親の口座は、亡くなってからでは探せません|一括で調べる制度は3つ、範囲も費用もバラバラです

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連載「親が元気なうちに」第2回

連載「親が元気なうちに」第2回。第1回では、子の名義で貯めたお金が親の財産と判断される話を書きました。今回はその口座が、どこにあるのか分からなくなる話です。

親が亡くなったあと、相続人が最初にぶつかるのは「どの銀行に口座があるのか分からない」ことです。通帳が出てくればいい。出てこなければ、探すことになります。

調べていて分かったのは、「どこに口座があるか」を一括で調べる公的な仕組みは3つあり、範囲も費用も窓口もバラバラで、しかも3つとも「どこにあるか」までしか分からないということでした。中身は結局、1社ずつ聞くことになります。

そして銀行については、親が元気なうちに手続きをしていないと、その一括照会が使えません。これが今回いちばん伝えたいことです。

1. 一括で調べる制度は、3つあります

まず全体像です。3つとも別の組織が、別の根拠で運営しています。

制度 調べられる範囲 費用 方法 分かること
ゆうちょ銀行の
現存調査
ゆうちょ銀行の貯金 無料 郵便局の窓口 貯金の有無
口座管理法の
相続時照会
マイナンバーを付番した口座だけ 確認できず 金融機関の窓口 口座の有無
ほふりの
開示請求
上場株式・投資信託など 4,950円
または6,050円
郵送のみ 証券会社名の一覧

気づいてほしいのは、この表に「銀行(ゆうちょ以外)を無条件で一括で調べる制度」が無いことです。三菱UFJにも、地方銀行にも、信用金庫にも、まとめて聞ける窓口は原則ありません。口座管理法の照会だけが唯一それに近いのですが、それは親が生前に付番していた口座しか出てきません。

一括で調べられるのは、どこまでか ゆうちょ銀行 一括で調べられます 無料 銀行(ゆうちょ以外) 無条件の一括制度がありません 窓口なし 証券(株・投信) 一括で調べられます 4,950円〜 銀行だけ、ここに穴があります

2. ゆうちょ銀行だけは、昔から無料で全国を調べられます

ゆうちょ銀行には「現存調査」という手続きがあります。貯金等照会書を郵便局の窓口に出すと、貯金の有無を調べて後日郵送で回答してくれます。

  • 費用は無料です。ゆうちょ銀行は「現存調査は無料」と書いています。ただし調査の結果みつかった口座の残高証明書を出してもらう場合は、別途手数料がかかります。
  • 請求できるのは本人・相続人・代理人です。相続人が請求するときは、被相続人が亡くなったことが分かる戸籍謄本等と、自分が相続人であることが分かる戸籍謄本等が要ります。
  • 窓口に出す手続きです。照会書は窓口に用意されています。

ゆうちょは全国どこの郵便局でも手続きができ、口座は本店で一元管理されています。「親がどの支店を使っていたか分からない」という問題が、ゆうちょについては起きません。

親が地方出身なら、まずここを疑ってください。本人が忘れている古い通常貯金が残っていることがあります。

3. ★銀行は、親が生前に手続きしていないと一括では調べられません

2024年4月1日に「口座管理法」が施行されました。正式には「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」といいます。

この制度でできるようになったことを、デジタル庁はこう書いています。

  • 相続手続の際、相続人が銀行等の窓口において、一度に複数の銀行等に被相続人の口座があるかどうか照会できるようになります
  • 災害時には、避難先の銀行等で、マイナンバーを活用した情報連携によって口座を持っていることを確認できるようになります

実際の照会は預金保険機構が担います。同機構は「相続人より口座情報の提供を求められた場合、マイナンバーを用いて金融機関に照会し、当該相続人に口座情報の通知を行う」と説明しています。通知されるのは「口座の有無」です。

ここに大きな条件があります

この制度は、親が自分の意思でマイナンバーを口座に届け出ていた場合にだけ働きます。デジタル庁ははっきり書いています。

預貯金者の方が希望した場合のみ、口座とマイナンバーを付番する制度であり、国民の皆さまがマイナンバーを届け出る義務はありませんし、強制するものでもありません

義務ではない、ということは、何もしなければ付番されていない、ということです。そして付番されていない口座は、この照会をしても出てきません。

つまりこの制度は、相続人が後から使う制度に見えて、実際には親が生前に動いておかないと使えない制度です。「親が元気なうちに」という連載でこれを取り上げる理由が、ここにあります。

銀行を一度に照会できるかの分かれ目 親はマイナンバーを口座に登録しましたか はい 窓口で一度に聞ける 口座管理法の照会 いいえ 1行ずつ聞くしかない 付番した口座だけ

付番のやり方

  • 新しく口座を作るときは、本人確認書類とマイナンバー確認書類を持って、口座開設時に付番を希望すると銀行に伝えます。
  • すでにある口座は、各銀行の店頭などで届出を受け付けています。
  • デジタル庁は、マイナポータルから届け出て、別の銀行の口座も一度にまとめて付番できるようにすると説明しています。

親に頼むことは、ひとつだけです。「使っている銀行で、マイナンバーを口座に登録しておいてほしい」。それだけで、相続のときに探す手間が変わります。

4. 証券は「ほふり」に郵送で請求します

株や投資信託は、銀行とは別の窓口です。証券保管振替機構(ほふり)に「登録済加入者情報の開示請求」をすると、親の口座がどの証券会社・信託銀行にあるかの一覧が分かります。

機構の相続人向けの手続案内から、数字をそのまま拾います。

  • 手数料は、法定相続情報一覧図を提出する場合は4,950円、それ以外は6,050円(いずれも税込)。2件目以降は1件につき1,100円が加算されます。
  • 回答までは「2か月ほど」かかります。書類に不備があると、さらに時間がかかります。
  • 請求は郵送のみです。窓口はありません。
  • 対象は上場株式、新株予約権、投資信託受益権(ETF)、受益証券発行信託受益権(JDR)などと、所定の要件を満たす非上場株式です。

★ここで1,100円の差がつきます

法定相続情報一覧図を持っていくと6,050円が4,950円になります。差は1,100円です。

一覧図の交付そのものは無料です。戸籍を集める手数料はかかりますが、図の交付に手数料は取られません。銀行でも法務局でも使い回せる書類なので、法定相続情報一覧図を先に作っておくと、ここでも効いてきます。

ほふりの開示請求:一覧図があると安い 1,100円 安くなります 出さない 6,050円 一覧図を出す 4,950円 一覧図の交付そのものは無料。戸籍の実費だけ

分からないことも、はっきりしています

開示されるのは口座が開設されている証券会社等の一覧と、担保の受入れ・差入れに関する情報です。銘柄名も、保有残高も、取引履歴も分かりません。どこにあるかが分かったら、そのあと各証券会社に1社ずつ聞くことになります。

5. 親が元気なうちにできること

順番に書きます。①だけでも効果があります。

  • ① 使っている銀行で、マイナンバーを口座に登録してもらう。これができるのは本人だけです。子が代わりにやることはできません。親が元気なうちにしかできない、唯一の公的な手当てです。
  • ② 金融機関の名前だけ、紙に書いてもらう。口座番号も残高も要りません。「どこにあるか」さえ分かれば、あとは相続人が動けます。暗証番号は書かせないでください。
  • ③ 使っていない口座を、親自身に解約してもらう。本人ならその場でできます。亡くなったあとだと、その1口座のために戸籍一式が要ります。
  • ④ ネット専業銀行とネット証券を聞いておく。通帳もカードも郵便物も無いことがあります。ここがいちばん見つかりません。

②について、ひとつ注意があります。財産の一覧を作ると、それ自体が相続の話になり、親が身構えることがあります。「金額は聞かない。銀行の名前だけ教えて」と最初に言い切ると、通りやすくなります。

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親の財産をどこまで洗い出すか、税理士に相談する

口座を探すところまでは、自分でできます。ただし「相続税の申告が要るかどうか」は、預貯金・不動産・保険をぜんぶ足してからでないと分かりません。足す前の段階で、何を集めればいいかを聞いておくと手戻りが減ります。自分では判断がつきません。税理士ドットコムは、全国5,900名以上の税理士から相続に強い人を無料で紹介する窓口です。運営は東証プライム上場の弁護士ドットコム株式会社。紹介と相談は無料で、複数の税理士を比較してから選べます。親が元気なうちに相談すれば、直す時間があります。亡くなってからでは、贈与そのものが成立しません。

申し込む前に3つだけ確認してください。①紹介は無料ですが、依頼したあとの報酬は税理士ごとに違います。見積りを取ってから決めてください。
②コーディネーターから電話またはメールで連絡が入り、財産の内容と地域を聞かれます。おおよその財産額と、気になっている口座の状況を答えられるようにしておくと早く終わります。
③相続がすでに発生している場合、申告期限は10か月です。期限が近いなら最初に伝えてください。

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口座が見つかったあと、葬儀代などで先に下ろす方法は親の口座が凍結されて葬儀代が払えないときに書きました。

6. 通帳が出てこないときの手がかり

制度で一括に調べられない部分は、結局これで埋めます。実家の片づけをしながら探すことになります。

  • キャッシュカード、通帳、粗品のタオルやカレンダー。金融機関名が入っています。
  • 郵便物。取引残高報告書、運用報告書、株主総会の招集通知。証券口座は郵便物でしか気づけないことがあります。
  • 確定申告の控え。配当や利子が書いてあれば、その金融機関があります。
  • 公共料金・保険料の引落口座。検針票や保険証券から銀行名が分かります。
  • 年金の振込先。年金振込通知書に金融機関名が載っています。
  • スマホとパソコン。ネット銀行・ネット証券はアプリとメールにしか痕跡がありません。

手がかりが出たら、その金融機関に1件ずつ照会します。支店が分からなくても、多くの銀行は本支店をまたいで調べてくれます。

7. 10年放っておくと、預金は別の場所へ動きます

見つからないまま放置された口座は、休眠預金等になります。金融庁の説明から数字を拾います。

  • 10年以上、入出金等の取引がない預金等が対象です。
  • 2009年1月以降に最後の異動があった預金等が、原則として対象になります。
  • 休眠預金等になったあとも、取引のあった金融機関で引き出すことは可能です。「通帳やキャッシュカード、本人確認書類などをお持ち頂ければ、引き出すことができます」と書かれています。通帳をなくしていても、本人確認書類があれば引き出せます。

つまり、10年経っても消えてなくなるわけではありません。ここは落ち着いてください。ただし手続きは増えますし、そもそも「その口座があること自体を誰も知らない」なら、引き出しようがありません。だから一覧が要ります。

放っておいた口座が、たどる道 最後の入出金 2009年1月以降が対象 10年経つ 休眠預金等になります そのあとも 本人確認書類があれば引き出せます

対象にならないものがあります

金融庁は対象外のものも挙げています。外貨預貯金、譲渡性預貯金、財形貯蓄、仕組預貯金、マル優口座など。そして、

2007年10月1日より前に郵便局に預けられた定額郵便貯金等

郵政民営化より前の郵便貯金は、この法律の枠の外にあります。実家の引き出しから古い郵便貯金通帳が出てきた場合は、休眠預金の話とは分けて、ゆうちょ銀行に直接確認してください。当サイトはこの旧郵便貯金の扱いまでは調べていません。

やってはいけないこと

  • 親のキャッシュカードで、亡くなったあとに引き出すこと。他の相続人との間で必ず問題になります。払戻しには制度がありますので、そちらを使ってください。
  • 親に暗証番号を書かせること。必要なのは金融機関の名前だけです。
  • 「相続のために」と切り出すこと。②が進まなくなります。目的は言わなくても手続きはできます。
  • 親名義の口座を、子が勝手に解約すること。本人以外はできません。

よくある質問

Q. 付番していない口座は、相続時照会でまったく出てきませんか?

制度の仕組み上、マイナンバーが結びついていない口座は照会の対象になりません。付番は本人が希望した場合のみ行われる任意の制度だと、デジタル庁が明記しています。

Q. 照会すれば残高も分かりますか?

分かりません。預金保険機構は「口座の有無を通知」と書いています。ほふりの開示請求でも、分かるのは証券会社等の一覧までで、銘柄も残高も出ません。3つの制度はどれも「どこにあるか」で止まります。

Q. ゆうちょの現存調査は、本当に無料ですか?

ゆうちょ銀行は「現存調査は無料」と書いています。ただし、みつかった口座の残高証明書を出してもらう場合は別途手数料がかかります。

Q. ほふりの請求は急ぎたいのですが。

2か月ほどかかると案内されています。郵送のみで、窓口はありません。相続税の申告期限は10か月です。証券がありそうなら、早い段階で出しておいてください。

Q. 親がマイナンバーカードを持っていません。

付番の届出はマイナンバー(12桁の番号)で行うもので、通知カードや住民票でも番号は確認できます。ただし各行の受付方法までは確認できていません。取引のある銀行に聞いてください。

まとめ

  • ★口座を一括で調べる制度は3つ。ゆうちょの現存調査、口座管理法の相続時照会、ほふりの開示請求です。運営する組織も、費用も、窓口も別々です。
  • ★3つとも「どこにあるか」までしか分かりません。残高も銘柄も出ません。中身は結局1社ずつです。
  • ★銀行(ゆうちょ以外)をまとめて調べる方法は、口座管理法の照会しかありません。そしてそれは、親が生前に付番していないと使えません。
  • ゆうちょの現存調査は無料。窓口に貯金等照会書を出すだけです。
  • ほふりは郵送のみで2か月。手数料は4,950円か6,050円で、法定相続情報一覧図があると1,100円安くなります。
  • 付番は義務ではありません。だから、何もしていなければ付番されていません。
  • 親に頼むのは、金融機関の名前だけで足ります。金額も暗証番号も要りません。

この記事で確認できなかったこと

  • 相続時の口座照会の手数料が、いくらなのか確認できませんでした。預金保険機構の「相続時預貯金口座照会利用規定」のPDFにアクセスしようとしましたが、取得できませんでした。無料とも有料とも書いていません。金融機関の窓口で確認してください。
  • 相続時照会の受付が全国のどの金融機関で始まっているのかを、網羅的には確認していません。預金保険機構は業務として案内していますが、当サイトは個別の金融機関の対応状況を調べていません。
  • 回答までにどれくらいかかるかも確認できませんでした。ほふりの「2か月」のような目安の記載を、相続時照会については見つけられていません。
  • ゆうちょの現存調査の回答期間は「後日、郵送」としか書かれておらず、日数は分かりませんでした。また調査範囲が全国のゆうちょ貯金すべてかどうかも、明示の記載は見つけられていません。
  • マイナポータルからの一括付番が、現時点でどこまで使えるようになっているか確認できていません。デジタル庁は予定として書いていますが、当サイトは実際の稼働を確かめていません。
  • 生命保険・共済の契約を一括で調べる仕組みは、この記事では扱っていません。銀行・ゆうちょ・証券の3つに絞っています。
  • 個別の金融機関ごとの必要書類は調べていません。本記事は制度側の公表資料だけを根拠にしています。

この連載について

「親が元気なうちに」は、まだ間に合ううちにできることだけを書く連載です。

今回の話は、その典型でした。口座管理法の相続時照会は、相続人のための制度に見えて、親本人が動いていないと空振りします。亡くなってからでは、もう付番できません。

次回以降の予定です。

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