投稿者: 実家じまいナビ編集部

  • 解体工事の近隣トラブル|挨拶は誰の義務か、壊れた壁は誰が払うのか

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    解体でいちばん怖いのは、費用でも工期でもありません。終わったあとも、その土地の隣に人が住み続けることです。売るにしても、しばらく更地で持つにしても、揉めた記憶は残ります。

    それなのに、多くの人が「近隣への挨拶は業者がやってくれる」と思い込んだまま着工します。ところが、解体工事の近隣説明を直接義務づけた法律は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。自治体の条例か要綱で、しかも市区町村によっては、義務を負うのが業者ではなく施主本人です。

    この記事は、条文を開いて確かめられることだけで組み立てます。誰が届け出て、誰が説明し、隣の壁が割れたら誰が払うのか。そこだけ先に分かっていれば、たいていのことは揉める前に片づきます。

    結論だけ先に

    • 近隣への説明を義務づけた法律は、調べた範囲では見当たりませんでした。建設リサイクル法12条1項の説明義務は「元請になろうとする業者 → 施主」への説明で、近隣向けではありません。近隣説明は自治体の条例・要綱で決まっています。
    • 渋谷区は条例で、義務者を「解体工事の発注者」=施主本人としています(工事開始15日前まで)。業者に任せておけば済む、とは限りません。
    • 隣の家が傷んだとき、民法716条により施主は原則として賠償責任を負いません。ただし「注文又は指図」に施主の過失があれば、そこは例外になります。
    • 境界線上のブロック塀は「共有」と推定されます(民法229条)。「うちの塀だから壊していい」と業者に指示すると、その指図こそが716条ただし書に当たり得ます。
    • 揉めたときに建設工事紛争審査会は使えません。建設業法25条1項が扱うのは「建設工事の請負契約に関する紛争」で、近隣との紛争は対象外です。

    条文はすべてe-Gov法令検索で本文を確認しました(2026年8月24日)。自治体の条例・要綱は市区町村ごとに違うので、実家のある市区町村の公式ページで必ず確認してください。

    1. 何が法律の義務で、何がそうでないか

    ここを整理しないと、業者との会話がかみ合いません。解体をめぐる届出は、義務を負う人がバラバラです。

    手続き 根拠 義務を負うのは 期限・提出先
    特定建設作業の実施届出(騒音) 騒音規制法14条1項 元請業者 作業開始日の7日前まで/市町村長
    特定建設作業の実施届出(振動) 振動規制法14条1項 元請業者 作業開始日の7日前まで/市町村長
    分別解体等の実施 建設リサイクル法9条1項 受注者又は自主施工者 —
    対象建設工事の届出 建設リサイクル法10条1項 発注者(施主) 着手の7日前まで/都道府県知事
    分別解体等の計画の事前説明 建設リサイクル法12条1項 元請になろうとする建設業者
    → 施主へ書面交付して説明
    契約前
    石綿の事前調査・結果の掲示 大気汚染防止法18条の15第1項・5項 元請業者又は自主施工者 作業開始前/現場に公衆が見やすいよう掲示
    特定粉じん排出等作業の実施の届出 大気汚染防止法18条の17第1項 発注者(施主) 作業開始日の14日前まで/都道府県知事
    近隣への事前説明 法律には見当たらない 自治体の条例・要綱による 自治体による
    届出の義務者は、手続きごとに違います 騒音・振動の届出 騒音規制法14条1項ほか 元請業者 対象建設工事の届出 建設リサイクル法10条1項 施主 石綿の調査と掲示 大気汚染防止法18条の15 元請業者 特定粉じん作業の届出 大気汚染防止法18条の17 施主 近隣への事前説明 法律には見当たりません 条例・要綱 淡い黄は施主の側。業者任せにはできません

    騒音と振動の届出は元請の義務、建設リサイクル法とアスベストの届出は施主の義務。そして近隣説明については、義務づけている法律を見つけられませんでした。

    建設リサイクル法12条1項をよく読むと、説明の相手は近隣ではないことが分かります。

    対象建設工事…を発注しようとする者から直接当該工事を請け負おうとする建設業を営む者は、当該発注しようとする者に対し、少なくとも第十条第一項第一号から第五号までに掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。

    出典:e-Gov法令検索 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律12条1項/2026年8月24日確認

    説明されるのは施主です。近隣ではありません。「法律で決まっている説明」は、あなたが受ける側の説明であって、隣の家に対する説明ではないという点は、意外に知られていません。

    アスベストの届出と費用負担については実家の解体とアスベストに、届出から更地までの日数の組み方は家の解体はいつ終わるかにまとめています。

    2. 近隣説明は「条例」と「要綱」で決まっています

    ここが、この記事の核です。近隣説明の義務は自治体レベルで決まっていて、しかも「条例(法規範)」と「要綱(行政指導)」が混在しています。

    自治体 種類 説明する範囲 時期 義務を負う者
    渋谷区 条例(建築物の解体工事計画の事前周知に関する条例) 敷地境界線から建築物の高さに等しい水平距離の範囲内の居住者・事業者・公共施設の管理者 工事開始15日前まで 解体工事の発注者または請負によらず自ら解体する人。請負業者も間接的に義務を負う
    千代田区 要綱(建築物解体工事計画の事前周知要綱) 木造は敷地境界から10m/その他は建物の高さの範囲+その範囲の町会 標識は中1か月前/説明は大規模建築物14日前、その他5日前 発注者等(発注者・元請・下請・自主施工者を含む)
    江東区 要綱(建築物の解体工事の事前周知に関する指導要綱) 敷地境界線から建物の高さの水平距離。10mに満たない場合は10m 標識は着手の14日前(木造は7日前)から完了まで/説明は工事開始7日前まで 発注者
    大阪府 条例(生活環境の保全等に関する条例95条) 周辺住民 前もって 作業を行う者。ただし努力義務

    出典:各自治体公式サイト/2026年8月24日確認

    「業者に任せておけば済む」とは限りません

    渋谷区の条例は、義務者を「解体工事の発注者」=施主本人としています。千代田区の要綱は「発注者等」として発注者・元請・下請をまとめて含めています。実家がどこにあるかで、あなた自身が説明義務者になるかどうかが変わります。契約前に「この市区町村に事前周知の条例か要綱はありますか」と業者に確認し、その答えを自分でも市区町村の公式サイトで裏取りしてください。

    逆に、確認した範囲で解体工事に限定した近隣説明の義務が見当たらなかった自治体もありました。神戸市の「神戸市民の住環境等をまもりそだてる条例」には、新築・増築等の指定建築物の説明義務(11条)と届出義務(12条)はありますが、解体工事に限定した規定は見当たりませんでした。大阪市・神奈川県の特定建設作業の案内ページにも、条例に基づく周知義務の記載はありませんでした。

    つまり「法律で決まっているから業者がやる」でも「条例があるから安心」でもありません。実家のある市区町村が、条例で施主に課しているのか、要綱で指導しているのか、何も定めていないのか。この3択を先に確かめるところから始まります。

    3. 騒音と振動:どこからが違反になるのか

    そもそも規制の対象になるのは「2日以上かかる作業」

    騒音規制法・振動規制法が規制するのは「特定建設作業」です。政令の書き方が独特で、「2日以上」とは書かれていません。

    法第二条第三項の政令で定める作業は、別表第二に掲げる作業とする。ただし、当該作業がその作業を開始した日に終わるものを除く。

    出典:e-Gov法令検索 騒音規制法施行令2条/振動規制法施行令2条/2026年8月24日確認

    「その作業を開始した日に終わるものを除く」。結果として2日以上にわたる作業が対象になります。1日で終わる斫り作業は、条文上は特定建設作業に当たりません。

    ブレーカーは、騒音ではなく振動の側にあります

    これは多くの解説が混同しているところです。騒音規制法施行令の別表第二に「ブレーカー」という語はありません。ブレーカーが明記されているのは振動規制法施行令の別表第二の四号です。

    騒音規制法 別表第二 振動規制法 別表第二
    家屋解体で当たりやすいもの 三号「さく岩機を使用する作業」/六号「バックホウ(原動機の定格出力が八〇キロワット以上のものに限る)」/七号「トラクターショベル(七〇キロワット以上)」/八号「ブルドーザー(四〇キロワット以上)」 二号「鋼球を使用して建築物その他の工作物を破壊する作業」/四号「ブレーカー(手持式のものを除く。)を使用する作業」
    敷地境界線での基準 85デシベル 75デシベル

    出典:e-Gov法令検索 騒音規制法施行令/振動規制法施行令/環境省告示(昭和43年厚生省・建設省告示第1号)/環境省パンフレット/2026年8月24日確認

    時間と日数の制限

    規制基準は、区域の区分で変わります。第1号区域は「良好な住居の環境を保全するため、特に静穏の保持を必要とする区域」など。学校・保育所・病院等の周囲おおむね80mの区域内も第1号区域に入ります。第2号区域は、指定地域のうち第1号区域以外です。

    項目 第1号区域 第2号区域
    作業してよい時間 午前7時〜午後7時 午前6時〜午後10時
    1日の作業時間 10時間まで 14時間まで
    連続日数 同じ場所で連続6日を超えないこと
    日曜・休日 作業しないこと

    出典:特定建設作業に伴つて発生する騒音の規制に関する基準(昭和43年厚生省・建設省告示第1号)、環境省 振動規制法パンフレット/2026年8月24日確認

    作業してよい時間は、区域で変わります 第1号区域 午前7時〜午後7時 1日10時間まで 学校・病院の周囲 おおむね80m 第2号区域 午前6時〜午後10時 1日14時間まで 指定地域のうち 第1号区域以外 連続6日まで・日曜と休日は作業しないは共通です

    つまり「日曜に工事をしている」「朝6時半から音が出ている」は、第1号区域なら基準に反している可能性が高い、という話になります。ただし、これは指定地域内での特定建設作業についての基準です。指定地域は自治体ごとに指定されているので、実家がその範囲に入るかは市区町村に確認が要ります。

    4. 罰則は3万円と5万円。だから罰則では止まりません

    ここは正直に書きます。「罰則があるから業者は守る」という説明は、条文と合いません。

    違反 条文 罰則
    騒音:14条1項の届出をしなかった/虚偽の届出 騒音規制法31条 三万円以下の罰金
    騒音:15条2項の改善命令に違反 騒音規制法30条 五万円以下の罰金
    振動:14条1項の届出をしなかった/虚偽の届出 振動規制法26条 十万円以下の罰金
    振動:15条2項の命令に違反 振動規制法25条 三十万円以下の罰金
    建設リサイクル法:10条1項の届出をしなかった/虚偽の届出 建設リサイクル法51条1号 二十万円以下の罰金(施主に向く)
    アスベスト:18条の17第1項の届出をしなかった/虚偽の届出 大気汚染防止法34条1号 三月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金(施主に向く)

    出典:e-Gov法令検索 各法条文/2026年8月24日確認

    騒音側の罰金は3万円と5万円です。工事費が百万円を超える現場で、3万円の罰金が抑止力になるとは考えにくい。しかも、いきなり罰則が来るわけでもありません。

    段階 条文 誰が何をするか
    1 改善勧告 騒音規制法15条1項 市町村長が、期限を定めて騒音の防止方法の改善または作業時間の変更を勧告できる
    2 改善命令 騒音規制法15条2項 勧告に従わないで作業を続けているときに、命令できる
    3 罰則 騒音規制法30条 命令に違反して、五万円以下の罰金

    実際に効くのは罰金ではなく、市町村の指導が入ることと、近隣が民事で動くことです。だから「法律を守っている」ではなく「近隣に嫌われない」を目標に置くほうが、結果的に安く済みます。

    苦情の電話は、まず施主に来ます

    近隣の人は、工事の看板より先に「あそこの家の人」を思い浮かべます。届出義務が元請にあっても、電話がかかってくるのは施主です。だから「届出は業者の仕事だから知らない」では通りません。着工前に、いつからいつまで・何時から何時まで・どの機械を使うのかを、自分の言葉で説明できる状態にしておいてください。

    5. 隣の家が傷んだとき、払うのは誰か(民法716条)

    ここがいちばん誤解されています。条文を先に読んでください。

    第七百十六条 注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。

    出典:e-Gov法令検索 民法716条/2026年8月24日確認

    原則、施主は責任を負いません。例外は「注文又は指図」に施主の過失があったとき。この2段構えが716条のすべてです。

    隣が傷んだとき、原則は業者が払います 注文や指図に、施主の過失がありましたか はい 施主も払います 716条ただし書 いいえ 施主は負いません 716条本文

    「指図」であって「指示」ではありません。条文の言葉をそのまま使うと、話がぶれません。

    例外に落ちる典型

    条文から論理的に導ける範囲で書きます。判例の当てはめまでは確認していませんので、実際にどう判断されるかは弁護士に確認してください。

    施主がやりがちなこと なぜ危ないか
    明らかに無理な工期や単価を押しつける 大気汚染防止法18条の16第1項は、発注者に対し「作業基準の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないように配慮しなければならない」と定めています。配慮義務に反する条件は、716条ただし書の「注文」の過失に近づきます
    境界の塀を「うちのだから壊していい」と指示する 民法229条により、境界線上の塀は共有と推定されます。共有物を一方の指図で壊させた形になります
    越境した枝を「切ってしまって」と指示する 民法233条1項は、まず竹木の所有者に切除させることを原則にしています。催告なしに切れる場合は3項に限定列挙されています
    近隣の敷地に足場を出させる 他人の土地の使用を指図した形になります

    716条で守られていても、717条で来ることがあります

    もう1本、別の経路があります。

    第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

    解体前の空き家の所有者は、この「所有者」に当たり得ます。工事中に壊れたのか、もともと傷んでいた建物が倒れたのか。原因が「請負人の仕事」なら716条、「工作物の瑕疵」なら717条で、経路が変わります。放置してきた期間が長いほど、717条側で来る可能性が上がるという関係です。放置のリスクは空き家を放置するとどうなるかにまとめています。

    6. ブロック塀は「共有」と推定されます(民法229条)

    第二百二十九条 境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。

    出典:e-Gov法令検索 民法229条/2026年8月24日確認

    「推定する」なので、反証があればくつがえります。塀が完全に自分の敷地内に収まっていることを示せれば、共有ではありません。ところが、その反証をするには境界がどこかを確定させる必要があります。

    解体のあとに残って揉めるのが、この塀です

    解体すると、塀だけが残ります。残せば「危ないから撤去しろ」と言われ、壊せば「勝手に壊した」と言われる。先に境界を確定させておかないと、どちらを選んでも文句が出る構造です。境界標が地面に残っているか、確定測量図があるかを、解体前に確認してください。手順は実家の境界が決まっていないときにまとめました。

    越境した枝についても、条文は非対称です。

    条文 できること
    枝 民法233条1項 竹木の所有者に切除させることができる(自分で切るのではない)
    枝(例外) 民法233条3項 ①催告したのに相当の期間内に切除しないとき ②所有者を知ることができず、又は所在を知ることができないとき ③急迫の事情があるとき は、自分で切り取れる
    根 民法233条4項 催告なしで切り取れる

    枝は催告してから、根はいきなり。この非対称が条文に書かれています。解体業者が「邪魔だから」と隣の枝を切ってしまうと、施主の指図によっては716条ただし書の話になります。

    7. 立証できるのは、着工前に撮っておいた人だけ

    「工事の前から、あのひび割れはありましたよね」と言われて、返せる材料があるかどうか。ここで勝負が決まります。

    民間の解体工事に家屋の事前調査を義務づける法令は、確認した限りありません。ただし、国は公共事業について事前調査を制度化しています。

    条 内容
    第2条(事前調査) 「工事の着手に先立ち、又は工事の施行中に起業地及びその周辺地域において、次の各号に掲げる事項のうち必要と認められるものについて調査を行うものとする」(地形及び地質、地下水の状況、過去の地盤変動、建物等の配置及び現況など)
    第3条(事後調査) 損害の申出があったときは「地盤変動による損害等と工事との因果関係について、速やかに調査を行う」。工事着手時の地形・地下水位と、損害発生時のそれとの比較などを行う

    出典:公共事業に係る工事の施行に起因する地盤変動により生じた建物等の損害等に係る事務処理要領(昭和61年4月1日 建設省経整発第22号)/2026年8月24日確認

    国自身が「着手前の記録がなければ因果関係を判断できない」という前提で制度を作っています。民間の解体でも、理屈はまったく同じです。

    施主がやっておくことは3つです。

    1. 着工前に、隣接する家の外壁・基礎・塀・門柱を写真に撮る。日付が入る設定にして、引きと寄りの両方を撮ります。
    2. 撮るときに、隣の人に声をかけて一緒に見てもらう。これが「第三者が見た」という事実になります。断られたら、外から見える範囲だけで構いません。
    3. 解体業者に「家屋調査はやりますか」と見積り段階で聞く。やらない業者もあります。やらないなら、自分でやると決めてください。

    写真は「工事のあと」では意味がありません

    着工後に撮った写真は、いつ付いた傷かを示せません。撮るなら、重機が入る前の日までです。解体の日程は工事の1〜2週間前には固まるので、そのタイミングで予定に入れてください。日程の組み方は家の解体はいつ終わるかにあります。


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    近隣対応の中身は、見積りの段階でしか聞けません

    解体費は業者によって幅が出ますが、近隣への構えにも同じくらい差が出ます。養生をどこまで張るか、散水をどうするか、着工前の家屋調査をやるか、掲示板をいつ出すか。工事が始まってからでは変えられないので、複数社に同じ質問をぶつけて、答えの差を見るのがいちばん早い。解体工事一括netは、条件を入れると複数社から見積りが集まる窓口です。

    ①成果の対象外になる県があります(大分・山形・青森・秋田・福井・鳥取・愛媛・香川・沖縄・石川・徳島・宮崎)。これらの県に実家がある方は、この記事の後半で紹介している解体の窓口のほうが対応しています。②申込後、本人確認の連絡が入ります。③補助金を使うなら、契約より前に自治体へ。多くの制度が交付決定前の契約を対象外にしています。

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    聞くのは4つで足ります。「近隣説明は誰が、いつ、どの範囲にやりますか」「着工前の家屋調査はやりますか」「養生と散水はどうしますか」「特定建設作業の届出は出しますか」。この4問の答えが、そのまま業者の差になります。

    8. 掲示が出ていないと、近隣は不安になります

    近隣の人が工事のことを知る手段は、挨拶のほかにもう1つあります。現場の掲示です。

    元請業者又は自主施工者は…調査に係る解体等工事を施工するときは…記録の写しを当該解体等工事の現場に備え置き、かつ、当該調査の結果その他…事項を、当該解体等工事の現場において公衆に見やすいように掲示しなければならない。

    出典:e-Gov法令検索 大気汚染防止法18条の15第5項/2026年8月24日確認

    環境省のリーフレットによると、掲示板の大きさはA3サイズ(42.0cm×29.7cm)以上、場所は「公衆の見やすい場所」、時期は「作業の開始前」です。掲示する内容は、調査を行った者の氏名・名称・住所、調査を終了した年月日、調査の方法、特定工事に該当する場合は特定建築材料の種類(大気汚染防止法施行規則16条の10)。

    この掲示は、施主のためではなく近隣のためにあります。掲示が出ていない現場は、近隣から見れば「何をしているか分からない現場」です。不信の起点はたいていここです。

    そしてアスベストの届出だけは施主の義務で、しかも作業開始の14日前まで(大気汚染防止法18条の17第1項)。建設リサイクル法の7日前より前倒しです。罰則も3月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金と、騒音側とは桁が違います。詳しくは実家の解体とアスベストに書きました。

    9. 揉めたときの窓口(建設工事紛争審査会は使えません)

    ここは、他の解説の誤りを正しておきたいところです。

    第二十五条 建設工事の請負契約に関する紛争の解決を図るため、建設工事紛争審査会を設置する。
    2 建設工事紛争審査会は、この法律の規定により、建設工事の請負契約に関する紛争につき、あつせん、調停及び仲裁を行う権限を有する。

    出典:e-Gov法令検索 建設業法25条/2026年8月24日確認

    審査会が扱うのは「建設工事の請負契約に関する紛争」です。つまり「施主 対 解体業者」には使えますが、「近隣 対 施主・業者」には使えません。

    解体業者との間の紛争(工事が終わらない、追加請求が出た、施工がずさん)であれば、審査会が受け皿になります。申請手数料は請求する事項の価額に応じて決まります。

    請求額 あっせん 調停 仲裁
    100万円まで 10,000円 20,000円 50,000円
    500万円まで 価額(1万円単位)×20円+8,000円 価額(1万円単位)×40円+16,000円 価額(1万円単位)×100円+40,000円
    2,500万円まで 価額(1万円単位)×15円+10,500円 (1億円まで)価額(1万円単位)×25円+23,500円 (1億円まで)価額(1万円単位)×60円+60,000円

    出典:国土交通省「6.紛争処理に要する費用」/2026年8月24日確認。1万円未満は切り上げて計算

    近隣との間の話は、まず市区町村の公害苦情の窓口です。騒音規制法15条の勧告・命令を出すのは市町村長なので、動かせる立場にあるのは市区町村です。それでも収まらなければ民事の話になります。

    「受忍限度」という言葉について

    騒音の裁判でよく出てくる「受忍限度」は、条文にある言葉ではありません。民法にも騒音規制法にも規定はなく、判例が積み上げてきた考え方です。裁判所の公式サイトに掲載された判決文に、違法性の判断について次の枠組みが示されています。

    侵害行為の態様と侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等を比較検討するほか、侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況、その間にとられた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等の事情をも考慮し、これらを総合的に考察してこれを決すべきものである

    ここで注目すべきは「その間にとられた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果」が判断要素に入っていることです。養生をしたか、散水をしたか、時間を守ったか、苦情に対応したか。やったことは、あとから効きます。

    10. 揉めないための実務

    いつ やること 理由
    業者を選ぶとき 「近隣説明は誰が、いつ、どの範囲にやりますか」と聞く 自治体によっては施主の義務。答えられない業者は、その市区町村の規範を知らない
    契約前 建設リサイクル法12条の書面交付を受ける これは施主が受け取る権利。もらえない契約はおかしい
    着工の2週間前 隣接する家の外壁・基礎・塀を撮影 着工後の写真では、いつ付いた傷か示せない
    着工の1週間前 自分でも近隣に一言入れる 苦情の電話は施主に来る。顔を知られていると、電話の前に一言もらえる
    着工前 掲示板が出ているか見に行く 公衆の見やすい場所に、作業開始前に出す義務がある
    工事中 作業時間・日曜の扱いを確認 第1号区域なら7時〜19時・1日10時間・連続6日・日曜休日は作業しない
    苦情が来たら その場で謝って、業者に伝えて、対応した内容を書き残す 「被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果」は、後の判断要素になる
    写真は、重機が入る前の日までです 着工の2週間前 隣の外壁・基礎・塀を撮影する 着工の1週間前 施主からも近隣に一言入れる 着工前 掲示板が出ているか見に行く 工事中 作業時間と日曜の扱いを確認 苦情が来たら 謝る・業者に伝える・書き残す

    費用の相場と見積書の読み方は実家の解体費用に、補助金が使えるかは全国の解体補助金データベースで市区町村ごとに調べられます。更地にしたあとの固定資産税は解体すると固定資産税は何倍になるかに、解体後1か月以内の登記は建物滅失登記を自分でやるにまとめました。


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    よくある質問

    挨拶回りは、どこまでの範囲に行けばいいですか

    法律に範囲の定めはありません。自治体の条例・要綱に書いてある範囲が、いちばん確かな目安になります。渋谷区は「敷地境界線から建築物の高さに等しい水平距離の範囲内」、千代田区は木造なら「敷地境界から10m」、江東区は「建物の高さの水平距離。10mに満たない場合は10m」としています。

    実家の市区町村に定めがなければ、この考え方を借りて「両隣・向かい・裏の家」+「工事車両が通る道沿い」くらいを目安にしてください。車両が通る家は、音より振動と埃で影響を受けます。

    業者が挨拶に行くと言っています。施主も行くべきですか

    行ってください。理由は義務の話ではなく、苦情の宛先の話です。近隣の人は工事看板より先に「あそこの家の人」を思い出します。顔を知られていれば、市役所に電話する前にあなたに一言くれます。その一言があるかないかで、話が大きくなるかどうかが変わります。

    渋谷区のように条例で発注者に義務を課している自治体では、そもそも施主が説明する側です。実家の市区町村がどうなっているかを、先に確認してください。

    日曜に工事をしていると言われました。違反ですか

    その作業が指定地域内の特定建設作業に当たるなら、規制基準は「日曜日その他の休日に行われる特定建設作業でないこと」としています。ただし、①その市区町村が指定地域になっているか ②その作業が別表第二の作業に当たるか ③1日で終わる作業ではないか、の3つを満たして初めて対象です。

    判断は市区町村の環境部門がします。近隣から指摘があったら、まず業者に確認し、そのうえで市区町村の公害苦情窓口に問い合わせてください。勧告・命令を出せるのは市町村長です。

    隣の家のひび割れを、うちのせいだと言われました

    まず、民法716条により、施主は原則として請負人が第三者に加えた損害の賠償責任を負いません。窓口になるのは解体業者と、その業者が加入している保険です。工事の請負契約に賠償責任保険が付いているかを、契約書で確認してください。

    ただし例外が2つあります。ひとつは716条ただし書で、注文または指図に施主の過失があった場合。もうひとつは民法717条で、建物そのものの瑕疵が原因だった場合です。どちらに当たるかは事実関係次第なので、金額が大きければ弁護士に相談してください。

    境界のブロック塀を撤去してよいですか

    境界線上にある塀は、民法229条により共有と推定されます。共有物なので、一方の判断では壊せません。まず隣の人に「この塀はどちらのものでしょうか」と聞き、確定測量図や境界標を確認してください。

    やってはいけないのは、「うちの塀だから壊しておいて」と業者に指示することです。その指図自体が、716条ただし書の「指図についての過失」に当たり得ます。判断がつかないなら、塀は残して更地にするほうが安全です。手順は実家の境界が決まっていないときに書きました。

    解体業者と揉めました。どこに相談すればいいですか

    相手が解体業者(請負契約の相手方)なら、建設工事紛争審査会が使えます。中央審査会は国土交通省に、都道府県審査会は都道府県に置かれています(建設業法25条3項)。あっせん・調停・仲裁の3つがあり、請求額100万円までならあっせん10,000円、調停20,000円、仲裁50,000円です。

    逆に、近隣との紛争には使えません。審査会が扱うのは請負契約に関する紛争だからです。近隣の話は市区町村の公害苦情窓口が先です。

    近隣説明の記録は残しておくべきですか

    残してください。日付・訪問先・会った人・伝えた内容・出た要望をメモしておくだけで構いません。裁判所が示した判断枠組みに「その間にとられた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果」という要素が入っています。やったことは、あとから効きます。逆に、何もしていない期間は、何もしていない事実として残ります。

    アスベストの届出は業者がやってくれますか

    調査と掲示は元請業者の義務ですが、特定粉じん排出等作業の実施の届出(大気汚染防止法18条の17第1項)は発注者、つまり施主の義務です。実務上は業者が代行することが多いのですが、義務者はあくまで施主で、罰則も施主に向きます。作業開始の14日前までなので、建設リサイクル法の7日前よりも先に動かないと間に合いません。詳しくは実家の解体とアスベストに書きました。

    工事の音がひどいので、こちらから業者に文句を言っていいですか

    施主として伝えるのは問題ありません。ただ、市町村長に勧告・命令の権限があるのは、あなたではなく市区町村です。「基準を超えているかどうか」を測って判断できるのも市区町村です。感覚で「うるさい」と伝えるより、「何時から何時まで」「何の機械か」「何日目か」を記録して伝えるほうが、業者も市区町村も動きやすくなります。

    この記事で確認できなかったこと

    • 振動規制法施行規則(環境省令)別表の原文。振動規制法15条1項は「環境省令で定める基準」としていますが、その省令本文を取得できませんでした。75デシベル・作業時間・連続6日・日曜休日という数値は、環境省のパンフレットによるものです。
    • 東京都環境確保条例123条〜125条の条文原文。東京都例規集・東京都環境局のいずれも本文を取得できませんでした。条番号(125条1項=勧告、2項=命令)は区が公表している資料で確認しました。
    • 大阪府生活環境の保全等に関する条例93条〜95条の条文原文。大阪府例規本文ページは92条までしか取得できませんでした。95条が事前説明の努力義務であることは、大阪府の公式解説ページの記載によります。
    • 渋谷区の条例の条文原文と条番号。区例規集のページが取得できませんでした。範囲・時期・義務者は渋谷区公式の解説ページによります。
    • 「受忍限度」の判断枠組みを示した判決の事件番号・裁判所名。文言は裁判所公式サイトに掲載された判決文で確認できましたが、その文書の事件番号の特定に整合しない点があり、確定できませんでした。
    • 足場・仮囲いが道路法32条1項の第何号に当たるか。条文からは特定できませんでした。
    • 民間の解体工事で家屋の事前調査を義務づける法令。存在を確認できませんでした。本文で引用した事務処理要領は公共事業を対象とする国の内部基準です。
    • 「解体工事」に特化した消費生活相談の件数。国民生活センターの公表資料から切り出せませんでした。訪問販売によるリフォーム工事や点検商法の件数は公表されていますが、解体工事単独の数字ではありません。
    • 近隣と施主・業者の紛争を扱う公的な紛争処理制度(公害紛争処理制度・都道府県公害審査会)の費用と件数。今回は確認していません。
    • 騒音規制法・振動規制法の「指定地域」が、個別の実家の所在地に掛かるかどうか。自治体ごとに指定が異なるため、一般論では確定できません。市区町村に確認してください。

    まとめ

    1. 近隣説明を義務づけた法律は見当たりませんでした。決めているのは自治体の条例・要綱で、渋谷区のように施主本人に義務を課しているところがあります。
    2. 届出は騒音・振動が元請、建設リサイクル法とアスベストが施主。アスベストは14日前で、罰則も施主に向きます。
    3. 規制基準は敷地境界線で騒音85dB・振動75dB、第1号区域なら7時〜19時・1日10時間・連続6日・日曜休日は作業しない。
    4. 罰則は3万円と5万円。抑止力は罰金ではなく、市町村の勧告・命令と、近隣が民事で動くことです。
    5. 隣家の損害は民法716条により施主は原則責任を負いません。例外は「注文又は指図」の過失。だから余計な指示をしないことが、いちばんの防御になります。
    6. 境界線上のブロック塀は共有と推定されます(民法229条)。壊す指示を出す前に、境界を確認してください。
    7. 着工前の写真だけが、あとから効きます。国も公共事業では事前調査を制度化しています。

    あわせて読みたい

  • 仏壇じまいの費用と手順|粗大ごみで出せる市と、受け付けない市があります

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    実家の片付けで、最後まで手がつかないのが仏壇です。家具でもなく、ごみでもなく、かといって置いていくわけにもいかない。手をかけると罰が当たりそうで、兄弟に相談すると話が止まる。だいたいそこで数か月が過ぎます。

    先に事実を3つ書きます。仏壇は、法律の上では「相続財産」に入りません。そして粗大ごみとして受け付けない市が実在します。さらに、「魂抜き」という言葉を使わない宗派があります。

    この記事は、値段の相場を並べる記事ではありません。相場は一次情報に存在しないからです。代わりに、調べれば誰でも確認できる根拠だけで、順番と手続きを組み立てます。

    結論だけ先に

    • 仏壇(祭具)は民法897条により、相続財産とは別のルートで承継されます。決め方は「被相続人の指定があればその人 → 指定がなければ慣習 → 慣習が明らかでないときは家庭裁判所」の順です。遺産分割協議の対象ではありません。
    • 捨て方は市区町村ごとにまったく違います。大阪市は粗大ごみ1,000円、名古屋市は2,000円(令和8年10月1日収集分から)、明石市は「収集できません」と分別区分そのものに書いています。
    • 仏壇を置いたまま解体しても、処分の責任は所有者に残ります。環境省の通知(平成30年6月22日)が「建築物の解体時に当該建築物の所有者等が残置した廃棄物については、その処理責任は当該建築物の所有者等にある」と明記しています。
    • 「魂抜き」は全宗派共通の言葉ではありません。浄土真宗本願寺派は公式に「『お魂入れ』や『お性根入れ』とは言いません」と書いています。菩提寺に電話する前に、これを知っておくと話が早く済みます。

    根拠と出典は本文にあります。金額は確認日時点のもので、自治体の手数料は改定されます。必ずお住まいの市区町村の公式ページで確認してください。

    1. まず、捨てていいのかどうか。決めるのは誰か

    仏壇を動かす前に、法律上の位置づけを1つだけ押さえておくと、兄弟との話が短く済みます。

    仏壇や位牌のような「祭具」は、預金や不動産と同じ扱いではありません。相続分で割るものではなく、1人が承継します。

    根拠は民法897条です。条文はこう書かれています。

    第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
    2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

    出典:e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)/2026年8月24日確認

    読み方は3段です。

    順番 条文の言葉 実際に起きること
    1 被相続人の指定 遺言や生前の意思表示で「仏壇は長男に」と決めてあれば、その人が承継する
    2 慣習 指定がなければ、その家・その地域の慣習に従う
    3 家庭裁判所 慣習が明らかでないときは、家庭裁判所が承継者を定める

    押さえておきたいのは、条文が「慣習」を持ち出していることです。はっきりした指定がなければ、法律はまず「そちらの家ではどうしてきたか」を見ます。話し合いで決まらないときの受け皿が家庭裁判所であって、いきなり裁判所ではありません。

    そしてもう1つ。相続放棄をしても、仏壇を承継することはあります。放棄は民法896条(相続の一般的効力)の話で、897条は「前条の規定にかかわらず」と書いて、そこから外れているからです。この構造はお墓とまったく同じなので、実家の墓をどうするかもあわせて読んでください。

    ここで揉めます

    この条文が定めているのは所有権が誰に承継されるかです。承継した人に管理を続ける義務を課す規定は、897条には書かれていません。「引き受けたら一生面倒を見なければならない」と法律が決めているわけではない、という点は、押しつけ合いになったときに知っておく価値があります。

    逆に、承継していない人が勝手に処分すると、所有権のある人との間で問題になり得ます。兄弟が離れて暮らしている場合ほど、片付けを始める前に一言入れておくほうが安全です。

    お墓と仏壇は同じ897条の話なので、あわせて読むと全体像が見えます。お墓側の手続き(改葬許可・受け入れ証明)は実家の墓をどうするかにまとめました。分け方そのもので止まっているなら、実家の相続で兄弟と揉めたときのほうが近いです。

    2. 自治体によって、扱いが3つに分かれます

    「仏壇は粗大ごみで出せる」と書いてある記事は多いのですが、それは全国の話ではありません。家庭から出た仏壇は廃棄物処理法上の一般廃棄物で、一般廃棄物の処理は市町村の責任だからです(法6条の2第1項)。誰に聞くかではなく、どこの市かで答えが変わります。

    実際に10市の公式ページを開いて確認したものが次の表です。

    自治体 扱い 手数料 公式ページの書きぶり
    大阪市 粗大ごみ 1,000円 粗大ごみ処理手数料一覧表「2.家具・寝具類」に「仏壇 1,000円」
    名古屋市 粗大ごみ 2,000円 「仏壇 2,000円」。収集日が令和8年10月1日以降の粗大ごみから手数料を改定
    神戸市 大型ごみ(事前申込制・有料) よくある質問のページには非掲載 「『大型ごみ』です」。ただし5kg以内で指定袋に入る場合は木製・プラスチック製=燃えるごみ、陶器製・金属製=燃えないごみ
    東大阪市 大型ごみ(条件つき) 大型ごみ処理券 「原型がわからないように解体してください。解体できない場合宗派の寺院、神社、仏壇店へ相談してください。」
    静岡市 不燃・粗大ごみ 品目ページには非掲載 分別区分「不燃・粗大ごみ」(葵区・駿河区・清水区共通)
    新座市 粗大ごみ 品目一覧には非掲載 品目「仏壇」/区分「粗大ごみ」
    岸和田市 粗大ごみ 一覧表には非掲載 品目「仏壇・仏具」/区分「粗大ごみ」
    朝霞市 サイズで変わる 分別辞典には非掲載 「専門店へのご相談を優先してください。やむを得ず出す場合は粗大ごみ。50cm未満のものは不燃ごみ。」
    郡山市 市では収集しない 自己搬入または許可業者 「市で収集しないごみ」の「その他のごみ」欄に「鎖、チェーン、神棚、仏壇、便器など」。「ごみ集積所には絶対に出さないでください」
    明石市 収集できません — 分別区分そのものが「収集できません」。「販売店または明石クリーンセンターに相談してください」

    出典:各市公式サイトの分別辞典・粗大ごみ手数料一覧/いずれも2026年8月24日確認

    同じ「仏壇」という品目で、1,000円の市、2,000円の市、そもそも受け付けない市が並びます。しかも名古屋市のように、令和8年10月1日収集分から手数料が変わる市もあります。

    実家の市で調べてください

    この表は「自治体で違う」ことを示すための例です。あなたの実家がこの10市になければ、この表の金額はまったく当てはまりません。調べ方は決まっていて、市の公式サイトで「ごみ 分別 五十音」または「粗大ごみ 品目」を探し、「ぶ」の欄を見るのが最短です。

    位牌・遺影・お札は、品目一覧に載っていないことが多い

    朝霞市・新座市・大阪市・東大阪市・岸和田市・広島市・富山市の分別辞典を確認しましたが、「位牌」「遺影」「お札」という品目名はいずれにも載っていませんでした。「仏壇」は品目として立っているのに、中身は立てていない、という状態です。

    載っていない=出せない、ではありません。ただ自分で判断できないので、電話で聞くしかないのが実情です。ちなみに神棚は、朝霞市では仏壇とまったく同じ備考文(専門店を優先)が付いていて、郡山市では仏壇と並べて「市で収集しないごみ」に書かれています。

    3. 残したまま解体しても、処分の責任は所有者に残ります

    「解体屋さんがまとめて持っていってくれる」は、国の通知の建て付けと違います。

    環境省が平成30年6月22日に出した通知(環循適発第1806224号・環循規発第1806224号「建築物の解体時等における残置物の取扱いについて」)に、はっきり書かれています。

    建築物の解体に伴い生じた廃棄物については、その処理責任は当該解体工事の発注者から直接当該解体工事を請け負った元請業者にある。一方、建築物の解体時に当該建築物の所有者等が残置した廃棄物については、その処理責任は当該建築物の所有者等にある

    出典:環境省 環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課長・廃棄物規制課長通知(平成30年6月22日)/2026年8月24日確認

    境目はこうなります。

    何が出たか 区分 処理責任
    柱・壁・屋根など、壊して出たもの 解体に伴い生じた廃棄物 元請業者
    仏壇・家具・布団・食器など、置いていったもの 残置物 所有者(相続人)

    さらに同じ通知は、残置物が一般廃棄物である場合について、こう続けています。

    産業廃棄物処理業の許可を取得していることのみでは足りず、市町村からの当該残置物の処理に係る委託又は一般廃棄物処理業の許可を受けなければならない

    解体業者が持っているのは、ふつう産業廃棄物の許可です。それだけでは、家庭から出た仏壇を引き取れません。だから「残置物は別料金」と見積書に書かれるか、そもそも断られるか、どちらかになります。断られずに黙って引き取られた場合のほうが、実は危ないという構図です。

    解体の日程との関係は家の解体はいつ終わるかに、残置物が解体費用をいくら押し上げるかは実家の解体費用にまとめています。

    売るとき・貸すときはどうなるか

    ここは正直に書きます。実家を売却したり賃貸に出したりするときに、仏壇を残置した場合の取扱いを直接述べた一次情報は、今回は見つけられませんでした。この通知は解体時のものです。

    ただ、仲介で売るなら「引渡しまでに残置物を撤去する」と契約書に書くのが通常の流れで、買取なら残置物ごと引き取る条件を出す会社もあります。どちらにしても、仏壇だけは「一緒に処分してください」と言いにくいものなので、先に出しておくほうが話がこじれません。

    4. 「魂抜き」と言わない宗派があります

    ここが、この記事でいちばん役に立つところかもしれません。

    「仏壇 処分 魂抜き」で検索すると、料金の目安を書いた記事がずらりと出てきます。ところが宗派の公式サイトを開くと、その言葉自体を使っていないところがあります。

    宗派 公式の呼び方 公式サイトの記述
    真宗大谷派(東本願寺) 御移徙(ごいし/おわたまし)。地域によっては「お紐解き」 「俗に『お魂入れ』『お性根入れ』などと言われることもありますが、浄土真宗では、ご本尊に新しい魂や性根を入れるという受けとめはありません。」
    浄土真宗本願寺派(西本願寺) 入仏法要/入仏式 「『入仏』と言っても、お勤めする僧侶が、仏さまの『魂』を入れるのではありません」「『お魂入れ』や『お性根入れ』とは言いません。『入仏法要』もしくは『入仏式』と言ってください。」

    出典:真宗大谷派(東本願寺)公式サイト「お仏壇(お内仏)のこと」/浄土真宗本願寺派(西本願寺)公式サイト「よくあるご質問」/いずれも2026年8月24日確認

    どちらも「仏壇を迎えるとき」の説明ですが、魂を入れたり抜いたりするという枠組み自体を採らない、という宗派の立場ははっきり読み取れます。実家の宗派がここに当たるなら、「魂抜きをお願いします」という言い方は、そもそも噛み合いません。

    ほかの宗派は、公式サイトに書いていない

    曹洞宗・浄土宗・日蓮宗の公式サイトも確認しました。いずれも「お仏壇のまつり方」「仏壇について」という迎える側の説明はあるのに、処分や閉眼供養についての説明ページは見当たりませんでした。高野山真言宗も、宗務庁の公式サイト上で該当ページを特定できませんでした。

    主要宗派の公式サイトは「仏壇の迎え方」を説明していて、「しまい方」をよくある質問に立てていません。一次情報が薄いところに、業者の記事が大量に流れ込んでいる、というのがこのテーマの構造です。

    だから、いちばん確実で早いのは菩提寺(手次ぎのお寺)に電話をかけて、そちらでは何と呼ぶのか、何をするのかを聞くことです。浄土真宗本願寺派の公式サイトも「いずれにしても、手次ぎのお寺に頼み」と書いています。

    菩提寺が分からないとき

    実家に菩提寺が残っていない、宗派も分からない、という相続人は珍しくありません。手がかりは位牌の戒名の字、過去帳、仏壇の中の本尊の掛軸や仏像の形、法要の案内はがきです。書類の探し方は実家の片付けで捨ててはいけない書類にまとめました。それでも分からなければ、仏壇店に本尊を見せると宗派の見当がつくことがあります。

    5. お布施に定価がない理由(金額を書かない理由でもあります)

    当サイトは、閉眼供養やお性根抜きの「相場」を書きません。一次情報に存在しないからです。そしてそれには理由があります。

    国税庁の税務大学校が出している論叢(第91号・平成30年6月)は、宗教法人の収益事業該当性を論じるなかで、喜捨についてこう整理しています。宗教活動によって献納される喜捨金などを収入する行為は収益事業に当たらないと解される、喜捨は宗教の教義に対する信仰に基づくもので「対価性を持つもの」ではない、依頼者からの財貨の移転は「金銭的債務」ではなく「宗教的理念に基づく喜捨」であって「金員の多寡によらない」——という趣旨です。

    出典:国税庁 税務大学校 論叢第91号(平成30年6月)/2026年8月24日確認

    お布施は「サービスの代金」ではなく「喜捨」だ、というのが制度上の建て付けです。代金ではないものに定価はありません。

    だから「◯万円が相場です」と書いてある記事は、どこかの業者の設定額か、書き手の見聞きした話です。正しい聞き方は「いくらですか」ではなく「こちらではどのようにされていますか」です。お寺によっては目安を示してくれますし、示さないところもあります。

    6. お寺のお焚き上げが法律上できる理由

    廃棄物の焼却は、原則として禁止されています。

    第十六条の二 何人も、次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない。

    その例外の3号が「政令で定めるもの」を指しており、政令=廃棄物処理法施行令14条にこう書かれています。

    第十四条 法第十六条の二第三号の政令で定める廃棄物の焼却は、次のとおりとする。
    一 国又は地方公共団体がその施設の管理を行うために必要な廃棄物の焼却
    二 震災、風水害、火災、凍霜害その他の災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な廃棄物の焼却
    三 風俗慣習上又は宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却
    四 農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却
    五 たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの

    出典:e-Gov法令検索 廃棄物の処理及び清掃に関する法律/同施行令/2026年8月24日確認

    3号の「宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却」。これが、お寺のお焚き上げが焼却禁止の例外に位置づけられる根拠条文です。「野焼きは禁止なのに、なぜお寺では燃やせるのか」という素朴な疑問には、条文で答えられます。

    自宅の庭で燃やす根拠にはなりません

    3号が許しているのは「宗教上の行事を行うために必要な」範囲です。一般の家庭が仏壇を庭で燃やしてよい、という条文ではありません。5号の「たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの」に当たるかどうかは別の問題で、当サイトはその判断材料を持っていません。加えて、大気汚染防止法や自治体の火災予防条例との関係も確認できていません。燃やすなら、お寺か仏壇店に頼んでください。

    7. 引き取り先は4つ。費用の考え方

    引き取り先 向いている場合 確認しておくこと
    菩提寺(手次ぎ寺) 宗派が分かっていて、法要もあわせて頼みたい そちらでは何と呼ぶのか。引き取りまでしてもらえるのか、法要だけか
    仏壇店 買い替えるとき、大きくて自力で動かせないとき 引き取りだけでも受けてもらえるか。運び出しの人数と、階段の有無を先に伝える
    市区町村の粗大ごみ いちばん安く済ませたい そもそも受け付ける市か。解体して出す指定はあるか。集積所に出せるか、持ち込みか
    遺品整理業者 仏壇以外の家財もまとめて出したい 一般廃棄物収集運搬業の許可があるか。仏壇の扱いに慣れているか

    金額について、当サイトが一次情報として確認できたのは1つだけです。総務省行政評価局が公表した「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書」(令和2年3月)に、見積書の記載事項の例として「仏壇処分費 1式 45,000円」が挙げられています。

    これは相場ではありません

    45,000円は、国の調査で確認された見積書1件の記載です。平均でも中央値でもありません。同じ報告書によると、調査対象となった遺品整理サービス事業者69社のうち、仏壇を専門に引き取る事業者は1社でした。仏壇を扱い慣れている業者はそもそも多くない、というのが国の調査から読める事実です。

    8. 無許可の回収業者に頼まないために

    「無料回収」「軽トラック載せ放題」の類は、家庭ごみについては制度上おかしいことになります。環境省がはっきり書いています。

    ご家庭のごみは、市区町村の責任の下で適正に処理する必要があります。市区町村の許可や委託を受けずにご家庭のごみを回収業者が収集することは認められていません

    出典:環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」/2026年8月24日確認

    同じページは「産業廃棄物処理業の許可」や「古物商の許可」では回収できないとも明記しています。必要なのは一般廃棄物処理業の許可で、これを出すのは都道府県ではなく市町村長です(廃棄物処理法7条1項)。無許可で業として行った場合の罰則は、法25条1項1号で五年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金、又はこれを併科と定められています。

    国民生活センターが令和4年11月2日に公表した「不用品回収サービスのトラブル」によると、相談件数は次のとおりです。

    年度 2018 2019 2020 2021 2022(9月末まで)
    相談件数 1,354件 1,457件 1,788件 2,231件 870件

    出典:国民生活センター 報道発表資料(令和4年11月2日)/2026年8月24日確認

    3年で約1.6倍。同センターが挙げているアドバイスの見出しは「不用品の処分は、お住まいの市区町村が提供する窓口に余裕を持って依頼しましょう」「市区町村以外に不用品の処分を依頼する場合は、一般廃棄物処理業者に依頼しましょう」「事前の見積もりとは異なる高額な料金を請求された場合は、支払いを断りましょう」「トラブルになったときは消費生活センター等に相談しましょう」の4つです。

    電話で確認するのは2つだけで足ります。「一般廃棄物収集運搬業の許可は、どこの市のものをお持ちですか」「仏壇は引き取れますか」。この2問に即答できない相手には、家財を渡さないでください。


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    「仏壇だけ」より、「遺品整理」として頼むほうが話が進みます

    仏壇を1点だけ運び出してくれる業者は、そう多くありません。国の調査でも、遺品整理サービス事業者69社のうち仏壇を専門に引き取るのは1社でした。現実的なのは、家財の片付けとまとめて頼み、そのなかで仏壇の扱いを相談する形です。遺品整理110番は、条件を聞いたうえで加盟店を手配し、見積りにつなぐサービスです。

    ①作業をするのは加盟店で、これは紹介のサービスです。②加盟店が一般廃棄物収集運搬業の許可を持っているかは、申込先で確認してください。当サイトは確認していません。③料金と無料の範囲も申込先で確認してください。当サイトは各加盟店の料金体系を確認していません。④不用品の回収だけを頼みたい場合には向きません。遺品整理として依頼する窓口です。

    遺品整理110番で、仏壇を含めた見積りを依頼する

    申し込む前に、仏壇の引き出しだけは自分の手で開けてください。何を残すかは実家の片付けで捨ててはいけない書類にまとめています。

    9. 実家じまいのどこで、仏壇を出すか

    順番を間違えると、余計な費用と手間が出ます。仏壇を出すのは「解体の前」であり「売却の前」です。

    時期 やること 間違えるとどうなるか
    四十九日〜 誰が承継するかを、兄弟の間で口に出しておく 片付けの直前に決めようとすると、そこで全部止まる
    片付けを始める前 仏壇と引き出しの中を、自分の手で確認する 通帳・権利証・保険証券がまとめて処分される
    片付けの初期 菩提寺に連絡して、法要の日と引き取りの相談 お寺の予定が合わず、解体の日程が後ろにずれる
    解体の見積り前 残置物の量が確定する 残置物ありの見積りになり、単価が上がる
    売却の媒介契約前 仏間が空になっている 内見で買主の心証が落ちる。引渡し前に慌てて撤去することになる

    仏壇の引き出しから何が出てくるかは、実際にやってみないと分かりません。総務省の同じ報告書には、事業者が古物商の許可を使って「貴重品(現金、貴金属、有価証券等)を除く家財一式」を買い取る実務が記載されています。貴重品は買取の対象から外して別扱いにするのが業界の一般的なやり方だ、ということです。裏を返せば、貴重品を見つけて分けるのは依頼した側の仕事になります。

    片付け全体の費用感は遺品整理の費用に、実家をどうするかの選択肢は空き家になった実家の処分と実家じまい完全ガイドにまとめています。


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    仏壇を出したあと、その家をどうするか

    仏壇と家財が出れば、実家はようやく「人に見せられる状態」になります。売るか壊すかを決める前に、いまの状態でいくらになるのかを一度だけ数字にしておくと、片付けにいくらかけてよいかが決まります。ラクウルは空き家・中古戸建ての買取査定で、対応エリアは全国です。

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    よくある質問

    仏壇を粗大ごみに出すのは、罰当たりでしょうか

    宗教上の評価は当サイトが答えられることではありません。ただ、法律上は問題ありません。家庭から出た仏壇は一般廃棄物で、その処理は市町村の責任です(廃棄物処理法6条の2第1項)。実際に大阪市は1,000円、名古屋市は2,000円という手数料を公表して、品目として受け付けています。

    気になるのであれば、法要だけ先にお寺で済ませてから、箱としての仏壇を粗大ごみに出すという分け方ができます。東大阪市のように「解体できない場合宗派の寺院、神社、仏壇店へ相談してください」と、自治体側から相談先を案内している市もあります。

    魂抜きをしないまま処分してもよいですか

    ここは宗派によって前提が違います。浄土真宗の二派は、そもそも魂を入れる・抜くという受けとめを採らないと公式サイトに書いています。本願寺派は「『お魂入れ』や『お性根入れ』とは言いません」と明記しています。

    一方で、曹洞宗・浄土宗・日蓮宗の公式サイトには仏壇の処分に関する説明が見当たりませんでした。つまり、どの宗派でも共通に「必要」と言える根拠を、当サイトは一次情報で確認できていません。菩提寺に「こちらではどうされていますか」と聞くのが、いちばん確実です。

    兄弟が反対しています。どうすればいいですか

    まず、誰が承継者なのかをはっきりさせてください。民法897条は「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」「被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する」と定めていて、話し合いで決まらないときは家庭裁判所が定めると2項に書かれています。

    実務としては、反対している人に「では引き取ってもらえますか」と聞くと、話が動くことが多いです。それでも動かないなら、遺産分割の話とまとめて家庭裁判所の調停で扱う形になります。勝手に処分してから事後報告、というやり方だけは避けてください。関係が壊れるだけでなく、所有権のある人との間で問題になり得ます。

    仏壇を残したまま家を解体してもらえますか

    解体業者が引き取れるかどうかは、その業者が一般廃棄物処理業の許可を持っているか、市町村から委託を受けているかで決まります。環境省の通知は、残置物が一般廃棄物である場合「産業廃棄物処理業の許可を取得していることのみでは足りず」と明記しています。

    そして、残置した廃棄物の処理責任は所有者側に残ります。「壊すついでにお願いします」で済む話ではないので、見積りの段階で「残置物はどう扱いますか」「どの許可でやりますか」を聞いてください。

    お寺に払うお金は、いくら用意すればいいですか

    金額の相場は、当サイトでは書きません。一次情報に存在しないからです。国税庁の税務大学校の論叢は、喜捨は「対価性を持つもの」ではなく「金員の多寡によらない」と整理しています。定価がないものに相場を書くと、それが基準になってしまいます。

    用意するときは、白い封筒を1枚と、お寺に「こちらではどのようにされていますか」と聞く電話1本から始めてください。金額を示してくれるお寺もあります。

    仏壇店に引き取りだけ頼めますか

    店によります。買い替えとセットなら引き取る、引き取りだけは受けない、という店もあります。ただし自治体側から仏壇店を案内している例はあります。明石市は「収集できません」としたうえで「販売店または明石クリーンセンターに相談してください」と書いていますし、朝霞市は「専門店へのご相談を優先してください」と書いています。市の案内文に業種が書いてあるときは、そこに電話するのが早いという考え方です。

    位牌はどうすればいいですか

    今回調べた7市の分別辞典に「位牌」という品目は載っていませんでした。載っていないので、市に聞くしかありません。仏壇と一緒に法要してもらい、そのまま引き取ってもらう形が現実的です。神棚については、朝霞市が仏壇とまったく同じ備考(専門店を優先、やむを得ない場合は粗大ごみ、50cm未満は不燃ごみ)を付けていて、郡山市は仏壇と並べて「市で収集しないごみ」に書いています。

    仏壇の中から通帳や権利証が出てきました

    片付けの前に見つかったのなら、いちばん良い形です。通帳・権利証・保険証券・年金関係の書類は、捨ててはいけない側の代表です。とくに購入時の売買契約書や領収証は、売却したときの税金を数百万円単位で左右します。何を残すかは実家の片付けで捨ててはいけない書類に、契約書が見つからないときの計算は取得費が分からないときにまとめています。

    仏壇を引き取ってもらう日は、いつがいいですか

    解体の見積りを取る前です。残置物が残っていると、その量を見込んだ見積りになります。解体の日程全体の組み方は家の解体はいつ終わるかにまとめました。売却する場合は、媒介契約を結んで内見が始まる前に空にしておくほうが有利です。

    この記事で確認できなかったこと

    • 閉眼供養・お性根抜きの金額の目安。宗派の公式サイトにも国税庁の資料にも記載がありません。当サイトは金額を書きません。
    • お布施の領収書の要否や様式。国税庁の一次情報で確認できませんでした。
    • 仏壇の引き取り・処分が、法人税法上の収益事業(物品販売業・請負業など)に当たるかどうか。国税庁が直接判断を示した記述を見つけられませんでした。
    • 民法897条の「祭具」に仏壇・位牌が当たると明示した一次情報。民法に「祭具」の定義規定はありません。一般にそう解されていますが、条文で確認できるものではありません。
    • 金仏壇と唐木仏壇で扱いを分けている自治体。10市の分別辞典・手数料表を確認しましたが、材質で分けている例は見つかりませんでした。
    • 神戸市・東大阪市・静岡市・新座市・岸和田市の仏壇の具体的な手数料額。品目ページ・一覧表に金額の記載がありませんでした。各市の大型ごみ手数料ページを別途確認してください。
    • 実家を売却・賃貸するときに仏壇を残置した場合の取扱い。環境省の通知で確認できたのは解体時のものだけです。
    • お焚き上げと大気汚染防止法・自治体の火災予防条例との関係。確認していません。
    • 2022年度以降の「不用品回収サービス」の年度別相談件数の確定値。国民生活センターの特化した公表資料は令和4年11月2日のものが最新として確認できたところまでです。
    • 曹洞宗・浄土宗・日蓮宗・高野山真言宗の公式サイトにおける、仏壇の処分・閉眼供養の説明。各宗派の公式サイトを確認しましたが、該当ページを特定できませんでした。

    まとめ

    1. 仏壇は民法897条の「祭具」として、相続財産とは別のルートで1人が承継します。決め方は「指定 → 慣習 → 家庭裁判所」。
    2. 捨て方は市区町村で3パターンに分かれます。粗大ごみで受け付ける市、条件つきの市、そもそも収集しない市。金額も1,000円から2,000円まで幅があります。
    3. 残したまま解体しても、処分の責任は所有者に残ります。解体業者の産業廃棄物の許可では引き取れません。
    4. 「魂抜き」は共通語ではありません。浄土真宗の二派は公式に否定しています。菩提寺への電話1本が、いちばん早い調べ方です。
    5. お布施は喜捨であって代金ではないので、定価はありません。「いくらか」ではなく「どうされていますか」と聞いてください。
    6. 業者に頼むなら、一般廃棄物収集運搬業の許可がどこの市のものかを必ず聞いてください。

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  • 空き家の水道と電気は止めるべき?|「廃止」を選ぶと加入金が復活します

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    誰も住まなくなった実家の水道と電気を、止めるか残すか。ほとんどの人が「とりあえず止める」を選びます。使っていないのに毎月お金が出ていくのは、たしかに気分が悪い。

    ただ、水道の窓口には「休止」と「廃止」という2つのボタンがあって、片方を押すと取り返しがつきません。廃止を選ぶと給水装置の権利が消えて、次に使うときに加入金がもう一度かかります。13mmで46,200円の市もあれば、150,000円の市もあります。

    そしてもうひとつ。止めた日付が、あとで税金の特例の要件になります。この記事は、その2つを知らずに窓口へ行かないための記事です。

    結論だけ先に

    • 水道は「休止(一時中止)」と「廃止(撤去)」が別の手続きです。廃止すると権利が消え、再取得時に加入金が復活します(熊野市 給水条例第33条第3項に明記)。
    • 休止すればタダ、とも限りません。四国中央市は「休止期間中においても、検針等を行いますので、1月あたり260円の料金をいただきます」と公式に書いています。
    • 電気は、契約を残しても「まったく電気をご使用にならない場合の基本料金は、半額」(東京電力EP 従量電灯B)。30A契約なら月935円25銭の半額です。
    • いちばん大きな落とし穴は止める日付。空き家の3,000万円特別控除で出す確認書には「電気、水道又はガスの使用中止日が確認できる書類」が要り、その日は相続開始日以降である必要があります。

    根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

    「止める」には2種類あって、片方は取り返しがつきません

    言葉の定義から。自治体の公式ページが、はっきり書き分けています。

    休止(使用中止・一時停止) 廃止(撤去)
    何が起きるか 「水道を使用する権利を残したまま、使用を中止する」(富加町) 「水道を使用する権利をなくし、メーター器を取り外し、使用できなくする」(富加町)
    物理的には メーターを取り外す(土岐市) メーターだけでなく引き込み管も撤去(土岐市)
    再開するには 所定の手続きで再度使える 「あらためて給水管の引込み工事及び加入金をお支払いいただく」(長野市)
    誰が申し込めるか 使用者 「所有者または、所有者に委任された方のみ」(熱海市)

    廃止すると、加入金が復活します

    条例にそのまま書いてあります。熊野市水道事業給水条例 第33条第3項——「所有者がその給水装置を廃止した後給水装置工事をしようとする場合は、加入金を徴収する」。

    その加入金がいくらかというと、13mmで長野市 46,200円/土岐市 148,500円/座間市 150,000円(税別)。横浜市は口径25mm以下で165,000円です。解体のときに「もう使わないから」と廃止すると、将来その土地に建て直すとき、この金額が丸ごと乗ります。

    お住まいの自治体の金額は水道加入金 全国一覧(298自治体)で口径別に確認できます。名前が「加入金」「分担金」「負担金」「給水申込加入金」などバラバラなので、金額から探したほうが早いです。

    休止すればタダ、とは限りません

    ここも自治体差が大きい部分です。

    自治体 公式ページの記載
    愛媛県四国中央市 「休止期間中においても、検針等を行いますので、1月あたり260円の料金をいただきます」
    富山県南砺市 「水道の中止、再開には、それぞれ2,000円の手数料が必要ですが、中止期間は上下水道料金はかかりません」
    岐阜県土岐市 休止(メーター取外し)手数料2,500円/廃止(メーター+引込管撤去)は費用なし
    岐阜県富加町 「休止期間中は水道料金が賦課されません」

    そして、届出をしないかぎり課金は止まりません。これは全国どこでも同じです。

    • 宇都宮市:「休止のご連絡がないと、お使いにならなくても基本料金がかかります」
    • 上田市:「水道の休止届出がない場合は、水道を使用していない場合でも基本料金がかかります」
    • 郡上市:「使用水量がなくても、休止の申請がないと水道・下水道の基本料金が発生します」
    • 神奈川県企業庁:「ご連絡なく転出されますと、ご使用いただかなくても基本料金がかかります」

    親が亡くなってから何年も、誰も使っていない家の基本料金を払い続けている——という相談が多いのは、この構造のせいです。まず、いま契約が生きているかどうかを確かめてください。

    残した場合、年にいくらか

    公式の料金表から拾った、口径13mm相当の基本料金です。1滴も使わなくても、この額はかかります。

    事業体 水道の基本料金 下水道の基本部分 年額の目安
    名古屋市 2か月 1,694円(税込) 2か月 1,518円(税込) 19,272円
    福岡市 2か月 1,700円(税込) 2か月 1,672円(税込) 20,232円
    横浜市 2か月 1,680円(税抜) 2か月 1,260円(税抜) 19,404円(税込換算)
    川崎市 2か月 1,060円(16m³まで) 2か月 1,320円(16m³まで) 15,708円(税込換算)
    札幌市 1か月 1,452円(税込) 1か月 600円(10m³まで) 24,624円
    大阪市 1か月 850円(一般用・税抜) — —
    神戸市 口径20以下 2か月 2,112円(税込) 基本額 1,100円 —

    年額は水道と下水道を単純に合計しただけの概算です。札幌市の下水道基本使用料は令和8年10月1日から750円になるので、そこは増えます。大阪市の下水道と神戸市の下水道の課金単位は、今回の調査では確認できませんでした。

    電気は別勘定です。東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bの基本料金は次のとおり(税込)。

    契約アンペア 基本料金(1か月)
    20A 623円50銭
    30A 935円25銭
    40A 1,247円00銭

    ここに、ほとんど知られていない規定があります。

    まったく電気をご使用にならない場合の基本料金は、半額となります。(東京電力エナジーパートナー 従量電灯B・C)

    30A契約なら、935円25銭の半額。年間で約5,600円です。同じ料金表には「最低月額料金 1契約につき328円08銭」という規定もあるので、どちらが適用されるかは契約内容によります。電力会社に確認してください。

    水道・下水道と電気を残したままにすると、年におおよそ2万〜3万円。これが「使っていないのに出ていくお金」の実額です。空き家の維持費は年間いくら?で、固定資産税や火災保険まで含めた総額を積み上げています。

    それでも止めないほうがいい場面が、5つあります

    ① 解体工事に水が要ります

    足立区の「解体工事等の環境保全対策に係る指導基準」には、「粉じん対策として散水を徹底すること」と書かれています。石綿がある場合はさらに厳格で、大気汚染防止法施行規則の作業基準に「除去する特定建築材料を薬液等により湿潤化すること」「除去した部分に特定粉じんの飛散を抑制するための薬液等を散布する」と規定されています。

    ただし、一般的な木造家屋の解体で散水が法的義務かどうかは、今回は確認できませんでした。確認できたのは石綿の作業基準と、自治体の指導基準までです。実務上は業者が給水車やタンクを持ち込むこともあるので、見積りを取るときに「水は現地の水道を使いますか」と聞いてください。

    ② 内見・清掃・草刈り・遺品整理

    ここは正直に書きます。「水と電気が必要」ということを裏づける官公庁の資料は見つけられませんでした。民間事業者の記事しかありません。

    ただ、遺品整理の作業は夏場に何時間もかかり、照明のない部屋の押し入れの奥を探すことになります。遺品整理の費用で見積りを取る前に、業者へ「電気と水は使えますか」と聞かれる可能性は考えておいてください。

    ③ 凍結(寒冷地は、止めただけでは終わりません)

    札幌市水道局の使用中止の申込ページに、こう書かれています。

    使用中止にあたり、水道局では水道メーターの止水栓は閉めませんので、水抜栓で水抜きをお願いいたします。

    長岡市水道局の長期不在時の手順は、①止水栓を閉める ②1〜2か所の蛇口を開ける ③水が出なくなったら蛇口を閉める。そして「給湯器や宅内の配管から漏水した場合、漏水分の水道料金や修理費等はお客様ご負担となります」。

    ④ 漏水は、空き家でも所有者に請求されます

    呉市上下水道局の記述が、いちばん明確です。

    漏水など実際に水道を使用してない場合や、空き家や長期不在であっても、検針で水量が確認されたときには、給水契約の有無にかかわらず、所有者等に水道料金を請求します。

    「漏水減免があるから大丈夫」とは言えません。横浜市の減額制度は、次の場合を対象外としています。

    • 「お客さまが漏水している事実を知りながら修繕を怠った場合」
    • 「蛇口の閉め忘れなどの不注意により、接続してあるホースや器具類等から漏水した場合」
    • 「漏水頻度の多い老朽管で、その管の取替えについて水道局から指導を受けた以降に、取替工事を行なわず漏水が発生した場合」

    川崎市も「お客様等が漏水の事実を容易に確認できないと認められるとき」「修理を怠っていなかったと認められるとき」を要件にし、減免期間は1件の漏水につき最大4か月としています。

    空き家は「発見が遅れる」ことがそのままリスクになります

    誰も行かない家の漏水は、次の検針まで誰も気づきません。「空き家だから減免対象外」と明記した規定は見つかりませんでしたが、どの制度も「容易に発見できない漏水か」「修繕を怠っていないか」を要件にしています。止水栓を閉めておく——呉市も南砺市も、これを呼びかけています。

    ⑤ 通電火災

    総務省消防庁の資料に、こうあります。

    阪神・淡路大震災 地震火災139件のうち電気火災が85件
    東日本大震災 地震火災108件のうち電気火災が58件

    「過去の大規模地震では、電気が出火原因とされる火災は半数以上を占めており」「地震時の電気火災の発生を抑制するためには、避難時にブレーカーを落とすなど電気を遮断することが有効である」(消防庁)。

    誰もいない家に電気を通しておくことは、この観点では推奨されません。契約を残すにしても、ブレーカーは落としておくのが公式の方向です。空き家の火災保険の扱いは空き家の火災保険にまとめました。

    いちばん大きな落とし穴は、止める日付です

    ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

    空き家の3,000万円特別控除を使うには、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」が要ります。その交付を申請するときの添付書類に、こう書かれています。

    電気、水道又はガスの使用中止日、閉栓日、契約廃止日等が確認できる書類(神奈川県企業庁発行の「使用休止票」、東京ガス株式会社発行の「ガス閉栓証明書」など)

    当該日は相続開始日以降である必要があります。

    2つ、同時に効きます

    ①止めた証拠の紙が要ります。解約の電話1本で済ませて、明細もメールも残していないと、あとで立証できません。窓口で「使用休止票」「閉栓証明書」を必ずもらってください。

    ②止めた日が相続開始日より前だと、この書類では要件を満たしません。親が施設に入った時点でライフラインを止めていた場合、この経路は使えません。ただし老人ホーム等に入所していた場合には別の添付書類(要介護認定の書類、施設の名称・所在地、老人ホーム等が保有する外出記録のコピーなど)の道が用意されています。

    止める手続きと同じ日に確保すべき紙は、実家の片付けで捨ててはいけない書類9つにまとめてあります。閉栓証明はその9つのうちの1つです。


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    止めるか残すかは、その家をどうするかで決まります

    3年以内に売るなら、基本料金3年分(6万〜9万円)は誤差です。10年持ち続けるなら、止める判断のほうが大きい。先に決めるべきは「いつまでに手放すか」で、そのためには金額が要ります。査定は数日で数字が出ます。

    ①買取は仲介より手取りが下がります。相場に近い額で売りたいなら仲介を先に検討してください。②査定額は売れる価格ではありません。③匿名のAI査定では実額は出ません。桁を確かめるだけのものです。④LINEからの相談は、このリンク経由の申し込みとして扱われません。フォームから進んでください。⑤日本国外からの申し込みは対象外です。⑥ライフラインを止めた日は、空き家の3,000万円特別控除の要件に関わります。売る前に、この記事の「止める日付」の章を読んでください。

    ラクウルで買取価格を出してもらう(無料)

    金額が出たら、年2万〜3万円の基本料金を何年払うことになるかで割ってください。判断が数字になります。

    電気を止めるときの順番

    解体まで見ているなら、順番が決まっています。

    1. 電気需給契約を解約する(小売電気事業者へ)。東京電力パワーグリッドの案内に「電気需給契約の解約がお済みの場合は、東京電力パワーグリッド(株)へご連絡」とあり、契約廃止が先です
    2. 引込線等の撤去を申し込む。Web受付または電話。「遅くとも撤去ご希望日の1週間前までにお申込み」
    3. ただし「場合によっては撤去工事の準備に6ヶ月以上を要する事例もあります」と明記されています。早めに電話して、自分の家がどちらか確かめてください

    解約だけならメーターと引込線は残るので、再契約はWebやチャットで済みます。引込線まで撤去してしまうと、次に使うときは引込工事の申込からになります。解体しないなら、撤去まではしないほうが選択肢が残ります。

    解体全体の逆算は解体はいつ終わる?申込から更地までの日数に、届出とライフラインをまとめた表があります。

    ガスは、水道や電気より段取りが厳しい

    水道と電気の話をしてきましたが、解体の日程をいちばん左右するのはガスです。止めるだけでは足りず、管を抜く工事が別に要ります。

    都市ガス:閉栓と撤去は、別の手続きです

    項目 公式の案内
    撤去工事の申込時期 「ご希望工事日の2週間前を目安に、お早めにお申し込みください」
    費用 「一部撤去工事費は、お客さま負担となります」
    立会い 「工事当日はお立ち会いが必須」
    急ぐ場合 2026年4月1日以降、受付日の翌営業日から5営業日以内の工事を希望すると至急対応加算費 17,000円/件が加わる
    触ってはいけない 撤去工事が完了するまでガス管に触れないよう作業関係者にも周知が必須。破損は「ガス事業法に基づき罰則の対象となることがあります」

    出典:東京ガスネットワーク「敷地内での解体・増改築に伴うガス管撤去工事のお申し込み」/2026年8月24日確認

    閉栓(使用停止)そのものは、メーターの場所に入れるなら立会いなしで済むことがあります。東京ガスは「オートロック式の建物など、ガスメーターのある場所まで立入れない場合は、お立会いをお願いいたします」と書いています。問題は撤去のほうで、こちらは立会いが必須です。

    解体の日取りを決めるより先に、ガスの撤去申込をしてください。ここが間に合わないと着工できません。

    LPガス:ボンベも調整器も、あなたのものではないことがあります

    プロパンの場合、ボンベ・調整器・供給管は販売事業者の資産であることが多いという点が、都市ガスと決定的に違います。液化石油ガス法の14条書面に「供給設備及び消費設備の所有関係」を記載することが義務づけられているので、実家の書類のなかから14条書面を探すのが第一歩になります。

    全国LPガス協会の販売指針には、次の記載があります。

    消費者から契約解除の申し出があった場合、撤去が著しく困難である場合やその他正当な事由がない限り、原則1週間以内に供給設備を撤去する必要があります。

    販売事業者が所有する消費配管や機器等は、原則として適正な対価で所有権を移転しなければなりません。

    出典:全国LPガス協会「LPガス販売指針(取引適正化・料金情報提供の自主ルール)」/2026年8月24日確認

    解約したら精算金を求められることがあります

    給湯器やコンロ、宅内の配管が販売事業者の所有になっていると、解約時に「適正な対価」での所有権移転、つまり精算を求められることがあります。精算の方法は14条書面などに書かれた方法によります。「タダで付けてもらった設備」は、たいてい無償ではありません。解約の電話をかける前に、書面を探してください。

    判断の順番

    1. いま契約が生きているかを確認する。納税通知書や口座の引き落としを見る
    2. その家をどうするかを決める。3年以内に売る/壊す/持ち続ける
    3. 持ち続けるなら「休止」。廃止(撤去)は選ばない。加入金が復活します
    4. 止めるときは「使用休止票」「閉栓証明書」を必ずもらう。相続開始日以降であることを確認する
    5. 寒冷地なら水抜き。止水栓を閉めるだけでは足りません
    6. 電気は契約を残すにしてもブレーカーを落とす。通電火災の対策です
    7. 解体するなら、散水に水が要るかを業者に確認してから止める
    8. 建て替える予定があるなら、自分の自治体の加入金を先に見る。桁が違います

    よくある質問

    もう何年も止めていません。さかのぼって返してもらえますか

    難しいと考えてください。大分市は下水道の一時休止について「遡っての適用はおこなえませんので、すでにご入金いただいている使用料の返還は出来かねます」と明記しています。気づいた時点で届け出るのが、いちばん安く済みます。

    建て替える予定があります。廃止と休止、どちらですか

    建て替えるなら廃止は避けてください。熊野市の条例のように「廃止した後に給水装置工事をしようとする場合は、加入金を徴収する」と定めている自治体があります。ただし建て替えの場合に加入金がかからない・差額だけで済む自治体も多数あります。口径を上げると差額が出ることもあるので、水道加入金 全国一覧と水道の引込費用で、自分の自治体の扱いを確認してください。

    解体すると、水道の権利はどうなりますか

    自治体によります。撤去した分を差し引く規定を持つところ、廃止扱いになるところ、休止のまま残せるところがあります。解体業者に任せて「ついでに水道も止めておきます」と言われたときに、それが休止なのか廃止なのかを必ず確認してください。この一言で数万〜十数万円が変わります。

    下水道の使用料も止まりますか

    水道の使用中止届で一緒に止まる自治体が多数です。解体・建替え工事の期間だけ下水道を止められる制度がある自治体もあります(大分市:「工事期間中の下水道使用料を発生しないようにできます」)。ただし事前届出が必要で、遡及はできません。

    電気を解約すると、スマートメーターは撤去されますか

    撤去されるかどうか、また再取付が有料かどうかは、今回は確認できませんでした。解約とは別に「引込線等撤去」という手続きがあるので、解約だけならメーターは残るものと考えられますが、電力会社に確認してください。

    この記事で確認できなかったこと

    • 東京都水道局の口径13mm基本料金の実額。公式サイトが取得できませんでした。なお同局のサイトには「水道料金の基本料金を無償とします」というページが存在しますが、対象期間・対象範囲は確認できていません
    • 大阪市の下水道使用料の基本使用料の額、神戸市の下水道基本額の課金単位
    • 川崎市・大阪市の「口径13mm」の区分の明示(両市とも掲載は用途別・水量別でした)
    • 電気の解約後に引込線・メーターを撤去し、再度引き込む場合の工事費負担金の具体額
    • スマートメーターの取替・再取付が有料か無料かについての公式の明記
    • 内見・清掃・草刈り・遺品整理に水と電気が必要だという点を裏づける官公庁の資料。民間事業者の記事しかありませんでした
    • 火災保険の空き家扱い(住宅物件/一般物件)についての官庁・日本損害保険協会の公式資料。また通電火災・漏水事故と保険金支払いの可否を直接扱った公式資料
    • 「空き家(使用中止していない)でも漏水減免されるか」を明記した規定。空き家を名指しで除外/包含する条文は見つかりませんでした
    • 一般の(石綿を含まない)木造家屋の解体で散水が法的義務かどうか。確認できたのは石綿の作業基準と自治体の指導基準までです
    • 東京ガスの一般料金A表の基本料金額(料金表ページが取得できませんでした)

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    壊すなら、水を止める前に業者に確認する

    解体の見積りを取るときに、「散水に現地の水道を使いますか」「水道は休止と廃止のどちらにしますか」の2つを聞いてください。この2問に即答できる業者かどうかで、任せていいかが分かります。金額の比較は、そのついでです。

    ①同社サイトには「ご利用は無料。ご成約後の請求も一切ございません」と書かれています。
    ②申し込みには物件の情報と写真が要ります。遠方の実家で写真が手元にないなら、次に帰ったときに外観と傷んでいる箇所を撮っておいてください。
    ③解体する予定がないなら申し込まないでください。重複した申込や、連絡先が実在しない申込は無効と明記されています。
    ④1社の見積りだけで決めないでください。地元の解体業者にも自分で1社あたって、金額の桁が合っているかを確かめてください。
    ⑤解体補助金を使う予定があるなら、契約・着工の前に自治体へ申請してください。着工後の申請は原則として通りません。

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    まとめ

    1. 水道は「休止」と「廃止」が別の手続き。廃止すると権利が消えます
    2. 廃止後に再取得すると加入金が復活(熊野市 給水条例第33条第3項)。13mmで46,200円〜150,000円
    3. 休止でも月260円かかる自治体があります(四国中央市)。手数料が要る自治体も
    4. 届出をしないかぎり使わなくても基本料金は止まりません
    5. 残した場合の実額は、水道+下水道で年1万5千円〜2万5千円。電気は30Aで全く使わない月は基本料金が半額
    6. 止めると困るのは解体時の散水・凍結・漏水・内見。漏水は空き家でも所有者に請求されます
    7. 通電火災は、阪神・淡路で139件中85件、東日本で108件中58件が電気火災。ブレーカーは落とす
    8. 止めた日付が3,000万円控除の要件になります。「使用中止日が確認できる書類」を必ずもらい、その日が相続開始日以降であることを確認してください
    9. ガスは閉栓と撤去が別の手続き。都市ガスの撤去は2週間前が目安で立会い必須、費用は所有者負担。LPガスはボンベも配管も販売事業者の資産のことがあり、解約時に精算を求められることがあります

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  • 空き家を壊さずに直す補助金|改修・活用に出るお金と、「3親等内の親族は対象外」の壁

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    「壊すのに補助金が出るなら、直すほうにも出るだろう」。そう思って「空き家 改修 補助金」で調べ始めた人が、途中で必ずつまずくポイントがあります。

    この種の補助金の多くは、空き家の所有者のための制度ではありません。申請できるのは移住者や購入者で、しかも「所有者の3親等内の親族は入居者にできない」と要綱に書いてある自治体があります。つまり、相続した実家を自分で直して使う——という使い方が、そもそも想定されていません。

    この記事では、全国12自治体の要綱と国の制度を実際に読んで、誰が申請できて、いくら出て、どこで落ちるのかを整理します。そのうえで、所有者のまま使える道を3つ挙げます。

    結論だけ先に

    • 改修補助の多くは「空き家バンク経由で買った・借りた人」が申請者です。白山市の要綱には「入居者または入居予定者が空き家の所有者の3親等内の親族でないこと」と書かれています。
    • さらに5年〜10年の居住誓約がつき、破ると返還です。和歌山市は10年、今治市は5年。
    • 外壁塗装だけの助成金は、一般的ではありません。横浜市は「補助制度はございません」と明記。宇都宮市は令和8年度から外壁塗装等を対象外にしました。
    • 所有者のまま使える道は①賃貸に出す前提の改修、②耐震改修、③省エネ改修(住宅省エネ2026キャンペーン)の3つ。③は移住者要件も居住誓約もなく、平成3年以前に建った家なら上限が100万円に上がります。

    根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

    まず、この補助金は「あなたのため」の制度ではないことがあります

    要綱の条文を並べます。

    自治体 要綱の規定
    石川県白山市 要綱第3条「入居者または入居予定者が空き家の所有者の3親等内の親族でないこと」「市税を滞納していないこと」「過去5年の間にこの告示に基づく補助金の交付を受けていないこと」
    山口県防府市 購入者要件は「空き家を親族(3親等以内)以外の者から購入した個人」。所有者が申請する場合は「賃貸する目的で改修し、新たに防府市空き家バンクに登録すること」(要綱第3条第1項)
    和歌山県和歌山市 申請者は「和歌山県外からの移住者」。所有者ではありません
    愛媛県今治市 「県外から令和3年4月1日以降に移住した方」が対象

    親から相続した実家を、自分か子どもが住むために直す。この使い方は、多くの制度で正面から除外されています。「親族に貸すのはダメ」ではなく「親族が入居者だとダメ」と書かれている点に注意してください。

    なぜそうなっているのか

    これらは住宅政策ではなく移住・定住施策だからです。市が出したいのは「空き家が直ること」ではなく「人口が増えること」。だから外から来た人にしかお金が出ません。制度の名前が「空き家改修補助金」でも、財布は移住定住の予算です。

    全国12自治体の実額を並べます

    自治体 補助率 上限額 いちばん重い条件
    北海道 木古内町 1/2 50万円(町内業者施工なら100万円) 5年以上の居住・賃貸を確約
    秋田県 秋田市 1/2 移住者購入100万円/賃借30万円/市内在住者購入50万円 10年以上居住、市内業者施工
    群馬県 桐生市 1/2(移住者枠2/3) 70万円(移住者枠100万円)+バンク加算20万円 5年以上定住(移住者枠は10年)、市内業者施工
    栃木県 宇都宮市 — — 令和8年度から外壁塗装等が対象外
    静岡県 静岡市 2/3以内 100万円(移住・子育て等は200万円) 空き家バンク経由、売買契約から1年以内
    三重県 鈴鹿市 1/3以内 50万円 市外からの移住者限定、10年以上定住、申請は10月31日まで
    石川県 白山市 1/2以内 50万円(山間5地域は100万円) 3親等内の親族が入居者だと対象外
    和歌山県 和歌山市 2/3 改修50万円+家財処分10万円 県外からの移住者、10年以上定住・破れば返還
    兵庫県 神戸市 1/2 最大200万円 社会貢献活動・地域活動の用途、2年以上
    山口県 防府市 1/2以内 50万円 空き家バンク登録、市内業者、6件程度・先着順
    愛媛県 今治市 2/3 最大400万円(子3人以上)+家財20万円 県外からの移住者、5年以内の売却等で返還
    長崎県 五島市 1/2以内 UIターン50万円/新婚・所有者100万円+家財20万円 転入日から1年以内、市内業者、5年以上居住

    補助率は1/3〜2/3、上限は50万〜400万円。桁は自治体でまったく違います。そして金額が大きいところほど、条件が重くなっています。

    条件は4つの層に分かれています

    ① 空き家バンクへの登録が条件(要綱に書いてあります)

    静岡市 要綱第4条 「空き家情報バンクに登録されたものであること」「空き家情報バンクを利用し、売買契約又は賃貸借契約が締結されたもの」
    防府市 要綱第3条第1項・第14条第7号 「新たに防府市空き家バンクに登録すること」。完了報告書に「空き家バンク登録完了通知書の写し」を添付
    白山市 要綱第1条・第2条第(1)号 「空き家バンクに登録された空き家の改修及び修繕に要する経費に対し、予算の範囲内で補助金を交付する」

    空き家バンクそのものの実態(登録すれば売れるのか、手数料はどうなるのか)は、空き家バンクは売れるのかにまとめてあります。登録は補助の入口であって、出口ではありません。

    ② 移住者・県外からに限る

    和歌山市は「和歌山県外からの移住者」、今治市は「県外から令和3年4月1日以降に移住した方」、鈴鹿市は「市外から移住する者」。同じ県内で引っ越すだけでは対象外になる制度があります。

    ③ 5年〜10年の居住誓約と、返還規定

    自治体 誓約年数 返還規定
    和歌山市 10年 「10年を経過するまでに…解約・売却・賃貸した場合」「転居した場合、やむを得ない理由がある場合を除き補助金を返還」
    今治市 5年 「5年以内に改修した住宅を取り壊し、賃貸または売却等した場合は、補助金を返還しなければならない場合があります」
    防府市 — 要綱第20条第2項「期限を定めてその返還を命ずるものとする」
    静岡市 — 要綱第16条(補助金の返還)

    10年です。50万円もらって10年縛られるのが得かどうかは、その家に10年住む確信があるかどうかで決まります。

    ④ 市内業者による施工

    秋田市「秋田市内に本店、支店または営業所等を有する建設業者等」、鈴鹿市「市内に本店・支店・営業所を有する建設業者が施工」、防府市 要綱第2条第4号「市内に本社若しくは主たる事務所を有する法人又は市内に住所を有する個人の事業者」、五島市「市内に事業所を有する個人事業主、又は市内に本店を有する法人」。

    木古内町は逆の書き方で、町内業者なら上限が50万円から100万円に上がります。

    遠方の実家で、いつも頼んでいる業者に任せたい——という進め方は、この条件と衝突します。業者を決める前に、要綱の「市内業者」条項を読んでください。


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    直せる家かどうかを、先に確かめる

    補助金の条件より前に、そもそも直して使える家なのかという問題があります。接道が足りていない、既存不適格、基礎が傷んでいる——ここで止まると、補助金の話まで進みません。建築指導課で接道・用途地域・建ぺい率・容積率を先に確認してから相談すると、話がまったく変わります。

    先に正直なことを書きます。相談しても、建て替えられない土地は建て替えられません。再建築不可なら、どの会社に相談しても答えは変わりません。先に建築指導課で、接道・用途地域・建ぺい率・容積率を確認してから行ってください(無料です)。その数字を持っていくかどうかで、相談の中身がまったく変わります。
    それから、場所の話です。この窓口は10府県・29店舗にしかありません。栃木・群馬・埼玉(熊谷市のみ)・千葉(柏市のみ)・山梨・岐阜・静岡・愛知・三重・大阪だけで、東京都と神奈川県には店舗がありません。該当しない地域の方は、地元の工務店に直接あたってください。
    相談は来店が必要です(電話相談は対象外だと成果条件に書かれています)。所要は90〜120分だと広告主が案内しています。

    くふうイエタテカウンターに無料で相談する

    相談の前に、この記事の「直しても使えないことがあります」の章に目を通しておいてください。

    所有者のまま使える道が、3つあります

    道1:賃貸に出す前提で直す

    防府市の要綱は、所有者が申請者になれる形を用意しています。「補助対象空き家を賃貸する目的で改修し、新たに防府市空き家バンクに登録すること」(第3条第1項)。ただし3親等以内の親族の入居は除かれます。

    国の制度としては、住宅セーフティネットがあります。

    根拠法 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律
    登録制度 住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅(セーフティネット住宅)。登録基準は床面積が原則25㎡以上、耐震性を有すること
    改修費補助 居住サポート住宅改修事業(住宅確保要配慮者専用賃貸住宅等改修事業)。国1/3(地方公共団体を通じた補助は国1/3+地方1/3)、限度額50万円/戸
    対象工事 バリアフリー改修、耐震改修、用途変更、間取り変更、子育て世帯対応、防火・消火対策、省エネ改修、安否確認設備、防音・遮音、居住に最低限必要な改修
    家賃低廉化補助 補助率は国1/2+地方1/2。国費限度額は原則2.5万円/戸・月、国費総額300万円/戸。支援期間は管理開始から原則10年以内(国土交通省「家賃・家賃債務保証料等低廉化補助の概要」/2026年8月24日確認)

    登録基準に「耐震性を有すること」が入っています。昭和56年5月31日以前の家をこの制度に載せるなら、先に耐震改修が必要になる可能性が高い、ということです。

    貸すか売るか持ち続けるかの損益分岐は、相続した実家、売る・貸す・持ち続ける?で数字を並べています。

    貸すと決める前に。3,000万円の控除が消えます

    空き家の3,000万円特別控除の要件に、「相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと」があります(国税庁 タックスアンサー No.3306/令和7年4月1日現在法令等)。一度でも貸したら、あとで売っても、この控除は使えません。

    控除額は最高3,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は2,000万円)。制度の適用期限は令和9年12月31日までの譲渡です。「まず直して貸してみて、だめなら売る」という順番は、この控除を捨てるという意味を持ちます。いくら変わるかは空き家の3,000万円特別控除で確認してください。

    道2:耐震改修——ここは所有者でも使えます

    国の位置づけは住宅・建築物耐震改修事業(住宅・建築物安全ストック形成事業)です。

    耐震診断(民間実施) 国と地方で2/3
    耐震改修(住宅) 国と地方で2/3
    住宅の耐震改修の限度額 その他の区域115万円/多雪区域140万円/密集市街地等(防火改修を含む)175万円
    (国土交通省「住宅・建築物の耐震改修の支援策(令和8年度)」/2026年8月24日確認)

    自治体の上乗せを含めた実例です。

    自治体 診断 改修
    静岡市 「わが家の専門家診断事業」で無料 補強計画+補強工事に115万円の限度内で経費の8割
    岸和田市 別立て 改修設計 7/10・10万円/改修工事 7/10・85万円(所得要件該当で105万円)
    姫路市 計画策定費補助として別立て 一般型 4/5・115万円/屋根軽量化 全額・60万円/耐震シェルター 全額・115万円(65歳以上)

    診断と改修は別の補助です。診断だけ受けて改修しない、という使い方もできます。対象はどの市も昭和56年5月31日以前に建てられた(または着工した)木造住宅です。

    当サイトが調べた範囲では、耐震関係の制度がある自治体は74自治体です。制度区分ごとの読み方は全国の補助金一覧にまとめてあります。

    自分の市区町村の制度を調べる直す・貸す・売るを比べる空き家バンクの実態を見る

    道3:省エネ改修——全国どこでも、所有者のまま使えます

    ここまで見てきた自治体の補助金は、移住者や購入者に向けたものが中心でした。国が全国一律でやっている省エネ改修の補助は、それとは別の枠です。所有者かどうか、移住者かどうかを問いません。

    令和8年度は「住宅省エネ2026キャンペーン」という名前で、国土交通省・経済産業省・環境省の3省が連携して4つの事業が走っています。

    事業名 所管 補助上限
    みらいエコ住宅2026事業(リフォーム) 国土交通省・環境省 義務基準相当800,000円/次世代省エネ基準相当400,000円。平成3年以前に新築された住宅は1,000,000円/500,000円
    先進的窓リノベ2026事業 環境省 最大100万円/戸
    給湯省エネ2026事業 経済産業省 高効率給湯器 最大17万円/台、エコジョーズ・エコフィール 最大10万円/台
    賃貸集合給湯省エネ2026事業 経済産業省 最大100万円/戸

    出典:国土交通省 3省連携事業概要/みらいエコ住宅2026事業 詳細資料/2026年8月24日確認

    相続した実家は、たいてい平成3年より前に建っています。その場合、みらいエコ住宅2026事業のリフォーム枠は上限が100万円に上がります。

    申請するのは、あなたではなく工事業者です

    みらいエコ住宅2026事業の資料は、申請者を「工事施工業者」と定めていて、発注者は共同事業者の位置づけです。この事業に登録している業者に頼まないと、そもそも使えません。見積りを取る段階で「この補助金の登録事業者ですか」と聞いてください。

    対象になる既存住宅は「平成28年12月31日以前に新築された住宅」を原則対象とし、平成29年以降の住宅でも「平成11年基準を満たさない住宅であることが証明できる場合は対象」とされています。

    この枠は「空き家だから」出るお金ではなく、「省エネ改修をしたから」出るお金です。だから空き家バンクへの登録も、移住も、居住誓約も要りません。そのかわり、工事の中身が断熱や設備の側に寄っている必要があります。窓だけでも、先進的窓リノベ2026事業の枠が別にあります。

    外壁塗装だけの助成金は、一般的ではありません

    「外壁塗装 助成金 ○○市」で検索して何も出てこない、という経験をした人向けの章です。出てこないのが普通です。

    横浜市:横浜市では、外壁塗装(遮熱、断熱タイプ含む)及び屋根の補修・葺き替えに対する補助制度はございません。

    福井市:福井市には、ご自宅を外壁塗装する場合の補助金はありません。ただし、福井市空き家情報バンクの物件を購入し、リフォーム(外壁塗装等)する場合の補助金はあります。

    福井市の回答が、この構造をそのまま説明しています。外壁塗装は「単独の制度」ではなく「空き家改修補助や一般リフォーム助成の対象工事の一項目」として現れます。五島市の空き家改修補助も、対象事業に「台所、浴室、便所、洗面所、内装、屋根、外壁、設備等の改修」と並べています。

    そして、年度で消えます

    宇都宮市の令和8年度の住宅改修事業費補助金には、こう書かれています。「令和7年度まで実施していた『選択工事(外壁塗装等)』は、令和8年度から補助の対象外」。去年あった制度が今年もあるとは限りません。去年の記事を読んで動くと、この種の変更に引っかかります。

    国の制度は、市区町村を通してしか来ません

    「国の空き家補助金」を個人が直接申請することはできません。国の制度は市区町村への支援であって、住民への支援ではないからです。

    空き家再生等推進事業 空き家対策総合支援事業
    実施主体 地方公共団体/民間 市区町村(空家等対策計画に基づく)
    タイプ 除却事業タイプ/活用事業タイプ 基本事業/附帯事業
    国費率 除却:国2/5
    活用:地方公共団体が主体なら国1/2、民間なら国1/3
    除却:所有者実施で国2/5、自治体実施で国1/2
    活用:所有者実施で国2/5、自治体実施で国1/3
    特徴 対象区域が限られる(過疎地域、地域住宅計画・都市再生整備計画に定められた区域など)。1戸・1棟から事業可能 活用は10年以上活用が条件。附帯事業に代執行の弁護士相談費用・財産管理制度の予納金が入る

    令和8年度の当初予算は、この2事業の合算で59億円(+社会資本整備総合交付金等の内数)と国交省の資料に書かれています。

    だから、あなたの市に制度が無ければ、国に直接申請する道はありません。逆に、市が空家等対策計画を作っていれば、制度が生まれる余地があります。「今は無い」と「これからも無い」は別です。

    直しても使えないことがあります

    接道——建築基準法43条

    条文は「建築物の敷地は、道路に二メートル以上接しなければならない」(43条1項)。国交省の資料は「原則として4m以上の幅員の道路に2m以上接して」と説明しています。

    ただし、ここには救済ルートがあります。

    条項 内容 令和5年度の実績
    43条2項1号(認定) 延べ面積500㎡以下で省令の用途に該当し、特定行政庁が認めるもの 1,232件
    43条2項2号(許可) 建築審査会の同意を得て特定行政庁が許可したもの 6,579件

    年間7,800件以上が実際に通っています。「再建築不可=永久に建てられない」は不正確です。詳しくは再建築不可の実家をどうするかに書きました。

    既存不適格と違反建築は、まったく別のものです

    既存不適格建築物 建てた時点では適法。その後の法改正で基準に合わなくなったもの。新たに施行・適用された規定は適用除外(建築基準法3条2項)
    違反建築物 「改正前の従前の規定に適合していなかったもの」=建てた時点ですでに違法

    どちらなのかを判断するために、建築確認済証・検査済証(または台帳記載事項証明書)が要ります。実家の片付けで捨ててはいけない書類に、紛失した場合の取り直し方を書いてあります。

    よくある誤解が3つあります

    誤解1:補助金はいつでも申請できる

    先着順で、年度の途中に終わります。

    • 防府市:「6件程度 ※予算額に達した時点で募集を締め切ります(先着順)」
    • 神戸市:「申請額が予算に達し次第受付を終了します。」
    • 秋田市:「予算に達した場合、申請受付を終了することがあります。」
    • 鈴鹿市:申請期限は当該年度の10月31日まで(年度末まで受け付けません)
    • 白山市 要綱第1条:「予算の範囲内で補助金を交付する」

    誤解2:工事してから申請すればいい

    交付決定前の着工は、原則すべて対象外です。しかも多くの自治体で「契約」そのものが交付決定より後でなければなりません。

    • 神戸市:「必ず事前に申請をし、交付決定後に契約や事業を始めてください。申請前に着手したものは認められません。」
    • 静岡市:「申請は必ず工事の契約締結前に行い、交付決定後に契約を締結し着工」
    • 桐生市:「工事着手前に必ず申請すること」「交付決定後、2か月以内に工事に着手してください」
    • 宇都宮市:「すでに着工又は終了している工事は、補助の対象外」
    • 木古内町・今治市・五島市:いずれも同旨

    誤解3:いつ買った家でも申請できる

    取得からの期限があります。白山市は「売買契約又は賃貸借契約を締結した日から起算して6月以内に申請」(要綱第3条)、静岡市は「売買契約から1年以内の申請」。五島市は「転入日から1年を経過していない転入者」。

    相続で取得してから何年も経っている実家は、この期限の外にいることになります。


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    直す前に、直さずに売った場合の金額を見ておく

    改修に200万円かけて、売却価格が200万円上がるとは限りません。直さずに売った場合の金額を先に置いておくと、直す判断が数字でできます。買取なら査定から数日で金額が出ます。

    ①買取は仲介より手取りが下がります。相場に近い額で売りたいなら仲介を先に検討してください。②査定額は売れる価格ではありません。③匿名のAI査定では実額は出ません。桁を確かめるだけのものです。④LINEからの相談は、このリンク経由の申し込みとして扱われません。フォームから進んでください。⑤日本国外からの申し込みは対象外です。⑥補助金の居住誓約を受けたあとに売ると、返還を求められることがあります。売る可能性が少しでもあるなら、補助金を申請する前に金額を確かめてください。

    ラクウルで買取価格を出してもらう(無料)

    金額が出たら、改修費と並べてください。「直して住む」「直して貸す」「直さずに売る」は、この2つの数字でしか比べられません。

    よくある質問

    相続した実家を、自分が住むために直したいのですが

    移住・定住施策としての改修補助は、多くの自治体で使えません。使える可能性があるのは耐震改修の補助です。昭和56年5月31日以前の木造住宅なら、まず耐震診断(自治体によっては無料)から確認してください。断熱改修・バリアフリー改修の一般リフォーム助成がある自治体もあります。

    親族に貸す場合はどうですか

    白山市の要綱は「入居者または入居予定者が空き家の所有者の3親等内の親族でないこと」、防府市は「3親等以内の入居を除く」としています。親族への賃貸は対象外になる制度があると考えて、要綱を確認してください。

    空き家バンクに登録すると、売れなくなりませんか

    登録しても売却はできますが、補助金の要件として「バンクを利用して契約が締結されたもの」と書かれている場合、バンク外での取引は対象外になります。登録の実態と、仲介との関係は空き家バンクは売れるのかにまとめました。

    10年の居住誓約を破ったらどうなりますか

    和歌山市は「10年を経過するまでに解約・売却・賃貸した場合」「転居した場合、やむを得ない理由がある場合を除き補助金を返還」と明記しています。今治市も5年以内の取壊し・賃貸・売却で返還としています。「やむを得ない理由」の判断は自治体が行います。

    結局、直すのと壊すのはどちらが得ですか

    その家に住む人がいるかどうかで決まります。住む人がいないなら、直しても維持費が増えるだけです。空き家の維持費は年間いくら?と解体費用を並べて、更地にした場合の税額まで計算してから決めてください。

    この記事で確認できなかったこと

    • 建築基準法の条文の逐語確認。e-Gov法令検索が取得できず、43条1項は島根県の公式解説、3条2項は内閣府提出資料からの引用です
    • 空き家再生等推進事業の交付要綱上の条番号。制度概要の資料までしか確認できませんでした
    • 空き家再生等推進事業「活用事業タイプ」の活用期間の要件(10年以上等)。※「10年以上活用」は空き家対策総合支援事業の基本事業で確認したものです
    • 空き家対策総合支援事業単体の令和8年度予算額(2事業の合算で59億円)
    • 宇都宮市の住宅改修事業費補助金の補助率・上限額(ページ本文に数値の記載がありませんでした)
    • 鈴鹿市・白山市の改修補助で、外壁・屋根工事が対象になるか(対象工事の明示がありませんでした)
    • 秋田市・桐生市・五島市・木古内町・鈴鹿市の居住年数誓約に違反した場合の返還規定(各ページに明記がありません)
    • 住宅・建築物安全ストック形成事業が社会資本整備総合交付金の基幹事業である旨の明記
    • 居住サポート住宅改修事業の令和8年度交付申請要領の原文(配布元PDFが取得できませんでした)

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    直さないと決めたなら、壊す費用の幅だけ見ておく

    改修補助が使えないと分かった時点で、選択肢は「そのまま売る」「壊して売る」「持ち続ける」に絞られます。壊す場合の金額の幅を知っておくと、この3つを同じ土俵で比べられます。

    ①この比較で「壊さない」という結論になることもあります。売れる見込みも使う予定もない土地なら、更地にしても税負担が増えるだけです。
    ②補助金を使う予定があるなら、見積りより先に自治体へ連絡してください。交付決定の前に契約・着工すると、ほぼすべての制度で対象外になります。
    ③複数の業者から連絡が来る仕組みです。電話を受ける時間が取れないなら、希望する連絡手段を備考欄に書いてください。
    ④いちばん安い1社をそのまま選ばないでください。マニフェスト(産業廃棄物管理票)の写しを出せるか、建設リサイクル法の届出を代行するか。安すぎる見積りは、ここを省いていることがあります。
    サービス内容の説明は同社サイトの記載であって、当サイトが確かめた事実ではありません。

    解体工事比較ナビで見積もりを取る(無料)

    壊すと決めたら、申込から更地までの日数で逆算してください。届出だけで2〜3週間かかります。

    まとめ

    1. 改修補助の多くは移住・定住施策。申請者は移住者や購入者で、所有者ではありません
    2. 白山市の要綱は「所有者の3親等内の親族が入居者だと対象外」。実家を家族で使う想定がありません
    3. 空き家バンクへの登録が条件(静岡市第4条、防府市第3条、白山市第1条)
    4. 5〜10年の居住誓約と返還規定。和歌山市10年、今治市5年
    5. 市内業者施工が条件の自治体が多数。木古内町は町内業者なら上限が2倍
    6. 所有者のまま使えるのは賃貸前提の改修と耐震改修。国の令和8年度資料が示す耐震改修の限度額は、その他の区域115万円・多雪区域140万円・密集市街地等175万円
    7. 省エネ改修は全国どこでも所有者のまま使えます。みらいエコ住宅2026事業は平成3年以前の住宅なら上限100万円。ただし申請するのは登録した工事業者
    8. 貸すと空き家3,000万円特別控除が消えます。「貸付けの用に供されていたことがないこと」が要件
    9. 外壁塗装だけの助成金は一般的ではありません。横浜市・福井市が公式に「ありません」と回答しています
    10. 先着順・交付決定前の着工は対象外・取得から6か月〜1年の申請期限。この3つで落ちます

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  • 遺産分割がまとまらない|10か月・3年・そして2か月。特例が消える期限の一覧

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    遺産分割の話し合いが止まっている家に、期限だけが順番に来ます。3か月、10か月、3年。そのどれもが「話がまとまったら考えよう」で通り過ぎてしまう種類の期限です。

    なかでも知られていないのが、申告期限から3年経ったところにある、たった2か月の窓です。ここで1枚の書類を出さないと、配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も、そのまま消えます。書類の名前は「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」。長いですが、これが正式名称です。

    この記事は、揉めている中身の話ではありません。揉めたまま、何をいつまでに出せば損をしないかだけを、様式と条文で整理します。

    結論だけ先に

    • 未分割のまま申告すると法定相続分でいったん課税されます(相続税法55条)。このとき配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例・特定計画山林の特例などが使えません。
    • だから申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付します。国税庁は「添付した上で…3年以内に分割したときは、税額軽減の対象になります」と書いています。
    • 3年でも間に合わないときは、3年を経過する日の翌日から2か月以内に「やむを得ない事由がある旨の承認申請書」を出します。この2か月が、いちばん落とされる期限です。
    • 登記のほうは相続人申告登記で先に義務を切れます。ただし売却や抵当権設定には別途、相続登記が必要です。

    根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

    期限は1つではありません。7つあります

    いつまで 何を 起算点 根拠
    3か月 相続放棄・限定承認 自己のために相続の開始があったことを知ったとき 民法915条1項
    10か月 相続税の申告と納税
    +分割見込書の添付
    被相続人が死亡したことを知った日の翌日 相続税法27条
    3年 相続登記の申請 相続の開始と所有権取得を知った日 不動産登記法76条の2
    3年を経過する日の属する年の12月31日 空き家の3,000万円特別控除を使うなら譲渡 相続の開始があった日 措置法35条3項
    申告期限から3年 遺産分割(特例を使うなら) 相続税の申告期限 相続税法19条の2ほか
    +2か月 やむを得ない事由がある旨の承認申請 申告期限後3年を経過する日の翌日 相続税法施行令4条の2第2項ほか
    4か月 更正の請求 分割のあったことを知った日の翌日 相続税法32条

    「10か月」と「3年」は多くの人が知っています。落ちるのは、いつも3年の直後にある2か月です。ここは通知も催促も来ません。

    未分割で申告すると、いったん「高いほう」を払います

    相続税法55条により、申告期限までに分割が終わっていない財産は法定相続分で分けたものとして課税価格を計算します。実際にはまだ誰のものでもないのに、税金だけ先に確定します。

    このとき使えなくなる特例は、「申告期限後3年以内の分割見込書」の様式そのものに列挙されています。様式に書いてある=国税庁が示している一覧です。

    使えなくなる特例 根拠条文(様式の表記どおり)
    配偶者に対する相続税額の軽減 相続税法第19条の2第1項
    小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 租税特別措置法第69条の4第1項
    特定計画山林についての相続税の課税価格の計算の特例 租税特別措置法第69条の5第1項
    特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例 改正前の租税特別措置法第69条の5第1項

    実家じまいで効くのは、小規模宅地等の特例です。居住用宅地なら330㎡まで評価額が8割減る制度が、未分割のあいだは丸ごと使えません。

    農地の納税猶予については確認できませんでした

    「未分割だと農地等の納税猶予も使えない」と説明されることがありますが、国税庁のタックスアンサーNo.4147には遺産分割・未分割に関する記述が見当たりませんでした。この記事では断定しません。農地がある方は、農地・山林を相続したときを読んだうえで、税務署か税理士に確認してください。

    だから、申告書に「分割見込書」を必ず添付します

    正式名称は「申告期限後3年以内の分割見込書」。手続名は「B1-5 相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出手続」です。A4・1枚で、書く欄は3つしかありません。

    欄 書くこと
    1 分割されていない理由
    2 分割の見込みの詳細
    3 適用を受けようとする特例等(上の4つから選ぶ)

    国税庁のNo.4158(配偶者の税額の軽減)に、こう書かれています。

    申告書または更正の請求書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した上で、申告期限までに分割されなかった財産について申告期限から3年以内に分割したときは、税額軽減の対象になります。

    「出し忘れたら終わり」と断定した国税庁の文言は、見つけられませんでした

    正直に書きます。「分割見込書を添付しないと特例が使えない」と正面から書いたページは、国税庁のサイトで確認できませんでした。読めたのは上の引用のような条件文までです。ただし文の構造は「添付した上で…対象になります」なので、添付が適用の条件として書かれていることは分かります。

    実務上は、1枚のことなので必ず付けるとしか言いようがありません。付けて損はしません。

    3年で間に合わないときが本番。窓は「2か月」です

    正式名称は「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」。手続名は「B1-6」です。

    提出期限 申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日まで
    提出先 相続税の申告書を提出した税務署
    根拠(様式に印字されている条項) 相続税法施行令第4条の2第2項/租税特別措置法施行令第40条の2第23項又は第25項/同第40条の2の2第8項又は第11項ほか
    書く欄 被相続人の住所・氏名、相続開始の日、申告書を提出した日、やむを得ない理由(自由記述・「具体的に記載してください」)、相続人等の住所氏名、代表者の指定

    「やむを得ない事由」として、様式が想定しているもの

    様式の注記にある添付書類の区分が、そのまま想定されている事由の分類になっています。

    添付する書類 典型的な状況
    ① 訴えの提起を証する書類 遺産をめぐって訴訟になっている
    ② 和解、調停または審判の申立てを証する書類 家庭裁判所に調停を申し立てている
    ③ 遺産分割の禁止・期間の伸長を証する書類 遺言や審判で分割が禁止されている
    ④ ①〜③以外で分割されなかった事情の明細書 それ以外

    実家じまいで現実的なのは②です。調停を申し立てているなら、その申立ての受理を証する書類を添えて出す。逆に言えば、「話し合いが進まないまま何もしていない」状態だと、④の明細書で事情を説明するしかありません。ここが通るかどうかは税務署の判断です。

    承認されたら、いつまでに分割すればよいのか

    国税庁 No.4158にこう書かれています。

    相続税の申告期限から3年を経過する日までに分割できないやむを得ない事情があり、税務署長の承認を受けた場合で、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割されたときも、税額軽減の対象になります。

    「判決の確定等の日の翌日から4か月以内」という言い方もされますが、国税庁の読めた資料での表現は「その事情がなくなった日の翌日から4か月以内」まででした。この記事では原典の表現に合わせます。

    また、「2か月以内に承認・却下の通知がないときは承認されたものとみなす」という規定があるかどうかは、確認できませんでした。様式の裏面に記載がなく、手続案内のページが読めませんでした。承認された前提で動かないでください。

    2か月は、2回出てきます 1 申告期限 相続を知った日の翌日から10か月 2 3年を経過する日 19条の2第2項・69条の4第4項 3 その翌日から2か月 ★承認申請の窓。施行令4条の2第2項 4 提出から2か月 ★返事がなければ承認とみなす。同4項 5 分割ができた日 その翌日から4か月以内に分割

    ★条文を、逐語で置きます

    この記事はこれまで、条文の番号だけを国税庁の資料から拾って書いてきました。条文の本文をe-Gov法令検索で全文確認したので、ここに置きます。「3年」と「2か月」と「4か月」が、どの条文のどこに書かれているかが分かります。

    相続税法第十九条の二第二項(配偶者に対する相続税額の軽減)
    前項の相続又は遺贈に係る第二十七条の規定による申告書の提出期限(以下この項において「申告期限」という。)までに、当該相続又は遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていない場合における前項の規定の適用については、その分割されていない財産は、同項第二号ロの課税価格の計算の基礎とされる財産に含まれないものとする。ただし、その分割されていない財産が申告期限から三年以内(当該期間が経過するまでの間に当該財産が分割されなかつたことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該財産の分割ができることとなつた日として政令で定める日の翌日から四月以内)に分割された場合には、その分割された財産については、この限りでない。

    出典:e-Gov法令検索 相続税法第19条の2第2項(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    小規模宅地等の特例のほうも、同じ形です。

    租税特別措置法第六十九条の四第四項
    第一項の規定は、……申告書の提出期限(以下この項において「申告期限」という。)までに共同相続人又は包括受遺者によつて分割されていない特例対象宅地等については、適用しない。ただし、その分割されていない特例対象宅地等が申告期限から三年以内(当該期間が経過するまでの間に当該特例対象宅地等が分割されなかつたことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該特例対象宅地等の分割ができることとなつた日として政令で定める日の翌日から四月以内)に分割された場合……には、その分割された当該特例対象宅地等については、この限りでない。

    出典:e-Gov法令検索 租税特別措置法第69条の4第4項(全文を開いて確認/2026年9月3日)。括弧書きの一部を省略しています

    2つの条文が、ほとんど同じ文で書かれています。「申告期限から三年以内」「やむを得ない事情」「税務署長の承認」「分割ができることとなつた日……の翌日から四月以内」。配偶者の税額軽減も、小規模宅地等の特例も、同じ仕組みで動いています。だから片方が使えるなら、もう片方も同じ手続きで使えることが多いのです。

    2つの特例は、同じ文です 配偶者の税額軽減 相続税法19条の2 第2項ただし書 申告期限から3年 4か月以内に分割 小規模宅地等の特例 措置法69条の4 第4項ただし書 申告期限から3年 4か月以内に分割 片方の手続きで、もう片方も動くことが多い

    ★「2か月」と「みなし承認」は、施行令4条の2にあります

    「窓は2か月」と書いた根拠は、施行令です。そして、この記事が「確認できなかった」と書いていた「返事が来ないときどうなるか」も、同じ条にありました。

    相続税法施行令第四条の二(配偶者に対する相続税額の軽減の場合の財産分割の特例)
    2 法第十九条の二第二項に規定する……やむを得ない事情があることにより同項の税務署長の承認を受けようとする者は、当該相続又は遺贈に係る申告期限後三年を経過する日の翌日から二月を経過する日までに、その事情の詳細その他財務省令で定める事項を記載した申請書を当該税務署長に提出しなければならない。
    3 税務署長は、前項の申請書の提出があつた場合において、承認又は却下の処分をするときは、その申請をした者に対し、書面によりその旨を通知する。
    4 第二項の申請書の提出があつた場合において、当該申請書の提出があつた日の翌日から二月を経過する日までにその申請につき承認又は却下の処分がなかつたときは、その日においてその承認があつたものとみなす。

    出典:e-Gov法令検索 相続税法施行令第4条の2第2項から第4項(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    「2か月」が2回出てきます。混同しないでください

    ①出す側の2か月(2項)。「申告期限後三年を経過する日の翌日から二月を経過する日まで」。これが申請の窓です。3年を過ぎてから2か月。

    ②返ってくる側の2か月(4項)。「申請書の提出があつた日の翌日から二月を経過する日までに……処分がなかつたときは、その日においてその承認があつたものとみなす」。返事が来なければ、承認されたものとして扱われます。

    その根拠が、施行令4条の2第4項です。ただし、返事が来ないまま進めるのは不安が残ります。申請したことと、提出日は必ず控えておいてください。

    ★「やむを得ない事情」は4つに分かれています

    同令第四条の二第一項
    法第十九条の二第二項に規定する政令で定めるやむを得ない事情がある場合は、次の各号に掲げる場合とし、同項に規定する政令で定める日は、これらの場合の区分に応じ当該各号に定める日とする。
    一 ……三年を経過する日において、当該相続又は遺贈に関する訴えの提起がされている場合…… 判決の確定又は訴えの取下げの日その他当該訴訟の完結の日
    二 ……三年を経過する日において、当該相続又は遺贈に関する和解、調停又は審判の申立てがされている場合…… 和解若しくは調停の成立、審判の確定又はこれらの申立ての取下げの日その他これらの申立てに係る事件の終了の日
    三 ……三年を経過する日において、……民法第九百八条第一項若しくは第四項の規定により遺産の分割が禁止され、又は同法第九百十五条第一項ただし書の規定により相続の承認若しくは放棄の期間が伸長されている場合…… 当該分割の禁止がされている期間又は当該伸長がされている期間が経過した日
    四 前三号に掲げる場合のほか、……分割されなかつたこと及び当該財産の分割が遅延したことにつき税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合 その事情の消滅の日

    出典:e-Gov法令検索 相続税法施行令第4条の2第1項(全文を開いて確認/2026年9月3日)。括弧書きの一部を省略しています

    1号から3号は、事実で決まります。訴訟が起きている、調停・審判が動いている、遺産分割が禁止されている、あるいは相続の承認・放棄の期間が伸ばされている。いずれも「三年を経過する日において」その状態にあることが条件です。3年が来る前に手続きが始まっていなければなりません。

    4号だけが、税務署長の判断です。「税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合」。1号から3号に当てはまらないときの受け皿ですが、認められる保証はありません。

    「やむを得ない事情」は4つです 1号 訴えの提起 3年を経過する日にされている 訴訟の完結の日 2号 和解・調停・審判 同じく申立てがされている 事件の終了の日 3号 分割の禁止など 民法908条・915条1項ただし書 期間が経過した日 4号 税務署長が認める 前三号に当たらないとき 事情の消滅の日 右は各号が定める「政令で定める日」です

    そして各号が「その日」を決めています。19条の2第2項の「分割ができることとなつた日として政令で定める日」とは、この各号の右側です。そこから4か月以内に分割する、という順番になります。

    3年が来る前に、始まっていますか 3年の日に訴訟や調停が動いていますか はい 1号から3号に当たる 施行令4条の2第1項 いいえ 4号の判断になる 認められる保証なし

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    2か月の窓に気づける人が、身近にいるかどうか

    この2か月には、税務署から通知も催促も来ません。10か月の申告を自分でやった人ほど、3年後のこの期限を知らないまま過ぎます。共有名義、老人ホーム、調停中——条件が重なっているなら、期限の管理だけでも人を入れる価値があります。

    特例が問題なく使えると分かっているなら、相談する必要はありません。迷う要素があるとき(共有名義、被相続人が老人ホームに入っていた、店舗を兼ねていた、要件の期限が近い)だけで十分です。
    相談そのものは無料ですが、税理士に依頼すれば報酬がかかります。依頼するかどうかは、減る税額と報酬を比べてから決めてください。特例で税額がゼロになるなら、依頼する意味は薄くなります。
    問い合わせは「相続の相談」として送ってください。過去1年以内に同サービスを使ったことがある場合と、1世帯で2回目の相談は、運営側で受け付けない扱いになると明記されています。
    当サイトは税理士ではありません。ここに書いた税の話は制度の説明であって、あなたのケースへの回答ではありません。

    自分のケースで使えるか税理士に聞く(無料)

    相談の前に、この記事の表を印刷して、自分の相続開始日から各期限の日付を書き込んでおいてください。話が早くなります。

    分割がまとまったら、4か月以内に更正の請求

    特例を使って税額が下がる場合、自動では戻ってきません。更正の請求という手続きが要ります。

    期限 分割が成立した日(分割のあったことを知った日)の翌日から4か月以内
    手続名 B1-27 相続税及び贈与税の更正の請求手続
    根拠 相続税法32条(タックスアンサーの根拠法令等欄の表記は「相法32」まで)

    何年も揉めて、ようやくまとまった直後の4か月です。疲れ切って手続きが止まりやすいところなので、分割協議書に判を押した日をカレンダーに入れてください。

    ★更正の請求は、相続税法32条1項1号です

    更正の請求の根拠は、相続税法32条1項1号です。条文を置きます。

    相続税法第三十二条(更正の請求の特則)
    1 相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する事由により……相続税額……が過大となつたときは、当該各号に規定する事由が生じたことを知つた日の翌日から四月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、……更正の請求……をすることができる。
    一 第五十五条の規定により分割されていない財産について民法……の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつたこと。

    出典:e-Gov法令検索 相続税法第32条第1項第1号(全文を開いて確認/2026年9月3日)。括弧書きの一部を省略しています

    起算点は「その事由が生じたことを知つた日の翌日」です。「判決の確定等の日」ではなく、条文はもっと広く「事由が生じたことを知つた日」としています。分割が成立した日ではなく、それを知った日から4か月。

    そして1号は「第五十五条の規定により分割されていない財産について……計算されていた場合」から始まります。未分割で法定相続分どおりに申告していた人が、あとで分割したとき——この記事が扱っている場面が、そのまま1号に書かれています。

    家庭裁判所の統計では、3年を超えるのは3.7%です

    「3年もあれば足りるだろう」と思うか、「3年でも足りない」と思うか。最高裁の資料に、遺産分割事件の審理期間の分布があります(令和4年に終局した事件)。

    審理期間 件数 割合
    6月以内 4,256件 32.8%
    6月超1年以内 4,183件 32.2%
    1年超2年以内 3,088件 23.8%
    2年超3年以内 972件 7.5%
    3年を超える 482件 3.7%
    既済件数 12,981件 100%
    平均審理期間 12.9月(平成30年は11.5月)

    読み方は2つあります。約9割は2年以内に終わっているので、調停に入ったからといって3年の枠を必ず超えるわけではありません。いっぽうで平均審理期間は11.5月から12.9月へ長期化しています。

    この統計の限界も書いておきます

    これは家庭裁判所に持ち込まれた事件の統計です。「協議がまとまらないまま、誰も何もしていない相続」は、この数字のどこにも入っていません。実家じまいで止まっている家の多くは、そもそも調停すら始まっていません。その場合は、承認申請の④「その他の事情の明細書」で説明することになります。

    揉めている中身をどう動かすかは、兄弟で実家の相続が揉めたときに書きました。10年という別の期限もあります。

    登記のほうは、相続人申告登記で先に義務を切れます

    税の話とは別に、2024年4月1日から相続登記が義務になりました(不動産登記法76条の2)。3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象です。

    分割がまとまらないときの逃げ道が相続人申告登記(同法76条の3)です。

    誰が 特定の相続人が単独で申出できます
    どこへ 不動産を管轄する法務局。郵送・オンラインも可
    何を 申出書/相続人であることが分かる戸籍謄本等/住所を証する情報/(代理なら)委任状
    効果 申出人の氏名・住所等が職権で登記に付記されます
    限界 権利関係を公示するものではないため、売却や抵当権設定には別途、相続登記が必要

    被相続人の出生から死亡までの戸籍を全部そろえる必要がないので、3年の期限だけを先に切る手段としては現実的です。ただし遺産分割が成立したら、その日から3年以内に、分割に基づく登記を別途申請する義務が生じます(同法76条の3第4項)。

    手順は相続登記の義務化にまとめてあります。相続税の「申告期限後3年」と、登記の「取得を知った日から3年」は、起算点も中身も別物です。混同しないでください。

    いちばん怖いのは、空き家の3,000万円控除が先に切れることです

    空き家の3,000万円特別控除の期限は、分割の進み具合とは無関係に進みます。

    相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。ここを過ぎたら、あとから分割がまとまっても戻りません。

    そして未分割の状態でこの控除が使えるのかどうかは、国税庁の公開情報では確認できませんでした。タックスアンサーNo.3306にも、東京国税局のチェックシートにも、確定申告書等作成コーナーの説明にも、遺産分割・未分割・共有に関する記述が一切ありません。

    ここは自分で確かめてください

    この記事では「使える」とも「使えない」とも書けません。相続開始から2年が経とうとしていて、まだ分割がまとまっていないなら、税務署か税理士にこの1点だけ聞いてください。「未分割のまま売った場合、措置法35条3項は使えますか」。答えによって、話し合いを急ぐか、先に売ってしまうかが変わります。

    売る方向に傾いたときのために、金額の見当だけは先に付けておいてください。いくらで売れるかが分からないまま、兄弟で話し合っても結論は出ません。

    揉めている中身を動かす共有のまま売れるかを確認する相場を調べる


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    話し合いが止まっているなら、まず金額を1つ置く

    分割がまとまらない理由の多くは、「いくらのものを分けているのか」を誰も知らないことです。査定は数日で数字が出ます。売らなくても、数字が1つあるだけで話は動きます。

    ①買取は仲介より手取りが下がります。相場に近い額で売りたいなら仲介を先に検討してください。②査定額は売れる価格ではありません。③匿名のAI査定では実額は出ません。桁を確かめるだけのものです。④LINEからの相談は、このリンク経由の申し込みとして扱われません。フォームから進んでください。⑤日本国外からの申し込みは対象外です。⑥未分割の不動産を実際に売るには、共有者全員の同意が必要です。査定は1人で頼めますが、契約は1人ではできません。

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    数字が出たら、この記事の期限表と並べてください。「いつまでに、いくらのものを、どう分けるか」が1枚になります。

    よくある質問

    分割見込書を出さずに申告してしまいました

    更正の請求書に添付する方法が、国税庁のNo.4158に書かれています(「申告書または更正の請求書に…添付した上で」)。気づいた時点で税務署に相談してください。ただし更正の請求そのものに期限があるので、放置しないでください。

    承認申請書の「やむを得ない理由」に、何を書けばいいですか

    様式には「具体的に記載してください」としかありません。添付書類の区分(訴えの提起/調停等の申立て/分割の禁止/その他の明細書)に対応する事実を、時系列で書くことになります。調停を申し立てているなら、その受理の書類を添えるのがいちばん確実です。

    相続放棄の3か月を過ぎていますが、まだ放棄できますか

    家庭裁判所は、申立てにより3か月の熟慮期間を伸長できます。ただしその申立ても原則として3か月以内に必要です。過ぎている場合の扱いは事案によります。相続放棄をするとどうなるかに、放棄後も残る管理義務まで書いてあります。

    とりあえず共有名義にしておけば、期限は守れますか

    登記の義務は果たせます。ただし共有は、あとで必ずもう一度揉めます。売るにも壊すにも全員の同意が要り、その間に共有者の誰かが亡くなれば、相続人がさらに増えます。共有になっている実家を先に読んでから決めてください。

    未分割のあいだ、固定資産税は誰が払うのですか

    相続人が連帯して負担することになり、市区町村は代表者を指定して納税通知書を送ります。払っている人が損をしたまま何年も続くのが、揉める原因のひとつです。建物を放置したままだと管理不全空家等の勧告で税額がさらに上がることもあります。

    この記事で確認できなかったこと

    • ★条文本文は、e-Gov法令検索で全文を確認して本文に引用しました(2026年9月3日)。相続税法19条の2第2項・32条1項1号、相続税法施行令4条の2第1項から第4項、租税特別措置法69条の4第4項です。
    • ★「2か月以内に承認・却下の通知がないときは承認とみなす」規定は、ありました。相続税法施行令4条の2第4項です。本文に引用しています。
    • ★「やむを得ない事情」の各号と、それぞれの「政令で定める日」も逐語で確認しました。施行令4条の2第1項1号から4号です。
    • 租税特別措置法施行令40条の2(小規模宅地等の特例の側の「やむを得ない事情」)は開いていません。措置法69条の4第4項が相続税法19条の2第2項とほぼ同文であることは確認しましたが、その政令が相続税法施行令4条の2と同じ内容かどうかは確認していません。
    • 空き家の3,000万円特別控除が未分割でも使えるか。措置法35条3項・4項・5項・12項・13項の全文を確認しましたが、分割/未分割/共有についての記述はありませんでした。「書かれていない」ことまでが確認できた範囲です。
    • 農地等の納税猶予が未分割では使えない旨。措置法70条の6は開いていません。
    • 「分割見込書を出し忘れると特例が使えない」と断定した国税庁の記述。条文の側では、相続税法19条の2第3項が「……財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する」と定め、同条4項が「添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは……適用することができる」としています。「出し忘れたら終わり」ではなく、救済の規定が条文にあります。

    まとめ

    1. 未分割だと法定相続分でいったん課税(相続税法55条)。配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例が使えません
    2. 申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付する。書く欄は3つだけです
    3. 3年で間に合わないときは3年経過日の翌日から2か月以内に承認申請書。通知も催促も来ません
    4. 承認されたら事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割
    5. 分割がまとまったら翌日から4か月以内に更正の請求
    6. 家裁の統計では、遺産分割事件で3年を超えるのは3.7%。ただし調停に入っていない相続は数に入っていません
    7. 登記は相続人申告登記で3年の義務を切れます。ただし売却には別途、相続登記が必要
    8. 空き家の3,000万円控除の3年は、分割の進み具合を待ってくれません。未分割で使えるかは国税庁の公開情報では確認できませんでした

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  • 実家の片付けで捨ててはいけない書類9つ|電気の「使用中止日」が分かる紙まで要ります

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    実家の片付けで、いちばん最初に捨てられるのが紙です。押し入れの奥から出てきた茶色い封筒、仏壇の引き出しに入っていた古い書類、台所の棚に積まれた明細。「もう要らないだろう」で処分される紙のなかに、数百万円ぶんの価値があるものが混ざっています。

    この記事は、片付けを始める前に読むためのものです。捨ててはいけない紙を9種類、なぜ必要なのかという根拠つきで並べます。いくつかは、たぶん誰も教えてくれません。電気の「使用中止日が分かる書類」や、老人ホームの「外出記録のコピー」まで要るということは、国土交通省の資料を読まないと出てきません。

    結論だけ先に

    • いちばん高いのは親が家を買ったときの売買契約書。無いと取得費を売値の5%で計算することになり、国税庁の例示でも3,000万円で売って取得費150万円という扱いになります。
    • ほとんど知られていないのが電気・水道・ガスの「使用中止日が確認できる書類」。空き家の3,000万円特別控除で市区町村に出す確認書の添付資料に、国交省の資料が明記しています。
    • 親が老人ホームに入っていた場合は、「老人ホーム等が保有する外出記録のコピー」まで添付資料に挙がっています。施設を引き払う前に頼んでおく紙です。
    • 建築確認済証・検査済証は再発行できません。代わりに特定行政庁の台帳記載事項証明書(北九州市の例で1件300円)を取ることになります。

    根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

    ① 親が家を買ったときの売買契約書

    国税庁のタックスアンサー「No.3258 取得費が分からないとき」に、こう書かれています。

    売った土地建物が先祖伝来のものであるとか、買い入れた時期が古いなど、取得費が分からない場合には、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます。(中略)例えば、土地建物を3,000万円で売った場合に取得費が不明のときは、売った金額の5パーセント相当額である150万円を取得費とすることができます。

    この「3,000万円 → 150万円」は、国税庁自身が挙げている例です。2,850万円が丸ごと利益として扱われます。

    どのくらい違うのか、税率だけを使って並べます。長期譲渡所得の税率は所得税15%・住民税5%で、これに復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)が加わります(措法31、復興財確法13)。合わせて20.315%です。

    契約書がある場合 契約書が無い場合
    売却価格 3,000万円 3,000万円
    取得費 2,000万円(例) 150万円(5%)
    譲渡費用 200万円 200万円
    課税長期譲渡所得 800万円 2,650万円
    税額(20.315%) 1,625,200円 5,383,475円
    差額 約376万円

    これは仮の数字での試算です。取得費2,000万円という前提を置いていますし、建物ぶんは減価償却が要ります。空き家の3,000万円特別控除が使えるなら、どちらのケースでも税額はゼロになることがあります。

    それでも契約書を残す理由

    3,000万円控除が使えないケースが、思ったより多いからです。昭和56年6月1日以降に建った家、売却代金が1億円を超える場合、親が亡くなる前に貸していた場合、相続開始から3年を経過する年の12月31日を過ぎた場合——どれか1つでも当たれば、控除は使えません。そのとき残るのは取得費だけです。

    取得費が分からないときにどうするかは、相続した実家の取得費が分からないときで、契約書以外の証拠になりうる資料まで含めて書いてあります。この記事は「捨てないこと」、あちらは「無くしたあとどうするか」です。

    ② 契約書以外にも、取得費になる紙があります

    国税庁のNo.3252「取得費となるもの」が列挙しているものです。購入代金・建築代金・購入手数料のほか、設備費や改良費も含まれます。

    取得費になるもの 探すべき紙
    登録免許税(登記費用を含む)、不動産取得税、印紙税 司法書士の請求書・領収書、納税通知書
    借主を立ち退かせるために支払った立退料 合意書、振込控え
    土地の埋立て・土盛り・地ならしの造成費用 工事の請負契約書、領収書
    土地の取得に際して支払った測量費 測量会社の請求書
    所有権を確保するために要した訴訟費用 判決書、弁護士費用の領収書
    土地の利用が目的だった場合の、建物の購入代金と取壊しの費用 解体工事の契約書・領収書
    購入資金の借入金の利子(使用開始日までの分) ローンの返済明細
    契約解除の違約金 解除合意書

    リフォームの請負契約書と領収書も、「改良費」として取得費に入りうる紙です。冒頭の定義に「設備費や改良費なども含まれます」と書かれています。20年前の増築の書類が押し入れから出てきたら、それは捨てる紙ではありません。

    ただし建物は減価償却が必要です。No.3261の算式はこうです。

    建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数 = 減価償却費相当額

    非事業用の建物は、耐用年数の1.5倍の年数(1年未満切捨て)に対応する旧定額法の償却率を使います。差し引ける限度は取得価額の95%です。

    ③ 「市街地価格指数で推計できる」は、国税庁が認めているわけではありません

    契約書が無いときの代替として、市街地価格指数を使った推計が紹介されることがあります。ここは正直に書きます。

    国税庁が市街地価格指数による推計を認めた法令・通達・タックスアンサー・質疑応答事例は、見つけられませんでした。No.3258が示す代替手段は「収入金額の5%」だけです。

    実務書では平成12年11月16日の裁決(裁決事例集No.60・208頁)が引用されますが、この裁決の本文は今回確認できませんでした(国税不服審判所のサイトが文字化けして読めませんでした)。全日本不動産協会は「譲渡所得税の計算における取得費の推計について定められた規定は存在しません」と明記しています。

    つまり、推計は「やってみて認められるかどうか」の世界です。契約書が1枚あれば、そもそも争いになりません。それがこの記事の趣旨です。


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    自分のケースで特例が使えるかどうかだけ、先に確かめる

    この記事の紙は、どれも「特例が使えなかったとき」に効くものです。逆に言えば、特例が問題なく使えると分かっていれば、そこまで神経質にならなくて済みます。共有名義、老人ホーム、店舗兼用、期限が近い——このどれかに当たるなら、先に相談したほうが早いです。

    この控除が問題なく使えると分かっているなら、相談する必要はありません。迷う要素があるとき(共有名義、被相続人が老人ホームに入っていた、店舗を兼ねていた、要件の期限が近い)だけで十分です。
    相談そのものは無料ですが、税理士に依頼すれば報酬がかかります。依頼するかどうかは、減る税額と報酬を比べてから決めてください。特例で税額がゼロになるなら、依頼する意味は薄くなります。
    問い合わせは「相続の相談」として送ってください。過去1年以内に同サービスを使ったことがある場合と、1世帯で2回目の相談は、運営側で受け付けない扱いになると明記されています。
    当サイトは税理士ではありません。ここに書いた税の話は制度の説明であって、あなたのケースへの回答ではありません。

    自分のケースで使えるか税理士に聞く(無料)

    相談する前に、この記事の紙をできるだけ集めておいてください。何が有るか無いかで、答えが変わります。

    ④ 電気・水道・ガスの「使用中止日が確認できる書類」

    ここからが、たぶん誰も教えてくれない部分です。

    空き家の3,000万円特別控除を使うには、確定申告のときに市区町村長が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」を添付します(国税庁 No.3306)。そしてこの確認書を市区町村からもらうために、市区町村へ別の書類を出す必要があります。

    国土交通省の資料が挙げている、確認申請の添付資料です。

    ケース 市区町村に出す資料
    取り壊さずに売る 被相続人の住民票の除票/相続人の住民票の写し/登記事項証明書/売買契約書のコピー
    空き家であったことの確認資料。次のいずれか:
    ・電気、水道又はガスの使用中止日が確認できる書類
    ・宅地建物取引業者が「現況空き家」と表示した広告
    ・その他要件を認めることができる書類
    取り壊して売る 上記に加えて、家屋の閉鎖事項証明書/更地であることが分かる写真/(未登記家屋なら)解体工事の請負契約書のコピー及び工事費用の請求書や領収書等
    老人ホーム等に入所していた さらに、要介護・要支援認定等を受けていたことを証する書類/老人ホーム等の名称・所在地・施設区分が確認できる書類/電気・水道・ガスの契約情報、または老人ホーム等が保有する外出記録のコピー

    解約の連絡をする前に、明細を1枚残してください

    電気やガスを止めるとき、多くの人は電話やWebで解約して終わりにします。そのとき「使用中止日」が書かれた紙やメールが手元に残っているかどうかが、あとで効きます。最終請求の明細、解約完了のメール、検針票——形式は問われていません。捨てないでください。

    そして老人ホームの外出記録は、施設を引き払ったあとに頼むと難しくなります。荷物を引き上げる日に、その場で相談してください。

    なお、電気・ガスの閉栓証明は税務署に出す添付書類の一覧には入っていません。これは市区町村に「確認書をください」と頼むときの資料です。窓口が2つあることを、先に知っておいてください。


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    3年の期限は、書類を探している間にも進みます

    空き家の3,000万円特別控除は相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件です。書類を集めながらでいいので、いくらで売れるものなのかだけ先に置いてください。桁が分かるだけで、急ぐかどうかが決まります。

    ①買取は仲介より手取りが下がります。相場に近い額で売りたいなら仲介を先に検討してください。②査定額は売れる価格ではありません。③匿名のAI査定では実額は出ません。桁を確かめるだけのものです。④LINEからの相談は、このリンク経由の申し込みとして扱われません。フォームから進んでください。⑤日本国外からの申し込みは対象外です。⑥共有名義なら、契約には共有者全員の同意が必要です。査定は1人で頼めますが、売却は1人ではできません。

    ラクウルで買取価格を出してもらう(無料)

    金額が出たら、この記事の書類リストに戻ってください。控除が使えないケースほど、取得費の紙が効いてきます。

    ⑤ 相続税の申告書一式

    相続税を払ったなら、売ったときに取得費加算の特例(措法39)が使えます。国税庁 No.3267の要件は3つです。

    1. 相続や遺贈により財産を取得した者であること
    2. その財産を取得した人に相続税が課税されていること
    3. その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること

    提出書類として国税庁が挙げているのは「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」と「譲渡所得の内訳書」の2点だけです。相続税の申告書そのものの写しが必要だとは書かれていません。

    ただし、その計算明細書を作るには相続税額、譲渡した財産の相続税評価額、取得財産の価額が要ります。数字は申告書にしか書いてありません。だから申告書一式は捨てないでください。

    この特例の落とし穴は相続税の取得費加算にまとめてあります。3,000万円控除とは、どちらか一方しか選べません。

    ⑥ 建築確認済証・検査済証(無くても代わりがあります)

    北九州市の公式ページは、はっきりこう書いています。

    確認済証や検査済証そのものの再発行はできません。

    代わりに、特定行政庁が保有する建築確認台帳の記載事項について証明書が出ます。証明されるのは、建築主の住所・氏名、建築場所、確認済証番号と交付年月日、検査済証番号と交付年月日です。北九州市の手数料は1件300円。名称は「台帳記載事項証明書」「建築確認台帳記載事項証明」など自治体でばらばらです。

    なぜ要るのか。国土交通省が平成26年7月に出したガイドラインに、こう書かれています。

    既存不適格建築物であるのか、違反建築物であるのかの判断が難しく、調査に多大な時間と費用を要する場合があることから、結果として増改築や用途変更を実現できないケースも見受けられ

    同ガイドラインは、検査済証を取得していない建築物が「平成11年以前では半数以上を占めていた」とも書いています。古い実家なら、そもそも最初から無い可能性が高いということです。

    「住宅ローンの審査で検査済証が要る」という話については、国交省や特定行政庁の公式説明は見つけられませんでした。金融機関ごとの審査基準の話だと思われます。

    接道や再建築の可否そのものは再建築不可の実家をどうするかで扱っています。

    ⑦ 地積測量図と、境界に関する紙

    地積測量図は法務局で図面証明書として取れます。手数料は令和7年4月1日からの一覧で次のとおりです。

    区分 書面請求 オンライン・送付 オンライン・窓口交付
    登記事項証明書 600円 520円 490円
    地図等情報(地積測量図等) 500円 470円 440円

    境界が分からないときの最後の手段が筆界特定制度です。法務省の説明では、筆界とは「土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた線」で、筆界特定登記官が、外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて位置を特定します。

    手数料は土地の価格で決まります。東京法務局のQ&Aによる算定式は(申請人の土地の価格+相手方の土地の価格)÷2×0.05で、法務省の例では価格の合計額が4,000万円なら申請手数料は8,000円です。

    安いのは手数料だけです

    法務省は「手続の中で、測量が必要となることがあります。そのときには、測量費用を負担する必要が生じます」と書いています。東京法務局のQ&Aは、その測量費用を「概ね50万円から80万円くらいの間のものが多い」としています。手数料8,000円で済む話ではありません。

    だから、親が測量したときの境界確認書や図面が家にあるなら、それは50万円以上の価値がある紙です。境界が決まっていない実家に、売却との関係を書きました。

    なお「境界確認書が無いと売れない」ことについての、法務局・国交省の公式説明は見つけられませんでした。実務上、買主や仲介会社が求めるという話です。

    ⑧ 権利証(登記識別情報)——無くしても登記はできます

    ここは安心してよい話です。法務局の公式資料に、提供できない場合の代替が3つ挙げられています。

    方法 内容 費用
    事前通知制度(原則) 申請情報に理由を記載。登記官が本人確認のため通知を発する。個人は本人限定受取郵便、法人は書留 手数料はかかりません
    資格者代理人による本人確認情報 司法書士等に委任し、本人確認した旨の書類を提供 報酬が発生する場合があります
    公証人による認証 公証人に確認書類を作成してもらう —

    根拠は不動産登記法23条4項。「権利証が無いから売れない」は誤りです。ただし事前通知の返送期限については、この資料に記載がなく確認できませんでした。司法書士に確認してください。

    ⑨ 火災保険の証券

    ここも正直に書きます。被相続人名義の火災保険が相続でどうなるか、解約返戻金がどう扱われるか、名義変更をしないまま火災になったら支払われるのか——日本損害保険協会や金融庁の公式説明は、今回見つけられませんでした。

    日本損害保険協会の「損害保険Q&A」に「空き家になった場合の火災保険の手続き」という設問が存在することまでは確認できましたが、本文が読めませんでした。

    したがって、この記事で言えるのは「証券を捨てるな、保険会社に電話しろ」だけです。空き家になった時点で契約の扱いが変わることがある点は、空き家の火災保険にまとめてあります。

    捨てる前に、この順番で確保してください

    1. 茶封筒はすべて開ける。売買契約書、権利証、保険証券は茶封筒に入っていることが多いです
    2. 仏壇・仏間・押し入れの上段。権利証と保険証券の定位置です
    3. 台所や電話台まわり。検針票、納税通知書、公共料金の明細がここに溜まります
    4. ライフラインを止める前に、使用中止日が分かる紙かメールを1つ確保する
    5. 老人ホームを引き払う日に、外出記録のコピーをその場で頼む
    6. 相続税を申告したなら、申告書一式を1部手元に置く
    7. 写真で撮っておく。原本を無くしても、写しで話が進むことがあります
    8. 迷った紙は、段ボール1箱ぶんだけ「保留」に回す。1箱の保管コストより、1枚の損のほうが大きいです

    よくある質問

    もう捨ててしまいました。取り返しはつきますか

    種類によります。登記事項証明書、地積測量図、台帳記載事項証明書、相続税の申告書(税務署で開示請求)は取り直せます。取り直せないのは、親が家を買ったときの売買契約書です。仲介した不動産会社や、当時の売主、住宅ローンを借りた金融機関に控えが残っている可能性はあります。取得費が分からないときの手順に、探し方を書きました。

    遺品整理業者に頼むと、書類は取っておいてもらえますか

    業者によります。「重要書類は捨てずに分けておいてほしい」と、契約の前に言葉で伝えてください。作業当日に伝えても、もう分別が始まっています。費用の相場と、業者選びで確認すべきことは遺品整理の費用にあります。

    建物の取得費は、どうやって計算するのですか

    No.3261の算式(取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数)で減価償却費相当額を出し、取得価額から差し引きます。非事業用は耐用年数の1.5倍・旧定額法で、差し引ける限度は取得価額の95%です。構造別の償却率は国税庁のページに画像で載っていて、この記事では数値を転記していません。元のページで確認してください。

    兄弟で分けるとき、書類は誰が持つべきですか

    売る予定の人です。確定申告をするのは売った人なので、その人の手元に無いと意味がありません。共有のまま売る場合は全員が申告するので、コピーを人数分作ってください。共有になっている実家に、共有名義の売却の進め方を書いています。

    この記事で確認できなかったこと

    • 市街地価格指数による推計を国税庁が認める根拠。法令・通達・タックスアンサー・質疑応答事例のいずれにも見当たりませんでした
    • 平成12年11月16日裁決(裁決事例集No.60・208頁)の裁決要旨の本文。国税不服審判所のサイトが文字化けして読めませんでした。否認された公表裁決の有無も未確認です
    • 取得費加算で相続税の申告書の写しが必要か。No.3267の提出書類欄には明細書と内訳書の2点しか書かれていません
    • 住宅ローン審査で検査済証が必要だという公的根拠
    • 境界確認書が無いと売却で困ることについての、法務局・国交省の公式説明
    • 地積測量図がすべての土地には備え付けられていない旨の公式な明文
    • 火災保険の相続・名義変更・解約返戻金・名義未変更時の支払可否について、日本損害保険協会または金融庁の公式説明
    • 登記識別情報の事前通知の返送期限
    • No.3261の構造別の耐用年数・償却率の数値(国税庁のページで画像提供されているため、この記事には転記していません)

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    書類を分けてから、家財を出す

    順番はこれで固定です。先に業者を入れると、紙は家財と一緒に出ていきます。ひととおり書類を確保したら、残りの片付けを見積ってもらってください。見積りの前に自分でやっておくことは、リンク先にまとめてあります。

    ①これは業者を紹介するサービスで、実際に作業するのは加盟店です。②紹介された業者が、実家のある市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可を持っているかは、ご自身で確かめてください。当サイトは個々の加盟店の許可を確認していません。③料金と、どこまでが無料かは、申込先のページでご確認ください。当サイトは各加盟店の料金体系を確認していません。④不用品の回収だけを頼みたい場合には向きません。遺品整理として相談してください。⑤当サイトはこのリンク経由の申込で広告収入を受け取ります。それによってあなたの見積り額が上がることはありません。

    遺品整理110番で、見積りを依頼する

    見積りを取る前に、遺品整理の費用で「自分でやっておくこと」を確認してください。作業量が減れば、金額も下がります。

    まとめ

    1. 売買契約書が最優先。無いと取得費は売値の5%(国税庁の例示で3,000万円→150万円)
    2. 登記費用、不動産取得税、造成費、測量費、リフォームの請負契約書も取得費になりうる紙です
    3. 市街地価格指数での推計を国税庁が認めた根拠は確認できませんでした
    4. 電気・水道・ガスの「使用中止日が確認できる書類」は、3,000万円控除の確認書をもらうために要ります
    5. 老人ホームに入っていたなら、「外出記録のコピー」まで添付資料に挙がっています。引き払う日に頼んでください
    6. 相続税の申告書一式は、取得費加算の計算明細書を作るために必要です
    7. 建築確認済証・検査済証は再発行できません。台帳記載事項証明書(北九州市で1件300円)が代わりです
    8. 境界の図面が無いと、筆界特定で測量費50〜80万円が乗ることがあります
    9. 権利証を無くしても登記はできます。事前通知制度に手数料はかかりません

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  • 家の解体はいつ終わる?申込から更地までの日数と「年内に壊すか」の分かれ目

    【PR】本ページはプロモーションを含みます。

    「解体って、どのくらいかかりますか」と業者に聞くと、たいてい「木造なら1〜2週間ですね」と返ってきます。その答えは、工事日程の話であって、あなたが知りたい日数ではありません。

    実際に時間を食うのは、重機が動いていない期間です。届出、報告、ライフラインの停止、補助金の交付決定。工事そのものは、全体のいちばん短い部分です。

    この記事では、それぞれの手続きに法令や事業者の公式ページが「何日前まで」と書いている日数を集めて、逆算表にしました。そのうえで、多くの人が最後に迷う「年内に壊すか、年明けに回すか」を、税の仕組みから整理します。

    結論だけ先に

    • 木造住宅の標準工期を示した公的な資料は、見つけられませんでした。「30坪で○日」という数字はすべて民間事業者の目安です。この記事では、日数が公的に決まっている手続きだけを積み上げます。
    • 施主(発注者)自身の義務になる届出が2つあります。建設リサイクル法の事前届出(着工7日前まで・都道府県知事へ)と、石綿の事前調査結果報告です。業者の仕事だと思っていると抜けます。
    • 意外に長いのがライフライン。東京電力パワーグリッドは引込線撤去を「遅くとも1週間前まで」としつつ「準備に6か月以上を要する事例もあります」と書いています。都市ガスの撤去は立会いが必須です。
    • 補助金を使うなら、交付決定まで2週間〜2か月。そして交付決定前の契約・着工は、ほぼすべての自治体で対象外です。

    根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

    まず、公的に日数が決まっているものだけを並べます

    下の表は、法令・事業者の公式ページに「何日前まで」と書かれているものだけを集めたものです。工事日数は入っていません。公的な標準工期の資料が見つからなかったためです。

    着工の何日前 やること 誰が 根拠
    2か月前 補助金の交付申請(審査に時間がかかる自治体) 施主 つくばみらい市「1か月から2か月程度」
    1か月前 電話(NTT)への連絡 施主 仙台市の案内「概ね1か月前までに必ず」
    2〜4週間前 補助金の交付決定を待つ 自治体 岡崎市「約2週間程度」×2段階、東松山市「2週間程度」
    2週間前 都市ガスの撤去申込(立会い必須) 施主 東京ガスネットワーク
    14日前 特定粉じん排出等作業実施届出(石綿の除去等がある場合) 発注者 大気汚染防止法
    7日前 建設リサイクル法の事前届出(床面積80㎡以上) 発注者 建設リサイクル法10条1項
    1週間前 電気の引込線撤去の申込 施主 東京電力パワーグリッド
    着工前まで 石綿事前調査結果の報告 元請業者 大防法18条の15第6項/石綿則4条の2
    数日〜 道路使用許可(警察署) 業者 道路交通法77条1項
    — 解体工事 業者 公的な標準工期は確認できず
    滅失後1か月以内 建物滅失登記 所有者 不動産登記法57条

    補助金を使い、都市ガスが通っていて、石綿の除去がある家なら、相談を始めてから更地になるまで、2〜3か月を見ておくのが安全です。「来月には更地にしたい」は、条件が揃っていないと成り立ちません。

    施主がやる届出が2つあります。業者の仕事ではありません

    ① 建設リサイクル法の事前届出——義務者は「発注者」です

    条文はこう書いています。

    対象建設工事の発注者又は自主施工者は、工事に着手する日の七日前までに、主務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない。(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律 第10条第1項)

    発注者、つまりあなたの義務です。実務では業者が代行することがほとんどですが、代行してくれるかどうかは契約に含まれていなければ分かりません。見積書に「届出代行」の項目があるかを確認してください。

    対象になる規模は次のとおりです。

    工事 規模
    建築物の解体 床面積の合計 80㎡以上
    建築物の新築・増築 床面積の合計 500㎡以上
    建築物の修繕・模様替等 請負代金 1億円以上
    建築物以外の工作物 請負代金 500万円以上

    一般的な戸建てはほぼ80㎡を超えます。届出をせず、または虚偽の届出をした者は20万円以下の罰金(同法51条1号)。法人にも両罰規定(52条)があります。

    ② 石綿(アスベスト)の事前調査と報告

    2022年4月1日から、事前調査結果の報告が義務になりました。対象は次のいずれかです。

    • 建築物の解体工事:解体作業対象の床面積の合計が80㎡以上
    • 建築物の改修工事:請負代金の合計額が100万円以上(税込)
    • 特定の工作物の解体・改修工事:請負代金の合計額が100万円以上(税込)

    報告先は労働基準監督署と自治体の両方ですが、厚生労働省の「石綿事前調査結果報告システム」で1回の操作で両方に報告できます。報告のタイミングは「事前調査実施後、速やかに(遅くとも工事に着手する前まで)」です。

    さらに令和5年10月1日以降に着工する工事は、有資格者が事前調査を行う必要があります(石綿障害予防規則3条4項)。一般建築物石綿含有建材調査者、特定建築物石綿含有建材調査者、一戸建て等石綿含有建材調査者のいずれかです。

    日程を決めるのは「報告」ではなく「14日前の届出」です

    石綿の事前調査結果報告は「着工前まで」なので、日程には効きません。効くのは、実際に石綿含有建材の除去等(特定粉じん排出等作業)に該当した場合の届出です。こちらは作業に着手する14日前までで、届出義務者は発注者または自主施工者です。

    つまり「調査の結果、石綿が出た」と分かった時点から、最低でも2週間は動けません。古い家ほど、この2週間を最初から日程に入れておいてください。詳しくはアスベストがあると解体費はどう変わるかに書きました。

    いちばん読み違えるのは、ライフラインです

    ここは法令ではなく、事業者ごとの運用です。公式ページに書かれている数字だけを拾います。

    種類 公式ページに書かれていること
    電気 東京電力パワーグリッド:一般住宅の引込線撤去は「遅くとも撤去ご希望日の1週間前まで」。ただし「場合によっては撤去工事の準備に6ヶ月以上を要する事例もあります」
    都市ガス 東京ガスネットワーク:「ガス管やガスメーターの撤去は、お立会いをお願いしております」=立会い必須。工事希望日の2週間前を目安に連絡
    電話 仙台市の案内:NTT東日本へ「概ね1か月前までに必ず」連絡
    水道 給水装置の撤去は指定給水装置工事事業者を通じて申込。撤去範囲は「水道本管の分岐部から道路境界まで」(川口市上下水道局)。所要日数の記載は見つけられませんでした

    遠方の実家なら、都市ガスの「立会い必須」がいちばん厄介です。あなたか、代理の人が現地にいる日を、ガス会社の工事日程と合わせる必要があります。日帰りで済ませるつもりなら、この1日を先に確保してください。

    電気の「6か月以上」は例外的な記述ですが、公式ページにわざわざ書いてあるということは、実例があるということです。電柱から敷地内へ引き込んでいる線の形状によっては、他の工事とまとめる必要が出ます。まず電話して、自分の家がどちらなのかを確かめるのが早道です。

    年内に壊すか、年明けに回すか——1月1日で決まります

    固定資産税の賦課期日は1月1日(地方税法359条)。この日に建物があるかどうかで、翌年度の税額が決まります。

    12月31日までに壊す 1月2日以降に壊す
    翌年度の家屋分 課税されなくなる 1年ぶん課税される
    翌年度の土地分 住宅用地特例が外れる 特例が続く
    その年度の税額 どちらも変わりません(賦課期日で確定済み)

    富山市のFAQは、特例が外れた場合について「土地の固定資産税が特例適用時よりも約3倍程度に上がることが一般的です」と書いています。「6倍」ではありません。理由は、更地の課税標準に評価額の70%という上限があること、負担調整措置で年5%ずつしか上がらないことです。

    どちらが得かは、「消える家屋分の税額」と「増える土地分の税額」のどちらが大きいかだけで決まります。古くて評価額の落ちた家屋なら家屋分は小さく、土地の増加分が勝ちやすい。まだ評価額の残る家屋なら逆です。

    実額の計算は解体すると固定資産税は6倍になるのかに、負担調整まで含めて書いてあります。納税通知書の課税明細を手元に置いて読んでください。家屋と土地の課税標準額がそこに載っています。

    建て替えなら特例が続きます。ただし「更地のまま年越し」は対象外です

    東京都主税局は、1月1日時点で建替え中でも、次の4つをすべて満たせば住宅用地特例が継続すると案内しています。

    1. 前年度の賦課期日において、当該土地が住宅用地であったこと
    2. 当該年度の賦課期日において、新築工事に着手していると認められること(または建築確認申請書が受領されていること)
    3. 建替え前の住宅と同一敷地であること
    4. 建替え前の住宅の所有者と同一の者により行われること

    「固定資産税の住宅用地等申告書」+建築確認申請書等の写しの提出が必要です。提出期限は当該年度の前年度に係る賦課期日後の3月末日まで、と案内されています。

    要件2がすべてです

    「更地のまま年を越す」だけでは特例は続きません。1月1日時点で新築工事に着手している必要があります。解体して売るケースには使えない、ということです。建て替えるか、直して住むかで判断がついていない段階なら、この特例は当てにしないでください。


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    日程を決める前に、金額の幅を出しておく

    「年内に間に合うか」を考えるには、まずいくらかかるのか、いつなら着工できるのかを業者から聞く必要があります。見積りは無料で、聞くだけなら日程を縛りません。複数社に同時に投げると、繁忙期かどうかも答えの温度で分かります。

    ①この比較で「壊さない」という結論になることもあります。売れる見込みも使う予定もない土地なら、更地にしても税負担が増えるだけです。
    ②補助金を使う予定があるなら、見積りより先に自治体へ連絡してください。交付決定の前に契約・着工すると、ほぼすべての制度で対象外になります。この記事の後半に実例を挙げました。
    ③複数の業者から連絡が来る仕組みです。電話を受ける時間が取れないなら、希望する連絡手段を備考欄に書いてください。
    ④いちばん安い1社をそのまま選ばないでください。マニフェスト(産業廃棄物管理票)の写しを出せるか、建設リサイクル法の届出を代行するか。安すぎる見積りは、ここを省いていることがあります。
    サービス内容の説明は同社サイトの記載であって、当サイトが確かめた事実ではありません。

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    見積りが出たら、この記事の逆算表に日付を入れてください。着工日から逆に引くだけです。


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    壊す前に、建ったままいくらになるかを見ておく

    年内に壊すか年明けに回すかを考える前に、そもそも壊さずに売れるかどうかを確かめたほうが早いことがあります。建物付きで買い手がつくなら、届出も日程も要りません。査定は数日で数字が出ます。

    ①買取は仲介より手取りが下がります。相場に近い額で売りたいなら仲介を先に検討してください。②査定額は売れる価格ではありません。③匿名のAI査定では実額は出ません。桁を確かめるだけのものです。④LINEからの相談は、このリンク経由の申し込みとして扱われません。フォームから進んでください。⑤日本国外からの申し込みは対象外です。⑥建物を残したまま売るか、更地にしてから売るかで税金の特例の要件が変わります。壊す順番を決める前に確認してください。

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    金額が出たら、解体費と増える税額を並べてください。「壊さない」が答えになることもあります。

    補助金を使うなら、逆算はもっと手前から始まります

    審査期間を公式ページに明記している自治体を並べます。

    自治体 公式ページの記載
    愛知県岡崎市 判定申請→判定結果通知が約2週間程度、交付申請→交付決定通知が約2週間程度(=2段階で計約4週間)。加えて「除却工事に着手する5開庁日前までに申請してください」
    福井県福井市 「それぞれの審査では、結果を通知するまでに2週間以上かかる場合がありますので、余裕をもって申請してください」
    埼玉県東松山市 「申請から交付決定までは2週間程度かかります」
    茨城県つくばみらい市 「建築士へ判定を依頼する場合もあるため、1か月から2か月程度判定に時間がかかることがあります」

    そして、交付決定より先に契約すると終わりです

    要綱の条番号まで確認できた実例です。

    自治体 規定
    岡山県高梁市 要綱第4条第2項第1号「補助金交付決定前に着手した除却工事」を補助対象外
    広島県北広島町 要綱第7条第2項第1号「補助金の交付決定前に着手した工事」を補助対象外
    広島市 「補助金の交付の決定前に、除却工事の契約をしないでください(既に契約されたものは、補助の対象外となります)」

    多くの自治体では、着工だけでなく「契約」そのものが交付決定より後でなければなりません。見積りを取るところまでは自由ですが、契約書に判を押した時点で失格になります。急いでいる人ほど、ここで落ちます。

    いま制度がある自治体は、当サイトの調査で256自治体です。要件と担当課の電話番号まで載せてあります。

    自分の市区町村の解体補助金を調べる解体費の幅を試算する見積書の「別途」を確認する

    「3月は混む」は本当か——公的データは公共工事のものだけです

    年度末に業者が押さえられない、という話は業界では定番です。ただし民間の解体工事について、それを裏づける公的データは見つけられませんでした。

    近いものとして、国土交通省の「地方公共団体における平準化の推進」には、「年度内の時期に応じて工事量の繁閑に大きな差が生じ」「4-6月においては、仕事が不足」「1-3月においては、仕事量が増大」と明記されています。ただしこれは契約金額500万円以上の公共工事が対象で、住宅の解体は含まれていません。

    国土交通省の「建築物滅失統計調査」は月次で除却建築物の棟数を公表しているので、集計すれば月別の傾向は分かるはずですが、「3月に集中する」と分析した公式の記述は見当たりませんでした。

    だからこの記事では「3月は混むので早めに」とは書きません。書けるのは、公共工事については国交省が年度末の繁忙を公式に認めているということまでです。

    逆算の手順

    1. 着工したい日を仮に決める(更地にしたい日から、工事日数を引いた日)
    2. 補助金を使うなら、そこからさらに2週間〜2か月戻して交付申請の日を置く。契約はその後
    3. 都市ガスがあるなら、立会いできる日を確保して2週間前に申込
    4. NTTの回線があるなら1か月前に連絡
    5. 電気の引込線撤去を1週間前までに申込。ただし電話して「6か月かかる形状か」を確認
    6. 石綿の調査で除去が必要と出たら、そこから14日を追加
    7. 建設リサイクル法の届出を7日前までに。代行してもらうなら見積書に項目があるか確認
    8. 工事完了後、1か月以内に建物滅失登記

    よくある質問

    相続登記が終わっていませんが、解体できますか

    物理的には壊せますが、補助金を使うなら詰みます。多くの自治体が申請者を「所有者」に限定しており、登記名義が亡くなった親のままだと申請できません。相続登記の義務化のほうが先に来ます。相続登記の完了まで数か月かかることを、日程に入れてください。

    建設リサイクル法の届出を業者がやってくれると言われました

    実務ではそれが普通です。ただし法律上の義務者は発注者であるあなたなので、代行が契約に含まれているかを見積書で確認してください。含まれていないまま「やってくれるはず」で進めると、7日前を過ぎます。

    年内に壊したいのですが、いま何月なら間に合いますか

    補助金を使わず、都市ガスも石綿もないなら、1か月半あれば現実的です。補助金を使うなら、10月中に交付申請を出せる状態になっていないと厳しいと考えてください(審査2週間〜2か月+各種届出)。ただし補助金は先着順で年度途中に終わる自治体が多く、そもそも秋には枠が無いこともあります。

    更地にしてから売ると、税金の特例はどうなりますか

    空き家の3,000万円特別控除は、家屋を取り壊して土地を売る場合も対象になり得ますが、譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに取壊し等を行っていることなど、順番の条件があります。壊す前に要件を確認してください。古家付きで売るか、更地にして売るかも先に読んでおくと判断が早くなります。

    工事は何日くらいかかるのですか

    公的な標準工期の資料は見つけられませんでした。国土交通省の「工期に関する基準」にも、官庁営繕の「建築物解体工事共通仕様書」にも、木造住宅の解体日数の記載はありません。業者から日数を聞いたら、それは民間の目安だと理解して、余裕を持たせてください。

    この記事で確認できなかったこと

    • 木造住宅の標準工期の公的資料。国交省の工期関連資料・積算基準・共通仕様書のいずれにも記載がありませんでした
    • 民間の解体工事が3月に集中することを示す公的データ。確認できたのは公共工事(500万円以上)の平準化資料だけです
    • 水道の給水装置撤去にかかる所要日数。自治体の公式ページに手順の記載はあっても、日数の記載を見つけられませんでした。東京都水道局のページは取得できませんでした
    • NTT東日本の公式ページでの引込線撤去の必要日数(仙台市の案内にある「概ね1か月前まで」で代用しています)
    • 道路使用許可の標準処理期間。警察庁・警視庁の公式ページに日数の明記がなく、警視庁のオンライン申請の説明に「通常数日を要します」とあるのみです
    • 石綿の事前調査結果報告を怠った場合の罰則の条文ベースでの特定

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    補助金の枠が終わる前に、金額だけ先に押さえておく

    相続登記が終わるのを待っている間にも、補助金の枠は減っていきます。申請できる状態になったときにすぐ動けるよう、解体費の見当だけ先に付けておく。これなら登記の完了を待たずに今日できます。

    ①同社サイトには「ご利用は無料。ご成約後の請求も一切ございません」と書かれています。
    ②同社は「契約まで、業者からご連絡がいくことはございません」と説明しています。
    ③申し込みには物件の情報と写真が要ります。遠方の実家で写真が手元にないなら、次に帰ったときに外観と傷んでいる箇所を撮っておいてください。
    ④解体する予定がないなら申し込まないでください。重複した申込や、連絡先が実在しない申込は無効と明記されています。
    ⑤1社の見積りだけで決めないでください。地元の解体業者にも自分で1社あたって、金額の桁が合っているかを確かめてください。
    ⑥解体補助金を使う予定があるなら、契約・着工の前に自治体へ申請してください。着工後の申請は原則として通りません。

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    まとめ

    1. 工事日数は全体のごく一部です。公的な標準工期の資料は見つかりませんでした
    2. 施主の義務になる届出が2つ。建設リサイクル法(着工7日前・80㎡以上・違反は20万円以下の罰金)と、石綿関係
    3. 石綿の除去が必要と出たら、特定粉じん排出等作業の届出で14日前が上乗せされます
    4. ライフラインでは都市ガスの立会い必須と、電気の「6か月以上を要する事例」に注意
    5. 年内に壊すと翌年度の家屋分が消えるが、土地の住宅用地特例が外れる。自治体の公式説明は「約3倍程度」
    6. 建替えなら特例が続くが、1月1日時点で新築工事に着手していることが要件。更地のまま年越しは対象外
    7. 補助金は交付決定まで2週間〜2か月。そして交付決定前の契約・着工は対象外
    8. 工事が終わったら1か月以内に建物滅失登記(不動産登記法57条)

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  • 建物滅失登記を自分でやる|期限1か月・登録免許税0円、必要書類と放置したときに起きること

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    解体工事が終わって、業者から「お疲れさまでした」と言われて、更地の写真が送られてくる。そこで終わりだと思っている人が、いちばん多いです。

    終わっていません。法律は、あなたに「1か月以内にやること」を1つ課しています。建物滅失登記です。放っておくと過料の対象になり、存在しない家の固定資産税が請求され続けることがあります。

    そして、この登記は自分でできます。登録免許税がかからないので、実費はほぼ切手代と証明書代だけです。この記事は、その手順と、途中で詰まる箇所だけを書いています。

    結論だけ先に

    • 期限は滅失の日から1か月以内(不動産登記法57条)。義務者は表題部所有者または所有権の登記名義人です。
    • 怠ると10万円以下の過料(同法164条1項に57条が明記されています)。ただし実際に科された件数の統計は、法務省の登記統計にも裁判所の司法統計にも見当たりませんでした。
    • 登録免許税はかかりません。土地家屋調査士に頼むと、全国の中央値は47,500円(日本土地家屋調査士会連合会・令和4年度)。差額はそのまま自分でやるかどうかの差です。
    • いちばん詰まるのは書類ではなく「解体業者からもらう証明書」です。工事が終わってから頼むのでは遅い場合があります。

    根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

    期限は「滅失の日から1か月」。法律にそう書いてあります

    不動産登記法57条の条文は、静岡地方法務局が公開している案内文書にそのまま引用されています。

    建物が滅失したときは,表題部所有者又は所有権の登記名義人は,その滅失の日から1か月以内に,当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。

    ここで押さえたいのは2点です。

    いつから1か月か 工事の契約日でも、支払いを終えた日でもありません。建物が滅失した日=取り壊しが完了した日です
    誰の義務か 表題部所有者または所有権の登記名義人。解体業者の義務ではありません

    「業者がやってくれると思っていた」という取り違えが、いちばん多い原因です。解体業者は建物を壊す契約を履行しただけで、登記の代理権はありません(代理できるのは資格者だけです)。

    過料について、正直に書きます

    不動産登記法164条1項は、申請義務のある者が正当な理由なく申請を怠ったときは10万円以下の過料に処すると定めていて、その列挙のなかに57条が入っています。ここまでは条文で確認できます。

    ただし「実際に何件、科されているのか」は分かりませんでした。法務省の登記統計にも、裁判所の司法統計年報にも、条文別の過料事件の項目が見当たりません。「必ず取られる」とも「取られたことがない」とも、この記事では書けません。

    自分でやれば登録免許税0円。頼むと全国中央値47,500円です

    建物滅失登記に登録免許税はかかりません。根拠は、正面から「非課税」と書いた条文ではなく、次の3つの状況証拠です。

    • 国税庁のタックスアンサー「No.7191 登録免許税の税額表」に、建物の滅失(表示に関する登記)が掲載されていません
    • 法務局「登録免許税の計算」が挙げる課税対象8種にも含まれていません
    • 法務局が配布している建物滅失登記の申請書様式に、登録免許税の記入欄そのものがありません

    いっぽう、土地家屋調査士に依頼した場合の報酬には、公表された統計があります。日本土地家屋調査士会連合会が令和4年に実施した実態調査(全国3,487通の回答)の「建物滅失登記」の分布です。

    区分 中央値 平均値
    全国 47,500円 48,098円
    北海道 40,540円 43,605円
    東北 48,540円 49,013円
    関東 48,000円 48,628円
    中部 48,000円 48,247円
    近畿 45,000円 47,065円
    中国 45,500円 45,997円
    四国 45,000円 46,191円
    九州 48,000円 48,882円

    税別か税込かは、この統計からは読み取れませんでした。地域差は最大でも8千円ほどで、「都会だから高い」という傾向は出ていません。

    遠方の実家で、平日に法務局へ行けず、書類を集める時間もないなら、5万円弱で外注するのは合理的です。逆に、書類が揃っていて郵送で済ませられるなら、この5万円はまるごと浮きます。

    必要書類は5つ。ただし1つだけ、自分では用意できないものがあります

    鳥取地方法務局が公開している「申請書提出前のチェックリスト(建物滅失用)」を基準に整理します。

    # 書類 入手先 注意点
    1 建物滅失登記申請書 法務局サイトで様式を配布 A4・左とじ。申請人欄は認印で可
    2 建物滅失証明書(取壊し証明書) 解体業者 実印の押印が必要
    3 解体業者の印鑑証明書/代表者の資格証明書 解体業者 会社法人等番号を申請書に書けば省略できます
    4 申請地の場所が分かる地図 自分で用意 地図サイトの印刷で足ります
    5 (所有者が死亡している場合)相続を証明する書類 市区町村 次章で説明します

    登記記録の住所・氏名が現在と違う場合は、住民票の写しや戸籍の附票も要ります。添付書類は、原本還付を受ける場合も必ず原本を提出します。

    3番の「省略できる」は、法務局によって書きぶりが違います

    法務局の全国版の記載例は、会社法人等番号を書けば「代表者の資格を証する書面及び代表者の印鑑証明書」の双方を省略できると書いています。鳥取地方法務局のチェックリストも印鑑証明書の省略可と書いています。

    ところが静岡地方法務局の記載例は、「資格を証する書面」の省略にしか触れていません。同じ制度の案内なのに、印鑑証明書まで省けるかどうかの記述に幅があります。

    ここは管轄の法務局に電話で聞いてください

    この1点で、業者にもう一度書類をお願いするか否かが変わります。不動産の所在地を管轄する法務局に、「会社法人等番号を記載する場合、印鑑証明書は不要ですか」と聞くだけです。電話は無料で、名乗る必要もありません。

    いちばん危ないのは、2番を「工事のあと」に頼むことです

    建物滅失証明書は、壊した業者にしか出せません。そして実印と、法人なら印鑑証明書(または会社法人等番号)が要ります。つまり——

    • その業者が廃業していたら、出してもらえません
    • 安さだけで選んだ一人親方で、連絡が取れなくなったら、出してもらえません
    • 「証明書は別料金です」と後から言われることもあります

    だから、見積りを取る段階で聞いておきます。「取壊し証明書は出してもらえますか。実印を押した原本と、会社法人等番号を教えてもらえますか」。この一言を契約前に言えるかどうかで、あとの手間がまったく変わります。


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    証明書を出せる業者かどうかは、見積りの段階で分かります

    まだ解体していないなら、この記事の順番は逆から効きます。「取壊し証明書を実印で出せますか」と聞いて、詰まる業者は選ばない。複数社から見積りを取れば、この質問への答え方の差がそのまま出ます。金額の比較は、そのついでです。

    ①同社サイトには「ご利用は無料。ご成約後の請求も一切ございません」と書かれています。
    ②申し込みには物件の情報と写真が要ります。遠方の実家で写真が手元にないなら、次に帰ったときに外観と傷んでいる箇所を撮っておいてください。
    ③解体する予定がないなら申し込まないでください。重複した申込や、連絡先が実在しない申込は無効と明記されています。
    ④1社の見積りだけで決めないでください。地元の解体業者にも自分で1社あたって、金額の桁が合っているかを確かめてください。
    ⑤解体補助金を使う予定があるなら、契約・着工の前に自治体へ申請してください。着工後の申請は原則として通りません。

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    すでに解体が終わっている方は、この先の「所有者が亡くなっている場合」から読んでください。

    所有者が亡くなっていても、相続登記より先に滅失登記ができます

    ここが、いちばん知られていない部分です。

    建物の名義が亡くなった親のままでも、相続人の1人から滅失登記を申請できます。相続登記を先に済ませる必要はありません。

    佐賀地方法務局の案内に、「所有者が死亡している場合は、相続人の1人からの登記申請が可能です」と明記されています。相続人全員の実印を集める必要も、遺産分割協議を終える必要もありません。

    追加で要るのは、次の書類です。

    • 所有者が死亡した記載のある戸籍
    • 申請する人が所有者の相続人であることが確認できる戸籍
    • (必要に応じて)戸籍の附票

    相続登記は2024年4月から義務になりましたが、それは所有権の登記の話です。壊してしまう建物について相続登記が要るのか要らないのかを正面から述べた法務省の見解は、今回は見つけられませんでした。法務省の相続登記義務化のQ&Aにも特設ページにも、建物の滅失に関する記述はありません。

    確実に言えるのは、滅失登記の申請そのものには相続登記は要らないということだけです。土地のほうの相続登記は別途必要になりますので、混同しないでください。

    未登記の建物なら、行き先は法務局ではなく市役所です

    登記記録が最初から無い建物は、消すべき記録も無いので、法務局での手続きはありません。代わりに、市区町村の固定資産税の担当課へ「家屋滅失届」を出します。

    自治体の公式ページで確認できた実例を挙げます。

    自治体 公式ページに書かれていること
    茨城県桜川市 登記済建物は法務局で滅失登記をすれば法務局から市へ通知されるので市への届出は不要。ただし12月31日までに滅失登記が完了しない場合は市へ滅失届を提出
    茨城県かすみがうら市 未登記家屋は「家屋滅失届」を税務課へ。電話連絡でも可。年末の取壊しは「解体業者発行の証明書、領収書、日付入り写真など」取り壊した日を確認できる書類の用意を推奨

    様式の名前も、提出先も、自治体でばらばらです。「家屋滅失届」で通じないときは、固定資産税の担当課に「建物を壊したので課税を止めたい」と言えば伝わります。

    未登記のまま相続した実家の全体像は、登記されていない実家をどうするかにまとめてあります。壊す前に読んでおくほうが安全です。

    やらないと何が起きるか。確実なのは2つだけです

    ネット上には「売れなくなる」「ローンが組めない」といった記述が並びますが、法務局・法務省の公式な注意喚起としては見つけられませんでした。この記事で根拠つきで言えるのは、次の2つです。

    起きること 根拠
    ① 10万円以下の過料の対象になる 不動産登記法164条1項(57条を列挙)
    ② 存在しない家屋に固定資産税が課税され続けるおそれ 桜川市・かすみがうら市の公式案内(滅失登記が完了しないなら市へ届出、という構造)

    ②のほうが、金額としては効きます。登記を消さないかぎり、市は建物が無くなったことを知りません。木造家屋の税額が年3万円だとすれば、3年放置で9万円です。過料より確実に減ります。

    なお、災害時などに法務局が職権で滅失登記を行う場合はありますが、これは市から情報提供された建物や公費解体された建物などに限られます。附属建物の登記があると職権では処理できない場合があるとも書かれています。「そのうち役所がやってくれる」は成り立ちません。

    更地にすると土地の税金は上がります。ただし「6倍」ではありません

    滅失登記を出すと、市は建物が無くなったことを知ります。すると翌年の1月1日を境に、土地の住宅用地特例(地方税法349条の3の2)が外れます。

    区分 固定資産税の課税標準
    小規模住宅用地(200㎡以下の部分) 価格 × 6分の1
    一般住宅用地(200㎡超・家屋床面積の10倍まで) 価格 × 3分の1

    ここから「6倍になる」という話が生まれるのですが、自治体の公式説明はそう書いていません。富山市のFAQは、こう説明しています。

    その結果、土地の固定資産税が特例適用時よりも約3倍程度に上がることが一般的です。

    理由は3つあります。①更地(非住宅用地)の課税標準には評価額の70%という上限があること、②負担調整措置により1年で一気にではなく年5%ずつ上がること、③建物ぶんの税額はゼロになること。神戸市の公式ページに、この負担調整の仕組みが数式つきで載っています。

    この計算は解体すると固定資産税は本当に6倍になるのかで実額まで追ってあります。滅失登記を出す前に、いくら増えるかを見ておいてください。賦課期日は1月1日(地方税法359条)なので、年末の滅失登記は翌年度の税額に直結します。

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    更地にしたあと、その土地がいくらになるかを先に知っておく

    滅失登記が済んだ土地は、そのまま持ち続けるかぎり特例が外れた税額を毎年払うだけの資産になります。売る気がなくても、いくらの資産なのかは知っておいたほうが判断できます。査定は数日で数字が出ます。

    ①買取は仲介より手取りが下がります。相場に近い額で売りたいなら仲介を先に検討してください。②査定額は売れる価格ではありません。③匿名のAI査定では実額は出ません。桁を確かめるだけのものです。④LINEからの相談は、このリンク経由の申し込みとして扱われません。フォームから進んでください。⑤日本国外からの申し込みは対象外です。⑥更地にしてから売ると空き家の3,000万円特別控除の要件に関わります。売る可能性があるなら、壊す順番から確認してください。

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    金額が出たら、増える税額と並べてください。持ち続けるかどうかは、この2つの数字でしか決まりません。

    オンライン申請もできます。ただし紙は結局送ります

    法務局は建物滅失登記のオンライン申請に対応しています。ただし、次の条件があります。

    • 個人はマイナンバーカードが必要。ICカードリーダライタも必要です
    • 「申請用総合ソフト」のインストールが必要です
    • 書面で作成された添付情報は、受付の日から2日以内(初日・休日等を除く)に、法務局に持参するか書留郵便等で送る必要があります

    建物滅失証明書は解体業者が紙で出すものなので、結局この2日以内の送付が発生します。マイナンバーカードとカードリーダを持っていて、かつ郵送も併用できる人向けです。持っていないなら、素直に書面申請(郵送可・書留)のほうが早いです。

    やる順番

    1. (解体前)見積りの段階で「取壊し証明書を実印で出せるか」「会社法人等番号を教えてもらえるか」を確認する
    2. (解体後)業者から建物滅失証明書を受け取る。法人なら印鑑証明書または会社法人等番号も
    3. 管轄の法務局に電話し、印鑑証明書の省略可否と、必要書類の最終確認をする
    4. 法務局サイトから申請書様式をダウンロードして記入。不動産番号は登記事項要約書のとおりに
    5. 所有者が亡くなっているなら、戸籍を集める(相続人の1人ぶんで足ります)
    6. 申請地の場所が分かる地図を印刷する
    7. A4・左とじで綴じて、窓口か書留郵便で提出。滅失の日から1か月以内
    8. 未登記の附属建物や物置がある場合、市区町村へ家屋滅失届も出す

    よくある質問

    1か月を過ぎてしまいました。もう受け付けてもらえませんか

    受け付けてもらえます。1か月は申請義務の期限であって、それを過ぎると申請できなくなるという規定ではありません。過料の対象にはなり得ますが、気づいた時点で出すのがいちばん傷が浅くなります。放置している間も固定資産税の課税が続くおそれがあるためです。

    解体業者が廃業していて、証明書がもらえません

    この場合の代替手続きについて、法務局の公式な案内は今回見つけられませんでした。管轄の法務局に直接相談してください。実務上は、取壊しの事実を示す資料(工事の請負契約書、領収書、日付入りの写真、上申書など)で扱われることがありますが、何が認められるかは法務局の判断になります。

    物置や車庫も登記されているのですか

    されている場合があります。母屋の登記に「附属建物」として記録されていることが多く、この附属建物の登記が残っていると、法務局の職権での滅失登記ができない場合があると静岡地方法務局が書いています。登記事項証明書を取って、附属建物の記載があるかを先に確認してください。

    相続人が何人もいますが、全員の印鑑が要りますか

    要りません。佐賀地方法務局の案内に「相続人の1人からの登記申請が可能」と明記されています。ただし共有になっている実家を売る場合は全員の同意が必要になります。滅失登記だけが例外的に単独でできる、と理解してください。

    司法書士と土地家屋調査士、どちらに頼むのですか

    建物滅失登記は「表示に関する登記」なので、土地家屋調査士の分野です。所有権の移転(相続登記)は司法書士です。連合会の統計で示した47,500円は、土地家屋調査士の報酬です。

    この記事で確認できなかったこと

    • 不動産登記法57条違反で実際に過料が科された件数。法務省の登記統計にも裁判所の司法統計年報にも、条文別の過料事件の項目が見当たりませんでした
    • 滅失登記を出さないことによる売却時・住宅ローン審査・行政調査への具体的な支障についての、法務局・法務省の公式な注意喚起
    • 相続した建物を取り壊す場合に相続登記が必要か不要かを正面から述べた法務省の見解。相続登記義務化のQ&A・特設ページに、建物の滅失に関する記述がありません
    • 土地家屋調査士報酬統計の税別/税込の別、最頻値、件数分布
    • 解体業者の印鑑証明書を会社法人等番号で省略できるかについて、法務局の案内に記述の幅があります(全国版記載例は省略可、静岡の記載例は資格証明書のみに言及)
    • 解体業者が廃業していた場合の代替書類についての公式案内
    • 建物滅失登記が「非課税」と明記された条文。税額表・課税対象一覧に載っていないこと、申請書に欄がないことからの判断です

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    解体の見積りを、複数社から並べて比べる

    まだ壊していない段階なら、業者選びのときに「証明書を出せるか」「建設リサイクル法の届出を代行するか」まで含めて比べてください。壊した後で気づくと、取り返しがつきません。

    ①この比較で「壊さない」という結論になることもあります。売れる見込みも使う予定もない土地なら、更地にしても税負担が増えるだけです。
    補助金を使う予定があるなら、見積りより先に自治体へ連絡してください。交付決定の前に契約・着工すると、ほぼすべての制度で対象外になります。
    複数の業者から連絡が来る仕組みです。電話を受ける時間が取れないなら、希望する連絡手段を備考欄に書いてください。
    いちばん安い1社をそのまま選ばないでください。マニフェスト(産業廃棄物管理票)の写しを出せるか、建設リサイクル法の届出を代行するか。安すぎる見積りは、ここを省いていることがあります。
    サービス内容の説明は同社サイトの記載であって、当サイトが確かめた事実ではありません。

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    見積りが出たら、お住まいの自治体の解体補助金と突き合わせてください。契約より先です。

    まとめ

    1. 滅失の日から1か月以内(不動産登記法57条)。義務者は所有者で、解体業者ではありません
    2. 怠ると10万円以下の過料の対象(同164条1項)。ただし実際の件数の統計は確認できませんでした
    3. 登録免許税はかかりません。自分でやれば実費はほぼ切手代と証明書代だけです
    4. 土地家屋調査士に頼むと全国中央値47,500円(連合会・令和4年度、回答3,487通)
    5. いちばん詰まるのは解体業者が出す建物滅失証明書。見積りの段階で確認しておく
    6. 所有者が亡くなっていても相続人の1人から申請できます。相続登記は前提ではありません
    7. 未登記の建物は市区町村へ家屋滅失届。名称も窓口も自治体でばらばらです
    8. 滅失登記を出すと翌年1月1日から土地の住宅用地特例が外れます。ただし自治体の公式説明は「約3倍程度」で、6倍ではありません

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  • 空き家を処分する4つの方法|かかる費用と、先に切れる期限

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    「空き家 処分」で調べている人が探しているものは、たいてい3つのどれかです。売る方法、壊す費用、そして中身の片付け。この3つは別々の話に見えて、順番を間違えると数百万円ちがってきます。

    この記事では、空き家の出口を4つに分けて、それぞれいくらかかって、いつまでに動かないと選べなくなるのかを先に出します。詳しい手順は個別の記事にまとめてあるので、自分に関係する道だけ読み進めてください。

    数字はすべて条文・国税庁・自治体の公式ページで確認したものです。確認できなかったことは、最後にそのまま書いています。

    「処分」には4つあり、お金の向きが逆になります

    まず全体像です。手元にお金が入る道と、出ていく道があります。

    出口 お金の向き いちばん大きい制約
    ① そのまま売る 入る 買い手がつくか
    ② 解体して土地で売る 先に出て、あとで入る 解体費を立て替えられるか
    ③ 譲る・寄付する ほぼ動かない 受け取る相手が見つかるか
    ④ 国に返す(相続土地国庫帰属) 出る 建物があると申請すらできない

    ④は「タダで引き取ってもらえる制度」ではありません。最低でも21万4千円を払って、なおかつ建物を先に壊す必要があります。①から順に検討して、どれも無理だったときの最後の選択肢です。

    ① そのまま売る──最初に確かめるのはここです

    建物が建ったまま売れるなら、これがいちばん手元に残ります。解体費を払わずに済むうえ、要件を満たせば譲渡所得から3,000万円を差し引ける特例が使えるからです。

    売り方は2つあります。仲介は買い手を探してもらう方法で、相場に近い価格が狙えるかわりに時間が読めません。買取は業者が直接買う方法で、数日〜数週間で終わるかわりに手取りは仲介より下がります。どちらが向いているかは、急いでいるか、物件に難があるかで決まります。

    詳しくは実家は仲介と買取どちらで売るべきかと実家の売却相場を調べる3つの方法にまとめています。

    そして、査定額は売れる価格ではありません。査定はあくまで「この値段なら預かります」という業者側の提案で、そこから下がることのほうが多いです。ここを混同すると、資金計画が最初から狂います。


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    まず、建ったままいくらになるかを知る

    解体するかどうかは、建物付きでいくらになるかが分からないと決められません。買取なら、査定から数日で金額が出ます。空き家と中古戸建てを専門に扱っている窓口です。

    ①買取は仲介より手取りが下がります。相場に近い額で売りたいなら仲介を先に検討してください。②査定額は売れる価格ではありません。③匿名のAI査定では実額は出ません。桁を確かめるだけのものです。④LINEからの相談は、このリンク経由の申し込みとして扱われません。フォームから進んでください。⑤日本国外からの申し込みは対象外です。

    ラクウルで買取価格を出してもらう(無料)

    金額が出たら、この記事の②に戻って「解体してから売る場合」と比べてください。解体費を引いても土地のほうが高くなるかどうかは、金額を並べないと判断できません。

    ② 解体して土地で売る──順番を間違えると補助金が消えます

    建物が古すぎて買い手がつかないとき、更地にしてから売る選択肢が出てきます。ここでほぼ全員がやってしまう順番の間違いが1つあります。

    解体補助金は、業者と契約する前に申請するものがほとんどです。先に契約して工事を始めてしまうと、補助が使えた自治体でも1円も出ません。当サイトが302の市区町村を調べた範囲で、この「契約前申請」はほぼ共通していました。

    自分の市区町村に制度があるかどうかは、空き家の解体補助金 全国302自治体一覧で確認できます。制度が無いと確認できた自治体も、無いと書いてあります。

    費用の目安と、見積書のどこを見るかは実家の解体費用はいくら?にあります。アスベストの調査費は施主負担で、届出義務も施主にあります。ここは業者任せにできません。

    そして更地にすると、翌年から固定資産税が上がります。ただし「6倍」ではありません。計算すると最大でも4.2倍です。解体してすぐ売れない可能性があるなら、この1年分を先に見積もってください。

    建物を壊しても、3,000万円の特例は使えます。ただし要件があり、期限もあります。空き家の3,000万円特別控除で先に判定してください。

    解体費の補助が出る自治体か、先に確認してください

    ②の道を選ぶなら、順番を間違えないことがすべてです。全国394自治体のうち256自治体が空き家名目で解体費の補助を出しています。上限額の大きい順に挙げます。

    自治体上限額
    北海道札幌市850万円
    岡山県岡山市(地域活性化除却)200万円
    東京都墨田区最大200万円
    東京都板橋区200万円
    秋田県大仙市危険型200万円/迷惑型100万円/…
    兵庫県たつの市160万円(市税条例第24条第1項に…
    兵庫県丹波市160万円(判定100点以上。50点…
    愛媛県松山市160万円
    香川県三豊市160万円
    北海道札幌市(地域連携型)150万円
    東京都杉並区150万円
    山形県米沢市市町村民税所得割が非課税なら最大12…

    該当は全部で256自治体です。全国の一覧表で実家のある市区町村を確認してください。

    くり返しになりますが、ほとんどの自治体で交付決定より前に工事を契約すると対象外です。解体業者を探すより先に、市役所に電話してください。

    ③ 譲る・寄付する──受け取ってくれる相手は、簡単には見つかりません

    「タダでもいいから誰かに引き取ってほしい」という相談は多いのですが、ここがいちばん期待と現実が離れます。

    空き家バンクは、自治体が空き家情報を載せる仕組みです。ただし当サイトが数字を確認したところ、放置されている空き家の99.5%は、そもそもバンクに載っていません。8年かけて成約したのは全国で約26,000件。参加自治体の3分の1は、物件を1件も載せていませんでした。詳しくは空き家バンクは売れるのかにあります。

    自治体への寄付も、原則として通りません。ただし例外があります。当サイトが確認した範囲では、長崎市の「老朽危険空き家対策事業」は、土地・建物を市に寄附することが必須条件の制度でした。西宮市の解体補助にも、跡地を地縁団体が10年間使用・管理することへの承諾を求めるものがあります。

    これらは「引き取ってもらえる」制度ですが、土地も手放すことになります。解体費が浮くかわりに、あとで売る道が消えます。土地を残したい場合は選んではいけません。

    隣の家の人に打診する、という手もあります。隣地を買うと自分の土地が広く使えるようになるため、まったくの第三者より買う理由があります。ただし境界が決まっていないと話が進みません。実家の境界が決まっていないを先に読んでください。

    ④ 国に返す──建物が建っていたら、申請すらできません

    2023年4月に始まった相続土地国庫帰属制度です。名前から「いらない土地を国が引き取ってくれる」と読めますが、条文はそう書いていません。

    審査手数料 土地1筆につき14,000円(施行令3条)
    負担金 原則20万円(施行令5条1項4号)
    最低でも 21万4千円
    建物がある土地 申請できない(法2条3項1号)
    標準処理期間 8か月
    タダで引き取ってはもらえません 21万4千円 最低でも 審査手数料 14,000円 負担金 20万円 却下でも不承認でも、手数料は返りません

    手数料は、却下されても不承認でも取り下げても返ってきません。書面調査・実地調査・関係機関への照会という審査コストが実際に発生するためです。「とりあえず出してみる」は、1筆14,000円の賭けになります。

    そして建物が建っていたら申請できません。登記の有無は関係ありません。つまり②の解体を先に済ませる必要があり、解体費に加えて21万4千円を払うことになります。

    詳しい条件と、実際にどのくらい通っているのかは相続土地国庫帰属制度にあります。相続放棄とどちらが良いかも、そこで比べています。

    ★「申請できない土地」は、建物のほかに4つあります

    建物があると申請できないことは、上に書きました。条文は、それを含めて5つ並べています。

    相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第二条第三項
    承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。
    一 建物の存する土地
    二 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
    三 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
    四 土壌汚染対策法第二条第一項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地
    五 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

    出典:e-Gov法令検索 相続土地国庫帰属法第2条第3項(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    三号の「政令で定めるもの」も、施行令が具体的に書いています。

    同法施行令第二条
    法第二条第三項第三号の政令で定める土地は、次に掲げる土地とする。
    一 現に通路の用に供されている土地
    二 墓地内の土地 三 境内地 四 現に水道用地、用悪水路又はため池の用に供されている土地

    出典:e-Gov法令検索 同法施行令第2条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    実家の土地で引っかかりやすいのは、二号と五号です

    二号は「担保権」です。親の住宅ローンが完済していても、抵当権の抹消登記をしていなければ登記簿に残ります。登記簿上まだ抵当権が付いている土地は、この号に当たります。

    五号は「境界が明らかでない土地」です。古い住宅地では、境界標が失われていたり、隣と言い分が違ったりします。ここでつまずく実家は少なくありません。境界確定には測量費が別にかかります。

    国に返せない土地は、5種類あります 建物の存する土地 1号。登記の有無は関係ない 先に解体 担保権などがある 2号。抵当権の抹消もれ 登記簿を見る 通路・墓地・境内地 3号と施行令2条 使われている 土壌汚染がある 4号。特定有害物質 調査が要る 境界が明らかでない 5号。争いがある土地も 測量が要る 通っても、次に5条1項の審査があります

    ここを通っても、次に「不承認」の関門があります

    2条3項は入口の門前払いです。通っても、そのあと審査で落ちることがあります。

    同法第五条第一項
    法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。
    一 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
    二 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
    三 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
    四 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
    五 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

    出典:e-Gov法令検索 相続土地国庫帰属法第5条第1項(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    一号の「崖」の基準も、施行令に数字で書かれています。勾配が30度以上で、かつ高さが5メートル以上。この両方に当たる崖がある土地です(施行令4条1項)。

    三号の「地下」に注意してください。古い実家では、使わなくなった浄化槽や、地中に残った基礎、井戸が地下に残っていることがあります。解体のときに撤去しておかないと、ここで止まります。

    つまり関門は2段です。2条3項で門前払い、5条1項で不承認。手数料14,000円は、どちらで落ちても返ってきません。

    どの道を選んでも、中身の片付けは先に来ます

    4つのどれを選んでも、家財を出す作業からは逃げられません。売るなら引渡しまでに、解体するなら着工までに、空にする必要があります。

    その前に、絶対に捨ててはいけない紙があります。親が家を買ったときの売買契約書です。これが無いと、売ったときの取得費を売却価格の5%として計算することになり、税金が数百万円変わります。権利証・購入時の領収書・登記関係の書類も同じ箱にまとめてください。

    片付けの費用の目安と、業者選びで確かめる項目は遺品整理の費用にあります。業者の半数は、家庭のごみを運ぶ許可を持っていません。ここは金額より先に確認する部分です。なお仏壇だけは扱いが別で、置いたまま解体しても処分の責任は所有者に残ります。順番と費用は仏壇じまいの費用と手順にまとめました。

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    期限に間に合わせるなら、解体の見積りも同時に動かす

    片付けが終わってから解体を探すと、順番の分だけ時間が減ります。見積りは、家の中が片付いていなくても取れます。期限のあるものから逆算してください。

    ①同社サイトには「ご利用は無料。ご成約後の請求も一切ございません」と書かれています。
    ②同社は「契約まで、業者からご連絡がいくことはございません」と説明しています。
    ③申し込みには物件の情報と写真が要ります。遠方の実家で写真が手元にないなら、次に帰ったときに外観と傷んでいる箇所を撮っておいてください。
    ④解体する予定がないなら申し込まないでください。重複した申込や、連絡先が実在しない申込は無効と明記されています。
    ⑤1社の見積りだけで決めないでください。地元の解体業者にも自分で1社あたって、金額の桁が合っているかを確かめてください。
    ⑥解体補助金を使う予定があるなら、契約・着工の前に自治体へ申請してください。着工後の申請は原則として通りません。

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    見積書のどこを見るかは、この記事の見積書の章に戻って確認してください。お住まいの自治体の制度を先に調べておくと、受付期間に間に合うかどうかも一緒に分かります。

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    「解体して土地で売る」を選ぶなら、費用の幅を先に

    この記事の②で書いたとおり、順番を間違えると補助金が消えます。そのうえ解体費そのものも、業者によって数十万円変わります。4つの方法を並べて比べるには、「補助が使えるか」と「解体費がいくらか」の2つの数字が要ります。どちらも自分で動かないと出てきません。

    ①更地にすると住宅用地特例が外れ、翌年から土地の固定資産税が上がります。売れるまでの期間が読めないなら、その負担も4つの比較に入れてください。
    補助金を使う予定があるなら、見積りより先に自治体へ連絡してください。当サイトが調べた331自治体では、ほぼすべての制度が「交付決定の前に契約・着工したら対象外」です。
    複数の業者から連絡が来る仕組みです。電話を受ける時間が取れないなら、希望する連絡手段を備考欄に書いてください。
    いちばん安い1社をそのまま選ばないでください。マニフェスト(産業廃棄物管理票)の写しを出せるか、建設リサイクル法の届出を代行するか。安すぎる見積りは、ここを省いていることがあります。
    サービス内容の説明は同社サイトの記載であって、当サイトが確かめた事実ではありません。

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    ★共有だと、4つの道が同じところで止まります

    兄弟で相続した実家は、遺産分割が終わるまで全員の共有です。そして4つの道は、どれも同じ場所で止まります。

    民法は、共有物にすることを2つに分けています。

    民法第二百五十一条(共有物の変更)
    1 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
    2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

    民法第二百五十二条(共有物の管理)
    1 共有物の管理に関する事項……は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。
    2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
    一 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
    二 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。

    出典:e-Gov法令検索 民法第251条・第252条(全文を開いて確認/2026年9月3日)。第252条第1項および第3項以下は一部を省略しています

    ここから3つ、実務的に効くことが出ます

    ①「変更」は同意、「管理」は持分の過半数です。解体は建物をなくす行為で、251条1項の「変更」に当たります。過半数では足りません。一方、草刈りや簡単な修繕のような管理は、持分の過半数で決められます。

    ②連絡が取れない共有者がいても、道はあります。251条2項と252条2項1号が、裁判所の裁判という形で用意されています。ただし「裁判所」です。時間も費用もかかり、自分たちだけでは終わりません。

    ③返事をしない共有者には、催告という手があります。252条2項2号は、相当の期間を定めて賛否を明らかにするよう催告し、その期間内に返事がなければ、その人を除いた過半数で管理を決められる旨の裁判ができると書いています。「連絡は取れるが返事をしない」に効くのは、この号です。

    同意が要るのは「変更」です 変更するとき 全員の同意が要る 解体はこちら 251条1項 軽微な変更は除く 管理するとき 持分の過半数 草刈りや修繕 252条1項 全員でなくてよい 連絡が取れない人がいるときは裁判所へ

    ④の国庫帰属は、共有だと全員でなければ申請できません

    相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第二条第二項
    土地が数人の共有に属する場合には、前項の規定による承認の申請……は、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができる。

    出典:e-Gov法令検索 相続土地国庫帰属法第2条第2項(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    「全員が共同して行うときに限り」です。1人でも欠けたら申請そのものができません。解体(251条1項の変更)も全員、国への申請も全員。共有のまま4つの道を進もうとすると、必ずここに当たります。

    だから、遺産分割を先に終わらせるほうが早いことが多いのです。同意が要ることと要らないことの切り分けは、実家が兄弟の共有になっているにまとめています。

    先に切れる期限が3つあります

    空き家の処分でいちばん多い失敗は、迷っているうちに使えたはずの制度が切れることです。

    期限 中身
    2027年3月31日 相続登記の義務化。3年の猶予が切れる(詳細)
    2027年12月31日 空き家の3,000万円控除そのものの適用期限(令和9年12月31日)。相続から3年の期限より、こちらが先に来る人が多い(詳細)
    3年10か月 取得費加算の特例。相続税を払った人だけ(詳細)

    3,000万円控除と取得費加算は、どちらか一方しか選べません。両方の条件を満たす人は、金額を計算して有利なほうを選ぶことになります。

    それとは別に、放置していると市区町村から勧告を受けた時点で、土地の住宅用地特例が外れます。2023年の改正で、特定空家になる前の「管理不全空家等」の勧告でも外れるようになりました。特定空家に指定されるとどうなるに段階ごとに整理してあります。

    ★登記の期限は2つあり、どちらも過料10万円です

    上の3つの期限は、制度が使えなくなる期限です。もう1種類、罰のある期限があります。登記です。

    不動産登記法第七十六条の二(相続等による所有権の移転の登記の申請)
    1 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
    2 前項前段の規定による登記……がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

    不動産登記法第五十七条(建物の滅失の登記の申請)
    建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人……は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。

    出典:e-Gov法令検索 不動産登記法第76条の2・第57条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    この2つは、罰則が同じ条文に並んでいます。

    不動産登記法第百六十四条(過料)
    1 ……第五十七条、……第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。
    2 第七十六条の五の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、五万円以下の過料に処する。

    出典:e-Gov法令検索 不動産登記法第164条(全文を開いて確認/2026年9月3日)。第1項は多数の条文を列挙しており、この記事に関係する部分だけを抜いています

    この記事の4つの道に、そのまま効きます

    ①解体したら、1か月です(57条)。②の「解体して土地で売る」を選んだ人は、工事が終わった時点でこの期限が動き出します。3年ではなく1か月。登録免許税はかからず、自分でもできます。

    ②遺産分割が終わったら、そこからまた3年です(76条の2第2項)。法定相続分で先に登記していても、あとで分割して取り分が増えたなら、分割の日から3年以内に登記し直す義務があります。「一度登記したから終わり」ではありません。

    ③間に合わないときの逃げ道が、条文に用意されています。

    不動産登記法第七十六条の三(相続人である旨の申出等)
    1 前条第一項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
    2 前条第一項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、……所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。

    出典:e-Gov法令検索 不動産登記法第76条の3(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    相続人申告登記です。遺産分割がまとまらないまま3年が来そうなときに、「自分は相続人です」と申し出ておけば、その分の義務は果たしたものとみなされます。ただし所有権の登記そのものではないので、これで売れるようにはなりません。過料を避けるための手続きです。

    登記の期限は、3年と1か月です 1 相続の開始 所有権はこの時から。民法896条 2 3年以内 相続登記。76条の2第1項 3 遺産分割 分割の日からまた3年。同2項 4 解体 ②の道を選んだとき 5 1か月以内 ★建物滅失登記。57条

    そして、登記がないと売れません

    民法第百七十七条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
    不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

    出典:e-Gov法令検索 民法第177条(全文を開いて確認/2026年9月3日)

    買主に所有権を移すには、その前に相続人名義になっている必要があります。「登記していなくても所有者ではある」(民法896条)ことと、「登記がなければ第三者に対抗できない」(177条)ことは、両立します。①も②も③も、最後は登記の話に戻ってきます。

    よくある質問

    相続登記をしていなくても、処分できますか

    売ることはできません。買主に所有権を移す前提として、まず相続人名義に登記されている必要があります。解体は登記がなくてもできますが、そのあと売る段階で必ず必要になります。

    兄弟の共有になっています。1人で決められますか

    全体を売るには共有者全員の同意が必要です。自分の持分だけなら単独で売れますが、価格は大きく下がり、関係も壊れます。実家が兄弟の共有になっているで、同意が要ることと要らないことを分けています。

    親が認知症です。売れますか

    本人に判断能力がない状態では売れません。認知症の親の家は売れませんに3つの道をまとめています。

    いちばん早く終わる方法はどれですか

    買取です。査定から数日〜数週間で現金化まで進みます。ただし手取りは仲介より下がります。時間を買う方法だと考えてください。

    この記事で確認できなかったこと

    • 建物滅失登記を自分でやる——解体から1か月以内。登録免許税はかからず、自分でできます
    • 実家の片付けで捨ててはいけない書類9つ——電気の「使用中止日」が分かる紙まで要ります
    • 自治体が個人の空き家の寄付を受け入れる条件は、統一的に確認できていません。長崎市と西宮市のように制度の一部として引き取る例は確認しましたが、「一般に寄付できるか」を全国で調べたわけではありません。お住まいの市区町村に直接確認してください。
    • 隣地所有者への売却で、実際にどのくらい成約しているかの統計は見つかりませんでした。手段として存在することは確かですが、確率は書けません。
    • 買取価格が仲介より何割下がるかは、物件ごとに違います。一般に言われる「7割」という数字の出典を、当サイトでは確認できていません。大手の決算から逆算した記事はありますが、それも1つの推計です。
    • 過料が実際にどれくらい科されているかは、確認できていません。不動産登記法164条1項に「十万円以下の過料」と書かれていることは条文で確認しましたが、運用の統計にはあたれていません。
    • 相続土地国庫帰属法5条1項5号の「政令で定めるもの」は、施行令4条3項の一部しか読んでいません。2条3項と5条1項の各号、施行令2条と4条1項は全文を確認しています。
    • この記事に監修者はいません。数字はすべて条文・国税庁・自治体の公式ページで確認していますが、個別の判断は税理士・司法書士・市区町村の窓口で確認してください。

    まとめ

    1. ①建ったまま売るから順に検討する。手元に残る額がいちばん大きい
    2. ②解体するなら、業者と契約する前に補助金を申請する。先に契約すると使えない
    3. ③タダで引き取ってもらう道は、期待するほど広くない。空き家バンクに載っているのは放置空き家の0.5%
    4. ④国に返すのは最後の手段。最低21万4千円かかり、建物があると申請すらできない
    5. 売買契約書を捨てない。無いと税金が数百万円変わる
    6. 2027年に期限が2つ重なる。3月31日に相続登記、12月31日に3,000万円控除

    迷っている時間そのものが、選べる道を減らしていきます。まず、建ったままいくらになるかを知るところからです。

  • 実家の墓をどうするか|墓は相続財産ではありません。「離檀料」という言葉は法律に1文字も出てきません

    実家を片づけていると、必ず出てくるものがあります。仏壇と、墓です。

    家は売るか壊すか決められます。墓は、そのどちらでもありません。そして「墓じまい」で検索すると、まず出てくるのが離檀料という言葉です。数十万円、ときには百万円を超える額を請求された、という話も見かけます。

    そこで、法律だけを読みました。墓地、埋葬等に関する法律と、その施行規則と、民法と、刑法です。

    結論から言うと、「離檀料」という言葉は、法律にも省令にも1文字も出てきません。そして、寺が書類を書いてくれないときの出口が、省令の括弧の中に、はっきり書いてあります。

    この記事は、e-Gov法令検索の条文だけで書いています。確認できなかったことは、最後にそのまま書いています。

    最終更新:2026年8月19日

    結論だけ先に

    • 墓は相続財産ではありません。民法897条1項は「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」と定めています。「前条」は896条、つまり相続の一般的効力です。墓はそこから外されています。
    • だから、墓は遺産分割協議の対象ではありません。そして相続放棄をしても、墓を承継することはあります。放棄は896条の話であって、897条の話ではないからです。
    • 法律にあるのは「改葬」だけです。墓地、埋葬等に関する法律の条文を全部検索しましたが、「墓じまい」0件、「離檀」0件、「永代供養」0件、「散骨」0件、「使用料」0件、「管理料」0件。1つも出てきません。
    • 改葬には市町村長の許可が要ります(法5条1項)。許可を出すのは「死体又は焼骨の現に存する地の市町村長」(同2項)。移転先ではなく、いま墓がある市町村です。
    • 寺が「埋蔵の証明書」を書いてくれないときの出口は、省令に書いてあります。施行規則2条2項1号の括弧書き——「これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面」。
    • 庭に埋めるのは違法です。法4条1項「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない」。罰則は2万円以下の罰金・拘留・科料(法21条1項1号)ですが、それとは別に刑法190条があります。遺骨の遺棄は3年以下の拘禁刑です。

    条番号はすべてe-Gov法令検索で本文を確認しました。

    まず、墓は相続財産ではない

    ここを誤解している人がとても多い。墓は、預金や不動産と同じようには扱われません。

    民法897条1項は、こうです。

    系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

    「前条の規定にかかわらず」——ここが全部です。前条は896条、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」という条文です。

    墓(墳墓)、仏壇や位牌(祭具)、家系図(系譜)は、その一切から外されています。

    この3つは、相続分に応じて兄弟で分けるものではありません。1人が承継します。誰が承継するかの順番は、条文にこう書いてあります。

    順 誰が承継するか 根拠
    1 被相続人が指定した者 897条1項ただし書き
    2 慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者 897条1項本文
    3 家庭裁判所が定める者(慣習が明らかでないとき) 897条2項

    897条2項の条文はこれです。

    前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

    ここから出てくる、実務上の3つの帰結

    1.遺産分割協議書に墓を書く必要はありません。相続財産ではないからです。書いてはいけないという条文はありませんが、分割の対象ではない以上、そこで揉める意味がありません。

    2.相続放棄をしても、墓は承継することがあります。相続放棄は896条の承継を否定する手続きです。897条は別の条文です。「負動産だから放棄した。でも墓の管理料の請求は自分に来る」——これは条文どおりに起きうることです。

    3.「長男が継ぐもの」とは、条文に書いてありません。書いてあるのは「慣習に従って」です。慣習が明らかでなければ家庭裁判所が決めます。長男という言葉は897条のどこにもありません。

    相続放棄そのものの判断は、実家が「負動産」だったら相続放棄すべきかで、3か月の期限と放棄しても残るものを整理しています。

    「墓じまい」という言葉は、法律に存在しない

    墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)の条文を、全文にわたって語句検索しました。結果はこうです。

    探した語 件数
    墓じまい 0
    離檀 0
    永代供養 0
    散骨 0
    樹木葬 0
    手元供養 0
    使用料 0
    管理料 0
    承諾 0

    ひとつも出てきません。この法律が定めているのは、埋葬・火葬・改葬という3つの行為と、墓地・納骨堂・火葬場という3つの施設だけです。

    だから「墓じまいの法的手続き」というものは、正確にはありません。あるのは改葬の許可です。世の中で墓じまいと呼ばれているものは、法律の上では「改葬」と「墓地使用契約の終了」という、まったく別の2つの話が混ざったものです。

    この2つを分けて考えると、話が急に整理されます。

    相手 ルール
    改葬の許可 市町村長(行政) 法律と省令に書いてある。要件は決まっている
    墓地使用契約の終了 寺・霊園(民間) 法律に規定がない。契約の中身による

    離檀料の話は、右側です。行政の許可の話ではありません。

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    墓と同じ時期に、実家の始末も来ます

    墓じまいと実家じまいは、たいてい重なります。実家を壊すつもりがあるなら、費用の見当だけでも先に取っておくと、全体の予算が組めます。

    ①同社サイトには「ご利用は無料。ご成約後の請求も一切ございません」と書かれています。
    ②同社は「契約まで、業者からご連絡がいくことはございません」と説明しています。
    ③申し込みには物件の情報と写真が要ります。遠方の実家で写真が手元にないなら、次に帰ったときに外観と傷んでいる箇所を撮っておいてください。
    ④解体する予定がないなら申し込まないでください。重複した申込や、連絡先が実在しない申込は無効と明記されています。
    ⑤1社の見積りだけで決めないでください。地元の解体業者にも自分で1社あたって、金額の桁が合っているかを確かめてください。
    ⑥解体補助金を使う予定があるなら、契約・着工の前に自治体へ申請してください。着工後の申請は原則として通りません。

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    見積書のどこを見るかは、この記事の見積書の章に戻って確認してください。お住まいの自治体の制度を先に調べておくと、受付期間に間に合うかどうかも一緒に分かります。

    「改葬」とは何か——定義が意外と狭い

    法2条3項の定義です。

    この法律で「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう。

    読みどころは、移す先が指定されていることです。「他の墳墓」または「納骨堂」。この2つしか書いてありません。

    ちなみに、同じ2条の他の項で、その2つも定義されています。

    • 墳墓(4項)——「死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設をいう」
    • 納骨堂(6項)——「他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設をいう」
    • 墓地(5項)——「墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事(市又は特別区にあつては、市長又は区長。以下同じ。)の許可を受けた区域をいう」

    納骨堂は「他人の委託をうけて」「都道府県知事の許可を受けた」施設です。自宅の仏壇は、当然どちらにも当たりません。

    つまり「遺骨を自宅に持ち帰る(手元供養)」が、条文でいう改葬に当たるのかどうかは、この定義からは読み取れません。移す先が墳墓でも納骨堂でもないからです。ここは自治体の運用に委ねられている部分で、今回は確認できませんでした。

    改葬には市町村長の許可が要る。しかも「今ある場所」の市町村長

    法5条1項です。

    埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。

    そして2項が、間違えやすいところです。

    前項の許可は、埋葬及び火葬に係るものにあつては死亡若しくは死産の届出を受理し、死亡の報告若しくは死産の通知を受け、又は船舶の船長から死亡若しくは死産に関する航海日誌の謄本の送付を受けた市町村長が、改葬に係るものにあつては死体又は焼骨の現に存する地の市町村長が行なうものとする。

    「現に存する地」です。つまりいま墓がある市町村。新しい墓を建てる場所でも、あなたが住んでいる場所でもありません。

    実家が遠方にある人にとって、これは実務上かなり効きます。申請先は実家の側の役所です。郵送で受け付けているかどうかは自治体によります。

    許可証がないと、新しい墓は受け入れられない

    法8条。

    市町村長が、第五条の規定により、埋葬、改葬又は火葬の許可を与えるときは、埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を交付しなければならない。

    そして法14条1項・2項。

    墓地の管理者は、第八条の規定による埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を受理した後でなければ、埋葬又は焼骨の埋蔵をさせてはならない。

    納骨堂の管理者は、第八条の規定による火葬許可証又は改葬許可証を受理した後でなければ、焼骨を収蔵してはならない。

    受け入れ側は、許可証がなければ受け取れません。「してはならない」と書いてあり、違反すると法21条1項1号で罰則があります。だから改葬許可証を先に取るのが、必ず先です。

    申請書に書くのは7項目(施行規則2条1項)

    墓地、埋葬等に関する法律施行規則2条1項は、改葬許可の申請書に書く事項を、次の7つと定めています。

    号 書く事項(条文のまま)
    一 死亡者の本籍、住所、氏名及び性別(死産の場合は、父母の本籍、住所及び氏名並びに死児の性別)
    二 死亡年月日(死産の場合は、分べん年月日)
    三 埋葬又は火葬の場所
    四 埋葬又は火葬の年月日
    五 改葬の理由
    六 改葬の場所
    七 申請者の住所、氏名、死亡者との続柄及び墓地使用者又は焼骨収蔵委託者(以下「墓地使用者等」という。)との関係

    ここで先に確認しておくべきことが1つあります。一号と二号は「死亡者」ごとの情報です。1つの墓に何人分の焼骨が入っているかを、先に把握しておかないと書けません。祖父母の代まで入っていることは珍しくありません。

    そして五号「改葬の理由」。条文は理由を書けと言っているだけで、どんな理由なら許可される、という基準は書かれていません。「墓を継ぐ人がいない」「遠方で管理できない」——条文上、理由の当否を審査する規定は見当たりませんでした。

    添付書類は3つ。ここが「離檀料」の実際の争点です

    施行規則2条2項が、添付書類を定めています。この条文が、この記事でいちばん重要です。

    前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

    一 墓地又は納骨堂(以下「墓地等」という。)の管理者の作成した埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証する書面(これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面)

    二 墓地使用者等以外の者にあつては、墓地使用者等の改葬についての承諾書又はこれに対抗することができる裁判の謄本若しくは裁判の内容を記載した書面であつて裁判所書記官が当該書面の内容が当該裁判の内容と同一であることを証明したもの

    三 その他市町村長が特に必要と認める書類

    2つ、はっきり読み取れることがあります。

    ①「承諾書」が要るのは、自分が墓地使用者でないときだけ

    二号の書き出しは「墓地使用者等以外の者にあつては」です。

    裏返すと、あなた自身が墓地使用者(または焼骨収蔵委託者)であれば、二号の承諾書は要りません。条文がそう書いています。

    ここで言う「承諾」は、寺の承諾ではなく墓地使用者の承諾です。名義が親のままで、あなたが墓地使用者になっていない場合は、先に使用者の名義を確認してください。

    ②寺が証明書を書かないときの出口が、括弧の中にある

    一号の括弧書きをもう一度読みます。

    これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面

    省令が、代替手段を用意しています。「墓地等の管理者の作成した書面」が取れない特別の事情があるときは、市町村長が必要と認める、これに準ずる書面でよい、と書いてあります。

    つまり、寺が判子を押さないことが、改葬許可の絶対的な障害にはなりません。何が「準ずる書面」に当たるかを決めるのは市町村長です。だから、行き詰まったときに相談する相手は、寺ではなく市区町村の担当課です。

    ただし、誤解しないでください。この括弧書きは「離檀料を払わなくていい」と言っているのではありません。行政の許可という土俵と、寺との契約という土俵は別だ、と言っているだけです。

    離檀料そのものについて、条文が言っていること

    何も言っていません。墓地、埋葬等に関する法律にも、その施行規則にも、「離檀料」「使用料」「管理料」という語は1つも出てきません。

    金額の根拠になりうるのは、あなたと寺・霊園のあいだの墓地使用契約(規則・使用規程)だけです。まず契約書と規程を探してください。そこに書いていない金額を、法律が根拠づけることはありません。

    当サイトには監修者がいません。契約書に書いてある金額が有効かどうかは、条文からは判断できません。額が大きいときは、弁護士か、自治体の無料法律相談に行ってください。

    受け入れは拒めない。でも「出す」ことは条文にない

    法13条は、こう定めています。

    墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない。

    「拒んではならない」——強い義務です。違反すると法21条1項1号の罰則の対象になります。

    ただし、よく読んでください。ここに並んでいるのは「埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬」です。改葬は入っていません。

    つまり、受け入れ側の管理者は正当な理由なく拒めないが、いま入っている墓から「出す」ことについて、同じ形の義務規定は見当たりませんでした。この非対称は、条文を読んだ範囲での事実です。これを補う通知や解釈があるかどうかは、今回は確認できていません。

    やってはいけないこと——庭に埋める、手元に置き続ける

    実家を売る・壊すことが決まっていて、墓の行き先が決まらない。そのとき、いちばんやってはいけないのがこれです。

    法4条1項。

    埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。

    2項もあります。

    火葬は、火葬場以外の施設でこれを行つてはならない。

    「墓地以外の区域」に埋めてはいけない。墓地とは、2条5項の定義で「墓地として都道府県知事……の許可を受けた区域」です。実家の庭は、当然そこに入りません。

    罰則は2つ、まったく重さが違う

    まず、墓地、埋葬等に関する法律21条1項1号。

    第三条、第四条、第五条第一項又は第十二条から第十七条までの規定に違反した者

    これに当たると「二万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。正直に言えば、金額としては軽い。昭和23年の法律で、金額が改定されていません。

    問題は、こちらではありません。刑法190条です。

    (死体損壊等)死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の拘禁刑に処する。

    3年以下の拘禁刑。2万円以下の罰金とは、まったく別の重さです。

    「どこかに置いてくる」「山に撒く」は、この条文の射程に入りうる行為です。散骨が実際にどう扱われるかは、この記事では判断できません。墓地、埋葬等に関する法律には「散骨」という語が1つも出てこない、という事実だけを書いておきます。

    実家じまいと同時に進めるときの順番

    家と墓を同時に片づけることになるので、順番を整理します。

    1.誰が承継者かを、先に決める

    民法897条の順番です。被相続人の指定 → 慣習 → 家庭裁判所。ここが決まらないと、そもそも誰が申請するのかが決まりません。

    2.墓地使用者の名義を確認する

    施行規則2条2項2号の「承諾書」が要るかどうかが、ここで決まります。あなたが墓地使用者なら要りません。

    3.何人分の焼骨が入っているかを確認する

    施行規則2条1項一号・二号は、死亡者ごとの本籍・住所・氏名・性別・死亡年月日を求めています。先に数を把握してください。寺や霊園の管理帳簿で確認できることがあります。

    4.受け入れ先を先に決める

    申請書の六号に「改葬の場所」を書くからです。行き先が決まっていないと、申請書が埋まりません。

    5.今ある墓の市町村に、改葬許可を申請する

    法5条2項の「死体又は焼骨の現に存する地の市町村長」です。実家側の役所です。

    6.許可証を持って、受け入れ先へ

    法14条1項・2項により、許可証がなければ受け入れ先は焼骨を受け取れません。

    やってはいけないこと

    • 寺に先に「離檀します」と言ってから、行き先を探す。行き先が決まらないと申請書が書けません。順番が逆です
    • 受け入れ先の市町村に許可を申請する。申請先は「いま墓がある」市町村です
    • 証明書を書いてもらえないからと諦める。施行規則2条2項1号の括弧書きがあります。市区町村の担当課に相談してください
    • 遺骨を一時的に自宅に置いたまま放置する。刑法190条の射程を考えると、宙に浮かせる期間は短いほうがいい
    • 実家の解体を先に進めてしまう。仏壇・位牌・過去帳は祭具(民法897条)です。解体前に取り出してください

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    祭具を取り出す前に解体を進めてしまう事故は、順番を決めていないから起きます。そもそも壊さずに売れるなら、解体費も、急ぐ理由もなくなります。先に値段を見てから順番を組んでください。

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    売ると決めてから調べるものではありません。決めるために調べるものです。年間の維持費は空き家の維持費を実額で積み上げた記事にまとめました。

    費用について、条文が言えること

    何も言えません。正直にそう書きます。

    墓地、埋葬等に関する法律にも施行規則にも、金額を定めた条文はありません。改葬許可申請の手数料は自治体が条例で定めるもので、無料の自治体もあります。今回、全国の手数料を横断的に確認したデータは作っていません。

    墓石の撤去費、離檀料、新しい納骨先の費用——いずれも公的な統計を見つけられませんでした。相場としてよく見る金額は、事業者や比較サイトが集計したものです。当サイトは、出所を確認できない数字を書きません。

    解体費については、実家の解体費用はいくらかで、構造・坪数別の考え方とシミュレーターを置いています。ただし、これは家屋の話であって、墓石には当てはまりません。

    この記事で確認できなかったこと

    この記事は、e-Gov法令検索の条文だけで書いています。次の点は確認できませんでした。

    • 「改葬の理由」の審査基準。施行規則2条1項五号は理由を書けと定めていますが、どんな理由なら許可されるかの基準は、法律にも省令にも書かれていません
    • 遺骨を自宅に持ち帰る(手元供養)が、法2条3項の「改葬」に当たるかどうか。定義は移す先を「他の墳墓又は納骨堂」としており、自宅はどちらにも当たりません
    • 「これに準ずる書面」として何が認められるか。市町村長が認めるもの、としか書かれていません。自治体ごとの運用は調べていません
    • 散骨の法的な扱い。墓地、埋葬等に関する法律に「散骨」の語はありません。厚生労働省のガイドラインの有無と内容は、今回は確認していません
    • 墓地の管理者が改葬(出すこと)を拒めるかどうか。法13条は「埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬」の求めについての規定で、改葬は挙げられていません。これを補う通知や判例は確認していません
    • 離檀料の相場、および請求の有効性。法律にも省令にも規定がなく、契約次第です。金額の妥当性は条文からは判断できません
    • 改葬許可申請の手数料。自治体の条例によります。全国分は調べていません
    • 年間の改葬件数。厚生労働省の衛生行政報告例に「改葬数」の項目があることは確認しましたが、統計表そのもの(数値)は今回は開いていません
    • 墓石の撤去費や新しい納骨先の費用の公的な統計。見つけられませんでした
    • 民法897条の「慣習」が具体的に何を指すか。条文には書かれていません

    当サイトには監修者がいません。ここに書いたのは条文の内容であって、あなたの墓に当てはめた判断ではありません。手続きの入口は、いま墓がある市区町村の担当課です。そこに電話するのが最短です。

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