借地の更新料・承諾料は払う義務があるのか|借地借家法の全文を検索しました

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借地に建つ実家を相続したら、地主から封書が届いた。「名義書換料として◯◯万円をお納めください」。あるいは更新の年に「更新料は借地権価格の5%です」。多くの人は、そういう決まりなのだろうと思って払います。

借地借家法の全文を検索しました。「更新料」も「承諾料」も「名義書換料」も、条文には一度も出てきません。「相続」という語すら出てきません。出てくるのは「財産上の給付」だけで、それは6条・17条・18条・19条・20条の5か条に置かれた、裁判所の権限を定めた言葉です。

この記事は、地主から請求される4つの名目——更新料・譲渡承諾料(名義書換料)・建替承諾料・相続を理由とする名義書換料——について、法律に「払え」と書いた条文があるかどうかだけを条文で確認します。相場は書きません。公的資料を当たりましたが、料率も算定式もどこにも存在しなかったからです。

結論だけ先に

  • ★借地借家法に「更新料」「承諾料」「名義書換料」「権利金」「相続」の語は一つも出てきません。これらは法律が定めた金銭ではなく、契約と慣行の産物です。
  • 民法612条1項が求めているのは「承諾」であって「承諾料」ではありません。承諾の対価について、この条は何も定めていません。
  • ★建替承諾料を請求されたら、まず契約書に「増改築を制限する定め」があるかを見てください。借地借家法17条2項は「増改築を制限する旨の借地条件がある場合において」から始まります。制限がなければ、この条の出番ではありません。
  • 地代の増額を通告されても、直ちに請求額を払う義務は条文上生じません(借地借家法11条2項)。「相当と認める額」を払い続ければ足ります。ただし裁判で増額が正当とされたときは、不足額に年1割の利息が付きます。

条文は2026年8月24日にe-Gov法令検索で、手続と費用は裁判所(courts.go.jp)・法務局・国税庁・法テラスの公式ページで確認しました。「支払義務を定めた条文がない」ことと「払わなくてよい」ことは同じではありません。契約書に特約がある場合の効力については、公的資料で確認できた説明がなく、この記事では判断していません。実際の交渉は弁護士にご相談ください。

1. まず、法律の全文を検索しました

e-Gov法令検索が配信する借地借家法(平成三年法律第九十号)の法令XML全文を対象に、地主から請求される名目の語がそもそも条文に存在するかを確認しました。

語 借地借家法の本文中に出てくるか
更新料 出てこない
承諾料 出てこない
名義書換料/名義変更料 出てこない
建替承諾料/増改築承諾料/譲渡承諾料 出てこない
権利金 出てこない
相続 出てこない
財産上の給付 出てくる(6条・17条・18条・19条・20条)

条文の見出しを1条から並べても、借地人に金銭の支払義務を課した条はありません

条 見出し 条 見出し
3条 借地権の存続期間 13条 建物買取請求権
4条 借地権の更新後の期間 16条 強行規定
5条 借地契約の更新請求等 17条 借地条件の変更及び増改築の許可
6条 借地契約の更新拒絶の要件 18条 借地契約の更新後の建物の再築の許可
9条 強行規定 19条 土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可
10条 借地権の対抗力 20条 建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可
11条 地代等増減請求権 21条 強行規定

この法律が定めているのは「期間」と「更新の要件」と「裁判所が許可を出せる場面」であって、借地人が地主に払う金銭ではありません。

誤解しやすいところ

「財産上の給付」は、地主が請求できるお金のことではありません。19条1項の文言は「裁判所は……その許可を財産上の給付に係らしめることができる」です。主語は裁判所で、しかも「できる」です。地主が任意の交渉で提示してくる承諾料は、この条とは別のもので、法的には合意の問題です。

借地借家法を全文検索しました 更新料・承諾料 条文に出てきません 0件 名義書換料・権利金 条文に出てきません 0件 財産上の給付 6条・17条〜20条にあります 出てくる 「財産上の給付」の主語は裁判所です

2. ★更新料——法律に条文がありません

更新について借地借家法が置いているのは、次のような条です。

借地借家法第5条(借地契約の更新請求等)
第1項 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるものを除き、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。

「従前の契約と同一の条件で更新したものとみなす」だけです。更新料の支払を更新の要件にしていません。そして6条は、地主が更新を拒む場合の「正当の事由」を定めた条です。地主が更新を拒むには正当事由が要る、という構造であって、借地人が金を払えば更新できる、という構造ではありません。

国土交通省も「更新料には法令上の根拠がない」と書いています

「『更新料』については、法令上根拠となる規定がなく、必ずしも全国的な慣習でもないことから、国土交通省の賃貸住宅標準契約書においては記載がありません。」

国土交通省 賃貸借トラブルに係る相談対応研究会「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)」令和4年3月・29ページ(2026年8月24日確認)。

この引用には限定があります

この事例集は「民間賃貸住宅」=建物の賃貸借(借家)を対象にしたもので、土地の賃貸借(借地)は対象外です。同じ資料が引用している最高裁平成23年7月15日判決も、借家の更新料条項についての判断であって、借地の更新料についての判断ではありません。借地の更新料について公的資料が示した判例の解説は、この記事の調査では見つけられませんでした。

更新料の根拠を、2つの資料で確かめました 借地借家法5条 更新料は要件ではない 「従前の契約と 同一の条件で更新」 6条は正当事由の話 国交省の事例集 法令上の根拠がない 標準契約書に記載なし ただし対象は借家 借地は対象外です 借地の更新料についての判例の解説は見つかりません

「強行規定」は3つあり、それぞれ守る範囲が違います

条 条文 守っている条
9条 この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。 3条〜8条(存続期間・更新)
16条 第十条、第十三条及び第十四条の規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。 10条(対抗力)・13条(建物買取請求権)・14条
21条 第十七条から第十九条までの規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。 17条・18条・19条(裁判所の許可)

21条は実務上とても効きます。「増改築や譲渡について裁判所に許可を求めない」「必ず地主の定める承諾料を支払う」といった条項は、借地権者に不利なものとして21条により無効となりうる構造です。ただし20条(競売の場合)は21条の対象に入っていません。

一方、更新料の特約が9条に触れて無効になるかどうかは、この記事では判断できませんでした。9条が無効にするのは「この節の規定に反する特約」で、その「この節」=3条〜8条は金銭について何も定めていません。条文の文言だけからは一義的に決まらない論点で、公的資料の説明も見つけられませんでした。

3. ★譲渡承諾料——612条が求めているのは「承諾」です

民法第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第1項 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
第2項 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

条文が要求しているのは「承諾」です。「承諾料」ではありません。承諾の対価について、612条は一言も書いていません。

承諾が得られないときに出てくるのが借地借家法19条1項です

借地借家法第19条第1項(抜粋)
……借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。

この条を、読者が誤解しやすい順に分解します。

条文が言っていること 条文が言っていないこと
裁判所が、承諾に代わる許可を与えることが「できる」 地主が承諾の対価を請求できる、とは書いていない
裁判所が、その許可を財産上の給付に「係らしめることができる」 借地人に財産上の給付を支払う義務がある、とは書いていない
発動の条件は「当事者間の利益の衡平を図るため必要があるとき」 額も率も書いていない。「◯%」という数字は条文上どこにもない
裁判所は残存期間・従前の経過・譲渡を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない(2項) 「借地権価格の何割」といった算定基準は書かれていない

裁判所の公式案内にも、相場は一行もありません

東京地方裁判所民事第22部の案内によれば、裁判所は鑑定委員会に「許可の可否、承諾料額、賃料額、建物及び借地権価格等について意見を求める」とされています。鑑定委員会は弁護士・不動産鑑定士・有識者から3人以上が指定され、現地調査を経て意見書を作ります。鑑定委員に要する費用は国が負担するので、当事者の負担はありません。

そして——東京地裁・大阪地裁いずれのページにも、承諾料の割合や相場の記載はありません。示されているのは「鑑定委員会が個別の事件ごとに意見書を作る」という仕組みだけです。

地主には「介入権」があります

19条3項は、借地人が譲渡許可を申し立てた場合に、地主の側が「他人に売るくらいなら自分が買う」と申し立てられる制度を定めています。この場合、裁判所は相当の対価を定めて建物と賃借権の譲渡を命じることができます。承諾料を取るのではなく、地主が買主になるという結末です。手続の詳細は借地非訟の記事にまとめました。

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4. ★相続で名義書換料を請求されたら

民法第896条(相続の一般的効力)
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

ここが、この記事でいちばん実害が大きいところです。条文を突き合わせると、次のようになります。

論点 条文が述べていること
借地権は相続されるか 民法896条本文により一切の権利義務が承継される。借地権が「一身に専属したもの」に当たるとする規定は、民法にも借地借家法にもない
相続は民法612条の「譲渡」か 612条1項の文言は「賃借人は……その賃借権を譲り渡し」。賃借人自身の行為を指す文言であり、相続開始による当然承継とは構造が違う
借地借家法19条1項は相続に適用されるか 19条1項の文言は「建物を第三者に譲渡しようとする場合において」。相続は借地権者が譲渡しようとする場合ではない
借地借家法に相続の規定はあるか 「相続」の語は条文中に一度も登場しない
借地非訟の6類型に相続はあるか 含まれない。6類型はいずれも17条〜20条の申立事件で、相続に関する類型はない

相続を理由とする「名義書換料」について、相続人が地主に金銭を支払うべき旨を定めた条文は、借地借家法にも民法にも存在しません。

相続したときに法律が求めているのは、建物の相続登記のほうです

借地上の建物は相続人の所有財産であり、その相続登記は令和6年4月1日から義務化されています(法務局の案内による)。「地主に名義書換料を払う」ことと「建物の相続登記をする」ことは、まったく別の話です。法律が求めているのは後者だけです。

なお、税金の世界では借地権は相続財産として扱われます。国税庁は「借地権は、相続税や贈与税の課税対象になります」と明記し、その価額は自用地としての価額 × 借地権割合で求めると案内しています(タックスアンサーNo.4611)。相続で借地権が承継されるという民法896条の帰結と、税務の扱いは整合しています。

5. 建替承諾料——まず契約書を見てください

借地借家法第17条第2項
増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。

この条は「増改築を制限する旨の借地条件がある場合において」という言葉から始まります。つまり——

契約書の状況 17条2項の適用 意味
増改築を制限する定めがある 適用される 協議が調わなければ、裁判所に「承諾に代わる許可」を申し立てられる。裁判所は3項により財産上の給付を命じることができる
増改築を制限する定めがない 適用の前提を欠く 裁判所に承諾に代わる許可を求める場面ではない

17条2項は、増改築制限特約を裁判所の力で乗り越えるための救済手続です。乗り越えるべき制限が契約書に存在しなければ、この条の出番がありません。

ここは慎重に読んでください

「増改築禁止特約がなければ地主の承諾は法律上不要である」と明示的に述べた公的資料は、この記事の調査では見つけられませんでした。条文上確実に言えるのは次の4点だけです。

  • 17条2項が発動するのは「増改築を制限する旨の借地条件がある場合」に限られる(条文の文言)
  • 借地借家法に、増改築一般について地主の承諾を要求する条文は存在しない(全条の見出し・語句調査による)
  • 民法612条1項が承諾を要求しているのは賃借権の譲渡・転貸であって、借地上の建物を建て替える場合ではない(条文の文言)
  • 借地借家法21条により、17条〜19条に反する特約で借地権者に不利なものは無効である

実務上の意味:建替承諾料を請求されたら、出発点は「契約書に増改築を制限する定めがあるか」の確認です。

6. ★地代を上げると言われたら

借地借家法第11条第2項
地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

この条は、地代の名目で承諾料の代わりを取ろうとする動きへの、条文上の受け皿になります。

順 条文が定めている流れ
1 地主が増額を請求する(11条1項)
2 協議が調わない
3 借地人は「増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額」を支払えば足りる(11条2項本文)
4 裁判が確定し、既払額に不足があれば、不足額に年1割の利息を付して支払う(同ただし書)

やってはいけないこと

支払を全部止めてしまうことは、11条2項が想定している行動ではありません。同項は「相当と認める額の地代等を支払う」ことを前提にしています。払う額で争うのと、払わないのは別です。

そして、地代の増減はいきなり訴訟にできません

民事調停法第24条の2第1項
借地借家法第十一条の地代若しくは土地の借賃の額の増減の請求……に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てをしなければならない。

「しなければならない」という義務規定です(調停前置)。調停を申し立てずに訴えを起こした場合、受訴裁判所はその事件を調停に付さなければならないと2項が定めています。

7. 払ってしまったお金の税金

すでに支払った承諾料・更新料は、税金の計算では拾えることがあります。

借地人が払った金銭 譲渡所得の計算上の扱い 出典
借地権を売るときの名義書換料(譲渡承諾料) 譲渡費用になる 国税庁タックスアンサーNo.3255「譲渡費用となるもの」⑥
更新料 借地権の取得費を構成する 所得税法施行令182条2項
建替承諾料・増改築承諾料 公的資料で明確な取扱いを確認できなかった —
払った承諾料は、税金で拾えることがあります 名義書換料(譲渡承諾料) 譲渡費用になります No.3255 更新料 取得費を構成します 令182条2項 建替・増改築承諾料 明確な取扱いを確認できず 確認できず 承諾料の領収書は、売却するまで捨てないでください

No.3255は譲渡費用となるものとして「借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など」を明示しています。承諾料の領収書は、売却するまで捨てないでください。

更新料については、所得税法施行令182条2項が「前項の取得費は……更新前に支出した改良費及び更新料の額を含むものとし」と定めています。ただしこの条の1項は「不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供する借地権」を対象にしており、自宅として使っている借地権はこの条の直接の対象ではありません。

地主が受け取った側は、原則として不動産所得です

国税庁タックスアンサーNo.1370は、不動産所得の総収入金額に含まれるものとして「名義書換料、承諾料、更新料または頭金などの名目で受領するもの」を挙げています。例外として、借地権の設定時に受け取る権利金のうち土地の時価の10分の5を超えるものは譲渡所得(分離課税)になります(No.3111)。

ここを取り違えないでください

国税庁が更新料・承諾料・名義書換料の税務上の取扱いを定めていることは、これらの支払に法律上の義務があることを意味しません。税法は「そういう金銭のやり取りが現に行われた場合にどう課税するか」を定めているだけで、私法上の支払義務を作り出すものではありません。「国税庁のページに承諾料と書いてあるのだから払う義務がある」という説明は、公的資料の読み方として誤りです。

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すでに払ってしまった承諾料・更新料を、税金の計算で拾うために

この記事の7章のとおり、名義書換料は譲渡費用(No.3255⑥)、更新料は借地権の取得費を構成する(所得税法施行令182条2項)という扱いが国税庁の資料で確認できます。ただし建替承諾料・増改築承諾料の取扱いは、国税庁の公的資料で確認できませんでした。当サイトは税理士ではありません。税理士ドットコムは弁護士ドットコム株式会社が運営する税理士紹介サービスで、全国対応、相談も紹介も無料です。

①申し込むと、30日以内に電話またはメールで確認の連絡が来ます。知らない番号でも出てください。ここで内容が確認できないと、税理士の紹介そのものが進みません。
②「税理士を紹介してほしい」と伝えるためのサービスです。税務相談そのものに答える窓口ではありません。
③過去1年以内にこのサービスを使ったことがある方は対象外です。ご家族が先に申し込んでいないか、確認してから使ってください。
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8. 契約書が見つからないとき

相続した実家の借地では、契約書が出てこないことがよくあります。契約書がなくても、借地権があること自体は公的な書類で裏づけられます。

借地借家法第10条第1項(借地権の対抗力)
借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。

建物が自分(または被相続人)の名義で登記されていれば、それだけで借地権を第三者に対抗できます。そして16条により、10条に反する特約で借地権者に不利なものは無効です。

手がかり 何がわかるか 入手先
建物の登記事項証明書 借地上の建物が誰の名義で登記されているか(10条1項の対抗力の根拠) 法務局
土地の登記事項証明書 土地の所有者が誰か。賃借権または地上権の登記があるか 法務局
固定資産税の課税明細書 建物だけに課税され土地に課税されていないこと=土地の所有者ではないこと 市区町村(地方税法343条)
地代の支払記録 通帳の振込履歴、領収書。継続的に地代を払っている事実 金融機関

登記事項証明書の手数料

請求方法 手数料
登記所の窓口(書面請求) 600円
オンライン請求・郵送受取 520円
オンライン請求・窓口受取 490円

課税明細書には例外があります

地方税法343条1項の括弧書きは、「質権又は百年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土地」については質権者・地上権者に課税すると定めています。借地権が賃借権ではなく地上権として設定され、かつ存続期間が100年を超える定めがある場合には、土地の固定資産税が借地人に課される可能性があります。実家の借地がこの類型に当たることは稀と考えられますが、条文上の例外として存在します。

9. どこに相談するか

窓口 何を扱うか 費用 借地への適合
消費者ホットライン188 消費生活に関する苦情。「事業者間取引、個人間取引など」は対象外とされる 無料(通話料別) 適合しない可能性が高い
民事調停(宅地建物調停)/簡易裁判所 「宅地又は建物の貸借その他の利用関係の紛争」(民事調停法24条) 申立手数料は訴訟の約半額(10万円の請求で訴訟1,000円に対し調停500円) 適合する。地代の増減は調停前置
借地非訟/地方裁判所 借地借家法17条・18条・19条・20条の許可申立て 固定資産評価額を基礎に算定。鑑定委員の費用は国庫負担 承諾が得られないときの正面からの手段
法テラス 民事・家事・行政の法律相談、費用の立替 資力要件を満たせば法律相談は無料(同一問題3回まで) 適合する
自治体の宅地建物相談 自治体により異なる。横浜市は「借地権の更新、立ち退き」をよくある相談として明示 無料(回数制限あり) 適合する

188にかけても解決しにくい理由

国民生活センターの相談案内ページには、相談できない対象として「事業者間取引、個人間取引など」が挙げられています。個人の地主と個人の借地人との借地契約は、典型的には個人間取引にあたります。同センターの消費者トラブルFAQ「住まい・修理、引越」カテゴリを確認しましたが、「借地」「地主」「土地の賃貸借」に関する独立した項目は確認できませんでした。

188にかけること自体は妨げられませんが、借地の紛争は消費生活相談の枠組みで解決される類型ではありません。民事調停・借地非訟・法テラスに向かうほうが実質的です。

民事調停は、更新料・承諾料の争いにも使えます

民事調停法24条は「宅地又は建物の貸借その他の利用関係の紛争」を宅地建物調停事件としています。地代だけでなく、更新料や承諾料をめぐる争いも「利用関係の紛争」に位置づけて調停を申し立てる余地があります。裁判所の案内では、通常2〜3回の期日でおおむね3か月以内に成立するとされ、調停調書に記載された内容は確定判決と同じ効力を持ちます。申立用紙と記入方法の説明は簡易裁判所の窓口に備え付けてあります。

法テラスの資力要件(手取月収額の基準)

家族人数 東京都特別区・大阪市など その他の地域 資産の合計額
単身者 200,200円 182,000円 180万円以下
2人家族 276,100円 251,000円 250万円以下
3人家族 299,200円 272,000円 270万円以下
4人家族 328,900円 299,000円 300万円以下

家賃・住宅ローンを払っている場合は加算があります(東京都特別区で1人53,000円、2人68,000円、3人85,000円、4人92,000円が上限)。ただし、相続した借地上の実家がある場合に、その建物・借地権が資産要件でどう評価されるかは、この記事の調査では確認できませんでした。

10. 平成4年8月1日より前の借地には、古い法律が残ります

借地借家法は平成4年8月1日に施行され、同時に借地法(大正10年法律第49号)・建物保護に関する法律・借家法が廃止されました(附則2条)。ただし附則4条ただし書は「廃止前の……借地法及び借家法の規定により生じた効力を妨げない」とし、附則5条は施行前に設定された借地権の建物の朽廃による消滅について「なお従前の例による」としています。

相続した実家の借地が戦前・戦後まもなくの契約である場合、存続期間や更新について適用される条文が、いま検索して出てくる借地借家法とは異なる可能性があります。契約の設定時期は必ず確認してください。

11. 請求書が届いたときの順番

  1. 契約書を探す。見つからなければ建物の登記事項証明書(490〜600円)と固定資産税の課税明細書で借地権の存在を固める。
  2. 契約書があるなら、名目ごとに該当箇所を探す。建替承諾料なら「増改築を制限する定め」、更新料なら更新料条項。条項が見当たらないのに請求されているなら、その時点で交渉の位置が変わります。
  3. 契約の設定時期を確認する。平成4年8月1日より前なら旧借地法の適用が残る部分がある。
  4. いつまでに何が必要かを整理する。売却が絡むなら、譲渡許可の申立ては買主を決めてからです(借地非訟の記事参照)。
  5. 金額の見当をつける。承諾料が借地権の価値に見合うかは、借地権そのものの評価額が分からないと判断できません。
  6. 専門家に相談する。資力要件を満たすなら法テラス(同一問題3回まで無料)、自治体の宅地建物相談、そして弁護士。
  7. 合意できないなら、簡易裁判所の民事調停。地代の増減は調停前置です。
請求書が届いたときの順番 1 契約書を探す 無ければ登記事項証明書で固める 2 名目ごとに条項を探す 条項が無いなら交渉の位置が変わる 3 設定時期を確認する 平成4年8月1日より前は旧法 4 金額の見当をつける 借地権の評価額なしでは判断できない 5 専門家に相談する 法テラス・自治体の相談・弁護士

よくある質問

Q. 更新料を払わないと、契約を更新してもらえませんか?

「更新料を払わなければ更新できない」と定めた条文は、借地借家法にはありません。5条1項は借地権者が更新を請求したとき、建物がある場合に限り「従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす」と定め、地主が更新を拒むには6条の正当事由が要るという構造になっています。ただし、契約書に更新料条項がある場合にそれが有効かどうかについて、公的資料の説明は見つけられませんでした。この記事は「法律に条文がない」ところまでしか述べていません。

Q. 相続しただけで名義書換料を請求されました。払う義務はありますか?

相続を理由として相続人が地主に金銭を支払うべき旨を定めた条文は、借地借家法にも民法にもありません。民法896条は相続人が「一切の権利義務を承継する」と定め、民法612条1項が承諾を求めているのは賃借人自身が「譲り渡し」た場合です。借地借家法に「相続」の語は一度も出てきません。ただし契約書に相続時の金銭支払を定めた特約が置かれている場合の扱いについては、公的資料での説明を確認できませんでした。まず契約書を確認してください。

Q. 「承諾料は借地権価格の10%が相場」と聞きました。本当ですか?

公的な一次情報では裏づけられませんでした。借地借家法19条1項は「財産上の給付に係らしめることができる」とするだけで額も率も定めていません。東京地裁・大阪地裁の借地非訟の案内にも、算定基準や割合の記載はありません。示されているのは、鑑定委員会(弁護士・不動産鑑定士・有識者3人以上)が事件ごとに意見書を作るという手続だけです。「◯%」という数字は、民間の実務慣行と裁判実務の集積であって、法律や公的機関が定めた基準ではありません。

Q. 建て替えたいのですが、地主が承諾してくれません。

まず契約書に増改築を制限する定めがあるかを確認してください。制限の定めがある場合は、協議が調わなければ借地借家法17条2項により裁判所に「承諾に代わる許可」を申し立てられます。裁判所は3項により財産上の給付を命じることができます。制限の定めがない場合、17条2項が想定する場面ではありません。ただし「制限特約がなければ承諾が不要」と明示した公的資料は確認できていないので、弁護士に相談してください。

Q. 契約書に「裁判所に許可を求めない」と書いてあります。

借地借家法21条は「第十七条から第十九条までの規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする」と定めています。17条〜19条は裁判所の許可を定めた条ですから、それを封じる特約は借地権者に不利なものとして無効となりうる構造です。ただし20条(競売の場合)は21条の対象に入っていません。

Q. 地代を倍にすると通告されました。すぐ払わないといけませんか?

条文上、直ちに請求額を払う義務は生じません。借地借家法11条2項は「増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる」と定めています。ただし、裁判が確定して既払額に不足があったときは、不足額に年1割の利息が付きます。そして支払を全部止めるのは、この条が想定した行動ではありません。

Q. 地代でもめたら、すぐ裁判できますか?

できません。民事調停法24条の2第1項が「まず調停の申立てをしなければならない」と定めています(調停前置)。調停を申し立てずに訴えを提起した場合、受訴裁判所はその事件を調停に付さなければならないとされています(同2項)。宅地建物調停事件の管轄は、宅地・建物の所在地を管轄する簡易裁判所です(同24条)。

Q. 払ってしまった承諾料は、何かで取り戻せますか?

返してもらう筋とは別に、税金の計算で拾える場合があります。国税庁タックスアンサーNo.3255は、譲渡費用となるものとして「借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など」を挙げています。領収書は売却するまで保管してください。更新料については、所得税法施行令182条2項が借地権の取得費を構成するものとして扱っています。

Q. 地主から「更新料は税務署に申告している正当な収入だ」と言われました。

それは支払義務の根拠になりません。国税庁タックスアンサーNo.1370は、不動産所得の総収入金額に「名義書換料、承諾料、更新料または頭金などの名目で受領するもの」を含めていますが、税法は「現に金銭のやり取りがあった場合にどう課税するか」を定めているだけで、私法上の支払義務を作り出すものではありません。課税されることと、払う義務があることは別の話です。

Q. 契約書がありません。借地権があること自体を証明できますか?

借地借家法10条1項は「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる」と定めています。建物が自分または被相続人の名義で登記されていれば、それが対抗力の根拠になります。登記事項証明書は窓口600円、オンライン請求・窓口受取なら490円です。16条により、10条に反する借地権者に不利な特約は無効です。

Q. 消費者ホットライン188に相談していいですか?

かけること自体は妨げられませんが、解決に結びつきにくい可能性が高いです。国民生活センターの相談案内には、相談できない対象として「事業者間取引、個人間取引など」が挙げられています。個人同士の借地契約は典型的には個人間取引にあたります。同センターの消費者トラブルFAQ「住まい・修理、引越」カテゴリにも、借地・地主・土地の賃貸借に関する独立した項目は確認できませんでした。簡易裁判所の民事調停、法テラス、自治体の宅地建物相談のほうが実質的です。

この記事で確認できなかったこと

  • 更新料・譲渡承諾料・建替承諾料の相場や料率を示した公的資料。借地借家法・裁判所・国土交通省・法務省のいずれにも、額や率の目安の記載を確認できませんでした。
  • 裁判所が財産上の給付を算定する基準・計算式。東京地裁・大阪地裁いずれの借地非訟の案内にも記載がありません。示されているのは鑑定委員会が事件ごとに意見書を作るという手続だけです。
  • 借地非訟事件で認められた承諾料の統計・実績。調査の範囲では見つけられませんでした。
  • 更新料特約が借地借家法9条(強行規定)に触れて無効になるかどうか。公的な説明を見つけられませんでした。9条が守るのは3条〜8条で、それらは金銭に触れていない、というところまでしか条文からは言えません。
  • 法定更新(5条)の場合に更新料の支払義務が生じるかどうか。公的資料の記述を見つけられませんでした。
  • 借地の更新料に関する最高裁判例の公的な解説。国土交通省の事例集が引用する最高裁平成23年7月15日判決は建物賃貸借(借家)の更新料条項に関するもので、同事例集は借地を対象外としています。
  • 「増改築禁止特約がなければ地主の承諾は不要」と明示的に述べた公的資料。条文の文言までは確認しましたが、この帰結を明示した公的な解説は確認できませんでした。
  • 「相続は民法612条の譲渡に当たらないから承諾は不要」と明示的に述べた公的資料。法務省・裁判所・自治体の法律相談ページを探しましたが、この整理を明記した公的ページは確認できませんでした。
  • 契約書に相続時の金銭支払を定めた特約が置かれている場合の効力。公的資料での説明を確認できませんでした。
  • 更新料や承諾料の支払を拒んだ場合に契約解除されるかどうか。公的資料での説明を確認できませんでした。
  • 借地借家法 附則6条(借地契約の更新に関する経過措置)の本文。e-Gov法令検索が配信する法令XMLが末尾で切断されており、見出しは確認できましたが本文を取得できませんでした。平成4年8月1日より前の借地権の更新について、旧借地法のどの規定がなお適用されるかは、この条を直接確認する必要があります。
  • 建替承諾料・増改築承諾料を払った場合の譲渡所得計算上の取扱い。タックスアンサーNo.3252(取得費)にもNo.3255(譲渡費用)にも項目がありません。
  • 地主が受け取った更新料が譲渡所得となる場合があるか。No.3111は借地権設定時の「権利金」を扱っており、「更新料」の語は登場しません。
  • 法テラスの資産要件における借地権・建物の評価方法。確認できませんでした。
  • 登記事項証明書を所有者以外の者が請求できるか。参照した法務局のページに明記がありませんでした。

まとめ

  1. 借地借家法に「更新料」「承諾料」「名義書換料」「権利金」「相続」の語は一つも出てきません。出てくるのは「財産上の給付」だけで、それは裁判所の権限を定めた言葉です。
  2. 民法612条1項が求めているのは「承諾」であって「承諾料」ではありません。承諾の対価について、この条は何も定めていません。
  3. 19条1項の「財産上の給付」の主語は裁判所です。額も率も条文に書かれておらず、裁判所の公式案内にも相場の記載はありません。
  4. 相続で名義書換料を請求されても、相続人が地主に金銭を支払うべき旨を定めた条文はありません。法律が求めているのは建物の相続登記のほうです(令和6年4月1日から義務化)。
  5. 建替承諾料は、まず契約書に「増改築を制限する定め」があるかを確認してください。借地借家法17条2項は制限特約がある場合の救済手続です。
  6. 裁判所の許可を封じる特約は、21条により無効となりうる構造です。ただし20条は対象外。
  7. 地代の増額を通告されても、「相当と認める額」を払えば足ります(11条2項)。ただし裁判で増額が正当とされたときは、不足額に年1割の利息が付きます。支払を全部止めるのは想定された行動ではありません。
  8. 地代の増減は調停前置です(民事調停法24条の2)。更新料・承諾料の争いも「利用関係の紛争」として宅地建物調停に乗せる余地があります。
  9. 払った名義書換料は譲渡費用になります(No.3255⑥)。領収書を捨てないでください。
  10. 国税庁が税務上の取扱いを定めていることは、支払義務があることを意味しません。課税の話と、払う義務の話は別です。

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