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最終更新:2026年8月16日
結論だけ先に
- 相続税の節税として土地活用を勧められることがありますが、すでに親から実家を相続した後の人には効きません。下がるのは、あなたの子が将来払う相続税です。
- 貸家建付地の評価減は、空室があるとその分だけ削られます。満室前提の試算をそのまま信じないでください。
- 小規模宅地等の特例は、貸すと80%減が50%減に下がり、限度面積も200㎡になります。住む人がいる土地なら、貸すことでかえって不利になります。
根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。
最初に、この記事を読む必要がない人
土地活用の営業では、ほぼ必ず「相続税対策になります」と言われます。これは制度としては本当です。ただし、次の3つのどれかに当てはまる人には効きません。
| # | 当てはまる場合 | 理由 |
|---|---|---|
| ① | すでに相続を終えている | 評価減が効くのは相続のとき。過去に遡って戻ってはこない |
| ② | 相続税がかからない見込み | 基礎控除の範囲内なら、評価を下げても税額は0円のまま0円 |
| ③ | 実家に子が住む / 家なき子に当たる | 貸すと 80%減が50%減に下がる(後述) |
とくに①は重大です。この記事を読んでいる方の多くは、すでに親から実家を相続した後だと思います。その場合、「土地活用で相続税が下がる」という話は、あなたが払う相続税ではなく、あなたの子が将来払う相続税の話です。営業でこの区別が曖昧に語られることがあります。
以下、制度の中身を条文と国税庁の資料で確認していきます。
1. 相続税がかかるのは、いくらからか
まず②の判定です。基礎控除の計算式はこれだけです。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
出典:国税庁 No.4152「相続税の計算」(2026年8月16日確認)
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
遺産の総額がこの金額以下なら、相続税はかかりません。評価を下げる意味もありません。
法定相続人の数え方には注意点が2つあります。
- 養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか数に入りません
- 相続放棄をした人がいても、放棄がなかったものとして数えます
出典:同上
土地以外に預貯金や有価証券もあるので、実家の評価額だけで判断はできません。ただ、遺産が基礎控除に届かないことが明らかなら、この先を読む必要はありません。
★「相続人の数」には、条文の細工が2つあります
基礎控除の「3,000万円+600万円×法定相続人の数」も、条文で確かめられます。
相続税法第十五条(遺産に係る基礎控除)
1 相続税の総額を計算する場合においては、……相続税の課税価格……の合計額から、三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。
2 前項の相続人の数は、同項に規定する被相続人の民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人の数(当該被相続人に養子がある場合の当該相続人の数に算入する当該被相続人の養子の数は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める養子の数に限るものとし、相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数とする。)とする。
一 当該被相続人に実子がある場合又は当該被相続人に実子がなく、養子の数が一人である場合 一人
二 当該被相続人に実子がなく、養子の数が二人以上である場合 二人
出典:e-Gov法令検索 相続税法第15条(全文を開いて確認/2026年9月3日)
2項に、2つ書かれています
①養子は、数えられる人数に上限があります。実子がいれば養子は1人まで、実子がいなければ2人まで。養子を増やして基礎控除を膨らませることはできません。「養子縁組で節税」という話を聞いたら、この2項1号・2号を見てください。
②相続放棄をしても、人数は減りません。「その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数」と書かれています。1人が放棄しても基礎控除は下がらない、ということです。放棄は基礎控除には影響しません。
そして「相続人の数」は「民法第五編第二章の規定による相続人の数」です。実際に財産を取得したかどうかではなく、民法が定める相続人の数を数えます。
2. 評価減の正体は「貸家建付地」です
土地活用で相続税評価が下がる仕組みの中心は、貸家建付地(かしやたてつけち)の評価です。
自分で使っている土地(自用地)にアパートを建てて人に貸すと、その土地は「借りている人の権利がくっついている土地」として、評価が下がります。計算式は国税庁が公開しています。
貸家建付地の価額
= 自用地としての価額 − 自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
出典:国税庁 No.4614「貸家建付地の評価」(2026年8月16日確認)
3つの割合の意味
借家権割合は、令和6年分で全都道府県一律30%と定められています。
令和6年分の「借家権割合」は、全ての都道府県において「30%」と定められている
— 国税庁 確定申告書等作成コーナー「借家権割合」(2026年8月16日確認)
借地権割合は地域ごとに違います。路線価図にA〜Gの記号で書かれていて、A=90%からG=30%まで10%刻みです。ご自身の土地の割合は国税庁の財産評価基準書で確認できます。
この借地権割合は、逆の立場でも使います。実家が借地に建っていて、その借地権を相続した場合、借地権の相続税評価額は「自用地としての価額 × 借地権割合」です。同じ記号を、土地を貸す側は評価減に、借りる側は課税対象の算出に使うことになります。借地権を相続したときの手続きは借地に建っている実家にまとめています。
賃貸割合は、課税時期に実際に貸している部分の床面積 ÷ 独立部分の床面積合計です。ここが重要です。
計算してみます
自用地評価額5,000万円、借地権割合60%(記号D)の土地に、10戸のアパートを建てた場合。
| 賃貸割合 | 評価減の額 | 評価額 |
|---|---|---|
| 満室(10/10) | 5,000万 × 0.6 × 0.3 × 1.0 = 900万円 | 4,100万円 |
| 8戸入居(8/10) | 5,000万 × 0.6 × 0.3 × 0.8 = 720万円 | 4,280万円 |
| 5戸入居(5/10) | 5,000万 × 0.6 × 0.3 × 0.5 = 450万円 | 4,550万円 |
満室でも下がるのは18%です。「半分になります」といった説明を受けたら、それは貸家建付地だけの話ではなく、後述する小規模宅地等の特例と、建物側の評価減を合算した数字です。
そして空室があると、その分だけ評価減が削られます。 相続が発生したその日に何戸埋まっているかで税額が変わる、ということです。これは事前にコントロールできません。
★「評価減」は、法律の条文には書かれていません
ここまで貸家建付地の計算式を書いてきました。その式が、どこに書かれているかを確かめておきます。
相続税法で財産の評価について定めているのは、次の一文だけです。
相続税法第二十二条(評価の原則)
この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。
出典:e-Gov法令検索 相続税法第22条(全文を開いて確認/2026年9月3日)。これが条文のすべてです
「時価により」——それだけです。「自用地評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」という式は、この条文には出てきません。
その式は、国税庁の財産評価基本通達に書かれています。通達は課税庁の内部の取扱いを定めたもので、税務署はこれに従って評価します。ただし、法律の条文ではありません。e-Gov法令検索は憲法・法律・政令・府省令・規則を収録するもので、通達は収録の対象外です。この記事も通達の原文にはあたっていません(国税庁の公表資料によっています)。
これは「だから信用できない」という話ではありません。実務はこの通達で動いています。ただ、営業の場で「法律で決まっています」と言われたら、正確には「相続税法22条が『時価』と書いていて、その時価の求め方を国税庁の通達が定めている」という構造です。そして通達は、法律の改正より簡単に変わり得ます。
いっぽう、次に出てくる小規模宅地等の特例は、法律の条文です。租税特別措置法69条の4。ここは条文で確かめられます。
3. 小規模宅地等の特例は、貸すと「80%→50%」に下がります
もうひとつの柱が小規模宅地等の特例です。ここに、営業ではあまり強調されない事実があります。
| 区分 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
| 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
出典:国税庁 No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」(2026年8月16日確認)
アパートや駐車場として貸している土地は「貸付事業用宅地等」です。減額割合は50%、限度面積は200㎡。 一方、自宅として使い続ける「特定居住用宅地等」なら80%・330㎡です。
つまり、その土地に特定居住用の特例が使える見込みがあるなら、貸すことでかえって不利になります。
具体的には、次のような場合です。
- 子が実家に同居していて、そのまま住み続ける
- 配偶者が相続する
- いわゆる「家なき子」の要件を満たす別居の子が相続する
逆に、誰も住まない・住む予定もない実家なら、特定居住用の特例は使えません。この場合に貸付事業用の50%が意味を持ちます。判断の分かれ目は「その家に住む人がいるかどうか」です。
相続の直前に貸し始めても使えません
もうひとつの制限がこれです。
相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等
— 上記No.4124より(原則として特例の対象外)
親の具合が悪くなってから慌ててアパートを建てても、3年以内なら貸付事業用の特例は使えません。 ただし、相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業を行っていた場合は対象になります。
出典:同上
土地活用による相続税対策は、少なくとも3年以上前から動いていないと成立しない、ということです。「今から始めても間に合います」という営業には、この3年ルールを確認してください。
★条文で読むと「80%引き」ではなく「20%にする」です
小規模宅地等の特例は、租税特別措置法69条の4に書かれています。条文の書き方が、説明でよく使われる言い方と違います。
租税特別措置法第六十九条の四第一項
……相続税法第十一条の二に規定する相続税の課税価格に算入すべき価額は、当該小規模宅地等の価額に次の各号に掲げる小規模宅地等の区分に応じ当該各号に定める割合を乗じて計算した金額とする。
一 特定事業用宅地等である小規模宅地等、特定居住用宅地等である小規模宅地等及び特定同族会社事業用宅地等である小規模宅地等 百分の二十
二 貸付事業用宅地等である小規模宅地等 百分の五十同条第二項
前項に規定する限度面積要件は、……
一 特定事業用宅地等又は特定同族会社事業用宅地等……四百平方メートル以下であること。
二 特定居住用宅地等である選択特例対象宅地等 ……三百三十平方メートル以下であること。
三 貸付事業用宅地等である選択特例対象宅地等 ……二百平方メートル以下であること。
出典:e-Gov法令検索 租税特別措置法第69条の4第1項・第2項(全文を開いて確認/2026年9月3日)。括弧書きの一部を省略しています
「80%引き」ではなく「百分の二十を乗じて計算した金額」。結果は同じですが、条文は残す割合で書いています。「50%減」も「百分の五十を乗じて」です。
そして面積が違います。住んでいた土地(特定居住用)は330㎡まで、貸していた土地(貸付事業用)は200㎡まで。実家の敷地が330㎡(約100坪)を超えないなら、住んでいた土地としてなら全部が対象になります。
★相続の直前に貸し始めても、外されます
この記事はすでに「相続の直前に貸し始めても使えません」と書きました。その根拠は、貸付事業用宅地等の定義の括弧書きです。
同条第三項第四号
貸付事業用宅地等 被相続人等の事業(不動産貸付業その他政令で定めるものに限る。以下この号において「貸付事業」という。)の用に供されていた宅地等で、次に掲げる要件のいずれかを満たす当該被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したもの(特定同族会社事業用宅地等及び相続開始前三年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等(相続開始の日まで三年を超えて引き続き政令で定める貸付事業を行つていた被相続人等の当該貸付事業の用に供されたものを除く。)を除き、政令で定める部分に限る。)をいう。
出典:e-Gov法令検索 租税特別措置法第69条の4第3項第4号(全文を開いて確認/2026年9月3日)
括弧の中に、さらに括弧があります。「相続開始前三年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等」は除く——ただし「相続開始の日まで三年を超えて引き続き政令で定める貸付事業を行つていた」人は、その除外から外れる。もともと不動産貸付を続けてきた人は、3年以内に増やした土地でも対象になり得る、という構造です。
「節税のために今から貸す」は、この括弧書きに当たります。そして条文は「3年以内」としか書いていません。相続がいつ起きるかは決められないので、この3年を確実に超えられる保証はありません。
なお、この特例にも申告要件があります。同条7項が「相続税の申告書に……適用を受けようとする旨を記載し」た場合に適用する、と定めています。
4. すでに相続した人にとって、この話はどう効くのか
冒頭の①に戻ります。
小規模宅地等の特例も貸家建付地の評価も、相続が発生した時点の状態で判定されます。 すでに親から実家を相続した方が今からアパートを建てても、払い終えた(あるいはこれから払う)今回の相続税は1円も変わりません。
効くのは次の相続、つまりあなたから子への相続です。
それでも意味がある場合はあります。
- 相続した土地を長期保有する前提で、自分の相続まで20年以上ある
- 自分の資産全体が基礎控除を大きく超える見込みがある
- 3年ルールをクリアできる時間的余裕がある
この3つが揃っているなら、検討する価値はあります。逆に、「実家をどうするか」を今年か来年で決めたい人にとって、相続税対策は判断材料になりません。 その場合に見るべきは、維持費・固定資産税・売却したときの手取りです。
5. 「相続税は下がるが、資産は減る」構造
制度の話を離れて、もうひとつ書いておきます。
土地活用で相続税評価が下がるのは、借金をして建物を建て、他人に貸すことで、その土地の自由度を手放すからです。評価が下がる理由は「価値が下がったとみなされる」ことにあります。
したがって、次のことが同時に起こります。
| 起きること | 内容 |
|---|---|
| 相続税評価が下がる | 貸家建付地+小規模宅地の特例 |
| 借入金が相続財産から控除される | 債務控除 |
| 一方で、返済義務が残る | 空室でも返済は続く |
| 一方で、売りにくくなる | 入居者がいる建物は簡単には解体・売却できない |
相続税が下がっても、そのために実質的な資産や選択肢が減っていたら意味がありません。 「相続税がいくら下がるか」ではなく、「相続税の減少額 − 事業リスク」で見る必要があります。
この記事では、アパート経営の利回りや空室率について数字を書きません。 公的統計が存在せず、事業者ごとに前提が違いすぎるからです。提示された事業計画の家賃と入居率が妥当かどうかは、複数社の計画を並べて比較する以外に検証方法がありません。
6. 実家の場合に、まず確認すべき順番
- 遺産の総額は基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるか
→ 超えないなら、相続税対策としての土地活用は不要です - その家に住む人がいるか
→ いるなら特定居住用80%・330㎡のほうが有利です。貸すと50%・200㎡に下がります - 今回の相続か、次の相続か
→ すでに相続済みなら、今回の税額は変わりません - 3年以上の時間があるか
→ 相続開始前3年以内の新規貸付は原則対象外です - 返済と空室のリスクを引き受けられるか
→ 評価減の額と、事業として背負うリスクを並べて比べます
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この記事は、すでに実家を相続した方に、相続税対策としての土地活用はご自身には効かないと書きました。それでも土地を持ち続けるなら、貸した場合にいくらになるかは別の話です。タウンライフの土地活用は、アパート・マンション・駐車場などの活用プランと費用・見積りを複数社から無料で取り寄せられるサービスです(同社の説明)。当サイトは、あなたの地域に何社いるかを確認していません。
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よくある質問
ここは数字と条文で答えます。「相続税対策になります」と言われたときに、その場で確かめられる材料を置いておきます。
Q. 相続の直前にアパートを建てれば、相続税は下がりますか。
A. 駆け込みは効きません。3年の縛りがあります。
小規模宅地等の特例の貸付事業用宅地等からは、「相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等」が除かれます。国税庁はこれを「3年以内貸付宅地等」と呼んでいます。
例外は1つだけです。相続開始の日まで3年を超えて引き続き「特定貸付事業」(貸付事業のうち準事業以外のもの)を行っていた場合は、3年以内貸付宅地等に該当しません。つまりもともと事業と呼べる規模で貸していた人だけの話です。
出典:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(2026年8月16日確認)
ここを説明せずに「相続税対策になります」と言う相手は、危険です。「3年以内貸付宅地等の除外に当たりませんか」と一度聞いてみてください。その答え方で、相手の質がかなり分かります。
Q. 小規模宅地等の特例の数字を、正確に教えてください。
A. 区分ごとにこうなっています。
| 区分 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 特定居住用宅地等(住んでいた家の敷地) | 330㎡ | 80% |
| 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等(貸している土地) | 200㎡ | 50% |
出典:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(2026年8月16日確認)
実家を貸すと、この表の上から下へ移ります。330㎡・80%が、200㎡・50%になるということです。面積も割合も下がります。「貸せば相続税が下がる」と単純に言えないのは、ここが理由です。
Q. 実家を空き家のまま相続する場合、居住用の特例は使えますか。
A. 条件次第です。配偶者・同居親族以外が取得する場合は、いわゆる「家なき子」の要件をすべて満たす必要があります。
国税庁が挙げている要件(配偶者・同居親族以外が取得する場合)
- 被相続人に配偶者がいないこと
- 相続開始の直前に、被相続人の居住家屋に同居していた相続人がいないこと
- 相続開始前3年以内に、次の者が所有する家屋に居住したことがないこと——取得者本人/取得者の配偶者/取得者の三親等内の親族/取得者と特別の関係がある一定の法人。ここが要注意です。自分名義でなくても、配偶者や親族の持ち家に住んでいたら外れます
- 相続開始時に居住している家屋を、相続開始前のいずれの時点でも所有していないこと
- その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで保有していること
- このほか、国籍・納税義務者の区分に関する要件もあります
上は要点をまとめたものです。判定は条件が細かいので、最終的な可否は必ず出典の全文と税理士で確認してください。
出典:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(2026年8月16日確認)
「持ち家がある人は使えない」という趣旨の制度です。そして申告期限まで保有していることが条件なので、特例を使うつもりなら、申告期限前に売ってはいけません。売る時期を決める前に、税理士に確認してください。
Q. 貸家建付地の評価減はどれくらいですか。
A. 国税庁の計算式はこれです。
| 貸家建付地の価額 = 自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合) |
出典:国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」(2026年8月16日確認)
当サイトでは、借地権割合と借家権割合の具体的な数値を書きません。国税庁の同ページは「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できると案内するにとどめており、数値そのものを一次情報で確認できなかったためです。自分の土地の割合は、財産評価基準書で確認してください。
ここで大事なのは「賃貸割合」です。空室が増えれば賃貸割合は下がり、評価減も小さくなります。満室前提の試算をそのまま信じないでください。
Q. 貸してすぐ相続が起きたらどうなりますか。
A. 貸家建付地の評価減は効きますが、小規模宅地等の特例(貸付事業用)は3年の縛りに引っかかります。この2つは別の制度です。混同している説明が多いので、分けて考えてください。
Q. すでに実家を相続した人にも効きますか。
A. 相続税の話としては、もう終わっています。相続税は相続開始時点の状況で決まるので、相続したあとに貸し始めても、その相続の税額は変わりません。
効くとすれば「次の相続」に対してです。そして次の相続まで3年を超えて貸し続ける必要があります。そこまで見込んだうえで判断してください。
Q. 誰も住まない実家は、どう考えればいいですか。
A. まず「自分に相続税がかかるのか」を確かめてください。基礎控除の範囲に収まるなら、この記事の話は丸ごと不要です。
相続税対策のために資産を減らすのは、本末転倒になり得ます。本文の「相続税は下がるが、資産は減る」の節をもう一度読んでください。売る・貸す・持つを手取りで比べたものはこの記事にあります。
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その前に、自分の家が相続税の対象なのかを確かめてください
この記事の「1. 相続税がかかるのは、いくらからか」で書いたとおり、基礎控除を超えなければ相続税はかかりません。そして日本で相続税の課税対象になるのは、亡くなった人のうち一部です。かからない人が「節税のため」にアパートを建てるのは、いちばん高くつく選択です。減らせる税がゼロなのに、借入と空室のリスクだけが残ります。建てるかどうかを考える前に、そもそも課税されるのかを確かめてください。
この確認は、土地活用の会社ではなく税理士に聞いてください。建てる側に「あなたは相続税がかかりませんよ」と言う動機はありません。
相談そのものは無料ですが、税理士に依頼すれば報酬がかかります。依頼するかどうかは、減る税額と報酬を比べてから決めてください。特例で税額がゼロになるなら、依頼する意味は薄くなります。
問い合わせは「相続の相談」として送ってください。過去1年以内に同サービスを使ったことがある場合と、1世帯で2回目の相談は、運営側で受け付けない扱いになると明記されています。
当サイトは税理士ではありません。ここに書いた税の話は制度の説明であって、あなたの申告についての判断ではありません。同サービスの内容も同社サイトの記載であって、当サイトが利用して確かめたものではありません。
この記事で確認できなかったこと
- 借地権割合の全国分布:路線価図にA〜Gの記号で地域ごとに記載されており、全国的な平均値は国税庁から公表されていません。ご自身の土地の割合は財産評価基準書でご確認ください
- 令和7年分・令和8年分の借家権割合:本記事で確認できたのは令和6年分の「全都道府県30%」までです。長年30%が続いていますが、最新年分はご自身でご確認ください
- アパート経営の利回り・空室率の公的統計:探しましたが、国や自治体が公表している全国統計は見つかりませんでした。民間各社の数字は前提条件が公開されていないため、本記事では採用していません
- 建物部分の評価減:貸家の評価(固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合))についても制度はありますが、本記事は土地に絞りました
- 財産評価基本通達の原文にはあたっていません。貸家建付地の評価式(自用地評価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)は国税庁の財産評価基本通達26によるもので、e-Gov法令検索は法律・政令・府省令などを収録するもので、通達は対象外です。この記事では相続税法22条が「時価により」とだけ定めていることを条文で確認し、評価式は国税庁の公表資料によっています。
- 租税特別措置法69条の4の政令・財務省令は開いていません。法律(1項・2項・3項2号4号・7項)の全文はe-Gov法令検索で確認しましたが、「政令で定める部分」「財務省令で定めるもの」の中身にはあたれていません。実際の適用は税理士または税務署に確認してください。
本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。相続税の計算は財産の構成や相続人の状況で大きく変わります。実際の判断にあたっては、税理士または所轄の税務署にご相談ください。
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