【PR】本ページはプロモーションを含みます。
「そのうち兄弟で話し合って決める」——実家の相続でいちばん多い先延ばしの形です。誰も困っていないので、話は自然に止まります。そして止まっている間に、期限だけが3つ動いています。
この記事は、遺産分割協議書の書き方を扱います。ただしその前に、先に知っておかないと損をする期限が3つあるので、そこから書きます。2027年3月31日と2028年3月31日と相続を知った日の翌日から10か月。この3つはまったく別のもので、それぞれ失うものが違います。
とくに2028年3月31日は、あまり知られていません。この日を過ぎると、「親の介護を10年やった」も「兄だけ家を建ててもらった」も、法律上は主張できなくなります。民法904条の3という2023年4月に施行された条文で、それより前に起きた古い相続にも適用されます。昭和や平成の相続を放置している方には、この日が最後の期限です。
結論だけ先に
- 遺産分割協議書に、法律で決まった様式はありません。民法907条は協議ができるとしか書いていません。ただし相続人全員の合意が必要で、1人でも欠けると無効です。法務局が記載例を配布しています。
- 2028年3月31日を過ぎると、古い相続では特別受益・寄与分を主張できなくなります。民法904条の3。止める方法は家庭裁判所に遺産分割を請求することだけで、話し合いを続けているだけでは時計は止まりません。
- 相続登記は3年以内が義務です。2024年4月1日より前に起きた相続は2027年3月31日まで。過料10万円以下(不動産登記法164条1項)。間に合わないなら相続人申告登記で義務だけ先に果たせます。
- 相続登記の印鑑証明書に有効期限はありません。法務局が「3か月以内といった制約はありません」と明記しています。ただし家庭裁判所や金融機関は別です。
条文・様式はすべて2026年8月24日にe-Gov法令検索・法務省・法務局・裁判所・国税庁の公式ページで確認しました。個別の事案の判断は専門家にご相談ください。
1. 先に3つの期限を分ける
放置している方が直面する期限は3つあります。混同されがちですが、根拠も効果もまったく違います。
| 期限 | 失うもの | 根拠 |
|---|---|---|
| 2027年3月31日 | 2024年4月1日より前の相続について、相続登記の義務を果たす期限。過料10万円以下の対象になる | 不動産登記法76条の2・164条1項 |
| 2028年3月31日 | 古い相続について、特別受益・寄与分を主張できる期限 | 民法904条の3 |
| 相続を知った日の翌日から10か月 | 相続税の申告・納付期限。未分割だと配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が使えない | 相続税法27条1項 |
3つ目は相続税がかかる方だけの話ですが、上の2つは全員に効きます。順に見ます。
2. 2028年3月31日——「介護した」が言えなくなる日
2023年4月1日に施行された民法904条の3は、条文自体は短いものです。
第九百四条の三 前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。
出典:e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)/2026年8月24日確認
「前三条」とは、民法903条(特別受益者の相続分)、904条(特別受益の評価)、904条の2(寄与分)です。
つまり相続開始から10年が経つと、特別受益の持戻しも寄与分も主張できなくなり、法定相続分で機械的に分けることになります。
| 10年を過ぎると言えなくなる主張 | 根拠条文 |
|---|---|
| 「兄は結婚のときに1,000万円もらっている」(特別受益) | 民法903条 |
| 「私は10年間、親を介護してきた」(寄与分) | 民法904条の2 |
| 「弟だけ家の建築費を出してもらった」(特別受益) | 民法903条 |
ここで正確に書いておきます。10年を過ぎても、相続人全員が合意すればどう分けても構いません。904条の3が縛るのは法律上のものさしです。しかし実務上の意味は重大で、10年を過ぎると「法定相続分どおりで押し切れる」立場の相続人が現れます。交渉のカードが片方だけ消えるということです。
古い相続にもさかのぼって適用されます
「2023年4月より前の相続だから関係ない」——これは違います。民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則3条が、施行日前に開始した相続にも適用すると定めています。
そのうえで猶予が置かれました。「相続開始から10年」と「2023年4月1日から5年(=2028年3月31日)」のいずれか遅いほうまでです。
したがって——2018年3月末より前に起きた相続については、2028年3月31日が期限です。昭和の相続でも、平成の相続でも、この日で揃います。本日から数えて、残りは約1年7か月です。
止める方法は1つだけです。904条の3第1号——10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をすること。協議書を作りかけている、話し合いを続けている、内容証明を送った——どれも時計を止めません。家庭裁判所への請求だけです。
3. 2027年3月31日——相続登記の義務
2024年4月1日から、相続登記が義務になりました。
相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に、登記を申請しなければなりません。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料です。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 期限 | 自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内 | 不動産登記法76条の2第1項 |
| 制裁 | 正当な理由なく申請を怠ったときは10万円以下の過料 | 不動産登記法164条1項 |
| 施行日 | 2024年(令和6年)4月1日 | — |
| 施行前の相続 | 施行日から3年以内。つまり2027年3月31日まで | 経過措置 |
遺産分割がまとまらない場合の逃げ道が用意されています。それが相続人申告登記(不動産登記法76条の3)です。
- 自分が相続人であることを法務局に申し出るだけで、登記の義務を果たしたことになります
- 相続人が単独で申し出られます。他の相続人の協力は不要です
- ただしこれは所有権移転登記ではありません。この状態では売却できません
- 遺産分割がまとまったら、その日から3年以内に本来の登記をする義務が生じます
使いどころは明確です。話し合いが2027年3月31日に間に合いそうにないとき、過料だけ回避するための手段です。詳しい手続きは相続登記の義務化にまとめています。
4. 遺産分割協議書に決まった様式はない
ここから本題です。まず前提を確認します。
第九百七条 共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
条文は「協議で分割することができる」としか書いていません。書面の様式も、用紙のサイズも、書き方も、法律には定められていません。手書きでも構いません。
ただし、実際に使う場面で通用する形にする必要があります。相続登記、金融機関の名義変更、相続税の申告——どれも遺産分割協議書を添付します。法務局が記載例を配布しているので、それに沿うのが確実です。
| 要素 | 書くこと | 注意点 |
|---|---|---|
| 被相続人の特定 | 氏名・最後の本籍・最後の住所・死亡年月日 | 戸籍と一致させる |
| 不動産の表示 | 所在・地番・地目・地積(土地)/所在・家屋番号・種類・構造・床面積(建物) | 住居表示ではなく、登記事項証明書のとおりに書く |
| 誰が何を取得するか | 相続人ごとに、取得する財産を特定して書く | 「実家」ではなく登記の表示で |
| 署名・押印 | 相続人全員が署名し、実印を押す | 1人でも欠けると無効 |
| 日付 | 協議が成立した日 | — |
| 添付 | 相続人全員の印鑑証明書 | 実印であることの証明 |
いちばん多い書き損じは不動産の表示です
「東京都〇〇区〇〇1丁目2番3号」は住居表示であって、登記上の表示ではありません。土地は「〇〇1丁目2番3」のように地番で、建物は家屋番号で特定します。登記事項証明書を取り寄せて、そこに書いてあるとおりに書き写してください。ここがずれていると、法務局で補正になります。
あわせて、私道の持分や、母屋とは別棟の物置を書き落とすことがよくあります。固定資産課税明細書と登記事項証明書の両方で数を確認してください。名寄帳を取ると漏れが見つかりやすくなります。
5. 相続登記に必要な書類
法務局が示している、遺産分割協議による相続登記の添付書類です。
| # | 書類 | どこで取るか |
|---|---|---|
| 1 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍) | 本籍地の市区町村。本籍を移していると複数箇所になる |
| 2 | 相続人全員の戸籍証明書 | 各自の本籍地 |
| 3 | 遺産分割協議書(全員が実印を押したもの) | 自分で作成 |
| 4 | 相続人全員の印鑑証明書 | 各自の市区町村 |
| 5 | 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票 | 登記上の住所と本籍が違う場合に必要 |
| 6 | 新しく所有者になる相続人の住民票の写し | マイナンバーの記載がないもの |
| 7 | 固定資産課税明細書または固定資産評価証明書 | 申請する日の属する年度のもの |
| 8 | 登記事項証明書 | 不動産の表示を正確に書くため |
自分で作る書類は、登記申請書・遺産分割協議書・相続関係説明図(戸籍の原本還付を受けるため)です。
相続登記に使う印鑑証明書には、有効期限がありません。
法務局の「登記手続ハンドブック(遺産分割協議編)」に、「この印鑑証明書については、作成後3か月以内のもの といった制約はありません」と明記されています。必要書類一覧表でも、戸籍・住民票の除票・印鑑証明書・固定資産課税明細書のいずれも有効期限欄は「なし」です。
ただし、提出先が変われば期限も変わります
これは法務局での相続登記に限った話です。家庭裁判所の遺産分割調停では、相続人全員の戸籍謄本・住民票・登記事項証明書・固定資産評価証明書について3か月以内を求める運用があります。金融機関も独自に期限を設けていることがあります。書類を使い回す前に、提出先ごとに確認してください。
6. 登録免許税と、2つの免税措置
相続による所有権移転登記の登録免許税は、固定資産税評価額の1000分の4(0.4%)です。1,000万円の土地なら4万円になります。
ただし免税措置が2つあり、どちらも2027年3月31日までです。
| 免税 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 第1項 | 土地を相続した人が登記しないまま亡くなった場合、その人を名義人とするための移転登記が免税 | 租税特別措置法84条の2の3第1項 |
| 第2項 | 不動産の価額が100万円以下の土地の相続登記が免税 | 租税特別措置法84条の2の3第2項 |
第1項は、いわゆる数次相続で効きます。祖父名義のまま父が相続し、登記しないうちに父も亡くなった——このとき、祖父から父への移転登記が無料になります。2代分の登記が必要になるケースで、1代分が浮きます。
第2項は、山林や私道の持分、原野などで効きます。評価額が低い土地をいくつも相続している場合、まとめて確認する価値があります。
申請書に書かないと免税されません
自動では適用されません。登記申請書に「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」「同条第2項により非課税」と根拠条項を記載する必要があります。法務局が記載例を配布しています。
また、この免税は土地のみが対象で、建物は対象外です。条文が「土地」に限定しています。法務局の古いパンフレットには「令和7年3月31日まで」と書かれた版が残っていますが、現行条文は令和9年(2027年)3月31日までです。
7. 法定相続情報一覧図で、戸籍の束を1枚にする
相続手続きでいちばん面倒なのは、戸籍の束を提出先ごとに用意することです。法務局、銀行3行、証券会社、保険会社——そのたびに同じ戸籍が要ります。
法定相続情報一覧図を作れば、この束を1枚の証明書に置き換えられます。しかも無料です。
根拠は不動産登記規則247条。2017年5月に創設された制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 費用 | 無料 |
| 申出先 | 被相続人の本籍地・最後の住所地・申出人の住所地・不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局 |
| 必要なもの | 戸籍一式(結局これは1回集める必要がある)+自分で作成した一覧図 |
| 使い道 | 相続登記・預貯金の払戻し・相続税の申告など |
| 再交付 | 5年間は再交付を受けられる |
手続き先が3つ以上あるなら、作ったほうが確実に早く済みます。戸籍を集める手間は1回で済み、必要な枚数だけ交付を受けられます。
8. 相続税の申告期限と、未分割のときの手当て
相続税がかかる場合、申告と納付の期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月です(相続税法27条1項)。
未分割のまま10か月を迎えると、特例が使えません
配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も、遺産が分割されていることが適用の前提です。話し合いがまとまっていないと、いったんこれらを適用しない金額で申告・納税することになります。
ただし救済があります。申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、3年以内に分割がまとまった時点で、更正の請求により特例を適用できます。この1枚を出し忘れると救済が受けられません。
順番として重要なのは、10か月のほうが先に来ることです。相続登記の3年より、遺産分割の10年より、はるかに早い。相続税がかかりそうな規模なら、まず税理士に相談する時期を逆算してください。小規模宅地等の特例の中身は小規模宅地等の特例にまとめています。
9. 話し合いが止まったら、家庭裁判所へ
協議がまとまらない場合、遺産分割調停を申し立てます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立先 | 相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所 |
| 費用 | 収入印紙1,200円+連絡用の郵便切手 |
| 必要書類 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍・住民票、遺産の資料など。3か月以内を求められるものがある |
そして、これが民法904条の3の10年の時計を止める唯一の方法でもあります。
費用は収入印紙1,200円です。特別受益や寄与分を主張したいのに話し合いが動かないなら、期限が来る前に申し立てる——これが条文の予定している動き方です。話し合いの続きは調停の中でもできます。実際の進み方は実家の相続で兄弟と揉めたときに書きました。
10. 不動産をどう分けるか、金額が分からないと決まらない
協議が止まる原因は、感情だけではありません。実家をいくらと見るかが決まらないから止まるという形が非常に多いです。
| 分け方 | 内容 | 必要になるもの |
|---|---|---|
| 現物分割 | 不動産は長男、預金は次男、というように現物のまま分ける | 不動産の価値の見当 |
| 代償分割 | 1人が不動産を取得し、他の相続人に金銭を払う | 不動産の評価額。ここで必ず揉める |
| 換価分割 | 売却して、代金を分ける | 売却価格。実額が出るので揉めにくい |
| 共有 | 持分で共有する | 問題の先送りになりやすい→実家が兄弟の共有になっている |
代償分割でこじれる理由は単純です。不動産を取る側は「固定資産税評価額で」と言い、金銭を受け取る側は「実勢価格で」と言う。どちらも自分に有利な数字を出しているので、話が進みません。
抜け道は「第三者が出した複数の数字を並べる」ことです。不動産会社の査定額を複数社から取り、その根拠も一緒に並べる。宅建業法34条の2第2項により、不動産会社は価額について意見を述べるときに根拠を明らかにする義務があり、査定料を請求することもできません。身内以外の数字が3つ4つ並ぶと、議論の土台ができます。
査定額の読み方と、その限界は一括査定のデメリットに書いています。査定額は「売れる価格」ではありません。それでも、身内同士の言い値よりは議論の材料になります。
【PR】
代償分割の金額を、身内以外の数字で1つ用意する
本文10章のとおり、代償分割は「実家をいくらと見るか」で必ず止まります。不動産を取る側は評価額を低く、金銭を受け取る側は高く言うからです。ラクウル(株式会社ネクサスプロパティマネジメント/宅地建物取引業免許:国土交通大臣(1)第10311号)で買取価格を出しておくと、「これ以下にはならない」という下限の数字が1つ手に入ります。
先に不利なことを書きます。①買取価格は、仲介で売れた場合より低く出ます。上限ではなく下限として使ってください。②この記事が勧めているのは金額を知ることであって、あなたの相続分を売ることではありません。③遺産分割が済んでいない段階では、単独で売れるものと売れないものがあります。順番を確認してから動いてください(実家が兄弟の共有になっている)。④申込後に電話またはメールで連絡が入ります。⑤当サイトはこのリンク経由の申込で広告収入を受け取ります。
換価分割(売って分ける)なら実額が出るので、いちばん揉めにくい形です。売却の進め方は売る・貸す・持ち続ける?に。
【PR】
仲介で売った場合の数字も、同じ日に取っておく
下限だけでは比較になりません。仲介の査定額も並べて、はじめて幅が見えます。宅建業法34条の2第2項により、不動産会社は査定額の根拠を明らかにする義務を負い、査定料を請求することはできません。不動産SHOPナカジツは愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本の一部で自社買取と仲介の両方を扱う会社です。
申し込む前に5つ確認してください。①対応しているのは上記の県の一部地域だけです。②申込後30日以内に電話またはメールで連絡が入ります。③査定額は「売れる価格」ではありません。兄弟に示すときは、必ず「査定額であって売値ではない」と添えてください。④1社だけでは議論の土台になりません。複数社を並べてください。⑤当サイトはこのリンク経由の申込で広告収入を受け取ります。
不動産SHOPナカジツに無料査定を依頼する(愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本)
![]()
対象地域外の方は不動産一括査定サイト比較から複数社に依頼できます。査定額の限界は一括査定のデメリットに書いています。
よくある質問
遺産分割協議書は手書きでもいいですか
構いません。民法907条は様式を定めていません。用紙のサイズも自由です。ただし相続人全員の署名と実印、そして印鑑証明書の添付が実務上必要です。法務局が記載例を配布しているので、それに沿って作ると法務局での補正が減ります。パソコンで作って各自が署名押印する形が一般的です。
相続人の1人が協議に応じません
全員の合意がないと協議は成立しません。1人でも欠けた協議書は無効です。応じない相続人がいる場合の受け皿が遺産分割調停(収入印紙1,200円)です。そして、これが民法904条の3の10年を止める唯一の方法でもあります。「そのうち応じてくれるだろう」と待っている間に、特別受益や寄与分を主張できる期限が来ます。
10年経つと、遺産分割そのものができなくなりますか
いいえ。遺産分割はいつでもできます。できなくなるのは特別受益・寄与分の主張だけです(民法904条の3)。10年を過ぎた後は、原則として法定相続分で分けることになります。ただし相続人全員が合意すれば、どう分けても構いません。変わるのは「合意できないときのものさし」です。
昭和の相続がそのままになっています。もう手遅れですか
手遅れではありませんが、期限が2つ迫っています。特別受益・寄与分の主張は2028年3月31日まで(残り約1年7か月)。相続登記の義務は2027年3月31日まで。数次相続になっている場合は、登録免許税の免税措置(措置法84条の2の3第1項)が使える可能性があります。これも2027年3月31日までです。まず登記事項証明書を取って、名義が誰になっているかを確認してください。
印鑑証明書は何か月以内のものが必要ですか
相続登記には期限がありません。法務局が「作成後3か月以内のものといった制約はありません」と明記しています。ただし家庭裁判所の調停では3か月以内を求める運用があり、金融機関も独自の期限を設けていることがあります。提出先ごとに確認してください。
遺産分割がまとまらないのに、相続登記の期限が来ます
相続人申告登記を使ってください(不動産登記法76条の3)。自分が相続人であることを法務局に申し出るだけで、登記義務を果たしたことになります。単独で申し出られるので、他の相続人の協力は不要です。ただし所有権移転登記ではないので、この状態では売却できません。分割がまとまったら、その日から3年以内に本来の登記をする義務が生じます。
登録免許税が免税になるか、どう確認しますか
2つあります。①相続した人が登記しないまま亡くなっているか(数次相続)。②その土地の評価額が100万円以下か。どちらかに当たれば免税です。ただし申請書に根拠条項を書かないと適用されません。また土地のみが対象で、建物は対象外です。評価額は固定資産課税明細書か固定資産評価証明書で確認できます。
法定相続情報一覧図は作ったほうがいいですか
手続き先が3か所以上あるなら、作ったほうが早く済みます。無料です。戸籍を集める手間は1回で済み、必要な枚数だけ交付を受けられます。法務局・銀行・証券会社・保険会社と回るなら、戸籍の束を何度も出し直す必要がなくなります。5年間は再交付を受けられます。
実家の評価額で兄弟の意見が割れています
身内の言い値を突き合わせている限り、まとまりません。不動産会社の査定を複数社から取り、根拠も一緒に並べてください。宅建業法34条の2第2項により、価額の意見には根拠を明らかにする義務があり、査定料を請求することもできません。第三者の数字が複数並ぶと、議論の土台ができます。それでもまとまらない場合は、売却して代金を分ける換価分割が最も揉めにくい形です。実額が出るからです。
相続税の申告期限までに分割が終わりません
「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付してください。これがあれば、3年以内に分割がまとまった時点で更正の請求により、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用できます。この1枚を出し忘れると救済が受けられません。いったんは特例なしの金額で申告・納税することになります。
この記事で確認できなかったこと
- 法務局が公開している「遺産分割協議書そのもの」の空欄様式。登記申請書の様式と記載例、および登記手続ハンドブックの中の記載例は確認できましたが、協議書単体のひな形ファイルは特定できませんでした。
- 金融機関が求める印鑑証明書の有効期限。各行が独自に定めるもので、法令上の期限ではありません。一次情報での確認はしていません。
- 相続登記の義務違反による過料が、実際にどの程度適用されているか。運用状況の統計を確認できませんでした。
- 「正当な理由」(不動産登記法76条の2第1項ただし書)に当たる具体的な事由の全体像。通達レベルの網羅的な一覧は確認していません。
- 相続人申告登記の申出に必要な書類の詳細。制度の枠組みは条文で確認しましたが、実際の申出書式までは確認していません。
- 遺産分割調停の平均審理期間と成立率。裁判所の統計を今回は確認していません。
- 民法904条の3の適用をめぐる裁判例。施行から日が浅く、確認できませんでした。
まとめ
- 期限は3つあり、別物です。相続登記=2027年3月31日(古い相続)、特別受益・寄与分=2028年3月31日(古い相続)、相続税=知った日の翌日から10か月。
- 2028年3月31日を過ぎると、「介護した」「兄だけもらった」が法律上は言えなくなります(民法904条の3)。古い相続にもさかのぼって適用されます。
- 時計を止める方法は、家庭裁判所への遺産分割の請求だけです。収入印紙1,200円。話し合いを続けているだけでは止まりません。
- 遺産分割協議書に決まった様式はありません。ただし相続人全員の署名・実印・印鑑証明書が要り、1人でも欠けると無効です。
- 不動産は登記事項証明書のとおりに書いてください。住居表示ではなく地番・家屋番号です。私道の持分と別棟の物置を書き落としがちです。
- 相続登記の印鑑証明書に有効期限はありません。ただし家庭裁判所と金融機関は別です。
- 登録免許税の免税が2つあります(数次相続/評価額100万円以下の土地)。どちらも2027年3月31日まで、土地のみ、申請書に根拠条項の記載が必要です。
- 手続き先が3か所以上なら、法定相続情報一覧図を作ってください。無料で、戸籍の束を1枚に置き換えられます。
あわせて読みたい
- 相続登記の義務化|3年の起算点、相続人申告登記の手続き、過料の実際。
- 実家の相続で兄弟と揉めたとき|話し合いが止まったときの法的な受け皿と、調停の進み方。
- 実家が兄弟の共有になっている|共有にしてしまった後で何が起きるか。
- 小規模宅地等の特例|未分割だと使えない特例の中身。
- 一括査定のデメリット|代償分割の金額を決めるとき、査定額をどう読むか。
- 相続した実家、売る・貸す・持ち続ける?|分け方が決まらないときの、そもそもの方針。
- 実家じまい完全ガイド|手続きの全体像と順番。迷ったらここに戻ってください。
- 固定資産税の課税明細書の見方|協議書に書く地番・家屋番号の出どころ。載らない土地がある理由も。
- 実家を売って兄弟で分ける(換価分割)|協議書に何をどう書くかで、税金の出方が変わります。
- 祖父名義のままの実家|数次相続で相続人が何人まで増えるのか、条文で数える。
- 遺留分でお金を払うことになります|遺言があっても請求されます。2019年に「物」から「金銭」に変わりました。
- 法務局の遺言書保管制度|遺言があるなら協議書ではなく遺言書情報証明書で進めます。
- 親の口座が凍結されて葬儀代が払えないとき|兄弟の同意なしで下ろせます。1金融機関150万円まで。
- 親が子の名義で貯めたお金は、親の財産です|連載「親が元気なうちに」第1回。名義預金の分かれ目。
- 法定相続情報一覧図は、作り方を間違えると使えません|一覧図には、話し合いの結果は載りません。