空き家を放置するとどうなる|行政の実績データで見る、本当のリスク

【PR】本ページはプロモーションを含みます


最終更新:2026年8月16日

結論だけ先に

  • 代執行は約4,400戸に1件。 確率で脅すのは誠実ではない
  • 本当の実害は「勧告」。 勧告の時点で住宅用地特例が外れる。累計4,531件で代執行の5倍
  • 「固定資産税6倍」は不正確。 実務上は概ね3〜4倍。それでも年10万円以上の増加

根拠と出典は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

「放置すると代執行で壊される」は、正確ではありません

壊されはしません。代執行は法施行から10年間の累計で890件。放置されやすい空き家385万6千戸に対して、およそ4,400戸に1件です。確率で脅す記事は、この数字を出していません。

空き家の記事を読むと、たいてい行政代執行の話が出てきます。「放置すると行政に強制的に解体され、費用を請求されます」と。

数字で確認しましょう。

国土交通省が公表している空家法の施行状況(令和7年3月31日時点)によると、平成27年度の法施行から令和6年度末までの累計は、

措置 累計件数
行政代執行 286件
略式代執行 592件
緊急代執行(2023年新設) 12件
代執行 合計 890件

出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(令和7年3月31日時点)

一方、放置されやすい「その他空き家」は385万6千戸(令和5年住宅・土地統計調査)。

約4,400戸に1件。 10年間の累計で、この割合です。

だから「代執行が怖いから片付けましょう」は、誠実な説得ではありません。 確率で言えば、まず当たりません。

では、本当のリスクはどこにあるのか。3つあります。


リスク① 勧告を受けると、税金が上がる(これが実害の本丸)

壊されるより先に、税金が上がります。「命令」でも「代執行」でもなく、その手前の「勧告」を受けた時点で住宅用地特例が外れます。

代執行より、はるかに手前で、はるかに高い確率で起きるのがこれです。

「勧告」の時点で、住宅用地特例が外れます

命令でも代執行でもありません。勧告の段階です。

市区町村長から勧告を受けた特定空家等・管理不全空家等の敷地は、住宅用地特例の適用対象から除外される

出典:国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」

そして勧告の累計件数は、

累計
特定空家等への勧告 4,153 件
管理不全空家等への勧告 378 件
合計 4,531 件

代執行890件の5倍です。しかも勧告は、命令や代執行のような重い手続きを経ずに出せます。

実際に多いのは、代執行ではなく勧告 特定空家等への勧告 4,153件 略式代執行 592件 管理不全空家等への勧告 378件 行政代執行 286件 緊急代執行 12件 空家法の施行から令和6年度末までの累計(国交省)

「固定資産税が6倍になる」は不正確です

よく見る「6倍」は、税額の合計の話ではありません

6倍になるのは土地の固定資産税の課税標準だけです。都市計画税は2倍にとどまるので、総額での実務上の増加は概ね3〜4倍です。

正確にはこうです。

特例あり 特例なし 倍率
固定資産税(小規模住宅用地・200㎡以下) 課税標準 1/6 1/1 6倍
都市計画税(同上) 課税標準 1/3 2/3 2倍
家屋分(建物を解体した場合) 課税あり ゼロ —

出典:総務省「固定資産税の概要」

つまり——

  • 「6倍」が正しい部分:土地の固定資産税だけです
  • 都市計画税:2倍にとどまります
  • 家屋分:建物を残したまま勧告を受けた場合、家屋分の税金はそのまま残ります
  • 緩和措置:課税標準額の急上昇を緩和する負担調整措置が働く場合もあります
「6倍」は土地の固定資産税だけです 土地の固定資産税 6倍 都市計画税 2倍 家屋分(建物を残した場合) 1倍 税額の合計では概ね3〜4倍。家屋分は変わりません

年5万円が年15〜20万円になるイメージです。6倍ではありません。でも、年10万円以上の増加が毎年続くことに変わりはありません。


放置を続けたときの費用と、いま売った場合の手取りを、並べて比べてください。維持費と税は毎年出ていきますが、売却額は1回きりの数字です。どちらが大きいかは、金額を出さないと分かりません。査定は無料で、出したあとに売らなくても費用はかかりません。

先に場所を確認してください。不動産SHOPナカジツが受け付けられるのは愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本とその周辺だけです(全40店舗のうち39店舗がこの7県。同社の店舗一覧で確認/2026年8月19日)。それ以外の道府県にある実家は、申し込んでも査定は返ってきません。対象外の方は、ラクウルの買取査定のほうをご覧ください。

PR

愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本の実家なら、もう1社あります

不動産SHOPナカジツは、40店舗すべてを直営で運営している会社です。そのうち39店舗が、上の表の7県にあります(残る1店舗は東京都小平市ですが、査定の受付エリアに東京は入っていません)。ノムコムが対応していない岐阜・静岡・福岡・熊本と、名古屋市以外の愛知県は、こちらなら受け付けられます。仲介・買取・買取保証付き仲介・任意売却・リースバックの5つの売り方を自社で扱っているので、「囲い込まれても困らない売り方があるか」を、契約の前に1社の中で聞けます。

申し込む前に、4つだけ確認してください。①対応しているのは上の表の市区町村とその周辺だけです。県が合っていても、店舗から遠い地域は受け付けられないことがあります。②申し込むと30日以内に電話またはメールで連絡が入り、物件の状況を聞かれます。所在地・築年数・間取りを答えられるようにしておくと早く終わります。③申し込めるのは名義人か、そのご親族だけです。相続した実家なら、相続人であるあなたが申し込めます。名義人と関係のない方からの問い合わせは受け付けられません。④売却を考えていない相談は対象外です。迷っている段階なら「まだ決めていませんが、金額を知りたい」と伝えてください。

不動産SHOPナカジツに無料査定を依頼する(愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本)

査定を出したあとは、媒介契約の種類を決める段階です。この記事で書いたレインズの登録証明書の確認と、仲介と買取の違いを、契約書に判を押す前に済ませておいてください。

【PR】

毎年10万円以上を、あと何年払うのか。それは「いつ手放すか」で決まります

ここまでで、放置し続けたときに出ていく額は見えました。それでも判断がつかないとしたら、片方の数字しか持っていないからです。いくらで手放せるのかが分かって初めて、「持ち続ける」の値段と比べられます。

先に断っておきます。買取は、仲介で売れた場合より手取りが下がります。それでも見る価値があるのは、比較対象の数字が手に入るからです。運営は株式会社ネクサスプロパティマネジメント(宅地建物取引業免許:国土交通大臣(1)第10311号)。同社は「個人情報の入力は不要、匿名のまま利用でき、営業電話もありません」という匿名のAI査定も公開しています(入力3項目・最短30秒/2026年6月20日 同社発表)。まだ売ると決めていない段階なら、まず匿名のほうで桁だけ確かめてください。ただし匿名で出るのは機械的な概算です。実際の金額を知るには、連絡先を入れて査定を申し込む必要があります(申し込めば担当者から連絡が来ます)。

ラクウルで買取価格を出してもらう(無料)

売ると決めてから調べるものではありません。決めるために調べるものです。年間の維持費は空き家の維持費を実額で積み上げた記事にまとめました。

リスク② 「管理不全空家」が、いま急増しています

2023年12月の法改正で、まだ壊れていなくても勧告の対象になりました。指導3,211件のうち79.3%、勧告378件の100%が、直近1年に集中しています。

2023年12月13日、空家法が改正され「管理不全空家等」という新しい区分ができました。

何が変わったのか

改正前は、「特定空家等」——つまり倒壊の危険があるなど、すでに深刻な状態になってから初めて行政が動く仕組みでした。

改正後は、「そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある状態」の段階で、行政が指導・勧告できるようになりました。

つまり、まだ壊れていなくても、対象になります。

数字を見てください

措置 累計 うち令和6年度 直近1年の割合
管理不全空家等への指導 3,211件 2,545件 79.3%
管理不全空家等への勧告 378件 378件 100%

出典:国土交通省(令和7年3月31日時点)

管理不全空家は、直近1年に集中しています 指導 累計 3,211件 うち令和6年度 2,545件 79.3% 勧告 累計 378件 うち令和6年度 378件 100% 制度は2023年12月開始。国交省の令和7年3月31日時点

累計の79%が、直近1年に集中しています。 勧告にいたっては、378件すべてが令和6年度です。

制度が始まったのが2023年12月なので当然ではありますが、これは「本格運用が始まった」ことを意味します。

さらに、措置によって除却・改善された管理不全空家等の件数は、

前年度末 1,220件 → 令和6年度末 3,757件(3.1倍)

行政は、明確に動き始めています。 「今まで何も言われていないから大丈夫」という判断は、これから外れていきます。

どんな状態だと対象になるのか

管理不全空家等の判断は市区町村が行いますが、一般に指摘されるのは次のような状態です。

  • 窓ガラスが割れている、雨戸が外れている
  • 屋根材・外壁材が剥離している
  • 雑草が繁茂して敷地外にはみ出している
  • 樹木が越境している
  • ゴミが不法投棄されている
  • 郵便物が溢れている

遠方の実家で、年に1〜2回しか行けない場合、数年でこの状態になります。


リスク③ 倒壊して人を傷つけたら、無過失で責任を負います

金額のインパクトが最も大きいのはこれです。空き家には占有者がいないので所有者が責任を負い、所有者の責任には免責の規定がありません。

金額のインパクトが最も大きいのは、実はこれです。

民法717条は「土地の工作物」の設置・保存に瑕疵があって他人に損害を与えた場合の責任を定めています。この条文の構造は、

  1. 第一次的には占有者が責任を負う(ただし損害の防止に必要な注意をしていたときは免責)
  2. 占有者が免責される場合、または占有者がいない場合は、所有者が責任を負う
  3. 所有者の責任には、免責の規定がありません

空き家には占有者がいません。 したがって、瓦が飛んで通行人に当たった、ブロック塀が倒れて隣家の車を壊した、建物が倒壊して隣家を損壊した——こうした場合、所有者が無過失責任を負うというのが一般的な解釈です。

空き家には占有者がいません(民法717条) その空き家に占有者はいますか はい 占有者が第一次責任 注意していれば免責 いいえ 所有者が責任を負う 免責の規定がない

「知らなかった」「遠方で管理できなかった」は抗弁になりません。

※民法717条の解釈については、必ず弁護士にご確認ください。当サイトは一般的な情報提供を行うものです。

火災保険が使えないことがあります

空き家は「住宅物件」ではなく「一般物件」として扱われ、保険料が高くなるか、そもそも引き受けを断られることがあります。相続後に名義変更を忘れて保険が失効しているケースも実際にあります。

賠償責任のリスクを考えると、空き家であっても保険は絶対に切らないでください。


正直に書きます:統計がない話もあります

空き家の火災と防犯について、公的な統計は見つかりませんでした。件数を書けないので書きません。ここは強調もしません。

空き家の記事でよく見る「火災リスク」「防犯リスク」について、公的な統計を探しましたが、見つかりませんでした。

  • 消防庁の消防白書には、建物火災の用途別内訳(住宅・共同住宅・工場・事務所など)はありますが、「空き家」を独立した区分とした火災件数の統計はありません
  • 警察庁は侵入窃盗の発生場所別認知件数を公表していますが、「空き家」単独の統計は確認できませんでした

出典:総務省消防庁「令和6年版 消防白書」/警察庁

警察庁は、空き家が特殊詐欺や薬物密輸の拠点に悪用される事案への注意喚起を行っていますが、これは事例的な注意喚起であって統計ではありません。

「空き家は火災が◯倍」といった数字を見かけたら、出典を確認してください。 公的統計に基づいていない可能性があります。

当サイトは、根拠のない数字で不安を煽ることはしません。


放置している間に出ていくお金

行政処分が何も来なくても、毎年お金は出ていきます。年10〜21万円、10年で100〜210万円。その間に建物の価値はゼロに近づき、解体費は上がります。

行政処分がなくても、毎年これだけ出ていきます。

費目 年間の目安
固定資産税・都市計画税(住宅用地特例あり) 4〜8万円
火災保険(空き家料率) 2〜5万円
最低限の管理(草刈り・見回り 年4回) 3〜6万円
水道・電気の基本料金 1〜2万円
合計 年10〜21万円

10年で100〜210万円。そして勧告を受ければ、ここに年10万円以上が上乗せされます。

さらに、その間に建物の価値はゼロに近づき、解体費は上がっていきます。


「所有者不明」になると、もっと悪い

所有者を特定できずに行う略式代執行は592件で、所有者が分かっている行政代執行286件の2.1倍。放置の本当の行き先は、次の世代です。

代執行の内訳を、もう一度見てください。

累計
行政代執行(所有者が判明している) 286件
略式代執行(所有者を特定できない) 592件

所有者不明のケースが、2.1倍多いのです。

これは、空き家問題の本質を示しています。放置された空き家は、相続が繰り返されるうちに所有者が分からなくなる。 相続人が10人、20人と増え、誰も名乗り出ず、最終的に自治体が公費で解体する。

総務省の行政評価局が実施した調査(平成31年1月・2023年改正前)では、除却費用の全額を自治体が負担する例が多数あり、費用回収が困難になっていると指摘されています。

出典:総務省「空き家対策に関する実態調査 結果報告書」

※国交省・総務省の資料を確認した限り、代執行費用の総額と所有者からの回収率を示した統計は公表されていません。

あなたが今動かなければ、この問題はあなたの子や孫に渡ります。 そして関係者が増えるほど、解決は難しくなります。

→ 相続登記の義務化|3年以内にやるべきこと全手順


では、どうすればいいか

管理は解決ではなく、問題を先送りするための費用です。どこかで出口を決める必要があり、その期限が2027年に集中しています。

最小限:管理する

  • 月1回の通風・通水(建物の劣化を大幅に遅らせます)
  • 郵便物の転送手続き
  • 年2〜4回の草刈り
  • 火災保険の継続(名義変更を忘れずに)

遠方で行けない場合は、空き家管理代行サービスがあります。月5,000〜10,000円程度が相場帯です。

でも、管理は解決ではありません

管理は、問題を先送りするための費用です。年10万円払っても、建物は古くなり、解体費は上がり、相続人は増えていきます。

どこかで出口を決める必要があります。

そして——出口を決めるための期限が、実は迫っています。

期限 内容
2027年3月31日 施行前に相続した不動産の登記義務の猶予期限
2027年3月31日 相続登記の登録免許税の免税措置(土地)
2027年12月31日 空き家の3,000万円特別控除の適用期限

3,000万円控除を逃すと、譲渡所得税で最大609万円の差が出ます。そして一度でも人に貸すと、この控除は使えなくなります。

→ 空き家の3,000万円特別控除|要件チェックリストと判定ツール
→ 相続した実家は売る・貸す・持ち続ける?損益分岐を年数で出す完全比較


【PR】タウンライフ

「貸す」を選ぶ前に、貸したらいくらになるのかを見ておく

3,000万円控除を捨ててまで貸す価値があるのかは、貸したときの金額が分からないと決められません。タウンライフの空き家解決は、空き家の売却・活用の提案書を複数社から無料で取り寄せられるサービスです(同社の説明)。当サイトは、あなたの地域に何社いるかを確認していません。

①一括で複数社に依頼する形です。1社だけ選ぶと提案書は届きません。成果条件がそう決められています。
②地域や物件の条件によっては、提案できる会社が見つからないことがあります。その場合は提案書が届きません。
③届くのは「提案書」であって、売れる価格でも確定した金額でもありません。
④申し込むと、各社から連絡が入ります。連絡の受け方を先に決めておいてください。
⑤すでに方針が決まっているなら、請求しなくてかまいません。迷っている段階の材料です。

複数社にまとめて空き家の提案書を請求する(無料)

壊す場合の費用は実家の解体費用と全国の解体補助金一覧で、税金の側は空き家の3,000万円特別控除で確認できます。持ち続ける場合の年額は空き家の維持費にまとめました。

今週できること(すべて無料です)

判断は急がなくていいのですが、材料集めは無料で今週できます。補助金は着工前に申請しないと1円も出ません。

① 期限を確認する(5分)
相続開始日と、家屋の建築時期(昭和56年5月31日以前かどうか)。この2つで、あなたに残された選択肢が決まります。

② 売った場合の手取りを知る(1週間)
「売る」と決めるためではなく、「売らない」と決めるためにも必要な数字です。
→ 不動産一括査定サイト おすすめ比較ランキング

③ 解体費と補助金を確認する(1週間)
補助金は着工前に申請しないと1円も出ません。 自治体で最大28倍の差があります。
→ あなたの市区町村の空き家解体補助金を調べる

④ 活用した場合の収支を知る(1週間)
→ 土地活用プラン一括請求サービス徹底比較

判断は急がなくて構いません。でも、材料を集めるのは今すぐやってください。 ①〜④で1ヶ月、期限までは1年以上あります。


放置をやめると決めたとき、補助金が使えるか

解体費に補助を出している自治体は全国394自治体のうち256自治体あります(空き家名目のもの)。放置を続けるコストと、いま動いた場合に戻ってくる額を並べて比べてください。

自治体上限額
北海道札幌市850万円
岡山県岡山市(地域活性化除却)200万円
東京都墨田区最大200万円
東京都板橋区200万円
秋田県大仙市危険型200万円/迷惑型100万円/…
兵庫県たつの市160万円(市税条例第24条第1項に…
兵庫県丹波市160万円(判定100点以上。50点…
愛媛県松山市160万円
香川県三豊市160万円
北海道札幌市(地域連携型)150万円
東京都杉並区150万円
山形県米沢市市町村民税所得割が非課税なら最大12…

該当は全部で256自治体です。全国の一覧表で実家のある市区町村を確認してください。

ほとんどの自治体で交付決定より前に工事を契約すると対象外になります。業者に見積りを頼む前に、市役所へ電話するのが正しい順番です。

よくある質問

ここは「どこに電話して、何と言うか」まで書きます。空き家の相談は、担当課の名前が自治体ごとにバラバラで、そこで止まってしまう人が多いからです。

Q. 今まで何も言われていません。このままで大丈夫でしょうか。

A. 「今まで何もなかった」は、これからの根拠になりません。制度が本格的に動き出したのが、ついこの前だからです。

措置 累計 うち令和6年度 直近1年の割合
管理不全空家等への指導 3,211件 2,545件 79.3%
管理不全空家等への勧告 378件 378件 100%

出典:国土交通省(令和7年3月31日時点)。勧告378件は、1件残らず令和6年度に出ています。

自分の家が今どの段階にいるかは、電話1本で確かめられます

所有者本人なら、聞けば教えてもらえます。難しいのは、担当課の名前が自治体によって違うことです。「空き家対策課」「住宅政策課」「建築指導課」「環境課」「防災課」——実際にこれだけ割れます。

やること
1 市区町村の公式サイトで「空き家」だけを検索する。「空家等対策計画」というPDFが出てくるので、その末尾か表紙を見る。担当課名と直通番号がほぼ必ず書かれています
2 見つからなければ代表番号に電話して「空家等対策特別措置法の担当課につないでください」と言う。法律の名前を出すと、たらい回しが一段減ります
3 担当課に、そのまま読み上げてください。
「◯◯町◯丁目◯番の家の所有者(相続人)です。この家について、助言・指導や勧告の対象になっていないか教えてください。あわせて、そちらの市で空家等・管理不全空家等をどう判断しているかも知りたいです」

言いにくいと感じるかもしれませんが、通報ではありません。所有者が自分から相談してきた案件として扱われます。先に相談した人のほうが、選べる手が多く残っています。

Q. 「助言・指導」「勧告」「命令」「代執行」は、何がどう違うのですか。

A. ここが、この問題でいちばん誤解されている部分です。条文を開いて確かめたので、そのまま並べます。

段階 特定空家等(22条) 管理不全空家等(13条)
助言・指導 1項 1項(「指導」)
勧告 2項 2項
命令 3項 ありません
代執行 あり ありません
罰則 命令違反は50万円以下の過料(30条1項) ありません

出典:空家等対策の推進に関する特別措置法 13条・22条・30条(e-Gov法令検索で条文を確認/2026年8月16日)

ここが本題です

管理不全空家等には、命令も代執行もありません。指導と勧告の2段階だけです。つまり「壊されはしない」。そう聞くと安心しそうになりますが、逆です。

住宅用地の特例を定めた地方税法349条の3の2は、その定義から「13条2項により勧告された管理不全空家等」の敷地を除外しています。命令も代執行も無い区分なのに、勧告だけで税金は上がる。これが、この制度のいちばん実害が出るところです。

そして条文は「勧告」と書いています。助言・指導では外れません。逆に言えば、指導の通知が来た時点が、いちばん安く済む分かれ道です。

Q. 勧告を受けると、税金はいつから上がるのですか。

A. 「1月1日にどうだったか」だけで決まります。地方税法359条が「固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とする」と定めているからです。

状況 その年度の税額
1月1日の時点で勧告が生きている その年度は特例なし(上がる)
12月中に改善して勧告が撤回された 翌年度は特例が戻る
1月10日に改善して撤回された その年度はまるまる1年ぶん高いまま

数週間の差で、1年ぶんの税額が変わります。「年明けにやろう」がいちばん高くつく制度設計になっています。秋に指導や勧告の通知が来たら、年内に動いてください。

Q. 勧告を受けたら、もう取り消せませんか。

A. 諦めないでください。まず勧告書そのものを読み直すところからです。

22条2項は、市町村長が「相当の猶予期限を付けて」必要な措置をとることを勧告する、と定めています。つまり勧告書には「何を」「いつまでに」やるかが書かれているはずです。そこが、そのまま原状回復のチェックリストになります。

勧告の原因になった状態を改善すれば、勧告を撤回して住宅用地特例を戻す運用をしている自治体があります。全国一律の手続きではないので、担当課に「改善したら勧告は撤回されますか。撤回された場合、住宅用地特例はいつの年度から戻りますか」と、この2つをセットで聞いてください。

いちばん損なのは、何もしないことです。税額は毎年かかり続け、建物はさらに傷み、次は命令(特定空家等の場合)が視野に入ります。

Q. 誰も住んでいませんが、荷物は置いたままです。これは空き家になりますか。

A. 荷物を置いているだけでは、通常「使用している」とは扱われません。空家法2条1項の条文はこうです。

建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地

出典:空家等対策の推進に関する特別措置法 2条1項(2026年8月16日確認)

条文が問うているのは「人が使っているか」であって、「物が置いてあるか」ではありません。倉庫代わりに家財を残していても、人の出入りが実質的に無ければ、空家等と判断され得ます。

ただし、最終的に判断するのは市区町村です

「常態」が具体的に何か月なのかは、法律には書かれていません。自治体の空家等対策計画や実務要領で基準を示していることが多いので、担当課に電話するとき(このFAQのいちばん最初の質問に文例があります)に、「そちらでは何を基準に判断していますか」まで一緒に聞いてください。電気・水道の使用実績を参考にする自治体もあります。

Q. 建物を解体すれば、税金の問題は解決しますか。

A. 解決しません。更地にしても住宅用地の特例は外れます。特例は「住宅が建っているか」で決まるので、壊せば当然に対象から外れます。

ただし勧告を受けた場合と、更地にした場合では、増え方が違います。

土地 建物
勧告を受けた(建物は残る) 特例が外れる 家屋分の課税は残る
解体して更地にした 特例が外れる 家屋分はゼロになる

どちらが総額で高くつくかは、土地と建物の評価額の比率で変わります。倍率の計算は解体すると固定資産税は6倍になるのかで、実際に何倍になるかを出しました。

解体を考えるなら、その前に必ず1つ確認してください

再建築ができる土地かどうかです。前面道路の幅や接道の長さによっては、いま建っている建物を壊すと二度と建てられません。これを確かめずに壊すと、取り返しがつきません。調べ方は古家付きで売るか、更地にして売るかにまとめました。

Q. 隣の家から「木の枝がうちに越えている」と言われました。放っておいて大丈夫ですか。

A. 大丈夫ではありません。2023年4月から、隣の人が自分で切れるようになりました。

改正後の民法233条は、こう定めています。

条文 内容
1項 枝が境界線を越えるときは、竹木の所有者に切除させることができる
3項1号 切除するよう催告したのに、相当の期間内に切らないときは、土地の所有者が自ら切り取れる
3項2号 竹木の所有者が誰か分からない、または所在が分からないときも同じ
4項 根が境界線を越えるときは、催告なしで切り取れる

出典:民法233条(e-Gov法令検索で条文を確認/2026年8月16日)。枝は「催告してから」、根は「いきなり」。この差が条文に書き分けられています。

費用を誰が負担するかは、条文には書かれていません。ただしもともと枝を切る義務があるのは竹木の所有者(あなた)なので、費用を請求される可能性は十分あります。

そして、越境した樹木は行政の指摘事項でもあります

「樹木が越境している」「雑草が敷地外にはみ出している」は、管理不全空家等として指摘される典型例です。つまり隣人トラブルと税額の話が、同じ1本の木でつながっています。

遠方で自分では切れない場合は、造園業者かシルバー人材センターに年2回頼むのが現実的です。空き家の維持費で、シルバー人材センターが公表している実際の料金表を載せています。

Q. 遠方で、年に1〜2回しか行けません。最低限、何をすればいいですか。

A. 優先順位をつけます。上から順に、これだけはやってください。

やること なぜ最優先か
1 火災保険を切らない。そして相続で名義が変わったことを保険会社に伝える 空き家の所有者は、瓦の落下や倒壊で人に損害を与えたとき、免責規定のない責任を負い得ます(民法717条)。名義変更を忘れたまま事故が起きると、支払いで揉めます
2 郵便物を自宅に転送する(郵便局の「e転居」はオンラインで無料。転送は1年間で、期限が来たら再度の届出が必要) あふれた郵便受けは「無人」の合図です。行政の指摘事項でもあり、不法投棄や不審者を呼びます
3 雑草と越境した枝を、年2回は片づける 隣家とのトラブルにも、行政の指摘事項にも直結します
4 近所の方に連絡先を渡しておく 倒壊・雨漏り・不審者に最初に気づくのは隣の人です。年1回しか行けないなら、ここが実質的な監視網になります
5 通風・通水(できる範囲で) 建物の傷みを遅らせます。通水は排水口の封水を保ち、臭気と害虫を防ぐ意味もあります

1〜4は、行かなくてもできます。どうしても手が回らないときの外注費は、空き家の維持費に各社の公表料金をそのまま並べました(屋外だけか室内に入るかで、価格が2倍違います)。

Q. 兄弟の共有名義です。1人で動けますか。

A. できることと、できないことがはっきり分かれます。

1人でできる 全員の同意が要る
査定を取って金額を知る 売却(共有物の処分にあたるため、共有者全員の同意が必要というのが一般的な解釈です)

解体(建物を無くす行為なので、同じく慎重な扱いになります)

自治体の補助金や担当課への確認
草刈り・見回りなど現状を保つ管理
登記事項証明書を取って持分を確認する

先に金額を出しておくことに、意味があります

共有の話し合いが動かない理由は、たいてい「金額が無いから」です。「売ろう」だけでは決まりませんが、「いま売ると◯◯万円で、1人あたり◯◯万円になる」という数字が出ると、話が具体的になります。その数字を取ってくるところまでは、あなた1人でできます。

そして、時間は味方をしません。共有者の誰かが亡くなれば、その持分はさらに複数の相続人に分かれます。放置された空き家の代執行が、所有者を特定できない「略式代執行」のほうが2倍多いのは、この連鎖の結果です。共有名義のまま止まっている場合の進め方は仲介と買取の違いの共有持分の項にまとめました。

Q. 結局、今週なにをすればいいですか。

A. お金のかからないものだけを、この順で並べます。決めるのは、あとで構いません。

やること かかる時間
1 相続の開始日と、家の建築時期(昭和56年5月31日以前かどうか)を確認する。登記事項証明書か、固定資産税の課税明細書で分かります 5分
2 担当課に電話して、いまの段階を確認する(このFAQのいちばん最初の質問に文例があります) 15分
3 火災保険の名義と、空き家である旨を保険会社に伝える 15分
4 売った場合の金額を調べる。「売る」と決めるためではなく、「売らない」と決めるためにも要ります 1週間
5 解体費と、お住まいの自治体の補助金を確認する(補助金は着工前に申請しないと1円も出ません) 1週間

1と2だけでも、今日中に終わります。この2つで、あなたに残されている選択肢と期限がほぼ決まります。

売る・貸す・持ち続けるを比べるまず売れる金額を自分で調べる自治体の解体補助金を調べる


まとめ

  1. 代執行は約4,400戸に1件。 確率で脅すのは誠実ではない
  2. 本当の実害は「勧告」。 勧告の時点で住宅用地特例が外れる。累計4,531件で代執行の5倍
  3. 「固定資産税6倍」は不正確。 実務上は概ね3〜4倍。それでも年10万円以上の増加
  4. 管理不全空家への指導が急増中。 累計の79%が直近1年
  5. 倒壊して人を傷つければ、所有者が無過失責任を負う(民法717条)
  6. 空き家の火災・防犯に特化した公的統計は存在しない。 出典のない数字に注意
  7. 所有者不明の略式代執行が、行政代執行の2.1倍。 放置は次世代に渡る
  8. 2027年に期限が集中している。 判断は急がなくていいが、材料集めは今すぐ

あわせて読みたい

空き家の行政代執行|壊されても費用は所有者が払います——全国890件の実態と、150万〜850万円という請求額。国税滞納処分の例により強制徴収されます。

空き家の瓦が落ちて人にあたったら、賠償するのは所有者です——民法717条には「知らなかった」という逃げ道がありません。庭木も対象です。

お住まいの自治体で調べる