祖父名義のままの実家|相続登記の期限は2027年3月31日。何代分の登記と費用がかかるか

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実家の登記事項証明書を取ったら、所有者の欄に祖父の名前が入っていた。祖父が亡くなったのは30年前。父も5年前に亡くなっている。誰も相続登記をしないまま、名義だけが昭和で止まっている。

この状態を数次相続といいます。そして2024年4月1日から、相続登記は義務になりました。祖父の代の相続にも遡って適用されます。

期限は2027年(令和9年)3月31日です。この記事は、何代分の登記が必要になるのか、相続人が何人まで増えるのか、費用はいくらか、間に合わないときに何ができるのかを、法務省・法務局・裁判所・e-Gov法令検索の公表資料だけで組み立てます。

結論だけ先に

  • ★施行日前に開始した相続にも適用されます。改正法の附則5条6項が、不動産登記法76条の2の「知った日」を「知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日」と読み替えています。法務省は「令和9年3月31日まで」と案内しています。正当な理由なく怠れば10万円以下の過料(不動産登記法164条1項)。
  • ★間に合わないなら「相続人申告登記」があります(不動産登記法76条の3)。申し出るだけで申請義務を履行したものとみなされ、登録免許税もかかりません。ただし持分は登記されず、権利関係を公示するものではないので、売却や抵当権設定には別途相続登記が要ります。
  • 登録免許税には免税措置があります(租税特別措置法84条の2の3)。①相続で土地を取得した人が登記前に亡くなった場合=まさに数次相続 ②不動産の価額が100万円以下の土地。どちらも令和9年3月31日まで、対象は土地だけです。
  • 遺産分割にも期限ができました。相続開始から10年を過ぎると、原則として特別受益・寄与分を主張できず法定相続分で分けることになります(民法904条の3)。すでに10年を過ぎている古い相続については、施行時から5年を経過する時まで、という経過措置が置かれています。(改正法附則3条)

この記事は e-Gov法令検索の条文、法務省・法務局・裁判所・国土交通省の公表資料、国税庁のタックスアンサーだけで書いています。当サイトに司法書士・税理士・弁護士はいません。登記の可否と手順は、法務局の登記手続案内(無料・予約制)か司法書士に確認してください。最終確認日:2026年8月25日。

1. 期限は2027年3月31日です

不動産登記法76条の2第1項が、相続登記の申請義務を定めています。

所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

問題は、これが施行日より前の相続にも適用されることです。改正法(民法等の一部を改正する法律)の附則5条6項が、こう読み替えます。

……同条第一項中「知った日」とあるのは「知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日」と……

第二号施行日=令和6年4月1日。そこから3年で、令和9年(2027年)3月31日です。

いつ相続が起きたか 期限
令和6年3月31日以前(祖父・曽祖父の代を含む) 令和9年3月31日
令和6年4月1日以後 取得を知った日から3年以内
遺産分割で法定相続分を超えて取得した場合 遺産分割の日から3年以内(施行日前の分割は、分割の日か施行日の遅いほうから3年)
不動産登記法76条の2、民法等の一部を改正する法律 附則5条6項、法務省「相続登記の申請義務化について」から作成

過料は10万円以下です(不動産登記法164条1項)。法務省は運用について、①登記官が催告書を送る ②期限内に登記されなければ登記官が裁判所へ通知する ③裁判所が要件を判断して過料の裁判をする、という流れを説明しています。

2026年4月1日からは、住所変更登記も義務になります

不動産登記法76条の5が、氏名・名称・住所の変更から2年以内の変更登記を義務づけます。施行日は令和8年4月1日、過料は5万円以下(同法164条2項)。施行日前に住所を変えていて未登記のものは、令和10年3月31日までとされています。

祖父の代の相続も、2027年3月31日まで 令和6年4月1日 相続登記が義務に。過去の相続も 令和8年4月1日 住所変更登記も義務に。5万円以下 令和9年3月31日 施行日前の相続はここまで 令和10年3月31日 施行日前の住所変更はここまで

2. 何が起きているのか——所有者不明土地20.1%

国土交通省が平成28年度の地籍調査で、約62万筆を対象に調べています。

項目 数値
登記簿上で所有者の所在が確認できない土地 20.1%
 うち 相続による所有権移転の未登記 66.7%
 うち 住所変更の未登記 32.4%
 うち 売買・交換等による移転の未登記 1.0%
追跡調査の結果、最終的に所在不明だった土地 0.41%
出典:国土交通省「所有者不明土地の実態把握の状況について」(平成28年度地籍調査・1,130地区/558市区町村/約62万筆)
所有者不明の土地の3分の2は、相続の未登記 相続による移転の未登記 66.7% 住所変更の未登記 32.4% 売買・交換等の未登記 1.0% 所在が確認できない土地は20.1%。その内訳です

所有者不明土地問題研究会(座長・増田寛也)は、面積と損失を次のように推計しています。

項目 推計値
2016年時点の所有者不明土地の面積 約410万ha
2040年の推計面積 約720万ha(北海道本島は約780万ha)
経済的損失(2016年・単年) 約1,800億円
経済的損失(2017〜2040年の累積) 約6兆円
出典:所有者不明土地問題研究会「最終報告 概要」(平成30年1月19日・所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議 資料1-2)

義務化はこの数字への対応です。「うちだけ放置している」わけではなく、5筆に1筆がこの状態でした。

3. 相続人は何人まで増えるのか

数次相続でいちばん怖いのは、費用でも過料でもなく当事者の人数です。民法の条文が、増え方を決めています。

条文 内容 増え方
民法887条2項 子が先に亡くなっていれば、その子(孫)が代襲する 孫の人数だけ増える
民法887条3項 前項を代襲者が亡くなった場合に準用(再代襲) 直系卑属は世代の制限なく続く
民法889条1項 子や孫がいなければ、直系尊属 → 兄弟姉妹の順 叔父・叔母まで広がる
民法889条2項 兄弟姉妹には887条2項だけを準用(3項は準用しない) 兄弟姉妹の代襲は甥・姪まで(1代限り)
民法901条 代襲相続人の相続分は、その直系尊属が受けるはずだった分 1人あたりの持分が細かくなる
民法887条・889条・901条から作成

直系卑属の再代襲には制限がありません(887条3項)。曽祖父名義のまま3代放置すれば、ひ孫の代まで当事者になります。

一方、兄弟姉妹の代襲は甥・姪までで止まります。889条2項が887条2項だけを準用し、3項を準用していないからです。条文を2行読むだけで、当事者の範囲が確定します。

遺産分割協議は相続人全員の合意が要ります。会ったこともない従兄弟の子に連絡を取り、実印と印鑑証明を出してもらう——数次相続の実務は、ほとんどこの作業です。

4. 何代分の登記が必要か

ここは正直に書きます。「中間の相続が単独相続なら中間の登記を省略して最終の相続人へ直接移転できる」という取扱いは実務で広く語られていますが、当サイトは法務省・法務局の公表資料でその要件を確認できませんでした。

確認できたのはここまでです。

  • 法務局は「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)(数次相続)」という様式を公表しています。数次相続を1件の申請で扱う場面が想定されているということです
  • その様式の原因欄には、相続の日付を書く欄が2つ用意されています
  • 登記の目的は「所有権移転」、添付書類は「登記原因証明情報」「住所証明情報」「代理権限証明情報」

結論として、何件の登記になるか(=登録免許税が何回かかるか)は、相続の経過によって変わります。これは費用が数倍変わる論点なので、推測で書きません。法務局の登記手続案内(無料・予約制)か司法書士に、戸籍を持って確認してください。

登録免許税は不動産の価額の0.4%

相続による所有権移転の登録免許税は1000分の4です。課税標準は固定資産課税台帳の価格で、1,000円未満は切捨て(1,000円未満なら1,000円)、税額の100円未満は切捨て(1,000円未満なら1,000円)と法務局が案内しています。

固定資産評価額 登録免許税(1件あたり・0.4%)
500万円 20,000円
1,000万円 40,000円
2,000万円 80,000円
3,000万円 120,000円
法務局「登録免許税の計算」から算出。土地と建物の評価額を合算して計算します。代ごとに登記が必要な場合は、この額が代の数だけかかります。

5. 免税措置——数次相続のためにある条文があります

租税特別措置法84条の2の3です。2つの免税があり、1項がまさに数次相続を想定しています。

第1項 個人が相続により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成三十年四月一日から令和九年三月三十一日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない。

第2項 ……土地について所有権の保存の登記……又は相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、これらの登記に係る……課税標準たる不動産の価額が百万円以下であるときは、これらの登記については、登録免許税を課さない。

1項 2項
対象 相続で土地を取得した人が、登記を受ける前に死亡した場合の中間の登記 価額100万円以下の土地の相続登記・表題部所有者の相続人による保存登記
期間 平成30年4月1日〜令和9年3月31日 移転登記は平成30年11月15日〜、保存登記は令和3年4月1日〜、いずれも令和9年3月31日まで
対象は土地だけ 建物は対象外 建物は対象外
申請書への記載 「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」 「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」
租税特別措置法84条の2の3、法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」から作成

申請書に「非課税」と書かなければ適用されません。法務局は「登記申請書に法令の条項を記載しなければ、免税措置の適用を受けることはできません」と案内しています。

なお、法務局や法務省の資料の中には、期限を「令和7年3月31日まで」、条番号を「84条の2の2」と書いた古いものが残っています。現行の条文は84条の2の3、期限は令和9年3月31日です。

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登記より先に、その実家がいくらになるのかを確かめる

相続人が10人を超える数次相続では、登記費用と戸籍集めの労力が、実家の価値を上回ることがあります。登録免許税は不動産の価額の0.4%。何代分になるかで総額が変わります。そのうえで遺産分割協議には全員の実印が要ります。費用をかけて登記を通す価値があるのかは、実家がいくらになるのかが分からないと判断できません。ラクウルは訳あり物件・空き家・共有持分などを全国で買い取っている会社で、自社買取なので仲介手数料はかかりません。

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売るにしても、相続登記は先に済ませる必要があります(相続人申告登記だけでは売却できません・不動産登記法76条の3)。金額を知ったうえで順番を決めてください。

6. 間に合わないときの「相続人申告登記」

令和6年4月1日から始まった新しい制度です。不動産登記法76条の3。

第1項 前条第一項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、……登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
第2項 前条第一項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、……登記を申請する義務を履行したものとみなす。

相続人申告登記 相続登記
誰がするか 相続人が1人でできる 遺産分割の合意が要る(法定相続分での登記を除く)
登録免許税 不要 不動産の価額の0.4%
登記されるもの 申出人の氏名・住所を職権で付記する 所有権の移転
持分 登記されない 登記される
売却・抵当権設定 できない(別途相続登記が必要) できる
遺産分割が成立したら その日から3年以内に相続登記が必要(不登76条の3第4項) —
不動産登記法76条の3、法務省「相続人申告登記について」、法務省民二第535号通達(令和6年3月15日)から作成

相続人申告登記は「過料を止める」ための制度で、「実家を動かせるようにする」制度ではありません。法務省も「相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、別途、相続登記の申請をする必要があります」と明記しています。

とはいえ、相続人が20人に膨れていて2027年3月31日までに協議がまとまらない、という状況では、これが唯一の現実的な手段です。1人で、無料でできます。

申告登記では、実家は売れません 相続人申告登記 1人でできる 登録免許税は不要 持分は登記されない 売れません 相続登記 分割の合意が要る 価額の0.4% 所有権が移転する 売れます 申告登記は、過料を止めるための制度です

7. 遺産分割にも期限ができました

民法904条の3(令和5年4月1日施行)。

前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。……

「前三条」は特別受益(903条)・904条・寄与分(904条の2)です。10年を過ぎると、これらを主張できず、法定相続分で分けることになります。

祖父の相続は、とっくに10年を過ぎています。そこで経過措置です。改正法附則3条は、「相続開始の時から十年を経過する時又は……施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時まで」と読み替えると定めています。

条文どおりに読めば、すでに10年を過ぎている古い相続でも、施行時(令和5年4月1日)から5年を経過する時までに家庭裁判所へ遺産分割の請求をすれば、なお特別受益・寄与分を主張できます。法務省が「令和◯年◯月◯日まで」という形で示している資料は確認できませんでした。日付が効いてくるなら、必ず専門家に確認してください。

8. 戸籍を集める——広域交付でできること・できないこと

数次相続の実務量の大半は戸籍集めです。令和6年3月1日から広域交付が始まり、本籍地以外の市区町村でも戸籍が取れるようになりました。

広域交付
どこで取れるか 本籍地以外の市区町村の窓口でも取れる
誰が請求できるか 本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母)・直系卑属(子・孫)
兄弟姉妹の戸籍 取れない(戸籍法10条1項の請求に限られるため)
コンピュータ化されていない戸籍・除籍 取れない(対象は「磁気ディスクをもつて調製されている」ものだけ・戸籍法120条の2)
郵送請求 できない
代理人による請求 できない
本人確認 顔写真付きの身分証明書の提示が必要
一部事項証明書・個人事項証明書 対象外
戸籍法10条・120条の2、法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」から作成

祖父・曽祖父の代の手書きの改製原戸籍は、コンピュータ化されていないことが多く、結局その市区町村に請求することになります。兄弟姉妹の戸籍も広域交付では取れません。数次相続でいちばん手間がかかるのが、まさにこの2つです。

広域交付でも、取れないものがあります 本籍地以外の窓口で取る 令和6年3月1日から 取れます 直系尊属・直系卑属の戸籍 本人・配偶者・父母・子や孫 取れます 兄弟姉妹の戸籍 戸籍法10条1項の請求に限られる 取れません 手書きの改製原戸籍 磁気ディスクのものだけが対象 取れません 郵送・代理人による請求 窓口で本人が。顔写真つき身分証 できません 祖父の代の戸籍は、結局その市区町村に請求します
証明書 手数料
戸籍の謄本・抄本 1通450円
除かれた戸籍の謄本・抄本 1通750円
地方公共団体の手数料の標準に関する政令1条8号

法定相続情報一覧図を作っておく

不動産登記規則247条の制度です。登記所に戸籍一式を出すと、相続関係を証明する一覧図の写しを交付してもらえます。申出先は被相続人の本籍地・最後の住所地・申出人の住所地・不動産の所在地のいずれかを管轄する登記所から選べます(同条1項)。

そして同条6項により、提出した戸籍の原本は返却されます。写しは無料で必要枚数を交付してもらえるので、登記・金融機関・税務署の手続を並行して進められます。

9. 相続税——10年以内に相続が重なったら控除があります

数次相続では、相続税がすでに一度かかっていることがあります。そのための制度が相次相続控除(相続税法20条)です。

項目 内容
対象 今回の相続開始前10年以内に、被相続人が相続等で財産を取得し相続税が課されていた場合
控除の考え方 前回の相続税額のうち、1年につき10%の割合で逓減した後の金額を今回の相続税額から控除
受けられない人 相続を放棄した人・相続権を失った人(遺贈で財産を取得しても適用されません)
出典:国税庁タックスアンサー No.4168 相次相続控除(令和7年4月1日現在法令等)。根拠法令等は相法20、相基通20-1・20-3

祖父の相続で相続税を払っていて、その10年以内に父が亡くなっているなら、確認する価値があります。

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相次相続控除まで見てもらう

祖父の相続で相続税を払っていて、その10年以内に父が亡くなっているなら、相次相続控除が使えます(相続税法20条・タックスアンサーNo.4168)。前回の相続税額のうち、1年につき10%の割合で逓減した後の金額を、今回の相続税額から控除します。ただし相続を放棄した人には適用されません。数次相続では被相続人が複数になるので、どの相続に何がかかるのかの整理そのものが仕事になります。ここは相続税を扱う税理士を紹介してもらう窓口で、紹介自体は無料です。

①申し込むと、30日以内に電話またはメールで確認の連絡が来ます。知らない番号でも出てください。ここで内容が確認できないと、税理士の紹介そのものが進みません。
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相続税の申告期限は「知った日の翌日から10か月」です。数次相続では期限が被相続人ごとに別々に走るので、早めに整理してもらってください。

10. 相続人が見つからない・出てこないとき

状況 制度 申立先 費用(申立て時)
所在が分からない相続人がいる 不在者財産管理人(民法25条) 不在者の従来の住所地・居所地の家庭裁判所 収入印紙800円+郵便切手。予納金を求められることがある
生死が7年間不明 失踪宣告(民法30条・31条) 同上 収入印紙800円+郵便切手+官報公告料5,298円
そもそも所有者が分からない土地・建物 所有者不明土地・建物管理命令(民法264条の2〜264条の8) 不動産の所在地の地方裁判所(家裁ではない) 不動産1個につき1,000円+予納郵券6,150円+予納金
土地を手放したい 相続土地国庫帰属制度 法務局 審査手数料 土地一筆14,000円+負担金(原則20万円)
裁判所の各手続案内(不在者財産管理人・失踪宣告)、大阪地方裁判所「所有者不明土地・建物管理命令申立てについてのQ&A」、法務省「相続土地国庫帰属制度」から作成。予納金の額は事案ごとに裁判所が判断します。

国庫帰属は「何十年前の相続でも申請できる」

法務省は「数十年前に相続した土地についても、本制度の対象となります」「令和5年4月27日以前に相続した土地も対象になります」と明記しています。祖父名義のままの土地でも、相続で取得したものであれば申請の入口には立てます。

ただし2つの壁があります。ひとつは却下要件の「建物の存する土地」(同法2条3項1号)——実家が建っている限り申請できません。先に解体が必要です。もうひとつは、共有の場合は共有者全員で共同して申請する必要があること(同法2条2項)。相続人が膨れた数次相続では、これが相続登記と同じ壁になります。

2027年3月31日までに、最低限これだけは

①登記事項証明書を取って、名義が誰で止まっているかを確定させる。②被相続人ごとに戸籍を集めて、相続人が何人いるかを数える。③人数が多くて協議がまとまりそうにないなら、相続人申告登記を1人で申し出て、過料だけ止める(不動産登記法76条の3)。④そのうえで、実家をどうするかを決める。③は無料で、1人でできます。

よくある質問

Q. 祖父名義のままの実家も、相続登記の義務の対象ですか?

対象です。改正法附則5条6項が、不動産登記法76条の2を施行日前に開始した相続にも適用すると定め、起算点を「知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日」に読み替えています。法務省は「令和9年3月31日まで」と案内しています。

Q. 登記しないと本当に過料が来ますか?

「正当な理由がないのに」怠った場合に10万円以下の過料です(不動産登記法164条1項)。法務省は運用について、登記官が催告書を送り、それでも登記されなければ裁判所へ通知し、裁判所が要件を判断して過料の裁判をすると説明しています。いきなり請求書が届く仕組みではありません。

Q. 相続人が20人います。どうすればいいですか?

まず相続人申告登記で過料を止めてください(不動産登記法76条の3)。相続人が1人で申し出ることができ、登録免許税もかかりません。これで申請義務を履行したものとみなされます。ただし持分は登記されず、売却や抵当権設定はできません。遺産分割が成立したら、その日から3年以内に相続登記が必要です(同条4項)。

Q. 相続人申告登記をすれば、実家を売れますか?

売れません。法務省は「不動産についての権利関係を公示するものではないため、相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、別途、相続登記の申請をする必要があります」と明記しています。申告登記は過料を止めるための制度です。

Q. 何代分の登記が必要ですか?費用は何倍になりますか?

当サイトでは断定できませんでした。法務局は「数次相続」用の申請書様式を公表しており、原因欄には相続の日付を書く欄が2つ用意されています。ただし「中間の相続が単独相続なら中間の登記を省略できる」という要件そのものを示した法務省・法務局の公表資料を確認できませんでした。費用が数倍変わる論点なので、法務局の登記手続案内(無料・予約制)か司法書士に戸籍を持って確認してください。

Q. 登録免許税はいくらですか?

不動産の価額の1000分の4(0.4%)です。課税標準は固定資産課税台帳の価格で、1,000円未満は切捨て(1,000円未満なら1,000円)、税額の100円未満も切捨て(1,000円未満なら1,000円)です。評価額1,000万円なら40,000円です。

Q. 登録免許税が免除される場合があると聞きました。

租税特別措置法84条の2の3に2つの免税があります。①相続で土地を取得した人が登記を受ける前に亡くなった場合の、その中間の登記(1項)。②不動産の価額が100万円以下の土地の相続登記・保存登記(2項)。どちらも令和9年3月31日まで、対象は土地だけで建物は入りません。申請書に「租税特別措置法第84条の2の3第○項により非課税」と書かないと適用されません。

Q. 遺産分割に期限があるというのは本当ですか?

本当です。民法904条の3が、相続開始から10年を過ぎた後の遺産分割には特別受益(903条)・904条・寄与分(904条の2)を適用しないと定めています(令和5年4月1日施行)。すでに10年を過ぎている古い相続については、改正法附則3条が「相続開始から十年を経過する時又は施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時まで」と読み替えています。日付が効いてくるなら専門家に確認してください。

Q. 戸籍は広域交付で全部取れますか?

取れません。広域交付の対象は「磁気ディスクをもつて調製されている」戸籍・除籍だけです(戸籍法120条の2)。祖父・曽祖父の代の手書きの改製原戸籍は対象外で、その市区町村に請求することになります。また請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属に限られるので、兄弟姉妹の戸籍は取れません。郵送も代理人もできず、窓口に本人が行く必要があります。

Q. 相続人が行方不明です。

不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てます(民法25条)。申立先は不在者の従来の住所地・居所地の家庭裁判所で、収入印紙800円と郵便切手のほか、管理費用が不足するおそれがある場合は予納金を求められます。生死が7年間不明なら失踪宣告(民法30条)という選択肢もあり、こちらは官報公告料5,298円がかかります。

Q. 土地を国に引き取ってもらえますか?

何十年前の相続で取得した土地でも申請できます。法務省は「数十年前に相続した土地についても、本制度の対象となります」と明記しています。ただし「建物の存する土地」は却下されるので、実家が建っている限り申請できません(同法2条3項1号)。共有の場合は共有者全員での申請が必要です(同条2項)。審査手数料は土地一筆14,000円、負担金は原則20万円です。

この記事で確認できなかったこと

  • 中間省略登記の要件そのもの。「中間の相続が単独相続であるときは中間の登記を省略できる」という取扱いを明示した法務省・法務局の公表資料、通達、先例の本文を確認できませんでした。遺産分割・相続放棄・特別受益証明の結果として中間が1人になった場合が含まれるかどうかも同様です。
  • 民法904条の3の経過措置について、法務省が「令和◯年◯月◯日まで」と示している公表文言。改正法附則3条の条文(「施行の時から五年を経過する時」)は確認しましたが、法務省側の日付の明示は見つけられませんでした。
  • 平成29年度(22.2%)より新しい年度の、所有者不明土地の割合。国土交通省のサイトで令和年度の数値を確認できませんでした。
  • 改製原戸籍の手数料750円の条文上の根拠。地方公共団体の手数料の標準に関する政令1条8号は「戸籍の謄本・抄本450円」「除かれた戸籍の謄本・抄本750円」までしか定めておらず、改製原戸籍がどちらに含まれるかの文言は確認できませんでした。
  • 相続土地国庫帰属制度の負担金の、面積による算定式の具体的な数値。原則20万円までは確認しました。
  • 法定相続情報一覧図を被相続人ごとに作成するのかどうか。不動産登記規則247条の条文構造からの読み取りにとどまり、法務局の明示的な記載は確認していません。

まとめ

  1. ★祖父名義のままの実家も相続登記の義務の対象で、期限は2027年3月31日です。改正法附則5条6項が施行日前の相続にも適用すると定めています。過料は10万円以下(不動産登記法164条1項)。
  2. 2026年4月1日からは住所変更登記も義務になります(不動産登記法76条の5・2年以内・過料5万円以下)。
  3. 登記簿上で所有者の所在が確認できない土地は20.1%、その66.7%が相続登記の未了です(国土交通省・平成28年度地籍調査)。
  4. 直系卑属の代襲相続には世代の制限がありません(民法887条3項)。兄弟姉妹の代襲は甥・姪までで止まります(889条2項が887条3項を準用していないため)。
  5. 登録免許税は不動産の価額の0.4%。何件の登記になるかで総額が変わりますが、中間省略の要件は当サイトでは確認できませんでした。法務局の登記手続案内か司法書士に確認してください。
  6. ★数次相続のための免税措置があります(租税特別措置法84条の2の3第1項)。令和9年3月31日まで、土地のみ。申請書に条項を書かないと適用されません。
  7. 間に合わないなら相続人申告登記です(不動産登記法76条の3)。1人で、無料でできて、申請義務を果たしたものとみなされます。ただし持分は登記されず、売却はできません。
  8. 遺産分割にも10年の期限ができました(民法904条の3)。古い相続には、施行時から5年という経過措置が置かれています(改正法附則3条)。
  9. 広域交付では、コンピュータ化されていない戸籍と兄弟姉妹の戸籍が取れません(戸籍法120条の2・10条1項)。数次相続でいちばん手間がかかるのが、まさにこの2つです。
  10. 国庫帰属は何十年前の相続でも申請できますが、建物が建っていると却下されます(同法2条3項1号)。共有なら全員での申請が必要です。

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