実家の墓をどうするか|墓は相続財産ではありません。「離檀料」という言葉は法律に1文字も出てきません

実家を片づけていると、必ず出てくるものがあります。仏壇と、墓です。

家は売るか壊すか決められます。墓は、そのどちらでもありません。そして「墓じまい」で検索すると、まず出てくるのが離檀料という言葉です。数十万円、ときには百万円を超える額を請求された、という話も見かけます。

そこで、法律だけを読みました。墓地、埋葬等に関する法律と、その施行規則と、民法と、刑法です。

結論から言うと、「離檀料」という言葉は、法律にも省令にも1文字も出てきません。そして、寺が書類を書いてくれないときの出口が、省令の括弧の中に、はっきり書いてあります。

この記事は、e-Gov法令検索の条文だけで書いています。確認できなかったことは、最後にそのまま書いています。

最終更新:2026年8月19日

結論だけ先に

  • 墓は相続財産ではありません。民法897条1項は「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」と定めています。「前条」は896条、つまり相続の一般的効力です。墓はそこから外されています。
  • だから、墓は遺産分割協議の対象ではありません。そして相続放棄をしても、墓を承継することはあります。放棄は896条の話であって、897条の話ではないからです。
  • 法律にあるのは「改葬」だけです。墓地、埋葬等に関する法律の条文を全部検索しましたが、「墓じまい」0件、「離檀」0件、「永代供養」0件、「散骨」0件、「使用料」0件、「管理料」0件。1つも出てきません。
  • 改葬には市町村長の許可が要ります(法5条1項)。許可を出すのは「死体又は焼骨の現に存する地の市町村長」(同2項)。移転先ではなく、いま墓がある市町村です。
  • 寺が「埋蔵の証明書」を書いてくれないときの出口は、省令に書いてあります。施行規則2条2項1号の括弧書き——「これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面」。
  • 庭に埋めるのは違法です。法4条1項「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない」。罰則は2万円以下の罰金・拘留・科料(法21条1項1号)ですが、それとは別に刑法190条があります。遺骨の遺棄は3年以下の拘禁刑です。

条番号はすべてe-Gov法令検索で本文を確認しました。

まず、墓は相続財産ではない

ここを誤解している人がとても多い。墓は、預金や不動産と同じようには扱われません。

民法897条1項は、こうです。

系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

「前条の規定にかかわらず」——ここが全部です。前条は896条、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」という条文です。

墓(墳墓)、仏壇や位牌(祭具)、家系図(系譜)は、その一切から外されています。

この3つは、相続分に応じて兄弟で分けるものではありません。1人が承継します。誰が承継するかの順番は、条文にこう書いてあります。

順 誰が承継するか 根拠
1 被相続人が指定した者 897条1項ただし書き
2 慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者 897条1項本文
3 家庭裁判所が定める者(慣習が明らかでないとき) 897条2項

897条2項の条文はこれです。

前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

ここから出てくる、実務上の3つの帰結

1.遺産分割協議書に墓を書く必要はありません。相続財産ではないからです。書いてはいけないという条文はありませんが、分割の対象ではない以上、そこで揉める意味がありません。

2.相続放棄をしても、墓は承継することがあります。相続放棄は896条の承継を否定する手続きです。897条は別の条文です。「負動産だから放棄した。でも墓の管理料の請求は自分に来る」——これは条文どおりに起きうることです。

3.「長男が継ぐもの」とは、条文に書いてありません。書いてあるのは「慣習に従って」です。慣習が明らかでなければ家庭裁判所が決めます。長男という言葉は897条のどこにもありません。

相続放棄そのものの判断は、実家が「負動産」だったら相続放棄すべきかで、3か月の期限と放棄しても残るものを整理しています。

「墓じまい」という言葉は、法律に存在しない

墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)の条文を、全文にわたって語句検索しました。結果はこうです。

探した語 件数
墓じまい 0
離檀 0
永代供養 0
散骨 0
樹木葬 0
手元供養 0
使用料 0
管理料 0
承諾 0

ひとつも出てきません。この法律が定めているのは、埋葬・火葬・改葬という3つの行為と、墓地・納骨堂・火葬場という3つの施設だけです。

だから「墓じまいの法的手続き」というものは、正確にはありません。あるのは改葬の許可です。世の中で墓じまいと呼ばれているものは、法律の上では「改葬」と「墓地使用契約の終了」という、まったく別の2つの話が混ざったものです。

この2つを分けて考えると、話が急に整理されます。

相手 ルール
改葬の許可 市町村長(行政) 法律と省令に書いてある。要件は決まっている
墓地使用契約の終了 寺・霊園(民間) 法律に規定がない。契約の中身による

離檀料の話は、右側です。行政の許可の話ではありません。

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「改葬」とは何か——定義が意外と狭い

法2条3項の定義です。

この法律で「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう。

読みどころは、移す先が指定されていることです。「他の墳墓」または「納骨堂」。この2つしか書いてありません。

ちなみに、同じ2条の他の項で、その2つも定義されています。

  • 墳墓(4項)——「死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設をいう」
  • 納骨堂(6項)——「他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設をいう」
  • 墓地(5項)——「墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事(市又は特別区にあつては、市長又は区長。以下同じ。)の許可を受けた区域をいう」

納骨堂は「他人の委託をうけて」「都道府県知事の許可を受けた」施設です。自宅の仏壇は、当然どちらにも当たりません。

つまり「遺骨を自宅に持ち帰る(手元供養)」が、条文でいう改葬に当たるのかどうかは、この定義からは読み取れません。移す先が墳墓でも納骨堂でもないからです。ここは自治体の運用に委ねられている部分で、今回は確認できませんでした。

改葬には市町村長の許可が要る。しかも「今ある場所」の市町村長

法5条1項です。

埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。

そして2項が、間違えやすいところです。

前項の許可は、埋葬及び火葬に係るものにあつては死亡若しくは死産の届出を受理し、死亡の報告若しくは死産の通知を受け、又は船舶の船長から死亡若しくは死産に関する航海日誌の謄本の送付を受けた市町村長が、改葬に係るものにあつては死体又は焼骨の現に存する地の市町村長が行なうものとする。

「現に存する地」です。つまりいま墓がある市町村。新しい墓を建てる場所でも、あなたが住んでいる場所でもありません。

実家が遠方にある人にとって、これは実務上かなり効きます。申請先は実家の側の役所です。郵送で受け付けているかどうかは自治体によります。

許可証がないと、新しい墓は受け入れられない

法8条。

市町村長が、第五条の規定により、埋葬、改葬又は火葬の許可を与えるときは、埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を交付しなければならない。

そして法14条1項・2項。

墓地の管理者は、第八条の規定による埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を受理した後でなければ、埋葬又は焼骨の埋蔵をさせてはならない。

納骨堂の管理者は、第八条の規定による火葬許可証又は改葬許可証を受理した後でなければ、焼骨を収蔵してはならない。

受け入れ側は、許可証がなければ受け取れません。「してはならない」と書いてあり、違反すると法21条1項1号で罰則があります。だから改葬許可証を先に取るのが、必ず先です。

申請書に書くのは7項目(施行規則2条1項)

墓地、埋葬等に関する法律施行規則2条1項は、改葬許可の申請書に書く事項を、次の7つと定めています。

号 書く事項(条文のまま)
一 死亡者の本籍、住所、氏名及び性別(死産の場合は、父母の本籍、住所及び氏名並びに死児の性別)
二 死亡年月日(死産の場合は、分べん年月日)
三 埋葬又は火葬の場所
四 埋葬又は火葬の年月日
五 改葬の理由
六 改葬の場所
七 申請者の住所、氏名、死亡者との続柄及び墓地使用者又は焼骨収蔵委託者(以下「墓地使用者等」という。)との関係

ここで先に確認しておくべきことが1つあります。一号と二号は「死亡者」ごとの情報です。1つの墓に何人分の焼骨が入っているかを、先に把握しておかないと書けません。祖父母の代まで入っていることは珍しくありません。

そして五号「改葬の理由」。条文は理由を書けと言っているだけで、どんな理由なら許可される、という基準は書かれていません。「墓を継ぐ人がいない」「遠方で管理できない」——条文上、理由の当否を審査する規定は見当たりませんでした。

添付書類は3つ。ここが「離檀料」の実際の争点です

施行規則2条2項が、添付書類を定めています。この条文が、この記事でいちばん重要です。

前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

一 墓地又は納骨堂(以下「墓地等」という。)の管理者の作成した埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証する書面(これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面)

二 墓地使用者等以外の者にあつては、墓地使用者等の改葬についての承諾書又はこれに対抗することができる裁判の謄本若しくは裁判の内容を記載した書面であつて裁判所書記官が当該書面の内容が当該裁判の内容と同一であることを証明したもの

三 その他市町村長が特に必要と認める書類

2つ、はっきり読み取れることがあります。

①「承諾書」が要るのは、自分が墓地使用者でないときだけ

二号の書き出しは「墓地使用者等以外の者にあつては」です。

裏返すと、あなた自身が墓地使用者(または焼骨収蔵委託者)であれば、二号の承諾書は要りません。条文がそう書いています。

ここで言う「承諾」は、寺の承諾ではなく墓地使用者の承諾です。名義が親のままで、あなたが墓地使用者になっていない場合は、先に使用者の名義を確認してください。

②寺が証明書を書かないときの出口が、括弧の中にある

一号の括弧書きをもう一度読みます。

これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面

省令が、代替手段を用意しています。「墓地等の管理者の作成した書面」が取れない特別の事情があるときは、市町村長が必要と認める、これに準ずる書面でよい、と書いてあります。

つまり、寺が判子を押さないことが、改葬許可の絶対的な障害にはなりません。何が「準ずる書面」に当たるかを決めるのは市町村長です。だから、行き詰まったときに相談する相手は、寺ではなく市区町村の担当課です。

ただし、誤解しないでください。この括弧書きは「離檀料を払わなくていい」と言っているのではありません。行政の許可という土俵と、寺との契約という土俵は別だ、と言っているだけです。

離檀料そのものについて、条文が言っていること

何も言っていません。墓地、埋葬等に関する法律にも、その施行規則にも、「離檀料」「使用料」「管理料」という語は1つも出てきません。

金額の根拠になりうるのは、あなたと寺・霊園のあいだの墓地使用契約(規則・使用規程)だけです。まず契約書と規程を探してください。そこに書いていない金額を、法律が根拠づけることはありません。

当サイトには監修者がいません。契約書に書いてある金額が有効かどうかは、条文からは判断できません。額が大きいときは、弁護士か、自治体の無料法律相談に行ってください。

受け入れは拒めない。でも「出す」ことは条文にない

法13条は、こう定めています。

墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない。

「拒んではならない」——強い義務です。違反すると法21条1項1号の罰則の対象になります。

ただし、よく読んでください。ここに並んでいるのは「埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬」です。改葬は入っていません。

つまり、受け入れ側の管理者は正当な理由なく拒めないが、いま入っている墓から「出す」ことについて、同じ形の義務規定は見当たりませんでした。この非対称は、条文を読んだ範囲での事実です。これを補う通知や解釈があるかどうかは、今回は確認できていません。

やってはいけないこと——庭に埋める、手元に置き続ける

実家を売る・壊すことが決まっていて、墓の行き先が決まらない。そのとき、いちばんやってはいけないのがこれです。

法4条1項。

埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。

2項もあります。

火葬は、火葬場以外の施設でこれを行つてはならない。

「墓地以外の区域」に埋めてはいけない。墓地とは、2条5項の定義で「墓地として都道府県知事……の許可を受けた区域」です。実家の庭は、当然そこに入りません。

罰則は2つ、まったく重さが違う

まず、墓地、埋葬等に関する法律21条1項1号。

第三条、第四条、第五条第一項又は第十二条から第十七条までの規定に違反した者

これに当たると「二万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。正直に言えば、金額としては軽い。昭和23年の法律で、金額が改定されていません。

問題は、こちらではありません。刑法190条です。

(死体損壊等)死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の拘禁刑に処する。

3年以下の拘禁刑。2万円以下の罰金とは、まったく別の重さです。

「どこかに置いてくる」「山に撒く」は、この条文の射程に入りうる行為です。散骨が実際にどう扱われるかは、この記事では判断できません。墓地、埋葬等に関する法律には「散骨」という語が1つも出てこない、という事実だけを書いておきます。

実家じまいと同時に進めるときの順番

家と墓を同時に片づけることになるので、順番を整理します。

1.誰が承継者かを、先に決める

民法897条の順番です。被相続人の指定 → 慣習 → 家庭裁判所。ここが決まらないと、そもそも誰が申請するのかが決まりません。

2.墓地使用者の名義を確認する

施行規則2条2項2号の「承諾書」が要るかどうかが、ここで決まります。あなたが墓地使用者なら要りません。

3.何人分の焼骨が入っているかを確認する

施行規則2条1項一号・二号は、死亡者ごとの本籍・住所・氏名・性別・死亡年月日を求めています。先に数を把握してください。寺や霊園の管理帳簿で確認できることがあります。

4.受け入れ先を先に決める

申請書の六号に「改葬の場所」を書くからです。行き先が決まっていないと、申請書が埋まりません。

5.今ある墓の市町村に、改葬許可を申請する

法5条2項の「死体又は焼骨の現に存する地の市町村長」です。実家側の役所です。

6.許可証を持って、受け入れ先へ

法14条1項・2項により、許可証がなければ受け入れ先は焼骨を受け取れません。

やってはいけないこと

  • 寺に先に「離檀します」と言ってから、行き先を探す。行き先が決まらないと申請書が書けません。順番が逆です
  • 受け入れ先の市町村に許可を申請する。申請先は「いま墓がある」市町村です
  • 証明書を書いてもらえないからと諦める。施行規則2条2項1号の括弧書きがあります。市区町村の担当課に相談してください
  • 遺骨を一時的に自宅に置いたまま放置する。刑法190条の射程を考えると、宙に浮かせる期間は短いほうがいい
  • 実家の解体を先に進めてしまう。仏壇・位牌・過去帳は祭具(民法897条)です。解体前に取り出してください

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費用について、条文が言えること

何も言えません。正直にそう書きます。

墓地、埋葬等に関する法律にも施行規則にも、金額を定めた条文はありません。改葬許可申請の手数料は自治体が条例で定めるもので、無料の自治体もあります。今回、全国の手数料を横断的に確認したデータは作っていません。

墓石の撤去費、離檀料、新しい納骨先の費用——いずれも公的な統計を見つけられませんでした。相場としてよく見る金額は、事業者や比較サイトが集計したものです。当サイトは、出所を確認できない数字を書きません。

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この記事で確認できなかったこと

この記事は、e-Gov法令検索の条文だけで書いています。次の点は確認できませんでした。

  • 「改葬の理由」の審査基準。施行規則2条1項五号は理由を書けと定めていますが、どんな理由なら許可されるかの基準は、法律にも省令にも書かれていません
  • 遺骨を自宅に持ち帰る(手元供養)が、法2条3項の「改葬」に当たるかどうか。定義は移す先を「他の墳墓又は納骨堂」としており、自宅はどちらにも当たりません
  • 「これに準ずる書面」として何が認められるか。市町村長が認めるもの、としか書かれていません。自治体ごとの運用は調べていません
  • 散骨の法的な扱い。墓地、埋葬等に関する法律に「散骨」の語はありません。厚生労働省のガイドラインの有無と内容は、今回は確認していません
  • 墓地の管理者が改葬(出すこと)を拒めるかどうか。法13条は「埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬」の求めについての規定で、改葬は挙げられていません。これを補う通知や判例は確認していません
  • 離檀料の相場、および請求の有効性。法律にも省令にも規定がなく、契約次第です。金額の妥当性は条文からは判断できません
  • 改葬許可申請の手数料。自治体の条例によります。全国分は調べていません
  • 年間の改葬件数。厚生労働省の衛生行政報告例に「改葬数」の項目があることは確認しましたが、統計表そのもの(数値)は今回は開いていません
  • 墓石の撤去費や新しい納骨先の費用の公的な統計。見つけられませんでした
  • 民法897条の「慣習」が具体的に何を指すか。条文には書かれていません

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