認知症の親の家は売れません|3つの道と、2026年に変わった制度

【PR】本ページはプロモーションを含みます。条文はe-Gov法令検索で全文を開いて確認し、統計は最高裁判所事務総局家庭局の公表資料、制度改正は法務省の資料で確認しました(2026年8月17日確認)。孫引きはしていません。

最終更新:2026年8月17日

結論だけ先に

親の判断能力が失われていると、実家は売れません。子が代わりにサインしても無効です。民法3条の2が「意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効」と定めています。

道は3つしかありません。①親に意思能力が残っているうちに売る ②成年後見人をつける ③あらかじめ任意後見や信託を用意しておく。③はもう間に合わないことが多く、実際には①か②です。

そして2026年6月24日、この制度を根本から変える法律が公布されました。後見と保佐は廃止され、補助に一元化されます。いまの制度では原則やめられない後見が、「必要がなくなったら終われる」制度に変わります。施行は公布から2年6か月を超えない範囲で、まだ先です。

つまり、いま申し立てる人は「古い制度」で始めることになります。この記事は、その判断材料を条文と統計で並べたものです。

なぜ、子が代わりに売れないのか

「親はもう分からないから、私が代わりに手続きします」——これができません。理由は1つの条文です。

法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

出典:民法第3条の2(e-Gov法令検索で全文を確認/2026年8月17日)

「取り消すことができる」ではなく「無効」です。はじめから効力がありません。売買契約書に親の名前が書いてあっても、その時点で意思能力がなければ、その契約は無かったことになります。

これは買主にとっても深刻です。代金を払って登記も移したのに、後から無効だと言われる可能性がある。だから不動産会社も司法書士も、本人の意思確認ができない取引には関与しません。「親の実印と権利証があるから大丈夫」ではありません。

「認知症=意思能力なし」ではありません

ここは正確に分けてください。認知症という診断があっても、その時点で契約の意味が分かっていれば、意思能力はあります。程度も、日によっての波もあります。診断名ではなく、契約したその瞬間に理解できていたかどうかが問われます。

実務では、司法書士が本人と面談して確認します。ここで「難しい」と判断されれば、後見の話になります。迷っている段階なら、まず司法書士に本人と会ってもらってください。それが最初の分かれ道です。

道は3つ。ただし、ほとんどの人には2つしかありません

道 使える条件 かかる時間
① 親本人が売る 意思能力が残っていること。司法書士の面談で確認される 通常の売却と同じ
② 成年後見人をつけて売る 意思能力が失われている場合。家庭裁判所に申立て 申立てから選任まで数か月。そこから家裁の売却許可
③ 任意後見・家族信託 親に意思能力があるうちに契約しておく必要がある いまから間に合うかは、親の状態次第

③は「備え」であって、いまの解決策ではありません。すでに判断能力が失われているなら、任意後見契約はもう結べません。この記事を「親が元気なうちに」読んでいる方だけが選べる道です。後半に条文を置きました。

成年後見を使う道。3つの類型と、家庭裁判所の許可

まず、いまの制度には3つの類型があります。本人の状態で決まり、選べません。

類型 条文の言葉 不動産を売るときは
後見 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者(7条) 成年後見人が代理する。本人の法律行為は取り消せる(9条)
保佐 事理を弁識する能力が著しく不十分である者(11条) 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為には保佐人の同意が必要(13条1項3号)
補助 事理を弁識する能力が不十分である者(15条) 審判で定めた範囲だけ。本人以外の請求では本人の同意が必要(15条2項)

出典:民法第7条・第9条・第11条・第13条第1項第3号・第15条(いずれもe-Gov法令検索で全文を確認/2026年8月17日)

そして、ここが見落とされます。後見人がついても、実家は自由には売れません。

成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。

出典:民法第859条の3(e-Gov法令検索で全文を確認/2026年8月17日)

「居住の用に供する建物」の範囲に注意

いま親が施設に入っていても、実家は「居住用不動産」に当たり得ます。帰る可能性のある家だからです。売却だけでなく、賃貸に出すこと、賃貸借を解除すること、抵当権を設定することも同じく許可の対象です。

この許可は保佐・補助にも準用されます(876条の10ほか)。類型が軽くても、居住用不動産のハードルは変わりません。

許可が下りるかどうかは、家庭裁判所の判断です。当サイトは許可の基準や、却下された事例の統計を見つけられませんでした。「後見人をつければ必ず売れる」とは書けません。

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許可が下りるかは別として、金額は先に分かります

家庭裁判所に説明するのは「なぜ売る必要があるか」です。かかる費用と、その家がいくらになるかが並んで初めて、必要性が数字になります。許可の判断は裁判所ですが、金額を調べること自体はいつでもできます。

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売ると決めてから調べるものではありません。決めるために調べるものです。年間の維持費は空き家の維持費を実額で積み上げた記事にまとめました。

数字で見ます。後見の申立て41,841件の内訳

最高裁判所事務総局家庭局が、毎年この統計を公表しています。令和6年(2024年)の数字です。

類型 申立件数
後見開始 28,785
保佐開始 9,156
補助開始 3,026
任意後見監督人選任 874
合計 41,841

申立ての動機(複数回答)

動機 件数 割合
1 預貯金等の管理・解約 38,561 92.7%
2 身上保護 30,599 73.5%
3 介護保険契約 18,623 44.7%
4 不動産の処分 14,990 36.0%
5 相続手続 10,855 26.1%
6 保険金受取 7,132 17.1%
7 訴訟手続等 2,301 5.5%

申立ての3件に1件以上が、不動産の処分を動機に挙げています。あなたと同じ理由でこの制度を使おうとしている人が、年に15,000件近くいるということです。

★ 誰が後見人になったか

関係 件数 割合
親族 7,077 17.1%
 うち 子 3,712 親族の52.5%
親族以外 34,245 82.9%
 うち 司法書士 11,875 親族以外の34.7%
 うち 弁護士 8,794 25.7%
 うち 社会福祉士 6,873 20.1%
合計 41,322 100%

出典:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況 ―令和6年1月〜12月―」/2026年8月17日確認。割合は同資料の記載および当サイトの計算

この2つの数字を、並べて読んでください

不動産の処分を動機に申し立てた人が36.0%。そして後見人の82.9%は親族以外の専門職です。

つまり「実家を売りたい」で申し立てると、高い確率で、司法書士や弁護士が親の財産全体を管理することになります。実家だけではありません。預貯金も年金も、その人の管理下に入ります。

そして民法862条は、家庭裁判所が本人の財産の中から後見人に報酬を与えることができると定めています。この報酬は後見が続くかぎり発生します。

★ 当サイトは報酬額の相場を公的資料で確認できませんでした。金額は家庭裁判所が本人の資力その他の事情によって決めるものなので、申立て前に、管轄の家庭裁判所か弁護士・司法書士に確認してください。

開始原因の61.9%が認知症です。ほかは知的障害9.7%、統合失調症9.2%、高次脳機能障害4.1%など。この制度は、いま実質的に認知症の制度になっています。

★ 2026年6月24日、この制度を変える法律が公布されました

ここが、いまこの記事を読む意味です。

令和8年6月24日、「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が公布されました。成年後見制度と遺言制度の見直しです。成年後見については、制度の骨格が変わります。

いまの制度 改正後
後見・保佐・補助の3類型 後見及び保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化。特定の行為について個別に権限を付与する仕組みに基本的に一元化される
— 例外として、事理弁識能力を欠く常況にあると認定された場合は、法定の重要な財産行為をいずれも取消可能とする仕組み(特定補助の仕組み)を選択して利用できる
後見・保佐は、原則としてやめられない ★ 事理弁識能力が回復していない場合でも、制度利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めるときは、申立て又は職権により、制度利用を終了できる
後見人の交代は、不正があった場合などに限られる 「本人の利益のために特に必要があるとき」が解任事由に追加。不正がなくても、本人と面談を行わないなど適切な保護を受けられないときは交代できる
報酬の考慮要素は条文上明確でない 補助人が行った事務の内容等が報酬の考慮要素であることを規定上明確化

出典:法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」および法務省民事局「成年後見制度に関する制度改正の状況について」(令和8年7月)/2026年8月17日確認

いちばん大きいのは「終われるようになる」ことです

いまの制度では、いったん後見が始まると、本人の判断能力が回復しないかぎり終わりません。実家を売るために申し立てた場合でも、売却が済んだら終わり、にはなりません。

改正後は、能力が回復していなくても「制度利用の必要がなくなった」と家庭裁判所が認めれば終了できます。「家を売るために一時的に使う」ことが、制度の想定に入ります。

では、いつから使えるのか

対象 施行期日
成年後見制度の見直し 公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日
遺言制度の見直し(押印の任意化等) 公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日
遺言制度の見直し(保管証書遺言の創設等) 公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日

公布は2026年6月24日なので、成年後見の部分は「2028年12月24日まで」に施行されます。具体的な日は、まだ政令で定まっていません。当サイトは施行日を確認できていないので、日付は書きません。法務省のページで随時ご確認ください。

経過措置も置かれています。施行前から後見・保佐を利用している人は、取消しの申立てによって新制度へ移行するか、継続して利用するかを選べるとされています。いま始めた人が、改正後に取り残されるわけではありません。

いま申し立てるか、待つか

これは当サイトが答えを出せる問いではありません。ただ、判断材料は並べられます。

いま申し立てる 施行を待つ
制度 いまの後見・保佐・補助 補助に一元化された制度
終了 原則として、本人が亡くなるまで続く(経過措置で新制度へ移行はできる) 必要がなくなれば終了できる
時期 すぐ動ける 最長で2028年12月まで。施行日は未定
待つ間の費用 — 固定資産税・火災保険・管理費が発生し続ける
待つ間のリスク — 特定空家に指定されると税負担が上がる。親の状態も変わり得る

介護費用の支払いに実家の売却代金が要るなら、待つ選択肢はありません。一方、急ぐ理由がなく、家を空き家のまま持っていられるなら、待つ意味はあります。

空き家のまま持ち続けるといくらかかるかは空き家の維持費は年間いくらか、放置したときに何が起きるかは空き家を放置するとどうなるか、税負担が上がる条件は特定空家に指定されるとどうなるかにまとめています。この3本の金額を見てから決めてください。

まだ間に合うなら:任意後見という道

親にまだ意思能力があるなら、選択肢が1つ増えます。

任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない。

出典:任意後見契約に関する法律 第3条(e-Gov法令検索で全文を確認/2026年8月17日)

公正証書でなければ成立しません。口約束も、私文書も無効です。公証役場へ、親と一緒に行く必要があります。

そして、契約しただけでは効力が生じません。

任意後見契約が登記されている場合において、精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者の請求により、任意後見監督人を選任する。

出典:同法 第4条第1項

実際に判断能力が落ちてから、家庭裁判所に監督人を選んでもらって、そこで初めて動き出します。監督人がつく以上、費用もかかります。ただし誰に任せるかを親自身が決められる点が、法定後見との決定的な違いです。令和6年の任意後見監督人選任は874件。後見開始28,785件に比べれば、ごくわずかです。

家族信託という方法もあります。信託でできること・できないことと、任意後見とどう使い分けるかは、家族信託と任意後見、どちらを先に検討するかに法務省の資料でまとめました。いずれの道も、親に意思能力があるうちにしか作れません。「まだ大丈夫」と思っているあいだが、唯一の窓です。

売れないあいだも、家は費用を生み続けます

後見の申立てから選任まで数か月、そこから家庭裁判所の売却許可。その間ずっと、固定資産税も火災保険も止まりません。電気と水道を止めれば傷みが早まり、止めなければ基本料金が出ていきます。

だからこそ、売れる状態になったときにすぐ動けるよう、価格の幅だけは先に知っておく価値があります。ただし、順番を間違えないでください。

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親の意思能力が失われている段階では、査定を取っても売却は進みません。この案内が意味を持つのは、次の2つの場合だけです。
①親にまだ意思能力があり、本人の意思で売ると決めた場合
②後見人が選任され、家庭裁判所の許可を得て売却に進む場合
そのどちらかに当てはまるなら、価格の幅を知っておくと判断が早くなります。ラクウル(株式会社ネクサスプロパティマネジメント/国土交通大臣(1)第10311号)は、空き家・中古戸建てを自社で買い取っている会社です。自社買取なので仲介手数料はかかりません。

①申込のあと、電話またはメールで内容の確認と物件情報のヒアリングがあります。メールでも完了しますので、電話が苦手な方でも進められます。
②名義は親のままで構いませんが、契約できるのは本人か、代理権のある後見人だけです。子の一存では売れません。そこは正直に伝えてください。
③LINE相談からの申込は対象外です。フォームから申し込んでください。
④日本国外にお住まいの方は対象外です。売却を考えていない相談も対象外です。
1社の金額で決めず、仲介の査定と並べて比べてください。

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まだ何も決まっていない段階なら、査定より先に司法書士です。親と面談してもらい、意思能力があるかどうかを確かめる。そこがすべての分かれ道です。仲介で売る場合の相場は売却相場を、自分で調べる3つの方法、仲介と買取の価格差は仲介と買取、どちらで売るかにあります。

よくある質問

Q. 親の実印と権利証があります。私が手続きすれば売れませんか。

A. 売れません。そして、やってはいけません。意思能力を欠いた状態でされた法律行為は無効です(民法3条の2)。実印があっても、本人の意思がなければ契約は成立しません。

実務上も止まります。登記を担当する司法書士は本人と面談して意思を確認します。そこで確認が取れなければ、登記申請まで進みません。不動産会社も、後から無効を主張されるリスクのある取引はしません。

親の名前で勝手に契約書を作れば、それは別の問題になります。絶対にやめてください。まず司法書士に相談してください。

Q. 施設に入っていて、もう家に帰りません。それでも「居住用不動産」ですか。

A. 当たる可能性が高いです。859条の3の「居住の用に供する建物」は、いま住んでいるかどうかだけで決まるものではありません。帰る可能性のある家も含めて判断されます。

迷ったら、許可を取る前提で進めてください。許可が不要だと自己判断して売ってしまうより、家庭裁判所に確認するほうが安全です。売却だけでなく、賃貸に出すことも、賃貸借を解除することも、抵当権を設定することも同じ扱いです。

Q. 私が後見人になれますか。

A. なれる可能性はありますが、統計では少数です。令和6年に選任された後見人等41,322件のうち、親族は7,077件(17.1%)。82.9%は司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門職です。

誰を選ぶかは家庭裁判所が決めます。申立書に候補者を書けますが、そのとおりに選ばれるとは限りません。財産が多い、親族間に意見の対立がある、不動産の処分が絡む——こうした事情があると専門職が選ばれやすいと言われますが、当サイトは、その判断基準を示した公的資料を見つけられませんでした。

Q. 売却が終わったら、後見をやめられますか。

A. いまの制度では、原則としてやめられません。本人の判断能力が回復しないかぎり続きます。「家を売るためだけに一時的に使う」ことは、いまの制度の想定外です。

ただし、2026年6月24日に公布された改正法で、ここが変わります。能力が回復していなくても、制度利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めれば終了できるようになります。施行は公布から2年6か月を超えない範囲内で政令で定める日です。

施行前から利用している人も、取消しの申立てによって新制度へ移行できるとされています。いま始めても、そこで取り残されるわけではありません。ただし移行の手続きや条件は、当サイトでは確認できていません。

Q. 後見人への報酬はいくらですか。

A. 当サイトは、金額を公的資料で確認できませんでした。だから書きません。

条文はこうです。「家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる」(民法862条)。本人の資力と事情によって、家庭裁判所が決めます。定額ではありません。

確かなのは、後見が続くかぎり発生し続けるということです。申立ての前に、管轄の家庭裁判所に「この地域の運用ではおおよそどのくらいか」を聞いてください。ネット上の相場表を信じる前に、そこに電話するほうが早く正確です。

Q. 兄弟と意見が合いません。1人で申し立てられますか。

A. 条文上は、四親等内の親族なら1人で申し立てられます(民法7条)。兄弟全員の同意は要件ではありません。

ただし、家庭裁判所は他の親族の意向を確認します。対立があると、専門職が後見人に選ばれやすくなると言われています。「自分が後見人になって進めたい」と考えているなら、先に兄弟と話してからのほうが、結果的に早い可能性があります。

親が亡くなったあとの共有の問題は実家が兄弟の共有になっているにまとめています。いまの対立は、そのまま相続後に持ち越されます。

Q. 「認知症でも売れます」という業者から連絡が来ました。

A. その言葉だけで判断せず、何を指しているのかを確認してください。

正しい可能性もあります。診断があっても意思能力が残っていれば売れますし、後見人が選任されて家庭裁判所の許可を得れば売れます。そこまで含めて支援する、という意味なら筋が通っています。

危ないのは「手続きはこちらでやるので、書類だけ用意してください」という説明です。本人の意思確認を飛ばす取引は無効になり得ます。「本人の意思確認はどなたが、どのように行いますか」と聞いてください。答えられない相手とは進めないでください。

Q. 親の預金も下ろせません。家より先にこちらが困っています。

A. 統計上も、それがいちばん多い動機です。令和6年の申立ての動機で「預貯金等の管理・解約」は38,561件(92.7%)と突出しています。不動産の処分(36.0%)より、はるかに多い。

金融機関によっては、後見をつけなくても親族が引き出せる仕組みを用意している場合があります。当サイトはその運用を確認していないので断定しませんが、まず取引店に聞いてください。後見を申し立てるより先に、そこを確かめる価値があります。

Q. 親はまだしっかりしています。いま何をしておけばいいですか。

A. この記事でいちばん伝えたいのが、ここです。

いまのうちにできること
1 実家をどうするかを、親本人の口から聞いておく。売るのか、誰かが住むのか、残したいのか
2 権利証・売買契約書・登記事項証明書の場所を確認する。これが無いと、売るときに税金で数百万円変わります(取得費が分からないとき)
3 任意後見を検討するなら、公証役場へ。公正証書でなければ成立しません(任意後見契約法3条)
4 兄弟がいるなら、全員で一度は話しておく

1と2は、今日からできます。費用もかかりません。そして、意思能力が失われた瞬間に、どちらもできなくなります。

Q. 何から手を付ければいいですか。

やること
1 司法書士に、親と面談してもらう。意思能力があるかどうかで、道が完全に分かれます
2 あるなら、本人の意思で売る。いちばん早く、費用も少ない
3 無いなら、後見の申立てと、施行を待つことを比べる。急ぐ理由があるかで決まります
4 待つあいだの費用を計算する。空き家の維持費で年額が出せます
5 売る方向が決まったら、価格の幅を見る

1を飛ばして先に進まないでください。ここを確かめずに動くと、契約が無効になるか、あとから兄弟に問題にされます。

この記事で確認できなかったこと

  • 改正法の施行日。「公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日」までしか確認できませんでした。政令は確認していません
  • 後見人の報酬額。民法862条は「相当な報酬」としか書いておらず、金額の公的な基準を見つけられませんでした
  • 859条の3の許可が下りる基準と、却下された割合
  • 誰が後見人に選ばれるかの判断基準を示した公的資料
  • 後見の終了事由の内訳(本人死亡が何%か)。今回の資料では確認できませんでした
  • 改正法の経過措置の詳しい手続き。「取消しの申立てにより新制度へ移行するか継続利用を選択できる」までは確認しましたが、その要件までは追えていません
  • 家族信託の仕組み・費用・リスク。検証していないので扱いませんでした
  • 金融機関が後見なしで親族の払戻しに応じる運用の有無と条件

この記事は条文・最高裁の統計・法務省の資料を読んで整理したものです。認知症の程度も、家庭裁判所の運用も、個別の事情で結論が変わります。動く前に、必ず司法書士・弁護士・家庭裁判所に確認してください。

まとめ

  1. 意思能力を欠いた状態でした法律行為は無効(民法3条の2)。子が代わりに売ることはできない
  2. 「認知症の診断」と「意思能力なし」は別。契約したその瞬間に理解できていたかで判断される
  3. 最初にやるのは司法書士の面談。ここで道が完全に分かれる
  4. 後見人がついても、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が要る(859条の3)。保佐・補助でも同じ
  5. 施設に入っていても「居住用」に当たり得る。賃貸・賃貸借の解除・抵当権設定も許可の対象
  6. 申立ての36.0%は不動産の処分が動機。そして後見人の82.9%は親族以外(最高裁・令和6年)
  7. 報酬は本人の財産から出る(862条)。後見が続くかぎり発生する
  8. ★ 2026年6月24日、改正法が公布。後見・保佐は補助に一元化され、「必要がなくなれば終われる」制度になる
  9. 施行は公布から2年6か月を超えない範囲内。日付はまだ政令で決まっていない
  10. 任意後見も信託も、親に意思能力があるうちにしか作れない。「まだ大丈夫」のあいだが唯一の窓

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