相続した実家の取得費が分からない|概算5%で払いすぎる税金と、それを避ける3つの手

【PR】本ページはプロモーションを含みます。国税庁の資料は発行元のページで確認したものです。

最終更新:2026年8月16日

結論だけ先に

  • 親が買ったときの契約書が見つからないと、取得費は売った金額の5%として計算されます(国税庁 No.3258)。4,000万円で売れば取得費はたった200万円です。
  • 「3,000万円特別控除があるから大丈夫」は誤りです。下の試算では、控除を使ってもなお121万8,900円の差が出ました。契約書は控除とは別に効きます。
  • 建物については、契約書がなくても国税庁の「建物の標準的な建築価額表」から取得費を計算できます。ただし木造は、築34年で「税金の計算に使える建物の取得費」が取得価額の5%まで下がり切ります(建物の市場価値の話ではありません)。古い木造の実家では、この手は効きません。効くのは土地です。

根拠と計算過程は本文にあります。急いでいる方は、下の目次から必要な章だけ読んでください。

まず、いくら違うのかを見てください

「取得費が分からない」という話は、抽象的に説明されても切実さが伝わりません。先に金額を出します。

条件は次のとおりです。相続した実家としては、ごく標準的な想定です。

売却価格 4,000万円
建物 昭和55年築・木造・延床100㎡
売却年 2026年(築46年)
譲渡費用 200万円(仲介手数料・印紙・測量など)
親が買ったときの土地代 1,500万円(契約書がある場合)
契約書が見つかった 見つからなかった
土地の取得費 1,500万円 200万円
(4,000万円×5%)
建物の取得費 46万2,500円
取得費 合計 1,546万2,500円 200万円
譲渡所得 2,253万7,500円 3,600万円
税額(3,000万円控除なし) 約457万8,000円 約731万3,000円
税額(3,000万円控除あり) 0円 121万8,900円

税率20.315%(所得税15%+復興特別所得税=所得税額の2.1%+住民税5%。国税庁 No.3208 の各構成要素から当サイトが計算)で試算。建物の取得費の出し方は後述します。なお令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合、控除額は3,000万円ではなく2,000万円になります(国税庁 No.3306)。その場合、上表の「控除あり・契約書が見つかった」は0円ではなく約51万5,000円、「見つからなかった」は約325万円になります

差は273万5,000円。3,000万円特別控除を使えた場合でも121万8,900円残ります。

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。「空き家の3,000万円特別控除が使えるから、契約書はなくても平気」という説明を見かけますが、正しくありません。控除は譲渡所得から3,000万円を引くだけで、取得費の穴を埋めてはくれません。譲渡益が3,000万円を超えた瞬間に、契約書の有無がそのまま税額の差になって出てきます。

契約書があるかどうかで、これだけ違う 2,735,000円 税額の差 契約書がある 4,578,000円 契約書がない 7,313,000円 売却4,000万円・昭和55年築の試算。控除なしの場合

3,000万円控除そのものの要件は空き家の3,000万円特別控除に、譲渡所得税の計算の順番は相続した実家を売ったときの譲渡所得税に書いています。

なぜ「親が買ったときの金額」が必要なのか

相続した不動産を売るときは、あなたが相続した時点の価値ではなく、亡くなった親が買ったときの金額を取得費に使います。

相続や贈与によって取得したときは、被相続人や贈与者の取得の時期がそのまま取得した相続人や受贈者に引き継がれます

出典:国税庁 タックスアンサー No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」(令和7年4月1日現在法令等/2026年8月16日確認)。根拠法令として所得税法33条・38条・60条が挙げられています

つまり、相続税評価額でもなければ、相続したときの時価でもありません。昭和や平成の初めに親が払った金額の証拠が要る、ということです。

これが厄介な理由は2つあります。ひとつは、40年前・50年前の売買契約書を保管している家がそもそも少ないこと。もうひとつは、実家の片付けのときに、その契約書ごと処分されてしまうことです。順番として、片付けの前に書類を探すのが正解です。

片付けそのものの費用と、業者に頼むときに何を確認するかは遺品整理の費用にまとめました。書類を探し終えてから読んでください。順番を逆にすると、この記事が必要になります。

取得費が分からないときの5%ルール

そもそも契約書を失わないために、実家の片付けで捨ててはいけない書類9つを先に読んでおいてください。片付けの現場で消えるのは、たいていこの1枚です。

国税庁は次のように案内しています。

売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます

出典:国税庁 タックスアンサー No.3258「取得費が分からないとき」(令和7年4月1日現在法令等/2026年8月16日確認)。根拠法令として所得税法33条・38条、租税特別措置法31条の4、租税特別措置法通達31の4-1が挙げられています

同じページには、実際の取得費が5%を下回るときも5%を使ってよいと書かれています。つまり5%は「下限の保証」でもあります。バブル期の高値づかみで実際の取得費のほうが高い場合は、当然そちらを使います。

ただし、この5%は売った金額に対する5%です。地価が上がった土地ほど不利になります。4,000万円で売れば200万円、6,000万円で売れば300万円。売却額が大きいほど「本来の取得費との差」が広がる仕組みです。

手1:契約書がなくても、取得費の証拠になりうる資料

売買契約書が最強ですが、それだけではありません。金額が特定できる資料は、契約書でなくても構いません。実家で探すなら、次の順で当たってください。

探すもの どこにあるか 何が分かるか
売買契約書・重要事項説明書 権利証(登記済証)と一緒に保管されていることが多い 購入代金そのもの
住宅ローンの金銭消費貸借契約書 同上、または借入先の金融機関 借入額。頭金と合わせて購入代金を推定できる
登記事項証明書の抵当権設定登記 法務局(誰でも取得できる) 債権額。当時いくら借りたかが公的記録として残っている
通帳・振込控え 実家の書類箱、金融機関の取引履歴 支払の事実と金額
分譲時のパンフレット・価格表 実家、分譲主(存続していれば) 当時の分譲価格
購入時の仲介手数料の領収書 実家の書類箱 手数料から逆算して売買代金を推定できる

実務でいちばん見落とされているのが抵当権設定登記の債権額です。法務局で登記事項証明書(全部事項証明書)を取れば、抹消済みの抵当権も「下線付き」で残っています。手数料は書面請求で1通600円、オンライン請求・送付(郵送)で520円、オンライン請求・窓口交付で490円です(令和7年4月1日改定後の額)。

出典:盛岡地方法務局「主な手数料一覧【令和7年4月1日〜】」(2026年8月16日確認)

ただし注意点があります。借入額イコール購入代金ではありません。頭金を入れていればその分は含まれず、諸費用まで借りていれば逆に多く出ます。これ単独で取得費を確定させられるものではなく、他の資料と組み合わせて説明するための材料だと考えてください。

契約書でなくても、金額が特定できれば 売買契約書 購入代金そのもの 直接 分譲時の価格表 当時の分譲価格 直接 抵当権設定登記 債権額。法務局で誰でも取れる 推定 住宅ローンの契約書 借入額から推定します 推定 借入額イコール購入代金ではありません

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取得費が出ないなら、「売らない出口」の数字も見ておく

5%概算取得費で計算すると、売った額のほとんどが利益とみなされ、税金が重くなります。売る以外の使い道なら、そもそも譲渡所得税がかかりません。土地活用の提案は、取得費が出ない土地ほど比べる価値があります。

①一括で複数社に依頼する形です。1社だけ選ぶと提案書は届きません。成果条件がそう決められています。
②地域や物件の条件によっては、提案できる会社が見つからないことがあります。その場合は提案書が届きません。
③届くのは「提案書」であって、売れる価格でも確定した金額でもありません。
④申し込むと、各社から連絡が入ります。連絡の受け方を先に決めておいてください。
⑤すでに方針が決まっているなら、請求しなくてかまいません。迷っている段階の材料です。

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壊す場合の費用は実家の解体費用と全国の解体補助金一覧で、税金の側は空き家の3,000万円特別控除で確認できます。持ち続ける場合の年額は空き家の維持費にまとめました。

手2:建物は、国税庁の表から取得費を計算できます

ここからが、この記事のいちばん実用的な部分です。

国税庁は「譲渡所得の申告のしかた」の中で建物の標準的な建築価額表を公表しています。国土交通省の建築着工統計をもとに、建築年ごと・構造ごとの1㎡あたりの標準的な建築単価を並べた表です。契約書がなくても、建築年・構造・延床面積さえ分かれば、建物の取得価額を計算できます。

建築年 木造・木骨モルタル造 鉄骨鉄筋コンクリート造 鉄筋コンクリート造 鉄骨造
昭和50年 67.7 126.4 97.4 60.5
昭和55年 92.5 149.4 129.7 84.1
昭和60年 104.2 172.2 144.5 96.9
平成2年 131.7 286.7 222.9 147.4
平成7年 158.3 228.8 199.0 143.2
平成12年 159.0 204.3 182.6 132.3
平成17年 151.9 185.7 171.5 132.8
平成22年 156.5 226.4 205.9 163.0
平成27年 165.4 262.2 240.2 197.3
令和2年 172.0 279.2 276.9 230.2
令和5年 204.1 366.7 314.3 281.1

単位:千円/㎡。出典:国税庁「建物の標準的な建築価額表」(国土交通省「建築着工統計」を基に算出/2026年8月16日確認)。上表は当サイトが5年おきに抜粋したものです。中間の年は原典に載っています

先ほどの試算の建物は、これを使って出しました。

① 建築時の取得価額 92.5千円/㎡ × 100㎡ = 925万円
② 償却費相当額 925万円 × 0.9 × 0.031 × 46年 = 1,187万1,450円
→ 取得価額の95%(878万7,500円)を超えるため、878万7,500円で頭打ち
③ 建物の取得費 925万円 − 878万7,500円 = 46万2,500円

②の計算式と95%の上限は国税庁が定めているものです。

建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数=減価償却費相当額

出典:国税庁 タックスアンサー No.3261「建物の取得費の計算」(令和7年4月1日現在法令等/2026年8月16日確認)。償却率は法定耐用年数の1.5倍の年数に対応する旧定額法によるもの。減価償却費相当額は取得価額の95%を超えないとされています

構造(非業務用) 償却率
木造 0.031
木骨モルタル造 0.034
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 0.015
金属造①(骨格材の肉厚3mm以下) 0.036
金属造②(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) 0.025

出典:国税庁「譲渡所得の申告のしかた」掲載の非業務用建物の償却率(2026年8月16日確認)

建物の価値が「5%まで落ち切る」年数を計算しました

ここは他で見たことがないので、自分で計算しました。

償却費相当額には取得価額の95%という上限があります。逆に言えば、その上限に達した瞬間に、建物の取得費は取得価額の5%で固定され、それ以上は減りません。いつ到達するかは、償却率だけで決まります。

計算式は 0.95 ÷(0.9 × 償却率)です。

構造 償却率 建物の取得費が5%で底を打つ築年数
金属造①(肉厚3mm以下) 0.036 約29.3年
木骨モルタル造 0.034 約31.0年
木造 0.031 約34.1年
金属造②(肉厚3mm超4mm以下) 0.025 約42.2年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 0.015 約70.4年

当サイトによる計算。0.95÷(0.9×償却率)。国税庁 No.3261 の算式と95%上限、および国税庁「譲渡所得の申告のしかた」の償却率による

建物の取得費が5%で底を打つ築年数 金属造(3mm以下) 29.3年 木骨モルタル造 31.0年 木造 34.1年 金属造(3〜4mm) 42.2年 鉄骨鉄筋コンクリート・RC 70.4年 0.95÷(0.9×償却率)。木造は築34年で底を打つ

この表から言えることは、はっきりしています。

木造の実家は、築34年を過ぎた時点で、建物の取得費を頑張って計算しても取得価額の5%にしかなりません。昭和・平成初期に建った木造住宅なら、ほぼ全部がここに入ります。先ほどの試算で建物が46万円しか出なかったのは、そのためです。

つまり古い木造の実家では、建築価額表を使う手は「あれば拾える程度」の効果しかありません。効くのは土地です。探すべき資料の優先順位も、土地の購入代金を示すものが先です。

逆に、鉄筋コンクリート造のマンションを相続した場合は事情が変わります。底を打つのが約70年後なので、築40年でも建物の取得費がしっかり残ります。この場合は建築価額表を使う価値が大きいです。

手3:土地の取得費がどうしても分からないとき

建物は表から出せても、土地は建築着工統計のような公的な単価表がありません。ここが最後の壁です。

実務では、日本不動産研究所が公表している市街地価格指数を使って、売却時の価格から購入時点まで遡って取得費を推計する方法が知られています。

ただし、当サイトはこの方法を「使えます」とは書きません。理由は3つあります。

  • 国税庁が公表資料でこの方法を認めた形跡を、確認できませんでした。No.3258 に書かれているのは5%のことだけです。
  • 市街地価格指数は六大都市・全国などの平均であって、個別の土地の値動きではありません。適用できるかどうかは土地ごとに違います。
  • 否認された場合、5%で申告するより不利になることがあります(過少申告加算税・延滞税)。

この方法を検討するなら、必ず税理士に相談してください。ネットの記事だけを根拠に自分で申告するのは、割に合いません。仮に土地の取得費が1,000万円上振れしても税額の差は約203万円ですが、否認されたときのコストと手間はそれなりに大きいものです。

逆に言えば、税理士に相談する価値がはっきりあるのは、この論点です。相続不動産の売却で税理士に頼むかどうか迷っているなら、判断材料はここに置いてください。

いつまでに、何をするか

順番 やること いつ
1 片付けの前に、書類を探す。権利証・契約書・ローン書類・通帳をまとめて確保する 相続後すぐ
2 法務局で登記事項証明書を取り、抵当権設定登記の債権額を確認する 1と同時期
3 固定資産税の課税明細書で、建物の構造・延床面積・建築年を確認する 1と同時期
4 建築価額表で建物の取得費を計算しておく 売却を決める前
5 売却する年の翌年2月16日〜3月15日に確定申告 売却の翌年

いちばん大事なのは1番です。遺品整理業者に一括で任せると、書類は「価値のない紙」として処分されます。数百万円の税金がかかっている紙だと知っているのは、相続人だけです。

書類を探すのは、片付けの前です 1 書類を探す 権利証・契約書・ローン・通帳 2 登記事項証明書を取る 抵当権設定登記の債権額を見る 3 課税明細書を見る 構造・延床面積・建築年 4 建物の取得費を計算 建築価額表で。売却を決める前に 5 確定申告 売却の翌年2月16日〜3月15日

実家をどう処分するかの全体像と、他の期限との関係は実家じまい完全ガイドにまとめています。売却額そのものを上げる話は売却相場を、自分で調べる3つの方法と不動産一括査定サイトの比較を読んでください。取得費を200万円積み増すより、売却価格を200万円上げるほうが、手取りへの効き方は大きくなります。

取得費が分からなくても、売れる金額が分からなければ税額は試算できません。概算取得費で計算するにしても、起点になるのは売却価格です。まず査定で見込み額を1つ出してから、この記事の計算に戻ってください。査定は無料です。

先に場所を確認してください。不動産SHOPナカジツが受け付けられるのは愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本とその周辺だけです(全40店舗のうち39店舗がこの7県。同社の店舗一覧で確認/2026年8月19日)。それ以外の道府県にある実家は、申し込んでも査定は返ってきません。対象外の方は、ラクウルの買取査定のほうをご覧ください。

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査定を出したあとは、媒介契約の種類を決める段階です。この記事で書いたレインズの登録証明書の確認と、仲介と買取の違いを、契約書に判を押す前に済ませておいてください。

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②LINE相談からの申込は対象外です。フォームから申し込んでください。
③日本国外にお住まいの方は対象外です。
④売却を考えていない相談は対象外です。迷っている段階なら「まだ決めていませんが、金額を知りたい」と伝えてください。
1社の金額で決めず、仲介の査定と並べて比べてください。

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ただし、順番だけは守ってください。査定より先に書類です。査定の連絡を待っている間に、権利証・売買契約書・住宅ローンの書類・通帳を確保してください。片付けが始まると、この記事で書いた360万円分の紙が捨てられます。仲介側の相場は売却相場を、自分で調べる3つの方法にあります。

よくある質問

ここは「どこを探すか」「どの窓口で何を頼むか」まで書きます。取得費の話は、動くのが早いほど選べる手が多いからです。

Q. 実家のどこを探せばいいですか。

A. 片付けを始める前に、この順で当たってください。順番が大事です。片付けと同時進行にすると、探している最中に捨てられます。

探す場所 入っていることが多いもの
1 権利証(登記済証)と同じ場所。和封筒や紙の袋にまとめられていることが多い 売買契約書・重要事項説明書。いちばん強い証拠です
2 仏壇の引き出し、桐の箱、たんすの最上段、押入れの天袋 権利証・通帳・実印。「大事なもの」は1か所にまとまっていることが多い
3 金融機関の貸金庫 権利証・契約書。名義人が亡くなると開けられなくなり、相続の手続きを経る必要があります。早めに銀行へ確認を
4 確定申告書の控えの束 過去に不動産を売っていれば、そのときの取得費の資料が残っていることがあります
5 古い通帳・振込控え 支払の事実と金額。頭金の振込が残っていることがあります
6 分譲時のパンフレット・価格表 当時の分譲価格。分譲主が存続していれば問い合わせる手もあります

見つけたら、その場で写真を撮ってください

原本を持ち帰る前に、スマホで全ページ撮ることをおすすめします。相続では書類が兄弟間を行き来し、「誰かが持っている気がするが、どこにあるか分からない」状態になりがちです。画像が1つあれば、少なくとも金額の議論は止まりません。

そして、遺品整理を業者に一括で任せる前に、必ずここを終わらせてください。数百万円の税金がかかっている紙だと知っているのは、相続人だけです。業者にとっては、古い紙束です。

Q. 契約書が見つかりません。ほかに証拠になるものはありますか。

A. あります。金額が特定できれば、契約書でなくても構いません。実務でいちばん見落とされているのが、登記に残った抵当権の債権額です。

法務局で登記事項証明書(全部事項証明書)を取ると、すでに返し終わって抹消された抵当権も「下線付き」で残っています。当時いくら借りたかが、公的な記録として出てきます。

請求方法 手数料(令和7年4月1日〜)
書面請求(窓口・郵送) 1通 600円
オンライン請求・郵送で受取 1通 520円
オンライン請求・窓口で受取 1通 490円

出典:盛岡地方法務局「主な手数料一覧【令和7年4月1日〜】」(2026年8月16日確認)

★ 出てこなかったときに、もう1つ聞く窓口があります

登記はある時期に紙からコンピュータへ移し替えられており、移し替えの時点ですでに抹消されていた事項は、いまの証明書に載っていないことがあります。昭和のうちに完済した住宅ローンは、ここに該当する可能性があります。

窓口でこう聞いてください。
「この土地の閉鎖登記簿(閉鎖事項証明書)に、抵当権の記載が残っていないか確認したいのですが、請求できますか」
取扱いは法務局によって異なるので、まず電話で確認するのが確実です。

ただし、借入額はそのまま購入代金ではありません。頭金を入れていればその分は含まれず、諸費用まで借りていれば逆に多く出ます。これ単独で取得費を確定させるものではなく、ほかの資料と組み合わせて説明するための材料だと考えてください。

Q. 相続税の申告書に不動産の評価額が載っています。これは取得費に使えますか。

A. 使えません。相続税評価額は相続した時点の評価であって、親が買ったときの金額ではありません。国税庁 No.3270 のとおり、引き継ぐのは被相続人の取得費と取得の時期です。

ただし、相続税を納めた人には別の制度があります

取得費加算の特例です。納めた相続税の一部を取得費に加算できます。国税庁 No.3267 は「その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること」と定めています。

ここは期限が命です。相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月なので、実務上のリミットはおおよそ「相続から3年10か月」になります。売却の段取りに数か月かかることを考えると、余裕はありません。相続税を納めた方は、売る時期をこの期限から逆算してください。

Q. 土地と建物をまとめた金額の契約書しかありません。

A. 分けられます。建物のほうを先に計算して、残りを土地にします。

やること
1 国税庁の「建物の標準的な建築価額表」で、建築年 × 構造の単価(千円/㎡)を引く
2 単価 × 延床面積=建物の取得価額
3 契約書の総額 − ②=土地の取得費

建築年・構造・延床面積は、固定資産税の課税明細書に載っています。毎年4〜6月に納税通知書と一緒に届く紙です。この3つさえ分かれば、契約書がなくても建物側は計算できます。

消費税の記載がある契約書なら、もう1つ手があります。消費税は建物にしかかかりません(土地の譲渡は非課税です)。したがって消費税額を当時の税率で割り戻せば、建物価格が出ます。税率は時期で変わっているので、契約日の税率を確認してください。

Q. うちは木造で築40年です。建物の取得費を計算する意味はありますか。

A. 正直に言うと、ほとんどありません。木造は築34年ほどで、建物の取得費が取得価額の5%まで下がり切ります。

構造 償却率 取得費が5%で底を打つ築年数
金属造①(骨格材の肉厚3mm以下) 0.036 約29.3年
木骨モルタル造 0.034 約31.0年
木造 0.031 約34.1年
金属造②(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) 0.025 約42.2年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 0.015 約70.4年

当サイトによる計算。0.95 ÷(0.9 × 償却率)。国税庁 No.3261 の算式と95%上限、および国税庁「譲渡所得の申告のしかた」の償却率によります(2026年8月16日確認)。

だから、探すべき資料の優先順位が変わります

古い木造の実家では、力を入れるべきは土地の購入代金を示す資料です。建物側は「あれば拾える程度」の効果しかありません。限られた時間を、土地のほうに使ってください。

逆に、鉄筋コンクリート造のマンションを相続した場合は事情が変わります。底を打つのが約70年後なので、築40年でも建物の取得費がしっかり残ります。この場合は建築価額表を使う価値が大きいので、必ず計算してください。

Q. 兄弟で共有している場合はどうなりますか。

A. 取得費も持分に応じて按分します。5%ルールを使う場合も同じです。

そして、手続きの数が増えます。共有のまま売ると全員の合意が必要で、確定申告も全員がそれぞれ行います。ひとりでも申告を忘れると、その人だけが加算税・延滞税の対象になります。

共有だからこそ、資料は1か所にまとめてください

取得費の資料は、共有者全員の税額に効きます。誰かひとりが持っているだけだと、申告の時期に探し直しになります。見つけた時点で全ページを撮って、全員に共有しておいてください。これは、あとで確実に効きます。

共有そのもののリスクと進め方は実家じまい完全ガイドの STEP4 と、仲介と買取の違いの共有持分の項にあります。

Q. 5%で申告したあとに契約書が出てきました。やり直せますか。

A. できます。申告期限から5年以内なら、更正の請求で還付を求められます。ただし手続きは自分で進めることになるので、金額が大きい場合は税理士に依頼するほうが確実です。

とはいえ、これは最後の手段です。「見つからないから5%で出す」と決める前に、探し切ったかどうかを確認してください。売った家は、たいてい取り壊されるか、他人のものになります。あとから家の中を探すことは、もうできません。

Q. 建物を解体してから売る場合、建物の取得費はどうなりますか。

A. 建物の取得費と取壊し費用は、譲渡費用または取得費として扱えます。その意味では、解体しても消えません。

ただし、解体には税金の別の落とし穴があります。順番と時期を間違えると、金額のけたが変わります。

論点 先に確認すること
3,000万円特別控除 解体の順番と時期を間違えると使えなくなります。2024年からは買主に解体してもらう形でも使えますが、売買契約に特約が要ります
解体後の固定資産税 住宅用地の特例が外れます。1月1日時点の状態で決まるので、年末の工事は完了時期で1年ぶん変わります

どちらも古家付きで売るか、更地にして売るかに、倍率の計算は解体すると固定資産税は6倍になるのかにあります。

Q. 5%で申告するしかないとき、税額を下げる手はほかにありますか。

A. あります。上から順に効きます。

手 効き方
1 空き家の3,000万円特別控除 譲渡所得から直接3,000万円を引きます。いちばん大きい
2 取得費加算(相続税を納めた場合) 納めた相続税の一部を取得費に足せます。期限に注意(相続からおおよそ3年10か月)
3 譲渡費用の計上もれをなくす 仲介手数料・印紙代・測量費・取壊し費用など。領収書を1枚残らず集めてください
4 長期譲渡になる時期に売る 相続では親の取得時期を引き継ぐので、古い実家はほぼ長期(20.315%)に該当します。短期だと税率が上がるので、念のため確認を

それでも、いちばん効くのは売却価格のほうです

200万円ぶん、どちらを動かすか 手取りへの効き方
取得費を200万円積み増す 税が 約40万6,000円減る(200万 × 20.315%)
売却価格を200万円上げる 仲介手数料が約6万6,000円増え、税が約39万円増えるが、差引で手取りは約154万円増える

※当サイトの試算。仲介手数料は200万円 × 3% × 消費税10%、税率20.315%で計算しました。

同じ200万円でも、効き方が約3.8倍違います。

取得費探しは早めに切り上げて、価格のほうに時間を使ってください。自分で相場を調べる手順は実家の売却相場を調べる3つの方法、会社の選び方は一括査定サイトの比較にあります。

Q. 税理士に頼んだほうがいいのは、どういうときですか。

A. 次のどれかに当てはまるなら、頼む価値があります。

こういうとき
1 土地の取得費を、5%より高く主張したいとき。市街地価格指数を使う方法を検討するなら、必ず税理士に相談してください。当サイトはこの方法を「使えます」とは書きません(本文に理由を3つ書きました)
2 相続税を納めていて、取得費加算を使うとき
3 3,000万円特別控除の要件が微妙なとき。相続人が3人以上、共有、賃貸に出した期間がある、などは要注意です
4 譲渡益が大きく、税額が数百万円になるとき

逆に、契約書があって、控除の要件もはっきりしているなら、自分で申告できる範囲です。報酬の相場は当サイトでは確認できなかったので、金額は書きません。複数の事務所に見積りを取って、「何をどこまでやってくれるか」で比べてください。

相談は、売る前にしてください。契約してからでは、順番も時期も変えられません。

3,000万円控除が使えるか確かめる譲渡所得税の計算を見るまず売れる金額を自分で調べる


この記事で確認できなかったこと

  • 租税特別措置法通達31の4-1の本文。国税庁 No.3258 が根拠法令として挙げていますが、国税庁サイト上で通達の本文にたどり着けませんでした。そのため、条文(措置法31条の4)が昭和27年12月31日以前から所有していた資産の規定であるのに対し、それ以後に取得した資産にも5%を適用できる根拠が通達にあるかどうかは、当サイトでは確認できていません。本文で引用しているのは No.3258 の記載のみです。
  • 市街地価格指数による取得費の算定が認められた裁決例。国税不服審判所の公表裁決に該当例があるとする解説を複数見かけましたが、原文を確認できなかったため、当サイトでは引用しません。
  • 「取得費が不明」で5%が適用された申告の件数。統計として公表されていません。どのくらいの人が損をしているのかは分かりませんでした。
  • 建築価額表の中間年の数値。本文の表は5年おきの抜粋です。全年分は国税庁の原典を参照してください。

この記事は税務の一般的な情報を整理したものであり、個別の申告についての助言ではありません。実際の申告にあたっては税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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