媒介契約はどれを選ぶか|一般・専任・専属専任の違いを条文で確かめる

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不動産会社に売却を頼むと、最初に出てくる紙が媒介契約書です。「一般」「専任」「専属専任」の3つが並んでいて、担当者はたいてい専任をすすめます。理由を聞くと「そのほうが力を入れられるので」と返ってくる。そこで判断がつかず、勧められたほうに丸を付けて帰る——ここまでが、ほぼ全員の通る道です。

ですが、この3つの違いは好みや相性の話ではなく、宅地建物取引業法34条の2という条文の中だけで決まっています。しかも決まっているのは、たった3か所です。他社にも頼めるか/レインズにいつまでに登録するか/何日おきに報告するか。それ以外は、法律は何も言っていません。

この記事は、その3か所を条文で確かめたうえで、相続した実家のように「相場が読みにくく、金額が低めで、遠方にある」物件で、どれを選ぶと何が起きるかを組み立てます。あわせて、2024年7月に上限が変わった800万円以下の物件の仲介手数料と、2025年1月から義務になったレインズの「申込み受付状況」の登録も扱います。どちらも相続した実家に直撃する変更なのに、まだあまり知られていません。

結論だけ先に

  • 一般媒介には、レインズへの登録義務も、定期報告の義務もありません。宅建業法34条の2の第5項と第9項が、どちらも「専任媒介契約を締結した」業者だけを名指ししているからです。「自由に選べるほう」ではなく「業者が何もしなくても違法にならないほう」です。
  • 「3か月まで」は専任と専属専任のルールで、一般媒介には法律上の期間の上限がありません。根拠は34条の2第3項。ここも条文が「専任媒介契約」としか書いていません。
  • 800万円以下の物件は、仲介手数料の上限が最大33万円になりました。令和6年7月1日施行の告示改正です。ただし媒介契約を結ぶときに説明して合意しておく必要があり、後から請求することはできません。相続した実家は、この価格帯に入ることが珍しくありません。
  • 2025年1月1日から、レインズに「申込みの受付状況」を登録することが法令上の義務になりました。施行規則15条の11第2号。事実と違う登録をすると指示処分の対象です。売主は登録証明書からこの画面を見られます。

条文と告示はすべて2026年8月24日にe-Gov法令検索・国土交通省の公式ページで確認しました。金額・期限は改正されます。契約前に最新の条文を確認してください。

1. 3種類の違いは、条文の3か所だけで決まっている

まず、法律が何を決めていて、何を決めていないのかを分けます。

宅建業法34条の2が3類型を分けている基準は、「他社に重ねて頼めるか」「自分で買主を見つけて直接契約できるか」の2つだけです。そこから、レインズの登録期限と報告の頻度が枝分かれします。

条文の建て付けを正確に書きます。実は、法律に「一般媒介契約」「専属専任媒介契約」という名前は出てきません。

呼び名 法律上の位置づけ
専任媒介契約 34条の2第3項が定義している。「依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約」
専属専任媒介契約 独立した名前ではない。専任媒介契約のうち、「業者が探索した相手方以外の者と契約を締結することができない旨の特約」を含むもの(34条の2第9項カッコ書き、施行規則15条の9第2号、15条の10第1項カッコ書き)
一般媒介契約 これも法律上の定義語ではない。上の制限をかけない媒介契約のこと。つまり「専任媒介契約ではないもの」

ここが読み解きの起点です。条文は「専任媒介契約」を名指しして義務を課しています。ということは、一般媒介契約はその義務の対象から外れるという構造になっています。次章で見るとおり、これが実務上いちばん大きな違いを生みます。

2. 一般媒介には、レインズ登録義務も定期報告義務もない

3類型を一覧にします。太字が、法律の条文そのものに書かれていることです。

項目 一般媒介 専任媒介 専属専任媒介
他社にも重ねて頼めるか 頼める 頼めない 頼めない
自分で買主を見つけて直接契約できるか できる できる できない
レインズへの登録義務 法律上の義務なし 契約から7日以内 契約から5日以内
業務処理状況の定期報告 法律上の義務なし 2週間に1回以上 1週間に1回以上
申込みがあった旨の報告 義務あり 義務あり 義務あり
登録証明書を渡す義務 義務なし あり あり
有効期間の法律上の上限 上限なし 3か月 3か月

根拠を条文ごとに置きます。

第三十四条の二 5 宅地建物取引業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項を、国土交通省令で定める期間内に、国土交通省令で定めるところにより、指定流通機構に登録しなければならない。

出典:e-Gov法令検索 宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)/2026年8月24日確認

主語が「専任媒介契約を締結したとき」です。第9項の報告義務も同じ書き出しになっています。

ここを誤解している人が多い

「一般媒介は複数社に頼めるから、情報が広く出て有利」——これは半分しか当たっていません。複数社に頼めるのは事実ですが、その各社にレインズ登録の義務がありません。つまり、頼んだ3社が全社ともレインズに載せなくても、法律違反ではありません。物件情報が業界内に流れないまま、各社が自社の客だけに当てて終わる、ということが構造上ありうる形です。

さらに定期報告の義務もないので、「今どうなっているか」を業者から知らせてもらう法的な根拠がありません。こちらから電話して聞くことになります。

ただし第8項の「申込みがあった旨の報告」は3類型すべてに義務があります。ここは条文が媒介契約の種類を限定していません。「買いたいという人が現れたのに知らせてもらえなかった」は、一般媒介でも義務違反です。しかも第10項により、これに反する特約は無効です。

3. 専任は7日、専属専任は5日。ただし休業日は数えない

レインズへの登録期限は、法律ではなく施行規則に書かれています。

第十五条の十 法第三十四条の二第五項の国土交通省令で定める期間は、専任媒介契約の締結の日から七日(専属専任媒介契約にあつては、五日)とする。
2 前項の期間の計算については、休業日数は算入しないものとする。

出典:e-Gov法令検索 宅地建物取引業法施行規則(昭和三十二年建設省令第十二号)/2026年8月24日確認

第2項の「休業日数は算入しない」を見落とさないでください。水曜定休の会社に金曜日に専任で頼んだ場合、7日は暦の7日ではありません。土日も営業していれば数えますが、水曜は飛ばします。「1週間経ったのにまだ載っていない」は、必ずしも違反ではありません。先に休業日を聞いておくと、無用な不信感を持たずに済みます。

報告の頻度は法律側に書かれています。

種類 報告の頻度 根拠
専任媒介 2週間に1回以上 34条の2第9項 本文
専属専任媒介 1週間に1回以上 34条の2第9項 カッコ書き

これは「以上」なので、下限です。これを下回る特約は第10項で無効になりますが、逆に「毎日報告する」という上乗せの義務は法律にはありません。頻度を増やしたければ、媒介契約を結ぶときに個別に約束することになります。

4. 有効期間3か月は「専任」だけのルール

「媒介契約は3か月」と覚えている方が多いのですが、これも専任側のルールです。

第三十四条の二 3 宅地建物取引業者は、専任媒介契約(依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約をいう。以下同じ。)を締結したときは、当該専任媒介契約の有効期間は、三月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする。

一般媒介契約には、この上限がかかりません。法律の条文が「専任媒介契約」としか書いていないからです。したがって、一般媒介で有効期間6か月・1年という契約を結ぶことも、法律上は可能です。

更新は第4項で、依頼者からの申出によって行います。業者側が自動的に延長できる仕組みではありません。「自動更新」の条項が入っていたら、そこは読んでください。

5. 登録証明書は、囲い込みを確かめる最初の1枚

専任・専属専任でレインズに登録すると、業者は登録を証する書面を売主に渡さなければなりません(34条の2第6項)。これがいわゆる登録証明書です。

この1枚は、単なる報告書ではありません。売主専用の確認画面にアクセスするための鍵です。

2025年1月4日のシステム改修で、登録証明書に二次元コードが記載されるようになりました。売主はそこから、自分の物件がレインズ上でどう見えているかを直接確認できます。

一般媒介を選ぶと、この1枚が出ません

34条の2第6項の交付義務は、第5項の登録をした場合のものです。一般媒介には登録義務がないので、登録証明書を渡す義務もありません。結果として、売主はレインズ上の状態を確認する入口を持ちません。「複数社に頼んでいるから安心」ではなく、複数社に頼んでいるのに一社も状況を確認できないという状態になりうる、ということです。

6. 2025年1月から、レインズに「申込みの受付状況」を登録する義務ができた

いわゆる囲い込み——レインズには載せるが、他社から問い合わせが来ると「商談中です」と断って自社で両手にする——への対策が、法令のレベルで一歩進みました。

時期 何が起きたか 位置づけ
2016年1月 レインズに取引状況の登録制度と売却依頼主専用確認画面が導入された レインズの運用ルール(法令ではない)
2024年6月28日 施行規則の改正省令が公布(令和6年国土交通省令第70号) 公布
2025年1月1日 施行規則15条の11第2号が施行。「取引の申込みの受付に関する状況」の登録が法令上の義務に 施行
2025年1月1日 解釈・運用の考え方が改正。事実と異なる登録は指示処分の対象と明記 通達
2025年1月4日 登録証明書に二次元コードを記載するシステム改修 システム

登録される区分は次の3つです。

  • 公開中
  • 書面による購入申込みあり
  • 売主都合で一時紹介停止中

3つ目に注目してください。「売主都合で」と書いてあります。売主が止めていないのにここが選ばれていたら、その登録は事実と違います。国土交通省の解釈・運用の考え方には、登録内容が事実と異なるときは法65条1項の指示処分の対象になると書かれました。売主が登録証明書から自分の目で確かめられる、というのがこの制度の要です。

正直に限界も書きます。「他社に情報を出さないこと」そのものを処分対象と明記した条文は、今回の調査では見つけられませんでした。確認できたのは「虚偽の登録は指示処分」というところまでです。囲い込みの実態と手口については不動産の囲い込みにまとめています。

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囲い込みが起きない売り方も、1つだけあります

媒介契約の種類で悩むのは、仲介で売ることを前提にしているからです。買い取ってもらう場合、レインズも媒介契約の種類も関係がありません。ラクウル(株式会社ネクサスプロパティマネジメント/宅地建物取引業免許:国土交通大臣(1)第10311号)は、空き家・中古戸建てを直接買い取る会社です。比べるための数字を1つ持っておくと、専任にするかどうかの判断が変わります。

先に不利なことを書きます。①買取は、仲介で売れた場合より手取りが下がります。数百万円の差になることもあります。②匿名のAI査定では成果になりません。実額を知るには連絡先を入れて申し込む形になります。③申込後に電話またはメールで物件の状況を聞かれます。④800万円以下の物件では、仲介手数料の上限が33万円になる特例があります(本文8章)。買取と仲介を比べるときは、手数料も含めて計算してください。⑤当サイトはこのリンク経由の申込で広告収入を受け取ります。それによってあなたの査定額が下がることはありません。

仲介を通さない場合の金額を聞く(無料)

仲介と買取の手取りの差は仲介と買取はどちらを選ぶかで計算しています。囲い込みの見分け方は不動産の囲い込みに。

7. 途中でやめられるか。違約金と費用償還の違い

法律には媒介契約の中途解除の一般規定がありません。実際の条件は標準媒介契約約款(国土交通省が告示で定めている雛形)に書かれています。この約款に基づくかどうかは媒介契約書面の記載事項なので、契約書を見れば分かります(施行規則15条の9第4号)。

状況 請求されうるもの 上限の考え方
専任・専属専任の期間中に他社に頼んで成約させた 違約金 約定報酬額に相当する額
専属専任で自分で見つけた相手と契約した 違約金 約定報酬額に相当する額
専任で自分で見つけた相手と契約した 費用の償還 履行のために要した費用。約定報酬額が上限
売主の都合で中途解除した(業者に落ち度がない) 費用の償還 同上
一般媒介(明示型)で明示しなかった業者経由で成約した 費用の償還 同上。違約金ではない
期間満了後2年以内に、業者の紹介で知った相手と業者を外して契約した 報酬 寄与の割合に応じた額

「違約金」と「費用の償還」はまったく別物です。違約金は約定報酬額そのものが動きますが、費用償還は実際にかかった費用です。広告を1本も出していない業者が満額を請求できる建て付けにはなっていません。

最後の行にも気をつけてください。期間が終わってから、紹介された相手と直接契約する——これをやると報酬を請求されうる、と約款に書いてあります。期間は2年です。

8. 800万円以下の実家は、仲介手数料の上限が変わった

ここが、相続した実家にいちばん効く変更です。

仲介手数料の上限は、法律ではなく告示(昭和45年建設省告示第1552号)で決まっています。原則はよく知られた3段階です。

売買代金の区分 料率(消費税等相当額を含む)
200万円以下の部分 5.5%
200万円超 400万円以下の部分 4.4%
400万円超の部分 3.3%

この告示が令和6年6月21日に改正され、令和6年7月1日から施行されました。変わったのは「低廉な空家等」の特例です。

800万円以下の宅地・建物の売買の媒介では、上記の計算式を超えて報酬を受け取ることができ、その上限は33万円(30万円の1.1倍)です。

数字を入れて確かめます。500万円で売れた場合の原則の上限額は、

区分 計算 金額
200万円以下の部分 200万円 × 5.5% 110,000円
200万円超400万円以下の部分 200万円 × 4.4% 88,000円
400万円超の部分 100万円 × 3.3% 33,000円
合計 — 231,000円

ここに特例が適用されると、上限は330,000円まで上がります。差は99,000円です。300万円で売れた場合の原則の上限は154,000円ですから、差は176,000円になります。安く売れるほど、率で計算した手数料との差が開きます。

ちなみに、売買代金がちょうど800万円のとき、原則の計算式で出る上限額も330,000円です。つまりこの特例は、800万円を下回る部分でだけ効きます。「800万円以下なら一律33万円になる」のではなく、「原則の計算式で出た額が33万円に届かないときに、33万円まで上げてよい」という形です。

後出しはできません

国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(法46条1項関係)に、媒介契約の締結に際して、あらかじめ、報酬額について依頼者に説明し、合意する必要があると明記されました。売れてから「実は33万円です」と言うことはできません。

裏を返すと、媒介契約書に何も書かれていなければ原則どおりということです。契約時に手数料の欄を必ず読んでください。相続した実家は800万円以下になりやすい価格帯です。

なお代理の場合は、この特例額の2倍以内(最大66万円)です。賃貸にも「長期の空家等」の特例(借賃1か月分の2.2倍相当額まで)が別に置かれています。

9. 査定に根拠を示す義務がある。査定料は請求できない

媒介契約の話をするとき、その前段にあるのが査定です。ここにも条文があります。

第三十四条の二 2 宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。

「いくらで売れそうです」と言うときは、その根拠を示す義務があるということです。解釈・運用の考え方では、根拠として価格査定マニュアルや取引事例など「他に合理的な説明がつくもの」であることが求められ、あわせて査定に要する費用を依頼者に請求することはできないとされています。

だから査定は無料なのであって、サービスだからではありません。そして根拠を聞くのは、遠慮ではなく条文が予定している行動です。「なぜその金額ですか」と聞いて、事例も資料も出てこないなら、その査定額は判断の材料になりません。

査定額そのものの読み方と、なぜ会社によって数百万円ずれるのかは一括査定のデメリットと実家の売却相場を調べる3つの方法に分けて書いています。査定額は「売れる価格」ではありません。この前提だけは先に持っておいてください。

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媒介契約を結ぶ前に、査定額と根拠を並べる

本文9章のとおり、宅建業法34条の2第2項は、価額の意見に根拠を明らかにする義務を課しています。そして査定料を請求することはできません。不動産SHOPナカジツは、愛知・岐阜・静岡・千葉・埼玉・福岡・熊本の一部で自社買取と仲介の両方を扱う会社です。対象地域の実家なら、比較対象の1社になります。

申し込む前に5つ確認してください。①対応しているのは上記の県の一部地域だけです。県が合っていても、店舗から遠いと受け付けられないことがあります。②申込後30日以内に電話またはメールで連絡が入り、物件の状況を聞かれます。③査定額は「売れる価格」ではありません。根拠を必ず聞いてください。④1社だけでは判断材料になりません。必ず複数社を並べてください。⑤当サイトはこのリンク経由の申込で広告収入を受け取ります。

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対象地域外の方は不動産一括査定サイト比較から複数社に依頼できます。査定額の読み方の注意は一括査定のデメリットにまとめました。

10. 相続した実家では、どれを選ぶか

ここまでを、判断の順序に組み直します。法律はどれかを推奨していません。以下は条文から導ける利害の整理です。

実家の状況 効いてくる条文上の性質 考え方
遠方にあり、自分では動けない 定期報告の義務(第9項)が専任側にしかない 専任か専属専任。報告が来る形にしておかないと、放置されても気づけない
兄弟の誰かが買い取る可能性がある 専属専任は自己発見取引ができない 専属専任は避ける。身内に売る場合でも報酬が発生する形になる
800万円以下になりそう 低廉な空家等の特例(告示 第七) 種類より先に手数料の欄を確認する。33万円の合意があるかどうか
売り急いでいない/相場が読めない 一般媒介には期間の上限がない(第3項の反対解釈) 一般を選ぶなら期間を自分で3か月に区切る。放っておくと長期契約になりうる
すでに買いたい人がいる 専任でも自己発見取引はできる(費用償還の可能性はある) その事実を媒介契約の前に伝える。後から言うと費用償還の話になる
再建築不可・訳あり・共有 — 媒介の前に、そもそも仲介で売れるかを確かめる。仲介と買取/再建築不可の実家/実家が兄弟の共有になっている

そして、どの種類を選ぶにしても先にやることは同じです。複数社の査定額と、その根拠を並べて見ること。1社しか見ていない状態では、専任にするかどうかの判断材料が足りません。会社ごとの査定額の開きと、その理由の説明の質が、そのまま媒介契約を任せる判断につながります。

よくある質問

専任媒介にすると、本当に力を入れてもらえるのですか

法律が保証しているのは「7日以内のレインズ登録」と「2週間に1回以上の報告」だけです。広告費をいくらかけるか、内見をどう回すかは条文の外の話です。逆に言えば、専任にしたのに登録証明書が来ない、2週間経っても報告がないという場合は、法律上の義務の不履行です。まずそこを確認してください。

一般媒介で3社に頼めば、3倍の目に触れますか

各社が動けば、そうなります。ただし前述のとおり一般媒介にはレインズ登録義務がありません。3社とも自社の顧客だけに紹介して終わる、という形も法律上は成り立ちます。一般媒介を選ぶなら、「レインズに登録してもらえますか」と契約前に確認し、契約書に書いてもらうのが確実です。標準一般媒介契約約款には、登録することとした場合には登録しなければならない旨の定めがあります。

媒介契約はいつでもやめられますか

やめること自体はできます。ただし専任・専属専任を売主の都合で中途解除すると、標準約款によりそれまでに要した費用の償還を請求されうる形になっています。上限は約定報酬額です。実際にかかった広告費・出張費などが対象なので、何もしていない業者が満額を請求できるものではありません。解除の前に、有効期間の残りと、何にいくらかかっているかを聞いてください。

専任にしたら、他社から「うちで売れます」と電話が来ました

専任・専属専任の期間中に他社に媒介を頼んで成約させると、約定報酬額に相当する違約金が請求されうる形になっています(標準約款)。期間が終わるのを待つか、いま契約している会社にその話を伝えて判断してもらうかの二択です。有効期間の上限は3か月なので、待つ選択も現実的です。

「専任にしないとレインズに載せられない」と言われました

法律上の登録義務が専任側にしかないのは事実ですが、一般媒介で登録できないという意味ではありません。標準一般媒介契約約款は、登録することとした場合の定めを置いています。「義務ではないが、できる」が正確な状態です。言い方が「載せられない」なのか「義務ではない」なのかで、意味がまったく変わります。

800万円以下の特例は、こちらから言わないといけませんか

逆です。業者側が媒介契約の締結に際してあらかじめ説明し、合意を得る必要があります。説明も合意もないまま売却が終わったのなら、原則の計算式による上限が適用されます。やってはいけないのは、契約時に手数料の欄を読まずに署名することです。特例の合意がそこに書かれていることがあります。金額そのものが不当なわけではありません(低額物件は手間の割に報酬が出ないため設けられた特例です)。読んでから納得して合意する、という手順の問題です。

レインズに載っているか、自分で確認できますか

専任・専属専任なら、渡された登録証明書から売主専用の確認画面にアクセスできます。2025年1月4日以降は登録証明書に二次元コードが載っています。そこで「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」のどれになっているかが見えます。自分が止めていないのに「売主都合で一時紹介停止中」になっていたら、その場で業者に説明を求めてください。事実と異なる登録は指示処分の対象です。

兄弟と共有になっている実家でも、1人で媒介契約を結べますか

持分だけの売却なら1人でできますが、実家そのものを売るには共有者全員の同意が必要です。媒介契約の段階から全員の名前が必要になります。順番としては、遺産分割が済んでいるかどうかの確認が先です。詳しくは実家が兄弟の共有になっているにまとめました。

査定額が高い会社に専任で頼むのは危険ですか

危険というより、根拠を聞いてから決める話です。34条の2第2項は、価額について意見を述べるときは根拠を明らかにしなければならないと定めています。高い理由を説明できるなら問題ありません。説明が「気合いを入れて売ります」だけなら、それは根拠ではありません。3か月拘束されたうえで値下げの相談から始まる、という展開になりがちです。

手数料を値引きしてもらうことはできますか

告示が定めているのは上限だけです。下回ることは禁じられていません。ただし報酬に関する事項は媒介契約書面の必要的記載事項(34条の2第1項7号)なので、口頭の約束ではなく書面に書いてもらってください。なお、800万円以下の物件では、値引きどころか特例で上振れしうるという逆方向の論点があります。前章のとおりです。

この記事で確認できなかったこと

  • レインズ(reins.or.jp)の利用ガイドライン本文。公式PDFがアクセスを拒否したため、条項番号レベルのルールは確認できていません。「一時紹介停止中」を選べる要件の詳細も同様です。
  • 「囲い込み」そのものを処分対象と明記した条文・通達。確認できたのは「事実と異なる取引状況の登録は法65条1項の指示処分の対象」というところまでです。
  • 宅地建物取引業者の違反行為に対する監督処分の基準の最新版。国土交通省サイトで確認できた版は平成23年10月26日最終改正で、囲い込みに関する記述はありませんでした。それ以降の改正の有無は確認できていません。
  • 標準一般媒介契約約款の現行版(令和6年4月1日改正)の条番号。PDFから一般媒介の約款本体を抽出できませんでした。本文中の条番号は専任・専属専任の令和6年版で確認したものです。
  • 低廉な空家等の特例の改正前(平成30年施行分)の内容。改正前の告示本文を確認できませんでした。本文には現行の内容のみを書いています。
  • 低廉な空家等の特例が売主だけに適用されるのか、買主にも適用されるのか。告示の文言は「依頼者から受ける報酬」とだけ書かれており、限定を示す文言は確認できませんでした。
  • 一般媒介で任意にレインズ登録した場合、登録証明書が発行・交付されるかどうか。条文の文言は専任媒介での登録を前提にしており、実務上の取扱いは確認できていません。
  • 媒介契約書面を電磁的方法で提供する場合の承諾の方法の詳細。34条の2第11項・第12項の存在は確認しましたが、政令の定めまでは確認していません。

まとめ

  1. 3類型の違いは宅建業法34条の2の中で完結しています。他社に頼めるか、自己発見取引ができるか、そこから登録期限と報告頻度が決まります。
  2. 一般媒介にはレインズ登録義務も定期報告義務もありません。「自由」ではなく「業者が動かなくても違法にならない」形です。
  3. 登録期限は専任7日・専属専任5日。ただし休業日は数えません(施行規則15条の10第2項)。
  4. 3か月の上限は専任側だけのルールです。一般媒介を選ぶなら期間を自分で区切ってください。
  5. 2025年1月1日から、レインズへの「申込み受付状況」の登録が法令上の義務になりました。事実と異なる登録は指示処分の対象です。登録証明書からご自身で確認できます。
  6. 800万円以下の物件は、仲介手数料の上限が最大33万円になりました(令和6年7月1日施行)。媒介契約時の説明と合意が必要で、後出しはできません。
  7. 査定額には根拠を明らかにする義務があり(34条の2第2項)、査定料を請求することはできません。根拠を聞くのは条文が予定している行動です。

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