相続人がいない人の家はどうなるか|特別縁故者は、自分で申し立てて予納金を納めるところから始まります

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叔父が亡くなった。子も親も兄弟もいない。十数年、身の回りの世話をしてきたのは自分だった。あの家はどうなるのか——。

結論から言うと、放っておけば国のものになります。そして、「世話をしてきた人がいるから自動的にその人にいく」という仕組みではありません。

特別縁故者への財産分与は、家庭裁判所が「相当と認めるとき」にできる、と条文に書かれています。請求できる期間は、ある公告が終わってから3か月だけ。そこを1日でも過ぎると、権利は消えます。しかもその公告は、誰かが家庭裁判所に申立てをしないと始まりません。多くの場合、その申立てをするのは「世話をしてきた本人」で、費用も自分で立て替えます。

さらにやっかいなことに、2023年(令和5年)4月1日の改正で、この分野の条番号が丸ごとずれました。「相続財産管理人」は「相続財産清算人」に変わり、根拠条文の番号も動いています。いま検索して出てくる解説の多くは、まだ古い条番号のままです。

この記事は、法務省が公表している改正法の本文と新旧対照条文、裁判所の手続案内、財務省の国有財産資料だけで組み立てます。

最終更新:2026年8月25日

結論だけ先に

  • ★条番号が変わっています。特別縁故者への財産分与は、いまは民法958条の2です(改正前は958条の3)。改正前の958条は削除され、その中身は952条2項に統合されました。「相続財産管理人」も「相続財産清算人」に変わっています。令和5年4月1日施行です。
  • 請求できるのは「952条2項の期間の満了後3か月以内」だけ(958条の2第2項)。古い解説にある「958条の期間の満了後3か月以内」は、いまの条文ではありません。
  • ★誰かが申し立てないと、手続きは1ミリも動きません。相続財産清算人の選任は収入印紙800円+官報公告料5,582円、そして予納金が必要になることがあります。裁判所は金額を公表していません。これを立て替えるのは、多くの場合「もらえるかもしれない人」自身です。
  • 分与されるかどうかは家庭裁判所の裁量です。条文は「相当と認めるとき」としか書いていません。費用と手間をかけても、もらえないことがあります。分与されず、他に引き取り手もなければ、財産は国庫に帰属します。令和5年度は226件・3.0億円が国庫に入りました。

この記事は民法、法務省の公表する改正法本文・新旧対照条文・通達、裁判所の手続案内、財務省の国有財産資料だけで書いています。当サイトに弁護士も司法書士もいません。実際の申立てと見通しは、必ず家庭裁判所または専門家にご確認ください。確認できなかったことは記事末尾に全部並べてあります。

1. まず、条番号が変わったことを押さえてください

ここを間違えると、この先の話が全部ずれます。

令和3年法律第24号(民法等の一部を改正する法律)の改め文——つまり「どの条をどう書き換えるか」を指示している部分——には、こう書かれています。

第九百五十八条を削る。
第九百五十八条の二中「前条」を「第九百五十二条第二項」に、「相続財産の管理人」を「相続財産の清算人」に改め、同条を第九百五十八条とする。
第九百五十八条の三第二項中「第九百五十八条」を「第九百五十二条第二項」に改め、同条を第九百五十八条の二とする。

整理すると、こうなります。

改正前(〜令和5年3月31日) 現行(令和5年4月1日〜)
958条(相続人の捜索の公告・6か月以上) 削除(内容は952条2項へ統合)
958条の2(権利を主張する者がない場合) 958条
958条の3(特別縁故者への財産分与) 958条の2
相続財産管理人 相続財産清算人
令和3年法律第24号の改め文から作成。施行日は令和5年4月1日

「特別縁故者 民法958条の3」で検索して出てくる解説は、改正前の条文を前提にしています。内容が大きく変わったわけではありませんが、期限の起算点の書き方が変わっているので、条番号だけを頼りに条文を引くと迷子になります。

なぜ変えたのか

改正前は、公告を3回重ねる建て付けでした。①清算人を選任した公告 → ②2か月経ってから債権者に申し出るよう促す公告 → ③さらに6か月以上の相続人捜索の公告、という順です。

現行では、952条2項の1回の公告(6か月以上)に相続人の捜索を統合し、957条の債権申出の公告(2か月以上)をその期間の中で終わらせる形になりました。条文を並べると、そう読めます。

ただし「手続期間が何か月短くなった」と明言している官公庁の資料は、今回見つけられませんでした。条文の構造からそう読める、というところまでにしておきます。

出典:法務省「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)」法律本文および新旧対照条文/法務省民二第538号通達(令和5年3月28日・標題に「令和5年4月1日施行関係」)

2. 相続人がいないと、法律上どうなるのか

相続人がいるかどうか分からない状態のとき、その財産は宙に浮きます。民法はこれを「相続財産法人」という法人にして、管理する人を置く、という組み立てにしています。

条文 内容
951条 相続人のあることが明らかでないとき、相続財産は法人とする
952条1項 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない
952条2項 選任したら遅滞なく公告する。相続人があるなら権利を主張すべき期間は「六箇月」を下ることができない
957条1項 952条2項の公告があったら、清算人は全ての相続債権者及び受遺者に「二箇月以上」の期間を定めて請求の申出を公告する
958条 期間内に相続人としての権利を主張する者がないとき、清算人に知れなかった相続債権者・受遺者は権利を行使できない
958条の2 特別縁故者への財産分与
959条 残った財産は国庫に帰属する
民法951条〜959条。952条・957条・958条の2第2項は法務省の新旧対照条文で逐語を確認。951条・953〜956条・959条は条番号と見出しのみ確認しています

952条1項の「利害関係人又は検察官の請求によって」がすべての起点です。誰も請求しなければ、清算人は選任されず、公告も始まらず、特別縁故者の3か月も走り出しません。そして家は空き家のまま、名義は亡くなった人のまま残ります。

3. 特別縁故者とは誰のことか

裁判所の手続案内は、申立てができる人を3類型で示しています。これは958条の2第1項の文言そのものです。

  • 被相続人と生計を同じくしていた者——内縁の配偶者、事実上の養子、同居していた親族など
  • 被相続人の療養看護に努めた者——看護や介護を担ってきた人
  • その他被相続人と特別の縁故があった者——上の2つに当てはまらないが、特別の関係があった人

そして裁判所のページは、家庭裁判所が「相当と認めるとき」に、清算後に残った財産の全部または一部を分与できる、と説明しています。

「相当と認めるとき」という言い方に、この制度の性格が全部出ています。要件を満たせば必ずもらえる、という権利ではありません。裁判所が個別に判断します。全部かもしれないし、一部かもしれないし、ゼロかもしれません。

療養看護は「無償か」が問われます

報酬をもらって介護していた場合や、職業として関わっていた場合にどう評価されるかは、条文には書かれていません。個別の判断になります。ここは一次情報で確認できる範囲を超えるので、当サイトでは断定しません。

4. ★3か月の起算点は、いまはこう書かれています

958条の2第2項の現行の文言は、これです。

前項の請求は、第九百五十二条第二項の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。

改正前は「第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内」でした。指している中身は同じ(相続人捜索の公告期間)ですが、条文の書き方が変わっています。

熊本家庭裁判所の資料は、これを実務の言葉で「特別縁故者は、相続人捜索の公告における申出期間満了の日から3か月以内に相続財産分与の申立てを家庭裁判所にすることができます」と説明しています。裁判所の全国共通ページも「相続人を捜索するための公告で定められた期間の満了後3か月以内」としています。

この3か月は、待っていれば通知が来るものではありません。公告は官報に載ります。いつ公告が始まって、いつ満了するのかを、自分で把握しておく必要があります。

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予納金を出す前に、その家がいくらのものか見当をつけておく

予納金も清算人の報酬も、最後は相続財産から支払われます。つまり財産の規模が小さいほど、手続きを回すだけで残りが消えます。分与を受けたい側にとって、実家の価値は「やる価値があるか」の判断材料そのものです。相続税がかかる規模なら、分与を受けたあとの税金も別に出てきます。

相談しても、分与されるかどうかは変わりません。決めるのは家庭裁判所です。ここで得られるのは税金面の見通しだけで、申立ての可否や見込みは弁護士・司法書士の領域です。財産の全体像がまだ分からない段階なら、先に戸籍と登記事項証明書をそろえてください。

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5. 手続の全体像と、かかる時間

条文に書かれている期間を、順番に並べます。

段階 根拠 期間
①相続財産清算人の選任を申し立てる 952条1項 誰かが動かないと始まらない
②選任・公告(相続人の捜索を兼ねる) 952条2項 6か月を下れない
③相続債権者・受遺者への公告 957条1項 2か月以上(②の期間内に行う)
④特別縁故者への財産分与の申立て 958条の2第2項 ②の満了後3か月以内
⑤審判 958条の2第1項 家庭裁判所が「相当と認めるとき」に分与
⑥残余財産の国庫帰属 959条 —
民法の条文と、裁判所(熊本家庭裁判所後見センター「相続財産の清算人の職務について」)の手続案内から作成

②の6か月と④の3か月を足すだけで9か月です。これに申立ての準備期間と、⑤の審判にかかる時間が乗ります。審判までどれくらいかかるかを示した一次資料は見つけられなかったので、ここでは書きません。いずれにせよ「1年仕事」だと考えておくのが現実的です。

6. 費用は誰が出すのか

ここが、この制度でいちばん語られない部分です。

手続 費用
相続財産清算人の選任 収入印紙 800円分
連絡用の郵便切手(裁判所ごとに異なる)
官報公告料 5,582円(家庭裁判所の指示があってから納付)
★予納金(必要になることがある。金額は公表されていない)
特別縁故者への財産分与の申立て 収入印紙 800円分+連絡用の郵便切手
裁判所「相続財産清算人の選任」「特別縁故者に対する相続財産分与」の各手続案内から作成

裁判所の説明はこうです。

相続財産の内容から、相続財産清算人が相続財産を管理するために必要な費用に不足が出る可能性がある場合には、相当額を予納金として納付していただくことがあります。

金額は書かれていません。大阪家庭裁判所の手引きも、「相続財産の中に預貯金等(流動資産)が少ない場合、…管理費用及び清算人報酬の担保として、予納金の納付が必要な場合があります」とだけ書いています。

実家しか財産がないケースは、まさにこの「流動資産が少ない場合」です。不動産は売れるまで現金になりません。その間の管理費用と清算人の報酬を、誰かが先に用意しなければ手続きが回りません。

そしてその「誰か」は、多くの場合、分与を受けたい本人です。裁判所は申立人に予納を求めます。つまり、もらえるかどうか分からない段階で、自腹を切って手続きを起動することになります。

これが、この制度をむやみに勧められない理由です。財産の規模と予納金の見込みを、申立ての前に家庭裁判所へ相談してください。

7. 実家(不動産)は、具体的にどうなるのか

清算人は、売ることも壊すこともできます

熊本家庭裁判所の資料は、清算人の職務をこう説明しています。

相続財産を管理するとともに、②相続人の存否を確定し、また、相続財産から弁済を受けるべき債権者・受遺者を確定し、③相続人不存在が確定した場合には相続財産を清算して残余を国庫に引継ぐ

そして、次の行為には家庭裁判所の権限外行為許可が必要だとしています(民法953条、28条)。

  • 不動産の処分(建物の取り壊しを含む。)
  • 動産の売却、譲渡、贈与、廃棄(自動車の売却や廃車手続きを含む。)
  • ゴルフ会員権、株券などの売却

つまり、実家は清算人によって売られることもあれば、取り壊されることもあります。債務を弁済するために換価が必要なら、そうなります。「特別縁故者として家をもらいたい」と思っているなら、清算の過程で家が現金に変わってしまう可能性を織り込む必要があります。

分与されるのは「清算後に残ったもの」です

958条の2は、分与の対象を清算後に残る相続財産としています。借金があれば先に返され、残った分が対象です。不動産に抵当権が付いていれば、その処理が先に来ます。

共有だった場合(民法255条)は、断定できません

亡くなった人が実家を誰かと共有していた場合、民法255条には、共有者の一人が死亡して相続人がないときに持分が他の共有者に帰属する旨の規定があります。この規定と、特別縁故者への分与(958条の2)のどちらが先に適用されるのかについては、最高裁の判例があるとされています。

ただし、当サイトでは裁判所の判例ページからその判示内容を確認できませんでした。民間の解説では「特別縁故者への分与が先で、分与されなかったときに255条」という説明が一般的ですが、一次情報で裏が取れていないため、当サイトでは断定しません。実家が共有名義なら、この点は必ず専門家に確認してください。

出典:熊本家庭裁判所後見センター「相続財産の清算人の職務について」/大阪家庭裁判所「相続財産清算人選任の手引」/裁判所「相続財産清算人の選任」「特別縁故者に対する相続財産分与」

8. 誰にも渡らなかった財産は、いくら国庫に入っているのか

財務省が財政制度等審議会に提出した資料に、実数が載っています。

年度 国庫帰属件数 台帳価格
平成28 76件 0.5億円
平成29 107件 1.2億円
平成30 172件 1.1億円
令和元 189件 4.5億円
令和2 145件 3.4億円
令和3 187件 2.9億円
令和4 206件 2.4億円
令和5 226件 3.0億円
令和6 (計数整理中) 2.5億円
財務省 財政制度等審議会 国有財産分科会「相続土地国庫帰属制度等に係る現状と課題」(令和7年6月17日)の「相続人不存在による国庫帰属の推移」から作成

平成28年の76件から、令和5年には226件へと3倍近くに増えています。単身世帯の増加を考えれば、この傾向は続くと見るのが自然です。

⚠「相続土地国庫帰属制度」とは別の制度です

紛らわしいのですが、相続人がいて、その相続人が「いらない土地」を国に引き取ってもらう制度(相続土地国庫帰属制度)は、まったく別の仕組みです。同じ財務省資料によれば、そちらは令和6年4月〜令和7年3月で1,229件と、前年度の258件から約4倍に増えています。

この記事で扱っているのは「相続人がいない」ケースです。「相続人はいるが手放したい」場合は相続土地国庫帰属制度のほうを読んでください。

9. おひとりさまは、これから確実に増えます

指標 数字
単独世帯(2020年・国勢調査) 2,115万1千世帯=一般世帯の38.0%(最も多い世帯類型)
単独世帯の割合(社人研の将来推計) 2020年 38.0% → 2050年 44.3%
単独世帯数のピーク 2036年に2,453万世帯(2020年より338万世帯多い)
65歳以上の一人暮らしの割合(令和2年) 男性 15.0%/女性 22.1%
同(令和32年の見込み) 男性 26.1%/女性 29.3%
総務省統計局「令和2年国勢調査 人口等基本集計結果」/国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(令和6年推計)」/内閣府「令和7年版高齢社会白書」から作成

いちばん多い世帯の形が、すでに「一人暮らし」です。相続人がいない相続は、例外ではなく、これから当たり前になっていきます。

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おひとりさまが生前にできることの出発点は、自分の財産がいくらなのかを把握することです。遺言に「この家を◯◯に」と書くにしても、その家の価値が分からなければ、渡された側が困ります。売るかどうかを決める前でも、金額を1つ持っておく意味はあります。

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10. 生前にできること

ここまで読めば分かるとおり、死んでからでは、手続きも費用も、残された人の負担になります。生前にできることは、大きく3つです。

① 遺言を書く

いちばん確実です。相続人以外の人にも、遺贈で財産を渡せます(民法964条)。遺言があれば、特別縁故者の手続きそのものが不要になります。6か月の公告も、3か月の期限も、予納金も要りません。

自分で書いて法務局に預ける方法もあります(自筆証書遺言書保管制度)。ただし形式は見てもらえますが、中身の有効性は誰も見てくれません。相続人がいないケースは関係者の把握が難しいので、公正証書遺言も含めて検討する価値があります。

② 判断能力が落ちたときの備え(任意後見)

任意後見契約に関する法律にもとづく制度です。法務省の説明はこうです。

本人が十分な判断能力を有する時に、あらかじめ、任意後見人となる方や将来その方に委任する事務の内容を公正証書による契約で定めておき(…)任意後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じます

裁判所によれば、監督人選任の申立ては、申立て後は家庭裁判所の許可がないと取り下げられず、手続にはおおむね1か月から2か月程度かかります。

③ 死後の事務をどうするか

成年後見人については、民法873条の2に明文の規定があります(平成28年10月13日施行)。認められている死後事務は3種類です。

  • 個々の相続財産の保存に必要な行為(時効中断のための請求、建物の修繕など)
  • 弁済期が到来した債務の弁済(医療費、入院費、公共料金の支払)
  • 死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産全体の保存に必要な行為(火葬契約、動産の寄託、供給契約の解約、預貯金の払戻し)——これは家庭裁判所の許可が必要

①②は、成年被後見人の相続人が相続財産を管理できる状態に至っていない等の要件を満たせば、許可は不要です。

なお、成年後見とは別に「死後事務委任契約」という私人間の契約もありますが、民法に明文の規定がなく、法務省・裁判所の一次資料を確認できませんでした。当サイトでは制度の中身に踏み込みません。

出典:法務省「任意後見制度Q&A」/裁判所「任意後見監督人選任」/法務省「成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」

やってはいけないこと

  • 「世話をしてきたから、そのうち連絡が来るはず」と待つ。誰かが申し立てないと手続きは始まりません。そして始まってからの3か月は、自分で官報を追う必要があります。
  • 古い条番号のまま条文を確認する。958条の3はもうありません。いまは958条の2です。
  • 予納金の見込みを聞かずに申し立てる。実家しか財産がないケースは、流動資産が少ない典型です。先に家庭裁判所へ相談してください。
  • 「相続土地国庫帰属制度」と混同する。あちらは相続人がいる人が使う制度です。
  • 共有名義の実家について、ネットの説明を鵜呑みにする。民法255条との優先関係は、当サイトでは一次情報で確認できませんでした。共有なら必ず専門家に確認してください。
  • 自分が「おひとりさま」なのに、何も残さない。遺言が1通あれば、この記事の手続きは丸ごと不要になります。

動く順番

  1. 本当に相続人がいないのかを、戸籍で確認する。被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)を集めます。相続人が見つからない場合の手続きとは別の話です。
  2. 財産と負債を洗い出す。不動産の登記事項証明書、預貯金の残高証明書、借入の有無。清算後に残るものがなければ、分与の対象もありません。
  3. 家庭裁判所(被相続人の最後の住所地)に相談する。予納金がいくらくらい必要になりそうかを、この段階で聞きます。
  4. 相続財産清算人の選任を申し立てる。収入印紙800円、官報公告料5,582円、郵便切手、そして予納金。
  5. 公告の開始日と満了日を記録する。ここから3か月が、特別縁故者の申立て期限です。
  6. 満了後3か月以内に、財産分与の申立てをする。収入印紙800円。1日でも過ぎると請求できません。

よくある質問

Q. 内縁の妻ですが、相続できますか?

相続人にはなれませんが、特別縁故者として財産分与を受けられる可能性はあります。958条の2第1項の「被相続人と生計を同じくしていた者」に当たり得ます。ただし分与するかどうかは家庭裁判所が「相当と認めるとき」に決めるもので、当然にもらえる権利ではありません。他に相続人がいる場合は、そもそもこの手続きに進みません。

Q. 何年も介護してきました。何もしなくても分与されますか?

されません。誰かが家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てないと、手続き自体が始まりません。そして特別縁故者の申立ては、952条2項の公告期間が満了してから3か月以内です。待っているだけでは、期限だけが過ぎていきます。

Q. 費用はいくらかかりますか?

清算人選任が収入印紙800円+官報公告料5,582円+郵便切手、財産分与の申立てが収入印紙800円+郵便切手です。これに予納金が加わることがあります。予納金の金額は裁判所が公表していません。実家しか財産がないケースでは求められる可能性が高いので、申立ての前に家庭裁判所へ確認してください。

Q. 実家に住み続けられますか?

保証はありません。相続財産清算人は、家庭裁判所の権限外行為許可を得て不動産を売却することも、建物を取り壊すこともできます(民法953条、28条)。債務の弁済のために換価が必要なら、そうなります。分与の対象は清算後に残った財産です。

Q. 「相続財産管理人」と「相続財産清算人」は違うのですか?

令和5年4月1日から名称が変わりました。令和3年法律第24号によって「相続財産の管理人」が「相続財産の清算人」に改められています。同時に条番号もずれているので、古い解説を読むときは注意してください。

Q. 分与されなかった財産はどうなりますか?

国庫に帰属します(民法959条)。財務省の資料によれば、相続人不存在による国庫帰属は令和5年度で226件・台帳価格3.0億円でした。平成28年度の76件から3倍近くに増えています。

Q. 自分がおひとりさまです。何をしておけばいいですか?

遺言が1通あれば、この記事に書いた手続きは丸ごと不要になります。相続人以外の人にも遺贈できます(民法964条)。判断能力が落ちたときの備えとして任意後見契約、亡くなったあとの事務についても、生前に取り決めておく方法があります。法務局の遺言書保管制度も選択肢のひとつです。

まとめ

  • ★条番号が変わっています。特別縁故者への分与は民法958条の2、期限は「952条2項の期間の満了後3か月以内」です(令和5年4月1日〜)。
  • 誰かが申し立てないと、手続きは始まりません。清算人選任は収入印紙800円+官報公告料5,582円、そして予納金。立て替えるのは多くの場合、分与を受けたい本人です。
  • 分与は「相当と認めるとき」の裁量です。費用と1年近い時間をかけても、もらえないことがあります。
  • 実家は清算人によって売られることも壊されることもあります(家庭裁判所の許可が要ります)。分与の対象は清算後の残りです。
  • ★おひとりさま本人にとっての最善は、遺言を1通書いておくことです。それだけで、この記事の手続きは全部不要になります。

この記事で確認できなかったこと

  • 民法951条・953条〜956条・959条の条文そのもの。952条・957条1項・958条の2第2項は法務省の新旧対照条文で逐語を確認しましたが、改正対象外の条は新旧対照表に載らないため、条番号と見出しまでの確認にとどまります。
  • 958条の2第1項の条文全文。3類型の文言は裁判所の手続案内で確認しましたが、「相当と認めるとき」「清算後残存すべき相続財産の全部又は一部」の部分の逐語は確認していません。
  • 民法255条の条文そのもの、および255条と958条の2の適用の優先関係。最高裁判所の判例があるとされていますが、裁判所の裁判例詳細ページを開くことができず、判示事項・裁判要旨を確認できませんでした。本文でも断定していません。
  • 「改正で手続期間が何か月短縮された」ことを明言する官公庁の資料。条文の建て付けからは読み取れますが、断定できる一次資料はありませんでした。
  • 相続財産清算人選任・特別縁故者への財産分与の年間の申立件数。令和6年の司法統計年報から読み取ろうとしましたが、質問の仕方を変えて3回読んで3回とも違う数字が返り、表の列がずれていることが確認できたため、採用しませんでした。
  • 予納金の相場。裁判所は「相当額」としか書いておらず、金額の目安を示した一次資料はありません。
  • 相続人不存在の不動産を相続財産法人名義に変更する登記の取扱い。法務省の通達に該当する記述を見つけられませんでした。
  • 65歳以上の単独世帯の実数。割合は確認できましたが、人数は概要資料に記載がありませんでした。
  • 任意後見契約が本人の死亡によって終了する旨の、法務省・裁判所ページでの記載。確認できませんでした。
  • 死後事務委任契約に関する法務省・裁判所の一次資料。民法に明文の規定がなく、確認できませんでした。

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