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親が亡くなって、実家を相続することになった。まっさきに頭をよぎるのが「相続税、いくら取られるんだろう」です。そして多くの場合、この心配は取り越し苦労で終わります。
令和6年に亡くなった1,605,378人のうち、相続税の申告書が出されたのは166,730人。課税割合は10.4%です。10人のうち9人には、相続税はかかりません。ですが、この数字を知って安心した人が、いちばん危ない罠にはまります。
その罠とは、「特例を使って税額がゼロになった」場合、申告書を出さなければ特例そのものが適用されないという仕組みです。「そもそも基礎控除以下だからゼロ」と「特例を使ってゼロ」は、まったく違う扱いを受けます。この記事は、その境目を条文で示します。
結論だけ先に
- 基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数(相続税法15条1項)。相続人2人なら4,200万円。正味の遺産額がこれ以下なら、相続税も申告も不要です。
- 課税割合は10.4%(令和6年分)。平成26年は4.4%でした。平成27年に基礎控除が4割縮小されて8.0%に倍増し、そこから毎年じわじわ上がっています。ただし首都圏(東京国税局管内)は16.2%。
- 小規模宅地等の特例は330㎡まで80%減額(措置法69条の4)。ただし、この特例を使って税額がゼロになった人は、申告書を出さないと特例が適用されません(同条7項)。配偶者の税額軽減も同じです(相続税法19条の2第3項)。
- 期限は10か月。相続の開始を知った日の翌日から起算します(相続税法27条1項)。相続登記の3年より、はるかに短い期限です。
条文は2026年8月24日にe-Gov法令検索で、統計は国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(令和7年12月公表)と財務省資料で確認しました。税制の要件は年度で変わります。実際の申告にあたっては、所轄税務署または税理士にご確認ください。
1. かかるかどうかの境目は、基礎控除ひとつ
相続税法第15条第1項
相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額から、三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額……を控除する。
| 法定相続人の数 | 計算 | 基礎控除額 | 典型例 |
|---|---|---|---|
| 1人 | 3,000+600×1 | 3,600万円 | 配偶者なし・子1人 |
| 2人 | 3,000+600×2 | 4,200万円 | 配偶者+子1人/子2人 |
| 3人 | 3,000+600×3 | 4,800万円 | 配偶者+子2人/子3人 |
| 4人 | 3,000+600×4 | 5,400万円 | 配偶者+子3人/子4人 |
| 5人 | 3,000+600×5 | 6,000万円 | — |
| 6人 | 3,000+600×6 | 6,600万円 | — |
「法定相続人の数」の数え方に、2つのくせがある
ひとつめ。相続放棄した人も頭数に入ります。相続税法15条2項は「相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数」と定めています。つまり、兄が相続放棄しても基礎控除は減りません。
ふたつめ。養子は人数に上限があります。被相続人に実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人までしか算入できません(同条2項1号・2号)。ただし、特別養子縁組による養子、配偶者の実子で被相続人の養子となった者、代襲相続人となった直系卑属は「実子とみなされ」、この人数制限を受けません(同条3項)。
生命保険金・退職手当金には、基礎控除とは別枠がある
相続人が受け取った生命保険金・死亡退職金には、それぞれ500万円×相続人の数の非課税枠があります(相続税法12条1項6号・7号)。基礎控除とは別枠です。相続人2人なら、保険金1,000万円までは課税価格に入りません。
条番号にご注意ください
一般に「相続税法12条1項5号」と紹介されることが多いのですが、e-Gov法令検索で確認した現行条文では、保険金は6号、退職手当金等は7号です。5号は地方公共団体の共済制度に基づく給付金受給権にあたります。
2. 実際、何人にかかっているのか
不安の大きさと実際の確率は、しばしばずれます。国税庁の最新統計(令和6年分・令和7年12月公表)を置きます。
| 項目 | 令和5年分 | 令和6年分 |
|---|---|---|
| 被相続人数(死亡者数) | 1,576,016人 | 1,605,378人 |
| 申告書の提出に係る被相続人数 | 155,740人 | 166,730人 |
| 課税割合 | 9.9% | 10.4% |
| 被相続人1人当たりの課税価格 | — | 1億4,025万円 |
| 被相続人1人当たりの税額 | 1,930万円 | 1,946万円 |
課税割合10.4%。残る約89.6%、およそ143万8千人については、相続税の申告書が出ていません。
平成27年に、境目が動いた
| 年分 | 課税件数割合 | できごと |
|---|---|---|
| 平成25年 | 4.3% | |
| 平成26年 | 4.4% | 基礎控除引下げ前の最後の年 |
| 平成27年 | 8.0% | 基礎控除が5,000万円+1,000万円×人数 → 3,000万円+600万円×人数へ |
| 平成30年 | 8.5% | |
| 令和3年 | 9.3% | |
| 令和5年 | 9.9% | |
| 令和6年 | 10.4% |
昔は100人に4人、今は100人に10人。平成27年に境目が4割下がって倍以上になりましたが、それでも9割近い人にはかかりません。「昔は他人事だったが今は違う」と煽られることがありますが、事実は「4%が10%になった」です。
ただし、住んでいる場所で変わる
| 項目 | 全国 | 東京国税局管内 |
|---|---|---|
| 被相続人数 | 1,605,378人 | 328,773人 |
| 申告書の提出に係る被相続人数 | 166,730人 | 53,379人 |
| 課税割合 | 10.4% | 16.2% |
東京国税局の管轄は東京都・神奈川県・千葉県・山梨県です。同じ「実家+預貯金」でも、土地の評価が高い地域では結果が変わります。実家がこの地域にあるなら、平均値ではなく自分の数字で確かめる価値があります。
3. 実家はいくらと評価されるのか
相続税の計算に使うのは、売買価格でも、不動産会社の査定額でもありません。相続税評価額という、独自の計算方法で出した数字です。
家屋は、固定資産税の納税通知書に書いてある数字そのまま
国税庁タックスアンサーNo.4602は、家屋の評価について「固定資産税評価額に1.0を乗じて計算した金額」としています。つまり、毎年春に届く固定資産税の課税明細書の「価格(評価額)」を、そのまま使います。築年数の古い実家なら、想像よりずっと小さい数字であることが多いはずです。
土地は、路線価方式または倍率方式
| 方式 | どんな土地に使うか | 計算 |
|---|---|---|
| 路線価方式 | 路線価が定められている地域 | 路線価(道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額・千円単位)×各種補正率×地積 |
| 倍率方式 | 路線価が定められていない地域 | 固定資産税評価額×一定の倍率 |
路線価図・評価倍率表は、国税庁の「財産評価基準書」で誰でも無料で閲覧できます。年分を選び、都道府県を選び、路線価図または評価倍率表へ進みます。つまり、実家の土地の評価額のおおよそは、誰にも頼まずに今日確かめられます。
「路線価は公示価格の80%」と書きませんでした
この記事では、よく言われる「相続税評価額は市場価格の8割程度」という数字を使っていません。国税庁の路線価公表ページ、財産評価基準書、タックスアンサーNo.4602/4604/4606、財務省の相続税関係ページのいずれにも、この水準の記載を見つけられなかったからです。
一次情報で裏が取れたのは、総務省が「固定資産税の標準宅地の価格は地価公示価格等の7割を目途」と説明している点だけです。相続税評価額が市場価格より低くなるのは通常ですが、その比率を断定して書くことはしません。
相続財産の35%は、土地と家屋
| 種類 | 金額(令和6年分) | 構成比 |
|---|---|---|
| 現金・預貯金等 | 85,602億円 | 34.9% |
| 土地 | 74,074億円 | 30.2% |
| 有価証券 | 43,676億円 | 17.8% |
| その他 | 30,162億円 | 12.3% |
| 家屋 | 11,901億円 | 4.8% |
| (土地+家屋) | 85,975億円 | 35.0% |
平成27年分は土地38.0%+家屋5.3%で43.3%でしたから、比率としては下がっています。それでも実家は、相続財産のなかで最大級の塊です。しかも預金と違って、自分では金額が分かりません。だから不安になります。この記事の3章までで、その金額はもう出せます。
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路線価は出せました。次は「売ったらいくらか」を、匿名のまま桁だけ確かめる
この記事の3章で出したのは相続税評価額で、売れる価格ではありません。ラクウル(株式会社ネクサスプロパティマネジメント/国土交通大臣(1)第10311号)は、匿名のまま桁を確かめられるAI査定と、連絡先を入れて申し込む査定の両方を用意しています。相続税がかかるかどうかを判断する段階では、まず桁が分かれば十分なことも多いはずです。
①匿名のAI査定は「桁を確かめる」ためのものです。実額を知るには連絡先を入れて申し込む必要があり、そのときは担当者から電話が入ります。当サイトは、匿名査定だけで完結させても構わないと考えています。②査定額は「売れる価格」ではありません。③相続税の申告に使うのは路線価であって、査定額ではありません。2つの数字を混ぜないでください。④このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって査定額が下がることはありません。
この記事の4章と5章は、この査定額ではなく路線価で読み進めてください。混ぜると結論が変わります。
4. 小規模宅地等の特例──評価額が2割になる
実家の敷地には、評価額を8割減らす特例があります。これがあるかないかで、結論はまるごと変わります。
| 宅地等の区分 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 特定居住用宅地等(=実家の敷地) | 330㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
路線価20万円/㎡・200㎡の土地なら、4,000万円が800万円になります。これが「基礎控除以下になる」典型パターンです。
ただし、誰が取得するかで要件が変わる
| 取得者 | 要件の骨格 |
|---|---|
| 配偶者 | 追加要件なし。取得するだけで適用されます(措法69条の4第3項2号イ) |
| 同居親族 | 相続開始の直前に被相続人と同じ建物に居住しており、相続開始時から申告期限まで引き続き居住し、かつその宅地を保有していること(同ロ) |
| いわゆる「家なき子」 | 被相続人に配偶者がなく、同居していた相続人もいない場合に限り適用。相続開始前3年以内に、自己・配偶者・3親等内の親族・特別の関係のある法人が所有する家屋に居住したことがない、等(同ハ)。国税庁は6つの要件を挙げています |
「家なき子」は、実家を出て賃貸に住み続けてきた子のための規定です。ただし入口が厳しく、被相続人に配偶者がいる時点で使えません。また「3親等内の親族が所有する家屋」には、親や兄弟の持ち家も含まれます。該当するかどうかは、必ず税理士か税務署で確認してください。
配偶者には、もうひとつ大きな軽減がある
配偶者が実際に取得した正味の遺産額が、①1億6,000万円と②配偶者の法定相続分相当額の、いずれか多い金額までは、配偶者に相続税はかかりません(相続税法19条の2第1項)。実家+預貯金の規模なら、配偶者が取得する分にはほぼかからない、という結論になりがちです。
5. この記事の核──「税額ゼロ」でも申告が必要な場合
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
まず原則から。相続税法27条1項は、課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合で、かつ一定の控除を適用しても納付すべき相続税額があるときに申告義務が生じる、としています。国税庁も「基礎控除額以内であれば申告も納税も必要ありません」と明記しています。
ところが、27条1項が挙げる控除の中に、特例が入っていない
27条1項が列挙するのは「第15条から第19条まで」等であって、19条の2(配偶者の税額軽減)は入っていません。そして小規模宅地等の特例には、次の条文があります。
租税特別措置法第69条の4第7項
第一項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする者の当該相続又は遺贈に係る相続税法第二十七条又は第二十九条の規定による申告書に第一項の規定の適用を受けようとする旨を記載し、同項の規定による計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。
相続税法第19条の2第3項(配偶者の税額軽減)
この軽減は、申告書(更正請求書を含む)に、適用を受ける旨および税額の計算に関する明細を記載した書類等の添付がある場合に限り適用する。
「特例を使ってゼロ」は、申告書を出して初めてゼロになります
出さなければ、ゼロではありません。特例が適用されないまま課税価格が計算され、基礎控除を超えていれば相続税が発生します。しかも期限を過ぎているので、無申告加算税と延滞税が上乗せされます。
2つのケースを並べます
| そもそも基礎控除以下 | 特例を使ってゼロ | |
|---|---|---|
| 例 | 実家1,500万円+預貯金1,500万円=3,000万円/相続人2人(基礎控除4,200万円) | 実家の土地5,000万円+預貯金1,000万円=6,000万円/相続人2人(基礎控除4,200万円)/小規模宅地等の特例で土地を1,000万円に圧縮 → 2,000万円 |
| 申告 | 不要 | 必要 |
| 出さないとどうなるか | 何も起きません | 特例が適用されず、課税価格6,000万円で計算されます。基礎控除4,200万円を超えるので相続税が発生し、加えて無申告加算税・延滞税がかかります |
申告が必要になるケースの一覧
| 状況 | 税額 | 申告 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 正味の遺産額がそもそも基礎控除以下 | 0円 | 不要 | 相続税法27条1項 |
| 小規模宅地等の特例を使って税額0円になった | 0円 | 必要 | 措法69条の4第7項 |
| 配偶者の税額軽減を使って税額0円になった | 0円 | 必要 | 相続税法19条の2第3項 |
| 特定計画山林の特例・農地の納税猶予など、他の申告要件付き特例を使った | 0円 | 必要 | 各特例の申告要件規定 |
| 遺産が未分割のまま期限を迎えた(基礎控除超) | 法定相続分で計算した額 | 必要(+分割見込書) | 相続税法55条ほか |
| 基礎控除を超え、特例なしでも税額が出る | あり | 必要 | 相続税法27条1項 |
6. 期限は10か月。分割がまとまらないときの逃げ道
相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、申告書を提出しなければなりません(相続税法27条1項)。期限日が土日祝の場合はその翌日です。納付の期限も同じ日です(相続税法33条)。
提出先は「被相続人の住所地」の税務署です
相続人の住所地ではありません。国税庁もこの点を明示的に注意しています。実家が遠方にあり、相続人が都市部に住んでいる場合、申告書を出しに行く先は実家側の税務署です。郵送や電子申告も可能ですが、窓口相談を考えている方は移動時間を見込んでおいてください。
10か月で分割がまとまらないとき
兄弟の話し合いがつかない、というのは珍しくありません。その場合でも期限は動きません。未分割の財産は法定相続分で取得したものとして申告します(相続税法55条)。この段階では、小規模宅地等の特例も配偶者の税額軽減も使えません。いったん高い税額で納めることになります。
ただし、逃げ道が用意されています。申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、申告期限から3年以内に分割された場合に特例を適用でき、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をすることで払い過ぎた税金が戻ります(措法69条の4第4項、相続税法19条の2第2項)。
3年以内に分割できないやむを得ない事情がある場合は、税務署長の承認申請により、事情が消滅した日の翌日から4か月以内の分割まで延長できます。
納税資金がないとき──延納と物納
| 延納(相続税法38条) | 物納(相続税法41条) | |
|---|---|---|
| 要件 | 相続税額が10万円超/金銭で納付することを困難とする事由がある/担保を提供(延納税額100万円以下かつ期間3年以下なら不要) | 延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある/日本国内にある相続財産で、定められた順位による/管理処分不適格財産でない |
| 期間 | 不動産等の割合75%以上なら不動産等に対応する部分が最長20年/50%未満なら最長5年 | — |
| 順位 | — | 第1順位=不動産・船舶・国債・地方債・上場株式等/第2順位=非上場株式等/第3順位=動産 |
| 手続 | どちらも「納期限まで(=原則、申告期限までに)」申請書を提出して許可を受ける必要があります。後から言っても間に合いません | |
7. 税率と、申告しなかった場合の代償
税率は法定相続分で計算した金額に対してかかる
相続税の総額は、課税遺産総額を法定相続人が法定相続分に応じて取得したものと仮定した金額に税率を適用して計算します(相続税法16条)。実際の取得割合ではありません。
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | — |
| 1,000万円超 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
そして、2割加算があります。一親等の血族および配偶者以外の者が取得した場合、その者の相続税額に20%が加算されます(相続税法18条)。兄弟姉妹・甥姪・孫(代襲相続人でない孫養子を含む)が該当します。「孫に直接相続させれば一代飛ばせる」という話には、この加算が付いてきます。
申告しなかった場合
| 区分 | 税率 | 根拠 |
|---|---|---|
| 無申告加算税(原則) | 15% | 国税通則法66条1項 |
| うち50万円を超える部分 | +5%(=20%) | 同66条2項 |
| うち300万円を超える部分 | +15%(=30%) | 同66条3項 |
| 調査の通知前に自主的に期限後申告した場合 | 5% | 同66条8項 |
| 法定申告期限から1か月以内の期限後申告で一定要件を満たす場合 | 不適用(0%) | 同66条9項 |
| 重加算税(隠蔽・仮装+無申告) | 40% | 同68条2項 |
| 延滞税(令和8年) | 納期限の翌日から2か月まで2.8%/それ以後9.1% | 同60条・国税庁 |
注目していただきたいのは、下から3行目です。調査の通知が来る前に自分から出せば5%、法定申告期限から1か月以内なら一定要件のもとで0%。「気づいた時点で自分から出す」ことに、はっきりした金銭的な差が付けられています。
「無申告だから見つからない」は成り立ちません
| 項目 | 令和6事務年度 |
|---|---|
| 相続税の実地調査の件数 | 9,512件 |
| うち申告漏れ等の非違件数 | 7,826件 |
| 非違割合 | 82.3% |
| 実地調査1件当たりの追徴税額 | 867万円 |
| 無申告事案に対する実地調査 | 650件(うち非違562件・追徴142億円) |
| 簡易な接触(電話・書面での問い合わせ) | 21,969件(追徴138億円) |
実地調査に入られると、10件中8件超で非違が見つかっています。そして無申告事案だけで年650件の実地調査が行われ、「簡易な接触」は年間2万2千件近く。これが「相続についてのお尋ね」が届くケースに対応します。
自分で判定できる無料ツールがあります
国税庁は「相続税の申告要否判定コーナー」をウェブ上で公開しています。財産の金額を入力していくと、申告が必要かどうかを判定できます。また「相続税の申告要否検討表」は、「相続についてのお尋ね」が届いたときの提出に代えることもできる書式です。どちらも無料です。
8. 売るなら──2つの特例は選択適用
相続した実家を売る場合、譲渡所得税の場面で使える特例が2つあります。ただし、この2つは併用できません。
| 取得費加算の特例(措法39条) | 空き家の3,000万円特別控除(措法35条3項) | |
|---|---|---|
| 使える人 | 相続税を納めた人だけ | 相続税の有無を問わない |
| 内容 | 譲渡所得の計算上、取得費に相続税額のうち譲渡資産に対応する部分を加算 | 譲渡所得から最高3,000万円を控除(令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上なら2,000万円) |
| 期限 | 相続開始日から3年10か月(申告期限10か月+3年) | 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで/制度自体は令和9年12月31日までの譲渡 |
| 主な要件 | 相続税額があること | 昭和56年5月31日以前に建築/区分所有建物登記がされていない/相続開始の直前に被相続人以外に居住者がいなかった/相続の時から譲渡の時まで事業・貸付け・居住の用に供されていない |
併用できない根拠は、措法35条3項の柱書きにあります。対象となる譲渡から「第三十九条の規定の適用を受けるもの及びその譲渡の対価の額が一億円を超えるもの」を除く、と明記されています。除外規定は35条3項の側に置かれていて、39条の側にはありません。
整理するとこうなります。相続税を払った人は、取得費加算と空き家特例のどちらが有利かを比べて選ぶ。相続税がかからなかった人(=約9割)は、取得費加算は最初から使えないので、空き家特例だけを検討することになります。
9. 今日からできること
| 順 | やること | どこで |
|---|---|---|
| 1 | 法定相続人の数を確定して基礎控除額を出す(相続放棄した人も数える/養子は1人または2人まで) | 戸籍を集める。相続登記でも必要になります |
| 2 | 家屋の評価額を確認する | 固定資産税の課税明細書の「価格(評価額)」そのまま |
| 3 | 土地の路線価を調べる | 国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」(無料) |
| 4 | 預貯金・有価証券・生命保険金(500万円×相続人の数を超える部分)を足し、借入金・葬式費用を引く | 残高証明書を金融機関へ |
| 5 | 合計が基礎控除以下なら、相続税なし・申告なし | これが約9割 |
| 6 | 超えるなら、小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減を検討。ゼロになる場合でも10か月以内に申告書を出す | 税理士または所轄税務署 |
| 7 | 分割がまとまらないなら、法定相続分で申告+「申告期限後3年以内の分割見込書」 | 被相続人の住所地の税務署 |
| 8 | 納税資金がないなら、延納・物納の申請は申告期限までに | 同上 |
| 9 | 迷ったら、国税庁「相続税の申告要否判定コーナー」で自分で判定する | 無料・ウェブ上 |
相続税評価額と、売れる価格は別物です
3章で出した金額は税金の計算のための数字であって、その値段で売れるという意味ではありません。逆に、査定額もまた「売れる価格」ではなく、不動産会社の見立てです。
相続税がかかるかどうかは路線価で、売るかどうかは実勢価格で。2つの数字は別々に確かめてください。
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10か月の期限があるなら、査定は早いほうが選択肢が残ります
納税資金が足りないとき、延納も物納も「申告期限までに申請」が要件です。実家を売って納税資金にあてる場合も、売却には数か月かかります。不動産SHOPナカジツは、愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本で自社買取と仲介の両方を扱う会社です。「いくらで、いつまでに現金になるか」を早い段階で知っておくと、10か月の使い方が変わります。
①上の7県以外の実家は対象外です。②査定額は「売れる価格」ではありません。③相続人が複数いるなら、査定を頼む前に「売る方針でよいか」を全員で確認してください。遺産分割がまとまっていない段階で1人が動くと、話がこじれます。④売ると譲渡所得税が別にかかります(相続した実家を売ったときの譲渡所得税)。相続税だけで判断しないでください。⑤このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって査定額が下がることはありません。
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相続税がかかるかどうかの判定は、この記事の1〜5章で自分でできます。先にそれを終えてから査定を頼むと、話が早く終わります。
よくある質問
実家を相続したら、相続税は必ずかかりますか
かかりません。令和6年分の課税割合は10.4%で、亡くなった方1,605,378人のうち申告書が出されたのは166,730人です。基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、相続人2人なら4,200万円。実家(土地+家屋の相続税評価額)と預貯金などを足した正味の遺産額がこれ以下なら、相続税も申告も不要です。ただし首都圏(東京国税局管内)の課税割合は16.2%です。
実家の評価額はどうやって調べますか
家屋は、固定資産税の課税明細書の「価格(評価額)」をそのまま使います(財産評価基本通達89・国税庁No.4602)。土地は路線価方式か倍率方式です。国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で路線価(千円単位)を調べ、補正率と地積を掛けます。路線価が定められていない地域なら、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けます。どちらも無料で、今日確認できます。
相続放棄した兄弟がいます。基礎控除は減りますか
減りません。相続税法15条2項は、相続の放棄があった場合には「その放棄がなかったものとした場合の相続人の数」をいうと定めています。放棄した人も頭数に入ります。なお養子については人数制限があり、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか算入できません。ただし特別養子縁組による養子や、代襲相続人となった直系卑属は実子とみなされ、この制限を受けません。
小規模宅地等の特例で税額がゼロになりました。申告は要りませんか
必要です。ここがいちばんの落とし穴です。租税特別措置法69条の4第7項は、この特例が「申告書に適用を受けようとする旨を記載し、明細書等の添付がある場合に限り、適用する」と定めています。出さなければ特例は適用されず、圧縮前の評価額で計算されます。基礎控除を超えていれば相続税が発生し、期限を過ぎている分、無申告加算税と延滞税も付きます。配偶者の税額軽減も同じ構造です(相続税法19条の2第3項)。
「そもそも基礎控除以下」と「特例を使ってゼロ」は何が違うのですか
申告の要否がまったく違います。前者は相続税法27条1項により申告義務が生じないので、何もしなくて構いません。後者は申告書を出して初めてゼロになります。たとえば実家の土地5,000万円+預貯金1,000万円=6,000万円、相続人2人(基礎控除4,200万円)というケースで、小規模宅地等の特例により土地を1,000万円に圧縮して2,000万円になった場合。申告しなければ、課税価格は6,000万円のままです。
期限の10か月に間に合いそうにありません
期限は動きません。相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月です(相続税法27条1項)。遺産分割がまとまらない場合は、法定相続分で取得したものとして申告します(相続税法55条)。この段階では特例が使えないので、いったん高い税額になります。ただし「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、3年以内に分割できたときに特例を適用でき、分割の日の翌日から4か月以内の更正の請求で税金が戻ります。
申告書はどこの税務署に出しますか
被相続人(亡くなった方)の住所地を所轄する税務署です。相続人の住所地ではありません。国税庁もこの点を明示的に注意しています。実家が遠方で、相続人が都市部に住んでいるケースでは間違えやすいところです。郵送・電子申告も可能ですが、窓口で相談したい場合は移動時間を見込んでください。
納税するお金がありません
延納と物納があります。延納は相続税額が10万円を超え、金銭納付が困難な事由がある場合に使えます(延納税額100万円以下かつ期間3年以下なら担保も不要)。物納は「延納によっても金銭で納付することを困難とする事由」が要件で、第1順位は不動産です。どちらも「納期限まで(=原則、申告期限までに)」申請書を提出して許可を受ける必要があります。後から言っても間に合いません。実家を売って納税資金にあてる選択肢も、早い段階で並べておいてください。
申告しないままでいると、どうなりますか
無申告加算税は原則15%、50万円超の部分は20%、300万円超の部分は30%(国税通則法66条)。隠蔽・仮装があれば重加算税40%(同68条2項)。延滞税は令和8年で納期限の翌日から2か月まで2.8%、それ以後9.1%です。令和6事務年度の実地調査は9,512件で、非違割合は82.3%、1件当たりの追徴税額は867万円。無申告事案だけで650件の実地調査が行われています。なお、調査の通知前に自主的に期限後申告すれば5%、法定申告期限から1か月以内なら一定要件のもとで0%です。気づいた時点で動くほうが、はっきり安くなります。
実家を売るとき、相続税を払っていると何か有利ですか
取得費加算の特例(措法39条)が使えます。譲渡所得の計算上、取得費に相続税額のうち譲渡資産に対応する部分を加算できる制度で、期限は相続開始日から3年10か月です。ただし、空き家の3,000万円特別控除とは併用できません。措法35条3項の柱書きが「第三十九条の規定の適用を受けるもの」を対象から除いているためです。どちらが有利かを比べて選ぶことになります。
相続税がかからなかった場合、実家の売却で使える特例はありますか
空き家の3,000万円特別控除(措法35条3項)です。取得費加算は相続税を納めた人しか使えないので、約9割の方はこちらだけを検討することになります。要件は厳しく、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、区分所有建物登記がされていないこと、相続開始の直前に被相続人以外に居住者がいなかったこと、相続の時から譲渡の時まで事業・貸付け・居住の用に供されていないことなど。期限は相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ制度自体が令和9年12月31日までの譲渡が対象です。
この記事で確認できなかったこと
- 「路線価は公示価格のおおむね80%」という水準。国税庁の路線価公表ページ、財産評価基準書、タックスアンサーNo.4602/4604/4606、財務省の相続税関係ページのいずれにも記載を見つけられませんでした。裏が取れたのは、総務省が「固定資産税の標準宅地の価格は地価公示価格等の7割を目途」としている点のみです。本文では80%という数字を使っていません。
- 令和5年分の課税価格合計・1人当たり課税価格。PDFから直接読み取れず、令和6年分の実数と対前年比から逆算した値しか得られなかったため、本文に載せていません。
- 令和6年分の相続財産の構成比(%)そのもの。PDFの構成比グラフからの直接読み取りが不安定でした。本文の構成比は、同資料の金額(土地74,074/家屋11,901/現金・預貯金等85,602/有価証券43,676/その他30,162、合計245,415億円)から算出したものです。
- 財産評価基本通達11・13・14・21・89の本文。国税庁サイトの通達ページを取得できませんでした。通達番号自体はタックスアンサーの「根拠法令等」欄で確認しています。
- 「被相続人の住所地の税務署に提出」の条文上の根拠。国税庁No.4205は明記していますが、根拠とされる相続税法附則の本文は取得できませんでした(相続税法62条=納税地の一般規定までは確認済み)。
- 相続税法38条(延納)の担保提供に関する項番。担保要件そのものは国税庁No.4211で確認しましたが、条文上の項番を確定できませんでした。
- 東京国税局以外の国税局別の課税割合。東京国税局(16.2%)のみ確認しています。
- 無申告加算税の「調査通知後・更正等の予知前」の各率。条文の括弧書きから「各率から5%を減じた割合」と読めますが、区分ごとの最終的な率の裏取りは条文の読み取りに依拠しています。本文では自主申告(5%)と1か月以内(0%)のみを書きました。
- 令和8年分の路線価の変動率など。財産評価基準書で令和8年分が最新として公開されていることは確認しましたが、内容までは確認していません。
まとめ
- 基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数。相続人2人なら4,200万円。これを超えなければ、相続税も申告も要りません。
- 課税割合は10.4%(令和6年分)。平成26年は4.4%、平成27年の基礎控除引下げで8.0%に。それでも9割近い人にはかかりません。
- ただし東京国税局管内(東京・神奈川・千葉・山梨)は16.2%。地価の高い地域では、平均値ではなく自分の数字で確かめてください。
- 相続放棄した人も基礎控除の頭数に入ります。養子は実子がいれば1人、いなければ2人まで。
- 家屋の評価額は固定資産税の課税明細書の「価格」そのまま。土地は路線価図で無料で調べられます。
- 小規模宅地等の特例は330㎡まで80%減額。4,000万円の土地が800万円になります。
- この記事の核心──特例を使って税額ゼロになった人は、申告書を出さないと特例そのものが適用されません(措法69条の4第7項、相続税法19条の2第3項)。「そもそも基礎控除以下」とはまったく違います。
- 期限は10か月。提出先は被相続人の住所地の税務署です。分割がまとまらないなら「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付。
- 延納・物納の申請は、申告期限までに出さないと使えません。
- 気づいた時点で自分から出すと安くなります。調査の通知前の自主申告なら無申告加算税は5%、法定申告期限から1か月以内なら一定要件のもとで0%。
- 売るときは、取得費加算と空き家の3,000万円特別控除は選択適用です。相続税を払っていない約9割の方は、空き家特例だけを検討することになります。
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