親の口座が凍結されて葬儀代が払えないとき|兄弟の同意なしで下ろせます。ただし1金融機関150万円まで

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父が亡くなった。葬儀社への支払いが150万円。実家の固定資産税も、施設の未払い分もある。お金はある。父の口座に。でも銀行は「相続人全員の書類がそろわないと出せません」と言う。

兄は海外にいて連絡がつかない。妹とは10年口をきいていない。遺産分割がまとまるまで、1円も動かせない。

これは制度の欠陥として認識され、2019年(令和元年)7月1日から、法律で解決されています。民法909条の2。相続人ひとりで、単独で、他の相続人の同意なしに払い戻せる制度です。

ただし金額に上限があり、使うと後戻りできない性質があります。この記事は、民法・法務省・全国銀行協会・国会の資料だけで、いくらまで出せるのか、何が必要か、そして使う前に知っておくべきことを整理します。

最終更新:2026年8月27日

結論だけ先に

  • ★計算式は「口座の残高 × 3分の1 × 自分の法定相続分」。ただし同じ金融機関からは150万円が上限です(法務省令)。銀行が3行に分かれていれば、それぞれで判定します。
  • 他の相続人の同意は要りません。これが制度の核心です。連絡がつかない相続人がいても、仲が悪くても、自分ひとりで手続きできます。
  • ★施行日より前に亡くなった人の預金にも使えます。法附則5条が新法主義を採っているためです(法務省資料)。2019年6月に開始した相続でも対象です。
  • 払い戻した分は「遺産の一部分割で取得した」とみなされます(909条の2後段)。あとの遺産分割で、その分は自分の取り分から差し引かれます。タダでもらえるお金ではありません。
  • 150万円で足りないときは、家庭裁判所の「仮分割の仮処分」があります(家事事件手続法200条3項)。上限の定めはありませんが、遺産分割の審判か調停を申し立てていることが前提です。

この記事は民法・家事事件手続法と、法務省・全国銀行協会・参議院の公表資料だけで書いています。当サイトに弁護士も司法書士もいません。必要書類と運用は金融機関ごとに違います。手続きの前に、口座のある金融機関に確認してください。確認できなかったことは記事末尾に並べてあります。

1. なぜ「勝手に下ろせない」のか——2016年に最高裁が変えました

昔は、相続人が自分の法定相続分だけなら銀行から引き出せる、と考えられていた時期がありました。それが変わったのが平成28年12月19日の最高裁大法廷決定です。

参議院の調査資料は、この決定を受けた法務省の説明をこう記録しています。

緊急な資金需要がある場合であっても、遺産分割が終わるまでの間、全員の同意が得られない限り払戻しをすることができないという不都合が新たに生ずる

預貯金を遺産分割の対象に含めたことで公平にはなったが、代わりに「誰も1円も動かせない」期間ができてしまった。その穴を埋めるために作られたのが、この払戻し制度です。

だからこの制度は「例外的に認められた抜け道」ではなく、法律が正面から用意した通常の手段です。銀行の窓口で遠慮する必要はありません。

2. 条文はこうなっています

民法909条の2(遺産の分割前における預貯金債権の行使)の全文です。

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

読みにくいので、分解します。

条文の言葉 意味
相続開始の時の債権額 亡くなった日の残高です。今の残高ではありません
三分の一 まず残高を3で割ります
第九百条及び第九百一条の相続分 法定相続分(配偶者1/2、子で等分など)。遺言や協議の割合ではありません
債務者ごとに法務省令で定める額 「債務者」=金融機関のこと。金融機関ごとに上限がかかります
単独でその権利を行使することができる 他の相続人の同意も、実印も、印鑑証明も要らない
遺産の一部の分割により取得したものとみなす あとで精算される。前借りです
法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律 新旧対照条文」および裁判所の参考条文資料から作成

3. いくら下ろせるのか

法務省のパンフレットは、計算式をこう示しています。

(相続開始時の預貯金債権の額(口座基準))×1/3×(当該払戻しを行う共同相続人の法定相続分)

そして上限です。

1つの金融機関から払戻しが受けられるのは150万円まで

法務省が挙げている例

預金600万円、相続人は妻と長男・長女(法定相続分は妻1/2、子はそれぞれ1/4)というケースで、法務省は「預金600万円 → 長男100万円払戻し可」としています。

全国銀行協会のリーフレットは、同じ例の計算過程を書いています。

長男が単独で払戻しができる額=600万円×1/3×1/2=100万円

この2つは同じ600万円の例ですが、掛けている相続分が違います。法務省の例は相続人が妻と子2人(長男の相続分1/4)、全銀協の例は長男の相続分が1/2のケースです。自分の家族構成で法定相続分がいくつになるかを先に確定してください。ここを間違えると計算が合いません。

自分の場合を計算する

相続人の構成 あなた(子)の法定相続分 残高300万円のとき 残高900万円のとき
母と、子2人 1/4 300万×1/3×1/4=25万円 900万×1/3×1/4=75万円
母と、子1人 1/2 300万×1/3×1/2=50万円 900万×1/3×1/2=150万円
子2人だけ(母は既に他界) 1/2 300万×1/3×1/2=50万円 900万×1/3×1/2=150万円
子3人だけ 1/3 300万×1/3×1/3=約33.3万円 900万×1/3×1/3=100万円
民法900条・909条の2と法務省の計算式にもとづく試算。実際の可否と金額は金融機関の判断です

残高900万円・相続分1/2で、ちょうど150万円の天井に当たります。これより残高が多くても、1つの金融機関からは150万円までです。

★「金融機関ごと」がいちばん効きます

条文の括弧書きは「預貯金債権の債務者ごとに」と書いています。債務者とは、預金を預かっている金融機関のことです。

つまり親の口座が3つの銀行に分かれていれば、150万円の枠も3つあります。1つの銀行に集中していれば150万円で打ち止め、分散していれば450万円。同じ資産額でも、預け先の数で結果が変わります。

親の口座がどこにあるか分からないなら、先に全体を把握してください。通帳とキャッシュカード、金融機関からの郵便物、確定申告書の控え、公共料金や保険料の引落し先から手がかりが出てきます。1行にまとめて預けていた人ほど、この制度では不利になります。

4. 何を持っていくか

全国銀行協会のリーフレットが挙げている書類です。

  • 本人確認書類(払戻しを受ける相続人のもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
  • 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書——出生から死亡までの連続したもの
  • 払戻し希望者の印鑑証明書

ここで注意してほしいのが2番目と3番目です。「相続人全員の戸籍」と「被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍」が要ります。

つまり「同意」は要らないが、「誰が相続人か」を証明する書類は要ります。連絡がつかない兄弟がいても手続きはできますが、その兄弟の戸籍謄本は取り寄せる必要があります。相続人であれば、他の相続人の戸籍は職務上請求でなくても取得できます。

出生から死亡までの戸籍をたどる作業は、本籍を何度も移していると数か月かかることがあります。法務局の法定相続情報証明制度で一覧図を作っておくと、複数の金融機関に同じ戸籍の束を出し直さずに済みます。口座が3行に分かれているなら、その手間は3倍になります。

出典:全国銀行協会「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」リーフレット/法務省「相続に関するルールが大きく変わります」パンフレット

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払い戻したあと、相続税と遺産分割をどう整理するか

払戻しは「遺産の一部の分割により取得したものとみなす」と条文に書かれています。つまりあとの遺産分割で必ず精算されます。相続税の申告が必要な家なら、払い戻した分をどう申告書に反映するか、葬儀費用をどこまで債務控除に入れられるかも同時に決まります。税理士ドットコムは全国5,900名以上の税理士から、相続に強い人を無料で紹介する窓口です。運営は東証プライム上場の弁護士ドットコム株式会社。紹介と相談は無料で、複数の税理士を比較してから選べます。

申し込む前に3つだけ確認してください。①紹介は無料ですが、実際に依頼したあとの報酬は税理士ごとに違います。見積りを取ってから決めてください。
②コーディネーターから電話またはメールで連絡が入り、相続財産の内容と地域を聞かれます。亡くなった日、相続人の人数、おおよその財産額を答えられるようにしておくと早く終わります。
③相続税の申告期限は10か月です。期限が近いなら、その旨を最初に伝えてください。

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払い戻す前に、相続放棄を検討する必要がないかを先に確かめてください。順番を間違えると戻れません。

5. ★使う前に知っておくべきこと

払い戻した分は、あとで自分の取り分から引かれます

条文の後段です。「当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす」。

全銀協のリーフレットも同じことを書いています。

これらの制度により払い戻された預金は、後日の遺産分割において、払戻しを受けた相続人が取得するものとして調整が図られる

葬儀費用に使ったつもりでも、法律上は「あなたが自分の取り分を先に受け取った」扱いです。兄弟に「葬儀代は立て替えた」と主張したいなら、領収書を保管し、何にいくら使ったかを記録してください。払い戻した事実と、その使途は別の話です。ここを曖昧にすると、あとで「あいつは勝手に150万円取った」という話になります。

遺言があると使えないことがあります

全銀協は注意事項として「遺言相続のためこれらの制度を利用できない場合などもあり」と書いています。

遺言でその預金の行き先が決まっているなら、そもそも遺産分割の対象ではなくなるためです。手続きの前に、遺言がないかを確認してください。公正証書遺言なら公証役場の検索システムで、自筆証書遺言なら法務局の保管制度で照会できます。

相続放棄を考えているなら、動く前に専門家に相談してください

親に借金があるかもしれない場合、この制度を使うべきではありません。

民法921条1号は、相続人が相続財産の全部または一部を「処分」したときは単純承認したものとみなす、と定めています。単純承認とみなされると、もう相続放棄はできません。

払戻しがこの「処分」に当たるかどうかについて、当サイトは一次情報を確認できませんでした。法務省の資料にも金融機関のリーフレットにも、この点の説明はありません。当たる可能性がある以上、借金の有無がはっきりしないうちは手を出さないのが安全です。3か月の熟慮期間との関係も含めて、相続放棄を検討している段階なら、先に弁護士か司法書士に相談してください。

6. 150万円で足りないとき——家庭裁判所の仮分割

相続税の納付が迫っている、施設の未払いが数百万円ある。150万円では届かない場合の手段が、家事事件手続法200条3項です。

家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権(略)を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができる。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは、この限りでない。

民法909条の2の払戻し 家裁の仮分割の仮処分
手続きの場所 金融機関の窓口 家庭裁判所
前提 なし ★遺産分割の審判または調停を申し立てていること
上限 1金融機関150万円 条文に額の定めなし
判断する人 金融機関 裁判官
要件 計算式に収まること 債務の弁済・生活費の支弁その他の事情による必要性
歯止め 金額の上限 他の共同相続人の利益を害しないこと
かかる時間 書類がそろえば窓口手続き 申立てと審理が必要
民法909条の2・家事事件手続法200条3項および法務省パンフレットから作成

法務省のパンフレットは、この改正を「預貯金債権に限り、家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件を緩和」と説明し、「仮払いの必要性があると認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められる」としています。

ただし「遺産分割の審判または調停の申立てがあった場合」が条文上の前提です。つまり兄弟と争う土俵に上がることとセットになります。まだ話し合いで解決できそうなら、順番として先に909条の2を使ってください。

7. 2019年7月1日より前に亡くなった親の預金でも使えます

これは見落とされやすい点です。法務省の経過措置の資料は、この制度についてこう整理しています。

預貯金債権の払戻し制度(法附則第5条)新法主義を採用(相続開始が施行日前であっても適用)

相続法の改正では、項目ごとに経過措置が違います。

制度 附則 いつの相続に使えるか
預貯金の払戻し 附則5条 ★施行日前に開始した相続にも適用
自筆証書遺言の方式緩和 附則6条 施行日後に作成された遺言
配偶者居住権 附則10条 施行日前の遺贈は無効
夫婦間の居住用不動産の贈与 附則4条 施行日後に行われた贈与
法務省「経過措置について」から作成

遺産分割が何年も止まったままの家でも、預金の払戻しだけは今日から使えます。2015年に亡くなった親の口座が凍結されたままなら、この制度の対象です。

出典:法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律 新旧対照条文」「経過措置について」「相続に関するルールが大きく変わります」/全国銀行協会「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」/参議院「立法と調査」

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預金より先に、実家がいくらになるかを確かめる

150万円で足りないとき、次に見るのは実家そのものの金額です。遺産分割の話は「家がいくらか」が決まらないと前に進みません。預金は分けやすく、家は分けにくい。だから家の金額が出た瞬間に、預金の配分も決めやすくなります。一括査定なら、複数の不動産会社の査定額を並べて比べられます。兄弟に金額を示すときも、1社だけの数字より複数社の幅のほうが通ります。

申し込む前に4つだけ確認してください。①申し込めるのは名義人か、そのご親族です。相続した実家なら、相続人であるあなたが申し込めます。
②申し込むと不動産会社から電話またはメールで連絡が入ります。所在地・築年数・間取りを答えられるようにしておくと早く終わります。
③相続登記が済んでいなくても査定は受けられますが、売却の契約には登記が必要です。登記の期限は3年です。
④査定額は「売れる価格」ではありません。実際の成約価格はここから動きます。

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金額が出たら、遺産分割協議書に払い戻した分をどう書くかもあわせて決めてください。

やってはいけないこと

  • 親のキャッシュカードで、亡くなったあとにATMから引き出す。これは制度の利用ではありません。909条の2は窓口で所定の手続きを踏むものです。無断の引き出しは、あとで他の相続人との紛争になります。
  • 借金があるかもしれないのに、先に払い戻す。民法921条1号の「処分」に当たれば相続放棄ができなくなります。当たるかどうかは当サイトでは確認できませんでした。危ない橋は渡らないでください。
  • 今の残高で計算する。基準は亡くなった日の残高です。
  • 遺言の有無を確認せずに窓口へ行く。遺言があると使えない場合があります。
  • 払戻しを受けた記録を残さない。あとの遺産分割で必ず精算されます。何にいくら使ったかを、領収書とセットで残してください。
  • 150万円が「1人あたりの総額」だと思い込む。上限は金融機関ごとです。口座が分かれているなら枠も分かれます。

動く順番

  1. 遺言がないかを確認する。公証役場の検索と、法務局の保管制度の照会。
  2. 親に借金がないかを確認する。ここが不明なら、払い戻す前に専門家へ。
  3. 亡くなった日の残高証明書を取る。計算の基準はこの金額です。
  4. 口座がいくつの金融機関に分かれているかを把握する。枠の数が変わります。
  5. 戸籍を集める。被相続人の出生から死亡まで連続したもの+相続人全員分。法定相続情報一覧図にしておくと使い回せます。
  6. 金融機関の窓口で払戻しを請求する。他の相続人の同意は不要です。
  7. 領収書を残す。あとで精算されます。
  8. 足りなければ、家庭裁判所の仮分割を検討する。遺産分割の申立てが前提です。

よくある質問

Q. 兄が同意しません。それでも下ろせますか?

下ろせます。民法909条の2は「単独でその権利を行使することができる」と定めています。他の相続人の同意も実印も要りません。ただし兄の戸籍謄本は必要書類に含まれます(相続人が誰かを証明するため)。同意は要らないが、書類は要る、という整理です。

Q. いくらまで下ろせますか?

「亡くなった日の残高 × 1/3 × 自分の法定相続分」で、1つの金融機関につき150万円が上限です。たとえば残高600万円で法定相続分1/2なら100万円。残高900万円で1/2なら150万円(天井)。口座が複数の銀行に分かれていれば、銀行ごとに150万円の枠があります。

Q. 葬儀費用に使ったので、返さなくていいですよね?

そうとは限りません。条文は払い戻した分を「遺産の一部の分割により取得したものとみなす」としており、全銀協も「後日の遺産分割において、払戻しを受けた相続人が取得するものとして調整が図られる」と説明しています。葬儀費用を誰がどう負担するかは、それとは別に話し合う問題です。領収書を必ず残してください。

Q. 2018年に亡くなった父の口座でも使えますか?

使えます。法務省の経過措置資料は、この制度について「新法主義を採用(相続開始が施行日前であっても適用)」(法附則5条)としています。施行日は令和元年7月1日ですが、それより前に開始した相続にも適用されます。

Q. 150万円では足りません

家庭裁判所の「仮分割の仮処分」があります(家事事件手続法200条3項)。条文に金額の上限はなく、債務の弁済や生活費の支弁などの必要性が認められれば認容されます。ただし遺産分割の審判または調停を申し立てていることが条文上の前提で、「他の共同相続人の利益を害するとき」は認められません。

Q. 相続放棄をするかもしれません。先に下ろしても大丈夫ですか?

おすすめしません。民法921条1号は、相続財産の全部または一部を「処分」したときは単純承認とみなすと定めており、単純承認になると相続放棄はできなくなります。払戻しがこの「処分」に当たるかどうかは、当サイトでは一次情報で確認できませんでした。借金の有無がはっきりしないうちは、先に弁護士か司法書士に相談してください。

Q. ATMで下ろすのと何が違うのですか?

まったく違います。909条の2は金融機関の窓口で所定の書類を出して行う正式な手続きで、払い戻した事実が記録されます。カードでの無断の引き出しは制度の利用ではなく、他の相続人との紛争のもとになります。記録が残る方法で行ってください。

まとめ

  • ★他の相続人の同意なしで下ろせます。民法909条の2。もめていても、連絡がつかなくても使えます。
  • 「亡くなった日の残高 × 1/3 × 法定相続分」、1金融機関150万円まで。口座が分かれていれば枠も分かれます。
  • 同意は不要ですが、戸籍は必要です。被相続人の出生から死亡までと、相続人全員分。
  • ★前借りです。あとの遺産分割で自分の取り分から引かれます。領収書を残してください。
  • 施行日前に開始した相続にも使えます(法附則5条・新法主義)。
  • 借金があるかもしれないなら、動く前に専門家へ。

この記事で確認できなかったこと

  • 払戻しが民法921条1号の「処分」に当たり、単純承認とみなされるかどうか。法務省の資料にも金融機関のリーフレットにも記載がなく、確認できませんでした。断定を避けています。
  • 150万円を定めている法務省令の正式名称と番号。150万円という金額は法務省パンフレット2種と全国銀行協会のリーフレットで一致を確認しましたが、省令そのものは確認できていません。
  • 平成28年12月19日最高裁大法廷決定の原文。裁判所の判例検索がうまく開けず、決定の存在と趣旨は参議院「立法と調査」の記述で確認しました。
  • 制度の年間利用件数。金融庁・法務省・全国銀行協会のいずれにも統計を見つけられませんでした。
  • 金融機関ごとの実際の必要書類と処理日数。全国銀行協会の共通リーフレットの記載までは確認しましたが、個々の銀行の運用は確認していません。
  • ゆうちょ銀行・信用金庫・農協など、銀行以外での取扱いの違い。条文は「預貯金債権の債務者」とだけ定めており、これらも対象と読めますが、各機関の公式資料は確認できませんでした。
  • 家庭裁判所の仮分割の仮処分の申立件数・認容率。司法統計で特定できませんでした。

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