借地権の相続税評価|自用地価額×借地権割合の出し方と計算例

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借地に建つ実家を相続した。土地は自分のものではないのだから、相続税の対象になるのは建物だけ——そう思っていると、申告のときに足元をすくわれます。

国税庁は「借地権は、相続税や贈与税の課税対象になります」と明記しています。そして借地権の評価額は、その土地の自用地としての価額に借地権割合を掛けた額です。借地権割合が90%の地域なら、土地の評価額のほとんどが相続財産に載ります。土地を持っていないのに、土地の値段の9割を相続したことになる。

この記事は、その計算を国税庁の公表資料だけで最後まで通します。路線価図の記号の読み方から、200㎡の実家の具体的な数字、小規模宅地等の特例で8割引きになる場面、そして「親の土地に子が無償で建てた家は借地権ゼロ」という逆のケースまで。

結論だけ先に

  • 借地権の価額=自用地としての価額 × 借地権割合(タックスアンサーNo.4611)。借地権割合は路線価図の数字の右にある記号A〜Gで決まり、A=90%からG=30%までの7段階しかありません。
  • 建物は別に評価します。固定資産税評価額 × 1.0、つまり固定資産税評価額そのままです。借地であることによる減額はありません。
  • ★借地権も小規模宅地等の特例の対象です。租税特別措置法69条の4第1項の「宅地等」は「土地又は土地の上に存する権利」と定義されており、借地権はここに含まれます。特定居住用宅地等なら330㎡まで80%減額。
  • ★親の土地に子が無償で家を建てていた場合(使用貸借)は、借地権の価額はゼロとして取り扱われます。その代わり、その土地は貸宅地ではなく自用地としての価額で評価されます(No.4552)。

2026年8月24日に国税庁のタックスアンサー・財産評価基準書・申告書様式、およびe-Gov法令検索で確認しました。この記事の計算例は補正率をすべて1.00と仮定した最も単純なケースです。実際の土地は形・間口・奥行で補正がかかります。財産評価基本通達と個別通達(昭48直資2-189・昭60直資2-58・昭43直資3-22)は、条文本文まで確認して逐語で引用しています。申告は税理士にご相談ください。

1. 相続財産に載るのは、借地権と建物の2つ

借地に建つ実家を相続したとき、相続税の課税対象になるものを整理します。

状況 相続財産として計上するもの 評価額の出し方
親が他人の土地を借りて家を建てていた(普通借地権・地代あり) ①借地権 ②建物 ①自用地としての価額 × 借地権割合
②固定資産税評価額 × 1.0
上記で、その建物を第三者に貸していた ①貸家建付借地権 ②貸家 ①借地権の価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
②固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
親の土地に子が無償で家を建てていた(使用貸借) 土地(借地権は計上しない) 土地は自用地としての価額。使用借権の価額はゼロ
親が土地を他人に貸していた(親が地主側) 貸宅地(底地) 自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 借地権割合)

上の1行目が、この記事の主役です。国税庁タックスアンサーNo.4611「借地権の評価」は、逐語で次のように述べています。

「借地権の価額は、借地権の目的となっている宅地の自用地としての価額に借地権割合を乗じて求めます。」
「この借地権割合は、借地事情が似ている地域ごとに定められており、路線価図や評価倍率表に表示されています」

この算式のもとになっている通達の本文は、次のとおりです。

財産評価基本通達27(借地権の評価)
借地権の価額は、その借地権の目的となっている宅地の自用地としての価額に、当該価額に対する借地権の売買実例価額、精通者意見価格、地代の額等を基として評定した借地権の価額の割合(以下「借地権割合」という。)がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める割合を乗じて計算した金額によって評価する。ただし、借地権の設定に際しその設定の対価として通常権利金その他の一時金を支払うなど借地権の取引慣行があると認められる地域以外の地域にある借地権の価額は評価しない。

★このただし書は見落とされがちです。借地権の取引慣行がないと認められる地域では、借地権そのものを評価しません(=ゼロ)。ただし地主側の貸宅地は自用地価額の100%にはなりません。評基通25(1)の括弧書きが、この場合は借地権割合を100分の20として計算すると定めているからです(8章)。

No.4611の根拠法令等欄は「相法23、評基通9、27、27-2、87、令5課評2-74」です。ここに出てくる評基通87は「借家権の評価」ではなく「賃借権の評価」(雑種地に係る賃借権)で、7章の一時使用目的の借地権の根拠になっています。

2. ★借地権割合は、記号A〜Gの7段階しかありません

記号 借地権割合 記号 借地権割合
A 90% E 50%
B 80% F 40%
C 70% G 30%
D 60% — —

A〜Gの7段階だけです。H以降の記号は存在しません。90%より上も、30%より下もありません。

路線価図の読み方

項目 内容
路線価の単位 千円/㎡で表示される
表示例 「215D」=1㎡あたり215,000円、借地権割合60%
記号の位置 借地権割合の記号は各路線価の右に付されている

借地権割合を見る場所は2か所あります

路線価が付いていない「倍率地域」では、路線価図ではなく評価倍率表を見ます。

  • 路線価地域(路線価図に数字がある)→ 路線価の右の記号A〜G
  • 倍率地域(路線価がない)→ 評価倍率表(一般の土地等用)の「借地権割合」欄(3番目の欄)
  • 評価倍率表の「宅地」欄に「路線」と表示されていたら、その地域は路線価地域なので路線価図を見ます
  • 評価倍率表の「適用地域名」欄が「一部」「路線価地域」なら、路線価地域と倍率地域が混在しています。路線価図で所在地がどちらかを確認してください

3. 実際に計算します

200㎡の整形地、路線価図の表示が「200D」というケースで通します。

項目 値
路線価 200,000円/㎡(路線価図の表示は「200D」)
借地権割合 60%(記号D)
地積 200㎡
土地の形状 整形地・一方のみ道路に接する(各種補正率をすべて1.00と仮定)
権利の内容 普通借地権(地代を支払っている)

ステップ1:自用地としての価額を出す

200,000円/㎡ × 1.00(補正率) × 200㎡ = 40,000,000円

ステップ2:借地権の価額を出す

40,000,000円 × 60% = 24,000,000円

土地を1㎡も持っていないのに、2,400万円が相続財産に載ります。これが「借地なら相続税は関係ない」という思い込みが危ない理由です。

ステップ3:建物を足す

建物の評価は固定資産税評価額 × 1.0です(No.4602)。つまり固定資産税評価額と同じ額。借地の上に建っていることによる減額はありません。

「200D」の土地200㎡で計算します 1 自用地としての価額 20万円/㎡ × 200㎡ = 4,000万円 2 借地権の価額 4,000万円 × 60%(記号D) 3 建物を足す 固定資産税評価額 × 1.0。減額なし

財産評価基本通達89(家屋の評価)
家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額(地方税法第381条……の規定により家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録された基準年度の価格又は比準価格をいう。)に別表1に定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する。

通達の文言は「1.0を乗じる」ではなく「別表1に定める倍率を乗じる」です。その別表1が倍率を1.0と定めているので、結果として固定資産税評価額と同額になります。

順 計算の根拠 出典
1 路線価 × 補正率 × 地積 = 自用地としての価額(路線価方式) No.4602 土地家屋の評価
2 路線価は千円単位/記号Dは60% 国税庁「路線価図の説明」
3 自用地としての価額 × 借地権割合 = 借地権の価額 No.4611(相法23、評基通9・27・27-2・87ほか)
4 家屋は固定資産税評価額 × 1.0 No.4602

4. ★小規模宅地等の特例は、借地権にも使えます

ここが、この記事でいちばん金額が動くところです。

租税特別措置法第69条の4第1項(抜粋)
……被相続人等の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等(土地又は土地の上に存する権利をいう。……)で……

「土地の上に存する権利」に借地権が含まれます。したがって借地権も小規模宅地等の特例の対象です。タックスアンサーNo.4124も「宅地等」を「土地または土地の上に存する権利」と定義しています。

区分 限度面積 減額割合
特定事業用宅地等 400㎡ 80%
特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 80%
特定居住用宅地等 330㎡ 80%
貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

さきほどの2,400万円に当てはめると

地積200㎡ ≦ 330㎡なので全部が対象。24,000,000円 ×(1 − 80%)= 4,800,000円。1,920万円が減額されます。

取得者 特定居住用宅地等としての要件
配偶者 取得者ごとの要件なし
同居親族 相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつその宅地等を相続開始時から申告期限まで有していること
別居親族(いわゆる「家なき子」) 政令の要件あり(この記事では詳細を確認していません)

減額されるのは「借地権の価額」です

80%減額の対象になるのは借地権の価額であって、自用地としての価額ではありません。上の例なら4,000万円の8割ではなく、2,400万円の8割です。

借地権にも、8割引きが使えます 1,920万円 減額される額 特例なし 2,400万円 特定居住用宅地等 480万円 減るのは借地権の価額。自用地の価額ではありません

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評価額を出すところまでは自分でできます。申告書で確定させるのは別の仕事です

この記事の計算例は、補正率をすべて1.00と仮定した最も単純なケースです。実際の借地は整形地でないことが多く、奥行・間口・不整形地・がけ地の補正がかかります。そのうえ、相当の地代を払っている場合・無償返還の届出がある場合・使用貸借との線引きは、この記事では公的資料で確認しきれませんでした。当サイトは税理士ではありません。税理士ドットコムは弁護士ドットコム株式会社が運営する税理士紹介サービスで、全国対応、相談も紹介も無料です。

①申し込むと、30日以内に電話またはメールで確認の連絡が来ます。知らない番号でも出てください。ここで内容が確認できないと、税理士の紹介そのものが進みません。
②「税理士を紹介してほしい」と伝えるためのサービスです。税務相談そのものに答える窓口ではありません。
③過去1年以内にこのサービスを使ったことがある方は対象外です。ご家族が先に申し込んでいないか、確認してから使ってください。
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相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月です。

5. ★親の土地に子が無償で建てた家は、借地権ゼロ

実家の相続でよくあるのは、むしろこちらのパターンです。親名義の土地に、子が自分の家を建てている。地代は払っていない。

国税庁タックスアンサーNo.4552「親の土地に子供が家を建てたとき」は、これを使用貸借と呼び、次のように整理しています。

論点 国税庁の取扱い
使用貸借により土地を使用する権利の価額 ゼロとして取り扱う
家を建てた時点で借地権の贈与になるか ならない(借地権相当額に対する贈与税は課されない)
その土地の相続時の評価 貸宅地としての評価額ではなく、自用地としての評価額
根拠通達 昭48直資2-189

建てたときに贈与税がかからないのは有利ですが、相続のときは土地が満額(自用地としての価額)で載ります。借地権割合ぶんの減額がないということです。No.4553も、使用貸借の土地上の家屋とその敷地の贈与を受けたときは「貸家建付地ではなく自用地の贈与を受けたことになります」と述べています。

★分かれ目は「公租公課に相当する金額以下かどうか」です

この線引きは、根拠通達の第1項が正面から書いています。

昭和48年11月1日 直資2-189「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」第1項(抜粋)
……当該土地の使用貸借に係る使用権の価額は、零として取り扱う。
この場合において、使用貸借とは、民法第593条に規定する契約をいう。したがって、例えば、土地の借受者と所有者との間に当該借受けに係る土地の公租公課に相当する金額以下の金額の授受があるにすぎないものはこれに該当し、当該土地の借受けについて地代の授受がないものであっても権利金その他地代に代わるべき経済的利益の授受のあるものはこれに該当しない。

読み方は2方向あります

  • 固定資産税・都市計画税の相当額「以下」しか払っていない → 使用貸借。地代を払っている「つもり」でも、公租公課の範囲内なら借地権は立ちません。
  • 地代がゼロでも、権利金その他「地代に代わるべき経済的利益」の授受があれば使用貸借ではありません。この場合は借地権が立つので、評価はまったく変わります。

固定資産税の課税明細書と、実際に払っている金額を並べてみてください。それが最初の判定材料です。境界線上にあるケースは税理士に確認を。

地代がいくらかで、評価が変わります 使用貸借 公租公課の額以下 使用権の価額ゼロ 土地は自用地価額 貸家建付地にならず 借地権が立つ 権利金などの授受 借地権として評価 自用地価額×割合 貸すと30%減る 払っている「つもり」でも、公租公課以下なら

そして相続時の評価は、同じ通達の第3項が定めています。

同 第3項
使用貸借に係る土地又は借地権を相続……により取得した場合における相続税又は贈与税の課税価格に算入すべき価額は、当該土地の上に存する建物等……の自用又は貸付けの区分にかかわらず、すべて当該土地又は借地権が自用のものであるとした場合の価額とする。

「貸付けの区分にかかわらず」という点が効きます。子がその家を第三者に貸していても、土地は貸家建付地にならず、自用地としての価額のままです。

6. 借地の上の家を人に貸していたら

借地上の建物を第三者に賃貸していた場合、借地権の評価はさらに下がります。

貸家建付借地権の価額 = 借地権の価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)

借家権割合は、令和6年分は全都道府県で30%です。国税庁の確定申告書等作成コーナーが「令和6年分の借家権割合は、全ての都道府県において30%と定められています」と明記しています。

「一律30%」は法令上の定めではありません

根拠は財産評価基本通達94(借家権の評価)で、同項(1)は「『借家権割合』は、国税局長の定める割合による」とだけ定めています。数字は通達に書かれていません。国税局長が定め、毎年の財産評価基準書に載る仕組みです。結果として近年は全国一律30%になっている、というのが正確な言い方です。財産評価基準書で年分を選び → 都道府県をクリック → 「2.土地関係以外」の「借家権割合」で確認できます。

賃貸割合の出し方

賃貸割合 = 賃貸されている各独立部分の床面積の合計 ÷ その家屋の各独立部分の床面積の合計(No.4614)。

一時的な空室は、賃貸されているものとして扱われる場合があります。①継続的に賃貸されてきたこと、②空室後速やかに新たな賃借人の募集が行われたこと、③空室期間が課税時期の前後の1か月程度など一時的な期間であること等の要件を満たす場合です。

さきほどの2,400万円の借地権で、賃貸割合100%なら——24,000,000円 ×(1 − 0.30 × 100%)= 16,800,000円。建物のほうも固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)で評価します。

7. 定期借地権と一時使用は、計算方法がまったく違います

タックスアンサーNo.4611は、借地権を5つに区分しています。

区分 根拠法 評価方法
(1) 借地権(いわゆる普通借地権) 旧借地法、借地借家法 自用地としての価額 × 借地権割合
(2) 定期借地権 借地借家法22条 課税時期において借地権者に帰属する経済的利益およびその存続期間を基として評定した価額。課税上弊害がない場合に限り簡便算式あり
(3) 事業用定期借地権等 借地借家法23条 同上
(4) 建物譲渡特約付借地権 借地借家法24条 同上
(5) 一時使用目的の借地権 借地借家法25条 雑種地の賃借権の評価方法に準じて評価

(5)の一時使用目的の借地権について、財産評価基本通達87(賃借権の評価)は、雑種地に係る賃借権を「地上権に準ずる権利として評価することが相当と認められる賃借権」(賃借権の登記があるもの、権利金その他の一時金の授受があるもの、堅固な構築物の所有を目的とするものなど)とそれ以外に分け、前者は「法定地上権割合と借地権割合のいずれか低い割合」、後者は「法定地上権割合の2分の1」を自用地としての価額に乗じるとしています。「法定地上権割合」という語の定義も、この87条が置いています。

実家が借地に建っているケースの大半は(1)の普通借地権です。ただし平成4年8月1日以降に設定された借地で「◯年で更地にして返す」という契約になっているなら、(2)〜(4)の可能性があります。契約書の設定日と存続期間を必ず確認してください。

実家の大半は普通借地権。ただし確認を 普通借地権 旧借地法・借地借家法 割合を掛ける 定期借地権 借地借家法22条。経済的利益で 別の計算 事業用定期・譲渡特約 借地借家法23条・24条 同じく別計算 一時使用目的 借地借家法25条 雑種地に準じる 平成4年8月1日以降の設定なら、契約書を必ず確認

紛らわしい条文があります

相続税法23条は、地上権の価額を残存期間に応じた割合(10年以下なら5%、50年超なら90%など)で評価する規定を置いています。しかし同条の括弧書きは「借地借家法に規定する借地権……を除く」と明記しています。実家が建っている普通の借地は、相法23条の残存期間表ではなく、借地権割合方式で評価します。相法23条の表は、一時使用目的の借地権などの「法定地上権割合」として顔を出します。

8. 地主側(貸宅地・底地)の評価

貸宅地の価額 = 自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 借地権割合)(No.4613)

さきほどの例なら、40,000,000円 −(40,000,000円 × 60%)= 16,000,000円。

借地人側の借地権(2,400万円)と地主側の貸宅地(1,600万円)を足すと、自用地としての価額(4,000万円)になります。土地の値打ちが借地人と地主で分け合われている、という構造がここに現れます。

なお国税庁の申告要否判定コーナーによれば、借地権側の割合の選択肢は90%〜30%、貸宅地側は90%〜20%です。貸宅地側にだけ20%があるのは、借地権の取引慣行がないと認められる地域の扱いによるものです。

9. 申告書のどこに書くか

国税庁「相続税の申告のしかた」に収録されている第11表の記載要領によれば、土地・宅地の「利用区分」欄には次の別を書きます。

自用地(事業用、居住用、その他)、貸宅地、貸家建付地、借地権(事業用、居住用、その他)の別

種類 細目 利用区分
土地 宅地 借地権(居住用)
家屋、構築物 家屋 自用家屋+その構造と用途

この記載要領の一覧には「貸家建付借地権」という語がありません。貸家建付借地権のケースをどう書くかは、この一覧からは確定できませんでした。

10. 自分で計算する手順

  1. 財産評価基準書のサイトを開く(国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」)。
  2. 年分を選ぶ。相続開始(被相続人の死亡)の年分です。申告する年ではありません。
  3. 都道府県 → 市区町村 → 町丁目 → 路線価図番号と辿る。
  4. その土地が面する道路の数字と記号を読む。「200D」なら200千円/㎡・借地権割合60%。
  5. 路線価がない(倍率地域)なら、評価倍率表の「借地権割合」欄を見る。
  6. 自用地としての価額を出す。路線価地域は「路線価 × 各種補正率 × 地積」、倍率地域は「固定資産税評価額 × 評価倍率」。補正率表は国税庁「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表」に、奥行価格補正率・不整形地補正率・間口狭小補正率・がけ地補正率など10種類が載っています。
  7. 借地権割合を掛ける。
  8. 小規模宅地等の特例が使えるかを検討する。
  9. 建物を固定資産税評価額で足す。

補正率を1.00で済ませないでください

この記事の計算例は補正率をすべて1.00と仮定した最も単純なケースです。実際の土地は、奥行が深い・間口が狭い・形がいびつ・がけ地を含む、といった事情で補正がかかります。借地の実家は、そもそも整形地でないことが多いのが実情です。使う様式は「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書(第1表・第2表)」です。

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相続税評価額と、実際に売れる金額はまったく別のものです

借地権割合は、相続税・贈与税の財産評価のための割合です。市場での売買価格を定めるものではありません。借地権つきの家は、買う側が「地主の承諾を取れるか」を読めないので、一般の買主にはまず売れません。ラクウル(株式会社ネクサスプロパティマネジメント/国土交通大臣(1)第10311号)は、借地権・底地・再建築不可・共有持分を日本全国で買い取っている会社です。評価額を出したあとに「現金化するといくらになるのか」を並べておくと、遺産分割の話が具体的になります。

①買取価格は、仲介で売れる価格より低くなります。査定額は、売れる価格ではありません。②賃借権の譲渡には、地主の承諾(民法612条1項)か裁判所の許可(借地借家法19条1項)が必要です。③小規模宅地等の特例には、申告期限まで保有することが要件になる区分があります。売る時期によっては特例が使えなくなるので、売却の判断は税理士に確認してからにしてください。④申し込むと担当者から連絡が入ります。売却を考えていない相談は対象外です。⑤当サイトはこの会社の査定額や対応を確認していません。⑥このリンク経由の申込で、当サイトは広告収入を受け取ります。それによって買取価格が下がることはありません。

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順番は「評価額 → 税理士 → 査定」です。逆にすると特例を落とすことがあります。

よくある質問

Q. 土地は借りているだけなのに、相続税がかかるのですか?

かかります。国税庁タックスアンサーNo.4611は「借地権は、相続税や贈与税の課税対象になります」と明記しています。評価額は自用地としての価額 × 借地権割合で、借地権割合が90%(記号A)の地域なら、土地の評価額のほとんどが相続財産に載ります。建物も別に固定資産税評価額で計上します。

Q. 借地権割合はどこで調べますか?

国税庁の財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)です。路線価地域なら路線価の右にある記号(A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%)。倍率地域なら評価倍率表の「借地権割合」欄です。選ぶ年分は「相続が開始した年」です。申告する年ではありません。

Q. 記号がHやIの地域はありますか?

ありません。A〜Gの7段階だけです。90%より上も、30%より下もありません。国税庁「路線価図の説明」に掲げられている対応表がA〜Gで完結しており、タックスアンサーNo.4612の底地割合表とも整合しています。

Q. 借地権に小規模宅地等の特例は使えますか?

使えます。租税特別措置法69条の4第1項の「宅地等」は「土地又は土地の上に存する権利」と定義されており、借地権はこの「土地の上に存する権利」に含まれます。特定居住用宅地等なら330㎡まで80%減額です。減額されるのは借地権の価額であって、自用地としての価額ではない点に注意してください。

Q. 親の土地に私が無償で家を建てています。借地権を贈与されたことになりますか?

なりません。タックスアンサーNo.4552は、これを使用貸借とし「使用貸借により土地を使用する権利の価額はゼロとして取り扱われ」るため、借地権相当額に対する贈与税は課税されないとしています。ただしその代わり、将来の相続ではその土地は貸宅地ではなく自用地としての評価額になります。建てたときは無税、相続のときは満額、という構造です。

Q. 固定資産税ぶんだけ親に払っています。これは使用貸借ですか、賃貸借ですか?

使用貸借です。昭48直資2-189の第1項が「例えば、土地の借受者と所有者との間に当該借受けに係る土地の公租公課に相当する金額以下の金額の授受があるにすぎないものはこれに該当し」と明記しています。つまり固定資産税・都市計画税の相当額以下しか払っていないなら、地代を払っていても使用貸借で、借地権の価額はゼロです。逆に、地代がゼロでも権利金その他「地代に代わるべき経済的利益」の授受があれば、使用貸借には当たりません。公租公課の額とほぼ同じ、という境界線上のケースは税理士に確認してください。

Q. 建物は借地の上に建っているぶん安く評価されませんか?

されません。財産評価基本通達89は「家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額に別表1に定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する」と定めており、その倍率が1.0なので、評価額は固定資産税評価額と同じです(No.4602)。借地であることによる減額はありません。建物を第三者に貸していた場合だけ、固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)で下がります。

Q. 相続税法23条に「地上権は残存期間で評価する」と書いてあるのを見ました。

実家の借地には、その表は使いません。相続税法23条の括弧書きは「地上権(借地借家法に規定する借地権及び民法第269条の2第1項の地下または空間を目的とする地上権を除く)」となっており、建物所有目的の借地権は明文で除かれています。実家が建っている借地は、残存期間表ではなく借地権割合方式で評価します。相法23条の表は、一時使用目的の借地権などの「法定地上権割合」として使われます。

Q. 定期借地権も同じ計算でいいですか?

いけません。計算方法がまったく違います。定期借地権(借地借家法22条)・事業用定期借地権等(23条)・建物譲渡特約付借地権(24条)は、「課税時期において借地権者に帰属する経済的利益およびその存続期間を基として評定した価額」で評価します。課税上弊害がない場合に限り簡便算式が使えますが、基準年利率と複利年金現価率が必要で、この記事では具体的な数値計算例を示せていません。契約書で借地権の種類を確認してください。

Q. 借地権と底地を足すと、土地の値段になりますか?

相続税評価の世界では、そうなります。借地権=自用地としての価額 × 借地権割合、貸宅地=自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 借地権割合)ですから、足すと自用地としての価額に戻ります。ただしこれは相続税を計算するための評価額であって、実際に売れる価格ではありません。借地権も底地も、単独では売りにくい財産です。

Q. 申告書には何と書けばいいですか?

第11表の記載要領によれば、土地・宅地の利用区分には「自用地(事業用、居住用、その他)、貸宅地、貸家建付地、借地権(事業用、居住用、その他)」の別を書きます。実家なら「借地権(居住用)」。建物は種類「家屋、構築物」/細目「家屋」/利用区分「自用家屋」+構造・用途です。なおこの記載要領の一覧に「貸家建付借地権」という区分名はなく、その場合の書き方は確認できませんでした。

この記事で確認できなかったこと

  • 貸家建付借地権の算式そのもの。財産評価基本通達28(貸家建付借地権等の評価)の本文は確認しましたが、肝心の算式が画像(alt属性は「貸家建付借地権等の価格の算式」)で掲載されており、文字として読み取れませんでした。この記事の算式は、国税庁「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」第2表の印字構造から読み取ったものです。
  • 貸家建付借地権を第11表にどう記載するか。記載要領の一覧に区分名がありません。
  • 借家権割合が全都道府県30%であることの、財産評価基準書そのものでの確認。確定申告書等作成コーナーと申告要否判定コーナーの記述で裏づけましたが、都道府県別のページからは数値を読み取れませんでした。
  • 基準年利率の具体的な数値と複利年金現価率の表。定期借地権等の実際の数値計算例は作れませんでした。
  • 路線価図の「地区区分」の記号(ビル街地区・高度商業地区・普通住宅地区等の表示記号と、それに対応する補正率の適用範囲)。
  • 小規模宅地等の特例の「家なき子」要件、および借地権と底地が別々の相続人に渡る場合の留意点。この記事では調査していません。
  • 相当の地代に満たない地代を支払っている場合の借地権の価額の算式。昭60直資2-58の本文と項番号は確認できましたが(第2項・第4項)、算式そのものが画像で掲載されており、文字として読み取れませんでした。なお同通達第1項の「相当の地代=自用地としての価額のおおむね年6%程度」と、第5項の「無償返還届出書が提出されている場合の借地権の価額は零」は本文で確認できています。くわしくは底地の記事に書きました。

まとめ

  1. 借地権は相続税の課税対象です。「土地は借りているだけ」は通用しません。
  2. 借地権の価額 = 自用地としての価額 × 借地権割合(No.4611)。
  3. 借地権割合は路線価の右の記号A〜G。A=90%からG=30%までの7段階しかありません。倍率地域では評価倍率表の「借地権割合」欄を見ます。
  4. 路線価図で選ぶ年分は「相続が開始した年」です。申告する年ではありません。
  5. 建物は固定資産税評価額 × 1.0(評基通89は「別表1に定める倍率」と書き、その倍率が1.0)。借地であることによる減額はありません。
  6. ★借地権も小規模宅地等の特例の対象です(措法69条の4第1項「土地又は土地の上に存する権利」)。特定居住用宅地等なら330㎡まで80%減額。
  7. 減額されるのは借地権の価額であって、自用地としての価額ではありません。
  8. 親の土地に子が無償で建てた家は使用貸借で、借地権の価額はゼロ。その代わり土地は自用地としての価額で相続財産に載ります(昭48直資2-189 第1項・第3項)。分かれ目は「公租公課に相当する金額以下かどうか」です。
  9. 定期借地権(22条〜24条)と一時使用目的(25条)は計算方法がまったく違います。契約書で種類を確認してください。
  10. この記事の計算例は補正率1.00の最も単純なケースです。実際の借地は整形地でないことが多く、補正がかかります。申告は税理士に。

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