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親が地主だった。他人に貸している土地——底地を相続した。地代は年に十数万円。自分では一切使えない。売ろうとしても買い手がつかない。
それなら国に引き取ってもらおう、と考えた人へ。相続土地国庫帰属制度では、底地は申請すること自体ができません。「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」2条3項2号が、「担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地」を却下事由として挙げているからです。借地上に建物が建っていれば1号(建物の存する土地)にも該当し、二重に閉じられています。
この記事は、底地を相続した人が最初に知るべきことを、条文と国税庁・法務省の公表資料だけで組み立てます。底地がいくらで売れるかという相場は書きません。公的機関が底地の市場価格を公表している資料は、探しましたが見つかりませんでした。
結論だけ先に
- ★底地は相続土地国庫帰属制度の対象外です。使用収益権が設定されている土地は申請できません(同法2条3項2号)。法務省も「地上権、地役権、賃借権等の使用収益権が設定されている場合」を明示しています。
- 相続税評価は「自用地としての価額 ×(1 − 借地権割合)」(タックスアンサーNo.4613)。借地権割合90%(記号A)の地域なら、底地の評価は自用地価額の10%です。ただし借地権の取引慣行がない地域は借地権割合20%として計算するので、底地は80%評価になります。
- ★「土地の無償返還に関する届出書」が出ていると、借地権はゼロ(昭60直資2-58 第5項)・底地は自用地価額の80%(同第8項)になります。ただし同第8項の(注)は、その土地が使用貸借なら底地は100%(自用地としての価額)だと定めています。同族会社に貸していた場合は、まずこの届出の有無と、賃貸借か使用貸借かを確認してください。
- 更新を拒むには6条の正当事由が要り、それが認められても終わりではありません。借地人から建物を時価で買い取れと請求されえます(13条)。しかもこれに反する特約は16条により無効です。
2026年8月24日にe-Gov法令検索・国税庁タックスアンサー・法務省・国土交通省の公表資料で確認しました。財産評価基本通達25・27・89と個別通達(昭60直資2-58・昭48直資2-189・昭43直資3-22)は、条文本文まで確認して項番号つきで逐語引用しています。底地の売却価格の相場は、公的資料に存在しなかったため書いていません。個別の判断は税理士・弁護士にご相談ください。
1. 「底地」に法律上の定義はあるのか
| 論点 | この記事で確認できたこと |
|---|---|
| 「底地」を定義する条文 | 借地借家法・民法・相続税法には見つかりませんでした |
| 国の公的基準における定義 | あります。国土交通省「不動産鑑定評価基準」総論第2章第2節Ⅰ |
| 国税庁の公的文書での用語使用 | 使われています(タックスアンサーNo.3505・No.4560の表題) |
| 法令上の対応する概念 | 借地借家法は「底地」ではなく「借地権設定者」という語で地主の地位を規定(2条3号) |
| 相続税評価上の対応する概念 | 「貸宅地」(借地権など宅地の上に存する権利の目的となっている宅地) |
不動産鑑定評価基準
「底地とは、宅地について借地権の付着している場合における当該宅地の所有権をいう。」
「底地」は業界の言葉であって、法律の言葉ではありません。役所の窓口や申告書で通じるのは「貸宅地」のほうです。
2. ★国は底地を引き取ってくれません
相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律 第2条第3項(柱書)
承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。
| 号 | 却下事由 | 底地への当てはめ |
|---|---|---|
| 1号 | 建物の存する土地 | 借地上に建物があれば該当 |
| 2号 | 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地 | 借地権(賃借権・地上権)が設定されているので該当 |
| 3号 | 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地 | — |
| 4号 | 特定有害物質により汚染されている土地 | — |
| 5号 | 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地 | — |
法務省「相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件」は、却下事由の説明として次のように述べています。
「抵当権等の担保権や、地上権、地役権、賃借権等の使用収益権が設定されている場合」は申請できません。
理由として、国が土地を管理する際に権利者への配慮が必要になること、担保権の実行により所有権を失う可能性があることが挙げられています。
これは「却下」であって「不承認」ではありません
2条3項は「申請することができない」と定めた却下事由です。崖地や地下の埋設物などの不承認事由(法5条1項)とは別の段階の話で、審査に進む前に止まります。底地を国に引き取ってもらう道は、この制度には存在しません。
3. 底地の相続税評価——借地権割合の裏返し
貸宅地(借地権の目的となっている宅地)の価額 = 自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 借地権割合)(No.4613)
| 記号 | 借地権割合 | 底地(貸宅地)の相続税評価額 |
|---|---|---|
| A | 90% | 自用地価額 × 10% |
| B | 80% | 自用地価額 × 20% |
| C | 70% | 自用地価額 × 30% |
| D | 60% | 自用地価額 × 40% |
| E | 50% | 自用地価額 × 50% |
| F | 40% | 自用地価額 × 60% |
| G | 30% | 自用地価額 × 70% |
| 記号なし | 取引慣行なし=20%として計算 | 自用地価額 × 80% |
この20%は、通達の本文では次の形で書かれています。
財産評価基本通達25(貸宅地の評価)(1)(抜粋)
借地権の目的となっている宅地の価額は、……その宅地の価額(以下この節において「自用地としての価額」という。)から27(借地権の評価)の定めにより評価したその借地権の価額(同項のただし書の定めに該当するときは、同項に定める借地権割合を100分の20として計算した価額とする。)を控除した金額によって評価する。
最後の行を見落とさないでください。No.4613も「借地権の取引慣行がないと認められる地域にある貸宅地の価額を評価する場合には、借地権割合を20パーセントとして計算します」と明記しています。地方で路線価図に記号が付いていない地域では、底地は自用地価額の80%で評価されます。使えない土地なのに、評価額はほとんど下がりません。
この割合は「売れる値段」ではありません
借地権割合(記号A〜G)は、相続税・贈与税の財産評価のための割合です。「借地権割合が60%だから底地は時価の40%で売れる」という命題を裏づける公的資料は、この記事の調査では見つかりませんでした。底地の売却価格の相場は、公的機関が公表していません。この記事に相場を書かないのはそのためです。
定期借地権が設定されている底地には下限があります
| 定期借地権等の残存期間 | 割合 |
|---|---|
| 5年以下 | 5% |
| 5年超10年以下 | 10% |
| 10年超15年以下 | 15% |
| 15年超 | 20% |
原則の計算による金額が「自用地としての価額 − 自用地としての価額 × 上表の割合」を上回る場合は、この算式で求めた金額が評価額になります。残存期間が短くなるほど、底地の評価は自用地価額に近づきます。
★ほとんど知られていない「貸宅地割合」という別ルート
評基通25(1)には、さらにただし書があります。
同 25(1) ただし書
ただし、借地権の目的となっている宅地の売買実例価額、精通者意見価格、地代の額等を基として評定した価額の宅地の自用地としての価額に対する割合(以下「貸宅地割合」という。)がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長が貸宅地割合を定めている地域においては、その宅地の自用地としての価額にその貸宅地割合を乗じて計算した金額によって評価する。
先に「貸宅地割合」の有無を確認してください
国税局長が貸宅地割合を定めている地域では、「1 − 借地権割合」ではなく、その貸宅地割合をそのまま掛けます。順番が逆です。まず貸宅地割合が定められている地域かどうかを確認し、定められていればそちらが優先します。財産評価基準書の該当都道府県のページで確認してください。
4. ★「無償返還の届出」があると、話がまるごと変わります
親が同族会社に土地を貸していた場合、税務署に「土地の無償返還に関する届出書」が提出されていることがあります。
| 場面 | 取扱い |
|---|---|
| 「相当の地代」の水準 | 自用地としての価額のおおむね年6%相当額 |
| 相当の地代を収受している場合の貸宅地 | 自用地としての価額の80% |
| 相当の地代に満たない地代の場合の貸宅地 | 自用地としての価額から借地権の価額を控除した金額。ただし自用地価額の80%が上限 |
| 無償返還届出書が出ている場合の借地権 | ゼロ |
| 無償返還届出書が出ている場合の貸宅地 | 自用地としての価額の80% |
「借地権割合が90%だから底地は10%評価」というのは、権利金の授受がある通常の借地の話です。無償返還の届出が出ていれば、借地権はゼロ、底地は80%という、まったく違う結論になります。
根拠は昭和60年6月5日 直資2-58です。項番号ごとに引きます
第1項(抜粋) ……当該権利金の支払に代え、当該土地の自用地としての価額に対しておおむね年6%程度の地代(以下「相当の地代」という。)を支払っている場合は、借地権を有する者については当該借地権の設定による利益はないものとして取り扱う。
第5項 借地権が設定されている土地について……「土地の無償返還に関する届出書」……が提出されている場合の当該土地に係る借地権の価額は、零として取り扱う。
第6項(1) (相当の地代を収受している場合で)権利金を収受していない場合又は特別の経済的利益を受けていない場合——当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額
第8項 借地権が設定されている土地について、無償返還届出書が提出されている場合の当該土地に係る貸宅地の価額は、当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額によって評価する。
★第8項には(注)があります。ここを外すと80%と100%を取り違えます
同 第8項(注)
使用貸借に係る土地について無償返還届出書が提出されている場合の当該土地に係る貸宅地の価額は、当該土地の自用地としての価額によって評価するのであるから留意する。
同じ「無償返還の届出あり」でも、賃貸借なら80%、使用貸借なら100%です。親が同族会社に土地を貸していて、地代が公租公課の相当額以下だった場合は、使用貸借と扱われて80%評価にならない可能性があります。(使用貸借の線引きは昭48直資2-189第1項=公租公課に相当する金額以下かどうか。借地権の記事に書きました。)
同族会社に貸していたなら、もう1本の通達が乗ります
昭60直資2-58の第6項と第8項は、どちらも「被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し土地を貸し付けている場合には昭和43年10月28日付 直資3-22の適用があることに留意する」としています。その43年通達の中身は次のとおりです。
昭和43年10月28日 直資3-22「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」(別紙1より)
……課税時期における被相続人所有の貸宅地は、自用地としての価額から、その価額の20%に相当する金額(借地権の価額)を控除した金額により、評価することとされたい。
なお、上記の借地権の価額は、……被相続人所有の同社の株式評価上、同社の純資産価額に算入することとされたい。
★後段が重要です。土地の評価で引いた20%は消えるのではなく、その同族会社の株式の評価に乗ってきます。親が会社の株を持っていたなら、土地で下がったぶんが株で戻る形になります。底地だけを見ていると、この往復を見落とします。
5. 小規模宅地等の特例は使えるか
「貸付事業用宅地等」に該当すれば、200㎡までの部分について50%減額です(措法69条の4)。
| 区分 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
ただし「3年以内」の壁があります
措法69条の4第3項4号の括弧書きは、「相続開始前三年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等」を貸付事業用宅地等から除いています。ただしその括弧書きの中にさらに例外があり、相続開始の日まで3年を超えて引き続き「政令で定める貸付事業」を行っていた被相続人等のその貸付事業の用に供されたものは、除外の対象から外れます。
| 場面 | 結論 |
|---|---|
| 親が長年地主として土地を貸してきた(3年より前から貸付事業) | 貸付事業用宅地等に該当し得る |
| 相続直前に急に貸し始めた土地 | 原則として使えない |
取得者の要件は、イまたはロのいずれかです。イは「相続開始時から申告期限までの間に被相続人の貸付事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ貸付事業の用に供していること」。つまり、申告期限まで売らずに持ち続け、貸し続けることが条件です。
確認できなかったこと
「政令で定める貸付事業(特定貸付事業)」の具体的な定義は措置法施行令40条の2にありますが、この記事では施行令の原文を確認していません。貸付事業用宅地等と他の区分を併用する場合の按分算式(措法69条の4第2項3号のイ・ロ・ハ)も原文未確認です。平成30年度改正の経過措置も確認できませんでした。
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無償返還の届出があるかどうかで、底地の評価額は何倍も変わります
この記事の4章のとおり、「土地の無償返還に関する届出書」が出ていれば借地権はゼロ・底地は自用地価額の80%評価で、借地権割合90%の地域なら10%評価という一般論とは、8倍の差が出ます。そのうえ小規模宅地等の特例は、3年内除外の判定と「申告期限まで保有・貸付継続」という要件が絡みます。当サイトは税理士ではありません。税理士ドットコムは弁護士ドットコム株式会社が運営する税理士紹介サービスで、全国対応、相談も紹介も無料です。
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先に、税務署に無償返還の届出が出ているかどうかを確認してください。それだけで話が変わります。
6. ★契約を終わらせたい——そのあとに来るもの
「更新のときに返してもらう」と考えている人が最初に読むべき条文です。
借地借家法第5条
第1項 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、……従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。
第2項 借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、前項と同様とする。
建物がある限り、地主が何もしなければ契約は自動的に更新されます(法定更新)。
借地借家法第6条
前条の異議は、借地権設定者及び借地権者が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。
| 論点 | 条文上の帰結 |
|---|---|
| 立退料は正当事由の独立した要件か | いいえ。「考慮して」正当事由の有無を判断する考慮要素の一つにすぎない |
| 立退料さえ払えば更新拒絶できるか | 条文はそう書いていない。①地主が土地の使用を必要とする事情、②借地人が土地の使用を必要とする事情が主たる要素として先に置かれている |
| 「立退料」という語が条文にあるか | ない。条文上の表現は「財産上の給付」 |
| 金額の基準は条文にあるか | ない。金額算定に関する規定は一切ない |
そして、正当事由が認められても終わりではありません
借地借家法第13条第1項(建物買取請求権)
借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
これは「請求することができる」——地主の承諾なしに売買が成立する権利です。そして16条により、13条に反する借地権者に不利な特約は無効です。契約書に「建物買取請求をしない」と書いてあっても、その部分は効きません。
7. 借地人の権利は、建物の登記だけで守られています
借地借家法第10条
第1項 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
第2項 前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。
土地の賃借権の登記は不要です。建物の登記さえあれば、借地権は底地を買った人にも相続した人にも対抗できます。
底地を売っても、賃貸人の地位は自動的に買主に移ります
| 場面 | 帰結 | 根拠 |
|---|---|---|
| 借地人が建物を登記している底地を第三者に売った | 借地権は買主に対抗できる。買主は当然に賃貸人たる地位を承継する(借地人の承諾は不要) | 借地借家法10条1項、民法605条の2第1項 |
| 買主が「自分が地主だ」と借地人に主張するには | 所有権移転登記が必要 | 民法605条の2第3項 |
| 賃貸人の地位を売主に留保したい場合 | 譲渡人・譲受人の合意(留保+譲受人が譲渡人に賃貸する旨)が必要 | 民法605条の2第2項 |
8. 地代を上げたいとき
借地借家法第11条第1項
地代又は土地の借賃が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
ただし書に注意してください。「一定の期間地代等を増額しない」という特約があると、その期間は増額請求ができません。親が結んだ契約書にこの条項が入っていないかは、相続したらすぐ確認する項目です。
そして、地代の増減について訴えを起こすには、まず調停を申し立てなければなりません(民事調停法24条の2第1項・調停前置)。借地人が「相当と認める額」を払い続けている間は、裁判が確定するまでその額で足ります(借地借家法11条2項)。確定後に不足があれば、年1割の利息が付きます。
地代の相場(固定資産税の何倍、路線価の何%など)を示した公的資料は、この記事の調査では見つかりませんでした。11条1項が挙げているのは上の3つの判断材料だけで、算定式は定められていません。
9. 底地の5つの出口
| 出口 | 法的な位置づけ | 主な根拠 |
|---|---|---|
| ① 借地人に売る | 底地所有権の売買。借地人が買えば借地権と所有権が同一人に帰属する | 民法上の売買(親子間はNo.4560に注意) |
| ② 第三者・業者に売る | 買主は賃貸人たる地位を承継する | 民法605条の2第1項、借地借家法10条1項 |
| ③ 等価交換 | 固定資産の交換の特例の対象になり得る | 所得税法58条、No.3502・No.3505 |
| ④ 借地権と底地を同時に第三者へ売る | それぞれが自己の権利を譲渡(実質的には完全所有権としての売却) | これを直接説明する公的資料は確認できませんでした |
| ⑤ 介入権 | 借地人の譲渡許可申立てに対し、地主が自ら買い取る旨を申し立てる制度 | 借地借家法19条3項(競売は20条2項) |
親子間で底地を売買するときの落とし穴
タックスアンサーNo.4560によれば、親が借地権を持つ土地の底地を子が買い取り、その後に親子間で地代の授受が行われなくなった場合、その借地権は親から子へ贈与されたものとして取り扱われます。ただし、親と子が連署した「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を子の納税地の所轄税務署長に速やかに提出すれば、贈与として取り扱われません。この場合、その借地権は後に相続が発生したときに親の相続財産として扱われます。
10. ★等価交換——所得税法58条という道
借地人と土地を分け合い、それぞれを更地(完全所有権)にする方法です。
所得税法58条1項1号は、交換の特例の対象となる資産として「土地(建物又は構築物の所有を目的とする地上権及び賃借権……を含む。)」を挙げています。この括弧書きにより借地権が「土地」に含まれるので、借地権と底地の交換は「土地と土地の交換」になります。
国税庁No.3505「借地権と底地を交換したとき」も、「借地権と底地の一部との交換も、土地と土地との交換になり」特例の対象となり得るとしています。
特例の6要件(No.3502)
| 順 | 要件 |
|---|---|
| 1 | 譲渡する資産・取得する資産が、いずれも固定資産であること(棚卸資産は対象外) |
| 2 | いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること(借地権は土地の種類に含まれる) |
| 3 | 譲渡する資産は1年以上所有していたものであること |
| 4 | 取得する資産は、相手方が1年以上所有していたもので、かつ交換のために取得したものでないこと |
| 5 | 取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること |
| 6 | 譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること |
6番目の要件が実務のハードルです
等価交換は「借地権割合どおりに面積を割る」形で行われるのが自然ですが、時価の差が高いほうの20%以内という制約があるため、割り方によっては特例が使えなくなります。また5番目の「同じ用途」要件があるので、交換後の使い方にも注意が要ります。交換差金を受け取った場合、その差金は譲渡所得として課税対象になります。
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国が引き取らない底地を、それでも手放したいなら
この記事の2章のとおり、底地は相続土地国庫帰属制度に申請すること自体ができません。ラクウル(株式会社ネクサスプロパティマネジメント/国土交通大臣(1)第10311号)は、再建築不可・共有持分・借地権とならんで底地を買取対象として明示している会社で、日本全国が対象です。自社で買い取るため仲介手数料はかかりません。
①買取価格は、仲介で売れる価格より低くなります。そして底地の売却価格の相場は公的資料に存在しないため、当サイトは提示額が妥当かどうかを判断できません。複数社に当たって並べてください。②小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等・200㎡・50%減額)は、相続税の申告期限まで保有し、貸付けを続けることが要件です(措法69条の4第3項4号イ)。申告期限より前に売ると、この特例が使えなくなることがあります。売却の時期は、必ず税理士に確認してから決めてください。③この記事の9章のとおり、借地人に売る・等価交換するという出口もあります。買取業者に出す前に、借地人に打診したかを思い出してください。④申し込むと担当者から連絡が入ります。売却を考えていない相談は対象外です。⑤当サイトはこの会社の査定額や対応を確認していません。⑥このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって買取価格が下がることはありません。
売る前に、申告期限と小規模宅地等の特例だけは必ず確認してください。
11. 相続したら最初に確認する8項目
| 順 | 確認事項 | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 1 | 借地上の建物の登記の有無 | 登記があれば借地権は第三者に対抗できる(10条1項)。底地の売却価値・処分方法に直結する |
| 2 | 建物が滅失していないか/掲示がされていないか | 滅失後2年の掲示ルール(10条2項) |
| 3 | 借地権の種類(普通借地権か定期借地権等か) | 相続税評価がまったく異なる |
| 4 | 「土地の無償返還に関する届出書」の提出の有無 | 提出があると借地権はゼロ(昭60直資2-58第5項)・底地は80%(同第8項)。ただし使用貸借なら底地は100%(同第8項注) |
| 5 | 地代の水準(自用地価額の年6%以上か) | 相当の地代に該当するかで評価が変わる |
| 6 | 貸付事業をいつから行っていたか(3年超か) | 小規模宅地等の特例の3年内除外(措法69条の4第3項4号括弧書き) |
| 7 | 地代を増額しない旨の特約の有無 | あると増額請求ができない(11条1項ただし書) |
| 8 | 借地権が旧借地法時代のものか | 適用法令が変わる。平成4年8月1日が境目 |
よくある質問
Q. 底地を国に引き取ってもらえますか?
できません。申請すること自体ができません。相続土地国庫帰属法2条3項2号が「担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地」を却下事由としており、法務省も「地上権、地役権、賃借権等の使用収益権が設定されている場合」は申請できないと明示しています。借地上に建物があれば1号(建物の存する土地)にも該当し、二重に閉じられています。
Q. 底地の相続税評価はどう出しますか?
自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 借地権割合)です(No.4613)。借地権割合は路線価図の記号(A=90%〜G=30%)または評価倍率表の借地権割合欄で調べます。借地権の取引慣行がないと認められる地域では借地権割合を20%として計算するので、底地は自用地価額の80%評価になります。
Q. 借地権割合が60%なら、底地は時価の40%で売れますか?
そう言える公的資料は見つかりませんでした。借地権割合は相続税・贈与税の財産評価のための割合であって、市場での売買価格を定めるものではありません。底地の売却価格の相場を公表している公的機関の資料は、この記事の調査では確認できませんでした。そのため、この記事には相場を書いていません。
Q. 親が同族会社に貸していた土地です。評価は変わりますか?
「土地の無償返還に関する届出書」が税務署に出ているかどうかで、結論がまるごと変わります。届出が出ている場合、借地権の価額はゼロ(昭60直資2-58 第5項)、貸宅地は自用地としての価額の80%(同 第8項)になります。ただし同 第8項の(注)は、その土地が使用貸借なら貸宅地は自用地としての価額(=100%)で評価すると定めています。地代が公租公課の相当額以下なら使用貸借と扱われるので、80%だと思い込むと危険です。さらに同族会社の場合は昭43直資3-22が乗り、土地で引いた20%が同社の株式の純資産価額に算入されます。「借地権割合が90%だから底地は10%評価」という一般論は、権利金の授受がある通常の借地の話です。まず届出の有無を確認してください。
Q. 小規模宅地等の特例は底地に使えますか?
貸付事業用宅地等に該当すれば、200㎡までの部分について50%減額です。ただし相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された土地は原則として除かれます(措法69条の4第3項4号の括弧書き)。親が長年地主として貸してきた土地なら該当し得ますが、相続人が申告期限まで保有し、貸付けを続けることが要件です。売却を急ぐと特例が消えます。
Q. 更新のときに返してもらえますか?
建物がある限り、地主が何もしなければ契約は自動的に更新されます(5条1項・2項の法定更新)。更新を拒む異議を述べるには、6条の正当事由が必要です。立退料(条文上は「財産上の給付」)は正当事由の独立した要件ではなく、考慮要素の一つにすぎません。金額の基準は条文にありません。
Q. 正当事由が認められれば、更地で返ってきますか?
いいえ。借地人から建物を時価で買い取れと請求されえます(13条1項の建物買取請求権)。これは地主の承諾なしに売買が成立する権利で、16条により、13条に反する借地権者に不利な特約は無効です。契約書に「建物買取請求をしない」と書いてあっても効きません。
Q. 底地を売ったら、借地人の承諾は要りますか?
要りません。借地人が建物を登記していれば借地権は買主に対抗でき、民法605条の2第1項により賃貸人たる地位は当然に買主に移転します。ただし買主が「自分が地主だ」と借地人に主張するには、所有権移転登記が必要です(同3項)。
Q. 底地を相続したことを、借地人に通知する義務はありますか?
通知を義務づける(または不要とする)条文・公的資料は、この記事の調査では確認できませんでした。言えるのは、民法605条の2第3項が「所有権移転登記をしなければ賃借人に対抗することができない」と定めていることから、登記が重要であるという点までです。地代の振込先変更の手続についても、公的資料では確認できませんでした。
Q. 地代を上げたいのですが、いくらまで上げられますか?
金額の基準を示した公的資料はありません。借地借家法11条1項が挙げているのは「租税その他の公課の増減」「土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動」「近傍類似の土地の地代等との比較」という3つの判断材料だけで、算定式は定められていません。また同項ただし書により、一定期間増額しない旨の特約があるとその期間は増額できません。訴えを起こすには調停前置です。
Q. 借地人に売るのがいちばん現実的だと聞きました。親子間でもいいですか?
親が借地権者で子が底地を買う場合は注意が必要です。その後に親子間で地代の授受が行われなくなると、借地権が親から子へ贈与されたものとして取り扱われます(No.4560)。親と子が連署した「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を子の納税地の所轄税務署長に速やかに提出すれば、贈与として取り扱われません。この場合その借地権は、後の相続で親の相続財産として扱われます。
この記事で確認できなかったこと
- 底地の売却価格の相場。e-Gov・国税庁・法務省・裁判所・国土交通省・地方公共団体のいずれでも確認できませんでした。公的機関が底地の市場価格の相場を公表している資料は見つかりません。
- 底地が「借地権割合どおり」の価格で売れるかどうか。借地権割合は相続税・贈与税の財産評価のための割合であり、売買価格を定めるものではありません。この命題を裏づける公的資料は存在しませんでした。
- 借地人に売る場合と第三者・買取業者に売る場合の価格差。一次情報がありません。
- 立退料(財産上の給付)の相場・算定基準。借地借家法6条は考慮要素の一つとして挙げるのみで、金額の基準を定めていません。裁判所のページにも算定基準の記載はありませんでした。
- 地代の相場(固定資産税の何倍、路線価の何%など)。11条1項は判断材料を挙げるのみで、算定式を定めていません。
- 相当の地代に満たない地代を収受している場合の貸宅地の価額の算式。昭60直資2-58の第4項・第7項の存在と位置づけは確認しましたが、算式そのものが画像で掲載されており、文字として読み取れませんでした。この記事の「自用地価額の80%が上限」は、第6項(2)ただし書と第7項の文言によります。
- 国税局長が「貸宅地割合」を定めている地域が実際にどこか。評基通25(1)ただし書の存在は確認しましたが、どの国税局がどの地域に定めているかは、この記事では確認していません。財産評価基準書の該当都道府県のページで確認してください。
- 不動産鑑定評価基準「各論第1章第1節」の底地の鑑定評価額の求め方。PDFから該当部分を抽出できませんでした。定義(総論第2章第2節Ⅰ)は確認済みです。
- 租税特別措置法施行令40条の2(特定貸付事業の定義)の原文。3年内除外の例外の具体的な要件は裏づけがありません。
- 措法69条の4第2項3号のイ・ロ・ハ(限度面積の按分算式)。他の区分と併用する場合の計算式は書けません。
- 「底地」の法令上の定義規定の有無。確認できたのは、①借地借家法・民法・相続税法には定義がないこと、②国交省の不動産鑑定評価基準に定義があること、③国税庁が実務用語として使用していること、の3点です。「どの法令にも定義がない」と断定するだけの検証はできていません。
- 底地を相続したときの借地人への通知の要否、地代の振込先変更の手続、契約書がないときの対処。いずれも公的資料では確認できませんでした。
- 借地権と底地を同時に第三者へ売る手法の法的位置づけ。民法上の売買の組合せとして説明はできますが、公的な裏づけのある「制度」ではありません。
- 借地非訟における介入権の申立期間の実務上の目安。19条3項は「裁判所が定める期間内」とするのみで、裁判所のページにも具体的な日数の記載はありませんでした。
- 住宅・土地統計調査における「借地」の具体的な数値。「敷地の所有の関係(所有地・借地)」という調査区分と統計表の存在は確認しましたが、全国の住宅数・面積の数値は抽出できませんでした。
まとめ
- 底地は相続土地国庫帰属制度の対象外です。使用収益権が設定されている土地は申請すること自体ができません(2条3項2号)。建物があれば1号にも該当します。
- 「底地」は法律の言葉ではありません。借地借家法は「借地権設定者」、相続税評価は「貸宅地」と呼びます。定義があるのは国土交通省の不動産鑑定評価基準です。
- 相続税評価は「自用地としての価額 ×(1 − 借地権割合)」(評基通25(1))。借地権の取引慣行がない地域は借地権割合20%=底地80%評価になります。国税局長が「貸宅地割合」を定めている地域では、そちらが優先します。
- ★無償返還届出があると借地権ゼロ(昭60直資2-58第5項)・底地80%(同第8項)。ただし使用貸借なら底地は100%です(同第8項注)。さらに同族会社なら昭43直資3-22で、土地から引いた20%が株式の純資産価額に乗ってきます。
- 小規模宅地等の特例は貸付事業用宅地等として200㎡・50%減額。ただし3年内に貸し始めた土地は原則対象外で、申告期限まで保有し貸し続けることが要件です。
- 建物がある限り、地主が何もしなければ契約は法定更新されます。更新拒絶には6条の正当事由が必要で、立退料は考慮要素の一つにすぎません。
- 正当事由が認められても、建物を時価で買い取れと請求されえます(13条)。これに反する特約は16条により無効です。
- 底地を売るのに借地人の承諾は不要です(民法605条の2第1項)。ただし所有権移転登記をしないと借地人に対抗できません(同3項)。
- 等価交換は所得税法58条の対象になり得ます。ただし時価の差が高いほうの20%以内という要件があり、割り方次第で特例が使えなくなります。
- 底地の売却価格の相場は、公的資料に存在しませんでした。借地権割合は相続税評価のための割合であって、売れる値段ではありません。
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