実家を相続したあと引っ越したら、2年以内に登記が要ります|住所変更登記の義務化は2026年4月に始まりました

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相続登記は済ませた。実家は自分の名義になった。そのあと、自分が引っ越した。

動いたのは、住所だけです 引っ越した 実家 いまの住まい 登記簿は、前の住所のまま 動かすのは、紙のほうです

この場合、もう1つ登記の義務があります。2026年(令和8年)4月1日から、所有者の住所や氏名が変わったら2年以内に登記しなければならなくなりました。怠ると5万円以下の過料です。

厄介なのは、施行前に引っ越していた人も対象になることです。10年前の引っ越しでも、20年前の引っ越しでも同じです。期限は2028年(令和10年)3月31日。改正法の附則が、起算日を「変更があった日」と「施行日」の遅いほうと決めているためです。

ただし、登記しなくても済ませる道が用意されています。法務局に「検索用情報」を届け出ておけば、引っ越すたびに登記所から連絡が来て、それに返事をすれば登記官が職権で登記してくれます。登録免許税もかかりません。この記事は、その全体を法務省・法務局の公表資料だけで整理します。

最終更新:2026年9月3日

結論だけ先に

  • ★2026年4月1日から義務です。不動産登記法76条の5により、氏名・名称・住所が変わったら変更があった日から2年以内に登記の申請が必要。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料(同法164条2項)。
  • ★施行前に引っ越していた人も対象です。起算日は「変更があった日」と「施行日」のいずれか遅い日(改正法附則5条7項)。つまり2028年3月31日までに登記すれば過料の対象になりません。
  • 過料はいきなり来ません。登記官が相当の期間を定めて催告し、それでも正当な理由なく申請がないときに限り裁判所へ通知される運用です。催告に応じて申請すれば通知されません。
  • ★「検索用情報の申出」を出しておくと、引っ越すたびに登記所から通知が来ます。その通知に発送の日から1か月以内に返事をすれば、登記官が職権で登記します(76条の6・規則158条の45第3項)。登録免許税はかかりません。返事をしないと登記されません。受付は2025年4月21日から始まっています。

この記事は不動産登記法・同規則・登録免許税法と、法務省・法務局・国土交通省の公表資料だけで書いています。当サイトに司法書士はいません。個別の申請の可否と必要書類は、必ず管轄の法務局にご確認ください。確認できなかったことは記事末尾に並べてあります。

1. 覚える条文は2つだけ——「2年以内」と「5万円以下」

根拠は不動産登記法76条の5です。長い条文ではありません。

所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から二年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。

過料は164条2項です。

第七十六条の五の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、五万円以下の過料に処する。

施行日は令和8年(2026年)4月1日。改正法は令和3年法律第24号で、相続登記の義務化と同じ法律です。相続登記が2024年4月、住所等変更登記が2026年4月。2年ずれて施行されました。ここまでは「これから引っ越す人」の話に読めます。問題は、もう引っ越してしまった人です。

出典:法務省「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)」新旧対照条文および法律本文/法務省「住所等変更登記の義務化について」

2. ★施行前に引っ越していた人も、対象になります

引っ越したのが10年前でも20年前でも、2026年4月1日から、期限までの時計はもう動き始めています。

「2026年4月から義務なんだから、それ以前の引っ越しは関係ないだろう」と考えたくなりますが、そうではありません。改正法の附則5条7項がこう定めています。

(新法の)第七十六条の五の規定は、(…)施行の日前に所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があった場合についても、適用する。この場合において、(…)「あった日」とあるのは「あった日又は第三号施行日のいずれか遅い日」とする。

訳すと1行です。起算日は「変更があった日」と「2026年4月1日」の遅いほう。施行前に引っ越していた人は、2026年4月1日から2年——つまり2028年(令和10年)3月31日が期限になります。法務省も「令和10年3月31日までに変更登記をしていただく必要があります」と明記しています。

数え始めは、遅いほうの日からです 引っ越したのは2026年4月1日より前ですか はい 施行日から2年 附則5条7項の読替え いいえ 引っ越した日から2年 76条の5の本文

20年前に実家を相続して名義を変え、その後に自分が引っ越したまま放置している——という人が、いちばん多いパターンです。この人にも義務がかかります。

なお、この附則の作りは相続登記の義務化のときとまったく同じです(附則5条6項)。相続登記も「施行日前の相続」に遡って適用され、期限は2027年(令和9年)3月31日。こちらのほうが先に来ます。相続登記でやったことを、住所変更でもう一度やる。それだけです。

3. 相続登記の義務化とは、別の義務です

相続登記の義務化 住所等変更登記の義務化
条文 不動産登記法76条の2 不動産登記法76条の5
期限 3年以内(相続の開始を知り、かつ所有権を取得したことを知った日から) 2年以内(変更があった日から)
過料 10万円以下(164条1項) 5万円以下(164条2項)
施行日 令和6年4月1日 令和8年4月1日
施行前分の期限 令和9年3月31日 令和10年3月31日
省く仕組み 相続人申告登記 スマート変更登記(76条の6)
法務省「相続登記の申請義務化について」「住所等変更登記の義務化について」から作成

相続した実家では、この2つが順番に来ます。まず相続登記で自分名義にする(3年以内)。名義人になった以上、その後に自分が引っ越せば住所変更の義務が生じる(2年以内)。実家に住んでいるかどうかは関係ありません。持っているだけで、名義人としての義務が続きます。

相続登記そのものについては相続登記の義務化にまとめてあります。

2つの義務は、別のものです 相続登記 76条の2 3年以内 10万円以下の過料 164条1項 住所変更登記 76条の5 2年以内 5万円以下の過料 164条2項 どちらも「正当な理由がないのに」が条件です

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4. 過料は、いきなり来るわけではありません

「5万円以下の過料」と聞くと身構えますが、運用は段階を踏みます。法務省の資料によれば、登記官は相当の期間を定めて申請をするよう催告し、それにもかかわらず正当な理由なく期間内に申請がされないときに限り、裁判所に過料事件の通知をします。催告に応じて申請すれば、通知はされません。

「正当な理由」として挙げられている例

法務省が示している例は次のとおりです(これで全部という意味ではありません)。

  • 検索用情報の申出をしている(または法人が会社法人等番号を登記している)が、職権による変更登記がまだされていない
  • 行政区画の変更による住所変更
  • 登記名義人が重病等である
  • DV被害者等で、住所を明らかにすると生命・身体に危害が及ぶおそれがある
  • 経済的に困窮しており、登記費用を負担する能力がない

見てほしいのは1つ目です。検索用情報の申出さえ出しておけば、職権登記がまだ済んでいなくても「正当な理由」の側に入ります。つまりこの申出は、手間を省く仕組みであると同時に、5万円から身を守る仕組みでもあります。その申出が何なのかを、次の章で見ます。

出典:法務省「住所等変更登記の義務化について」および同マスタープラン

5. 登記しなくて済む道——スマート変更登記

先に結論です。やることは「検索用情報の申出」を出して、そのあと登記所から来る通知に返事をすること。この2つだけで、登録免許税もかかりません。ただし、黙っていて自動で始まるものではありません。そこが条文に書いてあります。不動産登記法76条の6です。

出して、返事をする。それだけです 1 出す 検索用情報の申出 2 返事をする 通知への返事 この2つで、登録免許税はかかりません

登記官は、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記をすることができる。ただし、当該所有権の登記名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限る。

個人は「申出」が前提です

ただし書に注目してください。個人の場合は、本人からの申出がないと職権登記は行われません。黙っていれば自動でやってくれる、というものではありません。

では、誰が何をするのか。登記所は住民基本台帳ネットワークから本人確認情報の提供を受けて変更を把握し、本人にメールまたは書面で意思確認をしたうえで、返事があれば登記官が職権で変更登記をします。そしてこの職権登記には登録免許税がかかりません。

申出は2段あります。まず検索用情報、そのあと通知への返事です

①がこれから説明する「検索用情報の申出」です。根拠は不動産登記規則158条の39・158条の40。受付はすでに2025年(令和7年)4月21日から始まっています。②の「通知への返事」は規則158条の45で、そちらはこの章の後半で扱います。①を出しただけでは登記されません。

項目 内容
申し出る内容 ①氏名 ②氏名の振り仮名 ③住所 ④生年月日 ⑤メールアドレス(+対象不動産を特定する情報)
2つの型 同時申出=これから登記申請をするときに一緒に出す/単独申出=すでに名義人の人が後から出す
出し方 Webの「かんたん登記・供託申請」、または申出書を管轄登記所へ郵送・持参
押印・電子署名 不要
メールアドレス 本人のみが現に利用するものに限る(親族のアドレスは不可)。持っていない場合は「メールアドレスなし」と記載できる
手数料 職権による変更登記は登録免許税がかからない
法務省「検索用情報の申出について」「スマート変更登記のご利用方法」および不動産登記規則158条の39・158条の40から作成

★見逃せるのは1か月。しかも「届いた日」からではありません

登記所からのメールを見落としたら、どうなるのか。不動産登記規則に、期限が1行で書いてありました。

その前に、ひとつ整理させてください。この制度の「申出」は2段あります。①検索用情報の申出(規則158条の39・158条の40)——登記所が自分を見つけて連絡できる状態にしておく手続。②76条の6ただし書の申出(規則158条の45)——引っ越しを把握した登記所から通知が来たときに、「登記してください」と返事をする手続。①を出しただけでは登記されません。②の返事が要ります。そして、その②に期限があります。

不動産登記規則第百五十八条の四十五(法第七十六条の六ただし書の申出)
1 ……登記官は、住民基本台帳法第三十条の九の規定により提供を受けた当該所有権の登記名義人についての機構保存本人確認情報により、その氏名又は住所について変更があったことを確認した場合には、当該所有権の登記名義人に対し、その旨及び……申出をすることができる旨を通知することができる。
2 前項の規定による通知は、電子メールの送信によってするものとする。ただし、検索用情報管理ファイルに電子メールアドレスが記録されていないことその他の事由により電子メールの送信による通知をすることができない所有権の登記名義人に対しては、書面を送付してするものとする。
3 第一項の規定による通知を受けた所有権の登記名義人は、当該通知の発送の日から一月以内に、同項に規定する登記官に対し、法第七十六条の六ただし書の申出をすることができる。

出典:e-Gov法令検索 不動産登記規則第158条の45(全文を開いて確認/2026年9月3日)

3項の「当該通知の発送の日から一月以内に」が答えです。期限は、通知が届いた日ではなく発送の日から数えます。1か月を過ぎると、その通知に対する申出はできません。

ただし、これは「その回の職権登記が動かない」というだけです。76条の5の申請義務そのものは残ります。放置していると、自分で申請するしかなくなる、ということです。

だから、メールアドレスは「見るアドレス」を出してください。2項が通知の方法を電子メールと決めていて、書面が送られるのはアドレスが記録されていない場合などに限られます。登録したまま使っていないアドレスを出すと、通知に気づかないまま1か月が過ぎます。

★自動で動くのは、申し出た個人と、番号のある法人だけです

76条の6の本文は「変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には」と書いていました。その法務省令が、これです。

不動産登記規則第百五十八条の四十四(職権による氏名等の変更の登記)
1 法第七十六条の六本文の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 次条第六項(第百五十八条の四十六第二項において準用する場合を含む。)の規定による通知があった場合
二 会社法人等番号が登記された所有権の登記名義人の法人の登記簿に記録された情報の提供を受けてその名称又は住所について変更があったことを確認した場合

出典:e-Gov法令検索 不動産登記規則第158条の44(全文を開いて確認/2026年9月3日)

一号が個人、二号が法人です。一号は「次条第六項の通知」——つまり本人が1か月以内に申し出て、それが管轄の登記所に通知されたときです。

二号には条件が付いています。「会社法人等番号が登記された」法人であることです。法人だから自動でやってもらえる、ではありません。登記簿に会社法人等番号が入っている法人が対象です。

職権で直るのは、この2つだけ 会社法人等番号のある法人 158条の44第1項2号 職権で登記 個人で、申し出た人 通知の発送から1か月以内 職権で登記 個人で、申し出ていない人 1か月を過ぎると動きません 自分で申請 催告にも応じないとき 164条2項「正当な理由がないのに」 5万円以下 緑も、登記が済むまで76条の5の義務は残ります

★書き漏らした田んぼは、職権登記の対象になりません

1回申し出れば、全国の持ち物ぜんぶに効くのか。それとも不動産ごとに要るのか。規則158条の40が、両方に答えていました。

不動産登記規則第百五十八条の四十
2 ……申出は、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
一 所有権の登記名義人の検索用情報
……
四 申出に係る不動産の不動産所在事項
3 検索用情報単独申出は、申出に係る不動産の所在地を管轄する登記所の登記官に対してしなければならない。ただし、異なる登記所の管轄区域にある二以上の不動産について検索用情報単独申出をするときは、当該検索用情報単独申出は、当該不動産のうちいずれかの不動産の所在地を管轄する登記所の登記官に対してすることができる。
7 検索用情報申出情報は、所有権の登記名義人ごとに作成して提供しなければならない。

出典:e-Gov法令検索 不動産登記規則第158条の40(全文を開いて確認/2026年9月3日)

2項4号が「申出に係る不動産の不動産所在事項」を要求しています。つまり不動産を書き出して申し出ます。名前を登録すれば全国の持ち物に自動で紐づく、という作りではありません。

そのかわり、3項ただし書があります。県をまたいで複数の不動産を持っていても、そのうちどれか1つの管轄の登記所にまとめて出せます。登記所を回る必要はありません。

実家じまいで効いてくるのはここです

実家のほかに田や山林を持っていることは珍しくありません。申出のときにその全部を書き出しておかないと、書き漏らした不動産は職権登記の対象になりません。手元に固定資産税の課税明細書があるなら、それがそのまま持ち物の一覧です。

手元の1枚が、そのまま一覧になります 実家 田 山林 固定資産税の課税明細書 申出には、この全部を書き出します

申出をしても、自分で申請しないといけない場合

海外に住んでいる人は、そもそも検索用情報の申出ができません。不動産登記規則158条の40第1項が「国内に住所を有する所有権の登記名義人は」と書いていて、158条の39第1項も同じです。住基ネットで住所を把握できないためで、法務省もそう明記しています。自分で変更登記を申請するしかありません。

また、職権登記は「意思確認への返答」が前提です。見落として放置した場合にどうなるかは、不動産登記規則158条の45第3項に書いてあります(次の見出しで引用します)。申出をしたら、登記所からの連絡を受け取れる状態にしておいてください。

出典:法務省「スマート変更登記のご利用方法」「検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係)」および同Q&A

6. 自分で申請する場合の手続と費用

項目 内容
登記の名称 所有権登記名義人住所変更(氏名変更)登記
申請先 その不動産の所在地を管轄する法務局
登録免許税 不動産1個につき1,000円
添付するもの 住民票の写し(マイナンバーの記載がないもの)。住民票コードを申請書に書けば省略できる場合がある
様式 法務局「不動産登記の申請書様式について」の1-1(住所移転)/1-3(氏名変更)/1-4(住所及び氏名変更)
オンライン 可能(登記・供託オンライン申請システム)
法務省民事局のパンフレットおよび法務局の申請書様式ページから作成

実家が土地1筆・建物1棟なら2,000円。ただし数えるのは「実家」ではなく「筆」と「棟」です。田や山林を一緒に相続していれば、その分だけ増えます。

住所を何度も変えているとき

登記簿に載っている住所から現在の住所まで、つながりを証明する必要があります。法務省の案内に、こんな一文があります。

住民票の写しでは、その住所移転の経緯を証明することができないことがあります。その場合には、戸籍の附票の写し(本籍地の市区町村で発行)などを提出していただき(ます)

住民票は、原則として1つ前の住所までしか載りません。2回以上引っ越していると、住民票だけではつながらないことがあります。その場合は本籍地で戸籍の附票を取ります。本籍も変えている場合は、さらに手間が増えます。ここが、この手続で最もつまずくところです。

住民票で足りない分は、附票でつなぎます 登記簿の住所 前の住所 いまの住所 住民票 戸籍の附票 住民票は、原則1つ前の住所まで その前は、本籍地で戸籍の附票を取ります

★土地が10筆あれば1万円。頭打ちはありません

実家のほかに田や山林も相続していたら、いくら払うことになるのか。登録免許税法の別表を開きました。

登録免許税法別表第一・一(十四)
付記登記、抹消された登記の回復の登記又は登記事項の更正若しくは変更の登記(これらの登記のうち、(一)から(十三)までに掲げるもの及び土地又は建物の表示に関するものを除く。) 不動産の個数 一個につき千円

同(十五)
登記の抹消(土地又は建物の表題部の登記の抹消を除く。) 不動産の個数 一個につき千円(同一の申請書により二十個を超える不動産について登記の抹消を受ける場合には、申請件数一件につき二万円)

出典:e-Gov法令検索 登録免許税法別表第一(全文を開いて確認/2026年9月3日)

括弧書きが付いているのは(十五)だけです。住所・氏名の変更登記は(十四)で、そこに上限の定めはありません。

つまり、不動産の個数がそのまま効きます。1個なら1,000円、5個なら5,000円、10個なら10,000円。「20個を超えたら2万円で頭打ち」は、抹消登記の話であって、住所変更登記には当てはまりません。

田が5枚、山が1つ、それに実家の土地と建物。これで8個なら8,000円です。「20個を超えたら頭打ち」が無いというのは、そういうことです。なお、これは登録免許税だけの話で、司法書士に頼む場合の報酬は別にかかります。

登録免許税は、個数がそのまま効きます 不動産1個 1,000円 3個 3,000円 5個 5,000円 10個 10,000円 登録免許税法別表第一(十四)。上限なし

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7. 所有者不明の土地の3件に1件は、「引っ越しただけ」でした

国土交通省が地籍調査で62万筆を当たったところ、登記簿からは持ち主にたどり着けない土地が、5筆に1筆ありました(平成28年度・622,608筆中125,059筆=20.1%)。問題は、その原因の内訳です。

所有者の所在が確認できなかった原因 筆数 割合
相続登記が未了 83,371筆 66.7%
住所変更登記が未了 40,496筆 32.4%
売買・交換等による登記が未了 1,192筆 1.0%
国土交通省「所有者不明土地の実態把握の状況について」(平成28年度地籍調査)から作成

3件に1件は「引っ越しただけ」が原因でした。相続登記の義務化だけでは3分の2しか埋まらない。だから残りの3分の1にも手を付けた、という順番です。

なお、国土交通省の令和6年の調査でも、所有者不明土地の割合は23%です。この23%に自分の実家を足さないために、次の一覧だけは読んでください。

やってはいけないこと

  • 「2026年4月より前の引っ越しだから関係ない」と考える。附則5条7項で遡って適用されます。期限は2028年3月31日です。
  • 相続登記が済んだから終わり、と思う。名義人になった以上、その後の住所変更は自分の義務です。
  • 検索用情報を申し出たきり、メールを放置する。職権登記は本人の意思確認が前提です。連絡を受け取れる状態にしておいてください。
  • 海外に住んでいるのに、申出だけで済ませる。住基ネットで把握できないため、自分で申請が必要です。
  • マイナンバーが載った住民票を添付する。法務局は個人番号の記載がないものを求めています。
  • 実家を空き家のまま放置して、登記も税金も止めておく。登記の義務は持ち続ける限り続きます。放置したときに何が起きるかも合わせて確認してください。

動く順番

  1. 登記事項証明書を取って、登記簿上の住所を確認する。いまの住所と違っていれば対象です。
  2. 相続登記が済んでいるかを確認する。済んでいなければ、まずそちら(3年以内・10万円以下)が先です。
  3. これから何度も引っ越す可能性があるなら、検索用情報の申出をする。申出そのものは1回ですが、引っ越すたびに通知への返事が要ります。返事をすれば職権登記で、登録免許税もかかりません。
  4. いますぐ直すなら、住民票の写し(マイナンバー記載なし)を用意する。つながらなければ戸籍の附票。
  5. 管轄の法務局へ申請する。登録免許税は不動産1個につき1,000円。オンラインでも可。
  6. 期限を手帳に書く。施行前の引っ越しなら2028年3月31日、それ以降の引っ越しならその日から2年です。

よくある質問

Q. 引っ越したのは10年前です。もう手遅れですか?

手遅れではありません。施行前に住所が変わっていた場合の起算日は「変更があった日」と「2026年4月1日」のいずれか遅い日です(改正法附則5条7項)。つまり2028年3月31日までに登記すれば、過料の対象になりません。

Q. 引っ越すたびに登記が必要ですか?

原則はそうです(76条の5)。ただし検索用情報の申出をしておけば、以後は登記所が住基ネットで変更を把握し、本人の意思確認を経て職権で登記します(76条の6)。この場合登録免許税はかかりません。申出は2025年4月21日から受け付けています。

Q. いくらかかりますか?

登録免許税は不動産1個につき1,000円です。土地1筆・建物1棟なら2,000円。ほかに住民票の写しなどの実費がかかります。職権による登記(スマート変更登記)なら登録免許税はかかりません。

Q. 実家には住んでいません。それでも義務ですか?

義務です。76条の5の対象は「所有権の登記名義人」であって、そこに住んでいるかどうかは要件ではありません。遠方の実家を相続して持っているだけ、という人こそ対象になります。

Q. 5万円は必ず取られますか?

いきなりは取られません。登記官が相当の期間を定めて催告し、それでも正当な理由なく申請がないときに限り裁判所に通知される運用です。催告に応じて申請すれば通知されません。また「正当な理由」の例として、検索用情報の申出済みで職権登記がまだの場合、行政区画の変更、重病、DV被害、経済的困窮が挙げられています。

Q. 相続登記もまだです。どちらを先にやりますか?

相続登記が先です。名義が被相続人のままでは、そもそも「所有権の登記名義人」が自分ではありません。相続登記は3年以内・10万円以下の過料で、こちらのほうが重い義務です。祖父名義のままの実家のように何代も放置していると、先に相続人の確定から必要になります。

まとめ

  • 2026年4月1日から義務です。住所・氏名が変わったら2年以内に登記(76条の5)、怠ると5万円以下の過料(164条2項)。
  • ★施行前の引っ越しも対象。期限は2028年3月31日です(附則5条7項)。
  • 過料は催告を挟みます。催告に応じて申請すれば裁判所には通知されません。
  • 検索用情報の申出を出しておくと、引っ越すたびに登記所から通知が来ます(76条の6)。発送の日から1か月以内に返事をすれば職権で登記され、登録免許税もかかりません(規則158条の45第3項)。受付は2025年4月21日から。
  • 自分で申請するなら不動産1個につき1,000円。住所を何度も変えていると戸籍の附票が要ります。

この記事で確認できなかったこと

  • ★通知そのものが来るかどうか。不動産登記規則158条の45第1項は、登記官が変更を確認した場合に「通知することができる」と書いています。「しなければならない」ではありません。76条の6の本文も「職権で……することができる」です。つまり、申出をしても登記が済むまで76条の5の義務は消えません。どういう場合に通知されないのかを定めた条文は、規則の側には見つけられませんでした。通知を待つのではなく、引っ越したら自分で数え始めてください。
  • 施行期日を定めた政令の番号。改正法(令和3年法律第24号)の附則第1条が、76条の5について各号のうち第三号に定める日(政令で定める日)から施行するとしていることは条文で確認しましたが、その政令そのものは、e-Gov法令検索では見つけられませんでした。
  • 検索用情報管理ファイルの中身と保存期間。不動産登記規則158条の46が記録と管理の手続を定めていることは条見出しで確認しましたが、この条は全文を開いていません(158条の40も、第8項以降は開いていません)。この記事で必要な範囲——申出の方法と期限、職権登記の要件——は158条の39・40・44・45で足りています。
  • 住所変更登記の年間件数(法務省 登記統計)。データの所在は分かりましたが、数値を取り出せませんでした。
  • 「かんたん登記申請」で、検索用情報の申出ではなく住所変更登記そのものを電子署名なしに申請できるか。公式ページからは確認できませんでした。規則158条の45第5項1号は、ただし書の申出について「法務大臣が定めるところにより電子情報処理組織を使用して……送信する方法」と書いています。ただしこれは申出の話で、変更登記そのものの申請の話ではありません。

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