味しません。課税の話と、払う義務の話は別です。

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  • 地主が売却を承諾しない|借地非訟という手続の中身と費用

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    借地に建つ実家を相続した。買い手も見つかった。ところが地主が「売るのは認めない」と言う。ここで多くの人が、話が終わったと思ってしまいます。

    終わっていません。地主が承諾しなくても、裁判所が代わりに許可を出す制度があります。借地借家法19条1項です。しかも、これに反する特約は無効だと法律が明記しています(同21条)。契約書に「裁判所に申し立てない」と書いてあっても、その部分は効きません。

    この記事は、その手続を条文と裁判所の公式資料だけで組み立てます。いくら払えば承諾がもらえるかという「相場」は書きません。裁判所・法務省・国土交通省の公式資料を当たりましたが、承諾料の相場も算定方法も、どこにも書かれていなかったからです。よく見る「借地権価格の10%」という数字の出どころは、公的資料には見つけられませんでした。

    結論だけ先に

    • 地主が承諾しなくても、裁判所が「承諾に代わる許可」を出せます(借地借家法19条1項)。これに反する借地権者に不利な特約は無効です(同21条)。
    • 申立先は、土地の所在地を管轄する地方裁判所(同41条)。代理人になれるのは弁護士だけです(同44条1項)。東京地裁の案内では、多くの事件が概ね1年以内に終わっています。
    • ★許可が出ても、効力が生じてから6か月以内に建物を譲渡しないと、許可は失効します(同59条)。買主を決めてから申し立てる順番になります。
    • 地主には「介入権」があります(同19条3項)。「他人に売るくらいなら自分が買う」と申し立てられる制度で、この裁判が出た後は、双方の合意がないと取下げもできません(同5項)。

    条文は2026年8月24日にe-Gov法令検索で、手続は裁判所(courts.go.jp)と法務省の公式ページで確認しました。費用と運用は東京地方裁判所民事第22部の案内によるもので、裁判所によって異なる場合があります。実際の申立ては弁護士にご相談ください。

    1. なぜ地主の承諾が要るのか

    民法第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
    第1項 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
    第2項 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

    売るのは建物。でも土地の賃借権が一緒に動きます

    借地上の実家を売るとき、売買の対象は建物です。ですが建物を買った人は、その土地を使い続けなければ意味がありません。つまり建物の売買には、土地の賃借権の譲渡が必ずついてきます。だから612条1項の承諾が要ります。

    黙って売るという選択肢はありません

    612条2項は、無断で譲渡すると賃貸人は契約を解除できると定めています。解除されれば、買主は土地を使えなくなり、建物を撤去することにもなりかねません。

    「解除が認められないこともある」という議論は実務上ありますが、この記事はそこに踏み込みません。裁判例を一次情報で特定できなかったからです。後述の「確認できなかったこと」に書いています。無断譲渡を勧める記述は、この記事にはありません。

    2. ★裁判所が、地主の代わりに許可を出す

    借地借家法第19条第1項
    借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。

    判断の枠組みは「地主に不利となるおそれがないか」

    同第2項
    裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。

    「相続したが自分は住まない」「維持できない」という事情は、2項の「譲渡を必要とする事情」にあたります。感情の問題ではなく、条文が考慮すべきと定めている要素です。

    ★契約書の不利な特約は無効になります

    借地借家法第21条(強行規定)
    第十七条から第十九条までの規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。

    ただし20条は対象外です

    21条が守っているのは17条・18条・19条で、競売・公売の場合の20条は含まれていません。競売で借地上の建物を落札した場合の話は、この保護の外にあります。

    3. ★見落とされる59条──許可には6か月の期限があります

    借地借家法第59条(譲渡又は転貸の許可の裁判の失効)
    第十九条第一項……の規定による裁判は、その効力を生じた後六月以内に借地権者が建物の譲渡をしないときは、その効力を失う。ただし、この期間は、その裁判において伸長し、又は短縮することができる。

    これが、この記事でいちばん実務に効く条文です。許可を取ってから買主を探すのでは、間に合わない可能性があります。

    しかも「効力を生じる」までにもう一段あります

    同第55条第2項
    前項の裁判は、確定しなければその効力を生じない。

    決定が出ても、即時抗告の期間(決定書の送達を受けた日から2週間)が過ぎて確定して、はじめて効力が生じます。そこから6か月です。

    順 やること 根拠・目安
    1 まず地主に承諾を求める 民法612条1項。承諾が得られれば裁判所は不要
    2 買主を決めておく 19条1項は「第三者に譲渡しようとする場合」なので、譲渡の相手が特定している必要があります
    3 弁護士に依頼して申立て 借地借家法44条1項(代理人は弁護士に限る)
    4 審理(東京地裁で概ね1年以内) 東京地裁民事第22部の案内
    5 決定 → 2週間で確定 55条2項・即時抗告2週間
    6 確定から6か月以内に建物を譲渡 59条。過ぎると許可が消えます
    許可は、6か月で消えます 1 地主に承諾を求める 民法612条1項。得られれば不要 2 買主を決めておく 譲渡の相手が特定している必要 3 弁護士に依頼して申立て 44条1項。代理人は弁護士だけ 4 審理 東京地裁で概ね1年以内 5 決定 → 2週間で確定 即時抗告の期間が2週間 6 6か月以内に譲渡 59条。過ぎると許可が消えます

    4. ★地主の「介入権」──自分が買うと言われたら

    借地借家法第19条第3項
    第一項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。

    「他人に売られるくらいなら、自分が買い取る」と地主が言える制度です。東京地裁は、これを「借地権設定者の建物及び土地賃借権譲受申立事件」として6類型の1つに挙げています。

    介入権が出た後は、取り下げられなくなります

    同第5項
    第三項の裁判があった後は、第一項又は第三項の申立ては、当事者の合意がある場合でなければ取り下げることができない。

    東京地裁も「介入権行使の申立てを認める裁判があった場合は、申立人及び相手方は、いずれも、自分の申立てを取り下げるためには、他方の当事者と書面で取下げの合意をすることが必要になります」と案内しています。

    つまり「地主が買うと言い出したから、やっぱりやめます」が効かなくなります。申し立てる前に、地主が介入してきたらどうするかを決めておいてください。

    対価は裁判所が定めます

    介入権の裁判では、裁判所が「相当の対価」を定めます。東京地裁は、鑑定委員会が意見を述べる対象の例として「介入権を行使した者に支払を命じる建物及び土地賃借権の適正な対価」を挙げています。売り先が変わるだけで、金額が宙に浮くわけではありません。

    介入権の裁判が出ると、やめられません 介入権を認める裁判が、もう出ましたか はい 取り下げられません 双方の合意が必要 いいえ まだ取り下げ可能 申し立てる前に決める

    なお、介入権の申立期限は条文上「裁判所が定める期間内」です。法令で一律に決まった日数はありません(この点は後述の「確認できなかったこと」もご覧ください)。

    5. どこに、いくらで申し立てるのか

    借地借家法第41条(管轄裁判所)(抜粋)
    ……に規定する事件は、借地権の目的である土地の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。ただし、当事者の合意があるときは、その所在地を管轄する簡易裁判所が管轄することを妨げない。

    実家の所在地の地方裁判所です。あなたが住んでいる場所ではありません。東京23区と島しょ部は東京地裁民事第22部、多摩地区は立川支部が担当します。

    代理人は弁護士だけ

    同第44条第1項
    法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ手続代理人となることができない。ただし、簡易裁判所においては、その許可を得て、弁護士でない者を手続代理人とすることができる。

    申立手数料

    訴額等 借地非訟事件の申立て (参考)通常の訴えの提起
    100万円 5,000円 12,500円
    500万円 15,000円 32,500円
    1,000万円 25,000円 52,500円
    3,000万円 55,000円 112,500円
    5,000万円 85,000円 172,500円
    1億円 160,000円 322,500円

    借地非訟の手数料は、通常の訴えのおおむね半分の水準です。そして、ここでいう「訴額」は売買代金ではありません。

    東京地裁の案内によれば、申立手数料は「借地権が設定された土地の価格を基礎として算定」し、土地の価格は「固定資産評価額に2分の1を乗じて得られた金額を基準」とします(平成6年4月1日から)。譲渡許可(19条1項)は「その他の申立事件」にあたるので、土地の固定資産評価額÷2が訴額になります。

    費目 金額
    申立手数料 上の早見表(訴額=土地の固定資産評価額÷2)
    予納郵便切手(相手方1名) 6,000円分(500円×8、110円×10、50円×10、20円×10、10円×20)
    相手方が1名増えるごと 500円×2枚(1,000円)を追加
    鑑定委員の費用 国が負担。当事者の負担はありません
    弁護士費用 別途(この記事では扱いません)

    必要書類

    • 申立書(正本1通、副本は相手方の人数分)
    • 土地の固定資産評価証明書(原本)/建物の固定資産評価証明書(原本)──手数料算定の基礎になります
    • 現場の住宅地図
    • 証拠資料(賃貸借契約書など)
    • 資格証明書(当事者が法人の場合)、委任状

    東京地裁は申立書と答弁書の書式をPDFとRTFで公開しています。譲渡許可に対応するのは「土地賃借権譲渡・土地転貸許可申立書」です。

    手数料は、通常の訴えの約半分です 訴額 100万円 5,000円 訴額 500万円 15,000円 訴額 1,000万円 25,000円 訴額 3,000万円 55,000円 訴額 5,000万円 85,000円 訴額 1億円 160,000円 訴額は土地の固定資産評価額÷2。売買代金ではない

    6. 手続の中身

    段階 内容 根拠
    申立て 申立書を管轄裁判所へ 41条
    第1回審問期日 申立てから概ね1か月〜1か月半後に指定 東京地裁の案内
    審問期日 裁判所は審問期日を開き、当事者の陳述を聴かなければならない。当事者は他の当事者の審問に立ち会えます。非公開です 51条
    鑑定委員会 3人以上で組織。東京地裁は「弁護士、不動産鑑定士及び有識者(建築士を含む)」から指定。現地調査は審問期日から約1か月半程度後 47条、19条6項
    意見書提出後 1か月〜1か月半程度で審問期日 東京地裁の案内
    審理の終結 審問期日で宣言 54条
    裁判 決定の形式。理由を付さなければならない 55条・56条
    不服申立て 決定書の送達を受けた日から2週間以内に即時抗告 東京地裁の案内
    全体 「多くの事件は、特段の事情がなければ、概ね1年以内には終わっています」 東京地裁「第1 借地非訟とは」

    記録は当事者以外も見られます

    借地借家法46条1項により、当事者と、利害関係を疎明した第三者は、事件記録の閲覧・謄写を請求できます。買主候補が手続の進み具合を確認したい、という場面で使えます。

    給付を命じる裁判には執行力があります

    同第58条(抜粋)
    ……給付を命ずるものは、強制執行に関しては、裁判上の和解と同一の効力を有する。

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    7. 19条以外の5つの類型

    東京地裁は借地非訟事件を6類型に整理しています。相続した実家で関係しうるものを並べます。

    類型 根拠 使う場面
    借地条件変更 17条1項 「木造に限る」といった条件を変えたいとき
    増改築許可 17条2項 借地条件に「増改築を制限する旨の定めがある場合」に限ります。制限特約が無ければ、そもそもこの手続の場面ではありません
    更新後の建物再築許可 18条1項 平成4年8月1日以降に設定された借地権のみ
    土地賃借権譲渡・転貸許可 19条1項 この記事の主題
    競売・公売に伴う賃借権譲受許可 20条1項 代金支払後2か月以内。期限が短い
    介入権 19条3項・20条2項 地主側が申し立てる

    増改築の「許可」が要るとは限りません

    17条2項は「借地条件に建物の増改築を制限する旨の定めがある場合において」という要件から始まります。契約書にその制限が書かれていなければ、17条2項の出番ではありません。

    まず契約書を読んで、増改築の制限特約があるかどうかを確かめてください。「地主に断らないと建て替えられない」と思い込んでいるだけ、というケースがありえます。

    なお、これらの手続の対象は「建物の所有を目的とする土地賃貸借契約又は地上権設定契約」に限られます。東京地裁が明示しており、使用貸借(無償で借りている場合)は対象外です。親戚の土地に無償で建てている実家は、この制度の外にあります。

    借地非訟には、6つの入口があります 借地条件変更 17条1項。「木造に限る」など 条件を変える 増改築許可 17条2項。制限特約があるときだけ 契約書を読む 更新後の建物再築許可 18条1項。平成4年8月1日以降 新法の借地のみ 賃借権の譲渡・転貸許可 19条1項。この記事の主題です 売るときはここ 競売・公売の譲受許可 20条1項。代金支払後2か月以内 期限が短い 介入権 19条3項・20条2項 地主側が申し立てる 使用貸借(無償)は、この制度の対象外です

    8. ★承諾料の「相場」を、この記事は書きません

    条文が定めているのは、ここまでです。

    条文 定めていること
    19条1項後段 裁判所は許可を「財産上の給付に係らしめることができる」
    19条2項 残存期間・従前の経過・譲渡を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない
    19条6項 鑑定委員会の意見を聴かなければならない
    17条3項 借地条件変更でも「財産上の給付を命じ」ることができる
    21条 17〜19条に反し借地権者に不利な特約は無効

    当たった資料と、その結果

    承諾料の算定方法・金額水準を探して、次を確認しました。いずれにも記載はありませんでした。

    東京地裁民事第22部の案内(第1〜第4の全ページ)/法務省「借地非訟手続の概要」PDF/国土交通省「不動産鑑定評価基準」(「承諾料」「名義書換料」「譲渡承諾料」の語自体が登場しません)/大阪地裁の借地非訟のページ。

    よく見る「借地権価格の10%」という数字は、これらの公的資料のどこにも存在しませんでした。民間の実務慣行として流通している数字で、公的な根拠を示せません。だから書きません。

    条文どおりに言えるのは、「裁判所が、事案ごとに、鑑定委員会の意見を聴いたうえで『財産上の給付』として定める」ということだけです。

    だからこそ、契約書の特約に注意してください

    「譲渡承諾料は借地権価格の◯%とする」という特約が契約書にあっても、21条により、19条に反して借地権者に不利な限りは無効になりえます。地主が契約書を根拠に金額を主張してきたとき、その特約が有効かどうかは、それ自体が争点になります。

    9. 動く順番

    順 やること ここで確かめること
    1 借地契約書を探す 増改築の制限特約はあるか/譲渡に関する特約は/期間は/いつ設定された借地権か(平成4年8月1日の前後)
    2 建物の登記事項証明書を取る 建物の登記があれば借地権を第三者に対抗できます(借地借家法10条1項)。法務局で600円
    3 土地・建物の固定資産評価証明書を取る 申立手数料の算定に必要。市区町村(東京23区は都税事務所)
    4 まず地主に承諾を求める 承諾が得られれば裁判所は不要。やりとりは書面で残す
    5 買主を決める 19条1項は「譲渡しようとする場合」。59条の6か月があるので、この順番になります
    6 弁護士に相談する 代理人は弁護士のみ(44条1項)
    7 申立て 土地所在地の地方裁判所(41条)
    8 地主が介入してきた場合の方針を決めておく 介入権の裁判後は、双方の合意がないと取り下げられません(19条5項)

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    対象エリア外、あるいは「買ってくれる人が見つからない」ときに

    19条1項の申立ては、買主が決まっていることが前提になります。許可の効力が生じてから6か月で失効するからです(59条)。ラクウル(株式会社ネクサスプロパティマネジメント/国土交通大臣(1)第10311号)は、借地権・底地・再建築不可・共有持分といった物件を日本全国で買い取っている会社です。自社で買い取るので、買主が先に確定します。仲介手数料はかかりません。

    ①買取価格は、仲介で売れる価格より低くなります。②買取業者が買う場合でも、賃借権の譲渡には地主の承諾(民法612条1項)か、裁判所の許可(借地借家法19条1項)が必要です。買取だから承諾が要らない、ということはありません。③申し込むと担当者から連絡が入り、物件の状況を聞かれます。売却を考えていない相談は対象外です。④当サイトはこの会社の査定額や対応を確認していません。⑤このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって買取価格が下がることはありません。

    借地権つきのまま、買取価格を出してもらう(無料・全国)

    金額が出てから、申し立てるかどうかを決めてください。順番を逆にすると、6か月の期限に追われます。

    よくある質問

    地主が「絶対に認めない」と言っています。もう売れませんか

    売れる可能性があります。借地借家法19条1項により、その第三者が賃借権を取得しても地主に不利となるおそれがないのに承諾しないときは、裁判所が承諾に代わる許可を与えることができます。裁判所は「賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡を必要とする事情その他一切の事情」を考慮します(同2項)。「相続したが自分は住まない」という事情は、この2項が考慮すると定めている要素にあたります。

    契約書に「裁判所に申し立てない」と書いてあります

    その部分は無効になりえます。借地借家法21条は「第十七条から第十九条までの規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする」と定めています。19条の申立権を奪う特約は、これに触れます。ただし20条(競売・公売の場合)は21条の対象に入っていません。

    いくらかかりますか

    申立手数料は、土地の固定資産評価額÷2を訴額として算定します(東京地裁の案内)。訴額1,000万円なら25,000円、3,000万円なら55,000円です。通常の訴え提起のおおむね半分の水準です。予納郵便切手は相手方1名で6,000円分。鑑定委員の費用は国が負担するので、当事者の負担はありません。これとは別に弁護士費用がかかります。

    どのくらい時間がかかりますか

    東京地裁は「多くの事件は、特段の事情がなければ、概ね1年以内には終わっています」と案内しています。第1回審問期日は申立てから概ね1か月〜1か月半後、鑑定委員会の現地調査はその約1か月半程度後、意見書提出後1か月〜1か月半で審問期日、という流れです。決定に不服があれば2週間以内に即時抗告できるので、そこで延びることもあります。

    許可が出たら、いつまでに売ればいいですか

    効力が生じてから6か月以内です(借地借家法59条)。しかも決定は「確定しなければその効力を生じない」ので(55条2項)、即時抗告の期間が過ぎて確定してから6か月を数えます。期間は裁判の中で伸長・短縮できるとされていますが、原則は6か月です。だから買主を決めてから申し立てる順番になります。

    地主が「自分が買う」と言い出しました

    介入権です(借地借家法19条3項)。裁判所が定める期間内に地主が自ら譲り受ける旨を申し立てると、裁判所は「相当の対価」を定めて、それを命ずることができます。注意点は、この裁判が出た後は、双方の合意がなければ申立てを取り下げられなくなることです(同5項)。「やっぱりやめます」が効かなくなるので、申し立てる前に方針を決めておいてください。

    自分で申し立てられますか

    代理人を立てるなら弁護士でなければなりません(借地借家法44条1項)。ただし簡易裁判所では、その許可を得て弁護士でない者を代理人にできます。本人が自分で手続をすること自体を禁じる条文は見当たりませんが、鑑定委員会の意見に対する反論や、財産上の給付の額をめぐるやりとりが伴う手続です。東京地裁の案内も、代理人は弁護士に限られると明記しています。

    どこの裁判所に申し立てますか

    実家(借地)の所在地を管轄する地方裁判所です(借地借家法41条)。あなたが住んでいる場所の裁判所ではありません。当事者の合意があれば、同じ所在地の簡易裁判所でも構いません。東京23区と島しょ部は東京地裁民事第22部、多摩地区は立川支部です。

    建て替えたいだけなのですが、これも申立てが要りますか

    契約書に増改築の制限特約があるかどうかで変わります。借地借家法17条2項は「借地条件に建物の増改築を制限する旨の定めがある場合において」という要件から始まります。制限特約が無いなら、そもそもこの手続の場面ではありません。まず契約書を確認してください。なお、更新後の建物再築の許可(18条1項)は平成4年8月1日以降に設定された借地権にしか使えません。

    承諾料はいくら払うことになりますか

    この記事は金額を書きません。裁判所・法務省・国土交通省の公式資料を当たりましたが、承諾料の算定方法も相場も、どこにも記載がありませんでした。国土交通省の「不動産鑑定評価基準」には「承諾料」「譲渡承諾料」「名義書換料」という語自体が出てきません。条文が定めているのは、裁判所が事案ごとに、鑑定委員会の意見を聴いたうえで「財産上の給付」として定める、というところまでです(19条1項後段・6項)。

    年間どれくらい申し立てられていますか

    件数は書けませんでした。司法統計年報(民事・行政編)の第4表に「借地非訟」という独立した事件区分が存在することまでは目次で確認できましたが、数値そのものを取得できませんでした(検索システムの表示方式のため)。裁判所データブック2026にも借地非訟の内訳はありません。「よくある手続なのか、めったに使われないのか」を数字で示せないので、書いていません。

    この記事で確認できなかったこと

    • 譲渡承諾料・建替承諾料の相場と算定方法。東京地裁民事第22部の全ページ、法務省「借地非訟手続の概要」PDF、国土交通省「不動産鑑定評価基準」、大阪地裁の案内のいずれにも記載がありませんでした。「借地権価格の10%」という数字は公的資料に存在しません。
    • 無断譲渡でも解除が認められない場合があるという判例法理。裁判所の裁判例検索で該当裁判例の本文にたどり着けませんでした(検索結果の詳細ページが表示できず)。一次情報で特定できていないため、本文では扱っていません。
    • 借地非訟事件の年間件数の実数。司法統計年報の第4表に区分が存在することは確認しましたが、数値は取得できませんでした。
    • 平均審理期間の統計値。東京地裁の「概ね1年以内」という定性的な記述以外に、統計にもとづく公表値は見つかりませんでした。
    • 民事訴訟費用等に関する法律「別表第一」のどの項が借地非訟の手数料の根拠か。裁判所の手数料ページは「民事訴訟費用等に関する法律で決められており」とするのみで、項番号への言及がありませんでした。本文の金額は、裁判所が公開している手数料早見表PDFの数値です。
    • 介入権の申立期間を定めた法令。条文は「裁判所が定める期間内」とするのみで、日数を一律に定めた規定は発見できませんでした。なお、この点について当初「政令で定める期間」と理解していましたが、条文にそのような委任はありませんでした。
    • 東京地裁の手数料算定式に出てくる係数の定義。土地の一部についての算定式に係数が使われていますが、その定義文をページ本文から確認できませんでした。
    • 借地非訟事件の手続費用の負担についての規定。借地借家法41条〜61条を通して確認しましたが、独自の負担規定は見当たりませんでした。非訟事件手続法の一般規定によると読めますが、それを明記した資料は確認できていません。
    • 費用と運用の全国的な一般性。本文の費用・期間・必要書類は東京地方裁判所の案内によるものです。大阪地裁のページには管轄・流れ・費用・期間の記載が確認できませんでした。他の裁判所では異なる場合があります。

    まとめ

    1. 借地上の建物を売るには、土地の賃借権の譲渡について地主の承諾が要ります(民法612条1項)。無断でやると解除されえます(同2項)。
    2. 承諾しないときは、裁判所が承諾に代わる許可を出せます(借地借家法19条1項)。判断の枠組みは「地主に不利となるおそれがないか」。
    3. これに反する借地権者に不利な特約は無効です(同21条)。ただし20条は対象外。
    4. 許可は、効力が生じてから6か月で失効します(同59条)。しかも決定は確定してはじめて効力が生じます(同55条2項)。買主を決めてから申し立てる順番です。
    5. 地主には介入権があります(同19条3項)。その裁判が出た後は、双方の合意がないと取り下げられません(同5項)。
    6. 申立先は土地所在地の地方裁判所(同41条)。代理人は弁護士のみ(同44条1項)。
    7. 手数料は土地の固定資産評価額÷2を訴額として算定。予納郵券は相手方1名で6,000円分。鑑定委員の費用は国負担。
    8. 東京地裁では「概ね1年以内」に終わる事件が多い。審問期日は非公開です。
    9. 増改築の許可(17条2項)は、契約書に増改築の制限特約がある場合の手続です。特約が無ければ出番ではありません。
    10. 承諾料の相場は、公的資料に存在しませんでした。条文が言うのは「裁判所が鑑定委員会の意見を聴いて財産上の給付として定める」ところまでです。

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  • 実家を売って兄弟で分ける(換価分割)|登記の名義を決める前に確認すること

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    実家は一つ、兄弟は複数。誰も住まないなら、売って現金で分けるのがいちばん公平です。この選び方を「換価分割」と呼びます。

    ところが、ここに落とし穴があります。売るには相続登記が必要ですが、共有名義で登記すると手続がややこしいので、実務では「便宜上、代表者1人の名義にして売る」ことがよく行われます。このとき、代金を他の兄弟に渡す行為が贈与とみなされないか。そして、空き家の3,000万円特別控除が何人分使えるのか。

    この記事は、条文で確定できることと、一次情報では確定できなかったことを、はっきり分けて書きます。とくに後者は、断定している解説をよく見かけますが、この記事は根拠を確認できなかったので断定しません。そのかわり、どこに聞けばいいかと、聞き方を具体的に置きます。

    結論だけ先に

    • 遺産分割前に実家を売るには、相続人全員の同意が必要です。共有物の売却は民法251条1項の「変更」にあたり、持分の過半数では売れません。
    • 相続人申告登記をしても、実家は売れません。法務省は「権利関係を公示するものではないため、相続した不動産を売却したり抵当権を設定したりする場合には、別途、相続登記の申請をする必要がある」と明記しています。
    • 空き家の3,000万円特別控除は、令和6年1月1日以後の譲渡で、取得した相続人が3人以上なら1人2,000万円になります(措置法35条4項)。そして1億円の判定は、相続人全員の譲渡対価を合算します(同6項)。適用を受ける人には他の相続人への通知義務もあります(同8項)。
    • 相続開始から10年で、特別受益と寄与分は主張できなくなります(民法904条の3・令和5年4月1日施行)。「親の面倒を見た」「兄だけ学費を出してもらった」は、10年で切れます。

    条文は2026年8月24日にe-Gov法令検索で、運用は国税庁・法務省・裁判所の公式ページで確認しました。税務の判断は個別事情で変わります。実行前に必ず、所轄の税務署または税理士にご確認ください。

    1. 分け方は4つ。それぞれ税金の出方が違います

    分け方 やること お金の動き
    現物分割 実家は長男、預金は次男、というように財産ごとに分ける —
    代償分割 1人が実家を取得し、他の相続人に代償金を払う 相続税の課税価格を、払った側は減らし、もらった側は増やす
    換価分割 実家を売って、代金を分ける 各人に譲渡所得が発生
    共有分割 持分を決めて共有のまま持つ —(先送り)

    共有のままにしておくと、どうなるか

    令和3年の改正(令和5年4月1日施行)で、共有のルールに条文が増えました。そのうち1つは、兄弟の1人が実家に住み続けている場合に直接効いてきます。

    民法第249条第2項(令和3年改正で新設)
    共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。

    「弟が実家に住み続けている」という状態について、法律は「持分を超える分の対価を払う義務がある」と定めています。これは、共有のまま放置することの具体的な火種です。

    行為 必要な同意 根拠
    売却 全員の同意(「変更」にあたる) 民法251条1項
    3年以内の建物賃貸 持分の過半数 民法252条1項・4項
    5年以内の土地賃貸 持分の過半数 同上
    保存行為(現状維持の修繕など) 単独で可能 民法252条5項
    共有のまま売るには、全員の同意です 売却 民法251条1項の「変更」 全員の同意 3年以内の建物賃貸 民法252条1項・4項 過半数 5年以内の土地賃貸 同じく252条1項・4項 過半数 修繕などの保存行為 民法252条5項 単独でできる 淡い黄の1行だけ、1人でも反対すれば進みません

    2. 換価分割──便宜上1人の名義にして売る場合

    共有名義で相続登記して売ることもできますが、実務では代表者1人の名義にすることがよくあります。買主との契約、決済、登記の手続が単純になるからです。

    代金を分けたら贈与になるのか

    この論点について、一次情報を読み取れませんでした

    国税庁の質疑応答事例に「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」という項目が存在することは確認しました。ですが、当該ページは文字化けにより本文(照会要旨・回答要旨・関係法令通達)を読み取ることができませんでした。

    したがって、この記事は「こうすれば贈与にならない」という条件を書きません。推測で書くと、読んだ人が実際にその通りにして、後から違うと言われる可能性があるからです。

    条文から言えることは、ここまでです。

    民法第909条(遺産の分割の効力)
    遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。

    遺産分割協議で「換価して代金を各人の相続分に応じて取得する」と定めれば、その効果は相続開始時に遡ります。つまり売却代金は最初から各相続人に帰属していたことになり、登記名義人から他の相続人への「贈与」ではない、という構成になります。この理屈自体は条文から導けます。

    ただし、「遺産分割協議書に換価分割である旨を明記せよ」という実務指針を明示した公式文献は、国税庁・法務省・法務局・裁判所のいずれからも確認できませんでした。広く言われていることですが、この記事は根拠を示せないので断定しません。実際に協議書を作るときは、税理士か司法書士に確認してください。

    譲渡所得は誰が申告するのか

    民法第898条
    第1項 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
    第2項 相続財産について共有に関する規定を適用するときは、相続分をもって各相続人の共有持分とする。

    未分割のまま売れば、譲渡したのは各共有者であり、譲渡所得は各人の持分に応じて各人に帰属する──という構造は、898条から導けます。ただし「各相続人が持分に応じて譲渡所得を申告する」と明記した国税庁の文言そのものは、該当する質疑応答事例が読み取れなかったため、この記事では引用していません。

    3. ★空き家の3,000万円特別控除を、何人で使えるか

    ここがこの記事でいちばん重要で、いちばん危ないところです。

    まず、条文で確定していること

    論点 条文 内容
    適用主体 措置法35条3項 「被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人」が対象譲渡をした場合
    → 相続人単位で適用される建て付け
    複数人が同時に使えるか 措置法35条6項・8項 「居住用家屋取得相続人」が複数存在する前提で規定され、8項で相互の通知義務を定めている
    → 複数の相続人がそれぞれ適用を受けうることが前提
    控除額 措置法35条4項 「取得をした相続人の数が三人以上であるとき」は3,000万円→2,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡)
    1億円判定 措置法35条6項 居住用家屋取得相続人全員の譲渡対価を合算して判定
    通知義務 措置法35条8項 適用を受けようとする者は、他の居住用家屋取得相続人に対し、対象譲渡をした旨・日その他参考となるべき事項を通知しなければならない
    措置法39条との併用 措置法35条3項の括弧書き 不可(対象譲渡から「第三十九条の規定の適用を受けるもの」を除く)
    同一相続で2回目 同上 不可(「既に……この項の規定の適用を受けている場合を除き」)

    ★確定できなかったこと──ここが記事の核心です

    「換価分割で便宜上1人名義にしてから売ると、この特例は何人分使えるのか」。この問いに、一次情報で答えを出せませんでした。

    条文上の手がかりは次のとおりです。措置法35条3項の適用主体は「取得をした相続人」であり、4項の2,000万円判定も「取得をした相続人の数」であって、「譲渡をした相続人の数」ではありません。一方、民法909条により遺産分割の効力は相続開始時にさかのぼるので、「全員が持分を取得したうえで便宜上1人名義にした」という趣旨なら、実質的な「取得をした相続人」は全員だという整理もありえます。逆に、協議書で1人が単独取得すると定めたのなら、取得した相続人は1人です。

    この「便宜上の単独名義登記」が35条3項・4項の判定にどう影響するかを直接述べた国税庁の一次情報は、確認できませんでした。したがってこの記事は答えを書きません。言えるのは、相続登記の名義の付け方によって特別控除の枠が変わりうる、極めてリスクの高い論点だということだけです。

    登記をする前に、税務署か税理士に確認してください。登記してしまってからでは、やり直せません。

    確定しているのは4つ。1つは確認できず 複数の相続人が使えるか 35条6項・8項が前提にしている 使えます 取得した相続人が3人以上 35条4項。令和6年1月1日以後 1人2,000万円 譲渡対価1億円の判定 35条6項。全員分を合算します 全員で合算 取得費加算(39条)との併用 35条3項の括弧書きで除いている 不可 便宜上1人名義にして売る 一次情報で答えが出せませんでした 確認できず 淡い黄の1行は、登記の前に税務署か税理士へ

    そのほか、空き家特例の要件

    項目 内容
    対象期間 平成28年4月1日〜令和9年12月31日の譲渡
    譲渡期限 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
    家屋要件 昭和56年5月31日以前に建築/区分所有建物でない/相続開始の直前に被相続人以外に居住者がいなかった
    譲渡対価 1億円以下(相続人全員の適用前譲渡・適用後譲渡を合算)

    マイホームの3,000万円控除(35条1項)とは別物です

    比較項目 マイホーム(35条1項) 空き家(35条3項)
    誰の居住用か 譲渡する本人が住んでいた家 被相続人が住んでいた家
    築年要件 なし 昭和56年5月31日以前建築
    同居人 制限なし 相続開始直前に被相続人以外の居住者がいないこと
    譲渡対価上限 なし 1億円
    3人以上で2,000万円 なし あり
    取得費加算(39条)との併用 条文上の除外規定は見当たりません 不可

    4. 代償分割──代償金を何で払うかで変わります

    1人が実家を取得して、他の相続人に代償金を払う方法です。相続税の課税価格の計算は、国税庁タックスアンサーNo.4173が説明しています。

    立場 相続税の課税価格
    代償財産を交付した人 取得した現物の財産の価額 − 交付した代償財産の価額
    代償財産を取得した人 取得した現物の財産の価額 + 交付を受けた代償財産の価額

    代償金の額を「時価」で決めると、計算が変わります

    タックスアンサーNo.4173の具体例を置きます。相続人はA・Bの2人、遺産は土地のみ(相続税評価額4,000万円、代償分割時の時価5,000万円)。AがBに現金2,000万円を代償として交付。

    代償金2,000万円の決め方 Aの課税価格 Bの課税価格
    相続税評価額を基に決めた 4,000万円 − 2,000万円 = 2,000万円 2,000万円
    時価5,000万円を基に決めた 4,000万円 − 1,600万円 = 2,400万円 2,000万円 ×(4,000万円 ÷ 5,000万円)= 1,600万円

    時価を基に決めた場合、代償財産の価額は「代償債務の額 × 対象財産の相続開始時の相続税評価額 ÷ 対象財産の代償分割時の時価」で計算します。同じ2,000万円を払っても、何を基準に決めたかで課税価格が動きます。協議書に「時価を基に決めた」と書くかどうかが、そのまま税額に効きます。

    代償金を「不動産」で払うと、譲渡所得税がかかります

    タックスアンサーNo.4173は、代償財産が交付者固有の不動産等である場合、交付者に譲渡所得が課税されるとしています(根拠法令として所得税基本通達33-1の5・38-7を掲げています)。

    現金で払えば譲渡所得は生じませんが、「自分がもともと持っていた別の土地を渡す」と、渡した側に譲渡所得税がかかります。代償金の原資が足りないときに、つい思いつく方法なので注意してください。

    なお、代償金の支払いが譲渡所得の計算上の必要経費(取得費・譲渡費用)になるかどうかについては、これを明示した一次情報を確認できませんでした。この記事では扱っていません。

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    数字が出たら、代償分割と換価分割を並べて比べてください。「1人が住み続けて代償金を払う」が成り立つのかどうかは、金額が分かって初めて判断できます。

    5. 相続登記をしないと、そもそも売れません

    不動産登記法第76条の2第1項
    所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

    令和6年4月1日施行。正当な理由がないのに怠ると10万円以下の過料の対象です(不動産登記法164条1項)。施行日前に開始した相続も対象で、法務省は「令和9年3月31日まで(不動産を相続で取得したことを知った日が令和6年4月以降の場合はその日から3年以内)」としています。

    ★相続人申告登記をしても、実家は売れません

    3年以内に相続登記が難しい場合、相続人申告登記(不動産登記法76条の3)という簡易な仕組みがあります。申出をすれば申請義務を履行したものとみなされます。

    ですが法務省は、こう明記しています。「不動産についての権利関係を公示するものではないため、相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、別途、相続登記の申請をする必要がある」「遺産分割に基づく相続登記の申請義務を履行することはできない」。

    「とりあえず申出だけしておこう」は、義務違反は避けられますが、換価分割のスタートラインには立てません。

    登録免許税は、相続なら1000分の4です

    登記の種類 税率
    所有権移転(相続) 1000分の4
    所有権移転(贈与・財産分与等) 1000分の20
    所有権移転(売買・土地) 1000分の15(平成31年4月1日〜令和8年3月31日)

    課税標準は固定資産課税台帳の「価格」です。課税明細書の「価格」または「評価額」欄であって、「固定資産税課税標準額」ではありません。1,000円未満は切り捨て、税額の100円未満も切り捨て、1,000円未満なら1,000円です。

    免税措置が2つあります(いずれも令和9年3月31日まで)。①相続人が相続登記を受ける前に死亡した場合(措置法84条の2の2第1項)、②土地の価額が100万円以下の場合(同2項)。どちらも申請書に条文を書く必要があります。自動では適用されません。

    6. ★相続開始から10年で、何が変わるのか

    民法第904条の3(令和5年4月1日施行)
    前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
     一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
     二 ……十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、……請求をしたとき。

    「前三条」は、903条(特別受益者の相続分)・904条(特別受益の評価)・904条の2(寄与分)です。つまり、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、特別受益も寄与分も原則として主張できません。法定相続分または指定相続分で分けることになります。

    「私が親の面倒を見た」「兄だけ家の頭金を出してもらった」という主張は、10年で切れます。先延ばしが不利に働く典型です。

    ただし、10年は「使えるようになる」スイッチでもあります

    場面 条文 10年で何が変わるか
    特別受益・寄与分 民法904条の3 主張できなくなる
    共有物分割訴訟 民法258条の2第2項 遺産共有持分についても地方裁判所の共有物分割訴訟が使えるようになる(相続人が2か月以内に異議を申し出れば不可)
    所在等不明共有者の持分取得 民法262条の2第3項 相続財産に属する持分は、10年を経過していないと裁判ができない
    所在等不明共有者の持分譲渡 民法262条の3第2項 同上

    「連絡の取れない兄弟がいるから、裁判所に持分を取ってもらおう」は、遺産共有のままでは10年経つまでできません。まずは家庭裁判所の遺産分割が筋です。

    相続開始から10年で、両方が動きます 10年で消える 特別受益と寄与分 主張できません 法定相続分で分ける 民法904条の3 10年で使える 共有物分割訴訟 所在等不明の持分 取得も譲渡もできる 258条の2ほか 10年経過前に家裁へ請求すれば、主張は残ります

    なお、東京地方裁判所の説明によれば、所在等不明共有者の持分取得の申立ては対象不動産の所在地を管轄する地方裁判所に対して行い、印紙1,000円、官報公告費用として予納金7,134円〜、郵便切手は基本6,000円分、加えて持分の時価相当額の供託が必要です(金額は同庁の運用)。

    7. 話がまとまらないとき──遺産分割調停

    項目 内容
    申立先 相手方の1人の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所
    収入印紙 被相続人1人につき1,200円分
    郵便切手 各裁判所で異なる(大阪家裁の例:当事者1人あたり約2,300円)
    必要書類 被相続人の出生から死亡までの全戸籍、相続人全員の戸籍、不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金の残高証明書など
    まとまらなければ 合意に至らない場合は自動的に審判手続へ移行

    審理は段階的に進みます。大阪家庭裁判所の説明によれば、①相続人の範囲の確定 → ②遺言書の有無・効力 → ③遺産の範囲の確定 → ④遺産の評価 → ⑤特別受益・寄与分の検討 → ⑥分割方法の決定、という順です。

    この⑤が、10年で使えなくなる部分です。収入印紙1,200円で始められる手続なので、「10年が近い」と思ったら、まず申立てだけでもしておく意味があります(904条の3第1項1号により、10年経過前に家庭裁判所へ請求していれば主張は残ります)。

    8. 進め方の順番

    順 やること 注意点
    1 相続人を確定する(戸籍を出生から死亡まで集める) 調停でも最初にやることです
    2 「売る」で全員の方針が一致するか確認する 売却は民法251条1項の「変更」=全員の同意が必要
    3 実家がいくらで売れそうかを先に出す 金額が分からないと、代償分割と換価分割の比較ができません
    4 空き家特例を使う見込みなら、登記の名義を決める前に税務署か税理士に相談する この記事の3章の論点。登記してからでは戻せません
    5 遺産分割協議書を作る(換価分割なら、その旨と分配割合を書く) 作り方は司法書士・税理士に
    6 相続登記をする(登録免許税は1000分の4) 相続人申告登記では売れません
    7 売却 —
    8 各人が譲渡所得を申告する 空き家特例を使う人は、他の相続人への通知義務があります(措置法35条8項)
    この順番で。4だけ後戻りできません 1 相続人を確定 戸籍を出生から死亡まで集める 2 売る方針で一致 売却は全員の同意が必要です 3 いくらで売れるか 金額がないと分け方を比べられない 4 名義を決める前に相談 税務署か税理士へ。登記の前に 5 協議書→登記→売却 相続人申告登記では売れません

    順番を守るべき理由は1つです

    4の「登記の名義を決める前に相談する」だけは、後戻りできません。売った後で「実は3人分の控除が使えたかもしれない」と分かっても、登記も譲渡も終わっています。

    相談は無料です。税務署の資産課税部門に「相続した空き家を換価分割で売る予定です。登記の名義の付け方で、措置法35条3項の適用に違いが出ますか」と聞いてください。

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    ①上の7県以外の実家は対象外です。②査定額は「売れる価格」ではありません。③相続登記が済んでいないと売れません。相続人申告登記では売却できないので、査定と並行して登記の準備を進めてください。④空き家の3,000万円特別控除を使う見込みなら、登記の名義を決める前に税務署か税理士に確認を。この記事の3章のとおり、登記してからでは戻せません。⑤このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって査定額が下がることはありません。

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    よくある質問

    遺産分割がまとまる前に、実家を売れますか

    相続人全員の同意があれば売れます。全員でなければ売れません。相続財産は共同相続人の共有で(民法898条1項)、共有物の売却は民法251条1項の「変更」にあたるため、持分の過半数では足りません。なお、預貯金については民法909条の2に「相続開始時の債権額の3分の1に相続分を乗じた額」を単独で引き出せる仕組みがありますが、不動産に同種の制度はありません。

    代表者1人の名義で登記して売り、代金を分けたら贈与税がかかりますか

    この記事は、条件を断定して書けません。国税庁の質疑応答事例に「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」という項目が存在することは確認しましたが、当該ページの本文を読み取れなかったためです。条文から言えるのは、民法909条により遺産分割の効力は相続開始時にさかのぼるので、協議で「換価して代金を各人の相続分に応じて取得する」と定めれば、代金は最初から各人に帰属していたという構成になりうる、というところまでです。実際の協議書の作り方は、税理士か司法書士に確認してください。

    空き家の3,000万円控除は、兄弟それぞれが使えますか

    条文の建て付けとしては、複数の相続人がそれぞれ適用を受けうる前提になっています。措置法35条6項・8項が「居住用家屋取得相続人」を複数存在する前提で規定し、8項が相互の通知義務を定めているからです。ただし、令和6年1月1日以後の譲渡で「取得をした相続人の数が3人以上」なら、控除額は1人2,000万円になります(同4項)。また1億円の判定は、相続人全員の譲渡対価を合算します(同6項)。

    1人名義にして売った場合も、人数分使えますか

    これは、この記事が答えを出せなかった論点です。措置法35条3項の適用主体は「取得をした相続人」で、4項の判定も「取得をした相続人の数」であって、「譲渡をした相続人の数」ではありません。便宜上の単独名義登記が、この「取得をした相続人」の判定にどう影響するかを直接述べた国税庁の一次情報を、確認できませんでした。登記の名義の付け方で控除枠が変わりうる、極めてリスクの高い論点です。登記をする前に、必ず税務署か税理士に確認してください。

    取得費加算と空き家特例、両方使えますか

    同一の譲渡については使えません。措置法35条3項の括弧書きが、対象譲渡から「第三十九条の規定の適用を受けるもの」を除いています。除外規定は35条3項の側にあり、39条の側にはありません。取得費加算は「相続税額があるもの」が使える制度なので、相続税を払っていない人には最初から関係がありません(相続税がかかるかどうかを先に確認してください)。

    代償金の額は、何を基準に決めればいいですか

    基準の取り方で、相続税の課税価格が変わります。国税庁タックスアンサーNo.4173の例では、相続税評価額4,000万円・時価5,000万円の土地についてAがBに2,000万円を交付した場合、相続税評価額を基に決めたならA2,000万円・B2,000万円、時価を基に決めたならA2,400万円・B1,600万円になります。時価を基に決めた場合は「代償債務の額 × 相続税評価額 ÷ 代償分割時の時価」で計算します。協議書にどう書くかが、そのまま効きます。

    代償金の代わりに、自分の土地を渡してもいいですか

    渡した側に譲渡所得税がかかります。タックスアンサーNo.4173は、代償財産が交付者固有の不動産等である場合、交付者に譲渡所得が課税されるとしています(所得税基本通達33-1の5・38-7)。現金なら譲渡所得は生じません。代償金の原資が足りないときに思いつきやすい方法ですが、税金が増えます。

    共有のまま持っていてはいけませんか

    いけないわけではありませんが、火種が条文になっています。民法249条2項は「共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う」と定めています。兄弟の1人が実家に住み続けている場合、他の兄弟は対価を請求できる立場です。また、売るには全員の同意が必要なので(民法251条1項)、1人が反対するだけで動けなくなります。詳しくは実家が兄弟の共有になっているをご覧ください。

    相続人申告登記をしました。これで売れますか

    売れません。法務省は「不動産についての権利関係を公示するものではないため、相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、別途、相続登記の申請をする必要がある」と明記しています。また「遺産分割に基づく相続登記の申請義務を履行することはできない」ともしています。3年の義務違反は避けられますが、換価分割のスタートラインには立てません。

    相続してから何年も経っています。もう遅いですか

    10年が一つの区切りです。民法904条の3により、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、特別受益(903条・904条)と寄与分(904条の2)が原則として主張できなくなります。ただし、10年を経過する前に家庭裁判所へ遺産分割を請求していれば、主張は残ります(同項1号)。遺産分割調停の申立ては、収入印紙1,200円から始められます。「10年が近い」と思ったら、まず申立てだけでもしておく意味があります。

    連絡の取れない兄弟がいます

    民法262条の2(持分の取得)・262条の3(持分の譲渡)という制度がありますが、注意点があります。どちらも、相続財産に属する持分については「相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は裁判をすることができない」と定められています(262条の2第3項、262条の3第2項)。つまり、遺産共有のままでは10年経つまで使えません。まずは家庭裁判所の遺産分割が筋です。詳しくは相続人が行方不明のときをご覧ください。

    この記事で確認できなかったこと

    • 「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」(国税庁 質疑応答事例)の本文。ページの存在は確認しましたが、文字化けにより照会要旨・回答要旨・関係法令通達を読み取れませんでした。そのため、代金分配が贈与にならないための条件を、この記事は書いていません。
    • 「未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告とその後分割が確定したことによる更正の請求、修正申告等」(同)の本文。同じ理由で読み取れませんでした。「各相続人が持分に応じて譲渡所得を申告する」と明記した国税庁の文言は引用していません。
    • 「遺産分割協議書に換価分割である旨を明記すべき」という実務指針の公式な根拠。国税庁・法務省・法務局・裁判所のいずれの公式資料からも、明示的に述べた記述を確認できませんでした。
    • 換価分割で便宜上1人名義にした場合、空き家の3,000万円特別控除が何人分使えるか。条文の手がかりは本文に書きましたが、これを直接述べた国税庁の一次情報は確認できませんでした。断定を避けています。
    • 相続税法基本通達11の2-9・11の2-10、所得税基本通達33-1の5・38-7の原文。国税庁の通達ページが文字化けして読み取れなかったため、本文の代償分割の整理は、タックスアンサーNo.4173の記載にもとづくものです。通達番号「33-1の5」の見出しが「代償分割による資産の移転」であることも、確定していません。
    • 代償金の支払いが譲渡所得の必要経費(取得費・譲渡費用)になるかどうか。これを明示した一次情報を確認できませんでした。本文では扱っていません。
    • 登録免許税法別表第一の条文そのもの。本文の税率は法務局の公式PDFにもとづきます。
    • 民法909条の2の限度額(法務省令で定める金融機関ごとの上限)。条文・省令から確認していません。
    • 遺産分割事件の司法統計。終局区分別の総数として10,849件(うち調停成立6,879件、認容1,136件、取下げ2,659件)という数値を読み取りましたが、当該PDFに年次表記が見当たらず、何年分の統計か特定できませんでした。遺産の価額別の分布も、複数のPDFで矛盾する数値が読み取れたため確定できていません。そのため本文には統計を書いていません。

    まとめ

    1. 分け方は4つ。現物分割・代償分割・換価分割・共有分割です。実家が一つで兄弟が複数なら、換価分割か代償分割が現実的です。
    2. 遺産分割前に売るには全員の同意が必要です(民法251条1項)。持分の過半数では売れません。
    3. 共有のまま住んでいる兄弟には、持分を超える使用の対価を償還する義務があります(民法249条2項・令和3年改正)。
    4. 相続人申告登記では実家は売れません。売るには相続登記が必要です。
    5. 相続登記は3年以内、登録免許税は1000分の4。免税措置が2つあり、どちらも申請書への記載が必要です。
    6. 空き家の3,000万円控除は、令和6年1月1日以後の譲渡で取得相続人が3人以上なら1人2,000万円。1億円判定は全員合算、適用者には通知義務があります。
    7. 1人名義にして売った場合に控除が何人分使えるかは、この記事では確定できませんでした。登記の名義を決める前に、税務署か税理士に確認してください。後戻りできません。
    8. 代償金の額を「時価」で決めると、相続税の課税価格の計算が変わります。協議書の書き方がそのまま効きます。
    9. 代償金を不動産で払うと、払った側に譲渡所得税がかかります。
    10. 相続開始から10年で、特別受益と寄与分は主張できなくなります(民法904条の3)。10年経過前に家庭裁判所へ請求していれば残ります。
    11. 遺産分割調停は、収入印紙1,200円から始められます。

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  • 実家の前の道が私道だった/接道が足りない|売る前に確かめる9つのこと

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    実家を売ろうとして、仲介業者にこう言われる。「前の道が私道ですね。持分はお持ちですか」「接道が2mに足りないかもしれません」。この瞬間から、話が止まります。

    ここでまず知っておいてほしいことがあります。「私道だから建てられない」わけではありません。建築基準法42条1項の道路には、私人が所有していても該当するものがいくつもあります。位置指定道路(5号)はほぼ私道ですし、法施行時からある道(3号)は公私を問いません。三鷹市も公式に「公私を問わない」と説明しています。

    問題は別のところにあります。①その道が建築基準法上の道路なのか、②敷地が2m以上接しているか、③掘削と通行の承諾が取れるか。この3つは、それぞれ別の法律・別の窓口で決まります。この記事は、その3つを役所と法務局で確かめる順番を、条文つきで並べます。全部、売りに出す前に、あなた自身で調べられます。

    結論だけ先に

    • 接道義務は「道路に2m以上接する」です(建築基準法43条1項)。条文に「幅員4m以上」とは書かれていません。4mは42条1項の「道路」の定義側にある数字で、よく見る「幅員4m以上の道路に2m以上」は、2つの条文を合わせた要約です。
    • 接道が足りなくても、43条2項1号の認定と2号の許可という道があります。令和5年度の実績は、認定1,232件・許可6,579件。「未接道=絶対に建てられない」ではありません。
    • 令和5年4月1日から、民法213条の2(継続的給付を受けるための設備の設置権)が施行されました。他人の土地に水道管・ガス管を通す権利が条文になっています。ただし「承諾がなくても必ず掘れる」ではありません。要件つきの権利です。
    • 私道の固定資産税は非課税になりえます(地方税法348条2項5号)。ただし申告制です。相続した実家の私道が課税されたままになっていることは、珍しくありません。

    条文は2026年8月24日にe-Gov法令検索で、運用は国土交通省・各自治体の公式ページで確認しました。道路の判定と許可の基準は自治体ごとに違います。実行前に必ず、実家の所在地の特定行政庁(市区町村または都道府県の建築指導部局)にご確認ください。

    1. 接道義務の条文を、正確に読む

    建築基準法第43条第1項
    建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。……)に二メートル以上接しなければならない。

    この条文には「4m」が出てきません

    「幅員4m以上」は、42条1項の「道路」の定義側に書かれています。つまり接道義務の構造は「〔42条にいう〕道路に2m以上接する」です。この違いは些細に見えて、調べる順番を決めます。まず「その道が42条の道路か」、次に「2m接しているか」の順です。

    「2m接している」の中身についても、注意点があります。島根県の解説はこう書いています。接道は「平面的に道路と敷地が接しているだけでなく、一般的には人が通行できることが必要」。擁壁で遮られていれば接道になりませんが、「階段があり人が通行出来る場合は接道となります」。敷地と道路の間に河川や水路がある場合、農道や河川管理道の場合は、認定または許可の申請が必要になります。

    足りないときの2つの出口

    43条2項1号(認定) 43条2項2号(許可)
    要件 幅員4m以上の道(道路に該当しないもの)に2m以上接し、利用者が少数であるものとして省令の基準に適合 敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他省令の基準に適合するもの
    建築審査会の同意 条文上の要件になっていません(不要) 必要(条文に明記)
    規模・用途の制限 延べ面積500㎡以内。道の区分に応じた用途制限あり 省令4項1〜3号のいずれか(公園等の空地/農道等に2m以上接する/十分な幅員の通路に有効に接する)
    令和5年度の全国実績 1,232件 6,579件

    2号許可は、かつて「43条ただし書」と呼ばれていたものです。平成30年の改正で条文の位置が変わりました。古い資料や業者の説明で「ただし書」と言われたら、いまの43条2項2号のことです。

    2. その道は、42条の何号なのか

    建築基準法第42条第1項(柱書)
    この章の規定において「道路」とは、次の各号のいずれかに該当する幅員四メートル(特定行政庁が……指定する区域内においては、六メートル……)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。

    号 通称 私道でありうるか
    1項1号 道路法による道路(公道) 公道
    1項2号 都市計画法・土地区画整理法等による道路(開発道路など) ありえます(市に移管されず私道のまま残ることがあります)
    1項3号 法施行時に現に存在する道(既存道) 公私を問いません
    1項4号 2年以内に事業執行予定として特定行政庁が指定した道路 —
    1項5号 位置指定道路 ほぼ私道です
    2項 みなし道路(2項道路)。法適用時に建築物が立ち並んでいた幅員4m未満の道で特定行政庁が指定したもの 公私を問いません

    「私道=建築基準法上の道路でない」は誤りです

    三鷹市は公式ページで、1項2号について「個人管理の私道でも該当する場合があります」、1項3号について「公私を問わない」と明記しています。

    所有者が誰かと、建築基準法上の道路かどうかは、別の問題です。登記簿を見て「個人名義だからだめだ」と早合点しないでください。

    所有者と、道路かどうかは別の問題 誰の土地か 登記簿で分かる 公道か私道か 個人名義でも 道路でありえます 42条の道路か 号で決まります 1項2号・3号・5号 2項道路も 公私を問いません 「私道だから道路ではない」は誤りです

    2項道路のセットバック──中心線から2mです

    建築基準法第42条第2項(抜粋)
    ……幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、……道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートル(……6m区域内においては、三メートル……)の線をその道路の境界線とみなす。
    ただし、当該道がその中心線からの水平距離二メートル未満で崖地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合においては、当該崖地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離四メートルの線をその道路の境界線とみなす。

    状況 みなし境界線
    通常(両側に宅地) 道の中心線から水平距離2m
    反対側が崖地・川・線路敷地等 崖地等の道の側の境界線から道の側に4m(=片側だけで4m確保する「一方後退」)
    土地の状況によりやむを得ない場合(42条3項) 中心線から1.35m以上2m未満、崖地等からは2.7m以上4m未満で特定行政庁が別に指定できます

    ★中心線は、自動的に決まっているわけではありません

    新宿区はこう説明しています。「中心が明確でない場合は、道路またはその道路に接して権利を有している方々で話し合い、中心線の位置を確認した後、現地に『中心杭』の設置をすることができます」。同区は中心杭を支給しています。

    つまり、あなたの敷地がどこまで下がるかは、隣の人たちとの合意で決まる部分があります。売る前に杭があるか見てください。なければ、そこが交渉ごとになります。

    3. 位置指定道路(5号)は、勝手に廃止できません

    位置指定道路は、道路法などによらずに築造され、特定行政庁から位置の指定を受けた道です。その基準は建築基準法施行令144条の4に定められています。

    そして重要なのは、いったん指定された私道は、所有者の一存で廃止できないことです(建築基準法45条)。「うちの土地だから、通らせないようにしよう」は通りません。逆に言えば、買主にとっては安心材料になります。

    位置指定道路の指定番号と指定年月日は、多くの自治体がインターネットで公開しています。横浜市は「行政地図提供システム(i-マッピー)」で指定道路図を公開し、位置指定道路は「指定番号と指定年月日も表示される」としています。神戸市も位置指定図をインターネットで閲覧できます。

    4. 私道の所有関係──3つの型があります

    型 登記の形 工事のとき
    単独所有型 1人が私道全体を所有 その1人の承諾が必要
    共同所有型(共有) 1筆を複数人で共有(持分) 法務省ガイドラインによれば、補修など現状維持は「保存行為」で各共有者が単独で実施可能。新規設置や大規模改修は管理事項または軽微変更として持分の過半数で決することができます
    相互持ち合い型 私道を分筆して各自が別々の筆を所有 法務省ガイドラインは「各土地所有者間に黙示の通行地役権が成立」と整理しています

    どの型かは、法務局の公図と登記事項証明書で分かります。公図で私道部分が細長く何本にも分かれていれば相互持ち合い型、1本の筆に何人もの名前が並んでいれば共有型です。

    工事のとき、誰の承諾が要るか 単独所有型 その1人の承諾が必要です 1人 共同所有型(共有) 補修は単独、変更は持分の過半数 過半数 相互持ち合い型 黙示の通行地役権があると整理 地役権 どの型かは、法務局の公図と登記事項証明書で分かる

    まず課税明細書を見てください

    私道持分を相続しているのに、本人が気づいていないことがあります。固定資産税の課税明細書に、宅地とは別に「公衆用道路」などの筆が載っていないか確認してください。

    逆に、私道持分を持っていないのに、その道からしか出入りできないケースもあります。その場合は、通行と掘削を他人の土地に頼ることになります。

    5. ★通行と掘削──令和5年に条文ができました

    実務でいちばんもめるのは、「水道管を引き直したいが、私道の所有者が承諾してくれない」という場面です。ここに、比較的新しい条文があります。

    民法第213条の2第1項(令和5年4月1日施行)
    土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。

    項 内容
    2項 設備の設置・使用の場所と方法は、他の土地等のために損害が最も少ないものを選ばなければならない
    3項(通知義務) あらかじめ、その目的、場所及び方法を、他の土地等の所有者及び現に使用している者に通知しなければならない
    4項 設置・使用のために、他の土地を使用することができる
    5項(設置の償金) 他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし1年ごとに支払うことができる
    6項 他人の設備を使用する者は、使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払う
    7項 他人の設備を使用する者は、利益を受ける割合に応じて設置・改築・修繕・維持の費用を負担する

    法務省は、相手方が不特定または所在不明の場合について、「簡易裁判所の公示による意思表示(民法98条)を活用」できるとしています。相続で共有者が増え、誰がどこにいるか分からない私道でも、手続の道筋があるということです。

    令和5年にできた条文(民法213条の2) 1項 設備を設置できる 他人の土地や設備を使えます 権利 2項 場所と方法 損害が最も少ないものを選ぶ 条件 3項 あらかじめ通知 所有者と現に使用している者に 条件 承諾ではなく通知です。ただし条件があります

    「承諾がなくても必ず掘れる」とは書けません

    213条の2は「他の土地に設備を設置しなければ……継続的給付を受けることができないとき」という要件付きの権利です。承諾書が不要になったわけではなく、実務上は水道事業者・ガス事業者が工事の際に所有者の承諾書を求めることが多いままです。

    この条文の意味は、承諾が得られないときの法的な足場が明確になった、という点にあります。売却の場面では、承諾書を先に取っておけるならそのほうが早いことに変わりはありません。

    通行そのものは、もっと古い条文で守られています

    条 内容
    210条1項 他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる
    210条2項 池沼・河川・水路・海を通らなければ公道に至れないとき、崖があって著しい高低差があるときも同じ
    211条1項 通行の場所と方法は、通行権者に必要で、かつ他の土地のために損害が最も少ないものを選ぶ
    211条2項 必要があるときは通路を開設することができる
    212条 通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない(通路開設分を除き、1年ごとの支払も可)
    213条1項 分割によって袋地が生じたときは、他の分割者の所有地のみを通行できる。この場合償金は不要

    210条の通行権は、承諾書がなくても法律上当然に発生します。ただし「通行できる」ことと「建築基準法の接道義務を満たす」ことは、まったく別です。接道義務は42条・43条の問題で、民法の通行権では代替できません。ここを混同した説明が非常に多いので、注意してください。

    6. 私道の固定資産税は、申告すれば非課税になりえます

    地方税法第348条第2項第5号
    固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。……公共の用に供する道路、運河用地及び水道用地

    条文には幅員も申請手続も書かれていません。「公共の用に供する」に当たるかの判断と申告手続は、各自治体の運用です。

    自治体 主な要件
    東京都 ①不特定多数の人の利用に供されている(植木・車の設置、門扉による遮断がない)②客観的に道路として認定できる形態③通り抜け私道は両端が別の公道に接し幅員1.8m以上/行き止まり・コの字型は複数家屋に供し幅員4.0m以上(既存道路は1.8m以上)。セットバック部分・隅切り部分も対象ですが「塀、縁石、目地などで明確に区分」が必要
    大阪市 「道路幅員がおおむね1.8m以上」「一の公道から他の公道へ通じていること」「有料で貸し付けたり利用料を徴収していない」「通行を禁止する表示物がない」「門扉、さくまたはこれに類する通行の障害物がない」等
    北九州市 ①一般人の通行に制約を設けず不特定多数人の利用に供する②両端が公道に直接または間接に接続③原則として1.8m以上の幅員④地積測量図等により道路区画が明確

    自治体をまたいで共通するのは4点です。①不特定多数が自由に通れる ②道路の形態がある ③幅員おおむね1.8m以上 ④申告が要る。

    申告制なので、相続した実家の私道が課税されたままになっていることは珍しくありません。東京都は「年内に申告すると、その翌年の4月に始まる年度から非課税」としています。売る前に確認する価値があります。

    幅員の基準は、自治体で違います 東京都 通り抜け 1.8m以上 行き止まり 4.0m以上 (既存道路1.8m以上) 門扉での遮断がない 大阪市 おおむね1.8m以上 公道から公道へ通じる 利用料を取っていない 通行の障害物がない 条文に幅員の定めはありません。運用は自治体ごと

    7. 調べる順番と、かかるお金

    法務局で取るもの(誰でも取れます)

    資料 何が分かるか 手数料(書面請求)
    登記事項証明書(土地) 私道の所有者、共有者と持分、抵当権など 600円/通
    公図(地図・地図に準ずる図面の証明書) 私道の筆の形と区切り(=共有型か相互持ち合い型か) 500円
    地積測量図等 分筆時の測量結果、道路部分の求積 500円
    登記事項要約書・閲覧 — 500円

    登記事項証明書も図面証明書も、所有者でなくても請求できます。盛岡地方法務局は「印鑑や身分証明等は不要」としています。相続の手続が終わる前でも、調査だけは先に進められます。

    特定行政庁(市区町村・都道府県の建築指導部局)で調べるもの

    自治体 公開のしかた 電話での回答
    横浜市 「行政地図提供システム(i-マッピー)」でインターネット閲覧・印刷可 不可(インターネット受付フォームあり)
    大阪市 「マップナビおおさか」で色分け公開。ただし「各種申請資料として使用はできません」 不可(「錯誤が生じるおそれがあるため、回答はお断りしています」)
    新宿区 「新宿区みんなのGIS」。「本情報には調査中の道路が含まれています」との注意書きあり 不可
    三鷹市 窓口に道路種別図を備え付け 不可。建築指導課では「公道・私道の判別はできません」(判別は道路交通課または法務局)
    神戸市 インターネットと窓口で同一の情報を公開。位置指定図もインターネット閲覧可 記載なし

    「地図に載っていない=道路でない」とは限りません

    国土交通省の資料によれば、指定道路図の作成済は約8割、指定道路調書の作成済は約4割です。新宿区も「調査中の道路が含まれています」「42条第1項第1号・第3号でも現況幅員が4m未満の場合がある」と注記しています。

    インターネットの地図で確認できなかった場合は、必ず窓口で正式な道路判定を求めてください。大阪市の場合、判定受付用紙・付近見取図・公図・現況図などを各2部提出する形で、申請者は「どなたでもできます」。

    ★建築計画概要書──「建てたときの接道」が分かります

    建築基準法93条の2と施行規則11条の3により、建築計画概要書は特定行政庁が閲覧させなければならない書類です。しかも同規則2項は、「当該建築物が滅失し、又は除却されるまで、閲覧に供さなければならない」としています。

    神戸市の作成要領によれば、概要書の第二面「第6欄(道路)」に「イ.幅員」と「ロ.敷地と接している部分の長さ」の記入欄があり、第三面の配置図には道路種別・幅員・接道長さ、さらに43条2項の認定・許可を受けた道に接する場合の詳細を明示することとされています。

    つまり、概要書を取れば「その建物が建てられたとき、どの道路に何m接していると申告されたか」が分かります。ただし、様式と記載の運用は自治体・年代で差があり、古いものほど記載は薄くなります。大阪市は建築計画概要書の保存開始を「昭和48年4月1日以降に確認申請が受け付けられた建築物」としており、閲覧は無料、写しの交付は250円/件です。

    あわせて「台帳記載事項証明書」も取ってください。確認済証番号や検査履歴が含まれるので、検査済証があるかどうかの確認に使えます。

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    この記事の10章の資料が揃っているかどうかで、査定の精度も価格も変わります。不動産SHOPナカジツは、愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本で自社買取と仲介の両方を扱う会社です。「43条2項の許可が要るが、一括同意基準に当てはまりそうだ」というところまで分かっていれば、仲介で売れる可能性も含めて見立ててもらえます。

    ①上の7県以外の実家は対象外です。②査定額は「売れる価格」ではありません。③先に道路種別だけは確認しておいてください。42条何号か、2項道路か。ここが空欄のままだと、どの会社も安全側の金額しか出せません。登記事項証明書600円・公図500円で揃います。④このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって査定額が下がることはありません。

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    道路判定の申請は、誰でもできます。大阪市は「どなたでもできます」と明記しています。相続の手続が終わる前でも、調査だけは先に進められます。

    8. 接道が足りないとき、実際に何が起きるか

    43条2項2号の許可は、多くの自治体が「一括同意基準」「包括同意基準」を持っています。典型的な案件は、個別に建築審査会にかけずに処理する運用です。つまり、基準に当てはまるかどうかは事前相談の段階で見当がつきます。

    自治体 基準の例
    東京都 基準3-1(両側後退):「幅員2.7m以上4m未満の道」に2m以上接する敷地。道の両側で後退させ、「地目を公衆用道路として登記することについて、所有権者全員の承諾」。用途は地上2階以下・地階1階以下の専用住宅または二戸長屋/基準4:「幅員4m以上の道」に2m以上接し、幅員4m確保について所有権者の1/2以上の承諾
    埼玉県 第1類型:農道・林道・河川管理用の道等で幅員4m以上/第2類型:通路幅員1.8m以上。用途は原則として住宅、規模は2階建て程度、外壁は耐火・準耐火または防火構造
    横浜市 第1号認定2種+包括同意基準。3-3A:空地幅員1.8m以上・中心後退2m以上/3-3B:空地幅員2.7m以上・中心後退2m以上。適合すれば審査会への附議を省略。事前相談2〜4週間+本申請約2週間
    福岡市 3類型(公園等/農道等/通路)。許可申請手数料33,000円。標準処理期間10〜14日、個別審査案件は1〜2か月

    許可は建築計画とセットです

    43条2項2号の許可は、その建築計画についての処分です。次の建て替えのときに同じ許可が下りる保証はありません。

    この点について条文上の明文までは確認できていませんが、東京都・埼玉県・横浜市の基準がいずれも用途・階数・規模を限定していることからも、「一度許可が出たから、この土地は自由に建てられる」という理解は危険です。

    他の出口

    選択肢 押さえどころ
    43条2項1号の認定 建築審査会の同意が不要な分ハードルは低いですが、幅員4m以上の道であることと延べ面積500㎡以内・用途制限がかかります
    位置指定道路を新設する 土地所有者・権利者全員の承諾書が必要。手数料の例は横浜市50,000円、京都市51,000円、大阪市77,000円。築造工事の費用は別です
    セットバックして4mにする 後退部分は敷地面積に算入されません(施行令2条1項1号)。角地の「喉元敷地」の後退が進まないことは、国交省資料も課題として指摘しています
    隣地の所有者に売る/隣地と一体で売る 接道を満たす隣地と合わせれば要件を満たせる場合があります。ただし、この点について公的な一次情報は確認できませんでした
    低未利用土地等の100万円特別控除 譲渡価額500万円以下(市街化区域・用途地域内などは800万円以下)、所有期間5年超、都市計画区域内、市区町村長の確認書が必要。国税庁ページ記載の適用期間は令和2年7月1日〜令和7年12月31日で、延長の有無は確認できていません
    相続土地国庫帰属制度 私道はほぼ使えません。法務省は却下要件の政令類型に「現に道路として利用されている土地」を明示し、不承認要件にも「袋地で通行妨害がある場合」等が挙がっています

    9. セットバック部分の扱い

    論点 内容
    敷地面積に算入されない 建築基準法施行令2条1項1号ただし書。「建築面積」ではなく「敷地面積」に算入されないのが正確です(=建蔽率・容積率の分母から外れます)
    建築物・擁壁を建てられない 建築基準法44条1項。セットバック部分は「道路」とみなされるため、塀・門・擁壁も建てられません
    固定資産税 非課税になりえます。東京都はセットバック部分・隅切り部分を対象に挙げますが、「塀、縁石、目地などで明確に区分」を求めます。申告制です
    売買での面積表示 実務では「私道負担面積」「セットバック要・面積○㎡」と表示されますが、その根拠を公的サイトで確認できませんでした

    セットバックは「登記」ではなく「事実」です。42条2項のみなし境界線は法律上当然に決まり、分筆や地目変更をしなくても効力があります。ただし、固定資産税の非課税や、東京都の43条2項2号基準3-1が「地目を公衆用道路として登記することについて所有権者全員の承諾」を求めるなど、登記まで求められる場面があります。

    10. 売る前に、この順番で

    順 やること どこで
    1 課税明細書で、宅地のほかに「公衆用道路」等の筆がないか確認 手元の書類
    2 登記事項証明書+公図で、私道の所有形態を確定する 法務局(600円/500円)
    3 道路種別を確認する(42条何号か、2項道路か、位置指定道路なら指定番号と指定年月日) 特定行政庁(電話回答不可の自治体が多数)
    4 セットバックの要否と位置を確認(2項道路なら中心線はどこか、中心杭はあるか) 特定行政庁
    5 建築計画概要書・台帳記載事項証明書を取る(建築当時の接道と検査済証の有無) 特定行政庁(大阪市の例で写し250円/件)
    6 接道が足りないなら、43条2項1号認定/2号許可の可能性を事前相談 特定行政庁
    7 通行・掘削の承諾書が過去に交わされていないか探す。なければ現在の共有者・隣接所有者を洗い出す 売主の手元/登記事項証明書
    8 私道が固定資産税で非課税になっているか確認し、なっていなければ申告を検討 市区町村(東京23区は都税事務所)
    9 これらを重要事項説明(宅建業法35条1項3号)の資料として整理して仲介業者に渡す —

    重要事項説明の条文は、意外と短いです

    宅地建物取引業法第35条第1項第3号
    当該契約が建物の貸借の契約以外のものであるときは、私道に関する負担に関する事項

    条文は「私道に関する負担」としか書いておらず、面積・位置・負担金・承諾の有無といった具体的項目は特定されていません。説明義務を負うのは宅建業者ですが、資料がなければ業者は説明できません。だから、上の9項目を売主が先に揃えておくことに意味があります。

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    43条2項の許可が下りないと分かったときに

    再建築できない土地は、仲介では買い手が見つかりにくく、価格も下がります。ラクウル(株式会社ネクサスプロパティマネジメント/国土交通大臣(1)第10311号)は、再建築不可・共有持分・借地権・底地といった物件を日本全国で買い取っている会社です。自社で買い取るため仲介手数料はかかりません。

    ①買取価格は、仲介で売れる価格より低くなります。再建築不可でこれは避けられません。この記事の8章の出口(43条2項1号の認定、2号の許可、位置指定道路の新設、セットバック、隣地への売却)を先に確認してください。順番を逆にすると、取れたはずの金額を取り逃します。②申し込むと担当者から連絡が入り、物件の状況を聞かれます。売却を考えていない相談は対象外です。③当サイトはこの会社の査定額や対応を確認していません。④このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって買取価格が下がることはありません。

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    申し込む前に、役所で前面道路の種別だけは確かめておいてください。この記事の7章に、そのまま窓口で使える調べ方を置いています。

    よくある質問

    前の道が私道です。売れないのでしょうか

    私道であること自体は、売れない理由になりません。建築基準法42条1項の道路には、私人が所有していても該当するものがあります。位置指定道路(5号)はほぼ私道ですし、法施行時からある道(3号)は公私を問いません。三鷹市も公式に「公私を問わない」と説明しています。確認すべきは「所有者が誰か」ではなく「42条の何号の道路か」です。特定行政庁で判定してもらえます。

    接道が2mありません。もう建て替えられませんか

    43条2項に、認定(1号)と許可(2号)という2つの道があります。令和5年度の全国実績は、認定1,232件・許可6,579件です。多くの自治体が「一括同意基準」「包括同意基準」を持っていて、典型的な案件は個別に建築審査会にかけずに処理されます。基準に当てはまるかどうかは、事前相談の段階で見当がつきます。ただし用途・階数・規模の制限がつくのが通常です。

    「43条ただし書」と言われました。今はどうなっていますか

    平成30年の改正で、条文の位置が変わりました。旧43条1項ただし書は、現在の43条2項2号の許可にあたります。建築審査会の同意が必要な点は変わっていません。古い資料や業者の説明で「ただし書」と言われたら、43条2項2号のことだと読み替えてください。なお2項1号の「認定」は、条文上、建築審査会の同意が要件になっていません。

    私道の共有者が承諾してくれません。水道管を引き直せませんか

    令和5年4月1日施行の民法213条の2があります。「他の土地に設備を設置しなければ電気・ガス・水道水の供給等を受けられないとき」に、必要な範囲で他人の土地に設備を設置できる権利です。相手方が不特定または所在不明の場合、法務省は「簡易裁判所の公示による意思表示(民法98条)を活用」できるとしています。ただし「承諾がなくても必ず掘れる」ではありません。要件つきの権利で、実務上は事業者が承諾書を求めることが多いままです。事前の通知義務(3項)と償金(5項〜7項)もあります。

    袋地なので通行権があります。それで接道義務も満たしますか

    満たしません。ここは絶対に混同しないでください。民法210条の通行権は、袋地の所有者に法律上当然に発生する私法上の権利です。一方、接道義務は建築基準法43条1項の公法上の規制で、「42条にいう道路に2m以上接する」ことを求めます。「通れる」ことと「建てられる」ことは、別の法律で別々に決まります。民法の通行権があっても、建築確認は下りません。

    2項道路と言われました。どこまで下がるのですか

    原則は道の中心線から2mです(特定行政庁が指定した6m区域では3m)。ただし、反対側が崖地・川・線路敷地等の場合は、その境界線から道の側に4mです(一方後退)。また42条3項により、やむを得ない場合は中心線から1.35m以上2m未満に緩和されることもあります。そして中心線は自動的に決まっていません。新宿区は「中心が明確でない場合は、権利を有する方々で話し合い、中心杭を設置できる」としています。売る前に杭があるか見てください。

    セットバック部分にも固定資産税がかかっていますか

    かかっている可能性があります。非課税は申告制だからです。地方税法348条2項5号の「公共の用に供する道路」に当たれば非課税ですが、東京都は「年内に申告すると、その翌年の4月に始まる年度から非課税」としており、申告しないかぎり自動的には非課税になりません。東京都はセットバック部分・隅切り部分も対象としますが、「塀、縁石、目地などで明確に区分」されていることを求めます。相続した実家の私道が課税されたままになっていることは珍しくありません。

    私道部分に塀を建ててもいいですか

    セットバック部分については、建てられません。建築基準法44条1項は「建築物又は敷地を造成するための擁壁は、道路内に、又は道路に突き出して建築し、又は築造してはならない」と定めており、セットバック部分は「道路」とみなされるため、塀・門・擁壁も対象になります。また固定資産税の非課税の場面でも、東京都・大阪市はいずれも「門扉、さく、通行の障害物がないこと」を要件にしています。物を置くと、非課税から外れる可能性もあります。

    建てたときの接道が何mだったか、調べられますか

    建築計画概要書で分かります。建築基準法93条の2と施行規則11条の3により、特定行政庁が閲覧させなければならない書類で、同規則2項は「当該建築物が滅失し、又は除却されるまで、閲覧に供さなければならない」としています。神戸市の作成要領によれば、第二面の第6欄に「幅員」と「敷地と接している部分の長さ」の記入欄があり、第三面の配置図に道路種別と接道長さを明示することとされています。ただし、様式と記載の運用は自治体・年代で差があり、古いものほど記載は薄くなります。大阪市は昭和48年4月1日以降の受付分から保存しています。

    道路の種別を電話で教えてもらえますか

    ほとんどの自治体が電話回答をしていません。大阪市は「錯誤が生じるおそれがあるため、回答はお断りしています」と明記しており、横浜市・新宿区・三鷹市も不可です。インターネットで地図を公開している自治体は増えていますが、大阪市は「各種申請資料として使用はできません」、新宿区は「調査中の道路が含まれています」と注記しています。正式には窓口で道路判定を申請してください。大阪市の場合、申請者は「どなたでもできます」。

    調べていないまま売りに出したらどうなりますか

    買主側が調べて、そこで話が止まります。私道に関する負担は宅建業法35条1項3号の重要事項説明の対象で、説明義務を負うのは宅建業者ですが、資料がなければ業者は説明できません。「調べていない」は、買主にとっては「調べたら建てられないかもしれない」と同じ意味になります。この記事の10章の9項目を先に揃えておくと、価格の交渉材料が減ります。そして、揃えるのにかかる実費は数千円です。

    この記事で確認できなかったこと

    • 平成30年法律第67号(43条ただし書→43条2項2号の改正)の施行日。条文の現在の位置は確認しましたが、施行日そのものを一次情報で確認していません。
    • 建築基準法43条3項1号〜4号の完全な文言。条例による接道規制の上乗せ対象について、見出し語(特殊建築物/階数3以上/無窓居室/延べ面積1,000㎡超)は確認しましたが、各号の逐語は確認していません。
    • 登記の図面証明書のオンライン請求手数料。盛岡地方法務局のページでは地図等と同じ470円/440円と読めた一方、法務局本局掲載の一覧では450円/420円と読み取れました。本文には書面請求の額(500円)のみを記載しています。オンラインで請求する場合は事前にご確認ください。
    • 道路台帳の閲覧方法・手数料の全国的な整理。道路法の道路については道路管理者が台帳を備えていますが、閲覧方法・手数料の一次情報は確認できませんでした。
    • 宅建業法35条1項3号の具体的な記載項目。国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」に、同号についての記述は見当たりませんでした。本文の「売主が用意すべき資料」は、法令が直接要求しているものではなく、この記事の整理です。
    • 43条2項2号の許可が「一代限り」であることの条文上の明文。各自治体の基準が用途・階数・規模を限定していることから実質的にそう読めますが、条文レベルでは確認していません。
    • 売買での「私道負担面積」「セットバック要」の表示根拠。実務では表示されますが、その根拠とされる不動産の表示に関する公正競争規約の本文を、公的サイトで確認できませんでした。
    • 低未利用土地等の100万円特別控除の適用期間の延長の有無。国税庁ページ記載の適用期間は令和2年7月1日〜令和7年12月31日です。延長されているかは確認していません。使う場合は必ず税務署にご確認ください。
    • 隣地への売却・隣地との一体売却について。接道要件を満たせる場合があるとされますが、公的な一次情報は確認できませんでした。

    まとめ

    1. 「私道だから売れない」は誤りです。建築基準法42条1項の道路には、私人所有のものが含まれます(2号・3号・5号)。
    2. 接道義務は「道路に2m以上接する」(43条1項)。「幅員4m以上」は42条1項の定義側の数字です。
    3. 足りなくても、43条2項1号の認定と2号の許可があります。令和5年度で認定1,232件・許可6,579件。
    4. 2項道路のセットバックは中心線から2m。反対側が崖地・川・線路なら、そこから道の側に4m。中心線は自動では決まりません。
    5. 令和5年4月1日から民法213条の2ができました。他人の土地に水道管等を通す権利です。ただし承諾書が不要になったわけではありません。
    6. 民法の通行権(210条)と建築基準法の接道義務は、まったく別です。通れても建てられません。
    7. 私道の固定資産税は非課税になりえますが、申告制です。相続した実家で課税されたままのことがあります。
    8. 登記事項証明書600円・公図500円・地積測量図500円。所有者でなくても取れます。
    9. 建築計画概要書は、建物が滅失・除却されるまで閲覧に供されます。建てたときの接道が分かります。
    10. 道路種別は電話で教えてもらえない自治体がほとんどです。窓口で正式な判定を。申請は誰でもできます。
    11. 調べるのにかかる実費は数千円です。調べずに売りに出すと、買主が調べた時点で話が止まります。

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  • 実家が市街化調整区域にある|建て替えられるか、売れるかを条文で確かめる

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    相続した実家の登記簿や固定資産税の通知を見て、「市街化調整区域」という言葉を初めて知った。調べると「建て替えできない」「売れない」「ローンが組めない」と出てくる。不安になって、この記事にたどり着いた方が多いはずです。

    先に言っておきます。この3つのうち、条文と自治体の公式資料で裏が取れるのは「建て替えに許可が要る」だけです。「売れない」は法律の話ではありませんし、「ローンが組めない」については、公的な一次情報を探しましたが見つけられませんでした。後述しますが、この記事はそこも正直に書きます。

    そのうえで、本当に確認しなければならないことは、たった1つに集約されます。「その家は、どういう経緯で建ったのか」。線引き前からあるのか、許可を受けて建ったのか、許可が要らない類型で建ったのか。ここで、あなたにできることとできないことが全部決まります。

    結論だけ先に

    • 市街化調整区域には「小規模だから開発許可が要らない」という例外がありません。都市計画法29条1項1号が挙げているのは市街化区域・非線引き区域・準都市計画区域だけです。面積の大小に関係なく、原則として許可が要ります。
    • 「既存宅地だからいつでも建てられる」は、2006年5月17日で完全に終わっています。旧・都市計画法43条1項6号の既存宅地制度は平成13年5月18日に廃止され、法定の経過措置5年も満了しました。今は条例区域か開発審査会かの二択です。
    • 分家住宅・農家住宅には「属人性」があります。桜川市の基準は「者の変更」が「用途の変更」とみなされると明記しています。建物も使い方も同じ「住宅」なのに、住む人が変わるだけで許可が要ります。相続人ならそのまま住めるかどうかも、自治体で扱いが違います。
    • 「市街化調整区域だから住宅ローンが組めない」という記述は、住宅金融支援機構の公式サイトのどこにも見つけられませんでした。フラット35の技術基準にあるのは接道要件だけで、敷地面積の要件すらありません。民間銀行の審査基準は各行の内部基準で、公表されていません。

    条文は2026年8月24日にe-Gov法令検索で、運用は国土交通省・各自治体の公式ページで確認しました。条例と審査基準は自治体ごと・年度ごとに違います。実行前に必ず、実家の所在地の許可権者(都道府県または指定都市・中核市)にご確認ください。

    1. まず、その土地がどの区分にあるのか

    都市計画法第7条
    第2項 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。
    第3項 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。

    区分 根拠 内容
    市街化区域 法7条2項 すでに市街地/おおむね10年以内に市街化を図るべき区域
    市街化調整区域 法7条3項 市街化を抑制すべき区域
    非線引き都市計画区域 法7条1項本文が「定めることができる」 区域区分が定められていない都市計画区域
    決定するのは 法15条1項2号 都道府県(市町村ではありません)
    用途地域 法13条1項7号 市街化調整区域には原則として定めない

    「抑制すべき区域」という定義が、すべての起点です

    国土交通省は制度趣旨をこう説明しています。「道路・公園・下水道などの基盤整備についての公共投資を効率的に行いつつ、良質な市街地の形成を図る目的」であり、公共施設整備が確実でない段階で市街化区域に編入すると「無秩序な開発やバラ建ちを招き、かえって劣悪な市街地を形成してしまうおそれ」がある、と。

    つまり、あなたの実家に個別の落ち度があるわけではありません。街の作り方の方針として、そこは「増やさない」と決められている、というだけです。

    「規模が小さいから許可不要」が通じません

    開発許可の適用除外を定める都市計画法29条1項1号は、「市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為」としか書いていません。

    市街化調整区域は、この号の対象に入っていません。市街化区域なら1,000㎡未満(三大都市圏の一部は500㎡未満)、非線引きなら3,000㎡未満で許可不要ですが、市街化調整区域にはこの逃げ道がありません。

    面積の逃げ道が、調整区域にはありません 市街化区域 1,000㎡未満なら許可不要 逃げ道あり 非線引き都市計画区域 3,000㎡未満なら許可不要 逃げ道あり 市街化調整区域 面積による例外はありません 逃げ道なし 都市計画法29条1項1号。三大都市圏は500㎡未満

    2. 建て替えで効いてくるのは29条ではなく43条です

    ここを取り違えている解説が多いところです。開発許可(29条)は「土地の区画形質の変更」に対する許可です。更地に家を建て直すだけで造成をしないなら、開発行為には当たりません。それでも、建てること自体に別の許可が要ります。

    都市計画法第43条第1項本文
    何人も、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内においては、都道府県知事の許可を受けなければ、……建築物以外の建築物を新築し、……また、建築物を改築し、又はその用途を変更して……してはならない。

    実務では「建築許可」「43条許可」と呼ばれます。相続した実家の建て替えで問題になるのは、ほとんどの場合こちらです。

    29条ではなく、43条が効きます 29条 開発許可 土地の区画形質の変更 造成しないなら不要 面積の例外は 調整区域にない 43条 建築許可 建てること自体の許可 新築・改築・用途変更 建て替えで効くのは ほとんどこちら 造成しなくても、建てるには43条の許可が要ります

    ただし「許可を要しない改築」という運用があります

    43条1項が規制するのは「新築」「改築」「用途の変更」の3つです。逆に、許可を要しない「改築」と評価されれば、許可なしで建て替えられます。この線引きは法律の明文ではなく、各許可権者の審査基準にあります。

    自治体 公式資料の記述
    福岡市 「新築とは建築物のなかった敷地内での建築行為に限られず、既存建築物の建替の場合であっても、建替え後の建築物の用途、規模又は構造が従前の建築物と著しく異なる場合には『新築』に該当」
    東京都 建替後の床面積が「従前の建築物の床面積の合計の1.5倍以下」で構造・用途がほぼ同一なら、許可不要の改築として取り扱う(開発許可の手引き 別表-1)
    神戸市 「既存の建築物が都市計画法に基づいた適法な建築物であって、従前の敷地設定や用途を変更しないなど一定の要件を満たす場合は、許可不要で建替や増改築ができます」(建築確認申請時に「事前確認書」の交付手続きが必要)
    新潟市 「既存の敷地内における、同一用途の改築(建替)、増築で敷地増の伴わないもの」

    すべての前提は「元の建物が適法に建っていること」です

    神戸市は「都市計画法上適法な建築物」を3つに整理しています。①線引き時に存在した建築物で敷地・用途に変更がないもの、②線引き後に許可不要で新築されたもの、③線引き後に許可を受けて新築されたもの。

    このどれにも当たらない建物──違法建築、あるいは許可条件に反した使われ方をしている建物は、「許可不要の建て替え」という土俵にそもそも乗りません。だから、最初に調べるのは「どういう経緯で建ったか」なのです。

    やりたいこと 原則 許可不要の余地
    建て替え(同一敷地・同一用途・同規模) 43条1項の「改築」 あり(自治体基準による。東京都は床面積1.5倍以下など)
    増築 同上 あり(敷地増を伴わず同一用途なら、とする例)
    敷地の拡大・分割 原則制限 限定的
    敷地の移転 原則制限 限定的(公共事業等)
    用途変更(住宅→店舗など) 43条1項本文で明文の許可対象 34条各号/令36条1項3号イ〜ホに該当する場合のみ
    同じ大きさで建て直すなら、余地があります 建て替え(同規模) 許可不要の余地があります あり 増築(敷地増なし) 同一用途なら余地があります あり 敷地の拡大・分割 原則として制限されます 限定的 用途変更 34条各号に該当する場合のみ 限定的 東京都は床面積1.5倍以下など、基準は自治体ごと

    3. ★「既存宅地だから大丈夫」は、2006年に終わっています

    相続の相談でいちばんよく聞く誤解がこれです。既存宅地制度(旧・都市計画法43条1項6号)は、すでにありません。

    項目 内容
    根拠だった条文 旧・都市計画法43条1項6号
    廃止した法改正 平成12年(2000年)改正都市計画法
    施行(廃止)日 平成13年(2001年)5月18日
    法定経過措置 施行日から5年間=平成18年(2006年)5月17日まで
    現在の受け皿 法34条11号・12号の条例区域指定/法34条14号・令36条1項3号ホ(開発審査会の議)

    横浜市は「市街化調整区域の既存宅地の確認制度は平成13年度に廃止となりましたが、『既存宅地』について、一定の条件を満たしたものを開発審査会に付議する形で認めています」と説明しています。つまり、まったく道が閉ざされたのではなく、自動的だったものが個別審査になった、ということです。

    4. 今の受け皿は、34条11号・12号・14号です

    都市計画法34条は限定列挙です。技術基準(33条)を満たしていても、34条各号のどれかに当たらなければ許可は出せない、という構造になっています。実家の建て替えや、相続した宅地に建てる話で関係するのは、次の4つです。

    号 内容 実家との関係
    11号 市街化区域に隣接・近接し、市街化区域と一体的な日常生活圏を構成し、おおむね50以上の建築物が連たんしている地域のうち、条例で指定する土地の区域 いわゆる「50戸連たん」「区域指定制度」。既存宅地制度廃止後の主要な受け皿
    12号 市街化を促進するおそれがなく、市街化区域で行うことが困難・著しく不適当な開発行為として、条例で区域・目的・用途を限り定められたもの 既存集落・分家住宅などを条例化する受け皿
    13号 線引きの際に自己の居住・業務用の建築物を建てる目的で土地の権利を有していた者が、線引きから6か月以内に届け出たもの 線引き前から持っていれば自動的に使える、ではありません。届出が要件です
    14号 都道府県知事が開発審査会の議を経て、市街化を促進するおそれがなく、市街化区域で行うことが困難・著しく不適当と認めるもの 実務上いちばん使われる包括条項。各自治体の「提案基準」「個別付議基準」がここにぶら下がります

    ★「50戸連たん」は法律の文言。実際の戸数は条例で決まります

    自治体 11号区域の要件 建てられる用途
    つくば市 40以上の建築物を有する宅地が連たん、宅地率おおむね40%以上 住宅系(兼用住宅含む)。前面道路4m以上なら延べ150㎡までの店舗も
    愛知県 市町村長の申出に基づき知事が指定 専用住宅・兼用住宅・共同住宅。敷地面積200㎡以上、高さ原則10m以下
    埼玉県 おおむね50以上が連たん。12号(既存集落型)は「敷地がおおむね50m以内の間隔で存している地域」 県が許可権を持つ12町村のうち指定は越生町・鳩山町の2町のみ

    つくば市の条例は「40以上」です。法律の「おおむね五十以上」より緩い数字が条例で採用されています。逆に、埼玉県のように「県の許可権が及ぶ12町村のうち2町しか指定していない」というケースもあります。

    ★令和4年4月1日から、ハザードエリアが原則除外されました

    都市計画法施行令29条の9・29条の10により、11号・12号の条例指定区域には、原則として次の区域を含めてはならないこととされました。

    災害危険区域/地すべり防止区域/急傾斜地崩壊危険区域/土砂災害警戒区域/浸水被害防止区域/水防法の浸水想定区域のうち一定のもの。

    つまり、以前は11号区域だった土地が、条例の改正で区域から外れ、いま建てられなくなっている可能性があります。親から「ここは建てられる土地だ」と聞いていても、最新の区域図で確認し直してください。がけや土砂災害区域が絡む場合はがけ条例と擁壁の記事もあわせてお読みください。

    5. ★分家住宅・農家住宅の「属人性」──ここがいちばん重い

    この記事でもっとも実害が大きい論点です。桜川市(茨城県)の基準が、この概念をいちばん明快に定義しています。

    「その者だからこそ受けられる許可」であり、法第34条各号または政令第36条第1項第3号に掲げる許可基準のうち「者の属性」に着目した立地基準に該当するもの。
    「者の変更」が予定建築物等の『用途の変更』とみなされ、法第42条または法第43条の許可が必要となります。

    建物も使い方も同じ「住宅」なのに、住む人が変わるだけで許可対象になります

    これが、市街化調整区域の実家がいちばん詰まりやすい理由です。「農業を営む人の住宅」として許可不要で建った家(都市計画法29条1項2号)や、「分家住宅」として許可を受けて建った家は、その人のための家なのです。

    相続人ならそのまま住めるのか──自治体で扱いが違います

    自治体 相続人(一般承継人)の扱い
    新潟市 「人的要件により許可不要として建築された建築物についての使用者の変更は、同一用途ではありません。(ただし、一般承継人は除きます。)」→ 相続人はそのまま住めると読めます
    横浜市 相続により配偶者または直系卑属が取得した場合について「被相続人と共に当該建築物に居住していた者に限る」という制限あり(提案基準第24号)

    横浜市の基準では、相続人であっても「親と一緒に住んでいた配偶者・直系卑属」に限られます。実家を出て別に暮らしていた子が相続した場合、この条件を満たしません。

    住む人が変わると、用途変更になることがある 分家住宅・農家住宅として建った家ですか はい 属人性があります 扱いは自治体次第 いいえ 属人性はありません 建物の用途で判断

    横浜市の同じ提案基準は、用途変更(=別の人が住めるようにすること)の要件も定めています。「分家人世帯が当該住宅を現在に至るまで適法に20年以上にわたり使用しており、かつ、申請者が用途の変更をする理由があること」、あるいは経過年数の制限なしで「真にやむを得ない理由」があること。

    さいたま市の個別付議基準19(既存建築物の用途変更等)は、「やむを得ない事情」をこう例示しています。破産手続開始決定/事業経営者の死亡・失踪・心身障害/主たる生計維持者の死亡・失踪・心身障害/長期の転勤・転職により家族全員の転居が余儀なくされた場合/家族の長期療養による転居/生活の困窮、事業経営の悪化。

    売買そのものは制限されません。買った人が住めるかどうかが問題です

    土地建物の売買自体を都市計画法が禁じているわけではありません。ですが、買主が住むためには「者の変更」=用途変更の許可(法42条1項ただし書または法43条1項)が必要になります。

    神戸市はこう注意喚起しています。「市街化調整区域では、土地・建築物を買った人が建築物を建てられない場合や住めない場合がありますので、売却や購入にあたり、建築物がどのような経緯で建築されたか調査する必要があります」。

    42条か43条か──どちらの許可になるかも、経緯で決まります

    その土地が 適用条文
    開発許可を受けた開発区域内にある 法42条1項ただし書の許可
    開発許可を受けた開発区域以外(43条許可や許可不要で建てられた土地、線引き前からの宅地など) 法43条1項の許可

    相続時にまず調べるのは「開発許可を受けた土地か否か」です。開発登録簿で確認できます。

    6. 畑や田がついている場合は、許可が2つになります

    市街化区域と市街化調整区域で、農地法の扱いは決定的に違います。

    市街化区域内の農地 市街化調整区域内の農地
    自己転用(農地法4条) 農業委員会への届出で足りる(4条1項7号) 都道府県知事等の許可が必要
    転用目的の権利移動(農地法5条) 農業委員会への届出で足りる(5条1項6号) 都道府県知事等の許可が必要
    審査の性質 形式審査(要件を満たせば受理) 実体審査(不許可となりえます)

    農地法4条1項7号・5条1項6号は「市街化区域内にある農地」としか書いていません。市街化調整区域はこの例外に入らないので、原則どおり許可が必要です。

    つまり、市街化調整区域の実家に畑がついていると、都市計画法(29条/43条)と農地法(4条/5条)の2つの許可を、両方クリアしなければなりません。さらに、農業振興地域の農用地区域(いわゆる青地)内の農地は、原則として転用不許可です。

    相続した農地そのものにも、届出義務があります

    農地法第3条の3
    農地又は採草放牧地について……権利を取得した者は、……遅滞なく、……その農地又は採草放牧地の存する市町村の農業委員会にその旨を届け出なければならない。

    相続で農地を取得した場合、農地法3条の許可は要りませんが、農業委員会への届出は必要です。詳しくは実家と一緒に畑や山も相続したをご覧ください。

    7. 都市計画税は、原則としてかかりません

    地方税法第702条第1項(抜粋)
    市町村は、……都市計画区域のうち……市街化区域……内に所在する土地及び家屋に対し、……都市計画税を課することができる。
    当該都市計画区域のうち……市街化調整区域内に所在する土地及び家屋の所有者に対して都市計画税を課さないことが……均衡を著しく失すると認められる特別の事情がある場合には、当該市街化調整区域のうち条例で定める区域内に所在する土地及び家屋についても、同様とする。

    税目 市街化区域 市街化調整区域
    固定資産税 課税 課税(区分に関係なくかかります)
    都市計画税 課税できる 原則として課されない。ただし「均衡を著しく失する特別の事情」がある場合、条例で定める区域は課税されます
    都市計画税の税率上限 0.3%(地方税法702条の4)

    「市街化調整区域=必ず都市計画税ゼロ」と断定すると誤りになりえます

    702条1項は「課することができる」という任意規定です。市街化調整区域に課されないのは、法律で禁止されているからではなく、課税対象が原則として市街化区域に限られているからです。後段の例外があるので、実際に課されているかどうかは、固定資産税の課税明細書で確認してください。

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    仲介で「建て替えできるか分からない」と言われたら

    市街化調整区域の家は、買主が「建てられるか」を調べた時点で話が止まりがちです。ラクウル(株式会社ネクサスプロパティマネジメント/国土交通大臣(1)第10311号)は、再建築不可・旧耐震・築古・違反建築といった物件を日本全国で買い取っている会社です。自社で買い取るため仲介手数料はかかりません。「調べても結論が出ない」状態のまま金額を聞けます。

    ①買取価格は、仲介で売れる価格より低くなります。これは避けられません。この記事の11章の1〜9をまず自分で調べて、「建て替えできる」と分かったなら、先に仲介の査定を取ってください。結論が変わります。②申し込むと担当者から連絡が入り、物件の状況を聞かれます。売却を考えていない相談は対象外なので、迷っている段階なら「まだ決めていませんが、金額を知りたい」と伝えてください。③当サイトはこの会社の査定額や対応を確認していません。④このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって買取価格が下がることはありません。

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    連絡を受ける前に、開発登録簿と建築確認台帳の記載事項証明書を取っておいてください。「線引き前から存する/許可不要で建った/許可を受けて建った」のどれかが分かるだけで、話の精度がまるで変わります。

    8. 売るときに何が起きるか

    売買契約そのものは制限されません。問題は、買主が「建てられるか」「住めるか」です。そしてその制限は、宅建業者が重要事項として説明すべき法定事項に入っています。

    説明対象の条項 内容 実家との関係
    都計法29条1項・2項 開発許可 開発行為に許可が要ること
    都計法41条2項 建蔽率等の制限(開発許可時に付されたもの) 建て替え時の建蔽率・高さ制限
    都計法42条1項 開発許可を受けた土地における予定建築物以外の建築等の制限 分家住宅等の用途変更制限がここに乗ります
    都計法43条1項 開発許可を受けた土地以外での建築等の制限 建て替え・用途変更に許可が要ること

    宅地建物取引業法施行令3条1項1号に、42条1項・43条1項が明記されています(根拠は宅建業法35条1項2号)。「この土地は市街化調整区域なので建て替えに知事の許可が要る」「この建物は分家住宅なので第三者が住むには用途変更の許可が要る」は、説明されるべきことです。

    売主として準備すべきもの

    • 開発登録簿の写し(開発許可を受けた土地かどうか、許可の内容)
    • 建築確認台帳の記載事項証明書・建築計画概要書(いつ、どういう建物として建ったか)
    • 許可書の写し(43条許可・分家住宅の許可を受けているなら、その内容と条件)
    • 11号・12号の条例区域に入っているかの確認結果(最新の区域図で)
    • 農地がある場合、農業委員会での確認結果(農用地区域内かどうか)

    これらが揃っているかどうかで、買い手の付き方も、価格も変わります。「調べていない」は、買主にとっては「調べたら建てられないかもしれない」と同じ意味になるからです。

    9. ★住宅ローンについて、正直に書きます

    「市街化調整区域だとローンが組めない」と、多くのサイトが書いています。この記事は、それを裏づける公的な一次情報を見つけられませんでした。

    調べた資料 市街化調整区域に関する記述
    【フラット35】ご利用条件 記載なし。住宅要件は「機構が定めた技術基準に適合する住宅」「一戸建て等50㎡以上/共同建て30㎡以上」「敷地面積の要件はありません」
    【フラット35】対象となる住宅・技術基準 記載なし。立地に関する要件として確認できたのは接道要件「原則として一般の道に2m以上接すること」のみ

    この記事が書けること、書けないこと

    書けないこと

    「市街化調整区域だから住宅金融支援機構が融資しない」とは書けません。公式サイトの利用条件にも技術基準にも、その趣旨の記述がないからです。

    また、民間金融機関の審査基準は各行の内部基準であり、公表されていません。「銀行が嫌がる」という一般論を、この記事は根拠なしに書きません。

    書けるのは、ここまでです。市街化調整区域の土地は法43条により再建築に許可が必要で、許可が下りなければ再建築不可となりえます。再建築できるかどうかが担保評価に影響しうる、というのは論理としては筋が通りますが、これは推論であって、金融機関の審査基準を示す一次情報ではありません。

    実際に借りられるかは、金融機関に直接聞いてください。そのとき手元にあるべきなのは、8章で挙げた書類です。「建て替えられる土地である」ことを書面で示せるかどうかが、話の中身を決めます。

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    建てられないなら、建てない使い道を一括で当たる

    この記事の2〜5章のとおり、市街化調整区域では建てる方向の選択肢が限られます。タウンライフ土地解決は、「活用するにも立地が」「何年も解決できず放置ぎみ」という土地を対象に、複数の会社から売却・賃貸・活用のプランを無料でまとめて受け取れるサービスです。建築を伴わない使い道なら、43条の許可の話をいったん外して考えられます。

    ①複数社から連絡が入ります。電話が重なるのが嫌なら、備考欄にその旨を書いてください。②提案は「その会社がやりたい事業」の提案です。複数社を並べて、共通して出てくる案と、1社だけが強く勧める案を見分けてください。③成果条件が「一括問合せ」なので、1社だけを選ぶと対象外です。複数社を選んでください。④このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって提案内容が変わることはありません。⑤市街化調整区域であることは、必ず先に伝えてください。伝えないまま提案を受けても、実行できない案が混ざります。

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    依頼する前に、この記事の11章の1〜5だけは終わらせておいてください。「開発許可を受けた土地か」「属人性のある許可か」が分かっているだけで、提案の精度がまるで変わります。

    10. 手放す選択肢──国庫帰属は使えるか

    結論から言うと、市街化調整区域であること自体は、相続土地国庫帰属制度の却下事由でも不承認事由でもありません。法2条3項の却下要件5つ、法5条1項の不承認要件5つのいずれにも、都市計画法の区域区分に関する記述はありません。法務省の「引き取ることができない土地の要件」のページにも記載はありませんでした。

    ただし、建物があると申請できません

    法2条3項1号は「建物の存する土地」を却下事由としています。つまり、実家を解体してからでないと申請できません。これが実務上いちばん大きい障害です。

    そして市街化調整区域の家を解体すると、再び建てられるかどうかは2〜5章の話に戻ります。解体してから「やっぱり建てたい」は効きません。

    項目 件数(令和8年7月31日現在・速報値)
    申請件数(総数) 5,863件
     うち田・畑 2,278件
     うち宅地 2,040件
     うち山林 893件
    帰属件数(総数) 3,008件
    却下件数 85件
    不承認件数 96件

    詳しくは相続土地国庫帰属制度をご覧ください。

    11. 相続したら、この順番で確認します

    順 確認すること どこで
    1 都市計画区域内か、線引きされているか、市街化調整区域か 市町村の都市計画課/都市計画図
    2 許可権者はどこか(都道府県/指定都市・中核市/事務処理市町村) 都道府県・市の開発指導担当
    3 既存の建物は「都市計画法上適法」か(線引き前から存する/許可不要/許可を受けた のどれか) 開発登録簿、建築確認台帳、許可書
    4 開発許可を受けた土地か否か(→42条か43条か) 開発登録簿
    5 その許可に属人性があるか(分家住宅・農家住宅か) 許可書の内容
    6 11号・12号の条例指定区域に入っているか(令和4年4月以降のハザードエリア除外を反映した最新図で) 自治体の区域指定図
    7 入っていなければ、開発審査会の提案基準・付議基準に乗るか 自治体の提案基準
    8 敷地内・隣接に農地(とくに農用地区域内農地)があるか 農業委員会
    9 都市計画税が課されているか(条例による例外の有無) 固定資産税課税明細書
    10 売るなら、42条1項・43条1項の制限が重要事項説明に載るか 媒介業者
    11 国庫帰属を検討するなら、建物の解体が前提 法務局

    1〜9は、すべて役所の窓口で無料で確認できます。そして3〜5が分からないまま売りに出すと、買い手が調べて「建てられない」と分かった時点で話が止まります。

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    仲介でいくらになるかも、並べて見ておく

    買取と仲介は、金額も期間もまるで違います。不動産SHOPナカジツは、愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本で自社買取と仲介の両方を扱う会社です。市街化調整区域の物件について、その地域で仲介が成立するのかどうかの見立ても含めて聞けます。無料で査定を依頼できます。

    ①上の7県以外の実家は対象外です。②査定額は「売れる価格」ではありません。③査定を頼む前に、この記事の11章の3〜5(建物がどういう経緯で建ったか、属人性があるか)を確認しておいてください。ここが分からないままだと、どの会社も確かな金額を出せません。④畑がついている場合は、農地法の許可が別に要ります。不動産の査定だけでは完結しません(実家と一緒に畑や山も相続した)。⑤このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって査定額が下がることはありません。

    不動産SHOPナカジツに無料査定を依頼する(愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本)

    役所での確認は、すべて無料です。この記事の11章の表を印刷して、都市計画課の窓口に持って行ってください。1〜9は同じ日に終わります。

    よくある質問

    市街化調整区域だと、建て替えはできないのですか

    できないのではなく、許可が要ります(都市計画法43条1項)。しかも、同一敷地・同一用途・同規模なら「許可を要しない改築」として扱う運用を持つ自治体が多くあります。東京都は「従前の床面積の1.5倍以下」で構造・用途がほぼ同一なら許可不要、神戸市は「従前の敷地設定や用途を変更しないなど一定の要件を満たす場合」は許可不要と明記しています。ただし、元の建物が都市計画法上適法に建っていることが大前提です。

    「既存宅地」だと聞いています。建てられますよね

    既存宅地制度は、平成13年5月18日に廃止されています。法定の経過措置5年も平成18年5月17日で満了しました。「既存宅地だから建てられる」という制度は、もう存在しません。現在は、①その土地が34条11号・12号の条例区域に入っているか、②入っていなければ開発審査会の提案基準・付議基準に乗るか、を個別に確認するしかありません。横浜市は「既存宅地について、一定の条件を満たしたものを開発審査会に付議する形で認めています」としています。

    敷地が小さいので、開発許可は要りませんよね

    市街化調整区域には、その例外がありません。都市計画法29条1項1号が挙げているのは「市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域」だけで、市街化調整区域はこの号の対象に入っていません。市街化区域なら1,000㎡未満(三大都市圏の一部は500㎡未満)で許可不要ですが、市街化調整区域は面積の大小に関係なく、開発行為をするなら原則として許可が必要です。

    親が農家でした。この家を相続して住めますか

    自治体によって扱いが違います。農家住宅は都市計画法29条1項2号により許可不要で建てられますが、桜川市の基準では「者の変更」が「用途の変更」とみなされます。新潟市は「使用者の変更は同一用途ではありません(ただし、一般承継人は除きます)」として相続人を除外していますが、横浜市は相続の場合でも「被相続人と共に当該建築物に居住していた者に限る」としています。実家を出て別に暮らしていた子が相続した場合、横浜市の基準では条件を満たしません。必ず所在地の許可権者に確認してください。

    分家住宅を第三者に売れますか

    売買そのものは都市計画法で制限されていません。ですが、買主が住むためには「者の変更」=用途変更の許可(法42条1項ただし書または法43条1項)が必要になります。横浜市の提案基準では「分家人世帯が適法に20年以上にわたり使用しており、かつ用途の変更をする理由があること」、または経過年数の制限なしで「真にやむを得ない理由」があることが要件です。神戸市は「買った人が建築物を建てられない場合や住めない場合があります」と明確に注意喚起しています。

    「やむを得ない理由」とは、どういうものですか

    さいたま市の個別付議基準19は、次を例示しています。破産手続開始決定/事業経営者の死亡・失踪・心身障害/主たる生計維持者の死亡・失踪・心身障害/主たる生計維持者の長期の転勤・転職により家族全員の転居が余儀なくされた場合/家族の長期療養による転居/生活の困窮、事業経営の悪化。同市は「許可等を受けて建築後5年を経過」していることも要件にしています。茨城県の提案基準9は「10年以上適法に使用され」を要件としています。年数も理由も自治体で違います。

    昔は建てられる区域だったと聞いています

    令和4年4月1日から、11号・12号の条例指定区域には災害ハザードエリアを原則として含めないこととされました(都市計画法施行令29条の9・29条の10)。除外されるのは、災害危険区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害警戒区域、浸水被害防止区域、水防法の浸水想定区域のうち一定のものです。以前は区域に入っていた土地が、条例改正で外れている可能性があります。親から聞いた話ではなく、最新の区域図で確認してください。

    畑もついています。宅地にできますか

    市街化調整区域の農地転用は、届出ではなく許可です。農地法4条1項7号・5条1項6号の届出でよいのは「市街化区域内にある農地」だけで、市街化調整区域は原則どおり都道府県知事等の許可が必要です。しかも許可は実体審査なので、不許可になりえます。さらに、農業振興地域の農用地区域(青地)内の農地は原則として転用不許可です。都市計画法と農地法、2つの許可を両方クリアする必要があります。なお、相続した農地については農地法3条の3により、遅滞なく農業委員会への届出が必要です。

    都市計画税はかかりませんよね

    原則としてかかりません。地方税法702条1項の課税対象は原則として市街化区域内の土地・家屋だからです。ただし同項後段に、「市街化調整区域に課さないことが均衡を著しく失すると認められる特別の事情がある場合」には条例で定める区域に課税できる、という例外があります。「必ずゼロ」とは断定できません。固定資産税の課税明細書で確認してください。なお固定資産税は区分に関係なくかかります。

    住宅ローンは組めないのですか

    この記事は、そう書ける一次情報を見つけられませんでした。フラット35のご利用条件にも技術基準にも、市街化調整区域に関する記述はありません。確認できたのは「敷地面積の要件はありません」「原則として一般の道に2m以上接すること」の2点だけです。民間金融機関の審査基準は各行の内部基準で公表されていないため、一般論として断定することもしません。再建築に許可が要る土地は担保評価に影響しうる、という推論は成り立ちますが、それは推論です。実際に借りられるかは金融機関に直接確認してください。

    誰にも引き取ってもらえないとき、国に渡せますか

    市街化調整区域であること自体は、相続土地国庫帰属制度の却下事由でも不承認事由でもありません。法2条3項の却下要件にも法5条1項の不承認要件にも、区域区分に関する記述はないことを確認しました。ただし、法2条3項1号が「建物の存する土地」を却下事由としているため、実家を解体してからでないと申請できません。令和8年7月31日現在で申請5,863件・帰属3,008件・却下85件・不承認96件(速報値)です。解体してから「やっぱり建てたい」は、市街化調整区域では効きません。順番を間違えないでください。

    この記事で確認できなかったこと

    • 「市街化調整区域だから住宅ローンが組めない」の一次情報。住宅金融支援機構(フラット35)の利用条件・技術基準のいずれにも、その趣旨の記述を確認できませんでした。民間金融機関の審査基準は公表されていません。本文では断定していません。
    • 都市計画法29条1項4号〜11号の逐語文。開発許可を要しない例外のうち、都市計画事業・土地区画整理事業・非常災害の応急措置・通常の管理行為等にあたる各号の原文は取得していません。
    • 都市計画法施行令36条1項1号・2号の逐語文。43条許可の基準のうち、排水施設・災害防止(1号)と地区計画等への適合(2号)の原文は取得していません。本文で扱ったのは3号イ〜ホです。
    • 農地法4条6項各号の逐語文。農用地区域内農地が原則不許可であることは確認しましたが、各号の完全な条文は取得できていません。
    • 宅建業法施行令3条の、賃貸借契約に係る対象範囲。同条1項柱書が「貸借の契約以外の契約については」としているため、賃貸の場合は別項で対象が異なりますが、その項は取得していません。
    • 市街化調整区域内の空き家数。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」は全国・都道府県・市区町村を集計軸としており、市街化区域/市街化調整区域の区分による集計は存在しません。全国の空き家数900万2千戸・空き家率13.8%までしか書けません。
    • 市街化調整区域の最新の面積・人口。国土交通省の資料で確認できたのは平成17年3月末現在の数値(面積373万ha・9.9%、人口1,205万人・9.5%)で、20年以上前のものです。最新の都市計画現況調査は統計表がExcel/PDFで提供されており、本記事では中身を確認していません。そのため本文には数値を書いていません。
    • 自治体の条例・審査基準の網羅。本文に挙げたのは福岡市・東京都・神戸市・新潟市・横浜市・さいたま市・桜川市・つくば市・埼玉県・愛知県・茨城県の例です。他の自治体では基準が違います。

    まとめ

    1. 市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」です(都市計画法7条3項)。あなたの実家に落ち度があるのではなく、街の方針としてそう決められています。
    2. 市街化調整区域には「規模が小さいから開発許可が要らない」という例外がありません。29条1項1号の対象に入っていないからです。
    3. 建て替えで効くのは29条ではなく43条です。造成をしなくても、建てること自体に許可が要ります。
    4. ただし「許可を要しない改築」の運用があります。東京都は床面積1.5倍以下、神戸市は敷地・用途を変えないことなど。前提は元の建物が適法であることです。
    5. 「既存宅地だから建てられる」は2006年5月17日で終わっています。今は条例区域か開発審査会かの二択です。
    6. 「50戸連たん」は法律の文言で、実際の戸数は条例が決めます。つくば市は40以上。埼玉県は県の許可権が及ぶ12町村のうち2町しか指定していません。
    7. 令和4年4月1日から、11号・12号の条例区域から災害ハザードエリアが原則除外されました。昔の話ではなく最新の区域図で確認してください。
    8. 分家住宅・農家住宅には属人性があり、「者の変更」が「用途の変更」とみなされます。相続人がそのまま住めるかも自治体で扱いが違います。
    9. 畑がついていると、都市計画法と農地法の2つの許可が要ります。市街化区域なら届出で済むところが、調整区域では許可です。
    10. 42条1項・43条1項の制限は、宅建業者が重要事項として説明すべき法定事項です(宅建業法施行令3条1項1号)。
    11. 住宅ローンについて、公的な一次情報は見つかりませんでした。この記事は書けないことを書いていません。
    12. 国庫帰属は、市街化調整区域であること自体は障害になりません。ただし建物があると申請できず、解体してから「やっぱり建てたい」は効きません。

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  • 実家を売った翌年、親の保険料が上がる|3,000万円控除で税金ゼロでも軽減は外れます

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    実家を売る。譲渡所得税は3,000万円の特別控除で全部消えた。税金はゼロ。よかった──ここで終わらせると、翌年に2度目の請求書が来ます。

    国民健康保険料、後期高齢者医療の保険料、介護保険料。これらは所得税とは別のルールで計算されていて、「3,000万円控除を引く前か、引いた後か」が制度ごとにバラバラです。そして、いちばん効くところが「引く前」で判定されます。

    この記事は、その仕分けを条文と自治体の公式説明で1枚の表にします。結論だけ先に言うと、上がるのは保険料の本体ではなく「軽減」のほうです。7割軽減を受けていた高齢の親世帯が、売った翌年度だけ軽減をまるごと失う。これは3,000万円の枠内におさまっていても起きます。

    結論だけ先に

    • 国保料・後期高齢者医療の「所得割」は、特別控除を引いた後で計算されます。だから3,000万円控除で譲渡所得がゼロなら、所得割は上がりません。
    • ところが「軽減判定(7割・5割・2割軽減、後期高齢者の均等割軽減)は、特別控除を引く前の金額で行われます。複数の自治体・広域連合が公式に明記しています。3,000万円以内でおさまっていても、軽減はまるごと外れます。
    • 住民税が非課税だった世帯は、非課税でなくなる可能性が高いです。判定に使う「合計所得金額」も特別控除前だからです。その結果、高額療養費の低所得区分、高額介護サービス費の低い上限額、介護保険料の第1〜3段階から連鎖して外れます。
    • 一方で、介護保険料の所得段階、介護サービスの自己負担割合、後期高齢者の窓口負担割合(1割→2割・3割)は上がりません。これらは政令に「特別控除額を控除する」と明文があります。ここを混同して不安がる必要はありません。

    条文は2026年8月24日にe-Gov法令検索で、運用は厚生労働省・各自治体・各後期高齢者医療広域連合の公式ページで確認しました。保険料率と軽減の基準は自治体ごと・年度ごとに違います。実行前に必ず、実家と親の住所地の市区町村国保担当・広域連合にご確認ください。

    1. なぜ「税金ゼロ」で終わらないのか

    分離課税の譲渡所得は、他の所得と合算せずに計算します(租税特別措置法31条・32条)。課税長期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額。ここから所得税15%・住民税5%・復興特別所得税がかかります。

    3,000万円の特別控除には2種類あります。

    特例 根拠 使える場面
    居住用財産の3,000万円特別控除 措置法35条1項 親が住んでいる家を、親自身が売る(転居後3年を経過する日の属する年の12月31日まで)
    空き家の3,000万円特別控除 措置法35条3項 相続した実家を売る。昭和56年5月31日以前建築ほか厳しい要件あり。令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上なら1人2,000万円

    ここまでは、多くの記事が書いています

    問題はその先です。社会保険の世界には「所得税・住民税がゼロかどうか」という判定基準がありません。使われているのは「合計所得金額」「総所得金額等」「軽減判定所得」といった別の言葉で、その一つひとつについて、特別控除を引くか引かないかが法令で個別に決められています。

    そして、その扱いは統一されていません。この仕分けが、この記事の全体です。

    2. ★仕分けの全体像(この記事でいちばん重要な表)

    判定される項目 特別控除は 3,000万円控除で所得ゼロのとき
    国保料(税)の所得割 控除後 上がりません
    国保料(税)の軽減判定(7割・5割・2割) 控除前 軽減が外れます
    後期高齢者医療の所得割 控除後 上がりません
    後期高齢者医療の均等割軽減判定 控除前 軽減が外れます
    後期高齢者医療の窓口負担割合(1割/2割/3割) 控除後 上がりません
    介護保険料の所得段階 控除後 上がりません
    介護サービスの自己負担割合(1割/2割/3割) 控除後 上がりません
    住民税非課税かどうかの判定 控除前 非課税でなくなります
    高額療養費・高額介護サービス費の低所得区分 (非課税判定の結果として) 外れます

    この表が示していること

    3,000万円控除を使った場合の打撃は「所得割の急増」でも「負担割合が3割になること」でもありません。そのどちらも起きません。

    起きるのは、軽減と低所得優遇の喪失です。もともと保険料の本体が小さい低所得の高齢者世帯ほど、この影響を強く受けます。「うちは所得が少ないから関係ない」という人ほど、いちばん効きます。

    控除前で判定されるものだけが外れます 国保・後期の所得割 控除後で判定。上がりません 控除後 窓口負担割合 控除後で判定。上がりません 控除後 介護保険料の所得段階 控除後で判定。上がりません 控除後 保険料の軽減判定 控除前で判定。軽減が外れます 控除前 住民税非課税の判定 控除前で判定。非課税でなくなる 控除前 起きるのは、軽減と低所得優遇の喪失です

    3. なぜ制度ごとに扱いが違うのか──条文の構造

    ばらついているのには理由があります。介護保険と後期高齢者医療の政令には、「合計所得金額から特別控除額を控除する」という読替規定がわざわざ置かれているのです。

    介護保険法施行令第22条の2第1項(抜粋)
    租税特別措置法による譲渡所得の特別控除がある場合には、当該合計所得金額から…特別控除額を控除して得た額

    高齢者の医療の確保に関する法律施行令第7条第3項第1号(抜粋)
    当該合計所得金額からこれらの規定の適用により…長期譲渡所得の金額から控除する金額及び…短期譲渡所得の金額から控除する金額の合計額を控除した金額

    読替規定が必要だということは、元の「合計所得金額」は控除前だということです

    もし地方税法上の「合計所得金額」がもともと特別控除後の数字なら、こんな読替規定は要りません。わざわざ「引きなさい」と書いてあるのは、書かなければ引かれないからです。

    実際、地方税法292条1項13号の「合計所得金額」について、複数の自治体が同じ説明をしています。

    自治体 公式ページの記載
    荒川区 「土地・建物等の譲渡所得など、分離課税の所得については特別控除適用前の所得金額で計算します」
    坂戸市 「分離課税に係る長期譲渡所得及び短期譲渡所得については、特別控除前の金額が算入されます」
    摂津市 「分離課税の所得については特別控除適用前の所得金額で計算します」
    熊谷市 「分離課税の所得については特別控除を適用する前の所得金額で計算します」
    阿賀野市 「分離課税の土地建物等の譲渡所得の金額(特別控除適用前)」

    一次情報にあたって、依頼どおりの条文が存在しなかった点

    「総所得金額等」は、しばしば「地方税法292条1項13号の2」と紹介されます。ですが、e-Gov法令検索で確認した現行の292条1項に、その号は存在しません。13号は「合計所得金額」、14号は「恒久的施設」です。

    「総所得金額等」は地方税法292条ではなく、各制度の政令や自治体の説明で定義されている用語です。この記事では、条番号を書かずに整理しています。

    4. 国民健康保険料──所得割は上がらない。軽減が外れる

    国保料(税)は4つの合算です(国民健康保険法施行令29条の7)。

    区分 賦課限度額(現行政令)
    基礎賦課額(医療分) 67万円
    後期高齢者支援金等賦課額 26万円
    介護納付金賦課額(40〜64歳) 17万円
    子ども・子育て支援納付金賦課額(令和8年度から新設) 3万円
    合計 113万円

    所得割は「特別控除後」──自治体が明記しています

    自治体 記載
    横浜市 所得割の「総所得金額等」に含まれる譲渡所得について「特別控除適用後の金額とします」
    長久手市 所得割の算定では譲渡所得は「特別控除後の金額」。根拠として地方税法314条の2第1項を明示
    新座市 計算例で「総所得金額5,500,000円(営業所得2,000,000円、特別控除後の譲渡所得3,500,000円)」として所得割を算出

    つまり、3,000万円控除で譲渡所得がゼロになれば、所得割はまったく増えません。ここは安心してよい部分です。

    ★軽減判定は「特別控除前」──ここが本題

    自治体 記載
    横浜市 軽減判定に用いる「総所得金額等の合算額」の譲渡所得は「特別控除適用前の金額とします」
    長久手市 軽減判定に用いる所得は「特別控除前の額で計算します」
    佐賀市 「減額対象所得は…土地建物等に係る譲渡所得については特別控除を差し引く前の額」
    青森市 「分離課税の土地建物等に係る譲渡所得(長期・短期)がある場合は、特別控除前の金額で判定されます」

    横浜市と長久手市は、同じ1ページの中で「所得割は控除後/軽減判定は控除前」と対比して書いています。誤植ではなく、制度としてそうなっているということです。

    青森市の令和8年度の軽減判定基準を例に置きます。

    軽減割合 判定基準(世帯の軽減判定所得の合計)
    7割軽減 43万円+10万円×(給与所得者等の数−1)以下
    5割軽減 43万円+31万円×被保険者数+10万円×(給与所得者等の数−1)以下
    2割軽減 43万円+57万円×被保険者数+10万円×(給与所得者等の数−1)以下

    7割軽減の基準は43万円です。実家を売った譲渡益は、特別控除前ならまず数百万円から数千万円になります。桁が3つ違います。軽減は確実に外れます。

    同居していない世帯主の所得も入ります

    軽減判定所得は「世帯主と被保険者及び特定同一世帯所属者の所得の合計金額」で、国保に加入していない世帯主(擬制世帯主)の所得も含まれます(青森市の説明。根拠は同市市税条例179条1項1〜3号)。

    親が世帯主で、子が同じ世帯にいる場合、誰が売ったかにかかわらず世帯として判定されます。

    5. 後期高齢者医療──同じ構造です

    保険料率は都道府県ごとの広域連合が条例で2年単位で定めます(高齢者医療確保法104条2項・3項)。同じ売却額でも、住んでいる県で負担が違うのはこのためです。

    項目 全国平均(令和8・9年度)
    一人当たり平均保険料額(医療分) 月額7,989円/年額95,875円
    前年度比 +578円(+7.8%)
    被保険者均等割額(医療分) 年額56,083円
    所得割率(医療分) 10.17%
    賦課限度額(基礎賦課額) 85万円

    賦課限度額は、平成20年度の50万円から令和8年度の85万円まで、段階的に引き上げられてきました。

    ここでも、均等割の軽減判定は「特別控除前」です

    広域連合・自治体 記載
    東京都後期高齢者医療広域連合 「事業専従者控除、譲渡所得の特別控除がある場合は、均等割額の軽減判定額の算出の際に必要経費として算入または控除を行いません」
    千葉県後期高齢者医療広域連合 「専従者控除、譲渡所得の特別控除の税法上の規定は適用されません」
    東大阪市 「軽減判定をするときの総所得金額等には、専従者控除、譲渡所得の特別控除の税法上の規定は適用されません」
    江東区 (所得割について)「保険料の所得割額を計算する際は、分離課税の特別控除後の所得金額を用います」

    ただし、窓口負担割合は上がりません

    負担割合 判定基準 根拠
    3割 課税所得145万円以上 高齢者医療確保法67条1項3号/施行令7条4項
    2割 課税所得28万円以上、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身200万円以上・複数世帯320万円以上 同67条1項2号/施行令7条2項・3項
    1割 上記以外 同67条1項1号

    2割判定に使う「その他の合計所得金額」については、施行令7条3項1号に「特別控除額を控除した金額」と明文があります。3,000万円控除で譲渡所得がゼロになれば、この判定にも乗りません。

    6. 介護保険──ここは全部「控除後」です

    介護保険は、保険料の段階判定も、サービスの自己負担割合も、特別控除後で判定されます。国保の軽減判定とは真逆です。

    江東区の公式説明が、いちばん明快です。

    平成30年度から、土地や建物などに係る譲渡所得は特別控除後の金額が適用されます。(介護保険法施行令の改正による)

    保険料の所得段階は、第9期から13段階になりました

    段階 境界(合計所得金額) 乗率
    1〜3 世帯全員が市町村民税非課税 0.285〜0.685
    6 〜120万円 1.5〜
    9 320万円〜420万円 〜1.7
    10 420万円〜520万円 1.9
    11 520万円〜620万円 2.1
    12 620万円〜720万円 2.3
    13 720万円〜 2.4

    第9期(令和6〜8年度)の全国平均保険料基準額は月額6,225円(第8期6,014円から+3.5%)です。

    サービスの自己負担割合も控除後

    負担割合 合計所得金額 かつ「年金収入+その他の合計所得金額」
    3割 220万円以上 単身340万円以上/2人以上463万円以上
    2割 160万円以上220万円未満 単身280万円以上/2人以上346万円以上
    1割 上記以外 —

    介護保険法施行令22条の2第1項・2項に、特別控除額を差し引く旨の明文があります。3,000万円控除を使えば、介護の負担割合は上がりません。

    ただし、間接的には効きます

    介護保険料の第1〜3段階は「世帯全員が市町村民税非課税」であることが要件です(介護保険法施行令38条1項)。非課税でなくなれば、譲渡所得の金額とは無関係に、第4段階以上へ移ります。

    介護サービスの2割・3割判定でも、市町村民税非課税者は対象から除外されています(施行令22条の2第4項2号)。この「非課税であること」という盾も、同時に外れます。

    7. ★住民税非課税でなくなることが、いちばん広く波及します

    地方税法第295条第3項
    前年の合計所得金額が政令で定める基準に従い当該市町村の条例で定める金額以下である者に対しては、均等割を課することができない。

    判定に使うのは「合計所得金額」です。そして3章で確認したとおり、地方税法上の合計所得金額に算入される分離課税の譲渡所得は「特別控除前」です。

    つまり、3,000万円控除で所得税も住民税もゼロでも、合計所得金額そのものは譲渡益の全額で膨らみます。住民税非課税世帯からは、まず外れます。

    連鎖して外れるもの 内容
    高額療養費の低所得I・II 「世帯全員の市民税が非課税」が要件。外れると一般区分へ
    高額介護サービス費 24,600円(世帯非課税)・15,000円(年金収入等が一定以下)の区分から外れ、上限が上がる
    介護保険料の第1〜3段階 乗率0.285〜0.685から第4段階以上へ
    後期高齢者医療の所得区分 低所得者1・2から一般へ

    この非対称が、この記事のいちばんの結論です

    介護保険料の段階、介護の負担割合、後期高齢者の窓口負担割合は「特別控除後」で判定されるので上がりません。ところが、それらの制度が「非課税であること」を要件に置いている低所得の枠は、非課税判定が「特別控除前」であるために外れます。

    負担割合は1割のまま、でも高額療養費の上限は上がる。この組み合わせが起きます。

    非課税でなくなると、連鎖して外れます 高額療養費の低所得I・II 世帯全員の市民税が非課税が要件 一般区分へ 高額介護サービス費 24,600円・15,000円の区分から 上限が上がる 介護保険料の第1〜3段階 乗率0.285〜0.685から 第4段階へ 後期高齢者の所得区分 低所得者1・2から 一般へ 判定に使うのは合計所得金額。特別控除前の金額です

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    桁が分かったら、この記事の9章に戻ってください。いま軽減を受けているか、住民税非課税かの2つと突き合わせて初めて、「今年売るか、来年売るか」を比べられます。

    8. いつの売却が、いつの負担に効くのか

    保険料は前年(1月〜12月)の所得をもとに当年度分を算定します。したがって時間差はこうなります。

    時期 起きること
    2026年(令和8年)中 実家を売却。譲渡所得が発生
    2027年2〜3月 確定申告。3,000万円控除を適用して所得税はゼロ
    2027年6月ごろ 令和9年度の保険料通知が届く。ここで軽減が外れていることに気づく
    2028年度 前年の所得が元に戻るので、保険料も戻る

    影響するのは原則として1年度分です。これは重要な点で、「ずっと上がりっぱなし」ではありません。ただし、その1年度に医療や介護を多く使う予定があるなら、話は変わります。

    効くのは、原則として1年度分です 2026年中 実家を売却。譲渡所得が発生 2027年2〜3月 確定申告。所得税はゼロ 2027年6月ごろ 令和9年度の保険料通知が届く 2028年度 前年の所得が戻り、保険料も戻る

    後期高齢者の窓口負担割合の適用期間は8月始まり

    鹿児島市は、後期高齢者医療の窓口負担割合について「前年の所得等で判定し、適用期間は8月1日から翌年7月31日まで」と説明しています。保険料の年度(4月〜3月)とはずれています。この記事の6章のとおり、3,000万円控除を使えば負担割合自体は動きませんが、判定の周期は知っておいてください。

    9. 売る前にできること

    順 やること なぜ
    1 いま7割・5割・2割軽減を受けているかを確認する 保険料の通知書か、市区町村の国保担当へ。軽減を受けていない世帯なら、この記事の影響はほとんどありません
    2 いま住民税非課税世帯かを確認する 非課税なら、7章の連鎖が起きます。いちばん影響が大きいのはここです
    3 翌年度に手術・入院・介護施設入所の予定があるかを考える 高額療養費と高額介護サービス費の区分が上がるので、その年に重なると効きます
    4 売却の年をずらせるかを検討する ただし空き家の3,000万円控除には相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日という期限があります(空き家の3,000万円特別控除)。ずらして特例を失うと本末転倒です
    5 誰の名義で売るかを確認する 親の世帯で判定されるのか、子の世帯なのか。擬制世帯主の所得も軽減判定に入ります
    6 市区町村の国保担当と広域連合に、売却予定を伝えて試算を頼む 自治体によって料率も軽減基準も違います。この記事の数字ではなく、あなたの自治体の数字で判断してください
    7 売却額の目安を先に出す 譲渡益がいくらになるかが分からないと、1〜4の判断ができません

    「保険料が上がるから売らない」という結論は、たいてい間違いです

    影響するのは原則1年度分の軽減と低所得区分です。一方、空き家を持ち続ければ、固定資産税・維持費・特定空家のリスクが毎年かかり続けます(空き家の維持費は年間いくら?)。そして空き家の3,000万円控除には期限があります。

    正しい使い方は、「売らない理由」ではなく「売る年を選ぶ材料」にすることです。

    売る前に、この順で確かめます 1 軽減を受けているか 受けていないなら影響はほぼない 2 住民税非課税世帯か 非課税なら連鎖が起きます 3 翌年度の医療・介護 手術・入院・施設入所の予定 4 売却の年をずらせるか ただし控除の期限を失わないこと 5 誰の名義で売るか 擬制世帯主の所得も判定に入る

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    この記事のとおり、影響は原則1年度分です。だからこそ「いつ売るか」を選べると強い。不動産SHOPナカジツは、愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本で自社買取と仲介の両方を扱う会社です。買取なら時期を選びやすく、仲介なら金額が伸びやすい。両方の見立てを1社から聞けます。

    ①上の7県以外の実家は対象外です。②査定額は「売れる価格」ではありません。③売却時期をずらす前に、空き家の3,000万円特別控除の期限を確認してください(空き家の3,000万円特別控除)。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。1年度分の軽減のために3,000万円の控除を失うと、明らかに損です。④このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって査定額が下がることはありません。

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    保険料の試算は、市区町村の国保担当・広域連合・介護保険担当の3か所で無料でできます。査定額を持って行くと話が早く終わります。

    よくある質問

    3,000万円控除で税金がゼロなら、保険料も上がりませんよね

    半分正しく、半分違います。国保料・後期高齢者医療の所得割、介護保険料の所得段階、介護と医療の自己負担割合は上がりません。これらは特別控除後の金額で判定されるからです。ですが、国保と後期高齢者医療の軽減判定と、住民税非課税かどうかの判定は、特別控除を引く前の金額で行われます。7割軽減を受けていた世帯なら、その軽減がまるごと外れます。

    なぜ制度によって扱いが違うのですか

    介護保険法施行令と高齢者医療確保法施行令には、「合計所得金額から特別控除額を控除する」という読替規定が置かれているからです。逆に言えば、この読替規定が必要だということ自体が、元の「合計所得金額」が特別控除前だという証拠です。軽減判定や住民税非課税判定には、この読替が及んでいません。

    どのくらい上がるのですか

    自治体によって違うので、金額は書けません。目安として、青森市の令和8年度の軽減判定は7割軽減が43万円以下、5割軽減が43万円+31万円×被保険者数以下、2割軽減が43万円+57万円×被保険者数以下です。実家の譲渡益は、特別控除前なら通常この基準を桁違いに超えます。「軽減が減る」ではなく「軽減がなくなる」と考えてください。いま受けている軽減の額は、保険料通知書に書かれています。

    いつの保険料に反映されますか

    売った年の翌年度です。保険料は前年1〜12月の所得をもとに算定されるので、2026年に売れば2027年3月に確定申告し、2027年6月ごろ届く令和9年度の通知で反映されます。影響するのは原則としてこの1年度分だけで、翌々年度には戻ります。

    医療費の窓口負担が3割になりますか

    3,000万円控除を使って譲渡所得がゼロになるなら、なりません。後期高齢者医療の3割判定は課税所得145万円以上、2割判定は課税所得28万円以上かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身200万円・複数世帯320万円以上ですが、この「その他の合計所得金額」には施行令7条3項1号に特別控除額を控除する明文があります。ただし、高額療養費の「低所得I・II」区分からは、住民税非課税でなくなることによって外れます。窓口の割合は変わらず、上限額だけが上がるという形です。

    介護サービスの自己負担も上がりますか

    割合そのものは上がりません。介護保険法施行令22条の2第1項・2項に、特別控除額を差し引く明文があります。ただし、高額介護サービス費の上限額の区分は、住民税非課税でなくなることで上がります。また、介護保険料の第1〜3段階も「世帯全員が市町村民税非課税」が要件なので、ここから外れます。

    親が売主です。同居している私の所得も関係しますか

    軽減判定は世帯単位です。青森市の説明では、軽減判定所得は「世帯主と被保険者及び特定同一世帯所属者の所得の合計金額」で、国保に加入していない世帯主(擬制世帯主)の所得も含まれます。逆に言えば、世帯を分けているかどうかで結果が変わりえます。ただし、保険料のために世帯分離をするのが適切かは別問題です。市区町村の窓口で実情を伝えて相談してください。

    相続した空き家を売る場合も同じですか

    同じ構造です。空き家の3,000万円特別控除(措置法35条3項)も居住用財産の3,000万円特別控除(同35条1項)も、租税特別措置法による特別控除である点は変わりません。売った本人(相続人)の翌年度の保険料と、その世帯の住民税非課税判定に効きます。相続人が国保や後期高齢者医療に加入していて、いま軽減を受けているなら、確認する価値があります。

    相続人が3人いる場合はどうなりますか

    令和6年1月1日以後の譲渡で、被相続人居住用家屋等を取得した相続人が3人以上のときは、1人あたりの控除額が2,000万円に減ります(措置法35条)。控除額が減れば、そのぶん所得税・住民税の課税所得が出て、所得割にも効いてきます。ただしこの記事の主題である軽減判定は、もともと控除前で判定されるので、控除額が3,000万円でも2,000万円でも結果は同じです。

    売る年をずらせば避けられますか

    理屈のうえでは、その年度の負担が変わります。ただし、空き家の3,000万円特別控除には「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という期限があり、制度自体の適用期限も令和9年12月31日までです。1年度分の軽減を守るために3,000万円の控除を失うなら、明らかに損です。金額を並べて比べてください。

    どこに聞けばいちばん確実ですか

    3か所です。①国民健康保険料(税)=実家ではなく本人が住んでいる市区町村の国保担当。②後期高齢者医療=都道府県の広域連合(窓口は市区町村)。③介護保険=市区町村の介護保険担当。「土地を売る予定があり、3,000万円の特別控除を使う見込みです。翌年度の保険料と軽減判定にどう反映されますか」と聞けば通じます。料率も軽減基準も自治体ごとに違うので、この記事の数字ではなく、あなたの自治体の数字で判断してください。

    この記事で確認できなかったこと

    • 住民税上の「総所得金額等」が特別控除前か後か。住民税の文脈では「前」と説明する自治体(坂戸市・阿賀野市・荒川区)があり、国保料の文脈では「後」と説明する自治体(横浜市)があります。文脈によって別概念として使い分けられていると読めますが、それを明示した一次情報は見つけられませんでした。本文では、この語の扱いを断定していません。
    • 地方税法附則34条4項・35条5項の原文。分離課税の譲渡所得が住民税の課税標準にどう入るかの直接の根拠条文ですが、e-Gov法令検索から附則を取得できず、原文を確認していません。本文の整理は、条文の引用構造と自治体の公式説明にもとづくものです。
    • 後期高齢者医療の3割判定に使う「課税所得」が特別控除後であることの、条文レベルでの最終確認。引用構造からは控除後と読めますが、上記の附則が未確認のため、断定を避けています。
    • 基準収入額適用申請の「収入の額」に、不動産の売却代金がどう算入されるか。譲渡の場合の「収入」は売却価額そのものになりうるため、所得は特別控除でゼロでも収入基準では救済されない、という組み合わせがありうると考えられます。ただし、収入の額の算定方法を定める厚生労働省令を精査していないため、確定できていません。この点は必ず窓口で確認してください。
    • 令和8年8月からの高額療養費の見直し後の区分。本文では上限額の具体的な金額を書いていません。
    • 自治体ごとの保険料率・軽減基準の網羅。本文に挙げたのは青森市・佐賀市・横浜市・長久手市・新座市・江東区・東京都および千葉県の広域連合・東大阪市・鹿児島市・さいたま市の例です。他の自治体では基準が違います。
    • 世帯分離が保険料に与える影響の一般的な整理。制度上の可否と、実態と異なる届出の適否は別問題であり、本記事では踏み込んでいません。

    まとめ

    1. 「3,000万円控除で税金がゼロだから安心」は、半分しか正しくありません。社会保険の世界には別の判定基準があります。
    2. 上がらないもの:国保・後期高齢者医療の所得割、介護保険料の所得段階、介護と医療の自己負担割合。いずれも特別控除後で判定されます。
    3. 外れるもの:国保の7割・5割・2割軽減、後期高齢者医療の均等割軽減。どちらも特別控除を引く前の金額で判定されます。
    4. 連鎖するもの:住民税非課税でなくなることで、高額療養費の低所得区分・高額介護サービス費の低い上限額・介護保険料の第1〜3段階から外れます。
    5. 根拠の構造:介護保険法施行令22条の2と高齢者医療確保法施行令7条3項に「特別控除額を控除する」という読替規定がある。この読替がない判定は、控除前で行われます。
    6. いちばん影響を受けるのは、もともと保険料が低い世帯です。「うちは所得が少ないから関係ない」という人ほど効きます。
    7. 影響するのは原則1年度分です。翌々年度には戻ります。
    8. 売る年をずらす前に、空き家の3,000万円控除の期限を確認してください。1年度分の軽減のために3,000万円の控除を失うのは損です。
    9. 料率も軽減基準も自治体ごとに違います。市区町村の国保担当・広域連合・介護保険担当の3か所に、売却予定を伝えて試算を頼んでください。

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  • 実家を相続したら相続税はかかる?|課税は10.4%、それでも申告が要る人がいる

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    親が亡くなって、実家を相続することになった。まっさきに頭をよぎるのが「相続税、いくら取られるんだろう」です。そして多くの場合、この心配は取り越し苦労で終わります。

    令和6年に亡くなった1,605,378人のうち、相続税の申告書が出されたのは166,730人。課税割合は10.4%です。10人のうち9人には、相続税はかかりません。ですが、この数字を知って安心した人が、いちばん危ない罠にはまります。

    その罠とは、「特例を使って税額がゼロになった」場合、申告書を出さなければ特例そのものが適用されないという仕組みです。「そもそも基礎控除以下だからゼロ」と「特例を使ってゼロ」は、まったく違う扱いを受けます。この記事は、その境目を条文で示します。

    結論だけ先に

    • 基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数(相続税法15条1項)。相続人2人なら4,200万円。正味の遺産額がこれ以下なら、相続税も申告も不要です。
    • 課税割合は10.4%(令和6年分)。平成26年は4.4%でした。平成27年に基礎控除が4割縮小されて8.0%に倍増し、そこから毎年じわじわ上がっています。ただし首都圏(東京国税局管内)は16.2%。
    • 小規模宅地等の特例は330㎡まで80%減額(措置法69条の4)。ただし、この特例を使って税額がゼロになった人は、申告書を出さないと特例が適用されません(同条7項)。配偶者の税額軽減も同じです(相続税法19条の2第3項)。
    • 期限は10か月。相続の開始を知った日の翌日から起算します(相続税法27条1項)。相続登記の3年より、はるかに短い期限です。

    条文は2026年8月24日にe-Gov法令検索で、統計は国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(令和7年12月公表)と財務省資料で確認しました。税制の要件は年度で変わります。実際の申告にあたっては、所轄税務署または税理士にご確認ください。

    1. かかるかどうかの境目は、基礎控除ひとつ

    相続税法第15条第1項
    相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額から、三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額……を控除する。

    法定相続人の数 計算 基礎控除額 典型例
    1人 3,000+600×1 3,600万円 配偶者なし・子1人
    2人 3,000+600×2 4,200万円 配偶者+子1人/子2人
    3人 3,000+600×3 4,800万円 配偶者+子2人/子3人
    4人 3,000+600×4 5,400万円 配偶者+子3人/子4人
    5人 3,000+600×5 6,000万円 —
    6人 3,000+600×6 6,600万円 —

    「法定相続人の数」の数え方に、2つのくせがある

    ひとつめ。相続放棄した人も頭数に入ります。相続税法15条2項は「相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数」と定めています。つまり、兄が相続放棄しても基礎控除は減りません。

    ふたつめ。養子は人数に上限があります。被相続人に実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人までしか算入できません(同条2項1号・2号)。ただし、特別養子縁組による養子、配偶者の実子で被相続人の養子となった者、代襲相続人となった直系卑属は「実子とみなされ」、この人数制限を受けません(同条3項)。

    生命保険金・退職手当金には、基礎控除とは別枠がある

    相続人が受け取った生命保険金・死亡退職金には、それぞれ500万円×相続人の数の非課税枠があります(相続税法12条1項6号・7号)。基礎控除とは別枠です。相続人2人なら、保険金1,000万円までは課税価格に入りません。

    条番号にご注意ください

    一般に「相続税法12条1項5号」と紹介されることが多いのですが、e-Gov法令検索で確認した現行条文では、保険金は6号、退職手当金等は7号です。5号は地方公共団体の共済制度に基づく給付金受給権にあたります。

    2. 実際、何人にかかっているのか

    不安の大きさと実際の確率は、しばしばずれます。国税庁の最新統計(令和6年分・令和7年12月公表)を置きます。

    項目 令和5年分 令和6年分
    被相続人数(死亡者数) 1,576,016人 1,605,378人
    申告書の提出に係る被相続人数 155,740人 166,730人
    課税割合 9.9% 10.4%
    被相続人1人当たりの課税価格 — 1億4,025万円
    被相続人1人当たりの税額 1,930万円 1,946万円

    課税割合10.4%。残る約89.6%、およそ143万8千人については、相続税の申告書が出ていません。

    平成27年に、境目が動いた

    年分 課税件数割合 できごと
    平成25年 4.3%
    平成26年 4.4% 基礎控除引下げ前の最後の年
    平成27年 8.0% 基礎控除が5,000万円+1,000万円×人数 → 3,000万円+600万円×人数へ
    平成30年 8.5%
    令和3年 9.3%
    令和5年 9.9%
    令和6年 10.4%

    昔は100人に4人、今は100人に10人。平成27年に境目が4割下がって倍以上になりましたが、それでも9割近い人にはかかりません。「昔は他人事だったが今は違う」と煽られることがありますが、事実は「4%が10%になった」です。

    平成27年に、境目が動きました 平成25年 4.3% 平成26年 4.4% 平成27年 8.0% 平成30年 8.5% 令和3年 9.3% 令和5年 9.9% 令和6年 10.4% 平成27年に基礎控除が4割下がりました

    ただし、住んでいる場所で変わる

    項目 全国 東京国税局管内
    被相続人数 1,605,378人 328,773人
    申告書の提出に係る被相続人数 166,730人 53,379人
    課税割合 10.4% 16.2%

    東京国税局の管轄は東京都・神奈川県・千葉県・山梨県です。同じ「実家+預貯金」でも、土地の評価が高い地域では結果が変わります。実家がこの地域にあるなら、平均値ではなく自分の数字で確かめる価値があります。

    住んでいる場所で、割合が変わります 全国 被相続人 1,605,378人 申告 166,730人 課税割合 10.4% (令和6年分) 東京国税局管内 被相続人 328,773人 申告 53,379人 課税割合 16.2% (令和6年分) 東京国税局の管轄は東京・神奈川・千葉・山梨です

    3. 実家はいくらと評価されるのか

    相続税の計算に使うのは、売買価格でも、不動産会社の査定額でもありません。相続税評価額という、独自の計算方法で出した数字です。

    家屋は、固定資産税の納税通知書に書いてある数字そのまま

    国税庁タックスアンサーNo.4602は、家屋の評価について「固定資産税評価額に1.0を乗じて計算した金額」としています。つまり、毎年春に届く固定資産税の課税明細書の「価格(評価額)」を、そのまま使います。築年数の古い実家なら、想像よりずっと小さい数字であることが多いはずです。

    土地は、路線価方式または倍率方式

    方式 どんな土地に使うか 計算
    路線価方式 路線価が定められている地域 路線価(道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額・千円単位)×各種補正率×地積
    倍率方式 路線価が定められていない地域 固定資産税評価額×一定の倍率

    路線価図・評価倍率表は、国税庁の「財産評価基準書」で誰でも無料で閲覧できます。年分を選び、都道府県を選び、路線価図または評価倍率表へ進みます。つまり、実家の土地の評価額のおおよそは、誰にも頼まずに今日確かめられます。

    「路線価は公示価格の80%」と書きませんでした

    この記事では、よく言われる「相続税評価額は市場価格の8割程度」という数字を使っていません。国税庁の路線価公表ページ、財産評価基準書、タックスアンサーNo.4602/4604/4606、財務省の相続税関係ページのいずれにも、この水準の記載を見つけられなかったからです。

    一次情報で裏が取れたのは、総務省が「固定資産税の標準宅地の価格は地価公示価格等の7割を目途」と説明している点だけです。相続税評価額が市場価格より低くなるのは通常ですが、その比率を断定して書くことはしません。

    相続財産の35%は、土地と家屋

    種類 金額(令和6年分) 構成比
    現金・預貯金等 85,602億円 34.9%
    土地 74,074億円 30.2%
    有価証券 43,676億円 17.8%
    その他 30,162億円 12.3%
    家屋 11,901億円 4.8%
    (土地+家屋) 85,975億円 35.0%

    平成27年分は土地38.0%+家屋5.3%で43.3%でしたから、比率としては下がっています。それでも実家は、相続財産のなかで最大級の塊です。しかも預金と違って、自分では金額が分かりません。だから不安になります。この記事の3章までで、その金額はもう出せます。

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    路線価は出せました。次は「売ったらいくらか」を、匿名のまま桁だけ確かめる

    この記事の3章で出したのは相続税評価額で、売れる価格ではありません。ラクウル(株式会社ネクサスプロパティマネジメント/国土交通大臣(1)第10311号)は、匿名のまま桁を確かめられるAI査定と、連絡先を入れて申し込む査定の両方を用意しています。相続税がかかるかどうかを判断する段階では、まず桁が分かれば十分なことも多いはずです。

    ①匿名のAI査定は「桁を確かめる」ためのものです。実額を知るには連絡先を入れて申し込む必要があり、そのときは担当者から電話が入ります。当サイトは、匿名査定だけで完結させても構わないと考えています。②査定額は「売れる価格」ではありません。③相続税の申告に使うのは路線価であって、査定額ではありません。2つの数字を混ぜないでください。④このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって査定額が下がることはありません。

    匿名のAI査定で桁を確かめる/査定を申し込む

    この記事の4章と5章は、この査定額ではなく路線価で読み進めてください。混ぜると結論が変わります。

    4. 小規模宅地等の特例──評価額が2割になる

    実家の敷地には、評価額を8割減らす特例があります。これがあるかないかで、結論はまるごと変わります。

    宅地等の区分 限度面積 減額割合
    特定事業用宅地等 400㎡ 80%
    特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 80%
    特定居住用宅地等(=実家の敷地) 330㎡ 80%
    貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

    路線価20万円/㎡・200㎡の土地なら、4,000万円が800万円になります。これが「基礎控除以下になる」典型パターンです。

    実家の敷地は、評価が2割になります 3,200万円 評価額の差 特例なし 4,000万円 特例あり 800万円 路線価20万円/㎡・200㎡の土地の場合

    ただし、誰が取得するかで要件が変わる

    取得者 要件の骨格
    配偶者 追加要件なし。取得するだけで適用されます(措法69条の4第3項2号イ)
    同居親族 相続開始の直前に被相続人と同じ建物に居住しており、相続開始時から申告期限まで引き続き居住し、かつその宅地を保有していること(同ロ)
    いわゆる「家なき子」 被相続人に配偶者がなく、同居していた相続人もいない場合に限り適用。相続開始前3年以内に、自己・配偶者・3親等内の親族・特別の関係のある法人が所有する家屋に居住したことがない、等(同ハ)。国税庁は6つの要件を挙げています

    「家なき子」は、実家を出て賃貸に住み続けてきた子のための規定です。ただし入口が厳しく、被相続人に配偶者がいる時点で使えません。また「3親等内の親族が所有する家屋」には、親や兄弟の持ち家も含まれます。該当するかどうかは、必ず税理士か税務署で確認してください。

    配偶者には、もうひとつ大きな軽減がある

    配偶者が実際に取得した正味の遺産額が、①1億6,000万円と②配偶者の法定相続分相当額の、いずれか多い金額までは、配偶者に相続税はかかりません(相続税法19条の2第1項)。実家+預貯金の規模なら、配偶者が取得する分にはほぼかからない、という結論になりがちです。

    5. この記事の核──「税額ゼロ」でも申告が必要な場合

    ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

    まず原則から。相続税法27条1項は、課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合で、かつ一定の控除を適用しても納付すべき相続税額があるときに申告義務が生じる、としています。国税庁も「基礎控除額以内であれば申告も納税も必要ありません」と明記しています。

    ところが、27条1項が挙げる控除の中に、特例が入っていない

    27条1項が列挙するのは「第15条から第19条まで」等であって、19条の2(配偶者の税額軽減)は入っていません。そして小規模宅地等の特例には、次の条文があります。

    租税特別措置法第69条の4第7項
    第一項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする者の当該相続又は遺贈に係る相続税法第二十七条又は第二十九条の規定による申告書に第一項の規定の適用を受けようとする旨を記載し、同項の規定による計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。

    相続税法第19条の2第3項(配偶者の税額軽減)
    この軽減は、申告書(更正請求書を含む)に、適用を受ける旨および税額の計算に関する明細を記載した書類等の添付がある場合に限り適用する。

    「特例を使ってゼロ」は、申告書を出して初めてゼロになります

    出さなければ、ゼロではありません。特例が適用されないまま課税価格が計算され、基礎控除を超えていれば相続税が発生します。しかも期限を過ぎているので、無申告加算税と延滞税が上乗せされます。

    2つのケースを並べます

    そもそも基礎控除以下 特例を使ってゼロ
    例 実家1,500万円+預貯金1,500万円=3,000万円/相続人2人(基礎控除4,200万円) 実家の土地5,000万円+預貯金1,000万円=6,000万円/相続人2人(基礎控除4,200万円)/小規模宅地等の特例で土地を1,000万円に圧縮 → 2,000万円
    申告 不要 必要
    出さないとどうなるか 何も起きません 特例が適用されず、課税価格6,000万円で計算されます。基礎控除4,200万円を超えるので相続税が発生し、加えて無申告加算税・延滞税がかかります

    申告が必要になるケースの一覧

    状況 税額 申告 根拠
    正味の遺産額がそもそも基礎控除以下 0円 不要 相続税法27条1項
    小規模宅地等の特例を使って税額0円になった 0円 必要 措法69条の4第7項
    配偶者の税額軽減を使って税額0円になった 0円 必要 相続税法19条の2第3項
    特定計画山林の特例・農地の納税猶予など、他の申告要件付き特例を使った 0円 必要 各特例の申告要件規定
    遺産が未分割のまま期限を迎えた(基礎控除超) 法定相続分で計算した額 必要(+分割見込書) 相続税法55条ほか
    基礎控除を超え、特例なしでも税額が出る あり 必要 相続税法27条1項
    同じ「税額ゼロ」でも、扱いが違います 税額ゼロは、特例を使った結果ですか はい 申告が必要 出さないと消えます いいえ 申告も納税も不要 基礎控除以下なら

    6. 期限は10か月。分割がまとまらないときの逃げ道

    相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、申告書を提出しなければなりません(相続税法27条1項)。期限日が土日祝の場合はその翌日です。納付の期限も同じ日です(相続税法33条)。

    提出先は「被相続人の住所地」の税務署です

    相続人の住所地ではありません。国税庁もこの点を明示的に注意しています。実家が遠方にあり、相続人が都市部に住んでいる場合、申告書を出しに行く先は実家側の税務署です。郵送や電子申告も可能ですが、窓口相談を考えている方は移動時間を見込んでおいてください。

    10か月で分割がまとまらないとき

    兄弟の話し合いがつかない、というのは珍しくありません。その場合でも期限は動きません。未分割の財産は法定相続分で取得したものとして申告します(相続税法55条)。この段階では、小規模宅地等の特例も配偶者の税額軽減も使えません。いったん高い税額で納めることになります。

    ただし、逃げ道が用意されています。申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、申告期限から3年以内に分割された場合に特例を適用でき、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をすることで払い過ぎた税金が戻ります(措法69条の4第4項、相続税法19条の2第2項)。

    3年以内に分割できないやむを得ない事情がある場合は、税務署長の承認申請により、事情が消滅した日の翌日から4か月以内の分割まで延長できます。

    納税資金がないとき──延納と物納

    延納(相続税法38条) 物納(相続税法41条)
    要件 相続税額が10万円超/金銭で納付することを困難とする事由がある/担保を提供(延納税額100万円以下かつ期間3年以下なら不要) 延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある/日本国内にある相続財産で、定められた順位による/管理処分不適格財産でない
    期間 不動産等の割合75%以上なら不動産等に対応する部分が最長20年/50%未満なら最長5年 —
    順位 — 第1順位=不動産・船舶・国債・地方債・上場株式等/第2順位=非上場株式等/第3順位=動産
    手続 どちらも「納期限まで(=原則、申告期限までに)」申請書を提出して許可を受ける必要があります。後から言っても間に合いません

    7. 税率と、申告しなかった場合の代償

    税率は法定相続分で計算した金額に対してかかる

    相続税の総額は、課税遺産総額を法定相続人が法定相続分に応じて取得したものと仮定した金額に税率を適用して計算します(相続税法16条)。実際の取得割合ではありません。

    法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
    1,000万円以下 10% —
    1,000万円超 3,000万円以下 15% 50万円
    3,000万円超 5,000万円以下 20% 200万円
    5,000万円超 1億円以下 30% 700万円
    1億円超 2億円以下 40% 1,700万円
    2億円超 3億円以下 45% 2,700万円
    3億円超 6億円以下 50% 4,200万円
    6億円超 55% 7,200万円

    そして、2割加算があります。一親等の血族および配偶者以外の者が取得した場合、その者の相続税額に20%が加算されます(相続税法18条)。兄弟姉妹・甥姪・孫(代襲相続人でない孫養子を含む)が該当します。「孫に直接相続させれば一代飛ばせる」という話には、この加算が付いてきます。

    申告しなかった場合

    区分 税率 根拠
    無申告加算税(原則) 15% 国税通則法66条1項
     うち50万円を超える部分 +5%(=20%) 同66条2項
     うち300万円を超える部分 +15%(=30%) 同66条3項
     調査の通知前に自主的に期限後申告した場合 5% 同66条8項
     法定申告期限から1か月以内の期限後申告で一定要件を満たす場合 不適用(0%) 同66条9項
    重加算税(隠蔽・仮装+無申告) 40% 同68条2項
    延滞税(令和8年) 納期限の翌日から2か月まで2.8%/それ以後9.1% 同60条・国税庁

    注目していただきたいのは、下から3行目です。調査の通知が来る前に自分から出せば5%、法定申告期限から1か月以内なら一定要件のもとで0%。「気づいた時点で自分から出す」ことに、はっきりした金銭的な差が付けられています。

    「無申告だから見つからない」は成り立ちません

    項目 令和6事務年度
    相続税の実地調査の件数 9,512件
    うち申告漏れ等の非違件数 7,826件
    非違割合 82.3%
    実地調査1件当たりの追徴税額 867万円
    無申告事案に対する実地調査 650件(うち非違562件・追徴142億円)
    簡易な接触(電話・書面での問い合わせ) 21,969件(追徴138億円)

    実地調査に入られると、10件中8件超で非違が見つかっています。そして無申告事案だけで年650件の実地調査が行われ、「簡易な接触」は年間2万2千件近く。これが「相続についてのお尋ね」が届くケースに対応します。

    自分で判定できる無料ツールがあります

    国税庁は「相続税の申告要否判定コーナー」をウェブ上で公開しています。財産の金額を入力していくと、申告が必要かどうかを判定できます。また「相続税の申告要否検討表」は、「相続についてのお尋ね」が届いたときの提出に代えることもできる書式です。どちらも無料です。

    8. 売るなら──2つの特例は選択適用

    相続した実家を売る場合、譲渡所得税の場面で使える特例が2つあります。ただし、この2つは併用できません。

    取得費加算の特例(措法39条) 空き家の3,000万円特別控除(措法35条3項)
    使える人 相続税を納めた人だけ 相続税の有無を問わない
    内容 譲渡所得の計算上、取得費に相続税額のうち譲渡資産に対応する部分を加算 譲渡所得から最高3,000万円を控除(令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上なら2,000万円)
    期限 相続開始日から3年10か月(申告期限10か月+3年) 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで/制度自体は令和9年12月31日までの譲渡
    主な要件 相続税額があること 昭和56年5月31日以前に建築/区分所有建物登記がされていない/相続開始の直前に被相続人以外に居住者がいなかった/相続の時から譲渡の時まで事業・貸付け・居住の用に供されていない

    併用できない根拠は、措法35条3項の柱書きにあります。対象となる譲渡から「第三十九条の規定の適用を受けるもの及びその譲渡の対価の額が一億円を超えるもの」を除く、と明記されています。除外規定は35条3項の側に置かれていて、39条の側にはありません。

    整理するとこうなります。相続税を払った人は、取得費加算と空き家特例のどちらが有利かを比べて選ぶ。相続税がかからなかった人(=約9割)は、取得費加算は最初から使えないので、空き家特例だけを検討することになります。

    9. 今日からできること

    順 やること どこで
    1 法定相続人の数を確定して基礎控除額を出す(相続放棄した人も数える/養子は1人または2人まで) 戸籍を集める。相続登記でも必要になります
    2 家屋の評価額を確認する 固定資産税の課税明細書の「価格(評価額)」そのまま
    3 土地の路線価を調べる 国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」(無料)
    4 預貯金・有価証券・生命保険金(500万円×相続人の数を超える部分)を足し、借入金・葬式費用を引く 残高証明書を金融機関へ
    5 合計が基礎控除以下なら、相続税なし・申告なし これが約9割
    6 超えるなら、小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減を検討。ゼロになる場合でも10か月以内に申告書を出す 税理士または所轄税務署
    7 分割がまとまらないなら、法定相続分で申告+「申告期限後3年以内の分割見込書」 被相続人の住所地の税務署
    8 納税資金がないなら、延納・物納の申請は申告期限までに 同上
    9 迷ったら、国税庁「相続税の申告要否判定コーナー」で自分で判定する 無料・ウェブ上

    相続税評価額と、売れる価格は別物です

    3章で出した金額は税金の計算のための数字であって、その値段で売れるという意味ではありません。逆に、査定額もまた「売れる価格」ではなく、不動産会社の見立てです。

    相続税がかかるかどうかは路線価で、売るかどうかは実勢価格で。2つの数字は別々に確かめてください。

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    10か月の期限があるなら、査定は早いほうが選択肢が残ります

    納税資金が足りないとき、延納も物納も「申告期限までに申請」が要件です。実家を売って納税資金にあてる場合も、売却には数か月かかります。不動産SHOPナカジツは、愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本で自社買取と仲介の両方を扱う会社です。「いくらで、いつまでに現金になるか」を早い段階で知っておくと、10か月の使い方が変わります。

    ①上の7県以外の実家は対象外です。②査定額は「売れる価格」ではありません。③相続人が複数いるなら、査定を頼む前に「売る方針でよいか」を全員で確認してください。遺産分割がまとまっていない段階で1人が動くと、話がこじれます。④売ると譲渡所得税が別にかかります(相続した実家を売ったときの譲渡所得税)。相続税だけで判断しないでください。⑤このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって査定額が下がることはありません。

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    相続税がかかるかどうかの判定は、この記事の1〜5章で自分でできます。先にそれを終えてから査定を頼むと、話が早く終わります。

    よくある質問

    実家を相続したら、相続税は必ずかかりますか

    かかりません。令和6年分の課税割合は10.4%で、亡くなった方1,605,378人のうち申告書が出されたのは166,730人です。基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、相続人2人なら4,200万円。実家(土地+家屋の相続税評価額)と預貯金などを足した正味の遺産額がこれ以下なら、相続税も申告も不要です。ただし首都圏(東京国税局管内)の課税割合は16.2%です。

    実家の評価額はどうやって調べますか

    家屋は、固定資産税の課税明細書の「価格(評価額)」をそのまま使います(財産評価基本通達89・国税庁No.4602)。土地は路線価方式か倍率方式です。国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で路線価(千円単位)を調べ、補正率と地積を掛けます。路線価が定められていない地域なら、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けます。どちらも無料で、今日確認できます。

    相続放棄した兄弟がいます。基礎控除は減りますか

    減りません。相続税法15条2項は、相続の放棄があった場合には「その放棄がなかったものとした場合の相続人の数」をいうと定めています。放棄した人も頭数に入ります。なお養子については人数制限があり、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか算入できません。ただし特別養子縁組による養子や、代襲相続人となった直系卑属は実子とみなされ、この制限を受けません。

    小規模宅地等の特例で税額がゼロになりました。申告は要りませんか

    必要です。ここがいちばんの落とし穴です。租税特別措置法69条の4第7項は、この特例が「申告書に適用を受けようとする旨を記載し、明細書等の添付がある場合に限り、適用する」と定めています。出さなければ特例は適用されず、圧縮前の評価額で計算されます。基礎控除を超えていれば相続税が発生し、期限を過ぎている分、無申告加算税と延滞税も付きます。配偶者の税額軽減も同じ構造です(相続税法19条の2第3項)。

    「そもそも基礎控除以下」と「特例を使ってゼロ」は何が違うのですか

    申告の要否がまったく違います。前者は相続税法27条1項により申告義務が生じないので、何もしなくて構いません。後者は申告書を出して初めてゼロになります。たとえば実家の土地5,000万円+預貯金1,000万円=6,000万円、相続人2人(基礎控除4,200万円)というケースで、小規模宅地等の特例により土地を1,000万円に圧縮して2,000万円になった場合。申告しなければ、課税価格は6,000万円のままです。

    期限の10か月に間に合いそうにありません

    期限は動きません。相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月です(相続税法27条1項)。遺産分割がまとまらない場合は、法定相続分で取得したものとして申告します(相続税法55条)。この段階では特例が使えないので、いったん高い税額になります。ただし「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、3年以内に分割できたときに特例を適用でき、分割の日の翌日から4か月以内の更正の請求で税金が戻ります。

    申告書はどこの税務署に出しますか

    被相続人(亡くなった方)の住所地を所轄する税務署です。相続人の住所地ではありません。国税庁もこの点を明示的に注意しています。実家が遠方で、相続人が都市部に住んでいるケースでは間違えやすいところです。郵送・電子申告も可能ですが、窓口で相談したい場合は移動時間を見込んでください。

    納税するお金がありません

    延納と物納があります。延納は相続税額が10万円を超え、金銭納付が困難な事由がある場合に使えます(延納税額100万円以下かつ期間3年以下なら担保も不要)。物納は「延納によっても金銭で納付することを困難とする事由」が要件で、第1順位は不動産です。どちらも「納期限まで(=原則、申告期限までに)」申請書を提出して許可を受ける必要があります。後から言っても間に合いません。実家を売って納税資金にあてる選択肢も、早い段階で並べておいてください。

    申告しないままでいると、どうなりますか

    無申告加算税は原則15%、50万円超の部分は20%、300万円超の部分は30%(国税通則法66条)。隠蔽・仮装があれば重加算税40%(同68条2項)。延滞税は令和8年で納期限の翌日から2か月まで2.8%、それ以後9.1%です。令和6事務年度の実地調査は9,512件で、非違割合は82.3%、1件当たりの追徴税額は867万円。無申告事案だけで650件の実地調査が行われています。なお、調査の通知前に自主的に期限後申告すれば5%、法定申告期限から1か月以内なら一定要件のもとで0%です。気づいた時点で動くほうが、はっきり安くなります。

    実家を売るとき、相続税を払っていると何か有利ですか

    取得費加算の特例(措法39条)が使えます。譲渡所得の計算上、取得費に相続税額のうち譲渡資産に対応する部分を加算できる制度で、期限は相続開始日から3年10か月です。ただし、空き家の3,000万円特別控除とは併用できません。措法35条3項の柱書きが「第三十九条の規定の適用を受けるもの」を対象から除いているためです。どちらが有利かを比べて選ぶことになります。

    相続税がかからなかった場合、実家の売却で使える特例はありますか

    空き家の3,000万円特別控除(措法35条3項)です。取得費加算は相続税を納めた人しか使えないので、約9割の方はこちらだけを検討することになります。要件は厳しく、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、区分所有建物登記がされていないこと、相続開始の直前に被相続人以外に居住者がいなかったこと、相続の時から譲渡の時まで事業・貸付け・居住の用に供されていないことなど。期限は相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ制度自体が令和9年12月31日までの譲渡が対象です。

    この記事で確認できなかったこと

    • 「路線価は公示価格のおおむね80%」という水準。国税庁の路線価公表ページ、財産評価基準書、タックスアンサーNo.4602/4604/4606、財務省の相続税関係ページのいずれにも記載を見つけられませんでした。裏が取れたのは、総務省が「固定資産税の標準宅地の価格は地価公示価格等の7割を目途」としている点のみです。本文では80%という数字を使っていません。
    • 令和5年分の課税価格合計・1人当たり課税価格。PDFから直接読み取れず、令和6年分の実数と対前年比から逆算した値しか得られなかったため、本文に載せていません。
    • 令和6年分の相続財産の構成比(%)そのもの。PDFの構成比グラフからの直接読み取りが不安定でした。本文の構成比は、同資料の金額(土地74,074/家屋11,901/現金・預貯金等85,602/有価証券43,676/その他30,162、合計245,415億円)から算出したものです。
    • 財産評価基本通達11・13・14・21・89の本文。国税庁サイトの通達ページを取得できませんでした。通達番号自体はタックスアンサーの「根拠法令等」欄で確認しています。
    • 「被相続人の住所地の税務署に提出」の条文上の根拠。国税庁No.4205は明記していますが、根拠とされる相続税法附則の本文は取得できませんでした(相続税法62条=納税地の一般規定までは確認済み)。
    • 相続税法38条(延納)の担保提供に関する項番。担保要件そのものは国税庁No.4211で確認しましたが、条文上の項番を確定できませんでした。
    • 東京国税局以外の国税局別の課税割合。東京国税局(16.2%)のみ確認しています。
    • 無申告加算税の「調査通知後・更正等の予知前」の各率。条文の括弧書きから「各率から5%を減じた割合」と読めますが、区分ごとの最終的な率の裏取りは条文の読み取りに依拠しています。本文では自主申告(5%)と1か月以内(0%)のみを書きました。
    • 令和8年分の路線価の変動率など。財産評価基準書で令和8年分が最新として公開されていることは確認しましたが、内容までは確認していません。

    まとめ

    1. 基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数。相続人2人なら4,200万円。これを超えなければ、相続税も申告も要りません。
    2. 課税割合は10.4%(令和6年分)。平成26年は4.4%、平成27年の基礎控除引下げで8.0%に。それでも9割近い人にはかかりません。
    3. ただし東京国税局管内(東京・神奈川・千葉・山梨)は16.2%。地価の高い地域では、平均値ではなく自分の数字で確かめてください。
    4. 相続放棄した人も基礎控除の頭数に入ります。養子は実子がいれば1人、いなければ2人まで。
    5. 家屋の評価額は固定資産税の課税明細書の「価格」そのまま。土地は路線価図で無料で調べられます。
    6. 小規模宅地等の特例は330㎡まで80%減額。4,000万円の土地が800万円になります。
    7. この記事の核心──特例を使って税額ゼロになった人は、申告書を出さないと特例そのものが適用されません(措法69条の4第7項、相続税法19条の2第3項)。「そもそも基礎控除以下」とはまったく違います。
    8. 期限は10か月。提出先は被相続人の住所地の税務署です。分割がまとまらないなら「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付。
    9. 延納・物納の申請は、申告期限までに出さないと使えません。
    10. 気づいた時点で自分から出すと安くなります。調査の通知前の自主申告なら無申告加算税は5%、法定申告期限から1か月以内なら一定要件のもとで0%。
    11. 売るときは、取得費加算と空き家の3,000万円特別控除は選択適用です。相続税を払っていない約9割の方は、空き家特例だけを検討することになります。

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  • 解体中に地中から何か出てきた|追加請求が正当かを見分ける8つの確認

    【PR】本ページはプロモーションを含みます。

    実家の解体が始まって数日後、業者から連絡が来ます。「地中から古いコンクリートの塊が出ました。撤去に追加で費用がかかります」。金額を聞いて、その場で判断できる人はほとんどいません。

    このとき最初に知っておくべきことが、ひとつあります。「地中障害物」は、想定外の事故ではありません。国が用意した標準契約書に、あらかじめ名指しで書かれている事象です。民間建設工事標準請負契約約款(乙)第9条第1項第三号に、「土壌汚染、地中障害物の発見、埋蔵文化財の発掘その他施工の支障となる予期することのできない事態」とあります。つまり、出てくること自体は織り込み済みで、国は「出たときにどうするか」の手順まで決めています。

    この記事は、金額の相場を書きません。官公庁の一次情報に、民間住宅の地中障害物撤去の相場は存在しないからです。代わりに、その請求が正当かどうかを判断するための、条文にもとづく8つの確認を並べます。ついでに、多くの人が知らない「施主の側にも法律上の通知義務がある」という話もします。ここを知らないまま突っぱねると、立場が逆転します。

    結論だけ先に

    • 「地中障害物が出たら施主が払う」というルールを定めた法律の条文は、存在しません。法律が決めているのは「誰が廃棄物処理の責任者か」「どんな手順を踏むべきか」までです。費用を誰が負担するかは、契約の問題です。
    • 追加工事は「着工前に書面で変更契約」が法定の手続です(建設業法19条2項・国土交通省ガイドライン第8版)。工事が終わってから請求書だけが来た、という順番は、この手続を踏んでいません。
    • あなたが「昔ここに浄化槽があった」「井戸を埋めた」と知っていたなら、契約前に業者へ伝える義務があります(建設業法20条の2第1項・令和6年12月13日施行)。知っていて黙っていた場合、追加費用を業者に押し付ける主張は弱くなります。
    • 決裂したら、建設工事紛争審査会が使えます。あっせんの手数料は10,000円から。令和7年度の全国116件のうち41件が「個人発注者から請負人への請求」でした。事業者専用の制度ではありません。

    条文は2026年8月24日にe-Gov法令検索で、運用は国土交通省・環境省・各自治体の公式資料で確認しました。金額の相場は一次情報が存在しないため、本記事には一切書いていません。個別の紛争については弁護士・建設工事紛争審査会へご相談ください。

    1. 何が出てくるのか、法的にどう扱われるのか

    まず、出てくるものの種類と、それぞれの法的な扱いを整理します。「産業廃棄物かどうか」と「誰が費用を払うか」は別の問題です。ここを混同すると、業者の説明が正しいのか、それとも正しい説明から誤った結論を導いているのかが見分けられなくなります。

    出てくるもの 根拠法 法的な扱い 費用負担
    旧建物の基礎・杭・ガラ 廃掃法施行令2条9号(がれき類) 産業廃棄物 契約による
    木くず(旧土台・杭) 同2条2号 産業廃棄物 契約による
    浄化槽 浄化槽法11条の3 廃止届出義務あり(施主の義務) 契約による
    井戸 条例・要綱(自治体により廃止届) 全国一律の埋戻し義務は確認できず 契約による
    古い地下タンク 消防法12条の6・9条の4 数量により届出先が変わる 契約による
    過去に埋められたゴミ 廃掃法16条・25条1項14号 廃棄物(責任の所在は解釈が分かれうる) 契約による
    土壌汚染 土壌汚染対策法3条・4条 通常の戸建て解体では法の調査義務に非該当 契約による
    埋蔵文化財 標準約款乙9条1項3号に明記 通知対象 契約による

    「契約による」が並ぶのは、調査不足ではなく結論です

    この表を見て「役に立たない」と思われたかもしれません。ですが、これがこの問題の本質です。法律は「誰が処理責任者か」(廃掃法)「誰が届け出るか」(浄化槽法など)を決めていますが、「誰が金を出すか」を直接定めた条文は、調べた範囲では存在しません。

    したがって、判断材料は次の4点に集約されます。この4点を、1つずつ見ます。

    • 契約書(書面)に何と書いてあるか──建設業法19条1項各号
    • 契約前に、あなたが地中の情報を業者に伝えていたか──建設業法20条の2第1項
    • 業者は発見時に「直ちに書面で通知」し、着工前に変更契約をしたか──標準約款9条/16条
    • 出てきた物ごとの法定手続を業者は踏んでいるか──廃掃法・浄化槽法・消防法など

    2. 「元請が排出事業者」は「元請が払う」ではない

    業者からこう説明されることがあります。「これは産業廃棄物なので、処分に費用がかかります」。この説明自体は正しいのです。

    誰が排出事業者かは、法律が決めている

    廃棄物処理法第21条の3第1項
    建設工事が複数の請負契約によって行われる場合、廃棄物処理法の適用について、当該建設工事の注文者から直接建設工事を請け負つた建設業を営む者(以下「元請業者」という。)を事業者とする

    建設工事から出た廃棄物の排出事業者は、元請業者です。下請ではなく、施主でもありません。環境省のQ&A集は、「契約によって下請負人を排出事業者とすることはできない」とも示しています。同省の「排出事業者責任の徹底について」も、処理業者に委託しても排出事業者の責任は変わらないという原則を明記しています。

    ただし、この条文からは費用負担が出てこない

    ここを取り違えると判断を誤ります

    廃掃法21条の3が定めているのは、「行政法上、誰が排出事業者としての義務(適正処理、委託基準の遵守、マニフェスト交付、記録保存、報告)を負うか」です。この条文からは、その処分費を最終的に誰が負担するかは決まりません。

    法的責任の所在を決めるのは廃掃法。費用を誰が払うかを決めるのは請負契約(民法632条以下、建設業法19条の書面)です。「産廃だから施主が追加で払う」は、法律からは出てきません。

    「責任」と「費用」は別の法律で決まる 誰が義務を負うか 廃棄物処理法 21条の3第1項 → 元請業者 下請でも施主でもない 誰が費用を払うか 請負契約 (建設業法19条) → 契約の中身 条文からは出てこない 「元請が排出事業者」は「元請が払う」ではない

    マニフェストは施主に交付されない。だが別のルートがある

    産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付義務は排出事業者(=元請)にあり(廃掃法12条の3第1項)、施主に交付する義務は廃掃法にはありません。けれども、施主が処理状況を書面で確認できる法定のルートが、別の法律にあります。

    建設リサイクル法第18条
    第1項 対象建設工事の元請業者は、特定建設資材廃棄物の再資源化等が完了したときは、当該工事の発注者に書面で報告し、記録を作成し、これを保存しなければならない
    第2項 報告を受けた発注者は、再資源化等が適正に行われていないと認めるときは、都道府県知事に申告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる

    床面積80㎡以上の建物解体は「対象建設工事」です(建設リサイクル法施行令2条1項1号)。普通の一戸建てはほぼ確実に該当します。つまり完了報告の書面は、あなたが法律上受け取れるものです。受け取っていないなら請求してください。マニフェストの写しについては、契約書に「写しの提出」と書いておけば債権として請求できます。

    「敷地の隅に埋め戻しておきますね」は危険です

    廃掃法16条は「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」と定めており、25条1項14号の罰則は5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科。しかも未遂も処罰されます(同条2項)。

    16条の名宛人は「何人も」です。施主も含まれます。安さと引き換えにこれを黙認すると、あなた自身がリスクを負います。

    3. 契約書のどこを見るか──建設業法19条

    ここが施主にとって最も強い武器になります。

    建設業法第19条第1項(柱書)
    建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない

    主語は「建設業者」ではなく「請負契約の当事者」

    つまり、500万円未満の小さな解体工事でも、建設業許可のない業者との契約でも、この書面交付義務は適用されます。「小さい工事だから契約書はいらない」は、建設業法上は通りません。

    19条1項は16の号を並べていますが、地中障害物の場面で効くのは次の号です。

    号 記載事項 なぜ効くか
    一 工事内容 出てきた物の撤去が「工事内容」に含まれるなら、追加代金は生じません
    二 請負代金の額 当初いくらの合意だったか
    六 設計変更等の場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め 「算定方法」が書かれていれば、追加請求を検算できます
    七 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法 不可抗力かどうかの線引き
    十三 契約不適合を担保すべき責任に関する定め 埋戻し不良で沈下したとき
    十五 契約に関する紛争の解決方法 紛争審査会に行く前に読む欄
    契約書のここを見る(建設業法19条1項) 一号 工事内容 撤去が含まれるなら追加代金は生じません 範囲 二号 請負代金の額 当初いくらの合意だったか 金額 六号 算定方法 書かれていれば追加請求を検算できます 検算 500万円未満でも、書面の交付義務はあります

    そして19条2項が、追加工事の手続を決めている

    建設業法第19条第2項
    請負契約の当事者は、請負契約の内容で前項に掲げる事項に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない

    口頭やメッセージアプリでの「じゃあお願いします」だけで工事を進め、後から請求書を出すのは、この法定の手続を踏んでいません。国土交通省の「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第8版)」21ページは、さらに踏み込んでいます。

    追加工事等の着工前に書面による契約変更を行うことが必要(災害時等やむを得ない場合を除く)
    追加・変更契約を行う場合には、追加工事等が発生した状況に応じ、当該追加工事等に係る費用について、発注者と受注者との間で十分協議を行い決定することが必要

    このガイドラインは両刃です

    「着工前に書面で変更契約」は業者側の義務であると同時に、施主が「書面がないから払わない」と言い切れる根拠でもあります。ですが同じガイドラインは、受注者の申出に応じず必要な変更契約を締結しないことが、不当に低い請負代金の禁止(建設業法19条の3)に違反するおそれがあるとも書いています。

    正しい対応は「支払を拒む」ではなく、「着工前に、書面で、算定根拠を示して協議する」です。

    4. 標準約款は「自動的に施主が払う」とは書いていない

    中央建設業審議会が決定・勧告する標準請負契約約款は4種類あり、実家の解体のような小規模な民間工事には「民間建設工事標準請負契約約款(乙)」が近いものです。地中障害物の条項は、乙では第9条、甲では第16条にあります。

    段階 乙(小規模向け) 内容
    発見 9条1項3号 「土壌汚染、地中障害物の発見、埋蔵文化財の発掘その他施工の支障となる予期することのできない事態」を発見したら、受注者は直ちに書面をもって発注者に通知
    指示 9条3項 通知を受けた発注者は直ちに書面をもって受注者に指示
    変更請求 9条4項 発注者及び受注者は、相手方に対し、必要と認められる工期の変更又は請負代金額の変更を求めることができる
    工事の変更 20条 請負代金額・工期を変更する必要があるときは両者が協議して定める
    代金の変更 22条 協議の申出を受けた者は、根拠を欠く場合等を除き誠実に応じるよう努める

    この条文構成から読み取れる3つのこと

    • 約款は「地中障害物が出たら自動的に施主が払う」とは書いていません。書いてあるのは手順です。書面で通知 → 書面で指示 → 双方が変更を求める → 協議して定める。
    • 「求めることができる」であって「増額する」ではありません。9条4項は発注者の側からも変更(減額を含む)を求められる構造です。一方的な請求権ではありません。
    • 手続を飛ばした請求は弱いということ。「工事が終わってから、地中から出たと言われて請求書が来た」なら、9条1項の「直ちに書面で通知」も、3項の指示も、20条の協議も踏まれていません。追加代金の合意がそもそも成立していないと主張する余地があります。

    ただし前提があります。標準約款は「標準」であって自動適用ではありません。契約当事者がこれを採用して初めて契約内容になります。まず、あなたの契約書がこの約款を使っているかを確認してください。採用していない場合でも、標準約款の内容は「業界標準の手順」として、交渉や紛争処理の場で参照する価値があります。

    5. 施主の側にも通知義務がある──建設業法20条の2

    これは多くの人が知らない条文です。そして、知らないまま突っぱねると立場が逆転します。

    建設業法第20条の2第1項
    注文者は、地盤の沈下その他の工期又は請負代金の額に影響を及ぼすものとして国土交通省令で定める事象が発生するおそれがあると認めるときは、契約の締結までに、その旨及び当該事象の状況の把握のため必要な情報を建設業者に通知しなければならない

    施行は令和6年12月13日。比較的新しい条文です。国土交通省ガイドライン第8版(5〜8ページ)は、発注者から受注予定者へ通知すべき事象として、次を挙げています。

    「地盤の沈下、地下埋設物による土壌の汚染その他の地中の状態に起因する事象」

    そして、「発注者がこれらの情報を把握しているにも関わらず受注予定者に通知しなかった場合、同項に違反する」と明記しています。

    あなたの状況 20条の2第1項の下での位置
    昔ここに浄化槽があった/井戸を埋めた/灯油タンクがあったのを知っていたのに、業者に言わずに契約した あなたが通知義務に違反している可能性があります。追加費用の負担を業者に押し付ける主張は弱くなります
    本当に知らなかった(親が埋めた、記録がない) 通知義務違反にはなりません。「予期することのできない事態」(標準約款乙9条1項3号)として、双方が協議する土俵に乗ります
    業者が事前調査をせず、施主も知らなかった 双方に情報がなかったケース。協議で分担を決めるほかありません。ここで契約書の19条1項6号(算定方法)が効いてきます

    したがって、「実家の記憶」を思い出して業者に伝えることは、親切ではなく法律上の義務に近いものです。そして、伝えた事実を書面(メールで足ります)で残すことが、後で「言った/言わない」になったときの決定的な差になります。

    親から聞いておくべきこと、思い出すべきこと

    • 下水道が来る前、浄化槽か汲み取り式だった時期があるか
    • 井戸があったか。埋めたのはいつか
    • 灯油タンク・ガソリンタンクを地下に置いていたか
    • 増改築の履歴。建て替え前の建物の基礎が残っている可能性
    • 敷地の一部が、以前は農地・池・水路・畑だったか
    • 庭に大きな石・庭石・池・立派な樹木の根株があるか
    • 近所に「昔ここに何があったか」を覚えている人がいるか
    知っていたかどうかで、立場が変わる 浄化槽や井戸があったのを知っていましたか はい 通知義務違反かも 主張が弱くなります いいえ 違反にならない 協議の土俵に乗ります

    6. 業者の適格性──許可と登録は別物

    追加請求の妥当性以前の話として、そもそも解体を頼む相手が法律上の資格を持っているかを確認しておく価値があります。ここには落とし穴があります。

    500万円未満なら建設業許可は不要。だが解体工事業登録は必要

    建設業法3条1項ただし書と施行令1条の2により、請負代金500万円未満の工事に建設業許可は要りません。ここで話が終わると思われがちですが、続きがあります。

    建設リサイクル法第21条第1項
    解体工事業を営もうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。ただし、建設業法の許可(土木工事業・建築工事業・解体工事業)を受けた者は、この限りでない

    つまり、実家の解体を頼む相手は、「建設業許可(土木・建築・解体のいずれか)を持っている」か「解体工事業の登録を受けている」かのどちらかでなければなりません。どちらもない業者は、無登録営業です。

    解体を頼む相手は、どちらかが必要 建設業許可 土木・建築・解体のいずれか どちらか 解体工事業登録 都道府県知事の登録(リサイクル法21条) どちらか どちらもない 無登録営業になります 頼まない 500万円未満なら許可は不要。でも登録は必要です

    登録簿は法律で「一般の閲覧に供しなければならない」と決まっている

    建設リサイクル法第26条
    都道府県知事は、解体工事業者登録簿を一般の閲覧に供しなければならない。

    これは「見せてもらえたらありがたい」ではなく、あなたに与えられた法定の閲覧権です。岐阜県は根拠として本条を明示したうえで閲覧所の場所と時間を公開し、「解体工事業登録業者一覧」のPDFも掲載しています。神奈川県・東京都にも同様のページがあります。

    国交省の検索システムに解体工事業登録は入っていません

    国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で建設業許可は確認できますが、解体工事業登録はこのシステムに含まれていません。登録のみの業者を確かめたい場合は、所在地の都道府県の登録簿にあたる必要があります。

    契約の分割による許可逃れにも条文がある

    建設業法施行令1条の2第2項は、同一の業者が2以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額を合計すると定めています。「解体工事」と「地中障害物撤去」を別契約に分けても、正当な理由がなければ合算です。分割自体が問題になりうる場面です。

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    この記事の10章を実行するいちばん簡単な方法は、契約前に複数社から取ることです

    地中埋設物でもめる原因のほとんどは、契約書に「算定方法」が書かれていないことです(建設業法19条1項6号)。解体工事一括netは、複数の解体業者から見積りを取り寄せられるサービスです。複数社に同じ条件で見積りを出させると、「地中の状態は不明」という条件をどう扱うかが会社ごとに見えます。そこがこの記事でいちばん重要な比較点です。

    ①申し込むと複数の業者から連絡が来ます。②見積りを取るときは、この記事の10章の6項目を必ず伝えてください。とくに「地中障害物が出た場合の単価表を契約書に入れられるか」。ここを嫌がる会社は、後でもめます。③解体補助金は契約前・着工前の申請が原則です(全国の解体補助金一覧)。④最安値が最善とは限りません。建設リサイクル法13条の「解体工事に要する費用」「再資源化等に要する費用」を分けて書いてくれる会社を選んでください。⑤このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって見積額が上がることはありません。

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    あわせて、あなた自身が知っている地中の情報を書き出してください。浄化槽・井戸・灯油タンク・増改築の履歴。これを契約前に伝えるのは、親切ではなく建設業法20条の2第1項の義務です。

    7. 出てきた物ごとの法定手続

    追加請求の中には、正当なものもあります。とくに浄化槽は、単なる掘削・撤去とは別に工程があります。「別費用が発生すること自体には合理性がある」ケースを見分けられるようにしておきましょう。

    浄化槽──廃止届は施主の義務。30日以内

    浄化槽法第11条の3(廃止の届出)
    浄化槽管理者は、当該浄化槽の使用を廃止したときは、環境省令で定めるところにより、その日から三十日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない

    届け出るのは「浄化槽管理者」であって、解体業者ではありません。浄化槽管理者は通常、浄化槽の所有者・使用者、つまり施主または相続人です。実務上は業者が代行できますが、義務者はあなたです。誰が出すかを契約で決めておいてください。

    なお、条番号に注意が必要です。令和元年改正で条番号が動いており、11条の2は「使用の休止の届出等」(任意)、11条の3が「廃止の届出」(義務・30日以内)です。空き家になったが解体はまだ、という段階が休止、解体して撤去したら廃止、という整理になります。

    大分市は、浄化槽の解体・撤去の手順を公式サイトで具体的に示しています。

    段階 大分市の記載内容
    ① 解体前の最終清掃(必須) 市の許可を受けた浄化槽清掃業者に依頼し、槽内の汚泥等の引き抜き、洗浄および消毒を実施
    ② 解体・撤去工事 廃プラスチック類・金属くずは廃棄物として適正処分。埋め戻しは砂などの良質土で、転圧不足による沈下が生じないよう十分に転圧
    ③ 届出 解体・撤去後30日以内に「浄化槽使用廃止届出書」を提出
    ④ 警告 「汚泥等を地下に埋めたり浸透させることは不法投棄となります」

    ここから、請求の妥当性を見る3つの証跡が導けます。①最終清掃の領収書と清掃業者名、②撤去した槽の廃棄物処理の記録、③埋戻し材と転圧の仕様。「安く済ませるので埋め殺します」という提案は、汚泥を地中に残すことになり、不法投棄に該当しうると大分市は明示しています。そして転圧不足は、後の地盤沈下=契約不適合につながります。

    井戸──法律ではなく条例・要綱を見る

    埋め戻し方法を定めた全国一律の法律上の義務は、確認できませんでした。一方で、地下水採取規制の条例・要綱にもとづき「廃止の届出」を求める自治体は存在します。

    自治体 手続
    宇都宮市(栃木県要綱) 「揚水施設廃止届出書」を廃止後30日以内に提出
    茅野市(長野県) 吐出口断面積6㎠以上の井戸は廃止届。「井戸を廃止するとき。ただちに原状回復すること」と明記
    千葉県 「許可井戸を廃止したときは届出が必要です。」

    なお、家庭用の飲用・散水の井戸が工業用水法・ビル用水法の規制対象になることは通常ありません。これらの法律の対象は工業用、あるいは冷暖房・水洗便所・洗車・公衆浴場用で、いずれも吐出口断面積6㎠超という要件が付きます。ただし条例・要綱は用途を問わず届出を求めることがあります。埋める前に、市区町村の環境課へ一本電話してください。要綱ベースの自治体もあり、条例集を検索しても出てこないことがあります。

    地下タンク──届出先は消防

    灯油・ガソリンの地下タンクは、消防法12条の6(危険物施設の用途廃止届)または9条の4+市町村火災予防条例(少量危険物)の対象になりえます。指定数量はガソリン200L、灯油・軽油1,000L(危険物政令別表第三)。この境目で扱いが変わるため、所轄の消防署に届出の要否を確認してください。

    土壌汚染──普通の戸建て解体では法の調査義務に該当しない

    土壌汚染対策法4条の届出義務がかかる形質変更の面積要件は、通常の土地で3,000㎡以上、現に有害物質使用特定施設が設置されている工場・事業場の敷地で900㎡以上です。一般的な戸建て住宅の敷地はこれを大きく下回ります。3条の契機も「有害物質使用特定施設の使用の廃止」であり、住宅は該当しません。

    「土対法があるので調査費が要ります」と言われたら

    根拠条文を示してもらってください。該当しうるのは、敷地が3,000㎡以上ある場合(旧農家、複数筆をまとめた土地など)、敷地内にクリーニング店・めっき工場・印刷所・ガソリンスタンドなどが併設されていた場合、自治体の上乗せ条例がある場合です。

    なお「地中から油の匂いのする土が出た」ことと「土壌汚染対策法の調査義務が生じる」ことは別問題です。法の義務がないからといって汚染土壌の処理費が発生しないわけではなく、それは契約と実費の問題になります。

    8. 更地にして売った後に言われたとき

    実家を解体して更地にし、売却した後で、買主から「地中から出た、撤去費を負担しろ」と言われるケースがあります。解体時とは別の条文が働きます。

    起算点は「引渡しから」ではなく「知った時から」

    民法第566条
    売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない

    地中埋設物は、買主が造成や新築のために掘って初めて分かることが多いものです。引渡しから何年も経ってから「知った」となる可能性があり、売主にとっては期間制限が事実上長くなりえます。

    免責特約は有効。ただし「知りながら告げなかった事実」には効かない

    民法第572条
    売主は……担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない

    これが実家の売却でいちばん重要な一文です

    「地中に浄化槽があったのを知っていた」「昔井戸を埋めた記憶がある」「以前ガソリンスタンドだった」。これを知りながら買主に告げず、免責特約を付けて売った場合、民法572条により、その事実については免責されません。

    「免責特約を入れたから大丈夫」ではありません。知っていることを全部書いて渡すことが、免責特約を実際に機能させる唯一の方法です。

    告知書は面倒な書類ではなく、免責を確保する唯一の道具

    告知書(物件状況等報告書)は、宅建業法35条の法定説明事項ではありません。国土交通省の重要事項説明様式に告知書は含まれておらず、様式・記載事項を国が法定したものも確認できませんでした。実務上は媒介業者が売主に記入を求める書面で、その根拠は法律ではなく実務慣行です。

    ですから、告知書の法的な意味は一点に集約されます。民法572条の「知りながら告げなかった事実」に該当しないための証拠になる、ということです。記憶レベルであっても、地中について知っていることは全部書いてください。

    なお、宅建業法35条1項の法定説明事項に「地中埋設物」という項目はありませんが、土壌汚染対策法の要措置区域・形質変更時要届出区域は、35条1項2号(法令に基づく制限)として説明対象です。区域指定を受けた土地かどうかと、たまたま埋設物があるかどうかは、法律上まったく別に扱われます。

    また、宅建業法40条(不適合責任の特約制限・2年以上)は「宅地建物取引業者が自ら売主となる」場合の規制です。個人が売主で、宅建業者が仲介しているだけの取引には適用されません。実家の売却の多くは後者であり、その場合は民法572条の枠組みで判断します。

    9. 決裂したときの相談先

    建設工事紛争審査会──個人が実際に使っている制度

    建設業法25条にもとづき、建設工事の請負契約に関する紛争を扱う機関です。国土交通省は、扱う紛争の例として「請負人が注文者に対して追加変更工事代金の支払を求める紛争」を明示的に挙げています。この記事のテーマそのものです。

    あっせん 調停 仲裁
    審理回数 原則1回(約2時間程度) 3〜5回程度 書面のやりとりを経て審理
    相手方の同意 一方の申請で開始(合意成立には双方の同意が必要) 同左 仲裁合意が必須
    効力 和解書=民法上の和解 調停書=民法上の和解 裁判所の確定判決と同一の効力
    手数料(100万円まで) 10,000円 20,000円 50,000円
    通信運搬費の予納 10,000円 30,000円 50,000円

    令和7年度の申請件数は全国116件。そのうち41件が「個人発注者から請負人への請求」でした。紛争類型の最多は工事瑕疵で41件。事業者間の紛争専用の制度ではありません。

    申請先は、相手の業者の許可の種類で決まります(建設業法25条の9)。国土交通大臣許可なら中央、都道府県知事許可ならその都道府県、建設業許可がない業者(解体工事業登録のみ等)なら工事現場のある都道府県の審査会です。

    仲裁を選ぶ前に

    あっせん・調停は「民法上の和解」にとどまり、相手が応じなければ打切りです。確定判決と同じ強制力が欲しいなら仲裁ですが、仲裁合意(=訴訟しない約束)が必要で、後から裁判所に持ち込めなくなります。

    また、あっせん手続をそのまま調停に変更することはできません。調停を行うには別途申請が必要です。最初にどれを選ぶかを決めてから申請してください。

    消費者ホットライン188と、駆け込みホットライン

    188は全国共通の番号で、郵便番号を入力すると近くの消費生活センターにつながります。土日祝日も、施設点検日と年末年始を除いて原則毎日利用できます。契約の問題全般について中立の助言をもらう入口として使ってください。

    国土交通省の「駆け込みホットライン」(0570-018-240、平日10:00〜12:00・13:30〜17:00、オンラインフォームは24時間)は、紛争を解決する窓口ではなく、建設業法違反を行政に通報する窓口です。契約書面を交付されなかった(19条1項違反の疑い)、書面の変更契約なしに請求された(19条2項違反の疑い)、見積り条件も見積期間も与えられなかった(20条3項違反の疑い)といった場合が該当します。

    この窓口はあなたの金銭紛争を解決しません。ですが、「建設業法19条2項に違反していると考えるので、駆け込みホットラインに相談する」と伝えること自体が、書面での変更契約に応じさせる交渉材料になります。

    10. これから頼む人へ──契約前にできる13のこと

    ここまでの内容は、すでに請求を受けた人向けでした。これから解体を頼む段階なら、防げます。

    順 やること 根拠
    1 建設業許可か解体工事業登録のどちらかを持っているか確認 建設業法3条1項/建設リサイクル法21条1項
    2 許可は国交省の検索システム、登録は都道府県の登録簿で確認 建設リサイクル法26条
    3 知っている地中の情報を、契約前に書面(メール可)で伝える 建設業法20条の2第1項
    4 見積依頼時に「地中の状態は不明」と明示し、見積期間を与える(500万円未満なら1日以上) 建設業法20条3項/施行令6条
    5 契約書に19条1項各号がすべて記載されているか確認。特に6号(算定方法) 建設業法19条1項
    6 地中埋設物が出た場合の取り決めを、契約前に書面に入れる 建設業法19条1項6号/標準約款乙9条4項
    7 解体費用と再資源化等費用を分けて書かせる。搬入先施設の名称と所在地も 建設リサイクル法13条1項
    8 80㎡以上なら、着工7日前までの都道府県知事への届出は施主の義務 建設リサイクル法10条1項
    9 浄化槽の廃止届(30日以内)は施主の義務。誰が出すか契約で決める 浄化槽法11条の3
    10 井戸があるなら市区町村の環境課に廃止届の要否を確認 各自治体の条例・要綱
    11 地下タンクがあるなら消防への届出の要否を確認 消防法12条の6/9条の4
    12 完了後、建設リサイクル法18条1項の書面報告を受け取る 建設リサイクル法18条1項
    13 建物滅失登記を1か月以内に申請する 不動産登記法57条(怠ると10万円以下の過料・164条1項)

    この記事でいちばん実用的な提案──6項目の覚書

    建設業法19条1項6号は、「請負代金の額の変更……及びそれらの額の算定方法に関する定め」を契約書面の記載事項としています。つまり「算定方法」を契約前に決めておくことは、法が想定している姿です。

    • どこまでが当初の「工事内容」に含まれるか。例:地表からGL−○mまでの旧基礎の撤去は含む
    • 発見時の手順。「発見したら直ちに書面(写真つき)で通知し、施主の書面による指示があるまで当該部分の作業を進めない」
    • 数量の確認方法。発見時点で施主または第三者が立ち会い、位置・寸法・数量を写真と実測で記録する
    • 単価の算定方法。撤去m³あたり、運搬・処分tあたりの単価を、当初契約書に単価表として入れておく
    • 一定額を超える場合の扱い。「追加額が○円を超える見込みのときは、着工前に書面で変更契約を締結する」「施主は工事の中止・範囲の変更を選択できる」
    • 処分の証跡。マニフェストの写しの提出、搬入先施設名

    この6項目を、契約前の1枚の覚書に入れておくだけで結果が変わります。「工事の途中で言われた◯◯万円」が、「契約書の単価表に従った金額かどうか」という、検算可能な問題に変わるからです。

    支払を保留すると、滅失登記の期限に追われます

    建物滅失登記の申請には、通常、解体業者が発行する取毀証明書(建物滅失証明書)が必要になります。追加費用でもめて支払を保留していると、業者が証明書を出さないという事態がありえます。

    不動産登記法57条の1か月という期限と、164条1項の過料がある以上、これは施主にとって時間的なプレッシャーになります。支払と取毀証明書の交付のタイミングを、契約書の「引渡しの時期」「支払の時期及び方法」とあわせて決めておいてください。

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    壊す前に、「壊さずに売れないか」を1回だけ確かめる

    地中に何が埋まっているか分からない土地は、解体を始めてから金額が動きます。その不確実性を自分で引き受けず、そのまま買い取ってもらうという選択肢があります。ラクウル(株式会社ネクサスプロパティマネジメント/国土交通大臣(1)第10311号)は、空き家・中古戸建てを現況のまま日本全国で買い取っている会社です。解体してから売るのと、現況で売るのと、金額を並べてから決められます。

    ①買取価格は、更地にして仲介で売る場合より低くなることがあります。ただし解体費と地中障害物のリスクを負わずに済みます。両方の数字を出してから比べてください。②申し込むと担当者から連絡が入り、物件の状況を聞かれます。LINEからの申込は対象外です。③当サイトはこの会社の査定額や対応を確認していません。④このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって買取価格が下がることはありません。

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    解体費の見積りと、この買取価格の2つが並んで初めて判断できます。どちらか片方だけで決めると、後から「もう一方はいくらだったのか」が分からなくなります。

    よくある質問

    地中から出たので追加費用、と言われました。払わないといけませんか

    契約書次第です。まず、その撤去が当初契約の「工事内容」に含まれているかを見てください(建設業法19条1項1号)。含まれているなら追加代金は生じません。含まれていないなら、着工前に書面の変更契約を交わしたかどうかが次の争点になります(同19条2項)。工事が終わってから請求書だけが来たのなら、法定の手続を踏んでいません。ただし、支払を一方的に拒むのは推奨しません。正しい対応は「払わない」ではなく「着工前に、書面で、算定根拠を示して協議する」です。

    契約書がありません。口約束でした

    建設業法19条1項は「請負契約の当事者は」書面を相互に交付しなければならないと定めており、500万円未満でも、許可のない業者でも適用されます。書面がない時点で、業者側に19条1項違反の疑いがあります。この事実は交渉材料になりますし、国土交通省の駆け込みホットラインへの情報提供対象でもあります。ただし「契約書がない=払わなくてよい」ではありません。工事内容の合意があったこと自体は、見積書・メール・写真などから認定されえます。

    業者が「産業廃棄物なので費用がかかる」と言っています

    「産業廃棄物である」という説明は正しいです。解体に伴って出たコンクリート片は廃掃法施行令2条9号のがれき類、木くずは2条2号です。ですが、そこから「だから施主が追加で払う」は出てきません。廃掃法21条の3が決めているのは「誰が排出事業者としての義務を負うか」(=元請業者)であって、費用負担ではありません。費用は契約が決めます。

    マニフェストを見せてもらえますか

    廃掃法上、施主にマニフェストを交付する義務はありません。交付義務は排出事業者(元請)から処理受託者に対するものです(12条の3第1項)。ただし、床面積80㎡以上の解体なら建設リサイクル法18条1項により、元請業者が発注者に書面で完了報告する法的義務があります。これは必ず受け取ってください。マニフェストの写しが欲しい場合は、契約書に「写しの提出」と書いておけば債権として請求できます。

    浄化槽の撤去に別料金がかかると言われました

    これは合理性がある場合が多い請求です。浄化槽の撤去には、掘削・撤去とは別に「市の許可を受けた浄化槽清掃業者による最終清掃(汚泥の引抜き・洗浄・消毒)」という工程があり、解体業者とは別の業者の仕事だからです。確認すべきは金額の妥当性ではなく、証跡です。最終清掃の領収書と清掃業者名、撤去した槽の廃棄物処理の記録、埋戻し材と転圧の仕様。なお、廃止届(30日以内)はあなた自身の法的義務です(浄化槽法11条の3)。

    浄化槽を埋め殺しにすれば安く済みますか

    やめてください。大分市は公式サイトで「汚泥等を地下に埋めたり浸透させることは不法投棄となります」と明示しています。廃掃法16条の投棄禁止は「何人も」が名宛人で、施主も含まれます。加えて、槽を残したまま転圧が不十分だと、後から地盤が沈下します。その土地を売るときには、民法572条の「知りながら告げなかった事実」になります。安くなった分は、売却時にそれ以上のかたちで返ってきます。

    井戸を埋めるのに届出は必要ですか

    自治体によります。埋め戻し方法を定めた全国一律の法律は確認できませんでしたが、地下水採取規制の条例・要綱で「廃止の届出」を求める自治体は存在します。宇都宮市は廃止後30日以内の届出、茅野市は「ただちに原状回復すること」と明記、千葉県は許可井戸の廃止届が必要としています。要綱ベースの自治体もあり、条例集を検索しても出てこないことがあります。埋める前に、市区町村の環境課へ電話するのが確実です。

    土壌汚染の調査が必要と言われました

    根拠条文を示してもらってください。土壌汚染対策法4条の届出義務は、通常の土地では形質変更3,000㎡以上が要件です。一般的な戸建ての敷地は大きく下回ります。3条の契機も「有害物質使用特定施設の使用の廃止」で、住宅は該当しません。該当しうるのは、敷地が3,000㎡以上ある、敷地内にクリーニング店やめっき工場・ガソリンスタンド等が併設されていた、自治体の上乗せ条例がある、といった場合です。

    更地にして売った後、買主から撤去費を請求されました

    2つを確認してください。1つは、契約に契約不適合責任の免責特約があるか。個人が売主なら原則有効です。もう1つは、あなたが地中のことを知っていて告げなかったか。民法572条により、知りながら告げなかった事実については、免責特約があっても責任を免れません。また、買主の権利行使期間は「引渡しから」ではなく「不適合を知った時から1年」です(566条)。掘って初めて分かる地中埋設物では、この起算点が遅くなりえます。

    解体業者に建設業許可がありません。違法ですか

    500万円未満の工事なら、建設業許可は不要です(建設業法3条1項ただし書・施行令1条の2)。ただし、それとは別に「解体工事業の登録」が必要です(建設リサイクル法21条1項)。許可も登録もない業者は、無登録営業です。登録の有無は、建設リサイクル法26条により都道府県が登録簿を一般の閲覧に供する義務を負っているので、確認できます。国交省の検索システムには解体工事業登録が入っていないので、そちらでは確認できません。

    話し合いで決着しません。どこに行けばいいですか

    建設工事紛争審査会です。あっせんなら手数料10,000円(100万円まで)+通信運搬費10,000円、原則1回・約2時間で、国土交通省は扱う紛争の例に「請負人が注文者に対して追加変更工事代金の支払を求める紛争」を挙げています。令和7年度は全国116件のうち41件が個人発注者からの申請でした。申請先は、相手が国土交通大臣許可なら中央、都道府県知事許可ならその都道府県、許可がないなら工事現場のある都道府県です。並行して、消費者ホットライン188も使えます。

    この記事で確認できなかったこと

    • 地中障害物・浄化槽・井戸・地下タンクの撤去費用の相場。官公庁の一次情報に、民間住宅の解体における地中障害物撤去の相場を示す資料は見つかりませんでした。国交省官庁営繕の積算基準・共通仕様書は存在しますが、公共建築工事向けであって民間住宅の相場ではありません。したがって本記事には金額を一切書いていません。
    • 地中から掘り出した「過去に埋められた廃棄物」の排出事業者は誰か。廃掃法21条の3第1項は「建設工事に伴い生ずる廃棄物」を対象としますが、掘削で出土した古い廃棄物がこれに含まれるかを明示した環境省の一次情報は見つかりませんでした。金額が大きい場合、この点自体が交渉材料になりえます。
    • 民間建設工事標準請負契約約款(乙)の契約不適合責任の条番号。取得した情報に食い違いがあり、特定できませんでした。実際の約款PDFで直接ご確認ください。
    • 建設業法19条の3(不当に低い請負代金)が個人施主に適用された実例。「自己の取引上の地位を不当に利用して」の要件が一般個人の発注者との間で満たされるかを示す一次情報は見つかりませんでした。ガイドラインの想定は事業者間取引が中心と読めます。
    • 建設業法20条の2第1項の「事象」を定める国土交通省令の条番号。ガイドラインの記述は確認できましたが、施行規則の具体的な条番号は特定できませんでした。
    • 国民生活センターの解体工事に関する公表資料・相談件数・手口。周辺分野(住宅リフォーム)には公表資料がありますが、解体工事・地中埋設物に特化したものは発見できませんでした。件数を書けないので書いていません。
    • 告知書(物件状況報告書)の法定様式・記載事項。国交省が様式・記載事項を定めた一次情報は確認できませんでした。
    • 井戸の埋め戻しの技術基準を定めた法令。全国一律の法令上の埋戻し義務・技術基準は確認できませんでした。
    • 浄化槽の「埋め殺し」を禁じる法令。「必ず撤去せよ」という条文は確認できませんでした。大分市の指導内容までは確認しています。自治体により指導が異なる可能性が高いです。
    • 各自治体の土壌汚染に関する上乗せ条例。網羅的な確認はしていません。所在自治体で個別にご確認ください。
    • 建物滅失登記に取毀証明書が必要とする条文上の根拠。実務上必要とされることは広く知られていますが、条文レベルでの根拠は確認していません。
    • 建設工事紛争審査会の、申請から終了までの標準的な期間。審理回数は確認できましたが、期間を示す一次情報は見つかりませんでした。
    • 文化財保護法上の埋蔵文化財の手続。標準約款が「埋蔵文化財の発掘」を挙げていることは確認しましたが、届出義務・費用負担については調査していません。

    まとめ

    1. 「地中障害物が出たら施主が払う」という法律の条文は存在しません。法律が決めるのは責任者と手順、費用負担を決めるのは契約です。
    2. 地中障害物は「想定外」ではありません。国の標準約款(乙9条1項3号/甲16条1項3号)に名指しで書かれ、手順まで決まっています。
    3. 追加工事は「着工前に書面で変更契約」が法定の手続です(建設業法19条2項)。工事後に請求書だけが来たなら、手続を踏んでいません。
    4. 契約書の19条1項6号「額の算定方法」が、追加請求を検算できるかどうかを決めます。ここが空欄なら、その契約書は法定記載事項を満たしていません。
    5. 施主にも通知義務があります。知っている地中の情報は契約前に伝える(建設業法20条の2第1項)。知っていて黙っていたら、立場が逆転します。
    6. 浄化槽の廃止届(30日以内)は施主自身の法的義務です(浄化槽法11条の3)。業者に丸投げできる性質のものではありません。
    7. 「埋め殺し」は不法投棄になりえます。廃掃法16条の名宛人は「何人も」で、施主も含まれます。
    8. 解体業者は「建設業許可」か「解体工事業登録」のどちらかが必須。登録簿は都道府県が一般の閲覧に供する義務を負っています(建設リサイクル法26条)。
    9. 更地にして売った後は民法572条が効きます。知っていたことは告知書に全部書く。それが免責特約を機能させる唯一の方法です。
    10. 決裂したら建設工事紛争審査会。あっせん10,000円から。令和7年度は全国116件中41件が個人発注者からの申請でした。
    11. いちばん効くのは、契約前の6項目の覚書です。単価表を先に決めておけば、「言われた金額」が「検算できる金額」に変わります。

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