実家が兄弟の共有になっている|同意が要ることと、要らないこと

【PR】本ページはプロモーションを含みます。条文はすべて e-Gov法令検索で全文を開いて確認したものです(2026年8月17日確認)。孫引きはしていません。

最終更新:2026年8月17日

結論だけ先に

共有の実家でいちばん多い誤解は、「何をするにも兄弟全員の同意が要る」です。民法は、行為ごとに必要な同意を3段階に分けています。

売る・壊すは全員(251条)。貸す・修繕は持分の過半数(252条)。保存行為は1人でできる(252条5項)。つまり3人兄弟で2人がまとまれば、貸すことはできます。

そして2つの期限があります。相続開始から10年を過ぎると、「自分は親の面倒を見た」という主張ができなくなります(904条の3)。同じ10年で、共有物分割の裁判に持ち込めるようになります(258条の2第2項)。10年は、失うものと、開くものが同時に来る線です。

根拠と条文は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

まず、行為ごとに「誰の同意が要るか」を分けてください

共有の話がこじれるのは、全部を「全員の同意が要ること」だと思い込んでいるからです。民法は、はっきり3つに分けています。

必要な同意 根拠 実家で当てはまるもの
共有者全員 251条1項(共有物の変更) 売る/解体する/建て替える/大規模なリフォーム/抵当権を設定する
持分の価格の過半数 252条1項(共有物の管理) 人に貸す(期間の上限あり)/管理を誰かに任せる/使い方を決める
1人でできる 252条5項(保存行為) 雨漏りの修理/草刈り/不法占拠者への明渡し請求/相続登記の申請

各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)を加えることができない。

出典:民法第251条第1項(e-Gov法令検索で全文を確認/2026年8月17日)

共有物の管理に関する事項…は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。

出典:民法第252条第1項(e-Gov法令検索で全文を確認/2026年8月17日)

「持分の過半数」であって「人数の過半数」ではありません

ここは間違えやすいところです。頭数ではなく、持分の価格です。

例 人数 持分 過半数を取れるのは
3人が均等 3人 各1/3 どの2人が組んでも2/3で過半数
長男1/2・次男1/4・三男1/4 3人 — 長男+どちらか1人。次男+三男では1/2で、過半数に届きません
配偶者1/2・子2人が各1/4 3人 — 配偶者+子1人。子2人だけでは決められません

1/2はちょうど半分で、過半数ではありません。ここで止まっている実家が、実際にあります。

行為ごとに、要る同意が3段階に分かれます 共有者全員 売る・壊す・建て替える 251条1項 持分の過半数 貸す・管理を任せる・使い方 252条1項 1人でできる 修理・草刈り・相続登記 252条5項 「人数の過半数」ではなく「持分の過半数」です

貸すことは、過半数でできます。ただし期間の上限があります

実家を人に貸すのは「管理」なので、持分の過半数で決められます。ただし無制限ではありません。252条4項が、期間の上限を定めています。

対象 設定できる期間の上限
樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 10年
上記以外の土地の賃借権等 5年
建物の賃借権等 3年
動産の賃借権等 6か月

出典:民法第252条第4項(e-Gov法令検索で全文を確認/2026年8月17日)

実家(建物)を貸す場合は3年です。これを超える契約や、更新のない定期借家でない普通借家など、期間の枠を超えるものは「変更」の側に寄り、全員の同意が必要になり得ます。実際に貸すときは、契約の形を不動産会社と設計してください。

過半数で貸せる期間には上限があります 山林の賃借権等 10年 土地の賃借権等 5年 建物の賃借権等 3年 動産の賃借権等 6か月 実家を貸すのは3年。超えると「変更」の側へ

売る・貸す・持ち続けるを数字で比べたい方は3つの選択肢の損益分岐に、貸す前に必要な費用は空き家の維持費にまとめています。

1人だけ住んでいる兄弟に、家賃を請求できます

これは2023年の改正で条文にはっきり書かれました。

共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。

出典:民法第249条第2項(e-Gov法令検索で全文を確認/2026年8月17日)

3人で共有していて、そのうち1人が住んでいるなら、その人は自分の持分(1/3)を超えて使っている分について、他の2人に対価を払う義務があります。

ただし「別段の合意がある場合を除き」です。「実家には長男が住んでいい」と兄弟で決めていたなら、その合意が優先します。口約束でも合意は合意なので、揉めるのはたいていここです。

そして249条3項は、使っている共有者は「善良な管理者の注意」をもって使わなければならないと定めています。荒れるに任せていい、ということではありません。

連絡が取れない兄弟がいる場合の出口

実家じまいで本当に止まるのは、反対されているときではなく、連絡が取れないときです。2023年の改正で、ここに4つの道ができました。いずれも裁判所を使います。

できること 条文 中身
その人以外の同意で「変更」できる裁判 251条2項 共有者を知ることができず、又は所在を知ることができないとき、裁判所が「その人以外の同意で変更を加えてよい」と裁判できる
その人以外の過半数で「管理」を決められる裁判 252条2項1号 同じく、所在等が不明な共有者を除いて過半数で決められる
その人の持分を取得する裁判 262条の2 不動産に限る。裁判所が、請求した共有者にその持分を取得させる
その人の持分を含めて第三者に売る権限をもらう裁判 262条の3 不動産に限る。他の共有者全員が同じ相手に全部を譲渡することを停止条件に、不明な人の持分も一緒に売る権限が与えられる

出典:民法第251条第2項・第252条第2項・第262条の2・第262条の3(いずれもe-Gov法令検索で全文を確認/2026年8月17日)

262条の3が、実家じまいでは効きます

「1人と連絡が取れないから、実家全体を売れない」——これを解く条文です。他の全員が同じ買主に売ることを条件に、行方の分からない共有者の持分も一緒に譲渡できる権限が裁判所から与えられます。

ただし条件があります。262条の2第3項は、持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産分割をすべき場合に限る)で、相続開始から10年を経過していないときは、裁判所はこの裁判をすることができないと定めています。262条の3にも同種の定めがあります。

つまり、名義が親のままで遺産分割が終わっていない実家では、この2つは相続開始から10年を待たないと使えません。名義を自分たちに移す手続きは相続登記の義務化にまとめています。相続登記の申請そのものは、保存行為として1人でできます。

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賛否を答えない兄弟には、催告という手があります

連絡は取れる。でも何を言っても返事をしない。これも実際によくあります。

共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき

出典:民法第252条第2項第2号(e-Gov法令検索で全文を確認/2026年8月17日)

このとき裁判所は、その人を除いた共有者の持分の過半数で管理に関する事項を決められる旨の裁判をすることができます。沈黙は、いつまでも有効な拒否ではありません。

ただし、これで決められるのは「管理」までです。売却や解体は251条の「変更」なので、この条文では届きません。そこは混ぜないでください。

話がまとまらないとき——共有物分割の裁判

協議が調わないときは、分割を裁判所に請求できます(258条1項)。裁判所が命じられる方法は、条文にこう並んでいます。

方法 中身
1 現物分割(258条2項1号) 共有物そのものを分ける。土地なら分筆。建物は現実には難しい
2 賠償分割(258条2項2号) 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる。=1人が他をお金で買い取る形。2023年の改正で条文に明記されました
3 競売(258条3項) 1と2ができないとき、又は分割で価格が著しく下がるおそれがあるとき。いちばん手取りが減りやすい出口です

出典:民法第258条(e-Gov法令検索で全文を確認/2026年8月17日)

ただし、遺産分割が終わっていないと、この裁判は使えません

共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。

2 …相続開始の時から十年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、…相続人が…異議の申出をしたときは、この限りでない。

出典:民法第258条の2第1項・第2項(e-Gov法令検索で全文を確認/2026年8月17日)

整理するとこうです。

実家の状態 使える手続き
遺産分割が終わっていない(名義が親のまま/法定相続分で登記しただけ) 家庭裁判所の遺産分割。共有物分割の裁判は使えません
遺産分割は終わったが、その結果として兄弟の共有になった 共有物分割の裁判(258条)が使えます
遺産分割が終わっておらず、相続開始から10年が過ぎた 共有物分割の裁判も使えるようになります(258条の2第2項)。ただし相続人の異議の申出があれば別
使える手続きは、分割が済んだかで変わります 遺産分割が終わっていない 名義が親のまま。法定相続分だけ 家裁の遺産分割 分割は終わり、兄弟の共有 その結果として共有になった 共有物分割の裁判 未分割のまま10年が過ぎた 258条の2第2項で開きます 裁判も使える 10年で開いても、相続人の異議の申出があれば別です

相続開始から10年で、主張できなくなるものがあります

ここがこの記事でいちばん急ぐ話です。

前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

出典:民法第904条の3(e-Gov法令検索で全文を確認/2026年8月17日)

「前三条」とは、特別受益(903条・904条)と寄与分(904条の2)のことです。これらが適用されなくなる、というのが条文の意味です。

10年を過ぎると主張できなくなるもの 実家じまいでの具体例
特別受益(生前に多く渡していたことを、相続分から差し引く) 「弟は家を建てるとき、親から1,000万円もらっている」
寄与分(財産の維持・増加に特別の貢献をしたことを、相続分に加える) 「長男夫婦が10年間、親を介護して、施設代も出していた」

10年を過ぎると、原則として法定相続分で分けることになります。介護をした人も、生前に多く受け取った人も、同じ割合になる。「話し合いはいつでもできる」と思って先送りしてきた実家ほど、この線に近づいています。

止める方法は、条文に書いてあるとおり、10年を過ぎる前に家庭裁判所に遺産分割を請求することです。兄弟間の話し合いを続けているだけでは止まりません。

そして、いつからこの規定が適用されるのか(施行日)と、施行前に開始していた相続についての経過措置を、当サイトは条文で確認できていません。だから年数を書きません。相続開始から10年が近い、あるいはすでに過ぎている方は、この記事ではなく、家庭裁判所か弁護士に確認してください。ここは推測で書いてよい場所ではありません。

それでも動かないときの、持分だけの売却

自分の持分だけなら、他の共有者の同意なしに売れます。ただし仲介と買取の違いにも書いたとおり、これは最初に検討するものではありません。

起きること
価格 大きく下がります。買った側は、残りの共有者と交渉することになるからです
兄弟との関係 黙って売れば、まず決定的に壊れます。見知らぬ第三者が、ある日から共有者になります
その後 買った業者が、残った共有者に持分の買い取りや共有物分割を求めることがあります。あなたが抜けても、話は終わりません

順番として、先にやることが4つあります。

やること 根拠
1 持分の割合を、登記で正確に確認する。過半数が取れるかが変わります —
2 貸す・管理するだけなら、過半数でできることを共有者に説明する 252条1項
3 返事をしない共有者には、期間を定めて催告する 252条2項2号
4 連絡が取れない共有者がいるなら、262条の2・262条の3を弁護士に相談する 262条の2・262条の3

ここまで試して、なお動かないときに、はじめて持分の売却です。

持分だけ売るのは、この4つのあとです 1 持分の割合を確認 登記で。過半数が取れるかが変わる 2 過半数でできると説明 貸す・管理は252条1項 3 返事がない人に催告 252条2項2号。沈黙は拒否ではない 4 連絡が取れないなら 262条の2・262条の3を弁護士に

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持分の値段を、先に知っておく

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先に登記事項証明書を取って、持分の割合を正確に確認してください。「たぶん3分の1」で話を進めると、過半数が取れるかどうかの判断を間違えます。全体を売る場合の相場は売却相場を自分で調べるにあります。

共有のままだと、解体補助の申請でも止まります

共有が効いてくるのは売却のときだけではありません。全国501自治体のうち141自治体が、対象要件に共有者や権利者の同意を挙げていました。共有者全員の同意書を求める自治体が多く、1人でも連絡がつかないと申請が止まります。

自治体上限額
兵庫県たつの市160万円(市税条例第24条第1項に…
兵庫県丹波市160万円(判定100点以上。50点…
新潟県長岡市160万円
香川県さぬき市160万円
香川県三豊市160万円
熊本県合志市157万5千円(同一敷地内での建て替…
福島県福島市150万円
鳥取県米子市120万円
佐賀県伊万里市100万円
兵庫県三木市100万円
大分県大分市100万円
大分県日田市100万円

該当は全部で141自治体です。全国の一覧表で実家のある市区町村を確認してください。

補助金には受付期間があります。同意集めに数か月かかると、その年度を逃します。実家のある市区町村の受付期間を先に確認して、逆算してください。

よくある質問

Q. 兄弟の1人が反対しています。売る方法はありませんか。

A. 売却は251条の「変更」なので、全員の同意が要ります。過半数では届きません。ここは条文がはっきりしています。

取り得る道は3つです。

方法 注意
1 その人の持分を、あなたが買い取る 話し合いで済むなら、いちばん傷が浅い
2 共有物分割の裁判(258条) 遺産分割が終わっていることが前提。終わっていなければ家庭裁判所の遺産分割が先です(258条の2)
3 自分の持分だけを売る 最後の手段。関係は壊れます

反対の理由を聞くのが先です。「思い出があるから」なのか「金額に納得できない」なのかで、打つ手がまったく違います。後者なら、相場の根拠を示すだけで動くことがあります。

Q. わたし1人で相続登記をしても大丈夫ですか。

A. 相続登記の申請は、保存行為として1人でできます(252条5項)。法定相続分での登記であれば、他の共有者の同意は要りません。

ただし、勝手に登記されたと受け取られることがあります。登記そのものは正しくても、兄弟の心証は別です。先に一報を入れてください。

期限と過料については相続登記の義務化にまとめています。

Q. 固定資産税は誰が払うのですか。

A. 共有者は連帯して納める義務を負うのが原則で、自治体は共有者の代表者に納税通知書を送ります。「持分の割合どおりに分けて請求される」わけではありません。

つまり、1人が全額を払わされている状態が起こります。その人は他の共有者に持分に応じた負担を求められますが、実際には払ってもらえないことが多い。ここが共有のいちばん地味な消耗です。

当サイトは、地方税法の該当条文までは確認していません。負担の割り方でもめているなら、市区町村の税務課に「代表者はだれになっているか」を確認するところから始めてください。維持費の全体像は空き家の維持費にあります。

Q. 共有のまま放置したら、どうなりますか。

A. 3つのことが同時に進みます。

起きること
1 相続人が増えます。兄弟の誰かが亡くなると、その配偶者と子に持分が移ります。3人だった共有者が、10人を超えることがあります
2 10年の線を越えます。特別受益も寄与分も主張できなくなります(904条の3)
3 建物が傷みます。管理不全空家等・特定空家等に指定されると、住宅用地の特例が外れて固定資産税が上がるところまで進みます

1がいちばん怖いところです。共有者が増えるほど、全員の同意は取れなくなります。いま3人で決められるうちに決めるのが、いちばん安く済みます。放置したときに何が起きるかは空き家を放置するとどうなるかにまとめました。

Q. 実家に住んでいる兄に、いくら請求できますか。

A. 条文は「自己の持分を超える使用の対価」としか書いていません(249条2項)。金額の決め方は書かれていません。実務では近隣の賃料を基準に考えることが多いのですが、当サイトは公的な算定基準を確認できていないので、計算式は書きません。

先に確かめてほしいのは「別段の合意」の有無です。「長男が住んでいい」と兄弟で決めていたなら、条文は「別段の合意がある場合を除き」と定めているので、その合意が優先します。親の口約束だったのか、兄弟で決めたのかで、話がまったく変わります。

そして、請求すると関係が決定的に変わります。請求するかどうかは法律の問題ですが、請求すべきかどうかは別の問題です。

Q. 遺産分割はもう終わっています。それでも共有のままです。

A. それなら、共有物分割の裁判(258条)が使えます。258条の2が禁じているのは「遺産分割をすべきとき」なので、終わっていれば制限にかかりません。

裁判所が命じられるのは現物分割・賠償分割・競売の3つです。2023年の改正で、賠償分割(1人が他をお金で買い取る形)が条文に明記されました。建物では現物分割が難しいので、実際には賠償分割か競売になります。

競売はいちばん手取りが減ります。そこに行く前に、当事者間で価格を詰めるほうが、全員の取り分が増えます。

Q. 兄弟の1人が行方不明です。何年も連絡が取れません。

A. 2023年の改正で、ここに手が入りました。不動産については、裁判所に請求してその人の持分を取得する(262条の2)、またはその人の持分も含めて第三者に売る権限をもらう(262条の3)ことができます。

ただし条件があります。持分が相続財産に属していて、共同相続人間で遺産分割をすべき場合は、相続開始から10年を経過していないと使えません(262条の2第3項)。まず遺産分割を済ませるほうが早いことがあります。

ここは自分で進める話ではありません。弁護士に相談してください。相談に行く前に、登記事項証明書と、その人の最後の住所が分かる資料を用意しておくと話が早いです。

Q. 持分を売ったら、税金はどうなりますか。

A. 譲渡所得の対象です。持分の売却も不動産の譲渡なので、取得費と譲渡費用を引いた利益に課税されます。

ここで効いてくるのが取得費です。親が買ったときの売買契約書が見つからないと、取得費が売却額の5%で計算されます。探し方は取得費が分からないときにまとめました。

空き家の3,000万円特別控除が使えるかどうかは、要件が細かく、持分売却では判断が難しくなります。要件は空き家の3,000万円特別控除にありますが、共有が絡むときは税理士に確認してください。当サイトは、持分だけを売った場合の適用可否を確認していません。

Q. 母が認知症です。共有者として同意できません。

A. この記事の範囲を超えます。判断能力が十分でない共有者がいる場合、その人の同意をどう扱うかは成年後見の制度の話になり、当サイトは条文まで確認していないので書きません。

ただし1つだけ確かなことがあります。「本人に代わって家族が署名する」は、後で無効になり得ます。売買契約や遺産分割協議書でこれをやると、取引そのものがひっくり返ります。やらないでください。

家庭裁判所か、地域包括支援センターに相談してください。時間がかかる手続きなので、実家をどうするかを決める前に動き始めるほうがいいです。

Q. 何から手を付ければいいですか。

A. この順番です。上に行くほど、お金がかからず、取り返しがつきます。

やること 費用
1 登記事項証明書を取って、共有者と持分を正確に確認する 数百円
2 相続開始日を確認して、10年までの残りを数える(904条の3) 無料
3 遺産分割が終わっているかを確認する。使える手続きが変わります(258条の2) 無料
4 過半数が取れるかを計算する。取れるなら、貸す・管理するは動かせます(252条1項) 無料
5 返事をしない共有者に、期間を定めて催告する(252条2項2号) 無料
6 連絡が取れない共有者がいるなら弁護士に相談(262条の2・262条の3) 相談料
7 家庭裁判所の遺産分割、または共有物分割の裁判 —
8 自分の持分だけを売る 関係は戻りません

1と2は、今日できます。とくに2です。相続開始日から10年までの残り月数を数えるだけで、急ぐべきかどうかが分かります。全体の流れは実家じまい完全ガイドにあります。

この記事で確認できなかったこと

正直に書いておきます。

  • 904条の3(10年ルール)の施行日と、施行前に開始していた相続についての経過措置。条文で確認できなかったので、年数を書いていません。ここは家庭裁判所か弁護士に確認してください
  • 249条2項の「使用の対価」の算定基準。条文は金額の決め方を定めていません
  • 共有不動産の固定資産税の連帯納付義務の根拠条文(地方税法)。確認していません
  • 持分だけを売った場合に、空き家の3,000万円特別控除が使えるか
  • 共有者に判断能力が十分でない人がいる場合の手続き(成年後見)
  • 262条の2・262条の3の裁判が、実際に年間どのくらい使われているか。統計を見つけられませんでした
  • 共有持分の買取価格が、全体売却額の持分相当額と比べてどのくらい下がるか。公的な統計はありません。「大きく下がる」以上のことは書けません

この記事は条文を読んで整理したものです。個別の事情で結論は変わります。金額が動く判断をする前に、必ず弁護士・税理士・司法書士に確認してください。

まとめ

  1. 売る・壊すは全員(251条)。貸す・管理は持分の過半数(252条)。保存行為は1人(252条5項)
  2. 「持分の過半数」であって「人数の過半数」ではない。1/2はちょうど半分で、過半数ではありません
  3. 建物を貸せる期間の上限は3年(252条4項)
  4. 住んでいる共有者には、持分を超える分の対価を請求できる(249条2項)。ただし別段の合意が優先
  5. 連絡が取れない共有者がいても、不動産なら持分の取得・譲渡の裁判がある(262条の2・262条の3)。ただし遺産分割が未了なら相続開始から10年が必要
  6. 返事をしない共有者には催告できる(252条2項2号)。ただし決められるのは「管理」まで
  7. 相続開始から10年で、特別受益と寄与分が主張できなくなる(904条の3)。止めるには10年を過ぎる前に家庭裁判所へ請求する
  8. 持分だけの売却は最後。関係は金額では戻りません

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